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身体化、病気不安症の心理的防衛機制

目次

身体化、病気不安症の心理的防衛機制の概要と比較、また、緘黙症と転換性障害、ヒステリー症状との区別は?

身体化

心理的防衛機制の中で、身体化(somatization)は心理的なストレスや感情が身体的な症状や疾患として現れる現象を指します。つまり、心の状態や心理的な問題が身体の不調や痛みとして現れることです。身体化は心身一体の関係を反映し、身体的な健康と精神的な健康の間に相互作用があることを示してアプローチされています。

身体化は、心理療法やカウンセリングを通じて心の健康を改善し、身体的な症状を軽減するのに役立ちます。また、身体的な症状を持つ個人に対しては、心身一体のアプローチを取る医療プロフェッショナルとの協力が重要です。身体化を理解し、適切に対処することは、心身の健康を総合的に向上させる一歩となります。

● 身体化(somatization)とは?

  • 心理的な葛藤やストレスが身体症状として現れる現象全般を指す用語。
  • 診断名ではなく、広義の現象名・病理的傾向のこと
  • 「身体化傾向」「身体化による防衛」など、心理力動的にも使われます。

身体化(somatization)」は、かつては一つの診断カテゴリでしたが、現在では複数の障害に分けて整理されており、厳密には「身体化障害」「身体症状症」「転換性障害」は別のものです。

  1. 身体的な症状
    • 身体化では、心理的なストレス、不安、抑うつ、トラウマなどの心の問題を抱えているにもかかわらず、身体的な症状や不調を経験します。これには頭痛、胃痛、筋肉痛、吐き気、めまい、疲労感などが該当します。
  2. 無機的な原因
    • これらの身体的な症状は医学的な検査で明確な有機的原因が見つからない場合があり、無機的な病気や障害として分類されます。つまり、身体の組織や臓器に異常が見られないということです。
  3. 心理的なストレスと関連
    • 身体化はストレスや感情的な負荷と関連しており、心の問題に関連して感情やストレスが身体的な症状として現れ、心理的な不安や苦痛を身体を使い物理的な形で表現しています。
  4. 症状の慢性化
    • 身体化が長期化すると、症状が慢性化することがあり、日常生活に影響を及ぼす可能性があり、医療の診断と治療が難しくなることもあります。

具体的例

身体化は、心理的なストレスや不安が身体的な症状として現れる防衛機制です。心の問題が体に転移し、身体的な症状として表出されます。

  • ストレスによる頭痛
    職場での過度なストレスが原因で、慢性的な頭痛に悩まされる。
  • 試験前の胃痛
    試験前の不安やプレッシャーが原因で、胃痛や消化不良を経験する。
  • 家族問題による皮膚症状
    家庭内の問題や対立が続くと、湿疹やじんましんが発生する。
  • 不安からくる胸痛
    大きな不安や恐怖感があるときに、心臓に問題がないのに胸痛を感じる。

診断基準による違い(DSM-5)

  • 身体化:現象としての用語(症状の出方)=身体に心が現れる心理力動的状態
  • 身体症状症(DSM-5):かつての「身体化障害」を含む広い診断名
  • 転換性障害:神経症状に特化した別の診断。身体化とは一部重なりつつ別カテゴリ
  • 身体化障害:多数の慢性的な身体症状のことだが障害名は廃止
障害名説明備考
身体化障害(Somatization Disorder)多数の慢性的な身体症状が、医学的説明なしに訴えられる旧診断名DSM-IVまでは正式な診断名。DSM-5では廃止
身体症状症(Somatic Symptom Disorder)医学的な原因の有無に関係なく、身体症状に対する過剰な思考・感情・行動が持続するDSM-5で登場。身体化障害を含む広いカテゴリ
転換性障害(Conversion Disorder) または機能性神経症状症(Functional Neurological Symptom Disorder)麻痺、けいれん、視覚喪失などの神経症状が心理的要因で出現。症状は意図的でない身体症状症とは別枠の神経機能に特化した障害
クライエントの主訴考えられる診断
「原因不明の腹痛・倦怠感が何年も続く」身体症状症の可能性
「突然足が動かなくなった、でも検査は正常」転換性障害の可能性
「いつも身体の不調ばかり気になってしまう」身体化傾向あり(正式診断ではなく)

「身体化」傾向の心理力動的理解(例:抑圧・回避・自己愛的防衛)

「身体化」は、単なる身体症状の問題ではなく、心的葛藤・防衛・対人関係のパターンが、身体を通じて語られている状態として理解されます。
ここでは、精神力動的観点から身体化傾向を読み解く際の主要な視座で見てみます。

身体化の心理力動的理解:主な視点

【抑圧】感情の意識化を防ぐ働きとしての身体化

  • 抑圧された感情(怒り・悲しみ・恐怖など)が、身体症状として表現される
  • 本人は、感情の存在すら気づいていないことが多い。
  • 身体症状が「無意識の叫び」「沈黙の感情の代弁者」になる。

例:
「いつも胃が痛い」という女性。セラピーの中で、母親への怒りが出てくると胃痛が悪化する。
→ 怒りを意識することができないために、身体が代わりに反応している。

【回避】心の葛藤に直面しないための逃避先

  • 内面的な対立や決断、変化などに直面することから逃れる手段として身体症状が生じる。
  • 「身体の問題」があることで、心理的な問題に目を向けずに済む

例:
転職を考えているが「頭痛がひどくて何も考えられない」と言う男性。
→ 変化に伴う不安や失敗の恐れから、身体症状を盾に決断から回避している。

【自己愛的防衛】脆弱な自己の保護・注目の獲得

  • 「病気である自分」によって、無意識に他者からの配慮・優しさ・注目を引き出そうとする
  • 自己評価が低く、病気の役割(sick role)を通して存在意義を得る

例:
「誰も私を理解してくれない。でも病気のときだけはみんな優しかった」
→ 「健康な私」では愛される自信がないため、病的な自分を通じて関係をつなごうとする。

【アレキシサイミア(感情の識別・表現困難)】

  • 感情を言語化できない/してこなかった結果として、身体で感情を感じるようになる
  • 特に感情を「感じること」自体に苦痛や恥の感覚を持つ場合がある。

例:
「何も感じない。ただ胸が重い」「涙が出そうなのに、理由が分からない」
→ 感情の言語化の未発達による身体的表出。

【関係性の訴えとしての身体症状】

  • 身体症状が、他者との距離を調整するツールとして用いられる。
  • 「これ以上近づかないで/もっと見てほしい」という非言語的メッセージを含む。

例:
「頭痛で人付き合いがつらい」と言うが、内心では他者との密着を恐れている。
→ 身体症状を用いて距離を保ちつつ、孤立を正当化している。

身体化傾向を見立てる心理力動的チェックポイント

観点観察ポイント
感情との距離「どう感じた?」と聞かれても表情が曇る・答えが出てこない
思考の様式過剰に具体的/外的出来事中心/感情語が乏しい
症状の語り方医学用語に詳しいが、内面的意味づけが乏しい
関係性のパターン「助けて」とは言えないが、症状を通じて援助を引き寄せる

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病気不安症

病気不安症(illness anxiety disorder)は、心理的防衛機制の一つである身体化の一形態とされる心の問題です。この症状は、かつては「疾患恐怖症(hypochondriasis)」とも呼ばれていました。病気不安症を持つ人は、極端な病気への過度な恐れや不安を抱き、身体的な症状や不調を過剰に解釈し、常に自分が重篤な疾患にかかっていると信じることが特徴です。

病気不安症は心の問題であり、身体の実際の状態とは無関係に、心理的な健康に影響を及ぼします。治療は精神保健専門家による心理療法、特に認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy, CBT)が一般的に行われます。CBTは恐れや不安を取り扱い、不適切な思考や行動を修正する療法です。場合によっては、薬物療法も検討されることがあります。早期の治療を受けることで、病気不安症の症状を管理し、日常生活を改善することができます。

  1. 過度な病気への恐れ
    • 病気不安症の人は、軽微な身体的な症状や不快感を経験したときに、それが深刻な疾患の兆候であると恐れます。例えば、頭痛や腹痛、皮膚のかゆみなどの症状があっても、がんや心臓病などの致命的な病気を疑いがちです。
  2. 過度な医療受診
    • 病気不安症の人は、病院や医師を頻繁に受診し、検査や診断を求めることが多くなります。しかし、医師の診断が結果的に異常ないし無害であることが多く、病気不安症の恐れが現実的でないことを意味します。
  3. 心理的苦痛
    • 病気不安症の人は、恐れや不安によって日常生活に支障をきたすことがあります。恐れが強烈で、継続的なストレスを生じています。
  4. 過度な情報収集
    • 病気不安症の人は、病気に関する情報を過度に収集し、インターネットや医学書を通じて自己診断を試みることがあります。この情報収集行動は、不安を増幅させることになります。

具体的例

病気不安症は、自分が重い病気にかかっているのではないかという強い不安を持ち、その不安が過度になって日常生活に支障をきたす防衛機制です。以前は「心気症(ヒポコンドリア)」とも呼ばれていました。

  • 頻繁な医者通い
    軽い症状でも重大な病気だと思い込み、頻繁に医者に行く。
  • 常に身体のチェック
    身体のわずかな変化に過度に敏感になり、常に自分の身体をチェックする。
  • 医療情報の過剰な収集
    インターネットで病気の情報を過度に調べ、自分の症状に当てはめて重い病気だと信じる。
  • 診断に納得しない
    医者に「健康です」と言われても納得せず、何度も診断を受け直そうとする。
  • 日常生活の制限
    病気の恐れから、外出を控えたり、特定の食べ物や活動を避ける。

身体化と病気不安症の比較

防衛機制の「身体化」と「病気不安症」は、心理的な問題が身体的な症状や不調として現れる現象を指しますが、それぞれ異なる特徴や要点があります。
要するに、身体化と病気不安症は、どちらも心の問題が身体的な症状や不調として表れることを指しますが、違いはその焦点と目的にあります。身体化は身体的な症状の現れを強調し、自身の身体に焦点を当てます。一方、病気不安症は病気や健康に対する恐れや不安が中心的で、身体的な症状はその不安の結果として解釈されます。

身体化(Somatization)

特徴
  • 身体化は、心理的なストレスや感情が身体的な症状や不調として現れる現象を指します。身体的な健康問題を経験しているかのように感じます。
  • 身体の異常や症状が実際には身体の組織や臓器に由来するものではない場合があります。つまり、無機的な病気や障害として分類されます。
目的
  • 身体化は、心の問題を身体的な表現を通じて処理しようとする反応です。心のストレスが身体的な症状として現れます。
  • 身体的な検査や医療受診を通じて、症状の原因を解明しようとします。

病気不安症(Illness Anxiety Disorder)

特徴
  • 病気不安症は、病気や健康に対する過度な恐れや不安を抱く状態を指します。身体的な症状や不調を過剰に解釈し、常に深刻な疾患を疑います。
  • 疑いから、医師の診断や医療検査が頻繁に受けることになります。
目的
  • 病気不安症は、心の健康に関連する心理的な問題であり、心のストレスが身体的な症状として現れることを特徴として、病気や健康に対する不安を中心に感じることです。
  • 体験される症状は、実際の身体の問題よりも、心の不安に関連しています。

身体化・病気不安症の症状や疾患

身体化と病気不安症は、心理的な要因に起因するため、身体のさまざまな症状や疾患が現れる可能性があります。次は、身体化と病気不安症に関連する身体の一般的な症状や疾患のいくつかですが、これらは個人によって異なります。

身体化に関連する身体の症状や疾患

  • 頭痛
  • 腹痛
  • 背中の痛み
  • 筋肉の痛み
  • 体のしびれや痺れ
  • 不眠症または過眠症
  • 悪心や嘔吐
  • 食欲の変化(過食または食欲不振)
  • 呼吸困難
  • だるさや疲労感

病気不安症に関連する身体の症状や疾患

  • 様々な病気への過度な不安や恐怖
  • 特定の臓器やシステムに関する過度な不安(例: 心臓、脳、がんなど)
  • 身体的な症状や不調に対する過度な懸念
  • 症状が実際には身体的な問題ではないにもかかわらず、医師や医療検査の受診を繰り返すこと
  • 症状が過度に解釈され、常に深刻な疾患を疑うこと

これらの症状や疾患は、心理的なストレス、不安、恐怖、または心の不安定さによって引き起こされています。注意すべきは、これらの症状が実際には身体的な問題ではなく、心の健康に関連することが多いという点です。

身体化や病気不安症に属さない心疾患

ヒステリー、失声、失立失歩、狭視野などの身体的な症状は、一般的には「ヒステリー症状」として知られ、過去には精神病理学的な診断として使用されていましたが、現代の医学や心理学では解離性障害や転換性障害のアプローチが取られています。これらの症状は心理的な原因やトラウマに起因する場合があり、適切な治療や心理療法が必要とされます。また、緘黙症(selective mutism)や転換性障害(conversion disorder)は、身体化や病気不安症とは異なる精神疾患です。これらの障害は、心理的な要因によって引き起こされ、身体の症状や不調とは異なる特徴を持っています。

ヒステリー症状

「ヒステリー症状」として知られる身体的な症状や障害は、精神病理学的な診断として過去に使用されていましたが、現代の医学や心理学では解離性障害や転換性障害のプローチが取られています。これらの症状は、かつて「ヒステリア」という用語で表され、精神病理学の文脈で考察されてきましたが、近年ではその理解と診断が変わってきています。

  1. 一般的な理解
    ヒステリー症状は、過去には特に女性に関連付けられ、身体的な症状が精神的なストレスや葛藤の結果として現れるとされていました。しかし、この用語は過去の文脈では性差別的であったため、現代の医学と心理学では避けられることが一般的です。
  2. 現代のアプローチ
    現代の医学や心理学では、これらの症状は異なる診断とアプローチに従って評価されます。たとえば、転換性障害(conversion disorder)は、身体の機能障害が心理的な要因によって引き起こされる疾患として認識されています。失声、失立失歩、狭視野などは、心理的な要因に関連する神経学的な症状として評価されます。
  3. 防衛機制との関連
    ヒステリー症状は、一部の場合には心理的な防衛機制と関連していることがあります。ストレスや葛藤に対処できない場合、身体的な症状を通じてそのストレスを表現しようとすることがあります。これは転換と関連があることもありますが、一般的な防衛機制としては異なります。

要するに、現代の医学や心理学では、ヒステリー症状に対して性別に偏ったある種のステレオタイプ的なアプローチは避けられ、より包括的かつ科学的な診断と治療が提供されます。身体的な症状が心理的な要因に起因する場合、それに関連する診断とアプローチが適用され、患者に適切なサポートが提供されるよう努力されています。

緘黙症と転換性障害

緘黙症と転換性障害は、言語や身体機能に関する異常を示す点で共通していますが、それぞれ異なる精神疾患であり、身体化や病気不安症とは区別されます。身体化は身体的な症状が心理的なストレスによって引き起こされる現象を指し、病気不安症は病気への過度な不安や恐れに焦点を当てた障害です。

  1. 緘黙症(Selective Mutism)
    • 緘黙症は、一般的に言語発達に関連する障害で、主に子供に見られることがあります。特定の社交的な状況(たとえば、学校や公共の場で)で話すことができず、他の状況では通常通り話すことができることがあります。これはコミュニケーションの困難さに関連しており、心理療法や言語療法が一般的に治療に用いられます。
  2. 転換性障害(Conversion Disorder)
    • 転換性障害は、身体の異常な症状や機能障害が、心理的なストレスや葛藤によって引き起こされる障害です。具体的な症状はさまざまで、例えば、視覚障害、麻痺、歩行困難、けいれんなどが該当します。これらの症状は身体的な原因がなく、心の問題に起因しています。治療には心理療法が一般的に使用されます。
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