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間欠爆発症/間欠性爆発性障害

目次

間欠爆発症の概要、症状、診断、ケース例

間欠爆発症/間欠性爆発性障害(Intermittent Explosive Disorder, IED)は、反応性の激しい怒りや攻撃性を持つ精神障害の一つです。IEDは、突然起こる怒り発作や攻撃性の発作を特徴とします。これらの発作は予測できず、激しい怒りや攻撃行動が現れることがあります。発作は一般的に、周囲の人々や物品に対して危害を与えることがあります。

IEDは反社会的な行動障害の一種であり、怒りの感情が制御できず、他人に対して暴力的な行動を取ることですが、特徴は原因や状況に不釣り合いな強さであるということです。症状は、言語的、身体的攻撃や所有物の破壊といった衝動的行動が突発的に繰り返されます。

IEDの原因は不明ですが、遺伝的、神経生物学的、社会的、および心理的要因が関与する可能性があります。IEDは、通常10代後半から20代に発症することが多く、男女比は男性の方が相当数多いとされています。ある大学病院の精神疾患の患者の2%がIEDに該当し、80%以上が男性であったと報告されています。また、IEDの発症にはストレスや不安、うつ病、薬物乱用などが関与することがあります。

IEDの臨床症状

IEDの発作は、急に現れることがあり、周囲にいる人に暴力的な行動を取ることがあります。発作は、心身ともに緊張した状態から始まり、手足の震え、頭痛、胸部の圧迫感、怒りの感情の高揚、言葉や行動の攻撃性などが現れ、発作は数分から数時間続くことがあります。また、発作が収まった後には、後悔や罪悪感を感じていることがあります。

IEDは、周囲の状況や人間関係、生活環境のストレス、遺伝的な要因、脳内物質の異常などが関係しているとされています。また、子どもの頃に虐待やトラウマを経験した人や、家庭環境が不安定な人が発症することが多いとされています。

間欠性爆発性障害の典型的な臨床症状には、次のようなことがあてはまります。

  • 突然の激しい怒りや攻撃性の爆発
  • 爆発が起こる前に、緊張感や不安感を感じることがある
  • 爆発が起こると、感情が制御できなくなり、暴言や暴力行為を起こすことがある
  • 爆発が終わると、しばらくの間、深刻な後悔や自己嫌悪を感じることがある
  • 爆発の後、職業的、または対人関係が悪化することも、経済的損失を被ったり処罰を受けることもある
  • 爆発を繰り返すことで、うつ病や不安障害、アルコール依存症などの精神疾患を発症することがある

IEDの原因と疫学

間欠爆発症(Intermittent Explosive Disorder、IED)の原因は複雑で、複数の要因が関与している可能性があります。IEDの疫学的特徴についてもいくつかの情報がありますが、正確な原因はまだ完全には解明されていません。次に、IEDの原因と疫学に関する一般的な情報を提供します。

原因

  1. 生物学的因子
    遺伝学的要因がIEDの発症に関与している可能性があります。遺伝的な素因が、感情調節や衝動のコントロールに関連する神経伝達物質や脳の構造と関連していると考えられています。
  2. 神経生物学的因子
    脳内の神経伝達物質や神経回路の異常がIEDの症状に影響している可能性があります。特にセロトニンという神経伝達物質の不均衡が関連しているという仮説が存在します。
  3. 環境的要因
    環境的ストレス、虐待、トラウマなどがIEDの発症や症状の悪化に影響を及ぼしている可能性があります。環境要因は、感情の不安定さや攻撃性を増加させることがあります。
  4. 神経発達の問題
    脳の発達障害や損傷、または神経学的な問題がIEDの発症に影響している可能性があります。

疫学

IEDは一般的な障害ではありますが、正確な発生率は疫学調査によって異なります。IEDの特定の統計情報は時折変動しますが、次に一般的な疫学的特徴を示します。

  1. 発生率
    IEDは一般的な精神障害で、成人の中で約1割から2割の人が一度はIEDの症状を経験するとされています。
  2. 年齢層
    IEDは通常、思春期から成人期にかけて発症しますが、幼少期から始まることもあります。
  3. 性差
    研究によれば、男性の方が女性よりもIEDにかかりやすいとされていますが、女性も発症することがあります。
  4. 共病状態
    IEDは他の精神障害、特にうつ病、不安障害、物質乱用障害などと共病することがよくあります。

IEDの原因と疫学については、さらなる研究が行われており、詳細な理解が進展していますが、まだ解明されていない側面も多く残っています。

IEDの特徴

間欠爆発症(Intermittent Explosive Disorder、IED)は、一時的な感情の制御の喪失によって特徴づけられる精神障害です。IEDを持つ人は、突然激しい怒りや攻撃性を示し、その瞬間に他人や物を傷つけることがあります。

  1. 突然の爆発性の感情
    • IEDの主要な特徴は、突然の爆発的な感情の発作です。これは怒り、攻撃性、暴力的な行動などになります。爆発的な出来事は、他の人が予測するのが難しく、突然起こることが多くなります。
  2. 過剰な反応
    • IEDの人は、通常の状況でのささいな刺激に対しても、過剰に怒りや攻撃性を示すことがあります。たとえば、交通渋滞や家庭内の些細な問題に対しても、極端に反応することがあります。
  3. 制御の喪失
    • IEDの人は、怒りや攻撃的な感情をコントロールすることが難しく、制御を失うことがあります。爆発的な反応の間は、冷静な判断や理性が働きにくくなります。
  4. 社会的・法的問題
    • IEDの発作は、時に社会的・法的な問題を引き起こします。他人や財産に対する攻撃的な行動により、法的なトラブルや人間関係の損害が発生することがあります。
  5. 継続的な症状
    • IEDは、継続的な問題であるため、症状が長期間にわたって続くことがあります。この障害は通常、思春期から成人期にかけて発症しますが、そのまま症状が継続的に進行していく可能性があります。

IEDは、正確な原因は不明ですが、生物学的、遺伝学的、環境的要因が関与している可能性があります。診断と治療は精神医療専門家によって行われるべきであり、認知行動療法、薬物療法、ストレス管理などのアプローチが一般的に使用されます。早期の診断と治療は、症状の管理と将来の問題の予防に役立ちます。

DSM-5とICD-11の診断

DSM-5の診断基準

DSM-5では、年齢が6歳以上であり、爆発的行動の頻度が、言語的攻撃もしくは他者に傷を負わさせない程度の行動なら、3カ月間で平均して週2回以上で、他者や動物に負傷させる行動では12か月間で3回以上起こることが条件とされています。ただし、パーソナリティ障害など変化の精神障害を除外するものとされています。

  • 過去に何度か、怒りの爆発性発作を経験したことがある。
  • 言語面、身体面への攻撃が3カ月以上続けて週2回以上ある。
  • 物や人への損傷や怪我が生じるほど強い行動の爆発が12カ月の間で3回以上生じる。
  • 6歳以上
  • 爆発の攻撃性の強さが、きっかけのストレスと釣り合わないほど強い。
  • 怒りの爆発性発作は、周囲の状況や人間関係のストレスによって引き起こされることが多い。
  • 怒りの爆発性発作が、日常生活や社会的・職業的な機能に影響を与えることがある。

ICD-11の診断基準

ICD-11では、IEDは「衝動制御障害」の一つとして分類されています。以下は、ICD-11におけるIEDの診断基準の要約です。

  1. 頻繁な怒り発作または暴力発作を示すこと。
  2. 怒り発作または暴力発作が、一般的に予測不可能で、反応が過剰であること。
  3. 怒り発作または暴力発作が、周囲の人々、または物品に対して危害を与えること。
  4. 怒り発作または暴力発作が、他の精神障害、薬物乱用、または薬物離脱などの結果でないこと。
  5. 怒り発作または暴力発作が、重要な社会的、職業的、またはその他の機能に支障をきたすこと。
  6. 症状が少なくとも6ヶ月間継続すること。

これらの基準を満たす場合、IEDの診断が可能とされています。ただし、正確な診断は専門医による評価と判断が必要です。

IEDとの鑑別される障害

間欠性爆発性障害(Intermittent Explosive Disorder, IED)は、感情の制御が困難で、怒りや攻撃的な行動が間欠的に爆発的に現れる精神障害です。IEDと他の障害(ADHD、反社会性パーソナリティ障害、躁うつ病、自閉症スペクトラム障害、ASD)との共通点と相違点の鑑別を詳しく説明します。

IEDとADHD
  • 共通点
    • IEDとADHDは、注意力や感情の制御に問題を抱えることがあり、衝動的な行動が特徴です。
    • どちらも若年期に発症しやすく、社会的な問題を引き起こす可能性があります。
  • 相違点
    • IEDは怒りや攻撃的な行動が中心であり、急激な爆発が特徴です。一方、ADHDは注意散漫や衝動性が主な症状です。
    • IEDの発作は急激で短時間(30分以内)で終わることが多い一方、ADHDの問題は持続的で日常生活に影響を及ぼします。
IEDと反社会性パーソナリティ障害
  • 共通点
    • どちらも衝動的な行動があり、他人に対する攻撃的な行動が見られます。
  • 相違点
    • IEDは怒りの発作が中心であり、特定のトリガーに反応することが多くなります。一方、反社会性パーソナリティ障害は犯罪行動や規範逸脱が特徴で、計画的な行動が多いのが特徴です。
IEDと躁うつ病
  • 共通点
    • どちらも情緒的な不安定さが見られ、怒りや興奮が増加することがあります。
  • 相違点
    • IEDは怒りが中心であり、爆発的な行動が特徴です。躁うつ病は気分が極端に高揚し、行動が無謀になることがあります。
    • IEDの爆発は急激で突然であるのに対し、躁うつ病のエピソードは持続的な高揚感と興奮が続きます。
IEDとASD(自閉症スペクトラム障害)
  • 共通点
    • どちらも社会的な相互作用に困難があり、感情の制御に課題を抱えています。
  • 相違点
    • IEDは怒りの発作が中心で、攻撃的な行動が障害の特徴です。ASDは社会的なコミュニケーションや相互作用において特徴的な困難がありますが、攻撃的な行動は一般的ではありません。
    • IEDは感情の急激な爆発がありますが、ASDは感情の理解や表現に問題を抱えることがありますが、感情の急激な爆発は典型的ではありません。

要するに、IEDは怒りの発作や攻撃的な行動が中心であり、他の障害とは異なる特徴を持っています。

IEDの併存症

間欠性爆発性障害(Intermittent Explosive Disorder, IED)は、他の精神障害や病態条件と併存することがあります。IEDと併存する可能性のある一般的な精神障害や病態条件のいくつかを示します。

  1. 抑うつ障害
    IED患者は怒りや攻撃性の発作の後に後悔や罪悪感を感じることがあり、これが抑うつ症状を引き起こすことにつながります。抑うつ症状はIEDの爆発的な行動を悪化させることがあります。
  2. 不安障害
    不安障害(社交不安障害や一般不安障害)とIEDは共存することがあります。不安や緊張がIEDの爆発的な反応を誘発することがあります。
  3. 躁うつ病
    躁うつ病(双極性障害)とIEDの併存も見られることがあります。躁状態では興奮や無謀な行動が増加し、これがIEDの爆発的な行動を増悪させる可能性があります。
  4. ADHD(注意欠陥多動性障害)
    注意欠陥多動性障害(ADHD)は、注意力や衝動性の問題を持つ障害であり、IEDと併存することがあります。ADHDの症状が感情の制御に影響を与え、IEDの発作を誘発することがあります。
  5. 依存症
    IED患者は自己医療のためにアルコールや薬物に依存することがあるため、依存症との併存が一般的です。依存症はIEDの症状を悪化させる要因となる可能性が高くなります。
  6. 反社会性パーソナリティ障害
    反社会性パーソナリティ障害とIEDの併存もあります。両障害は衝動的な行動や社会的な問題を共通して持つことがあります。
  7. 自閉症スペクトラム障害(ASD)
    自閉症スペクトラム障害とIEDの併存も報告されていますが、これらの症状は異なる性質を持つため、鑑別が重要です。

架空のケース例

【ケース1】
Aさんは普段はおとなしく人当たりも良く、周りからは真面目で頼りがいのある人と評判でした。しかし、怒りが頂点に達すると制御が効かなくなり、周りにいる人やものに対して爆発的に怒りをぶつけることがありました。ある日、仕事のミスで上司に叱責され、怒りが頂点に達したAさんは、勤務先のオフィスの机やコピー機を破壊するなどの暴力行為を行いました。その後も、ストレスがたまるのと同じように暴力行為を行うようになり、周りからは怖がられるようになってしまいました。

【ケース1の解説】
このケースでは、Aさんはストレスがたまると、制御が効かなくなって爆発的に怒りをぶつけることが特徴的です。このような間欠性爆発症は、ストレスがたまりやすい環境下にある人や、自己制御が弱い人に見られることが多く、突然激しい怒りを爆発させる行為が現れます。

【ケース2】
Bさんは、普段は社交的でフレンドリーな人物として周りから親しまれていました。しかし、自己防衛本能が強く、他人から自分のものを奪われたり、自分が不当に扱われる状況に遭遇すると、我慢できなくなって爆発的に暴れ出すことがありました。ある日、路上でBさんは妊婦の女性から「席を譲って欲しい」と頼まれましたが、Bさんはその場で席を譲ることに反発し、女性に暴言を吐いたうえ、女性の腹を蹴るという非常に危険な行為を行ってしまいました。

【ケース2の解説】
このケースでは、Bさんは自己防衛本能が強く、他人から自分のものを奪われたり、自分が不当に扱われると、爆発的に怒りをぶつけることが特徴的です。このような間欠性爆発症は、自己防衛本能が強い人や、自己主張が強い人の現れ方です。

【ケース3】
Aさんは、普段は穏やかで温厚な人物ですが、時々突然怒り出して周囲を驚かせます。その度に、物を投げたり壊したりすることがあります。例えば、ある日、Aさんは自宅でテレビを見ていたところ、番組に出ていた俳優が気に入らず、急に怒り出しました。怒りのあまり、テーブルに置いてあった飲み物を投げつけてテレビを壊してしまいました。また、昔から付き合いのある友人にも、怒りのあまり口論になり、最後には手を出してしまうことがあります。

【ケース3の解説】
Aさんは、普段からストレスが溜まりやすく、小さなことでもイライラしてしまう傾向があります。この間欠性爆発症の発作は、通常の怒りやストレスの反応と比べて、強く、突発的で、異常に持続的であることが特徴です。また、Aさんは発作後には後悔や自己嫌悪に陥り、自分自身を責めることになります。

このように、間欠性爆発症は、一見穏やかな人物でも、突然暴力的な行動を起こすことがある病気です。発作が起きるたびに、周囲を驚かせ、自分自身も苦しむことになります。治療には、認知行動療法や薬物療法が一般的に用いられます。

IEDの治療法

治療には、薬物療法や認知行動療法、ストレス管理などが用いられます。薬物療法では、抗うつ薬や抗精神病薬が用いられることがあります。特に併存症がADHDとうつ病、双極性障害、不安障害、強迫性障害には薬の治療が有効ですので期待できるところもあります。
認知行動療法では、怒りを抑えるための技術やストレス管理の方法が教えられます。また、生活習慣の改善や運動、リラクゼーション法の実践も有効となります。また、IEDに併存されている障害がある場合、症状に対しての治療を優先することによって、IEDの症状が改善される場合もあります。

間欠性爆発性障害は、一般的には心理療法が推奨されています。具体的には、認知行動療法が最も効果的な治療法とされています。認知行動療法では、不安やストレスを引き起こすトリガーを特定し、そのトリガーに対処するための対処法を開発することが目的です。また、リラクゼーション療法、ストレス管理技術、感情調整のスキルなどが対象となります。

一部の場合、薬物療法も必要となることがあります。抗不安薬や抗うつ薬、抗てんかん薬、抗精神病薬などの精神安定剤が使用されることがありますが、これらの薬物には依存性や副作用があるため、使用には注意が必要です。治療の過程で、症状の改善や患者の状態に応じて、治療法の変更や組み合わせが調整されます。

間欠性爆発性障害に対する治療法についてはまだ限られた研究しか行われていないため、有効性については議論が分かれるところがあります。治療の効果は患者の症状や個人の特性によって異なるため、個別に治療計画を作成することが重要です。

エリアス・アブジャウデとロリン・M・コーラン編集「衝動調節障害」2010年/ケンブリッジ大学出版局

「衝動調節障害:行動依存症の理解と治療のための臨床医のガイド」、ジョンE.グラントとマークN.ポテンザ2018年/W.W.ノートン&カンパニー

Eric HollanderとDan J. Steinが編集「Handbook of Impulsive and Compulsive Disorder」2010年/John Wiley & Sons

ハーヴェイ・B・ミルクマンとケネス・W・ワンバーグが編集「衝動調節障害」2007年/アメリカ心理学会

ナンシーM.ペトリーが編集「行動中毒:DSM-5以降」2016年/オックスフォード大学出版局

ブライアン・P・マコーミック著、2009年/ProQuest「行動の知覚と調節に対する実行機能と動機づけの自己規律の相乗的貢献の神経心理学」

尾崎紀夫・三村將・水野雅文・村井俊哉:標準精神医学第8版/医学書院

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