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選択性緘黙/場面緘黙-実際の相談メール例を徹底検証⑥

目次

心とは裏腹に相手と会話ができない、声が出ない!選択性緘黙・トラウマ性緘黙・全緘黙と治療法-6弾

「3時間対面無料メンタルケアサービスについて質問します。私は緘黙ですが、○○県○○市まで来ていただくことはできますか」。という若い方からのメールが2022年10月初めに入りました。無料サービスは、クライエントの地域まで出張していないのでお断りしました。私はお断りのメールを返信しただけで、お気持ちを察することもできなくて後悔しています。
今回は緘黙についての徹底検証をしてみます。緘黙といえば一般的には選択性緘黙(場面緘黙)のことを示しますが、全緘黙、トラウマ性緘黙がありますので、分析してみます。

選択性緘黙(EM)場面緘黙

選択性緘黙(EM)とは、他の状況では自発的に話しているのに、特定の社会的状況でのみ話すことが困難になる状態です。周りからは自己意思によって会話をしない場面を選択的に行っているように見える疾患です。これは一部の人や特定の場面で「不安を感じる」「緊張する」などの心的要因があって、「話したい」と思っていても話せないという疾患です。
選択性緘黙を持つ人は、一般的に自分に対する厳しい評価や、自己意識の高さ、または新しい人とのコミュニケーションにおける恐怖心、恥ずかしいなど様々な理由で会話をすることに対し不安を感じています。家族や仲間などとは問題なく会話をすることができますが、特定の場面で話したい人と会話ができないことがあります。選択性緘黙の方は性格によるものや自分の意志で話さないことを選んでいるわけではありません。また、緘黙から無言を想像させることで「話さない」をイメージしがちですが、実際は「緘動」といって身体が硬直してしまい、動かせなくなることもあります。その他には次のようにまとめられます。

  • 自発的な会話が少ない
    自分から会話を始めることが少ない傾向があります。また、会話をする際には簡潔にまとめることが多く、詳細な話を避けたりします。
  • 新しい人とのコミュニケーションに苦手意識を持つ
    新しい人とのコミュニケーションに対して苦手意識を持っていることが多く、自分を表現することに自信がないため、そのような場面を避けてしまうことがあります。
  • 不安や緊張が強い
    コミュニケーションに対して強い不安や緊張を感じることが多く、声が小さくなったり、思うように意思を伝えられずストレスを引き起こすことがあるため、場面を避けたくなる傾向があります。
  • グループで話すことが難しい
    グループで話すことに気を使いすぎるような違和感を感じていて、自分を表現することができず、グループの中で浮いてしまうことがあるため、場面を避けたくなる傾向があります。
  • 話しかけられた場合でも反応が弱い
    話し相手に対して思うように自分の気持ちを伝えられず、興味を示すリアクションも取れないことを感じているので、話しかけられても反応が弱くなることがあります。会話を続けることが難しいと感じるあまりに無言のままでいることがあります。

以上のようなことが1カ月以上持続し、学業や職業、対人的コミュニケーションを妨げていることが選択性緘黙となります。

このようなことから選択性緘黙を持つ人を支援するためには、表現や応答がしやすくなる投げかけなど、話すことに対する不安を理解することが重要です。また、コミュニケーションを行う際にストレスを感じないよう、適した方法で自己表現できるような環境を作ることが大切となります。

選択性緘黙の疫学

正確な疫学データは十分に収集されていませんが、一般的に、男女1:2または1:3で女性に多く見られます。また、選択性緘黙は全世界的に広く分布していますが、文化的背景や社会的環境によって発生率が異なるとされています。

児童期に発症することが多く、3歳前後から発症しピークは5歳未満とされていて年齢とともに改善される例もありますが、多くは適応が不良のままで成人期になっても慢性経過しているケースがあります。
有病率については、データが限られているため確定的な数字はありませんが、0.2 〜0.5%以下といわれます。
選択性緘黙は周りに迷惑をかけないことや、コミュニケーションが普通にできているとみなされ、選択性緘黙と診断されない場合も多いとされています。

選択性緘黙は原因が不明ですが、発達障害のように遺伝的な要因や脳の発達にも関連していて、両親の一方、あるいは両方が緘黙、または無口などの内向的な性格である場合も関係を認めています。
また、片親や施設などの養育の環境や転居などの安定した居場所を失うような生育史上も関与しています。
その他、恥ずかしがりやや、引っ込み思案などの気質を有する不安症との共通性があるともいわれています。このように原因は多因性であると考えられています。

トラウマ性緘黙

選択性緘黙は、通常、幼児期や学童期に発症するとされています。しかし、稀に、成人期以降に急に症状が現れることがあります。このような場合、次のような要因が関与している可能性があります。

心的外傷

成人期以降に現れる場合、緊張や不安、恐怖心などの精神症状が伴う心的外傷に晒されたことや、災害や事故などの強いショック体験の後にあらゆる場面で急に離せなくなることがあります。また、過去に経験した心的外傷などがトリガーとなっている可能性もあります。

社会的ストレス

新しい環境や職場での人間関係の構築や維持が困難になるような、精神的ストレスなどが原因で発症することがあります。

全緘黙

全寡黙症は、家庭を含むすべての生活場面で発話ができなくなり、次のようなことが特徴とされます。

発話ができない

言葉を発することができないため、コミュニケーションが困難になります。

音声を出すことができない

言葉を発するだけでなく音を出すこともできないことがあります。たとえば、咳き込んだり、くしゃみをしたり、笑ったりすることにも影響する場合があります。

声を出すための身体的な問題がない

喉や声帯に問題がある場合は、発話が不自由になることがありますが、全寡黙症は、声帯や喉に異常がなくても発話ができない状態が続きます。

選択性緘黙から全緘黙になる場合

選択性緘黙が原因で社交的な場面で話すことができないことによって、人前での発言ができなくなり、自分の意見を伝えることができなくなり緘黙の範囲が広がることがあります。

心理療法

選択性緘黙は、社交不安障害の一種であり社交的な状況で話すことができないという特徴があります。この症状を改善するために、心理療法が一般的に使用されます。次は、選択性緘黙の心理療法のいくつかの例です。

  • 認知行動療法(CBT)
    認知行動療法は、選択性緘黙の治療に有効な心理療法の一つで、自分の思考や感情、行動を変えることを学びます。CBTは、選択性緘黙の原因とも思われる認知的、行動的、情動的な問題を取り扱います。治療の目標は、患者が自信を持って自分を表現できるようにすることです。
  • 心理的な訓練
    社交的な状況に慣れるのを助けるために使用されます。訓練には、リラックスした状態を作り出す方法、公共の場で話すことに慣れる方法、目標を設定し達成するためのスキル、コミュニケーションスキルなどになります。この種の訓練は、患者の自己効力感を高め、社交的な状況での自信をつけていくことです。
  • 心理的サポート
    社交的な状況に対処するために必要な自己信頼心や自己受容感を高めることがで、療法士とのセッションやグループセラピーで、自分自身についての考えを共有し、自己受容感を高めることができます。また、心理的サポートは、患者が症状を克服し、適切なソーシャルスキルを身に付けるのを助けます。

言語療法や聴覚療法

選択性緘黙は、話すことができないという症状がありますが、言語療法や聴覚療法は、この症状を改善するための効果的な治療法の一つです。次は、選択性緘黙の言語療法や聴覚療法のいくつかの例です。

  • 発声練習
    発声練習では、音声発話練習を通じて、自信を持って話すことができるようにします。練習には、発声練習、音声発話練習、音声抑制練習、音声モニタリング練習などです。これらの練習を繰り返すことで、患者は自己表現に自信を持ち、社交的な状況で話すことができるようになります。
  • ロールプレイ
    社交的な状況において話すことができるようにするための方法の一つです。練習には、シチュエーションに応じた役割を演じ、相手とのコミュニケーションを練習します。ロールプレイ練習は、患者が自己表現に自信を持つことを助け、社交的な状況で話すことができるようになることが期待されます。
  • 聴覚療法
    自分の声を聞くことを通じて、自己表現に自信を持つことを助ける方法の一つです。療法には、音声録音、音声再生、音声解析などです。患者は、自分の音声を録音し、再生して、どのように聞こえるのかを理解していきます。これにより、自己受容感を高め、自己表現に自信を持つことができるようになります。
  • 言語療法
    コミュニケーションスキルを向上させるために、語彙や文法、発音などの言語能力を改善するためです。言語療法は、音声言語療法、筆記言語療法、語彙療法、文法療法、会話療法などの方法をおこないます。これらの療法は、患者が自信を持って話すことができるようになるために、コミュニケーションスキルを向上させます。

選択性緘黙の概念と診断:ICD-11 Mental, Behavioral and Neurodevelopmental Disorders
選択性緘黙の疫学:American Journal of Speech-Language Pathologyの研究(2007)
選択性緘黙の治療法:American Journal of Speech-Language Pathologyの研究(2007)、Cognitive Behaviour Therapyの研究(2017)
全緘黙の症状:

  • Encyclopedia of Clinical Neuropsychology, 2011
  • Communication Disorders Quarterly, 2017
  • Seminars in Speech and Language, 2015
DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル 高橋三郎・大野裕監修/2021医学書院標準精神 尾崎紀夫・三村將・水野雅文・村井俊哉/医学書院
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