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認知行動療法のアセスメントシートをワークで作成

目次

認知行動療法にはバイアスを検証するために自己を客観視するアセスメントが重要な役割となります。記載例に基づいて8つの項目を外在化するアセスメントシートのワーク練習をします。ワーク№2

認知行動療法には問題とする出来事から認知、行動に関わる自己を客観視し、バイアスのない認知で捉えるための基本となるアセスメントが重要となります。最終的には出来事や状態を鮮明に映し出し、広く評価や分析することで問題を軽くしたり、新たな認知の捉え方を発見することができます。これにはストレッサー(出来事)、早期不適応スキーマの認知、自動思考、気分・感情、行動、ネガティブなコーピングを外在化することで歪んだ自己の認知を理解します。そして、自己の体験をメタ認知的視点やマインドフルネス(もう一人の自分として客観的に眺める)的にセルフモニタリングしていきます。そのことで悪循環を維持している認知と行動から、解消できるポイントや問題の突破口が見えてきます。

ここでは、
❶ストレッサー(環境・出来事・状況・対人関係)
❷自動思考(浅いレベルの認知)
❸早期不適応スキーマ(深いレベルの認知)
 認知の歪み・偏り、認知のバイアス
❹気分・感情
❺行動
❻身体反応
❼コーピング(意識的対処)
❽ネガティブなコーピング(無意識的対処)
の8つの項目を外在化するアセスメントのワークの練習をします。最終的には、一人でチャレンジできる認知行動療法の認知再構成法と問題解決法を次からの章で取り組めるようになります。

中にはアセスメントを外在化することによって、嘘のように心が晴れて問題としていた出来事を客観的に捉えられて新たな行動に移れる方もいます。

このページを含め、心理的な知識の情報発信と疑問をテーマに作成しています。メンタルルームでは、「生きづらさ」のカウンセリングや話し相手、愚痴聴きなどから精神疾患までメンタルの悩みや心理のご相談を対面にて3時間無料で行っています。

ワークは№1・№2・№3・№4と内容が続いているため、№1のコラム法から順序にワークすることを奨励します。

認知行動療法CBTワーク・アセスメントシート記載例/ワーク№2

❶ストレッサー(環境・出来事・状況・対人関係)の記載例

ストレッサー(環境・出来事・状況・対人関係)
業務部:Aさんの例  
12/8(水)10:15にお客様から新発売されたオーブンレンジについての説明の問い合わせがあった。

・新商品のオーブンレンジは機能が多く、自分が担当していなくて質問には答えられなかった。また、新商品の担当者が午前中は外出していたため電話を繋ぐことが出来なかった。
同じ会社なのに使い方がわからないのかとひどく怒られたが、13:00であれば担当者がいると言って電話を切った。私はその後、怒られた余韻で無意識に2~3分の間ボーとしてしまった。  

・13:30お客様から再電話があった。担当者には連絡していたのにちょうど席を外していて、探すために少し待たせてしまい、「待たせておいてこのざまかと」今度は怖いくらいに怒られた。
「あなたは今日の午前中に、13時なら担当者がいると言ったよね」「お前だって同じ会社の人間なんだから、勉強しておくの普通だろ、わからないでは済まされないぞ」と10分以上、怒られっぱなしだった。
謝り続けて電話を切れたが、大きく落ち込んで1週間たった今も落ち込み度は解消できていない。

その状況を見ていた他の部署の人は、「あなたもオーブンレンジの担当者になっているんだよ」と、言われたが担当者からは聞いていなかった。
Point 最近の不快な感情を伴う出来事、例えば辛い気持ちになったときの具体的な出来事を書きます。
  できるだけ具体的に(情景がありありと浮かぶくらい)特定(断片)の時間5W1H(いつ、どこで、誰と、何を、なぜ、どのように  

❷自動思考(浅いレベルの認知)の記載例

自動思考(浅いレベルの認知)
業務部Aさんの例 :

・「担当者とは、普段から会話が少なかったせいか遠慮がちに報告していた。もっと強く事務室にいるように言えばよかったのに、言わなかった」(90%)
・「相談もなく新商品の担当にされていた上に、周りは担当者だと思っていたから非難されていたと思う」(90%)

◎・「今は私の電話での対応がわるくて怒られたのだと思う」(90%)

・「いつもちょっとしたことが出来なくて、仕事がうまくいかない」(70%)
・「同期が辞めてしまったので一人きりだ、以前は同期に相談出来たのに」(70%)
・「人員不足のままでは、これから先も自分に負担がかかることが多くなるのは間違いない」(60%)
・「上司も先輩も格上と感じ、怖い存在であるために意見や相談事ができないで困っている」(80%)
そのときに頭に浮かんだ考えやイメージ疑問形は言い切りのかたちに変えて書きます。
確信度 全く感じない0%~最大100%で表します。内容ではなく、気分・感情や行動に影響大の主犯格、循環のなかで悪さをしている(ホットな思考)自動思考に◎をつけます。
下記の認知のかたよりの例、またはスキーマ表を参考にしてみても構いません。
特徴的な言葉
・背景にあるパターン化された考え方 「いつも…」「絶対に…」「また…」「どうせ…」
・思い込みや凝り固まった完全主義 「…ねばならない」「…べきである」「…べきでない」
・条件付け思考 「…ならば、…だ」「…なのだから、…に違いない」
・ステレオタイプやレッテルが背後にある非現実的な認知 「男だから…べき」「女は…でなければ」「自分は負け組だから…「負け犬の人生は…」

認知のかたよりに注目する 私たちは「認知のかたより(認知のアンバランス)」と呼ばれる非機能的な考え方のパターンに陥っています。

❸早期不適応スキーマまたは認知バイアス(深いレベルの認知)の記載例

早期不適応スキーマ(深いレベルの認知)信念・価値観・ルール
または、認知の歪み、偏りのバイアス
業務部Aさんの例  :
早期不適応スキーマの場合
・失敗のスキーマ: 「自分のしてきたことは失敗ばかりだ」「何をやっても失敗するだろう」と感じ、自分を失敗者だと思っている。
・否定/悲観スキーマ :人生のネガティブな面ばかりを過大に注目し、ポジティブな面を無視する。

認知の歪み・偏りのバイアスの場合 
・自責思考「問題が起きた原因を自らの責任や落ち度があると捉える」
・感情的決めつけ「自分の感情を根拠に真実の証明や決めつけをしてしまう」
・選択的抽象化「悪い部分にだけに目が行ってしまい、良い部分は除外して物事を捉える」
Point スキーマ:別に用意してある「スキーマ療法・ひとりでチャレンジ」のスキーマ質問集計結果を出し、18の早期不適応的スキーマの概説と解説を参考に、ストレッサーに対して活性化されたと思われるスキーマ名とその特徴を外在化します。
認知の歪み:偏りのバイアス:別に用意してあるパターン30例のリストから思い当たる認知の歪みを当てはめます。 

気分・感情の記載例

気分・感情
業務部Aさんの例 : 

情けない(90%)辛い(80%)孤独感(70%)緊張(70%)怖い(70%)  
  確信度 全く感じない0%~最大100%で表す (例)イライラ(70%)、焦り(65%)、悲しい(90%)
Point ・❷の◎をつけたホットな自動思考今は私の電話での対応がわるくて怒られたのだと思うの影響がないと思われる気分・感情があったら二重線=で消します  
※次の「気分・感情」の表3種は、ストレスの際の気分・感情表現の参考になります。  

気分・感情表現例

NVC ジャパン・ネットワーク:感情とニーズのリスト

❺行動 ❻身体反応 ❼コーピング(意識的対処)の記載例

行動
業務部Aさんの例 :

・「電話口で頭を下げて申し訳ございません」と何度も誤った
・ボーとした
・5分以上トイレの個室で泣いた
・その後も10分間位頭が回らなくなり、モードが切り替わらず仕事が進まなくなった
ストレッサーに対する行動(ネガティブな行動が多い) 外から見てわかる動作、振る舞い、反応
行動分野に現れる症状(不安を緩和するために行われる行為・防衛機制)

・周りや自分をコントロールしようとする行動(統制行動) ・じっと我慢する行動(我慢行動) ・現実や苦しみを回避しようとする行動(逃避行動)
身体反応
業務部Aさんの例:

・ドキドキ、涙が出た身体や顔が熱くなった ・何もできなくなり、力も入らない
身体の内部や表面の生理的な反応  
身体分野に現れる問題
睡眠問題(眠れない、寝すぎる)・摂食問題(食べられない、食べすぎる)・緊張(ドキドキする) ・疲労(だるい、疲れる)・体力低下・身体化・パニック・広場恐怖
コーピング(対処):認知的・行動的
❼業務部Aさんの例:

駅近くの公園でボーとした(行動的) 明日、友人を誘ってご飯に行こうと考えた(認知的) 夫に話を聞いてもらった(行動的)
実際のコーピング(対処)を書き出します。
※認知的コーピング(頭の中での思いや考える助け)と行動的コーピング(実際の動きによる助け)ーは心理的危機対応プラン「PCOP]も参考にしてください。

❽ネガティブなコーピング(無意識的対処)の記載例

ストレッサーに発動するネガティブなコーピングの外在化


【逃避/離脱仕事は忙しかったが、トイレの個室にこもった。  
【合理化】「私は悪くない」「お客様がひどすぎる」「担当者が約束を守らなかった」「担当者にされていたのを知らなかった」「私が怒られるのは理不尽だ」と考えてしまった。  
【反動形成】先輩の納得できない行動を受けながらも、ダメージがなかったようにニコニコしながら対応している。  
ストレッサーを軽減するために無意識に発動してしまうネガティブなコーピング(試み)に見当をつけ外在化してみます。
※ストレス要因を無意識にどう受け止め、どう反応しているのか「認知の歪み/認知バイアス」または「心理的防衛機制」を参考に、あくまでも見当で構いませんので書き出してみます。気付かなければ記入の必要はありません。

※ネガティブなコーピングとは、問題に対して逃避するために行う深い飲酒やオーバードーズ、リストカットなどが上げられますが、ここでは心理的無意識対処に注目しています。

1回目・アセスメントの外在化

1回目アセスメントは、➊~❽までの外在化(ワーク後アセスメント内容を集約し、ホットな内容・強度の強いものなどをアセスメントシートに記載)します。

1回目アセスメントシート

参考web 

・厚生労働省 心の健康
https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/kokoro/dl/01.pdf

・厚生労働省 心の耳

https://kokoro.mhlw.go.jp/

参考書籍

・伊藤絵美:認知療法・認知行動療法カウンセリング 初級ワークショップ/星和書店

・認知行動療法を始める人のために:デボラ・ロス・レドリー、ブライアン・P・マルクス、リチャード・G・ハイムバーグ、井上和臣・黒沢麻美訳/星和書店

・自我と防衛;Aフロイト著、外林大作訳

・伊藤絵美の認知行動療法入門講義上・下/公益法人矯正協会

・精神療法の基本 支持から認知行動療法まで:堀越勝・野村敏明/医学書院

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