認知行動療法の問題解決法は出来事の問題点を自己の認知と行動に焦点を当て解決、改善の策を見つけ出します。アサーショントレーニングは相互的な人間関係を築きます。ワーク№4
自己の抱える社会、生活上の問題(困りごと)を自己が解決できるようになるための一連の認知、および行動のプロセスです。認知と行動に焦点をあて、自分の行動プランを作っていく問題解決のための技法ということになります。大切なことは問題を解決することではなく、問題解決にトライすること、それを何回も続けることによって、問題解決の考え方とやり方を自己が身につけることです。
ワーク№1❶~❽でアセスメントシートを作成し、ワーク№2❾~⓫で認知再構成法のワークをしてきました。これらのワークで自己の認知である自動思考に変化が現れて、生きづらさも楽になり始めていることだと思います。今回のワーク№3では社会環境で起こる出来事の問題を解決するための認知行動療法の問題解決法となります。
このページを含め、心理的な知識の情報発信と疑問をテーマに作成しています。メンタルルームでは、「生きづらさ」のカウンセリングや話し相手、愚痴聴きなどから精神疾患までメンタルの悩みや心理のご相談を対面にて3時間無料で行っています。
問題解決法/ワーク№4
問題解決法の手順
- 何が問題かを自動思考と行動に焦点をあて自己同定⇒はっきりさせます。
-
問題状況を具体的に把握します。(自分、人間関係、出来事、状況、その他)
- 今ある問題を書き出してみます。
-
まず何が問題なのか、困っていることを自己同定させます。今ある問題とみなす部分をリストに書き出してみます。
感情に押し流されて問題が見えなくなりがちですが、「悪循環を維持している【認知と行動】のポイントはどこか。
解消するための突破口はどこか。ここだったら自分を救うための希望箇所か」というように自動思考と行動面に焦点をあて、悪循環を解消できそうな問題を書き出すことで冷静に整理できます。
あくまでも変えられるのは自動思考と行動だけです。次に何個か問題が見つかったら関係するものを矢印でつないでみてください。
どの問題が重要なのかわかってきますので、さらに解決見込み度を0~100%で表します。※本当に全部自分が悪いのか?もう一度考えてみます。
問題解決に取りかかる前に・・・
まず、実際に問題に取り組む前に「どうして自分だけがこんな問題に当たり、抱え込んでしまうのか」などと考えているかもしれません。悪循環に入っている場合、次のように考えてしまいますのでポジティブな言葉を自分にかけてみてください。
【生きていれば、何らかの問題は生じるものだ。問題があること自体を受け入れよう】 【問題を「悩む」のではなく、「何らかの解決を試みるべき状況」と捉えてみよう】 | 1.「大変なことが起きてしまった」「どうして自分だけがこんな問題を抱え込んでしまうのか…」 ⇒生活していればいいこともあるし、問題に直面することも特別なことではありません。
【要因を一つに決めつけず、さまざまな要因を見つけよう】 【大きな問題は小分けにしてみよう。小さな問題に分解して、突破口を見つけよう】 | 2.「自分では解決できることではない」 ⇒「思い込み」です。多くの問題は解決可能です。
【どんなことを自分に言えば良いのだろうか(認知再構成法での学習済)記入してみよう】 | 3.「辛くて仕方がない」 ⇒自動思考からくる感情です。
【できることから手をつけよう。「実験」としてチャレンジしてみよう。】 | 4.「まもなく大きな事件が起きてしまう」 ⇒冷静さも必要です。いちど立ち止まって考えます。
5.「今すぐ解決しないと取り返しがつかないかもしれない」 ⇒焦っても何もはじまりません。問題解決には時間を要します。 【「解決できるのか」ではなく、「対処できそうなこと」「できないこと」を見極めよう】 |
自己教示法で自分に言い聞かせてみることも役に立ちます。 |
・ 自分にはできるから、ゆっくりでいい一つずつ気軽にやってみよう。 ・この問題は挑戦の機会だし、成長する良い機会だ 。 ・この問題は解決できなくても問題がはっきりすれば先が見えてくる。など… |
・アセスメントシートにより、実際に起きた出来事ストレッサー➊と初期の自動思考❷と行動❺をもう一度振り返ります。
ストレッサー(環境・出来事・状況・対人関係) |
❶業務部:Aさんの例 12/8(水)10:15にお客様から新発売されたオーブンレンジについての説明の問い合わせがあった。 ・新商品のオーブンレンジは機能が多く、自分が担当していなくて質問には答えられなかった。また、新商品の担当者が午前中は外出していたため電話を繋ぐことが出来なかった。 同じ会社なのに使い方がわからないのかとひどく怒られたが、13:00であれば担当者がいると言って電話を切った。私はその後、怒られた余韻で無意識に2~3分の間ボーとしてしまった。 ・13:30お客様から再電話があった。担当者には連絡していたのにちょうど席を外していて、探すために少し待たせてしまい、「待たせておいてこのざまかと」今度は怖いくらいに怒られた。 「あなたは今日の午前中に、13時なら担当者がいると言ったよね」「お前だって同じ会社の人間なんだから、勉強しておくの普通だろ、わからないでは済まされないぞ」と10分以上、怒られっぱなしだった。 謝り続けて電話を切れたが、大きく落ち込んで1週間たった今も落ち込み度は解消できていない。 その状況を見ていた他の部署の人は、「あなたもオーブンレンジの担当者になっているんだよ」と、言われたが担当者からは聞いていなかった。 |
自動思考(浅いレベルの認知) |
❷業務部Aさんの例 : 「担当者とは、普段から会話が少なかったせいか遠慮がちに報告していた。もっと強く事務室にいるように言えばよかったのに、言わなかった」(90%) 「相談もなく新商品の担当にされていた上に、周りは担当者だと思っていたから非難されていたと思う」(90%) ◎「今は私の電話での対応がわるくて怒られたのだと思う」(90%) 「いつもちょっとしたことが出来なくて、仕事がうまくいかない」(70%) 「同期が辞めてしまったので一人きりだ、以前は同期に相談出来たのに」(70%) 「人員不足のままでは、これから先も自分に負担がかかることが多くなるのは間違いない」(60%) 「上司も先輩も格上と感じ、怖い存在であるために意見や相談事ができないで困っている」(80%) |
行動 |
❺業務部Aさんの例 : ・「電話口で頭を下げて申し訳ございません」と何度も誤った ・ボーとした ・5分以上トイレの個室で泣いた ・その後も10分間位頭が回らなくなり、モードが切り替わらず仕事が進まなくなった |
⓬「いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように」具体的な問題
⓬どの問題を解決するのか決めます。
もう一度具体的に書いてみます。どの問題を解決するのかを%で決定し、◎をつけます。あまりにも大きな問題やすぐには解決できない問題は選べません。ここでは解決できなければ意味がなくなります。
業務部Aさんの例であるストレッサー(環境・出来事・状況・対人関係)をアセスメントにより、自己同定しました。そのうえで【認知再構成法】にて不適応的認知の自動思考を適応的寄りに捉えることができました。以前の偏りが楽になり、多少なりとも過ごしやすくはなっていると思います。当然ながら、問題リストの評価点数%も変わってきていると思いますが、もう一歩良好な行動の変化、問題の解決を望む方はここから問題解決法のワークをしていきます。それでは認知行動療法の【問題解決法】を始めます。
問題の同定(正体の特定) | |
⓬ 具体的な問題リスト | % |
「担当の先輩と普段から会話が少なかったせいか、遠慮がちに報告していた。もっと強く事務室にいるように言えばよかったのに、言わなかった」 | 80% |
「相談もなく新商品の担当にされていた上に、周りは担当者だと思っていたから非難されていたと思う」 | 80% |
「私の対応がわるかったのかな…といろいろ思う」 | 60% |
「人員不足のままでは、これから先も自分に負担がかかることが多くなるのは間違いない」◎ | 90% |
「上司も先輩も格上と感じ、怖い存在であるために意見や相談事ができないで困っている」◎ | 90% |
悪循環のコーピング(対処)ができるのは、認知(自動思考)と行動だけです。 認知と行動に焦点を絞り、どこの部分を問題とみなすか、解消できるポイントはどこにあるのか言語化していきます。 ポイントは解決できないことを問題としても意味がないということです。 ※解決見込み度を0~100%で表します。 |
⓭その問題をどうしたいのか、目標の設定
⓭その問題をどうしたいのか、目標を設定します。
ここでもあまりに不可能な問題は禁物です。実際にできそうなものを最大3個挙げてみてください。
⓭ 現実的な目標の設定 |
1⃣「人員不足のままでは、これから先も自分に負担がかかることが多くなるのは間違いない」 |
同僚が辞めてしまったことに対し、人材の補充を考えているのか上司に確認してみる。考えていないようであれば、発言がマイナスに取られないように納得できる理由をもとにお願いしてみる。(上司は普段から怖いと感じているので面と向かって言えるかどうか) |
2⃣「上司も先輩も格上と感じ、怖い存在であるために意見や相談事ができないで困っている」 |
先輩に対し、今回のトラブルの原因と対策についてのミーテイングを設けたい。ただし、先輩が悪い立場にならないような内容を考えて意思を伝えたい。(先輩が格上だと感じるので遠慮がちになりそうだ) |
⓮解決策を挙げる
⓮どんな解決策があるのか、できるだけ多く解決策を挙げます。
思いついたことを何でもよいので書き出します。それが良い方法かどうかは考える必要がありませんので、とにかく解決策と思われるものをできるだけ多く上げます。
その方法を行えばどのくらい問題が解決する可能性があるのか、リスクは何を考えらるか、メリットはどんな事かと検討します。
解決策の解決見込み度を%で表します。解決策に最も相応しいものに◎をつけます。
(例)解決策の利点と欠点を評価する。「人員不足で仕事量が多くなっている状況」
⓮解決策 | 利点 | 欠点 | 見込み度% |
残業を増やす | 確かに仕事は進む | これ以上の仕事量は無理がある | 50% |
退職する | 気が楽になる | 簡単に次の仕事は見つからないと思う | 30% |
部長に相談する | 早急に求人募集を出し、その間は他部署から応援を呼んでくれるかもしれない | できない君というレッテルを貼られ役立たずに思われるかもしれない | 50% |
先輩に相談する | 先輩も忙しいので手伝いはしてくれないと思うが、 気持ちを理解してくれて部長に話してくれるかもしれない。 | 理解されない場合は、ますます会話をしずらくなりそうだ | ◎80% |
◎同僚が辞めた後、人材の補充を考えているのか部長に確認してみる。考えていないようであれば、補充発言がマイナスに取られないように、しかも納得できる理由をもとにお願いしてみる。(部長は普段から怖いと感じているので、面と向かって言えるかどうか)
⓮解決策 | メリット | リスク | 見込み度% |
直接、上司には言えないと思うので、先輩にそれとなく補充の情報を確認する。無ければ補充は必要だという旨を伝える。 | 先輩をランチに誘う。ランチでは退職した同僚の話題を餌にして様子をみることができる。 | 仕事を軽減したいのかと怠け者にみられる可能性がある。そして、部長に告げ口される可能性もある。 | 60% |
部長に直接人材補充の考えはあるのか確認する。同僚が退職してから残業が多くなり、休日出勤もしている旨を上司に誤解されないように話してみる。 | 良くとられるのであれば、仕事を真剣に考えているとみてくれるかもしれない。 | 悪くとられると、頑張りが足りないと低評価されるかも レッテルを貼られたら今後に響くかもしれない。 | 50% |
「先輩に対し、今回のトラブルの原因と対策についてのミーテイングを設けたい。ただし、先輩が悪い立場にならないような内容を考えて意思を伝えたい」。(先輩が格上だと感じるので遠慮がちになりそうだ)
⓮解決策 | メリット | リスク | 見込み度% |
ランチ時間に、今回のトラブルの発端は、お客様に対して自分の対応が悪かったという名目で会話する。 | 実際のトラブルは先輩がお客様からの連絡を受けなかった事が原因なので、私の話は優しく聞いてくれるかも。 | 私の普段の電話対応は合格点とは言えないので、力不足なのだと突っ込まれたらショックを受けるかも。 | ◎90% 先輩に人員補充のことも絡めて話ができる。 |
勝手に担当者にされていたことを利用する。休憩中に「手伝いは嫌ではないので、今後は声をかけてください」と言うことのついでに…。 | 今回の断りなしに担当者にされていた件について、先輩から謝りがあってもいいはずなので、恩を売ることができるかも。 | 先輩の仕事や行動を暗黙で責めているように捉えられるかも | 70% |
【解決策】は、先輩をランチに誘い人材補充の話をするが90%となりました。
※◎は総体的な場面の情景とリスクの軽さで判断しています。
⓯アサーショントレーニング~⓴行動結果の評価については2⃣ページ目をご覧ください。