社交不安症の不安や恐怖の認知と赤面や動悸、大量の汗など生理的症状を認知行動療法で改善していきます。ひとりでできるワークを紹介しています。
社交不安障害の認知行動療法
認知行動療法
恐怖感や不安感にとらわれている思考パターン(浅い認知)や、その人の信念・ルールなどこころの中核にあるスキーマ(深い認知)を知ることに加え、正することで回避行動を軽減させる療法です。
社交不安が維持される「悪循環」とは
自己注目や自意識などに情報に注意が偏ってしまう注意のバイアス(自己のモニタリングに注意が使われてしまう)
- 身体の反応や不安感情による震えや不安を感じている姿が他者からの見た目の否定的な自己イメージを形成してしまう。
- 恐れる結果を防ごうと過剰に安全行動を続けることで不安が持続し、偏った認知が強化される。
- 安全行動は最悪な事態を防ぐために用いられるが、反証の可能性(偏りの確認)の機会を失い不安が持続する。そのモニタリングにより自己注目が高まり、さらに安全行動を行う。それが他者には奇妙な行動に見られるだけではなく、一層自己の不安症状に気づきやすくなってしまうという問題に繋がっている。
ケースフォーミュレーション図
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安全行動と自己注目の検討ワーク
注意シフトトレーニングワーク
行動実験ワーク
いままで安全行動や回避を続けてきたことで、恐れている結果が実際に起こるのかを検証する機会を失ってきました。そこで実際の行動実験ワークで自己の持っている特定の予想(認知)の評価モードやコミュニケーションモードも取り入れての実験をします。この実験により、自己の信念を反証するための証拠を収集でき、自己がありのままでも他者に受け入れられるという気づきを得ることができます。
最悪な事態に対する他者解釈の検証ワーク
社交場面の出来事前後で繰り返しやることの検討(予期不安や反芻)
社交場面に対する前後で、繰り返し考えること、やってしまうことのデメリットに気づく |
通常の社交場面では、自分がどのくらい上手く振る舞えたとか、他者から見てどうだったかということについて、はっきりとしたフィードバックを受けることは滅多にない。このため、社会的な交流が終わった後でくよくよ考えるのである。後から考えることで、否定的な自己イメージはさらに悪化し、不安はさらに高まることになる。また、現実には失敗に関する社会的な損失は殆ど存在しない事なのに、誤った証拠を記憶してしまうのである(感情のバイアスにより過誤記憶が形成される)。 |
典型的な自動思考・安全行動・信念
典型的な(偏り)自動思考リスト
典型的な安全行動リスト
典型的な否定的(非機能的)信念リスト
否定的な自己イメージの修正ワーク(ビデオフィードバック)
安全行動をする場合 | 安全行動をしない場合 |
行動実験リストワーク
社交不安の恐怖状況になりそうな行動を実験してみます。例えば、わざと手を震わせて飲み物をこぼしたり、どもってみるや目立つ行動をしてみるようなことを書き出し、実際に実験、観察してみます。予想は、その確信度は、安全行動をせず、予想と現実の結果をワークしてみます。
自己イメージと結びつく記憶の書き出しセッション
社交場面の恐怖がトラウマチックになり、フラッシュバックされ現在の自分に起こるように感じることがあります。それは否定的な信念や思い込みの形成につながっています。そこで、認知行動療法をセッション用紙のワークでトラウマ記憶を更新します。
- 認知再構成を行う(1時間程度)
- イメージの書き換えを行う
- イメージ書き換え終了後の再評価を行う
再発予防シート
ワークを通して獲得した技術や学び、気づきを適切にフィードバックすることで社交不安の進行と再発を予防できます。その上で他の問題にも般化できるよう操作することが重要となります。
参考web
Stein MB&Stein DJ、厚生労働省認知行動療法マニュアルより
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/0000113841.pdf
参考文献
こころの医学事典/日本評論
不安障害診療のすべて:塩入俊樹・松永寿人/医学書院
DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル 高橋三郎・大野裕監修/医学書院標準精神 尾崎紀夫・三村將・水野雅文・村井俊哉/医学書院
カプラン臨床精神医学テキスト:監修 井上令一/メディカルサイエンスインターナショナル
M.I.N.I. 社交不安障害診断―精神疾患簡易構造化面接法, P32, 星和書店より抜粋