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スキーマ療法の知識、概念、起源、定義など視点を変えて再度学習

目次

スキーマ療法の基本がわかる!中核的感情欲求〜早期不適応的スキーマ〜非機能的コーピングスタイル〜スキーマモードの理解とスキーマ療法の介入の知識は必読!

スキーマ療法の概念

スキーマ療法は、心理療法の一種であり、個人の問題や苦悩の根源にある心理的スキーマ(構造化された信念や思考、感情、行動のパターン)を理解し、変容を促すことを目的としています。

スキーマとは、過去の経験から形成された感情や信念のパターンのことで、人はこれらのスキーマに基づいて行動し、自分自身や他人との関係を形成します。しかし、時にはこれらのスキーマが適切でなく、個人の問題や苦悩の原因となってしまうことがあります。

スキーマと呼ばれる無意識レベルの信念や思考のパターンは幼児期に作られると考えられていて、幼児期に経験した出来事や環境との相互作用によって形成されます。例えば、保護者の反応や、安全や危険な状況、信頼や拒絶の経験などが、スキーマの形成に影響を与えると考えられています。特に幼児期の経験は、後の人生において、個人の思考や行動に影響を与えることになります。スキーマは、自分の意識的では認識されず、感情や行動に反映されることが多いため、自己観察や他者からのフィードバックが必要とされます。

まとめると、スキーマとは、幼児期の過去の体験や関係性が形成した、無意識の中心的な信念や思考のパターンであり、個人の行動や感情、認知、対人関係に影響を与えるとされています。スキーマは、自分や他人、世界に対する信念や期待、自己評価や価値観、そして過去の出来事に関する記憶など、様々な要素から構成されています。スキーマは、本人自身が認識できるものではなく、感情や行動の中で現れるものということになります。

スキーマ療法は、このような問題の原因となるスキーマを特定し、それらを変容させることで、個人の問題や苦悩を解決することを目的としています。クライエントと治療者が共同で、クライエントのスキーマを探求し、それが問題行動や苦痛につながっていることを理解します。その後、クライエントにとって不適応的スキーマに対する対処方法を学ぶことを目指します。

スキーマ療法では、様々な技法が使用されます。たとえば、クライエントのスキーマを特定するために、自己評価テストや質問紙の使用、感情的な記憶を再体験する体験的技法、新しい行動パターンを学ぶ行動的技法、治療者との関係を通じて安全な環境を提供する治療的再養育などがあります。

スキーマ療法は、幅広い精神的問題に対して効果があるとされていて、例えば、うつ病、不安障害、摂食障害、パーソナリティ障害、トラウマ後ストレス障害なども挙げられます。

統合的な心理療法

スキーマ療法は、カナダの心理学者ジェフリー・ヤングによって開発された統合的な心理療法です。ヤングは、境界性パーソナリティ障害(BPD)などの難治性の心理疾患を治療するために、アタッチメント理論、ゲシュタルト療法、力動的アプローチなどの理論を組み合わせたスキーマ療法を開発しました。

スキーマ療法のアプローチは、認知行動療法(CBT)と似ていますが、個人のスキーマと呼ばれる深層心理的な信念やフレームワークに焦点を当てています。スキーマは、過去の体験や出来事、そして周囲の人々との関係から形成され、現在の行動や感情、思考に影響を与えています。スキーマ療法は、個人がスキーマにとらわれないように、新しいスキルや認知的な再構築の提供をしていきます。

スキーマ療法は、アタッチメント理論を含めた多くの理論を組み合わせているため、治療者は個人の内的作業に焦点を当てつつ、対人関係や社会的な要因を考慮することをします。これにより、深層心理に影響を与える外的要因に対してより適切に対処できるようになります。また、スキーマ療法は、ゲシュタルト療法や力動的アプローチのような心理療法から受け継いだ、体験に基づく方法を用いて、自己理解を深めることができるようになります。

スキーマ療法は、認知行動療法と比較して、より深いレベルの問題に対処することができるため、過去のトラウマや負の体験から回復するために、より包括的で効果的な方法を提供することができます。

スキーマ療法の理論の流れを説明します。

STEP
幼少期の経験と中核的感情欲求

私たちは幼少期に安全性、愛情、尊重、自己表現、自己肯定などの中核的感情欲求を持っています。これらの欲求が満たされることで、健全な発達を促進し、心理的な健康を維持します。

STEP
早期不適応的スキーマの形成

幼少期に中核的感情欲求が満たされないことで、早期不適応的スキーマが形成される可能性が高くなります。早期不適応的スキーマは、特定のテーマやパターンに関連した無意識の信念や思考のパターンです。これらのスキーマは、自己や他者への信頼や安全性、価値感などに関する負の信念や感情を含んでおり、心理的な苦しみや不適応を引き起こすことがあります。

STEP
非機能的コーピングスタイルの反応

早期不適応的スキーマが活性化すると、非機能的なコーピングスタイルが現れます。これは、スキーマに基づいたパターン化された反応や行動のことであり、一般的には自己制約、回避、攻撃的な反応などです。これらの非機能的なコーピングスタイルは、スキーマの保護や苦痛からの逃避を試みるものですが、多くは問題を悪化させる結果となります。

STEP
スキーマモードの活性化

スキーマと非機能的なコーピングスタイルの相互作用により、スキーマモードが活性化します。スキーマモードは、特定の状況やトリガーに反応して一連の関連する思考、感情、行動が現れる状態です。スキーマモードは、クライエントの感情や行動の特定の側面に焦点を当て、そのパターンや反応を理解する上で役立ちます。

STEP
スキーマ療法の介入

スキーマ療法は、これらのスキーマモードと非機能的なコーピングスタイルにアプローチするための治療戦略を提供します。治療は、次のステップに基づいて行われます。

  • スキーマの認識と評価
    • クライエントとセラピストは、クライエントの早期不適応的スキーマを明確に認識し、それらのスキーマがどのようにクライエントの生活や関係に影響を与えているかを理解します。
  • スキーマの変容
    • クライエントは、早期不適応的スキーマを理解し、それに対する対処方法を学ぶための教育や洞察を得ます。クライエントは、新たな健全な信念や視点を取り入れ、早期不適応的スキーマを変容させるための作業を行います。
  • コーピングスキルの開発
    • クライエントは、新しいコーピングスキルや適応的な戦略を学び、スキーマモードに対処するための手段を身につけます。これには、ストレス管理技術、リラクゼーション法、認知再構築、行動実験などの技法が行われます。
  • 感情の探索と癒し
    • クライエントは、スキーマモードに関連する強い感情やトラウマを探求し、癒しのプロセスに取り組みます。感情の自己観察や感情調整の技法が使用されることもあります。
  • 健康な大人モードの強化
    • クライエントは、健康な大人モードを育成し、自己の中核的感情欲求を理解し、適切に対処する能力を強化します。このモードは、自己の客観的な観察者としての役割を果たし、健全な判断や自己管理を促進します。

発達心理学におけるスキーマ

発達心理学におけるスキーマは、情報処理理論に基づく概念で、環境から得た情報を組織化し、それに基づいて新しい情報を処理するための基盤となる認知構造です。

スキーマは、特定の対象や状況に関する知識や期待を持ち、その情報を処理するための枠組みを提供します。これにより、個人は情報を効率的に処理することができ、新しい情報を受け取った際にも自己の経験や知識に基づいて理解することができます。

スキーマは、個人が環境から得た情報を組織化するために使用されます。例えば、子どもが新しい単語を学ぶ場合、それを自己の語彙スキーマに追加することができます。これにより、子どもは新しい単語を効率的に処理し、より広範な文脈で使用することができます。

スキーマは、認知発達において重要な役割を果たしており、子どもが知識や経験を獲得するために必要な基盤となっています。スキーマは、子どもが成長するにつれて発達し、より複雑な認知構造を形成することができます。また、スキーマは、問題解決や意思決定のための重要な道具としても機能します。
これが、発達心理学におけるスキーマになります。

認知心理学におけるスキーマ

認知心理学におけるスキーマは、個人が情報を受け取り、処理するための基本的な認知構造です。スキーマは、環境から情報を受け取り、組織化し、解釈するためのフレームワークを提供します。このようにして、スキーマは、新しい情報を受け取った際にそれを処理し、理解するための基盤となります。

スキーマは、情報処理における重要な役割を果たしています。例えば、個人が新しい情報を受け取った場合、それが既存のスキーマに合致するかどうかを判断することができます。もし合致する場合、その情報を容易に理解することができます。しかし、もし情報が既存のスキーマに合致しない場合、新しいスキーマを形成する必要があります。

スキーマは、認知的なバイアスを形成することもあります。例えば、あるスキーマが特定のグループに対する負のステレオタイプを持っている場合、そのグループの個人に対する認知的なバイアスを生じる可能性があります。

また、スキーマは、情報の処理において自動化された処理を可能にするため、認知的な負荷を減らすことができます。これにより、個人はより効率的に情報を処理し、新しい情報を素早く理解することができます。

スキーマは、認知心理学において重要な概念であり、人間の認知プロセスを理解するための基盤となっています。スキーマは、個人が新しい情報を処理し、理解するために必要な基盤を提供するだけでなく、個人の行動や意思決定にも影響を与えています。

認知行動療法におけるスキーマ

認知行動療法におけるスキーマは、個人が特定の状況に対して抱く思考や信念のパターンを指します。スキーマは、過去の経験や環境に基づいて形成され、行動や感情、そして他人との関係性に影響を与えます。

スキーマは、時には認知的歪みを引き起こすことがあります。例えば、自分に対する厳しい評価をするスキーマを持っている場合、自分の失敗について過度に厳しく反応し、自分自身を過剰に非難する可能性があります。このような認知的歪みによって、自分自身や周囲の人々に対して過剰なプレッシャーや批判的な態度を取ることがあります。

認知行動療法では、スキーマを理解し、そのスキーマに基づく問題的な思考や行動を変えることを目的としています。具体的には、スキーマに基づく認知的歪みを明確にし、それを修正するための認知的再構築や問題解決の戦略を用いて、スキーマを改善することが求められます。

スキーマを改善することにより、より現実的な思考パターンを取り入れることができ、自分自身や他人に対するより良い関係を築くことができるようになります。また、適切なスキーマを形成することで、将来の問題やストレスに対処するための柔軟性と強さを身につけることができます。

スキーマ療法におけるスキーマ

スキーマ療法におけるスキーマとは、個人が持つ深層心理的な信念や心の枠組みのことを指します。これらのスキーマは、特に幼児期の過去の経験や環境に基づいて形成され、認知や感情、行動、人間関係に大きな影響を与えます。

スキーマは、非常に強固で抵抗力があり、自動的で無意識的に動作します。それゆえ、問題を抱えている場合、それらの問題を引き起こすスキーマを変えることが必要になる場合があります。

スキーマ療法では、特定の問題に関連したスキーマを特定し、それらのスキーマに基づく認知的歪みを修正することで、問題を改善することを目指します。また、スキーマを認識し、より現実的なスキーマに移行するための認知的再構築や問題解決の戦略を使用することがあります。

スキーマ療法では、さまざまな種類のスキーマが存在します。例えば、自己無価値感や無力感、過干渉的なスキーマ、不信感や疎外感などがあります。スキーマ療法では、これらのスキーマに焦点を当て、個人が持つ問題的な思考や行動に影響を与えることができるスキーマを特定し、それらのスキーマを修正することで問題を解決することを目指します。

スキーマ療法におけるスキーマの特性

早期不適応的スキーマの形成は、個人の生育環境や経験によって異なりますが、幼少期の経験が早期不適応的スキーマの発達に与える影響は重要なことです。スキーマ療法では、それらのスキーマが現在の問題や困難とどのように関連しているかを理解することに焦点を当てています。

早期不適応的スキーマは、無意識のレベルで働いており、個人の認知、感情、行動に影響を与えます。これらのスキーマは、自己や他者、世界に対する一貫した信念や思い込みを形成し、自己概念や人間関係、自己調整のパターンを形成しています。

早期不適応的スキーマは、次のような特性を持っています。

  • 固定的で一般化された信念
    • 早期不適応的スキーマは、個人の信念や思考のパターンを形成します。これらのスキーマは、一般的な信念として形成され、さまざまな状況や関係に適用されます。
  • 自動的な反応パターン
    • 早期不適応的スキーマは、無意識のレベルで働き、個人の認知や感情、行動に自動的な反応パターンを生み出します。例えば、自己否定スキーマを持つ人は、自己評価が低く、否定的な思考や感情に自動的に囚われる傾向があります。
  • 困難な状況への過敏な反応
    • 早期不適応的スキーマは、個人が困難な状況に直面した際に、過剰な反応や不適切な対処を引き起こすことがあります。例えば、不安スキーマを持つ人は、不安が高まった際に過剰な警戒心や回避行動をとる傾向があります。

スキーマ療法では、早期不適応的スキーマを特定し、それらに対して認識を高めることで、健全な認知や行動パターンを構築することを目指します。

スキーマ療法におけるスキーマの特性は、次のような特徴を持ちます。

  • 無意識的な信念や思考パターン
    • スキーマは、無意識のレベルで形成される信念や思考のパターンです。自覚していない場合でも、スキーマが思考や行動に影響を与えています。
  • 安定性と持続性
    • スキーマは、何年もかけて定着していて、個人の人生のさまざまな領域にわたって持続し発揮しています。一度形成されると、スキーマは固定化され、今後の情報や経験を不適切に処理する場合が出てきます。
  • 感情と関連性
    • スキーマは感情と密接に関連しており、特定のスキーマが活性化されると、それに応じた感情が引き起こされます。スキーマによって肯定的な感情が増幅されたり、否定的な感情が強まったりすることがあります。
  • 自己強化的なサイクル
    • スキーマは、自己強化的なサイクルを形成する傾向があります。つまり、スキーマが活性化されると、不適切でもそれに合致する情報や経験を引き寄せてしまいます。このため、スキーマは個人の認知の歪みや、同じ種類のパターンが繰り返されています。
  • 表面的な問題の下にある根本的な問題
    • スキーマは、表面的な問題や症状の背後にある根本的な問題を抱えています。例えば、不安やうつ症状の背後には「不安モード」や「自己否定モード」といったスキーマが存在する可能性があります。

スキーマ療法では、これらのスキーマの特性に注目、認識し、修正することで、個人の問題や症状の改善を目指します。スキーマの自覚と理解を深めることで、より適応的な思考や行動パターンを育むことができます。

スキーマ療法の目的

スキーマ療法の主な目的は、個人の早期不適応的スキーマを認識し、修正することによって、健全な自己概念や認知・行動パターンを構築することです。具体的には次のような目的があります。

早期不適応的スキーマの特定と認識

スキーマ療法では、個人の早期不適応的スキーマを特定し、それらがどのような思考や行動のパターンに影響を与えているかを認識することが重要です。これにより、自身のスキーマについての洞察を深めることができます。

1⃣ スキーマの修正と変容

スキーマ療法では、早期不適応的スキーマを修正し、より健全なスキーマに変容させることを目指します。これには、対話や認知的再構築、エンパシーを通じた感情の調整などの技法が使用され、過去の経験や関係に基づくスキーマの再評価や、新しい経験を通じてスキーマの修正や変容を促します。

2⃣ 機能的な認知と行動の獲得

新しい行動パターンや信念を導入するために、行動実験が行われます。早期不適応的スキーマに基づく行動を変えるために、新しい行動を試し、結果を検証していきます。これには、自己肯定感の向上、健全な自己概念の構築、適切な対人関係スキルの獲得を取り入れています。

3⃣ 感情の調整と修復

早期不適応的スキーマは、感情の調整や処理、人間関係にも影響を与えてしまいます。スキーマ療法では、関係性の修復や健全な関係の構築を支援するために、関係性のスキルやコミュニケーションのトレーニングが行われることもあります。また、適切な感情の認識と処理方法を学ぶことを支援し、感情の健全な表現と調整を促します。

4⃣ イメジャリーワーク

イメジャリーワークは、過去の経験を再構築し、再処理するための手法です。トラウマや負の経験に関連するスキーマを修正し、感情の解放や再構築を促すのに役立ちます。

5⃣ 持続的な変容と再発予防

スキーマ療法は、持続的な変容と再発予防を目指しています。治療の終了後も個人が修正されたスキーマと健全な認知・行動パターンを維持できるように支援することで、再発を防ぐことを目指します。

中核的感情欲求の概念

中核的感情欲求とは、自分自身が満たされたいと願う根本的な欲求や感情のことを指します。これらの欲求や感情は、経験や環境によって形成され、心の中心にあると考えられています。
例えば、「安心したい」「受け入れられたい」「愛されたい」などは、多くの人が持つ中核的感情欲求の一部です。これらの欲求が満たされると、心理的に安定し、満足感を得ることができます。しかし、これらの欲求が満たされない場合、不安や不満、ストレスなどの負の感情を引き起こすことがあります。

中核的感情欲求は、人間が持つ根源的な感情的な欲求であり、生きる上での重要な欲求の一つです。これらの欲求は、人間が健全で満足感のある人生を送るために必要不可欠であり、自己肯定感や幸福感の形成にも関係しています。
このことからも、中核的感情欲求は、スキーマ理論において重要な役割を担っているとも言えます。
スキーマは、中核的感情欲求に基づいて形成され、その欲求を満たすための行動や思考パターンも促進しています。したがって、中核的感情欲求を理解し、それらがどのようにスキーマを形成し、行動や思考を影響するかを考慮することが、スキーマ理論において重要な要素となってきます。

スキーマ療法での中核的感情欲求の多くは、幼少期までに形成され、人生経験によって強化されたり、傷つけられたりすることで影響を受けるということです。スキーマ療法では、これらの中核的感情欲求に対して、過去の経験による傷つきや偏った信念(スキーマ)を浮き彫りにし、修正していくことで、より健全な自己肯定感や幸福感を促すことを目的としています。

スキーマ療法においては、5つの中核的感情欲求が特に重要視されます。いくつかの5つの中核的感情欲求のパターンを挙げてみますが、母親や父親など養育者に対する幼少期の中核的感情欲求と捉えてください。

パターン1⃣

  • 拒絶と孤独
    • 他者から拒絶されたり、孤独を感じる状況で中核的感情欲求が満たされない場合があります。例えば、母親に声をかけてもらえなかったり、父親に無視されたりすることで感じる孤独や寂しさが該当します。
  • 攻撃と怒り
    • 他者から攻撃されたり、不当な扱いを受けたりすると、怒りや不信感が生じます。この状況では、中核的感情欲求が満たされず、不安定な感情を抱えることがあります。
  • 無力と依存
    • 自分自身の制御ができない状況や、他者に依存している状況で中核的感情欲求が満たされない場合があります。例えば、病気にかかったときや、誰かのサポートが必要なときに受けられないなどが該当します。
  • 放棄と裏切り
    • 信頼していた人々から裏切られたり、放棄されたりすることで、中核的感情欲求が満たされなくなる場合があります。例えば、親や配偶者からの放棄や裏切りが該当します。
  • 理解不足と劣等感
    • 自分自身に対して理解不足だと感じる状況で、中核的感情欲求が満たされない場合があります。例えば、学校での失敗など、自己肯定感が低い状況が該当します。

パターン2⃣

  • 安全性と安定感
    • これは、自分が安全で保護され、予測可能な環境にいることへの欲求です。身体的な安全性だけでなく、感情的な安定感や信頼も含まれます。
  • 愛情とつながり
    • 人間は愛情やつながりを求めます。他者との関係性や愛情的なつながりによって満たされることで、心の安定や幸福感を得ることができます。
  • 自己表現と自己肯定
    • 自己を表現し、自己のアイデンティティを確立することへの欲求です。自分自身を受け入れ、他者との関係で自己を表現することによって、自己肯定感や個人的な成長を実現します。
  • 自己支配と自己効力感
    • 自己支配とは、自分自身の人生や選択をコントロールし、方向性を与える能力を指します。また、自己効力感とは、自分の能力やリソースに自信を持ち、目標を達成する自信を持つことです。
  • 喜びと楽しみ
    • 人間は喜びや楽しみを求めます。好奇心や冒険、楽しい経験や活動を通じて、喜びや幸福感を得ることができます。

パターン3⃣

  • 安全性と安心感
    • 親密な他者との安全なアタッチメント・安全で安定した滋養的かつ受容的な関係を望む欲求です。
  • 自己決定性と自己支配
    • 自立性、有能性、自己同一性の感覚を望む欲求です。
  • 自己表現と自己肯定
    • 正当な欲求と感情を表現する自由を望む欲求です。
  • 探求とスパイス
    • 自発性と遊びの感覚を望む欲求です。
  • 繁栄と達成
    • 現実的な制約と自己制御を含めた繁栄と達成の感覚を望む欲求です。

パターン3⃣を詳しくみてみます。

安全性と安心感

人間が本能的に求める欲求の一つであり、特に子どもの時期に養育者との関係性によって形成されます。安全性と安心感の欲求は、人が外部の危険や脅威から守られ、心身ともに安心して生活することを望む欲求です。

ジェフリー・E・ヤングによれば、安全性と安心感は、子どもが養育者との関係性によって身につけた中核的感情欲求の一つであり、親密な他者との安全なアタッチメントや、安全で安定した滋養的かつ受容的な関係を求める欲求として表現されます。

安全性と安心感の欲求が十分に満たされない場合、その欲求を補完するために、人はさまざまな行動をとります。例えば、他者からの承認を求める、自己防衛的な行動をとる、依存的な関係を求めるなどです。スキーマ療法では、このような不十分な欲求が形成された早期不適応的スキーマを特定し、それに基づいた治療計画を立てることが重要となります。

断絶と拒絶
「養育者または親密な他者との安全なアタッチメント(安全で安定した滋養的かつ受容的な関係)」が満たされないことによって損傷を受けるスキーマ領域
自己決定性と自己支配

自己決定性と自己支配とは、自分自身の人生において、自分で決定しコントロールすることを望む欲求です。子供時代に、親や他の大人たちから過度にコントロールされ、自己表現や自己決定が制限された場合、この欲求は不足し、自分に対する信頼感や自己肯定感が低下し、過度に依存的な行動をとることがあります。

この中核的欲求が充足されないと、自分自身の人生をコントロールできず、他人に支配される状況や、自分の人生の目的や価値を見つけることが難しくなる傾向があります。また、自分自身に対する信頼感が低下し、自分の意見や価値観を表現することができない場合もあります。

自律性と行動の損傷
「自立性、有能性、自己同一性の感覚」が満たされないことによって損傷を受けるスキーマ領域
自己表現と自己肯定

自己表現と自己肯定に関する中核的感情欲求は、自分自身の欲求、感情、価値観を表現し、自己肯定感を高めることを望む欲求です。この欲求が満たされない場合、自己表現や自分の価値を肯定することができず、自己否定感や自己劣等感、罪悪感などの感情が生じることがあります。

たとえば、この欲求が満たされないと、自分の意見や感情を言い出すことができず、自分を抑圧してしまったり、自分の意見を否定されたときに自分自身を責めたりします。このような場合、自己肯定感を高めるためには、自分を表現し、自分自身の価値を認めることが重要です。さらに、自己肯定感を高めるために、自分自身に対して優しく、親切であることも必要です。

他者への追従
「正当な欲求と感情を表現する自由」が満たされないことによって損傷を受けるスキーマ領域
探求と刺激

探求と刺激は、ジェフリー・E・ヤングが提唱した中核的感情欲求の1つで、自発性、遊びの感覚、冒険、刺激を求める欲求を指します。

この欲求が不十分な場合、人は退屈やルーティン化された生活に陥り、生きがいややりがいを見いだせず、何かが欠けていると感じるようになります。また、冒険やスリルを求めすぎて、無謀な行動に出たり、危険な状況に身を置くこともあります。

一方で、この欲求が十分に満たされることで、人は新しいことに興味を持ち、好奇心を刺激され、自分の可能性を広げることができます。また、自分の中に秘めた才能や創造性を発揮する機会を見つけ、成長や充実感を得ることができます。

過剰警戒と抑制
「自発性と遊びの感覚」が満たされないことによって損傷を受けるスキーマ領域
繁栄と達成

繁栄と達成に関する中核的感情欲求は、成長、発展、達成、自己実現、成功、認知、評価、有名、富、名声、社会的地位、優越感、影響力、目標達成などを望む欲求です。

この欲求は、子供時代に、養育者が子供たちに自分自身を最善のやり方で開発し、将来に向けて成長する手段を提供することで満たされます。
しかし、養育者が子供たちの成長や達成を妨げ、自由に表現できる能力を制限した場合、この欲求は不十分になります。この欲求が不十分だと、自己劣化、失望、不足感、無力感、不安、劣等感、焦燥感、達成不可能感、挫折感、怠惰、無関心、逃避行動などが生じる可能性があります。

制約の欠如
「現実的な制約と自己制御」が満されないことによって損傷をうける領域

これらの中核的感情欲求が十分に満たされなかった場合、早期不適応的スキーマが形成されるとされています。

早期不適応的スキーマの概念

早期不適応的スキーマとは、幼少期に中核的感情欲求が満たされず形成された深層心理的な信念や心の枠組みであり、現在の問題やストレスの原因となることがあるものを指します。これらのスキーマは、過去の経験や環境に基づいて形成され、自動的に無意識的に作動します。

早期不適応的スキーマは、例えば、愛着不安、自己否定、過干渉的な要求、社会的孤立、過剰な警戒心などがあります。これらのスキーマは、個人の感情や行動、人間関係に大きな影響を与えることがあり、様々な問題の原因となります。
例えば、愛着不安のスキーマを持つ人は、人々との信頼関係を築くことが難しくなり、孤立感や不安感を抱えやすくなります。また、自己否定のスキーマを持つ人は、自己評価が低く、自信を持てず、人々とのコミュニケーションにおいて不安や緊張を感じることになります。

早期不適応的スキーマは、スキーマ療法において重要な概念であり、治療の焦点となります。スキーマ療法では、特定の問題に関連したスキーマを特定し、それらのスキーマに基づく認知的歪みを修正することで、問題を改善することを目指します。早期不適応的スキーマを修正することで、個人がより現実的なスキーマに移行し、より健康的な感情や行動を発揮することが期待されます。

早期不適応的スキーマの起源

早期不適応的スキーマの起源は、幼少期に中核的感情欲求が満たされない状態の深層心理の信念や幼少期に経験した環境や出来事に基づいて形成されています。
幼少期の環境には、親や家族、周囲の人々、学校や社会的文脈などがあり、例えば、愛着不安スキーマは、過干渉的な親や愛着不足な環境で育ったことに起因する可能性があります。自己否定スキーマは、批判的な親や周囲の人々によって形成されることがあります。社会的孤立スキーマは、孤独な環境で育ったことに関連していることがあります。

早期不適応的スキーマは、経験に基づいて自動的に形成されるため、意識的な思考や意志力で変えることが難しいとされています。しかし、スキーマ療法では、適切な手法を用いて早期不適応的スキーマを特定し、修正することができます。具体的には、早期不適応的スキーマを理解し、そのスキーマに関連した自己否定的な思考や感情を認識し、代替的なスキーマや認知的スキルを獲得していく治療となります。

早期不適応的スキーマの起源は、主に幼少期の経験に関連しています。次に詳しく説明します。

養育者との関係

幼少期の養育者との関係は、スキーマの形成に重要な影響を与えます。養育者が安定した愛着関係を築き、適切なケアや支援を提供する場合、子供は安全性と安心感のスキーマを発展させる可能性が高くなります。一方、養育者が不適切な対応や虐待、無関心な態度を示す場合、子供は不安や無力感を経験し、不安モードや無力モードのスキーマが形成される可能性があります。
このことをスキーマ療法では、中核的感情欲求と呼んでいて、幼少期に当たり前に持っている感情、例えば「安心したい」「受け入れられたい」「愛されたい」などの欲求が満たされたいと願う根本的な欲求や感情のことを指します。しかし、これらの欲求が満たされない場合、不安や不満、ストレスなどの負の感情を引き起こし、早期不適応的スキーマが形成されることがあります。

必要な欲求の満たされない経験

幼少期に基本的な欲求が満たされない経験があると、関連するスキーマが形成されることがあります。例えば、愛情や温かさが不足していた場合、孤立モードや欠乏モードのスキーマが発達する可能性があります。

トラウマ体験

幼少期にトラウマ体験を経験すると、それに関連したスキーマが形成されることがあります。例えば、虐待や暴力的な出来事は、被害者の自己否定や恐怖モードのスキーマを形成する可能性があります。

文化的・社会的要因

早期不適応的スキーマは、文化的・社会的な要因にも影響を受けることがあります。特定の文化や社会環境での価値観や期待に合わない経験がある場合、それに関連するスキーマが形成される可能性があります。

これらの要素が組み合わさり、幼少期の経験に基づいて早期不適応的スキーマが形成されます。これらのスキーマは、個人の認知や感情、行動パターンに影響を与え、問題や症状の原因となることがあります。

早期不適応的スキーマ 5 つの領域

スキーマ療法における早期不適応的スキーマは、5つの領域に分類されます。次にそれぞれのスキーマの名前と、そのスキーマに関連した特徴的な思考や行動の例を示します。

1⃣ 切り離しスキーマ(Disconnection and rejection schema)
・自分が孤独で孤立していると感じる
・自分を理解してくれる人がいないと感じる
・寂しさや不安、抑うつなどの感情が支配的であると感じる
・他者との親密な関係を避ける
・社交的な場面や集団の中にいるときに不快感や不安を感じる
断絶と拒絶
⑴ 放棄と不安スキーマ(見捨てられ・不安定)
⑵ 不信スキーマ(不信・虐待)
⑶ 社会的孤立スキーマ(社会的孤立・疎外)
⑷ 責任逃れスキーマ(情緒剥奪)
⑸ 価値なしスキーマ(欠陥・恥)
2⃣ 自己否定スキーマ(Defectiveness schema)
・自分が価値がない、欠陥品であると感じる
・自分が他人より劣っていると感じる
・達成感や満足感を感じにくい
・批判的な自己評価や自己責任感が強い
・他者の評価を過度に気にする
自律性と行動の損傷
⑹ 依存スキーマ(依存・無能)
⑺ 失敗スキーマ
⑻ 巻き込まれ/未発達スキーマ
⑼ 決定的な対人関係の問題スキーマ
3⃣ 他者への依存スキーマ(Dependence schema)
・自分は他者の支援や承認を必要としていると感じる
・他者がいないと不安や孤独を感じる
・自分で問題を解決する自信がない
・他者の意見や期待に合わせて自分を変えてしまう
・自己主張ができない
他者への追従
⑽ 服従スキーマ
⑾ 自己犠牲スキーマ
⑿ 残忍スキーマ(評価と承認の希求)
4⃣ 過剰な警戒スキーマ(Vulnerability to harm and illness schema)
・世界や自分自身を危険な場所だと感じる
・他者に傷つけられるのではないかと恐れる
・疑心暗鬼になることがある
・病気や怪我をすることを恐れる
・リスクを取ることを避ける
過剰警戒と抑制
⒀ 感情の抑制スキーマ(感情抑制)
⒁ 不完全さと不備スキーマ(否定・悲観)
⒂ 過度な責任感スキーマ(罰)
⒃ プライドスキーマ(厳密な基準・過度の批判)
5⃣ 制限的な自己スキーマ(Enmeshment and undeveloped self schema)
・自分が自己を表現することができないと感じる
・自分自身を知ることができていないと感じる
・他者との違いを感じにくい
・自分自身の感情や需要を無視して他者に合わせてしまう
・独自の趣味や興味を持つことができない
制約の欠如
⒄ 権利要求・尊大スキーマ(過剰な責任感)
⒅ 自制と自立の欠如スキーマ

18の早期不適応的スキーマの詳しい解説は、2⃣をご覧ください。

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