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精神疾患の診断は、12の精神機能の異常把握から所見

目次

⒒ 自我意識の概念

自我意識(Self-consciousness)は、自己を認識し、自分自身について意識的に考えたり感じたりする能力を指します。これは自己の存在やアイデンティティ、思考、感情、行動などに対する認識にも影響しています。自我意識は人間の高度な認知機能の一部であり、自己理解や社会的な相互作用において重要な役割を果たします。

自我意識にはいくつかの側面があります。

自己認識(Self-awareness)

自己認識は、自己が存在することを認識する能力を指します。これには鏡を見て自分自身を認識する能力や、自分の身体や感覚について認識する能力です。

自己概念(Self-concept)

自己概念は、自己についての知識や信念を持つことを指します。これには自己の特徴や価値観、興味などに関する認識です。自己概念は自己評価や自己同一性の形成に影響を与えます。

社会的自我(Social Self)

社会的自我は、他人との関わりの中で自己を認識する能力を指します。これには他人の視点や評価を考慮して自己を見る能力です。社会的自我は人間関係や社会的な行動に影響を与えます。

反省(Self-reflection)

反省は、自己の思考や行動について意識的に考える能力を指します。過去の出来事や行動を振り返り、自己理解や成長を促すことができます。

自我意識は人間の発達や精神的健康において重要な役割を果たしています。適切な自己認識や自己概念の形成は、自己評価や自信の向上につながります。一方で、過度の自己意識や自己評価の歪みは、心理的な問題や人間関係の困難を引き起こすことがあります。

離人症

離人症(Depersonalization Disorder)は、自己や自己の体験に対する現実感や一体感の喪失を特徴とする精神障害です。自分自身や周囲の環境とのつながりが希薄で、自己の感覚や体験が非現実的であるように感じられます。これにより、自己の存在や感情、行動に対する違和感や異常な感覚が生じます。

離人症の主な特徴としては次が挙げられます。

  • 現実感の減少(Reality Disturbances)
    • 自分や周囲の環境とのつながりが薄れ、現実感が希薄になります。自分が夢の中にいるような感覚があり、周囲の出来事が遠く感じられることがあります。
  • 身体的感覚の変化(Altered Bodily Sensations)
    • 自分の身体感覚が異常に感じられることです。手や足が別の人のもののように感じられたり、自分の動きが制御できないように感じることがあります。
  • 感情の鈍化(Emotional Numbness)
    • 感情の表現や体験が鈍くなることがあり、感情的な反応が薄れたように感じることがあります。
  • 自己の統合感の欠如(Lack of Self-Integration)
    • 自己のアイデンティティや統合感が欠如しているように感じられます。自己の一体感や統一感が希薄であると感じることがあります。

離人症は不安障害やうつ病、ストレス関連障害などと関連して現れることがあります。また、一時的なストレスや疲労、薬物の使用などが引き金となることもあります。診断や治療には専門医の評価が必要であり、心理療法や薬物療法が考慮されることがあります。自己意識の修復と精神的な安定を支援することが目指されます。

作為体験

「作為体験」(Made actions)(させられ体験)は、自分の行動や動作が外部の力によって制御されているように感じる現象を指します。つまり、自己の行動が自己の意図や意志とは無関係に他者や外部の力によって起こっていると感じられる状態です。これは精神的な異常を示す可能性があり、一部の精神障害で見られることがあります。

作為体験に関するいくつかの特徴を次に示します。

  • 外部制御感の強さ(Perception of External Control)
    自己の行動が他者や外部の力によって制御されていると感じるため、行動を自己の意志でコントロールできないように感じます。これにより、行動の一体感や自己の意志の統一感が失われることがあります。
  • 抵抗の試み(Attempts at Resistance)
    一部は作為体験に対して抵抗を試みることがありますが、その抵抗が成功することはまれです。自分の行動をコントロールしようとするものの、それが難しいと感じます。
  • 不自然な動作(Unnatural Movements)
    作為体験によって、通常の動作や行動が不自然になることを感じることがあります。これは他者に対して不自然に見えています。

作為体験は、統合失調症などの一部の精神障害において現れることがあります。これは現実感や自己意識の歪みを示すものであり、心理的な支援や薬物療法などが考慮されることがあります。正確な診断と適切なアプローチのためには、専門医の評価が必要です。

解離症状

解離症状(Dissociative Symptoms)は、自己や自己の体験とのつながりを失い、現実感や一体感が歪んだ状態を指します。これは一種の自我意識の異常であり、一部の解離性障害や一時的なストレス症状に見られることがあります。次に解離症状のいくつかの特徴を説明します。

  • 解離感(Depersonalization)
    • 解離感は、自分自身や自分の体験が現実的ではないように感じる状態です。自己の身体感覚や存在に違和感を感じることがあり、自分が他者とは異なる存在であるかのように感じることがあります。
  • 脱感覚(Derealization)
    • 脱感覚は、周囲の環境や世界が不現実的であるように感じる状態です。まるで夢の中にいるような感覚を持ち、周囲の出来事や環境が遠く離れているかのように感じることがあります。
  • 記憶の欠落(Amnesia)
    • 解離症状が強い場合、特定の出来事や期間について記憶の欠落を経験することがあります。これは解離性アムネジアと呼ばれ、過去の出来事や情報が一時的にアクセスできなくなることがあります。
  • 人格の分離(Identity Fragmentation)
    • 一部の解離性障害では、複数の異なる人格やアイデンティティの側面が存在することがあります。これにより、自己の統一感を失い、異なる人格が交互に現れることがあります。

解離症状は、強いストレスやトラウマ、過去の困難な出来事に関連して現れます。解離性障害や一時的な解離症状は、適切な治療アプローチを通じて支援されることが重要です。心理療法や安定剤の使用、トラウマ処理などが治療の一部として考慮されることがあります。正確な診断と適切なアプローチのためには、専門医の評価が必要です。

⒓ 人格、性格の概念

人格(Personality)と性格(Character)は、行動、思考、感情、価値観などの持続的な特徴を指します。ただし、これらの用語は混同されることがありますが、それぞれ異なる側面を示します。

人格(Personality)

人格は、一貫した行動や心理的特性の全体を指します。これは生まれつきの傾向や環境の影響によって形成され、一般的に安定して変化しにくい特徴です。人格はアイデンティティや個性を反映し、異なる状況や環境での行動パターンを予測するのに役立ちます。人格は大きく五つの要因(外向性、協調性、調整性、感情安定性、開放性)に分類されています。

性格(Character)

性格は、社会的な価値観や倫理的な原則に基づいて形成される行動や特性の側面を指します。性格は教育、文化、宗教、環境などの要因によって影響を受けることがあり、判断力や道徳的な選択に関連します。性格は善悪、誠実さ、誠意、勇気などの質に該当することがあります。

要するに、人格は基本的な行動や思考の傾向を指し、性格は道徳的な価値観や倫理的な側面を指します。これらの要素は行動や意思決定、社会的な関係に影響を与える重要な要素です。

パーソナリティ症

パーソナリティ症は、持続的かつ一貫したパターンの異常な人格特性や行動がみられる精神障害の一種です。DSM-5(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 5th Edition)とICD-11(International Classification of Diseases, 11th Revision)の両方で異なるアプローチでパーソナリティ症が定義されています。

DSM-5におけるパーソナリティ症(Personality Disorders): DSM-5では、パーソナリティ症は10種類の異なるクラスターに分類されており、各クラスターには特定の特性や行動の特徴があります。これらのクラスターには次のような症状となります。

  1. クラスターA(奇妙または妄想的な特徴)
    • 偏執病的、独善的、統合失調的な特性が該当します。
  2. クラスターB(感情的または社会的な不適応)
    • 反社会的、著しい自己中心的、不安定、自己破壊的な特性が該当します。
  3. クラスターC(恐怖的または回避的な特徴)
    • 回避的、依存的、強迫的な特性が該当します。

ICD-11におけるパーソナリティ症(Personality Disorders): ICD-11では、パーソナリティ症は「不安定で強調されたパターン」(Emotionally Unstable Personality Pattern)として分類されています。このパターンは2つの亜型に分けられます:

  1. 不安定な亜型(Anxious [borderline] pattern)
    • 感情の不安定さ、自己イメージの歪み、自己傷害的行動などが特徴です。
  2. 刺激への過敏な亜型(Impulsive [antisocial] pattern)
    • 衝動的な行動、自己中心的な行動、他人への攻撃的行動などが特徴です。

どちらの診断基準も、パーソナリティにおいて異常な特性や行動の持続的なパターンが存在することを指し示しています。パーソナリティ症の診断は専門医の評価に基づき行われ、治療アプローチには心理療法や薬物療法が考慮されることがあります。

人格変化

人格変化(Personality Change)は、基本的な行動、思考、感情、価値観などの持続的な特性が一時的または永続的に変化する現象を指します。これは通常、外部要因や内部の変化によって引き起こされることもありますが、人格変化はさまざまな要因によって引き起こされ、その影響は生活や日常的な機能に及ぶことがあります。

人格変化に関するいくつかの一般的な要因と例を挙げてみます。

  • 環境要因
    • 環境の変化や経験は、人格に影響を与える可能性があります。新しい環境に適応するために、特性や行動が変化することがあります。例えば、新しい職場や学校への適応、新たな社会的な関係などが挙げられます。
  • 心理的要因
    • 心理的な状態や精神的な健康の変化も人格に影響を与えることがあります。うつ病や不安障害などの精神障害は、感情や行動の変化を引き起こすことがあります。
  • 生理学的要因
    • 脳の損傷、神経の異常、ホルモンの変化など、生理学的な要因が人格に影響を与えることがあります。これによって、感情の変化や行動の変更が引き起こされることがあります。
  • トラウマやストレス
    • 重大なトラウマ体験や慢性的なストレスは、人格に影響を与えることがあります。これによって、感情的な変化や行動の遷移が生じる可能性があります。
  • 成熟と発達
    • 成熟と発達に伴って、人格の一部の側面が変化することがあります。これは経験と学習によって形成されるものです。

人格変化は一時的であることもありますが、時には永続的なものとなることもあります。人格変化の程度や性質は個人によって異なり、文脈や状況によっても影響を受けることがあります。適切なアプローチや支援が必要な場合、専門医の評価や心理療法などが考慮されることがあります。

病前性格

病前性格(Premorbid Personality)とは、精神障害や疾患を発症する前の、通常の状態における性格の特徴や傾向を指します。病前性格は、精神障害や身体的な疾患の影響を受ける前の基本的な性格や行動の特徴を示しており、障害が発症する前のベースラインとなるものです。

病前性格は、次のような側面に関連する特徴があります。

  • 社会的関与と関係性
    • どのように他者と関わり、社会的な関係を築いていたかが該当します。社交的、内向的、協力的などの特性が病前性格に影響を与える可能性があります。
  • 感情の調整
    • 病前性格には、どのように感情を認識し、表現し、調整していたかにあたります。情緒的に安定しているか、感情の変動が激しいかなどが該当します。
  • 対ストレス能力
    • 病前性格は、ストレスに対する耐性や対処能力に影響を与える可能性があります。抑うつ的、不安的、楽観的などの特性にあたります。
  • 行動の特徴
    • どのように行動し、決定を下し、目標に向かって取り組んでいたかにあたります。自己管理能力、行動の規則正しさ、冒険的さなどの特性が影響を与えることがあります。

病前性格は、精神障害や身体的な疾患が発症する前の基準として、変化を理解する上で重要です。また、病前性格と障害後の性格の変化を比較することで、病気の影響を評価する手がかりとなることもあります。ただし、性格は複雑で多様であるため、単純に病前性格の特徴が障害の発症と直接的に関連しているわけではありません。

精神疾患や精神障害は心の問題だけではなく、脳の病気とも捉えられます。一部では、「心は脳が映し出す現象である」とも言われています。 このことからも、精神医学と心理学は連携して治療を行うことが多く、薬物療法と心理療法を併用することで、より総合的なアプローチが可能となります。また、臨床心理学は心理学と精神医学が交わる分野であり、心理的な側面を重要視しながらも、精神疾患、障害の脳および神経伝達物質、薬物療法の基礎知識が求められる分野です。複合的にも心理臨床の心理カウンセリングやセラピーを行う上での必要性を感じ、脳、神経伝達物質、薬剤分野の知識を掲載することになりました。ただし、筆者は専門分野ではないため、誤った情報や精神医学の最新情報に遅れている文脈もあると思いますので、あらかじめお詫び申し上げます。皆様においては、重要とされる情報については新たに調べられることをお勧めします。 

『Kaplan & Sadock’s Comprehensive Textbook of Psychiatry』 – レジス・J. ドゥール、ベンジャミン・J. サドック、ヴァージニア・A. サドック 著

『Current Diagnosis & Treatment: Psychiatry』 – Michael H. Ebert、Peter T. Loosen、Barry Nurcombe 著

DSM-5』(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 5th Edition) – American Psychiatric Association 著

『ICD-11』(International Classification of Diseases, 11th Revision) – World Health Organization (WHO) 著

『Clinical Handbook of Psychotropic Drugs』 – Ric M. Procyshyn、Kalyna Z. Bezchlibnyk-Butler、J. Joel Jeffries 著

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