3時間無料対面カウンセリングを行っています。無料カウンセリング予約フォームでお申し込みください。ボタン

ICD-11新基準「パーソナリティ症および関連特性群」

目次

DSM-5パーソナリティ障害からICD-11の新基準は「パーソナリティ症および関連特性群」へと改訂された。新しく掲載された異常人格特性群の症状の6つの特性を紹介する。

ICD-11パーソナリティ症および関連特性群

今までアメリカ精神医学会が発行しているDSM-Ⅳ・5の「精神疾患の統計マニュアル」によって、パーソナリティ障害の診断、診療をしてきましたが、世界保健機関ではICD-10に次ぎ約30年ぶりとなるICD-11「精神疾患の診断ガイドライン」の改訂版を発行しました。この改訂版によって、従来のパーソナリティ障害の診断内容が大きく改変されました。
しかし、日本では厚労省が承認したうえで使用の許可が出るまでの期間が必要だと思われます。
そこで今回、ICD-11を参考に「パーソナリティ障害および関連特性群」を掲載してみます。そのうえで、2022.5.31現在ですが、パーソナリティ障害を従来のDSM-Ⅳ・5に基づいて解説していき、後半ではあくまでもICD-11の新基準の仮定で、広くパーソナリティ症を理解できるように取り組んでいきたい思います。

ICD-11の診断基準などについては、現段階では厚労省の承認前ということと情報の不確実な状態で作成していますので、閲読やご利用には十分な注意が必要となります。

改訂された背景

ICD-10のパーソナリティ障害の診断には、大きな括りで10種類のパーソナリティ障害が該当し、それぞれに独自の診断基準が設けられていました。しかしこれらの基準は、異なる文化的背景や臨床環境での診断において一貫性に欠けることが指摘されていました。また、ICD-10では、異常人格特性の診断は、大人向けであり、青少年や思春期の特性を包括的に扱うことができなかったことも問題視されていました。

このような背景から、ICD-11では、「パーソナリティ障害及び関連特性の群」という新しい分類が導入されました。この分類は、パーソナリティ障害の異常人格特性といくつかの関連特性群に分けられ、それぞれに共通した診断基準が設けられています。これにより、異なる文化的背景や臨床環境においても一貫性のある診断が可能になると期待されています。また、青少年や思春期の特性も考慮され、より包括的な診断が可能になっています。

また、ICD-11では、人格障害を単一の診断ではなく、パーソナリティ障害及び関連特性の群の診断に置き換えることで、個人の特性をより詳細に分析し、適切な治療方法を選択できるようになることを目的としています。

ICD-11(国際疾患分類第11版)は、世界保健機関(WHO)によって作成された、疾患や健康関連の問題を統一的に分類するための国際基準です。ICD-11では、パーソナリティ障害は「パーソナリティ障害及び関連特性の群」として扱われています。

「自己機能」「対人機能」

「パーソナリティ障害及び関連特性の群」の前に、新しいWHOの診断基準ICD-11では、パーソナリティ症は理解するうえで「自己」と「対人関係」の側面から機能不全によって定義されますが、パーソナリティ症の診断に重要な「自己機能」と「自己機能不全」、さらに「対人機能」と「対人機能不全」について解説します。

  • 自己機能と自己機能不全
    • 自己機能(Self-function): 個人が自己を理解し、他者との関係を通じて安定感やアイデンティティを形成し、自らの目標を達成するために必要な心理的機能や過程の総称です。
    • 自己機能不全(Dysfunction of self-function): 個人が自己機能の一部または全部で問題を抱えている状態を指します。これにはアイデンティティの混乱、感情の不安定さ、自尊心の低さ、現実感覚の歪みなどが該当します。自分自身を理解し、他者との関係を築く能力が阻害されていると考えられます。
  • 対人機能と対人機能不全
    • 対人機能(Interpersonal function): 個人が他者との関係を築くために必要な心理的機能や過程の総称です。これには適切なコミュニケーション、共感、協力、対人的な信頼などが該当します。
    • 対人機能不全(Dysfunction of interpersonal function): 個人が他者との関係を築く際に問題を抱えている状態を指します。これには人間関係での問題、コミュニケーションの障害、信頼の不足、対人的な不安定さなどが該当します。他者との関係の構築や維持が困難な状態が続くことが考えられます。

個々のパーソナリティ障害の診断において、患者の特定の症状や行動が「自己」と「対人関係」の側面でどのように機能不全を示すかを評価する際に使用されると想定します。

自己機能と対人関係機能の不全(障害)について、さらに掘り下げると健康な人にも適応するパーソナリティの5つの因子があります。この5つの因子(パーソナリティ構造特性)のどの部分、または複数が不全に該当し問題になっているがパーソナリティ症の診断の焦点となります。

5つの因子(パーソナリティ構造特性)

自己機能と対人関係機能の不全(障害)について、さらに掘り下げると健康な人にも適応するパーソナリティの5つの因子があります。この5つの因子(パーソナリティ構造特性)のどの部分、または複数が不全に該当し問題になっているがパーソナリティ症の診断の焦点となります。

  • 否定的感情 (Negative Affectivity)
    • 否定的感情は、個人が一般的にネガティブな感情や感情的な不安定さを経験する傾向を指します。これには不安、抑うつ、怒りなどが該当します。否定的感情の高さは、ストレスへの反応が強くなり、感情の安定性に影響を与える可能性があります。
  • 離隔・離脱・分離 (Detachment)
    • 離隔は、他者との感情的な距離を取り、冷静で冷淡な態度を示す傾向を指します。この因子に関する問題は、過度な孤立や他者との関係の避け方といった行動に表れる可能性があります。
  • 非社会性 (Antagonism)
    • 非社会性は、他者との対人関係において敵対的、冷酷、無関心な態度を示す傾向を指します。この因子に関する問題は、人間関係での対立や協力の不足、他者に対する攻撃的な行動といった形で現れます。
  • 脱抑制 (Disinhibition)
    • 脱抑制は、行動の制御が弱く、欲望や衝動が抑えきれない傾向を指します。問題が生じると、衝動的な行動、依存症、反社会的な行動が増加する可能性があります。
  • 制縛性・強迫観念 (Anankastia)
    • 制縛性は、過剰な秩序や規則性への執着、強迫観念、完璧主義などの特徴を指します。問題がある場合、柔軟性が不足し、他者との関係や生活の品質に影響を与える可能性があります。

パーソナリティ障害及び関連特性の群

ICD-11の診断基準などについては、現段階では厚労省の承認前ということと情報の不確実な状態で作成していますので、閲読やご利用には十分な注意が必要となります。

ICD-11によると、パーソナリティ障害及び関連特性の群には、次のような分類があります。

ICD-11の新基準 「パーソナリティ障害及び関連特性の群」
⒈ 異常人格特性の群:個人の行動や思考、感情の特徴が顕著に異常である状態を指します。
⒉ 発達的トラウマ群:児童期や青年期に経験したトラウマに関連した問題が特徴的な状態を指します。 
⒊ アルコール・薬物関連群:アルコールや薬物の使用に関連した問題が特徴的な状態を指します。
⒋ 食行動群:食事に関連した問題が特徴的な状態を指します。
⒌ 性的偏向群:性的な行動や感情の異常が特徴的な状態を指します。
⒍ その他の群:その他の特定の特性に関連した問題が特徴的な状態を指します。

異常人格特性の群

ICD-11では、異常人格特性の群は以下のように分類されています。

⒈ 感情不安定性の特徴を示す群:
 「不安定・感情的特性
感情の変動が激しく、常に不安やストレスを感じている傾向が特徴的な人を指します。
・境界性パーソナリティ障害に近い特性を示す群で、感情不安定や自己認識の混乱、自傷行為などが含まれます。
⒉ 強迫的特性の群:
 「強迫的特性
非現実的な規則や秩序に固執し、強迫的にそれに従う傾向が特徴的な人を指します。
・強迫性パーソナリティ障害に近い特性を示す群で、完璧主義や細かいところにこだわる傾向があります。
⒊ 不安定な情動と社会的関係性の特性を示す群:
 「回避的特性
新しい状況や人間関係に不安を感じ、回避する傾向が特徴的な人を指します。
・回避性パーソナリティ障害に近い特性を示す群で、社交的な場面での不安感や、疎外感、孤独感などが含まれます。
⒋ 明瞭な変性体験の特性を示す群:
 「自己中心的及び自己愛性特性
自己中心的で自分勝手な行動や、自分の利益や欲求を追求する傾向が特徴的な人を指します。また、現実と非現実の境界線を曖昧にし、幻覚や妄想的な信念を抱いています。
・自己愛性パーソナリティ障害に近い特性を示す群で、自己中心的な傾向もありますが、現実感覚を失うような変性体験などが特性となります。
⒌ 感情や行動の規律を欠く特性を示す群:
 「反社会的特性
他人に対する冷淡さや無関心、社会規範や法律に違反する行動傾向が特徴的な人を指します。
・反社会性パーソナリティ障害に近い特性を示す群で、社会的規範を無視する傾向や、他者に対する攻撃性、犯罪行為などが含まれます。
⒍ 負の信念やスキーマの特性を示す群:
 「弱意志的及び依存的特性
自己決定能力が弱く、他人に依存しやすい傾向が特徴的な人を指します。
・特定されていないパーソナリティ障害に近い特性を示す群で、自分自身や他者に対する負の信念、スキーマの形成や固執、自己評価の歪みなどが含まれます。

ICD-11の「異常特性群」は、従来のパーソナリティ障害の分類に含まれる特性を、より広範囲に捉えたものです。具体的には、以下の特性を含みます。

⒈ 【感情不安定性の特徴を示す群】不安定・感情的特性

ICD-11における感情不安定性の特徴を示す群は、「強い情動の波及と調節の難しさを伴う、個人的・社会的問題の原因となる特徴を示すもの」とされています。具体的には、以下の特徴が挙げられます。

  1. 感情の起伏が激しい傾向
    怒りや悲しみなどの感情の起伏が激しく、その感情をコントロールすることが難しい傾向があります。一度感情が高まると、しばらくはその感情を引きずることがあります。
  2. 自己イメージの不安定な傾向
    自分自身に対して、不安定なイメージを持っている傾向があります。自己肯定感が低く、自分自身に対して否定的なイメージを持っていることが多いです。
  3. 人間関係において不安定な傾向
    人間関係において、自分自身や相手に対して、過度に依存したり、不信感を抱いたりする傾向があります。また、相手との関係がうまくいかないと、突然として人間関係性を壊すことがあります。
  4. 自傷行為や自殺念慮などの傾向
    感情不安定・境界線型パーソナリティ特性を持つ人は、ストレスに弱く、自傷行為や自殺念慮などを示すことがあります。

これらの特徴は、境界性パーソナリティ障害に近い特性を示す群と共通する傾向があります。ただし、ICD-11では、この群は異常人格特性の群に分類され、境界性パーソナリティ障害とは区別されています。境界性パーソナリティ障害は、感情不安定性とともに、アイデンティティの不安定さ、人間関係の不安定さ、自己破壊的な行動、現実感覚の不安定さなどが特徴的な症状であるとされています。

感情不安定・境界線型パーソナリティ特性を持つ人は、一般的には自分自身や周囲の人々にとって、大きなふたんをかけることがあります。このタイプの人々は、過去のトラウマやストレスが原因で発症することが多く、適切な治療を受けることが重要です。

⒉ 【感情不安定性の特徴を示す群】強迫的特性

強迫的特性の群は、ICD-11のパーソナリティ障害および関連特性群の一つで、「強迫性・認知的特性群」と呼ばれています。これは、強迫的な思考や行動のパターン、完璧主義や細かいこだわり、固定的な思考パターンなど、認知的な特徴を示すことから名付けられました。

強迫的特性の群は、強迫性パーソナリティ障害に近い特性を示す群です。以下に、強迫的特性の群が示す主な特徴をいくつか紹介します。

  1. 強い規則性や秩序性を求める傾向
    自分自身や周囲の環境に対して、厳格な規則性や秩序を求める傾向があります。不確実性や混乱を好まず、細かいことまでコントロールしたがります。
  2. 几帳面で完璧主義的な傾向
    自分自身や周囲の人々に対して、高い基準を持っており、何事も完璧にこなそうとします。小さなミスや間違いに敏感で、細かいところまで気にします。
  3. 執着的で頑固な傾向
    自分が正しいと思ったことに対して、頑固にこだわる傾向があります。また、約束や規則を厳密に守ろうとするため、自分自身や周囲の人々に対して、執着的に接します。
  4. 焦燥的で不安定な傾向
    自分自身や周囲の状況に対して、過度な不安や心配を抱える傾向があります。また、未来に対して不安を抱えやすく、リスクを避けるために行動を制限することがあります。

ただし、ICD-11では、強迫的特性の群は、強迫性パーソナリティ障害と完全に重複しないことに注意が必要です。強迫的特性の群は、強迫的パーソナリティ障害の特徴の一部を示すことがありますが、それ以外の特徴も併せ持っています。

強迫性パーソナリティ特性を持つ人は、一般的には自分自身や周囲の人々にとって、悪い影響ばかりではありませんが、時には厳格さや完璧主義によって、自分自身や周囲の人々にストレスを与えることが多くなります。なお、強迫性パーソナリティ特性を持つ人は、過去のトラウマやストレスが原因で発症している場合があります。

⒊ 【感情調整の困難群】回避的特性

不安定な情動と社会的関係性の特性を示す群には、ICD-11では「感情調整の困難群」という名称が与えられています。この群は、回避性パーソナリティ障害に近い特性を示す群とされていますが、一方で異常人格特性の群とも関連があるとされています。

ICD-11で定義されている回避的特性とは、人との関わりを避ける傾向や社交不安、そして自己否定的な思考や行動などが特徴とされます。例えば、集団で話すことや、新しい人との接触などを避け、孤立した生活を送ることが多く、そのために社会的なスキルや人間関係が乏しい場合があります。また、自己評価が低く、自己批判的である傾向も見られます。

感情調整の困難群の特徴としては、以下のようなものが挙げられます。

  1. 感情の不安定さ
    感情が急激に変化する傾向があり、イライラや怒り、悲しみなどが短時間で繰り返されることが多い。
  2. 自己中心的な関係性
    自分の気持ちや欲求を優先し、他者との関係性が上手くいかないことが多い。
  3. 社会的孤立
    交友関係が希薄で、人との関わりが上手くいかない。
  4. 不安定な自己概念
    自己のアイデンティティや価値観が不安定で、常に変化する傾向がある。

回避性パーソナリティ障害との類似点としては、社会的孤立や人との関わりが上手くいかない傾向があります。
しかし、回避性パーソナリティ障害では恐怖や不安を理由に社会的な状況から自己を隔離する傾向が強く出るのに対し、感情調整の困難群では自己中心的な関係性が特徴となります。
また、回避性パーソナリティ障害は恐怖や不安を感じやすい傾向があるのに対して、感情調整の困難群は怒りやイライラといった感情が急激に変化する傾向があることが異なる点です。

⒋ 【知覚や意識の変容群】自己中心的及び自己愛性特性

ICD-11で定義されている自己中心的および自己愛性の特性を持つ人は、自己中心的で自己中心的な欲求を優先し、他人の利益や感情を無視することが多くあります。また、自己中心的な行動や傲慢さ、自己中心的な態度、または自己優先の態度を示すことがあります。自分に都合のいいように事実を歪曲したり、他人を利用したり、自分に都合のいいように物事を解釈する傾向があります。

自己中心的特性とは、自分の利益や欲求を優先させる傾向が強く、他人の利益や欲求を無視する傾向があることを指します。自分を優先することが大切であると考え、自己中心的な行動を取るため、他人を傷つけたり、無視したりすることがあります。自己中心的な人は、他人との共同作業においても、自分自身が中心となるような行動をとるため、チームワークや協調性が欠如することがあります。

一方、自己愛性特性とは、自分に対して過度の自信を持っている傾向があることを指します。自分自身が優れていると考え、自分を高く評価することが多いため、他人からの批判や評価を受け入れることが難しい傾向があります。自己愛性の高い人は、他人とのコミュニケーションにおいて、自分自身の話題を中心に話を進めることが多く、相手の話に興味を示さないことがあります。

自己中心的や自己愛性の特性は、他者からは避けられるものとなり、人間関係や社会的な機会に悪影響を与えることがあります。しかし、自己中心的な行動の自己中心性や自己愛性の適度の高さは、自分自身を守り、自己肯定感を高める助けとなることがあります。

自己中心的および自己愛性特性は、自己愛性パーソナリティ障害として精神医学的な診断に即している部分があります。

また、ICD-11では、明瞭な変性体験の特性を示す群は「知覚や意識の変容群」と呼ばれています。この群に含まれる特性としては、幻覚や妄想的な信念、錯覚、感覚の変容、自己の解離体験などが挙げられます。

ICD-11において、「自己愛性パーソナリティ障害に近い特性を示す群」として、明瞭な変性体験の特性を示す群があります。この群の特性は、以下のようにまとめられています。

  • 現実と非現実の境界線を曖昧にする傾向がある。
  • 幻覚や妄想的な信念を抱く傾向がある。
  • 錯覚を体験することがある。
  • 異常な状態や変性状態を目的として、薬物やアルコールの乱用、自傷行為、自殺行為などの危険な行動に走ることがある。

「知覚や意識の変容群」は、現実感覚の消失や変形、自己と他者との境界の曖昧化、時間の感覚の変化、超常的な体験(例えば幽霊や異次元体験など)、不可思議な現象に対する信念や関心など、明瞭な変性体験の特性を示します。また、一時的な錯乱状態や幻覚、妄想なども含まれます。これらの体験は、現実とのつながりが弱まり、自己のアイデンティティが揺らぐことがあります。この群の特徴を示す人は、しばしば精神病的な症状を示すことがあります。

これらの特性が、自己愛性パーソナリティ障害に近い特性を示す群に分類される理由は、自己愛性パーソナリティ障害の人々が、現実と非現実の境界線を曖昧にし、幻覚や妄想的な信念を抱くことがあるためです。ただし、自己愛性パーソナリティ障害と異なり、明瞭な変性体験の特性を示す群では、これらの特性がより顕著に現れることが特徴となっています。

⒌ 【不適応的行動群】反社会的特性

感情や行動の規律を欠く特性を示す群は、ICD-11のパーソナリティ障害および関連特性群の一つで、「不適応的行動群」と呼ばれています。

この群に属する人々は、感情や衝動的な行動を抑制することが難しく、自制心が弱い傾向があります。具体的には、怒りや焦燥感、衝動的な行動、自傷行為などを示すことがあります。また、他者への攻撃性や挑戦的な態度を示すことがあるため、人間関係において問題を抱えることが多いとされています。

この群には、以前のDSM-5においては「反社会性パーソナリティ障害」として分類されていた特性も含まれますが、ICD-11ではより広い範囲の特性を包括する群となっています。

「不適応的行動群」反社会的特性は、社会規範や法律を無視し、他人の権利や利益を軽視する行動傾向を指します。以下に、反社会的特性の具体的な特徴をいくつか挙げます。

  • 行動の制御が困難で、自己破壊的な行動や攻撃的な行動をとることがある。
  • 衝動的に行動し、その後に後悔することがある。
  • 自己傷害や自殺未遂を含む自己破壊的な行動を行うことがある。
  • 飲酒やドラッグの乱用、ギャンブル依存症など、不適切な行動に走ることがある。
  • 恋愛関係において異常な嫉妬や過度な依存を示すことがある。
  • 違法行為を犯す傾向がある。
  • 偽りや欺瞞を用いて他人を騙すことが多い。
  • 自己中心的で、他人の感情や欲求を理解することができない。
  • 他人を攻撃したり、傷つけたりすることに興味を持つ。
  • 社会的な規範や法律に違反することが多く、逮捕歴や刑務所経験があることがある。
  • 責任を取らないことが多く、他人を犠牲にして自分の欲求を追求する。
  • 恥や罪悪感を感じにくく、自己正当化することが多い。

ICD-11で定義されている反社会的特性とは、他人を無視し、自己中心的な欲求を満たすために規範や法律を無視する傾向がある特性です。この特性を持つ人は、自己中心的で利己的であり、他人の感情や利益を無視することが多く、社会規範を守ろうとしない傾向があります。

具体的には、他人を欺いたり、詐欺を働いたり、暴力的な行動を取ることがあります。また、社会規範を守らない行為に加えて、罪悪感や良心の呵責を感じにくく、自分自身の責任を回避することが多い傾向があります。

反社会的特性は、精神医学的な診断において、反社会性パーソナリティ障害に即している部分があります。この障害は、成人期に現れ、持続的であり、社会的に悪影響を与えることがあります。

⒍ 【不適応的人格特性の群】弱意志的特性および依存的特性

負の信念やスキーマの特性を示す群は、ICD-11の「パーソナリティ障害及び関連特性群」の中でも特定された群の一つで、「不適応的人格特性の群」として分類されています。この群に含まれる特性は、一般的には自分自身や他者に対して消極的・否定的な信念や考え方を持っていることが特徴的です。また、過去の経験やトラウマなどから形成された深い信念やスキーマを持っていることがあります。

この群には、以下のような特性が含まれます。

  • 負の信念
    自己や他者に対して否定的な信念を持ち、自分自身や他者に対して厳しい基準を設けている。
  • スキーマ
    過去の経験から形成された深い信念や認知構造で、現在の行動や感情に影響を与える。
  • 自己効力感の低さ
    自分自身の能力や可能性に対して自信を持てず、自分自身を過小評価する。
  • 恐怖・不安の強さ
    新しい状況や人間関係に対して恐怖や不安を感じやすく、それが自己表現や社会的関係性に影響を与えることがある。
  • 社会的孤立
    他者とのつながりやコミュニケーションに苦手意識を持ち、社会的孤立を感じることがある。

ICD-11によれば、弱意志的特性と依存的特性は以下のように定義されています。

弱意志的特性(Weak of Will Traits)
自己の欲求や衝動に対して抵抗する能力が弱く、自己管理が困難な特性を指します。また、自己の行動に対しての責任感が不足している場合も含まれます。弱意志的特性は以下の特性に分類されます。

  • 自制力の欠如(自制心の欠如)
    誘惑や衝動に対して抵抗することができず、自己管理が困難な傾向がある特性
  • 責任回避(Avoidance of Responsibility)
    自己の行動に対して責任を取ることを避ける傾向がある特性
  • 逃避(Escape)
    現実逃避をする傾向がある特性

依存的特性(Dependent特性)
他人に依存することが多く、自己決定能力が弱い傾向がある特性を指します。依存的特性は以下の特性に分類されます。

  • 肯定的な反応性(Positive Reactivity)
    他人からの承認や支持に対して敏感で、肯定的な反応を求める傾向がある特性
  • 非反発性(Non-assertiveness)
    自己の意見や感情をはっきりと主張することができず、他人の意見や要求に合わせる傾向がある特性
  • 不安感(不安)
    不安や不安定感を感じやすく、他人に依存することで安心感を得ようとする傾向がある特性

これらの特性が強く表れる場合、個人の生活に支障をきたすことがあります。

重症度の評価

重症度の評価

ICD-11の異常人格特性の群で診断する際には、異常人格特性を持つ人の重症度を評価することができます。この評価には、以下の4つの項目が含まれます。

  • 深刻度:異常人格特性が、人間関係や社会的な機能にどの程度影響を与えているかを評価します。例えば、人間関係の維持や仕事、学業、日常生活の遂行に問題があるかどうかを見ます。
  • 回復性:異常人格特性を持つ人が、回復する可能性がどの程度あるかを評価します。治療が効果的であるかどうかを見ます。
  • 強度:異常人格特性の症状がどの程度強いかを評価します。例えば、自己傷害や暴力行為、自殺企図などの行動につながるかどうかを見ます。
  • 他の病気との併存:異常人格特性を持つ人が、他の精神障害や身体的な疾患を持っているかどうかを評価します。異常人格特性が、他の疾患の治療に影響を与えるかどうかを見ます。

これらの評価に基づいて、異常人格特性を持つ人の重症度を決定することができます。また、異常人格特性を持つ人の治療には、個別化された治療プランが必要であり、評価に基づいたアプローチが求められます。

ICD-11の異常人格特性の群で診断する際には、重症度の評価として軽度・中等度・重度・極度の4段階の評価が存在します。ただし、この評価は個人の機能低下の程度を表すものであり、個人の症状や日常生活への影響を示すものではありません。詳しい評価については、専門の医療従事者に相談することをお勧めします。

発達的トラウマ群

発達的トラウマ群

ICD-11の発達的トラウマ群は、幼少期や青少年期に経験することが多い、重度のストレスや心的外傷に関連する異常人格特性です。この群に含まれる特性は以下の通りです。

  • 複雑性外傷後ストレス障害 (CPTSD):この診断名は、ICD-10の「複雑性PTSD」と似ていますが、より広い定義を持ちます。CPTSDは、常にストレス反応症状、自己認識や関係性に関する問題、および感情の調節障害を示す異常人格特性です。
  • 解離性障害:解離性障害は、現実感覚の喪失、身体的変化の知覚、または自己や他者に関する記憶の喪失など、意識の状態が分裂する症状を伴う異常人格特性です。
  • 境界性人格障害:境界性人格障害は、感情の不安定さ、自己像の不安定さ、間違った行動パターン、そしてしばしば自傷行為や自殺企図を含む異常人格特性です。
  • 結合不安定性障害:結合不安定性障害は、境界性人格障害に似た症状を示す異常人格特性で、感情の不安定さ、衝動的行動、および人間関係の深刻な問題を特徴としています。

これらの異常人格特性は、幼少期や青少年期に経験する重度のストレスや心的外傷と密接に関連しています。ただし、これらの特性は、厳密には診断名としてのみ存在するわけではなく、個人の状況によっては、他の異常人格特性と併存する場合があります。詳しくは、専門の医療従事者に相談することをお勧めします。

アルコール・薬物関連群

アルコール・薬物関連群

ICD-11におけるアルコール・薬物関連群は、物質使用障害と依存症に関連する診断群です。以下に詳細を説明します。

  • 物質使用障害 物質使用障害は、ある物質に対して、反復的かつ問題的な使用があることによって、身体的・精神的な健康への悪影響があると判断される状態です。ICD-11では、以下の基準に従って診断されます。
    • 物質使用における強い願望または衝動
    • 離脱症状があるか、または物質を摂取することによって離脱症状を和らげることができる
    • 物質使用の制御が困難である
    • 物質使用によって、個人的な義務や社会的な役割が妨げられる
    • 物質使用によって、身体的または心理的な問題が引き起こされる

これらの基準は、軽度、中等度、および重度の物質使用障害に分類されます。

  • 物質依存症 物質依存症は、物質使用障害のように、ある物質に対する反復的かつ問題的な使用がある状態ですが、より深刻な状態を指します。ICD-11では、以下の基準に従って診断されます。
    • 物質使用における強い願望または衝動
    • 物質使用によって、離脱症状が引き起こされる
    • 物質使用によって、耐性が発生する
    • 物質使用の制御が困難である
    • 物質使用によって、個人的な義務や社会的な役割が妨げられる
    • 物質使用によって、身体的または心理的な問題が引き起こされる

これらの基準は、軽度、中等度、および重度の物質依存症に分類されます。

ICD-11では、物質使用障害と依存症を、アルコールや他の物質に関連したものと、特定の病態や状態に関連したものの2つに分類しています。

食行動群

食行動群

ICD-11の食行動群は、食事や摂食行動に関する異常を特徴とする異常行動のパターンを示します。具体的には、以下のような診断群が含まれます。

  • 過食症群 食べ過ぎ、食事中のコントロールの欠如、体重の変動などが見られる群です。代表的な診断として「過食症」と「過食性摂食障害」があります。
  • 拒食症群 食事制限、体重管理、栄養素の摂取不足、食事に対する恐怖心などが見られる群です。「拒食症」と「拒食性摂食障害」が代表的な診断です。
  • 睡眠-食欲逆転症 睡眠と食欲に関するリズムが逆転していることを特徴とする群です。一般的には、昼間に過剰な睡眠をとり、夜に食欲が増してしまう症状が見られます。
  • 食物摂取に関連するその他の異常群 上記の診断に該当しないが、食事や摂食行動に関する異常が見られる群です。例えば、「食事中毒症」や「選択的摂食障害」があります。

ICD-11では、これらの診断群の詳細な定義や診断基準、関連する特徴などが示されています。診断の際には、専門家による評価や検査が必要となります。

性的偏向群

性的偏向群

ICD-11には、以下の3つの性的偏向群が含まれています。

  • セクシュアル・アイデンティティ群:この群は、個人のセクシュアル・アイデンティティに関連する問題を特徴とします。例えば、性的指向が混乱していると感じる人、自分自身の性別に違和感を感じる人、性的同一性障害を持つ人などが含まれます。
  • クシュアル・偏執症群 :この群は、異常な性的興味や性的欲求、性的偏執症などを特徴とします。例えば、非合意的な性的行為に興味を持つ人、異常な性的フェティッシュを持つ人、異常な性的好奇心を持つ人、性的偏執症を持つ人などが含まれます。
  • セクシュアル・機能障害群 :この群は、セクシュアル・機能に関する問題を特徴とします。例えば、性的魅力や性的興奮に関する問題、性的興奮を感じることができない問題、性交中の痛みや不快感などの問題、性行為を行うために必要な身体的な反応の問題などが含まれます。

これらの性的偏向群は、異常性欲群や性的身体化群など、以前のICD-10の診断分類に含まれていた性的障害群から改訂されました。

その他の群

ICD-11の「その他の群」には以下の2つの群が含まれています。

  • その他の症状群(その他の特定の人格行動障害)
    この群には、異常人格特性の群、性的偏向群、アルコール・薬物関連群、食行動群のいずれかには該当しないが、パーソナリティや行動に問題があると思われる場合に用いられます。例えば、パーソナリティに関する問題があるが、それが既存のパーソナリティ障害には該当しない場合などです。
  • 未特定の症状群(特定されていない人格行動障害)
    この群には、上記のいずれにも該当しないパーソナリティ障害や関連特性が含まれます。診断上は、これが最適な診断である場合もありますが、診断に不確実性が残る場合に使用されます。

2022.5.31現在、パーソナリティ障害を従来のDSM-Ⅳ・5に基づいて解説していき、後半ではあくまでもICD-11の新基準の仮定で広くパーソナリティ症を認知できるように取り組んだ結果は2⃣をご覧ください。

1 2
目次