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被害念慮と被害妄想の比較と心理反応

目次

精神病的な被害妄想

被害妄想(Persecutory Delusion)は、被害念慮よりも強烈で固定的な信念を指す精神病的な症状です。被害妄想の主要な特徴は、個人が周囲の人々や状況から脅威を感じ、自分に対する陰謀や攻撃が存在するという強固な信念を持つことです。

  1. 固定的な信念
    • 被害妄想は一般的に非常に固定的で訂正不可能な信念です。患者はその信念を疑わず、証拠や論理的な説明に耳を貸さないことがあります。これにより、信念は非常に強力で変えがたいものになります。
  2. 他人からの脅威
    • 被害妄想の持ち主は、他人や外部の力から自身への脅威を感じます。例えば、他人が陰謀を企んでいる、自分を監視している、追い詰めようとしているといった信念があります。これにより、患者は強い不安や恐怖を経験します。
  3. 現実との乖離
    • 被害妄想の信念はときおり現実と乖離しており、他の人々からは理解できないものとなります。患者が信じることが事実であるかどうかに関わらず、信念は非常に強力で現実を歪曲させます。
  4. 社会的・職業的機能の障害
    • 被害妄想は、社会的な関係や職業的な機能に影響を及ぼすことがあります。信念に基づいて行動するため、他人との信頼関係が崩れ、職場で問題が生じることがあります。
  5. 精神疾患との関連
    • 被害妄想は、精神疾患の一部として現れます。統合失調症、躁うつ病、重症のうつ病など、さまざまな精神疾患に関連しています。治療の一環として薬物療法や認知行動療法が使用されることがあります。

被害妄想は非常に深刻で困難な症状であり、適切な治療が必要です。精神保健専門家による評価と治療が被害妄想を緩和し、患者の生活の質を向上させるのに役立ちます。治療法には薬物療法や認知行動療法、支援的なセラピーなどが有効です。

被害妄想の対策

被害妄想は深刻な精神疾患の一部であり、適切な治療が必要です。対策としてアプローチも考えられますが、これらは一般的なアドバイスであり、個別の状況に応じて精神保健専門家の指導を受けることが不可欠です。

被害妄想の対策は、個別の状況に合わせて適切な治療計画を立てることから始まります。精神保健専門家の指導を受け、適切な治療法を採用することが最も重要ですが、治療には時間がかかることがあるため、患者とその家族は忍耐とサポートが必要です。

  1. 精神保健専門家の診断と治療
    • 被害妄想が継続的で困難な問題となる場合、精神保健専門家(精神科医師、臨床心理士など)の診断と治療が不可欠です。専門家は適切な治療法を提供し、症状を軽減させる助けを提供します。
  2. 薬物療法
    • 一部の精神疾患に対しては、抗精神病薬などの薬物療法が効果的であり、被害妄想の症状を軽減するのに役立ちます。ただし、薬物治療は医師の指導のもとで行う必要があります。
  3. 認知行動療法(CBT)
    • 認知行動療法は、被害妄想に対する効果的なアプローチの一つです。CBTを受けることで、妄想的な信念を探求し、認識し、変更する手助けが行われます。
  4. 情報提供と教育
    • 被害妄想を理解し、それが病状の一部であることを理解することは重要です。患者と家族に対して適切な情報提供と教育を行い、病状への理解を促進させます。
  5. 社会的サポート
    • 患者にとって家族や友人のサポートは非常に重要です。感情的なサポートと日常生活の支援を提供し、社会的孤立を減少させることが役立ちます。
  6. ストレス管理
    • ストレスは被害妄想を悪化させる要因です。ストレス管理技術を学び、日常的なストレスを軽減させます。瞑想や深呼吸などのリラクゼーション方法を試すことも有益です。
  7. 軽度なアクティビティ
    • 身体的なアクティビティや運動は、精神的な健康に寄与します。適切な運動療法を採用し、日常生活に取り入れることで、症状の軽減に寄与できます。

「悪口を言われている」と感じる心理的なプロセス

他人が「悪口を言っている」と感じているが、実際には悪口ではない状況では心理的なプロセスに関連しています。その要因には、個人差があり、感情や感覚をどのように解釈するかに影響を与えています。
例えば、攻撃的な意図がない場合でも、他人の行動を攻撃的と感じることがあります。このような場合、感情や認識を客観的に見直すこと、ストレスを管理すること、また適切なコミュニケーションスキルを身につけることが役立ちます。また、心理的なサポートを受けることも考慮されるべきです。この現象の一般的な要因と心理的な側面を説明します。

  1. 過敏性(ハイパーセンシティビティ)
    • 一部の人は、感情や社会的な刺激に対して非常に敏感です。他人の行動や言葉を過度に気にし、小さなことでも攻撃的に感じることがあります。この過敏性は、悪口ではない状況でも悪口を感じる要因となります。
  2. 過去のトラウマや嫌な経験
    • 過去にいじめや虐待などの嫌な経験をした人は、他人の行動に対して特に敏感に反応し、攻撃的と受け止めることがあります。過去のトラウマが感情の解釈に影響を与えることが考えられます。
  3. 自己評価感情の低さ
    • 自己評価感情が低い人は、他人の言動を自分に対する攻撃と受け止めやすい傾向があります。自己評価感情の低さが、攻撃性を感じる要因となることがあります。
  4. 誤解やコミュニケーションの不全
    • 一部の場合、他人の発言や行動が誤解され、本来の意図とは異なる解釈がなされます。また、コミュニケーションの不全が攻撃性の誤った感じを生むことがあります。
  5. 心理的な症状やストレス
    • 心理的な症状やストレスが高まっている場合、感情や感覚が歪むことがあります。これにより、他人の行動や発言を攻撃的と感じやすくなります。
  6. 文化的・社会的要因
    • 特定の文化や社会的環境では、自分に対する攻撃を感じやすくなることがあります。社会的比較や競争の激しい環境では、他人の行動が攻撃的と受け止められることが増えてしまいます。

生きづらさや困難への影響

「悪口を言われている」のケースなど、他人の言動を攻撃的と感じることが多い場合、社会での生きづらさや困難が生じることがあります。そこで生きづらさや社会的な問題に対処するためには、感情や認識を客観的に見直すこと、コミュニケーションスキルを向上させること、適切なサポートを受けることが大切です。また、心理的な苦痛や困難に対処するために、精神保健専門家の助けを求めることも重要です。心理療法やカウンセリングは、感情や対人関係の問題に取り組むのに役立ちます。この問題が社会でどのように影響を及ぼす可能性があるかについての説明をします。

  1. 対人関係の悪化
    • 他人の行動や言動を攻撃的に感じる傾向があると、対人関係が悪化する可能性が高まります。友人、家族、同僚とのコミュニケーションが難しくなり、孤立感や孤独感が増加することがあります。
  2. 職場での問題
    • 職場環境では、他の同僚や上司とのコミュニケーションが不可欠です。攻撃的な意図がないにもかかわらず、他人の言動を攻撃的と感じると、職場での協力やチームワークに支障をきたす可能性があります。これは昇進や仕事の安定性にも影響を与えてしまいます。
  3. 社会的孤立
    • 感情的に他人から攻撃を受けると感じる場合、社会的なイベントや活動から自己を隔てることが増え、社会的な孤立が進むことがあります。これは心身の健康に悪影響を及ぼす可能性があります。
  4. 心理的苦痛
    • 他人の言動を攻撃的と感じることが多い場合、常に緊張感や不安感を抱えることがあり、心理的な苦痛が増加します。これはうつ病や不安障害などの精神的な問題を引き起こす可能性があります。
  5. 機会の喪失
    • 他人とのコミュニケーションが難しい場合、新しい友人や仕事の機会を見逃す可能性が高まります。これが将来の成長と発展の機会を制限することにつながります。
  6. 自己肯定感の低下
    • 常に攻撃的な意図を感じることは、自己評価感情を低下させる可能性があります。自分に対する信頼感や自己価値感が低いと、自己実現や目標達成が難しくなります。

自己肯定感の低下の可能性

自己肯定感や自己評価感情の低さは個人差があり、さまざまな要因によって形成されます。例えば、個人の生い立ちや経験、環境、心理的な要因など、多くの要因によって形成されています。
低下している自己肯定感は、個人の生活に様々な影響を及ぼす可能性があるため、適切なサポートや心理的なアプローチが必要な場合もあります。
自己肯定感や自己評価感情が低くなる可能性のある主な要因を示します。

  1. 過去の負の経験
    • 過去にいじめ、虐待、トラウマ、失敗などの負の経験を経験した場合、それが自己肯定感を低下させる要因となります。これらの経験は、自分自身に対する信頼感を揺るがし、自己評価を貶めることがあります。
  2. 否定的な自己評価の強化
    • 周囲の人から否定的な評価や批判を受け続けると、自己評価感情が低下します。特に幼少期や青少年期に、親、教師、友人からの否定的なフィードバックが影響を受けていることがあります。
  3. 社会比較
    • 自己評価感情は、他人との比較によっても形成され、他人と比較して自分が不十分であると感じる場合、自己評価が低くなります。社会的な圧力や競争が高い環境で生活すると、このような感情が増加することがあります。
  4. 自己内部の対話
    • 自己肯定感や自己評価感情は、自分自身との内部対話にも影響されます。自己批判的な思考やネガティブな自己イメージを持ち続けることが、自己評価感情を低下させる原因となります。
  5. 心理的な疾患
    • うつ病、不安障害、摂食障害などの心理的な疾患は、自己評価感情を低下させてしまいます。これらの疾患により、自己価値感が歪められ、否定的な感情が強化されることがあります。
  6. 環境要因
    • 社会的経済的な困難、不安定な家庭環境、社会的孤立などの環境要因も、自己肯定感を低下させる可能性があります。
  7. パーソナリティ特性
    • 一部の人は、性格的に自己評価感情が低い傾向があります。これはパーソナリティ特性や傾向に関連しています。

具体的な心理療法

心理療法やカウンセリングは、自己肯定感や自己評価感情を向上させるために、個人のニーズや状況に合わせて有効なアプローチを提供します。専門家はクライアントの個別の課題に焦点を当て、対応策を提供するためにさまざまなアプローチを組み合わせていますが、重要なのはクライアントとセラピストの信頼関係が構築され、クライアントが自己評価感情を向上させるサポートを受けられることです。具体的な対応方法の一例を示します。

  1. 認知行動療法(CBT)
    • CBTは、自己評価感情や自己肯定感の低さに対処するために広く用いられるアプローチです。具体的なステップは次の通りです。
      • 自己評価の認識: クライアントは自己評価感情を認識し、それがどのように形成されているかを理解します。
      • ネガティブな信念の探求: ネガティブな自己評価や信念を特定し、それらがどのように生じたかを探求します。
      • 認知の修正: ネガティブな信念を客観的に評価し、証拠に基づいた肯定的な信念に変えるための認知的な修正を行います。
      • 行動の変更: 新しい信念を実際の行動に反映させ、自己評価感情を向上させる行動を推進します。
  2. 感情焦点療法
    • 感情焦点療法は、クライアントの感情を理解し、受け入れることに焦点を当てるアプローチです。自己評価感情が低い場合、クライアントは自分の感情に耳を傾け、感情を表現し、受け入れる方法を学びます。これにより、感情的な健康を向上させることができます。
  3. 自己啓発プログラム
    • 自己肯定感を向上させるために、自己啓発プログラムを使用することもあります。これには自己啓発書籍、オンラインリソース、ワークブックなどになります。これらのプログラムは、自己評価感情を高め、ポジティブな自己像を構築するのに役立ちます。
  4. 自己洞察の促進
    • クライアントに自己洞察を促すことが重要です。自分自身を理解し、自己評価感情を形成する要因についての洞察を得ることは、変容の第一歩です。
  5. 目標設定と成就
    • クライアントには、小さな目標から始めて成功体験を積み重ねるよう促します。成功体験は自己評価感情を高め、自己肯定感を向上させるのに役立ちます。
  6. サポートシステムの構築:
    • クライアントには、友人や家族などのサポートシステムを構築するのを支援します。サポートシステムはクライアントの自己肯定感を支え、困難な時に支えとなります。

認知行動療法のステップ

認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy、CBT)は、感情や行動に影響を与える認知(思考・信念)と行動のパターンを変えることを通じて、精神的な健康の向上を促すための効果的な心理療法です。CBTは、個別の問題や症状に合わせてカスタマイズされるため、セラピストとクライアントの協力が重要です。セラピストはクライアントのニーズに合わせてアプローチを調整し、クライアントが健康的な変化を実現できるようにサポートします。

CBTの基本的なステップを詳しく説明します。

STEP
評価と目標設定

最初に、クライアントとセラピストは現在の問題や症状を評価し、クライアントの目標を明確にします。クライアントは何を達成したいか、どのような変化を望むかを話します。

STEP
問題の特定

セラピストとクライアントは、クライアントが抱える具体的な問題や課題を特定します。これには感情、行動、思考のパターンなどです。

STEP
思考の認識

CBTでは、クライアントの負の思考や信念を認識し、特定します。クライアントが自分や状況についてどのように考えているかを明らかにします。

STEP
思考の評価

セラピストはクライアントの思考を客観的に評価し、合理的かつ現実的な思考と、不合理な思考を区別します。不合理な思考が問題の原因となっています。

STEP
思考の修正

不合理な思考を特定したら、セラピストとクライアントはこれらの思考を修正する方法を見つけます。クライアントは新しい、より健康的な思考を学び、実践します。

STEP
行動の変更

CBTでは、思考だけでなく、行動も重要な要素と考えられています。クライアントは新しい思考と行動パターンを練習し、現実の状況で実行します。望ましくない行動を変更し、健康的な行動に置き換えることが目標です。

STEP
実験と宿題

クライアントは、セラピストからの宿題や実験を通じて新しいスキルや行動を練習します。これにより、日常生活での変化が持続的に実感できるようになります。

STEP
フィードバックと調整

セラピストはクライアントの進捗をモニタリングし、セッションごとにフィードバックを提供します。必要に応じて治療計画を調整し、新たな目標を設定することがあります。

STEP
維持と予防

クライアントが目標を達成した後も、CBTは維持と予防に焦点を当てます。クライアントは習得したスキルを使い続け、将来のストレスや課題に対処するためのリソースを構築します。

スキーマ療法のステップ

スキーマ療法(Schema Therapy)は、感情や行動の問題の背後にある「スキーマ」と呼ばれる深層心理的なパターンを理解し、変容させることを目指す心理療法です。スキーマ療法は、深層心理的なパターンにアクセスし、根本的な変容を促す効果的なアプローチとされています。セラピストとクライアントは共同でスキーマに関連する問題に取り組み、クライアントの感情と行動を健康的な方向に向けて変えていくプロセスです。
スキーマ療法の基本的なステップを詳しく説明します。

STEP
評価と評価

最初に、クライアントとセラピストは現在の問題や症状を評価します。これには、感情、思考、行動パターンの分析となります。クライアントの過去の経験や家族の影響も考慮されます。

STEP
スキーマの特定

セラピストはクライアントの深層心理に存在するスキーマ(認知スキーマ)を特定します。スキーマは、幼少期や青少年期に形成され、問題の根本的な原因となるものです。

STEP
スキーマの理解

セラピストとクライアントは、スキーマがどのように形成され、どのように感情や行動に影響を与えているかを理解します。スキーマが自己評価に及ぼす影響や他人との関係に対する影響も探求されます。

STEP
感情とスキーマの関連付け

クライアントは、自身の感情と特定のスキーマとの関連性を認識します。例えば、自己非難的なスキーマが自己評価を低くし、うつ病の感情を引き起こすかもしれません。

STEP
スキーマの評価

セラピストとクライアントは、各スキーマの合理的性格を評価します。スキーマがクライアントの生活にどのように影響を与え、問題を引き起こすかを明確にします。

STEP
スキーマの修正

スキーマ療法では、クライアントは不健康なスキーマを修正し、健全な代替スキーマを構築する方法を学びます。これには、新しい信念や行動パターンの習得などが対象となります。

STEP
感情と行動の変容

クライアントは新しいスキーマや認知に基づいて感情と行動を変容させ、健康的な関係を構築します。これには、スキーマに基づく反応パターンを変更するトレーニングなどとなります。

STEP
維持と予防

クライアントがスキーマの修正を達成した後も、維持と予防のための戦略が提供されます。これには、新しいスキーマと行動パターンの維持、将来のストレスに対処する方法の強化となります。

被害念慮と被害妄想の判別のためのチェックリスト

被害念慮と被害妄想の判別のためのチェックリスト(全40問)です。項目に対する回答は5段階評価で、0=まったくない、1=少しある、2=ある、3=多くある、 4=いつもあるで答えてください。

被害念慮と被害妄想の判別のためのチェックリスト40問
【A. 対人過敏傾向(被害念慮寄り)】
1.人の視線が気になり、「自分のことを見ているのでは」と思うことがよくある
2.誰かの笑い声が自分に関係していると感じる
3.他人のちょっとした言葉に深く傷つくことが多い
4.自分に対して批判的な態度を感じやすい
5.SNSで他人が無視したように感じると、落ち込む
6.面と向かって話されないと、自分への不満を裏で言っているのではと思う
7.グループ内で一人だけ扱いが違うと感じるとき、不安になる
8.相手の何気ない言動から「嫌われている」と思い込んでしまうことがある
9.過去の些細なやりとりを繰り返し思い出してしまう
10.「気にしすぎだよ」と言われた経験がある
【B. 認知の歪みと確信性】
11.自分のせいで空気が悪くなったと感じることが多い
12.「自分を嫌っている人が多い」と思いがちだ
13.他人の無表情や沈黙が、自分への敵意に感じる
14.説明がないと、悪いことが起きるのではと疑ってしまう
15.「被害者である」という感覚がなかなか消えない
16.周囲の人たちが自分について何か話している気がする
17.「やっぱり自分が悪いのかもしれない」と思い込む
18.自分が他人に誤解されやすいと強く思う
19.「これは偶然ではなく、誰かの仕掛けだ」と思うことがある
20.説明しても「信じてもらえない」と感じやすい
【C. 妄想的確信・現実検討力(被害妄想寄り)】
21.自分にしか分からない“つながり”や“暗号”があると感じる
22.周囲の人々が結託して、自分を監視していると確信している
23.家の中に盗聴器や隠しカメラが仕掛けられていると感じたことがある
24.知らない人にまで悪意を感じることがある
25.自分の発言や行動が「誰かに操作されている」と感じる
26.生活の中に“偶然とは思えない”出来事が頻繁に起こる
27.メディア(テレビ・ネットなど)が自分のことを示唆していると思う
28.自分のことを狙う集団が存在すると信じている
29.誰にも相談できないが、自分だけが真実を知っている気がする
30.医師や支援者さえも信じられないときがある
【D. 生活への影響・行動化】
31.疑いの気持ちから、人と距離を置くようになった
32.不信感のせいで、友人や家族と疎遠になった
33.嫌がらせを受けていると感じて、警察や弁護士に相談したことがある
34.安心できる場所がないと感じている
35.電話やSNSの履歴を何度も確認してしまう
36.相手の言動を録音・記録したいと思ったことがある
37.鍵やカーテンの確認を繰り返すことがある
38.仕事や学校に行くのが不安で仕方がない
39.疑いや不安のせいで、日常生活に大きな支障が出ている
40.精神科やカウンセリングにかかろうか迷ったことがある/通っている

評価

チェックリスト構成

  • A. 対人過敏傾向(=被害念慮の特徴) … 10問
  • B. 認知の歪みと確信性(=両者に共通するが程度が異なる) … 10問
  • C. 妄想的確信・現実検討力(=被害妄想の特徴) … 10問
  • D. 生活への影響・行動化 … 10問

判別のための参考ポイント

  • 被害念慮が強い人:1~10、11~20あたりに「当てはまる」が多く、21~30には確信性がない or 回避的態度が見られる
  • 被害妄想が疑われる人:21~30のような内容に確信的な反応(「ある」ではなく「信じている」)、かつ日常生活に支障を来している(31~40)

解釈ガイドの構成

採点方法・回答方式の説明

  • 回答形式:5段階評価(例:0=まったくない ~ 4=いつもある)
  • 各セクション(A〜D)の合計点を出す or 平均点を出す
  • 点数の高低による傾向評価(※診断目的ではなく、状態把握・アセスメント用)

各領域の解釈例

【A. 対人過敏傾向(被害念慮傾向)】
  • 高スコア(30点以上)
    → 他人からの評価や反応に強い敏感さをもち、不安・緊張が対人関係に影響している。内向性・自己評価の低さが背景にある可能性。
  • 低スコア(10点以下)
    → 他人の目や反応にあまり振り回されていない。被害念慮傾向は乏しい。
【B. 認知の歪みと確信性】
  • 高スコア(30点以上)
    → 被害的な認知の枠組みが強く、柔軟性が乏しい可能性あり。「歪み」よりも「信念化」に近づいている場合、妄想との境界があいまいになることも。
  • 中程度スコア
    → 被害念慮と現実的な反応の間で揺れている段階。
【C. 妄想的確信・現実検討力】
  • 高スコア(30点以上)
    → 精神病圏の可能性が高まる。現実検討力の低下が見られ、妄想性障害や統合失調症の初期兆候の評価が必要。
  • 中〜低スコア
    → 妄想水準までは到達していないが、強い疑念が一部にある状態(誤解・不信としての理解が可能)。
【D. 生活への影響・行動化】
  • 高スコア(30点以上)
    → 被害的な認知が行動や生活の制限・孤立を引き起こしている。支援の必要性が高い。
  • 中スコア(15〜25点)
    → 不安や疑念はあるが、生活は部分的に維持されている。
  • 低スコア
    → 自覚はあっても、現実的対応力が比較的保たれている。

全体傾向の分類(暫定的見立て)

傾向タイプ特徴推奨対応
① 被害念慮優勢型A・Bが高く、Cは低い認知行動療法的な関わりや対人スキル支援が有効
② 境界領域型A・B・Cが中程度で混在継続的な観察が必要。信念の固定化に注意
③ 被害妄想傾向型C・Dが特に高い精神科的評価が必要。抗精神病薬や包括的支援が視野に入る
④ 状況反応型Dは高めだがCは低い実際の環境要因が関与している可能性。環境調整や現実的支援が有効

まとめ:被害念慮と被害妄想の構図

■ 1. 「気づきの余地」の有無

  • 被害念慮
    → 自分の受け取り方に対して「気にしすぎかな」「勘違いかも」と内省的なゆらぎがあることが多い。
    → 他者の視点や説明によって「そういうふうにも考えられるかもしれない」と再検討の余地がある。
    カウンセリングや認知再構成が有効に働きやすい
  • 被害妄想
    → 自分の考えが「絶対に正しい」と確信されており、訂正が非常に困難。
    → 外部からの反論や説明は「むしろ敵意の証拠」として組み込まれることもある(妄想体系化)。
    精神病理的介入や薬物療法が必要になることがある

■ 2. 「現実検討力(reality testing)」の保持・喪失

  • 被害念慮
    → 現実と主観の区別がある程度保たれており、「自分の感じ方かもしれない」という判断が可能。
    → 感情の過敏さや不安が中心。
  • 被害妄想
    → 現実検討力が大きく低下し、「客観的な事実」よりも「主観的な確信」が優先される。
    → 確信が確証バイアスによって強化され、現実の情報が妄想的な枠組みに取り込まれる。

■ 3. 「人間関係・社会性」への影響の質と深さ

  • 被害念慮
    → 過敏さゆえに人との関係がぎくしゃくしやすいが、「関わりたい気持ち」自体はある。
    → 傷つきやすさや自己評価の問題とも関係しやすい。
  • 被害妄想
    → 他者が「敵」や「加害者」として知覚され、人間関係が根本から崩れやすい。
    → 孤立化や社会的機能の低下を招きやすく、支援が届きにくくなるリスクがある。

■ 4. 発症経過・背景の違い

  • 被害念慮
    → 愛着不安、自己肯定感の低さ、過去の対人トラウマなどが背景にあることが多い。
    → 状況的なストレスや対人関係のこじれによって一時的に強まる。
  • 被害妄想
    → 統合失調症スペクトラム障害、妄想性障害、脳器質性障害(高齢期など)などの精神病圏の関与が想定される。
    → 徐々に妄想体系が形成され、時間とともに強化・固定される傾向。

総括的に言えば:

  • 被害念慮は「こころの痛みによる歪んだ受け取り方」
  • 被害妄想は「現実の組み替えそのもの」

という構図が、面接や支援の在り方を決める上での判断材料になります。


  • 「精神病理学入門」(著者:David H. Barlow、V. Mark Durand)
  • 「精神医学のカプラン・アンド・サドック」(著者:Benjamin J. Sadock、Virginia A. Sadock)
  • 認知行動療法の基本と実際」(著者:Judith S. Beck)
  • 「CBTの実践ガイド:臨床的な戦略とテクニック」(著者:Robert L. Leahy)
  • 「ストレス管理の心理学」(著者:Richard S. Lazarus、Susan Folkman)
  • 「瞑想とリラクゼーション:実践的なガイド」(著者:Shinzen Young)
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