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アルコール依存症の症状と診断、関連する知識

目次

アルコール依存症の症状と診断・進行・代謝・耐性・離脱作用・睡眠についての知識

アルコール関連精神症は、アルコールの乱用や依存によって引き起こされる精神症の総称です。アルコール関連精神症には、アルコール乱用症、アルコール依存症、アルコール離脱症状、アルコール認知症などが含まれます。

アルコール依存症は、アルコールの摂取が身体的・精神的に必要になり制御が難しくなる状態です。アルコール依存症の主な特徴は、以下のようなものが挙げられます。

  • アルコールの消費量が増える
  • アルコールを止めることができない
  • アルコールのために日常生活や社会生活に支障が出る
  • アルコールのために健康が損なわれる
  • アルコールをやめたときに離脱症状が出る

アルコール依存症は、長期的にアルコールを摂取し続けたことによって、脳の神経回路に変化が起きることが原因と考えられています。アルコールを摂取することで、多量のドーパミンが放出され、快感をもたらす反応が起こります。このため、アルコール依存症の人は、アルコールを摂取することでドーパミン放出が起こり、快感を得ることができるため、やめることが難しくなると考えられています。

アルコール依存症の多くは、機会があるごとに飲酒する機会飲酒から始まり、飲酒することが習慣化される「習慣飲酒」となります。数年間の習慣飲酒の期間を経て「中期段階」の身体的な依存症状が出始め、依存症状が深刻化して「離脱作用」が強くなり、「末期段階」へと進みます。
また、機会飲酒から進むのではなく、うつ病や不安症のような気分の落ち込みから不安や不眠に対する自己治療を目的としてアルコール依存症に発展するケースもあります。
アルコールは中毒や依存症、身体疾患を起こす薬物ですが、世界のほとんどの国では合法でどこでも手に入るようになっています。
我が国においてアルコールが合法である意味としては、飲酒は古来より祝祭や会食など多くの場面で飲まれるなど、生活・文化の一部として親しまれてきていていますが、一般的に人間は飲酒の量や頻度を制御できるからであると考えています。

しかし、2013年の厚労省の調査では、アルコール依存症の診断基準を満たす患者数は外来9万5,579人、入院者数は2万5,606人で、潜在的な依存症者数は男性:1.0%、女性:0.2%で約57万人であり、過去に依存症経験者を含めると100万人を超えてしまいます。また、軽症者も含めると220万人と推計されています。
2016年のWHOの報告ではアルコールの使用によって毎年300万人が死亡しています。

しかしながら、飲酒の低年齢化が問題となっている他、一気飲みなど急激な大量飲酒によって急性アルコール中毒の致死的な行為となっています。また、妊娠中の母親の常習的な飲酒により、胎児に知的能力障害や先天性の異常が現れる胎児アルコール症候群も知られています。

ICD-11/アルコール依存症の診断基準

ICD-11(国際疾病分類第11版)では、アルコール依存症の診断基準は以下のように定義されています。

  1. アルコールに対する強迫的な欲求または欲求の感じ方
  2. アルコールを制限する能力の欠如または制限された能力
  3. アルコール使用による身体的離脱症状の出現または身体的離脱症状を避けるためにアルコールを使用するためのアルコールの消費
  4. アルコール消費によって生じるアルコール性の身体的または精神的問題にもかかわらず、アルコールを使用し続けることに関する無関心または拒否の態度

これらの基準のうち、1つ以上の項目が1年以上の期間にわたって継続している場合、アルコール依存症と診断されます。
ICD-11では、アルコール依存症を「有害な使用」、「有害な使用障害」、「中毒症候群」の3つのカテゴリーに分類することができます。

ICD-11におけるアルコールに関する3つのカテゴリーは以下の通りです。

  • 有害な使用
    • アルコールの摂取によって、健康への有害な影響が生じている場合に診断される。
    • アルコールの過剰摂取やアルコール依存症の診断基準を満たしていなくても、アルコールの使用が問題を引き起こしている場合に診断される。
  • 有害な使用障害
    • アルコールの使用が、身体的または精神的な健康に有害な影響を与える可能性がある場合に診断される。
    • アルコール使用の問題が、アルコール依存症の診断基準を満たしていなくても存在する場合に診断される。
  • 中毒症候群
    • アルコール依存症の診断基準を満たしている場合に診断される。
    • アルコールに対する強迫的な欲求、アルコールの制限能力の欠如、アルコール消費による身体的離脱症状、身体的または精神的問題にもかかわらずアルコールの使用を継続する傾向がある場合に診断される。

これらのカテゴリーは、アルコール使用によって引き起こされる健康上の問題の程度に応じて区分されます。有害な使用は、問題が最も軽微であり、中毒症候群は最も深刻な問題を引き起こすとされています。
また、アルコール使用障害には、アルコール依存症の他に、アルコール関連障害が含まれます。アルコール関連障害は、アルコールの使用によって生じる身体的な問題を指します。肝臓の損傷、胃腸の痛み、神経障害などが代表的なアルコール関連障害です。

アルコール依存症スクーリングテスト

新久里浜式アルコール症スクリーングテスト:男性版

項目yesno
1.食事は1日3回、ほぼ規則的にとっている0点1点
2.糖尿病、肝臓病、心臓病と診断され、その治療を受けたことがある1点0点
3.酒を飲まないと寝付けないことが多い1点0点
4.二日酔いで休むことや、大事な約束を守らないことがある1点0点
5.酒をやめる必要性を感じたことがある1点0点
6.酒を飲まなければいい人だとよく言われる1点0点
7.家族に隠すようにして酒を飲むことがある1点0点
8.酒が切れた時に汗が出る、手が震える、イライラ、不眠になることがある1点0点
9.一人で朝酒や昼酒の経験が何度かある1点0点
10飲まない方がよい生活が送れそうだと思う1点0点
合計点が4点以上アルコール依存症の疑い群
合計点が1〜3点要注意群、ただし質問項目1番の1点のみの場合は正常群
合計点が0点正常群

新久里浜式アルコール症スクリーングテスト:女性版

項目yesno
1.酒を飲まないと寝付けないことが多い1点0点
2.医師からアルコールを控えるように言われたことがある1点0点
3.今日だけは酒を飲むまいと思っても、つい飲んでしまうことがある1点0点
4.酒の量を減らそうとしたり、酒をやめようと試みたことがある1点0点
5.飲酒しながら、仕事、家事、育児をすることがある1点0点
6.私のしていた仕事を周りの人がするようになった1点0点
7.酒を飲まなければいい人だとよく言われる1点0点
8.自分の飲酒について、後ろめたさを感じたことがある1点0点
合計点が3点以上アルコール依存症の疑い群
合計点が1〜2点要注意群、ただし質問項目6番の1点のみの場合は正常群
合計点が0点正常群

アルコールの飲酒量

アルコール依存症には、アルコールの飲酒量が関係あるとされていて、節度ある適度な飲酒量は1日平均20gとし、多量飲酒は1日平均が60gを超える飲酒としています。
20gは、ビール中瓶1本、日本酒1合弱、25度の焼酎100㎖、40度のウイスキー30㎖となります。
しかし、個人差はありますが、酔いの症状の目安は次の通りとなります。

  • ビール(500㎖): ほろ酔い初期〜ほろ酔い極期
  • ウイスキーのシングル(30㎖): ほろ酔い初期〜ほろ酔い極期
  • 一合の日本酒(180㎖): ほろ酔い初期〜ほろ酔い極期
  • 焼酎100㎖:ほろ酔い初期〜ほろ酔い極期
爽快期0.03〜0.05%軽度の気分高揚感や強調感
ほろ酔い初期0.06〜0.10%心身ともにリラックスし、興奮を感じる
ほろ酔い極限0.11〜0.20%興奮や強調感がピークに達するが、判断力や反応力が低下
酩酊期0.21〜0.30%判断力や反応力が著しく低下し、言動や動作が乱れる
泥酔期0.31〜0.40%不快意識障害に陥り、言動や動作がまともにできない
昏睡期0.41以上呼吸不全や心停止などの危険性が高まる

アルコール依存症の進行

アルコール依存症の進行は一概には言えませんが、一般的には以下のような段階に分けられることがあります。

進行
初期段階

アルコールを飲むことが習慣化され、飲む量が増えていきます。飲むために時間や場所を選ばず、周囲の人々と飲み過ぎることがあります。この段階では、まだアルコールに対する耐性は低く、離脱症状もほとんどありません。

進行
中期段階

身体的な依存症状が出始め、アルコールを飲まないと不快感や不安感が生じます。また、アルコールの摂取量が増え、日常生活に支障をきたすようになります。家族や友人、職場などでトラブルが起こることがあります。

進行
末期段階

身体的な依存症状が深刻化し、離脱症状も強くなります。アルコールを飲まないと、幻覚や妄想、重篤な身体症状などを生じることがあります。社会的・家庭的な問題も深刻化し、経済的・法的なトラブルが起こることもあります。また、アルコールによる身体的な障害も起きています。

アルコールの代謝について

アルコールの代謝には、主にアルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)とアルデヒドデヒドロゲナーゼ(ALDH)という2つの酵素が関与しています。

ADHは、アルコールをアルデヒドに変換する酵素であり、ALDHは、アルデヒドを酢酸に変換する酵素です。特に、ALDHにはALDH1型とALDH2型の2つのタイプがあり、ALDH2型の欠損がアジア人に多く、アルデヒドが蓄積し、アルコールの代謝が遅くなることが報告されています。
これらの生体反応は個人差があります。例えば、アルコールの代謝が速い人は、アルコールを多く摂取してもアルコールの血中濃度が低く、アルコール依存症にかかりにくいとされています。一方で、アルコールの代謝が遅い人は、アルコールの血中濃度が高くなりやすく、アルコール依存症にかかりやすいとされています。

また、人種・民族によっても代謝の差異が見られることがあります。例えば、ALDH2型の欠損が多くみられるアジア人は、アルコールの代謝が遅くなるため、アルコールを摂取した場合にアルデヒドが蓄積し、顔のほてりや動悸などの症状が現れます。このような症状は「アジア人のアルコール反応」と呼ばれ、アルコールの過剰摂取を防止するためにも重要な情報となります。

アルコール依存症との関係については、個人差や人種・民族差があるものの、アルコールの代謝速度が遅い人や、ALDH2型の欠損がある人は、アルコール依存症にかかりやすいとされています。ただし、アルコール依存症は複雑な疾患であり、代謝の差異だけでなく、遺伝的・社会的・心理的な要因なども影響するため、一概に個人差や人種・民族差だけで説明できるものではありません。

また、アルコール依存症は、アルコールの摂取量や代謝の差異だけでなく、多くの要因が関係しています。たとえば、ストレスやうつ病、家族内でのアルコール依存症の有無、社会的な圧力などがリスク要因として挙げられます。これらの要因を踏まえた上で、アルコール依存症の予防や治療には、医療機関や専門家の指導の下で適切なアプローチが必要です。

総じて言えることは、個人差や人種・民族差があるものの、アルコールの代謝に関連する生体反応や遺伝的要因は、アルコール依存症のリスクと関係している可能性があるということです。しかし、アルコール依存症にかかるかどうかは、単一の要因だけで決まるものではなく、複数の要因が影響することを忘れてはいけません。

アルコールの耐性と離脱症状

アルコールの耐性は、アルコールを継続的に摂取することで生じます。このため、アルコール依存症者は、より多くのアルコールを消費します。また、耐性があるため、アルコールの影響を感じにくくなり、アルコールを過剰に摂取してしまいます。

一方、アルコール依存症者がアルコールの摂取を中断すると、離脱症状が現れます。離脱症状は、アルコール依存症者にとって非常につらい症状であり、一部の人々にとっては危険な状態になることがあります。

アルコール離脱症状には、以下のようなものがあります。

早期症候群(小離脱)

手の震え、不安、不眠、悪心、嘔吐、頭痛、食欲不振、発汗などが現れます。これらの症状は、数時間から数日の間に現れます。

後期症候群(大離脱)

幻覚、錯覚、抑うつ、不安、高血圧、体温上昇、痙攣、てんかんなどが現れます。これらの症状は、数日から数週間にわたって現れます。

退薬症状の出現や症状の重症度は、アルコールの使用の頻度や量、およびアルコール使用期間などによって異なります。アルコール依存症者がアルコール使用を中断すると、離脱症状が現れる可能性があるため、医療的なサポートや治療が必要となる場合があります。

アルコール依存症は、長期にわたるアルコールの過剰摂取によって生じる状態であり、アルコールの耐性が発生し、アルコールを中断すると離脱症状が現れることが特徴です。

急性薬理作用の酩酊の種類

単純酩酊

アルコールの消費量が増えると、中枢神経系が抑制され脳の機能が低下します。この結果、言語や認知機能、判断力が低下し体を動かしにくくなります。これが単純酩酊と呼ばれる状態です。

異常酩酊

アルコールの消費には個人差がありますが、異常な反応を引き起こすことがあります。これは、通常のアルコール酩酊とは異なる状態であり、興奮状態や幻覚、錯覚、パニック発作などが起こることがあります。

複雑酩酊

アルコールの摂取が続くと、複雑な状態に陥ることがあります。これは、異常酩酊に加え、幻覚、錯覚、過剰行動、意識障害、偏執症状などがあらわれます。

病的酩酊

病的酩酊は、少量のアルコールでも起こることがある異常な状態であり、攻撃的な行動、情緒不安定、記憶障害、幻覚、錯覚、意識障害などがあらわれます。ICD-10では「病的アルコール中毒」として分類されていましたが、ICD-11では「アルコール使用障害」に位置づけられ、軽度、中等度、重度の3つに分類されています。

  • 軽度のアルコール使用障害は、アルコールを過剰に摂取することがあり、アルコールによる問題や障害が出現することがある状態です。
  • 中等度のアルコール使用障害は、アルコールを過剰に摂取することが頻繁にあり、社会的、身体的、精神的な問題や障害が出現する状態です。
  • 重度のアルコール使用障害は、アルコール依存症の症状が出現する状態であり、離脱症状があらわれ、アルコール依存症による身体的、精神的な問題や障害が顕著にあらわれます。

アルコール依存症の神経精神症状

  • 振戦せん妄
    アルコール依存症患者がアルコールを断った場合に現れる、手足の震えや不安感、不眠などの症状を指します。重症化すると幻覚、てんかん発作、高熱、脱水症状などが出現することがあります。
  • アルコール幻覚症
    アルコール依存症患者がアルコールを摂取しなかった場合に現れる、幻覚や妄想を伴う症状を指します。幻覚の内容は多様で、小動物が見える、蜘蛛や虫が這い回っている、人々が自分を見つめているなどのものがあります。
  • アルコール性嫉妬妄想
    アルコール依存症患者がアルコールを断った場合に現れる、配偶者に対する不信感や嫉妬心を伴う妄想を指します。パートナーが浮気をしている、自分を裏切っているなどの内容が多いです。
  • ウエルニッケ・コルサコフ症候群
    長期間にわたるアルコールの摂取によって、ビタミンB1の欠乏が引き起こされる症候群です。主な症状は、記憶障害、眼筋麻痺、共浴妄想などです。
  • アルコール性痴呆
    長期間にわたるアルコールの摂取によって、脳に損傷が生じることで引き起こされる痴呆症状を指します。主な症状は、記憶障害、判断力低下、社会性の喪失、行動の抑制が困難となるなどです。

アルコール摂取と睡眠の関係

アルコールは、睡眠に深刻な影響を与えることが知られています。アルコールを摂取すると、最初はリラックスして眠りやすくなるように感じられますが、これは、アルコールには中枢神経を抑制するために眠気を誘う作用があるからです。その後は通常の睡眠周期を妨げ、深い眠りに至ることを妨げるため眠りが浅くなり、何度も目が覚める可能性が高くなります。
また、アルコールが体内から排泄される際には、脳波の様式が変化し、レム睡眠が減少することが報告されています。レム睡眠は、夢を見るための重要な睡眠段階であるため、アルコールの摂取が夢を減少させる原因の1つと考えられています。
アルコールを過剰に摂取すると、アルコールの消化代謝によって生じる身体的な不快感や頭痛なども睡眠の質を低下させることがあります。
一方、アルコール依存症の人たちは、睡眠障害を抱えることが多くなります。アルコール依存症の人たちは、アルコールを飲むことで睡眠につこうとします。しかし、アルコールを飲むことで深い眠りに移行できなくなり熟睡できなくなります。また、アルコールを飲まないと眠れないという状態になることもあります。

厚労省/成人の飲酒実態と関連問題の予防について
標準精神医学第8版:尾崎紀夫・三村將・水野雅文・村井俊哉/医学書院(2021年版)
精神疾患の診療ガイドライン(アルコール関連障害)
MSDマニュアル プロフェッショナル版(アルコール関連障害)
米国国立精神衛生研究所(NIMH)(アルコール使用障害)
アルコール依存症治療の手引き(日本アルコール関連問題学会)
日本アルコール・薬物医療機構. アルコール依存症診療ガイドライン2015.
福島県健康安全研究センター. アルコール依存症診療ガイドライン2021.
医薬品医療機器総合機構(PMDA)「アルコール依存症に対する薬物療法に関する包括的指針」(2018年改訂版)
日本アルコール関連問題学会「アルコール依存症に対する薬物療法の手引き」(2015年版)


https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3860487/
https://www.niaaa.nih.gov/alcohol-health/overview-alcohol-consumption/alcohol-use-disorders/treatment-alcohol-use-disorders
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4553654/
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