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精神医学・神経科学の歴史上重要な研究者をイラストで学ぶ

目次

精神疾患の3層構造モデル

精神医学・神経科学・臨床心理学の歴史を統合して理解するために、現在よく用いられる整理が 「精神疾患の3層構造モデル」 です。
これは精神疾患を 単一原因ではなく多層構造として理解する枠組み です。

結論から言うと精神疾患は

①脳(神経)
②心理(認知・感情)
③人生経験・環境

の三層が相互作用して生じます。

精神疾患の3層構造モデル

社会・人生経験層
(トラウマ・環境・人間関係)



心理層
(思考・感情・行動パターン)



神経生物学層
(脳回路・神経伝達物質・遺伝)

この三層は 一方向ではなく相互に影響 します。

① 神経生物学層(脳・神経)

ここは精神医学・神経科学の領域です。

主な要因

要因内容
遺伝遺伝的脆弱性
神経伝達物質セロトニン・ドーパミン
脳回路前頭前野・扁桃体
神経可塑性脳の変化能力

うつ病

  • 前頭前野低活動
  • 扁桃体過活動
  • セロトニン低下
② 心理層(認知・感情・行動)

ここが 臨床心理学の中心領域 です。

主な要因

要因内容
認知思考パターン
感情不安・怒り
行動回避・依存
スキーマ深い信念

うつ病

  • 自己否定
  • 未来悲観
  • 無価値感
③ 社会・人生経験層(環境)

精神疾患の発症には、人生経験が大きく影響します。

主な要因

要因内容
ACE逆境的小児体験
愛着安全基地
人間関係家族・社会
ストレス喪失・孤立

トラウマ→ 扁桃体過敏

治療も三層で行う

精神医療は三層を対象にします。

治療
薬物療法
心理心理療法
社会環境支援

例:うつ病

内容
セロトニン低下
心理自己否定
環境喪失体験

現代精神医学の核心
現在の精神医学は、生物心理社会モデル(Biopsychosocial Model: BPSモデル)と呼ばれます。

臨床心理学の役割
臨床心理学は、心理層を変化させることで脳回路を変えると理解されています。
研究では、CBT、EMDRマインドフルネスなどが脳可塑性を変化させることが示されています。

精神疾患の4層モデル(神経精神医学)

精神医学史・脳科学・DSM・精神薬理学・臨床心理学 を統合して理解する際、近年の神経精神医学では 「精神疾患の4層モデル」 という考え方で整理されることが増えています。

これは従来の 生物心理社会モデル(3層) を発展させ、脳の情報処理レベルを独立させたものです。

結論から言うと精神疾患は、つぎのという 4層の階層システムとして理解されます。

① 神経分子層
② 脳回路層
③ 心理情報処理層
④ 社会・人生経験層

④ 社会・人生経験層
(トラウマ・人間関係・文化)

③ 心理情報処理層
(認知・感情・行動)

② 脳回路層
(神経ネットワーク)

① 神経分子層
(神経伝達物質・遺伝)

重要なのは、下層 → 上層、上層 → 下層の双方向作用です。

① 神経分子層(分子神経科学)

ここは 精神薬理学の領域です。

主な要素

要素内容
神経伝達物質セロトニン・ドーパミン
受容体5HT・D2
遺伝遺伝的脆弱性
神経栄養因子BDNF

例:うつ病

  • セロトニン低下
  • BDNF低下

治療:主に薬物療法です。

② 脳回路層(神経ネットワーク)

ここは近年最も研究が進んでいる領域です。

主要回路

回路機能
前頭前野意思決定
扁桃体恐怖
海馬記憶
線条体報酬

例:うつ病;前頭前野 ↓扁桃体 ↑

治療

  • rTMS
  • DBS
  • 神経調節療法

③ 心理情報処理層(臨床心理学)

ここが心理療法の主領域です。

主な内容

要素内容
認知思考
感情不安・怒り
行動回避
スキーマ信念

例:うつ病

  • 自己否定
  • 未来悲観

治療心理療法例

  • CBT
  • EMDR
  • ACT

④ 社会・人生経験層(社会精神医学)

ここは 環境要因です。

主な要因

要因内容
ACE逆境的小児体験
愛着親子関係
社会孤立
文化社会規範

例:トラウマ→ 扁桃体過敏

治療

  • 社会支援
  • 家族療法
  • 環境調整

4層の相互作用

精神疾患は次のように生じます。

例:PTSD

ACE

恐怖記憶

扁桃体過活動

ノルアドレナリン増加

逆もあります。

遺伝脆弱性

不安傾向

人間関係問題

DSMとの関係

DSMは主に③ 心理情報処理層の 症状を分類しています。つまりDSMは現象学的分類です。

薬理学との関係

薬物は① 神経分子層に作用します。

脳イメージングとの関係

PET・fMRIなどは② 脳回路層を観察しています。

臨床心理学の位置

心理療法は、③心理→②脳回路を変化させます。研究ではCBT後

  • 前頭前野活性 ↑
  • 扁桃体反応 ↓

が確認されています。

精神医学史と4層モデル

歴史を整理すると、精神分析→ 心理層精神薬理学→ 分子層脳イメージング→ 回路層社会精神医学→ 環境層
現在は、統合モデルです。

現代精神医学の核心

精神疾患は、分子、回路、心理、社会の 階層システムです。

精神疾患のネットワークモデル

精神疾患の4層モデルのさらに先に、近年の精神医学・臨床心理学で急速に注目されている理論があります。それが「精神疾患のネットワークモデル(Network Theory of Mental Disorders)」です。

これは従来の精神医学の考え方を大きく変える可能性がある理論で、主に心理学者 デニー・ボルスブーム(Denny Borsboom) らによって提唱されました。

精神疾患のネットワークモデル

従来のモデルでは疾患 → 症状と考えます。

例:うつ病
→ 不眠
→ 抑うつ
→ 食欲低下

つまり、「うつ病という原因があり、その結果として症状が出る」という考えです。

しかしネットワークモデルでは、症状 ↔ 症状と考えます。つまり、症状同士が相互に影響し合い、疾患状態を維持するという考え方です。

ネットワークモデルの概念図

不眠
↑ ↓
疲労 ← 抑うつ
↓ ↑
集中力低下 → 不安

このように、症状同士が 相互接続ネットワーク を作ります。

従来モデルとの違い

従来モデルネットワークモデル
疾患が原因症状が相互作用
疾患中心症状中心
単一原因多因子相互作用

例:うつ病

従来:うつ病→抑うつ→不眠野→疲労

ネットワークモデル

不眠 → 疲労
疲労 → 活動低下
活動低下 → 抑うつ
抑うつ → 不眠

このように、悪循環ループが形成されます。

なぜ重要なのか

この理論は精神疾患の併存(comorbidity)を説明できます。例えば、うつ病と不安障害。従来は「二つの疾患」と考えます。
しかしネットワーク理論では

不安

不眠

疲労

抑うつ

つまり、症状ネットワークの重なりと考えます。

DSMとの関係

DSMは、症状の集合で診断します。ネットワーク理論は、DSMをデータとして利用します。つまり、DSM症状がネットワークノードになります。

脳科学との関係

ネットワーク理論は、脳科学とも対応しています。脳もネットワークだからです。

症状脳回路
不安扁桃体
抑うつ前頭前野
報酬低下線条体

治療の考え方が変わる

従来:疾患を治療

ネットワーク理論:症状のハブを切る

ハブ症状

ネットワークの中心症状。

例:うつ病

ハブ症状
不眠
反芻
社会回避

これを改善すると、ネットワーク全体が改善します。

心理療法との関係

心理療法は、症状ネットワークを弱める治療です。

例:CBT;思考 → 感情 → 行動

精神医学史の中での位置

精神医学の進化は

症候学

精神分析

生物学

DSM分類

脳科学

ネットワーク精神医学

現代精神医学の理解

現在の研究では、精神疾患は

脳ネットワーク

症状ネットワーク

として理解されています。

臨床心理学への意味

ネットワーク理論は、心理療法を科学的に説明できる可能性があります。つまり、心理療法は症状ネットワークを再構築する治療です。

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