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アヘン類、大麻類、幻覚剤などの物質依存の症状

目次

DSM-5 → ICD-11による診断の変更点

DSM-5 → ICD-11による診断の変更点
  • ICD-11では「その他の物質依存」という包括的なカテゴリがなくなり、新しい物質ごとに分類される形に変更。
  • 「渇望(Craving)」がICD-11では主要な診断基準として強調。
  • DSM-5では「物質使用障害」として重症度を3段階に分けるのに対し、ICD-11は「有害使用」と「依存症候群」に分類。
  • ICD-11では「新精神活性物質(NPS)」の独立カテゴリを新設し、日本の脱法ドラッグなども対応しやすくなった。

DSM-5からICD-11にかけて、より細かく実態に即した分類が行われ、特に新興薬物への対応が強化された点が特徴です。

変更
用語の変更
  • DSM-5:「物質関連及び嗜癖性障害(Substance-Related and Addictive Disorders)」
  • ICD-11:「物質使用障害及び依存行動障害(Disorders Due to Substance Use or Addictive Behaviours)」

ICD-11では「依存行動障害(Addictive Behaviours)」というカテゴリーを明確化し、ギャンブル障害(Gambling Disorder)に加えてゲーム障害(Gaming Disorder)を正式に認定しました。

変更
物質分類の変更(DSM-5とICD-11の比較)

DSM-5とICD-11では、一部の物質分類に相違があります。ICD-11では「その他の物質使用障害」というカテゴリーが消滅し、新たな物質が発見されるたびに個別分類される形へ移行しました。

物質カテゴリーDSM-5ICD-11
アルコール
アヘン類(オピオイド)
カンナビノイド(大麻類)
鎮静剤・催眠剤・抗不安薬(睡眠薬類含む)
コカイン
精神刺激薬(カフェイン含む)
幻覚剤(LSD, MDMAなど)
タバコ(ニコチン)
揮発性溶剤(吸入剤)
その他の物質(非分類物質)削除
変更
依存症の診断基準の変更

DSM-5とICD-11の診断基準には、以下のような違いがあります。

  • DSM-5物質使用障害(Substance Use Disorder, SUD)という1つの診断カテゴリを用い、「軽度・中等度・重度」と重症度を3段階に分類。
  • ICD-11有害な物質使用(Harmful Use)と依存症候群(Dependence Syndrome)を区別。

また、ICD-11ではDSM-5の「渇望(Craving)」主要な診断基準の1つに強化されました。

変更
「脱法ドラッグ」や新精神活性物質(NPS)への対応
  • DSM-5では「その他の物質関連障害」として分類されるものがありましたが、ICD-11では「新精神活性物質(NPS: New Psychoactive Substances)」という独立したカテゴリーが作られました。
  • これにより、「指定薬物(日本の脱法ドラッグ)」や「合成カンナビノイド」などが適切に分類されるようになりました。

「麻薬及び向精神薬取締法」と「覚せい剤取締法」

日本では、違法薬物の規制を目的として、主に次の2つの法律が施行されています。

法律名規制対象罰則例外
麻薬及び向精神薬取締法麻薬(モルヒネ、コカイン、フェンタニル)、向精神薬、指定薬物1年以上の懲役、密売は無期懲役あり医療・研究目的は許可制
覚せい剤取締法覚せい剤(メタンフェタミン、アンフェタミン)7~10年以下の懲役、密売・輸入は無期懲役もありなし(全面禁止)

麻薬及び向精神薬取締法

概要

この法律(正式名称:麻薬及び向精神薬取締法(昭和28年法律第14号))は、麻薬・向精神薬・麻薬原料植物・指定薬物の管理と取締りを規定したものです。主に、医療目的の使用管理違法使用・流通の防止を目的としています。

対象物質
  • 麻薬(コカイン、モルヒネ、ヘロイン、フェンタニル など)
  • 向精神薬(ベンゾジアゼピン系抗不安薬・睡眠薬 など)
  • 麻薬原料植物(ケシ、コカノキ など)
  • 指定薬物(法律で麻薬・向精神薬に分類されないが、乱用の恐れがある薬物)
主な規制内容
  1. 製造・輸入・販売・使用の許可制
    • 医療・研究目的以外での製造や所持は原則禁止
    • 薬局や医療機関が麻薬・向精神薬を扱うには、都道府県知事の許可が必要
  2. 所持・使用・譲渡の禁止
    • 違法な所持、使用、譲渡、譲受、製造、販売、輸出入は処罰の対象
    • 不正な製造・譲渡は1年以上の懲役(悪質な場合は無期懲役もあり)
  3. 医療・研究目的の例外措置
    • 医師・歯科医師が処方する場合は適法
    • 研究機関が国の許可を受けた場合、研究目的の使用が可能
  4. 密輸入・密売の厳罰化
    • 麻薬密輸は無期懲役または3年以上の懲役
    • 商業的に流通させた場合、懲役と罰金の両方が科されることがある

厚生労働省では、令和5年12月に「大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律」が成立し、令和6年12月12日にその一部が施行されます。

○今回の施行により、大麻等の不正な施用についても麻薬及び向精神薬取締法の「麻薬」として禁止規定及び罰則(施用罪)が適用されることになります

○また、下記のとおり、製品等に残留するΔ9-THC(テトラヒドロカンナビノール)について残留限度値が設けられ、この値を超える量のΔ9-THCを含有する製品等は「麻薬」に該当することになります。(Δ9-THCの含有量が限度値以下の製品は、麻薬規制の対象になりません。)

詳しくは、厚労省のホームページをご覧ください。
引用:厚生労働省ホームページ
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_43079.html

覚せい剤取締法

概要

この法律(正式名称:覚せい剤取締法(昭和26年法律第252号))は、覚せい剤の製造・所持・使用・譲渡・密輸・密売を取り締まるための法律です。覚せい剤(メタンフェタミン、アンフェタミンなど)は強い依存性があり、日本では違法薬物として厳しく規制されています。

対象物質
  • メタンフェタミン(ヒロポン、アイス など)
  • アンフェタミン(精神刺激薬の一種)
主な規制内容
  1. 所持・使用・譲渡・密輸の禁止
    • 正当な理由なく所持・使用した場合は10年以下の懲役
    • 営利目的の譲渡や密輸は無期懲役または3年以上の懲役
    • 国際的な犯罪組織と関与した場合、さらに厳罰化
  2. 製造・輸出入の禁止
    • 覚せい剤を違法に製造・輸入・輸出した場合、無期懲役または3年以上の懲役
    • 大規模な覚せい剤の密売組織の関与があれば、より重い刑罰
  3. 自己使用の処罰
    • 覚せい剤を自己使用した場合、7年以下の懲役
    • 再犯者や暴力団関係者の場合、懲役と罰金の併科もあり
  4. 治療・更生措置
    • 初犯者や依存症患者に対しては、更生プログラムや医療的な介入が行われる場合もある

厚労省では、覚醒剤原料を指定する政令の一部を改正する政令の公布について、覚醒剤原料を指定する政令の一部を改正する政令(令和6年政令第 258 号。以下「改正政令」という。)が公布され、令和6年8月 30 日より施行されます。以下の通りとなります。

第1 改正の趣旨
今般、国際連合事務総長より、麻薬及び向精神薬の不正取引の防止に関 する国際連合条約(平成4年条約第6号。以下「条約」という。)第 12条 第6項の規定に基づき、9物質を付表Ⅰに追加することが決定された旨の 通告があった。 このため、わが国でも、国内法令(覚醒剤原料を指定する政令(平成8年 政令第 23 号))の一部を改正し、覚醒剤の製造原料となる9物質を覚醒剤 原料として新たに指定するため、必要な措置をとるものであること。

詳しくは、厚労省のホームページをご覧ください。
引用:厚生労働省ホームぺージ
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_41931.html

日本における厳格な薬物規制の背景

日本では、薬物犯罪に対する刑罰が厳格であり、特に覚せい剤に関しては全面禁止とされている点が特徴です。

  • 覚せい剤乱用の歴史
    → 第二次世界大戦後、日本では大量の覚せい剤が流通し、社会問題化。1951年に覚せい剤取締法が制定された。
  • 麻薬・向精神薬の国際規制の影響
    → 日本は国際的な麻薬取締条約(1961年の「麻薬単一条約」など)に加盟しており、それに基づいた国内法が整備されている。
  • 薬物犯罪の厳罰化
    → 密売組織や暴力団が関与する違法薬物取引が問題視され、厳しい刑罰が科されている。

脱法ドラッグ

日本における医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」薬機法は2014年11月に薬事法が名称変更とともに改正し、施行されています。しかし、薬機法によって指定薬物とされない中枢作用を有する薬物が「脱法ドラック」として流行しています。

この「脱法ドラッグ」とは、法の規制をすり抜ける形で流通し、中枢神経系に作用する薬物を指します。これらの薬物は、法的には「指定薬物」として規制されていないものの、健康被害や社会問題を引き起こしています。

現状と対策

近年、脱法ドラッグの乱用が原因とされる健康被害や事件が多発し、大きな社会問題となっていますが、これらの薬物は、インターネットやSNSを通じて容易に入手可能であり、特に若年層への影響が懸念されています。

「合法」と称される薬物であっても、含有成分は見た目で判別できないため、健康被害や依存性のリスクが存在していて、「合法」の文字だけで安全と判断するのは非常に危険ですので、興味本位であっても、これらの薬物の使用は避けるべきです。

政府は、脱法ドラッグの規制強化に努めており、厚労省では「指定薬物」として新たな物質を指定することで、製造、輸入、販売、所持、使用等を禁止しています。しかし、規制の網をかいくぐるために、化学構造をわずかに変えた新しい薬物が次々と登場しており、いたちごっこの状況が続いています。政府や自治体は情報収集や規制の強化、啓発活動を行っていますが、個人レベルでも薬物の危険性を理解し、適切な判断を行うことが重要となります。

『アディクション・ケースブック ―「物質関連障害および嗜癖性障害群」症例集―』

  • 著者:ペトロス・ルヴォーニス(編)
  • 出版社:星和書店
  • 概要:DSM-5に基づく物質関連障害および嗜癖性障害の症例を12例取り上げ、診断と評価、治療の状況を具体的に解説しています。嗜癖精神医学の入門書として、他に類を見ないほど分かりやすく構成されています。

『依存と嗜癖 ―どう理解し,どう対処するか―』

  • 編集:和田 清
  • 出版社:医学書院
  • 概要:薬物やアルコールなどの物質依存症者への治療と支援、ギャンブルやインターネットに過度にのめり込んでしまう人への対応についてまとめた一冊です。患者の傾向や治療上の注意点、家族へのサポート方法など、一般臨床医が知っておくべき対応のコツを症例を交えつつ具体的に提示しています。

『行為プロセス依存症の診断・治療と再発防止プログラム作成の手引き』

  • 著者:西村 光太郎、斉藤 章佳、竹村 道夫、大石 雅之、菅原 直美
  • 出版社:診断と治療社
  • 概要:インターネット・ゲーム・SNS依存、性依存症、クレプトマニア(窃盗症)、ギャンブル依存症など、行為(プロセス)依存に対する診療をまとめた一冊です。診断・治療から再発防止プログラムまでを、経験豊かな執筆陣が実践的に解説しています。

『物質使用症又は嗜癖行動症群 性別不合<講座 精神疾患の臨床8>』

  • 編集:中山書店
  • 出版社:中山書店
  • 概要:アルコールやニコチンなどの嗜好品や薬物による依存、ゲームやギャンブルなどの嗜癖行動、衝動制御の障害、小児性愛やのぞき・盗撮・痴漢などの性嗜好の障害であるパラフィリア症のほか、性別不合についても詳述しています。ICD-11に準拠した解説に加え、社会制度や実地臨床等について、症例呈示も交えてわかりやすく紹介しています。
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