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PTSDの想像エクスポージャー療法とPE療法セッションのまとめ

目次

トラウマ体験・外傷後ストレス障害の想像持続エクスポージャー療法は、記憶の恐怖構造で作られた物語に暴露で不安の蓋を開け、真実をダウンロードすることです。現実暴露も含めたPE療法セッションのまとめです。

想像エクスポージャー

 トラウマはどんなに押しのけようとしても、出来事や体験を意識していない状況下でも思い出されたり、恐怖やつらい感情などの記憶、悪夢があたかも体験が繰り返されるような解離的反応のフラッシュバックとなって再体験をしてしまいます。このような再体験、回避、過覚醒などが繰り返し現れるのはストレス反応に関与する脳の構造である扁桃体、海馬、前頭前野などが、トラウマ体験によって異常な活動を示すことで、情報処理の障害が引き起こされ処理がされていないといわれています。
 例えば、エピソード記憶は日記として海馬で作られ、大脳皮質の書籍部屋に保管されているとします。この部屋には過去の体験などの記憶を日記とし、カテゴリーと日付順にキャビネットの引き出しに保管されているとします。いつでも必要なときに必要な日記帳をキャビネットの引き出しから取り出し読むことができます。ただ、トラウマとなる日記は未完成のままで閉じられず海馬部屋の作業テーブルに広げたままになっている状態です。

 心が偏桃体部屋に入室するたび、また、通り過ぎようとしただけでもドアの窓から綴じられず未完成で広げられたままが目に飛び込んできます。しかも、記憶を保持する維持リハーサルが頻繁に行われているので、エピソードの中心となるフラッシュバックページだけが開かれているのです。トラウマとなった日記にも起承転結がありますが、ネガティブな気分が障壁となり未だにすべてを通して読んだことがないのです。時間が経つにつれ、トラウマに対しての否定的思考が意味記憶となり、未完成なトラウマエピソードに重なることで否定的意味づけしたページを読んでいるので、辛く、苦しいため、回避をしているのです。要するに正確な出来事の日記情報を掴めずにいるのです。

 想像エクスポージャーの目的は、十分な時間を掛けてトラウマとなる日記の全ページ読むことで、否定的思考が記憶を塗り替えた日記ではなく、正確な日記の内容を理解してもらうことです。そのうえで日記帳として綴じて、カテゴリー別キャビネットの引き出しに保管することが記憶を過去の出来事にすることを助け、通常の記憶としてコントロールできるようになり、適宜必要な日記だけをキャビネットから取り出せる自分に戻ることです。

このページを含め、心理的な知識の情報発信と疑問をテーマに作成しています。メンタルルームでは、「生きづらさ」のカウンセリングや話し相手、愚痴聴きなどから精神疾患までメンタルの悩みや心理のご相談を対面にて3時間無料で行っています。

想像エクスポージャーの効果

  1. トラウマ体験が起こった過去の視点からではなく、現在(今)の視点からも客観的にも振り返ることができ、トラウマ記憶を処理し、整理することができるようになります。
  2. トラウマの出来事を「思い出す」ことと、再体験のように「再びトラウマとなるような被害に遭う」ことの区別をすることに気づきます。
  3. 出来事の記憶に蓋をしていて、不安を取り除けなかったことが、記憶に立ち向かうことで馴化(馴れ)ができて、不安が永遠に続くことが偽りだということがわかります。
  4. 実際のトラウマ体験とトラウマ体験に似ている場面や加害者などで恐怖反応が起きていたことが、繰り返しエクスポージャーでイメージしてきた効果として、区別することができるようになります。
  5. トラウマの出来事を怖いという気持ちだけでなく、「責任は自分自身にあった」「抵抗できていたはずだ」「社会は危険だ」というような歪んだ思考パターンに気づくことができます。

想像エクスポージャーの実施

先ずは、トラウマ記憶に「立ち戻って」いただきます。イメージしやすくなるようにトラウマ体験が実際に起こる少し前から記憶を思い出すようにします。
・何が実際に起こったのか、何をその時考えたのか、心に何を感じたのか、体に何を感じたのかといった大事な要素全部に近づけるようにします。
・自分のペースで自分の言葉を使って記憶を語れるようにします。
これは録音しますが、危険がなくなるか、その場面を離れるところまで、トラウマの出来事をすべて通して語ります。筆記する場合は、筆記終了後に自分で朗読して録音をします。

セッション第1(1週間ずつ空けて2~3回)

 語っている間は、気が散らないように心の中の映像を思い描けるように目を閉じます。「トラウマ体験に立ち戻る」ためには、今ここで起こっているように「現在形」で語ります。

想像エクスポージャーの標準的な手続きは、情動的な関りを促進するように工夫します。「あなたは目を閉じ、トラウマの場面をまるで今起きているかのように鮮明に映像として思い描き、現在形を使って詳しく説明しながら、トラウマ被害を受けている間に体験した思考、情動、身体的な感覚、行動について語ります。」

長期間または多数の継続のトラウマの場合

 一定期間続いた拷問や拉致などのように数時間、数日あるいはそれ以上の長期間の継続的なトラウマ体験や複数のトラウマや複数回の度重なる暴行、繰り返される児童期の性的虐待などを持つ場合は、現在において最も侵入的で苦しい記憶を選ぶようにします。最もつらい記憶が処理されていくと、それ以外の記憶に効果が及びつらさが軽減されます。もし、複数のトラウマがある場合で次のトラウマに焦点を当てるなら、最初に取り組んだトラウマで進歩がはっきり見られるまでは、移つらない方がよい結果となります。

 想像エクスポージャーを実施することで、以前の自分と違って自信もついきています。もし、不快な気持ちになり逃げだしたくなる場合は、そこに留まられるように「目を開けて語る」「自分自身を客観視(第三者となって自分自身を眺める)して語る」、「過去形として語る」「片足は部屋に置き、もう片方の足は記憶に置きながら語る」など、工夫しながらでも途中で辞めずトラウマ記憶を語り終えます。

 SUDSの評価は想像エクスポージャーの開始前と最悪の評価、終了時に計測します。セッション第1の1回目を終えた後は休憩を挟まず、2回目を繰り返します。

 想像エクスポージャーの目標は、十分な時間を掛けトラウマ体験(物語)を処理していきます。その記憶から逃げるのではなく、むしろ記憶に留まることが不快であっても、今の自分には危険がないことや対象者に対しての疑問も解けてくるのががわかるようになります。

 出来事について真剣に語ることで、今までと違う考え方もできるようになってきます。例えば「トラウマを回避することは不可能だった」「自分に責任があるわけではなかった」「できることはやっていた」などのように真実に気づいてきます。

想像エクスポージャーを実施

セッション第1は目を閉じ、今ここで起きているかのように現在形で自分のペースをもって語りますが、項目は下記を参考にしても構いません。
そして、録音をスタートします。

  1. 筆記をする場合は、作成後に朗読をして録音します。
  2. エクスポージャーは時間を掛けて起承転結まですべて語ります。
  3. セッション第1の2回目は、SUDSのチェック後、休まず2回目をおこないます。(基本はSUDSで苦痛のレベルが大きく下がるまで繰り返す)
  4. セッション第1の2回目は、SUDSのチェック後、休まず2回目をおこないます。(基本はSUDSで苦痛のレベルが大きく下がるまで繰り返す)
  5. 一人になれる空間で2回分の録音を毎日、次の録音日まで聴き返します。(他人が録音内容を聞いてしまうと意見が出ますので、聞かせないようにしてください)
  6. 1週間後に3回目の録音を行ってください。SUDSのレベルが1回目の半分近くなるまで回数は行います。

※語りは自分の思い通りに進めてください。(あくまでも下記の質問は参考程度です)

トラウマとなる出来事は いつ? 何時?

 年月日歳時時頃午前中・午後・深夜・明け方

場所は・どこで?

誰が?または、どんな関係者が?

状況・何が起こりましたか?(出来事が起る少し前にさかのぼってください)

その結果、自分や周りはどのようになりましたか?

あなたはどんな洋服を着ていますか、持ち物はありますか?

主格の相手はどんな洋服を着ていますか、何か持ち物で気づくのはありますか?

出来事が起きる前の少しさかのぼったところでは逃げられますか?

状況、出来事から今逃げ出せますか?

出来事が起き始めた時に、あなたはどんな行動をしましたか?何もできませんでしたか?

今までの質問以外に何か見えるものや気づいたものはありますか?(場所や部屋の様子など)

何か聞こえるものはありますか?(遠くから聞こえる音でも構いません)

何かの味がしますか?(口の中が出血していて血の味がする、など)

何かのにおいはしますか?(場所の匂い、部屋の匂い、汗のにおい、など)

身体の内側に感じるものはありますか?(動悸、震えなど)

身体の外側に感じるものはありますか?(腹をけられて激痛がする、など)

感情の感じ方はいかがですか?加害者などに怒りや憤りや、自分に対し悲哀、悲嘆、恥、罪責など

良いイメージで思い浮かべている人はいますか?(母が笑顔で・・・など)

この出来事は以前より、継続していた出来事ですか?

この出来事が起きたことは、相手とあなたとの力関係の差はあると思いますか?

一番苦しいこと、不快なこと、最悪なことは何ですか?(相手に対する怒りや体の痛みなど)

この出来事から、あなたはどういう人間だと考えていますか?

いま何か考えていることはありますか?(被害に遭ったこと、他人について、社会についてなど)

生きづらさを招く「トラウマ体験の立ち戻り」

特定の出来事が起こる前

  • 出来事が起こる少し前です。今の場所はどこですか?
  • 周りの状況はどうですか?
  • 何か、見えるものはありますか?
  • 何か感じるものはありますか?
  • 誰がいますか?どんな関係者がいますか?
  • あなたはどんな洋服を着ていますか、持ち物はありますか?
  • 主格の相手はどんな洋服を着ていますか、何か持ち物で気づくことはありますか?

特定の出来事が起きた状況

  • 特定の出来事が起こりました。何が起こりましたか?
  • 何か見えるものや気づいたものはありますか?(場所や部屋の様子など)
  • 何か聞こえるものはありますか?(遠くから聞こえる音でも構いません)
  • 何かの味がしますか?(口の中が出血していて血の味がする、など)
  • 何かの匂いはしますか?(場所の匂い、部屋の匂い、汗のにおい、など)
  • 身体の外側に感じるものはありますか?(腹をけられて激痛がする、など)
  • 出来事が起きた結果、自分や周りはどのようになりましたか?
  • 出来事が起き始めた時に、あなたはどんな行動をしましたか?何もできませんでしたか?
  • 出来事でいま感じている苦しいこと、不快なこと、最悪なことは何ですか?(相手に対する怒りや体の痛み、など)

特定の出来事の振り返り

  • 状況、出来事から逃げ出そうと思えば逃げられたのですか?
  • 出来事が起こる前の、少しさかのぼったところでは逃げられますか?
  • この出来事はあなたが被害者ですか?
  • この出来事はあなた以外に被害者はいますか?
  • この出来事が起きたことは、相手(他者)とあなたとの力関係の差はあると思いますか?
  • この出来事はあなた(他者)に原因はあると思いますか?
  • この出来事はあなた(他者)に責任があるからだと思いますか?
  • この出来事は回避することができたのですか?
  • この出来事は以前より、継続していた出来事ですか?
  • 良いイメージで思い浮かべている人はいますか?(例:母が笑顔で・・・など)
  • この出来事の最中に助けて欲しかった人はいますか?

特定の出来事に受けた感情の振り返り

  • 感情の感じ方はいかがですか?加害者に怒りや憤りを感じていますか?
  • 自分に対し悲しみ、哀れ、恥、罪など感じていますか?
  • この出来事から、あなたは何を感じていますか?例えば、「私は価値がない」「私は愛されてるに値しない」など
  • この出来事から、あなたはどういう人間だと考えていますか?
  • いま何か考えていることはありますか?(被害に遭ったこと、他人について、社会についてなど)

トラウマの出来事について思い出しをしてみて、どのようですか?

出来事の捉え方が今までと違っていませんか?

例えば、考え方や感じ方が変わってきていませんか?
たとえ、いま楽に感じられなくても、「つらい記憶と向き合い、そこに留まる」という辛い記憶の思い出しをしたということに誇りを持ってください。
想像エクスポージャーが出来たことには大きな意味があり、脳に変化が持たされているはずです。
繰り返し記憶の思い出しをするだけでも、物の見方が変化する人もいます。 例えば、トラウマとなった出来事を回避することは無理であった。不可抗力であった。自分に責任は全くなかった。出来る限りのことはやっていた。対象者にも理由があった。など出来事の状況や自分の立場に気付くことがあります。
逆に想像エクスポージャーの最中や終了後に、さらに自分が悪いと思うことが増したり、さらに人を信じられないなどの考えが出てきたら、そのことについては治療者と真意の話し合いができますので、心配しないでください。

今のようにトラウマを考え、思い始めたのはいつですか?

  • 何がそうさせていたのでしょうか?
  • トラウマと通常の思い出すとの違いは分かりますか?
  • 被害にあったことを今、あなたはどのように考えていますか?
  • そのことで自分のことをどう思っていますか?
  • その考えや思いがその通りである事実や根拠はありますか?
  • そう考えるとき、どんな感じがしますか?
  • そう考えることのメリットはありますか?
  • そう考えるとき、最悪どんなことになる可能性がありますか?
  • そう考えるときに奇跡が起きたら、どんなに素晴らしいことが起きると思いますか?
  • 最悪や奇跡ではなく、現実にはどんなことになりそうですか?
  • 他の人なら、この状況に対してどんなことをすると思いますか?
  • この状況をもう一度やり直せるとしたら、どんなことができそうですか?
  • もし、自分にとって大事な人がこの状況に晒されていたら何と言ってあげたいですか?
  • この状況下に直面している自分に対して、もう一人の自分がいるとして客観的にどんなことを言ってあげたいですか?
  • 今あなたに起こっていることは、通常はトラウマ後の一定期間に現れる反応ですが、どうして今でもPTSDが続いているのでしょうか?
  • トラウマの出来事を「思い出す」ことと「再びトラウマになるような被害に逢う」ことの区別はできますか?
  • 馴化とは「慣れ」と呼んでいて、記憶に蓋をせずとも不安が永遠に続くものではなく、トラウマ記憶の想像エクスポージャーに立ち向かえば立ち向かうほど馴化が起こることを知っていましたか?

なかには感情をあらわすのが怖いという人もいます。一度泣き出すと止まらなくなるのではないかと思って、泣くのを恐れる人もいます。心を維持しようと思って、記憶の処理を妨げるような行動をとる人もいます。
例えば、トラウマになっている出来事の中で恐ろしかったことの思い出しを避ける人もいます。
そういう時は、今は治療室の中で治療者と一緒にいて安全であること、あなたは今記憶に立ち戻っているのであって、それが今実際に起こっているわけではないことを理解することが重要です。

恐怖に直面することは辛いことです。勇気とは恐怖を感じつつもとにかくやってみることです。この想像エクスポージャーは、安心、安全な状態で過去のトラウマ体験を再体験していて、適切な再処理をしています。
トラウマ体験に関連する情報が実際の記憶や体験と一致するようになり、過剰に感じたり身体反応が起きていたことが軽減されていきます。

セッション第2

セッション第1の想像エクスポージャーでの出来事の語り、または筆記したものより、今見ているもの、聞いているもの、感じていることをさらに詳しく詳細な部分に焦点を当てて語ります。
中断はせず、苦痛のレベルが下がるまで続けます。
・録音します。録音した語りを1週間後の録音日まで聞き返します。その際にはSUDSの記録を毎回、忘れないようにしてください。

セッションHS(ホットスポット)

 想像エクスポージャーのセッション第1と第2の実施で、少しずつ馴化(馴れ)してきて苦痛部分への馴れの効果が生じているはずです。馴れが感じられているならば、セッションHSではホットスポットを探します。ホットスポットとは、すべての想像エクスポージャーの録音を聞いてみて、どの部分に一番動揺していたのかを見つけ出す作業です。この部分をトラウマの核心部分、ホットスポットといいます。例えば「もう二度と両親に遭えないと思った」「きっと彼に殴られて目が失明すると思った「もう仕事には戻れないと思った」などです。
 いくつか出てくる場合でも、一番の核心部分と思われるもの一つを選択します。そしてそのホットスポットを何度も何度も繰り返し語ります。ゆっくりで構いませんので、何が起きているのか細かいところまで詳しく説明します。「何を感じているのか」「何を見ているのか」「何を聞いているのか」「何を考えているのか」SUDSレベルがぐっと下がる(20~30)まで繰り返し語ります。そして次の候補のホットスポットに移ります。

想像エクスポージャー/セッション「                」

日付                    
時間    
SUDS(前)    
SUDS(最高時)    
SUDS(後)    

想像エクスポージャー/録音静聴「                  」

日付                
時間    
SUDS(前)    
SUDS(最高時)    
SUDS(後)    

セッションSP(スタックポイント)

恐怖体験で攻撃された自分自身を責めることによって、トラウマティックな出来事よりも、考えや解釈から二次感情(歪んだ認知)として恥や無力さの感情が生まれます。否定的な意味づけが生じ「自分が無力である」「世界はすべて危険だ」のように歪んだ認知を「スタックポイント」といいます。
スタックポイントは、以前から自身が持っていたスキーマ(深い認知)と歪んだ認知(浅い認知)と調和させるために同化や過剰調節が起こります。

ABC用紙を使い出来事・思考・感情・行動の繋がりを発見するために、トラウマティックな出来事と生活面で起きた出来事により、スタックポイントを見つけ出します。

ABC用紙

考え直し用紙

考え(信念・認知)の再構成

信念・スタックポイントを考え直す用紙

セッション最終

セッションHSの繰り返し、セッションSPの作業で、これらの最悪の場面をそれほど苦痛なく思い描いて語れるようになったら「セッション最終」として、再びトラウマの記憶の全体をセッション第1の半分くらいの時間を掛け、一つの物語として数回語ります。その際もSUDSのレベルを記入します。

毎日行う課題

  • 呼吸法の練習
  • 現実エクスポージャーの練習(すべての項目SUDSが20~30に下がるまで)
  • 想像スポージャーの練習(すべての項目SUDSが20~30に下がるまで)
  • 想像エクスポージャーの録音を聴く(すべての項目SUDSが20~30に下がるまで)

注意

  • 録音を聴く際には眠りを妨げてしまうため、寝る前にエクスポージャーの録音を聴いてはいけません。
  • 他の人に録音を聴かせてはいけません。自分のことを整理しているときに、他の人の反応についても対応することで、回復が困難になります。
  • 最後に行ったエクスポージャーを聴きます。治療の進展に従って、トラウマの反応、処理の仕方が良い方向に移りかわっています。

想像エクスポージャーの調整

想像エクスポージャーは、トラウマ記憶に想像の中で情動的に何度も向き合うことで、恐怖などのイメージや感情が整理され統合されます。
向き合うことでよく起こる問題は、情動的な関わりが不足するアンダー・エンゲージメントです。また、多くはありませんが、トラウマ記憶に向き合い語る際に情動が強くなりすぎるオーバー・エンゲージメントがあります。この場合はエクスポージャーの実践を修正して、興奮や苦痛など調整する必要があります。

アンダー・エンゲージメント

「アンダー・エンゲージメント(情動的関わりの不足)」とは、恐怖やトラウマ記憶に情動的に入り込むことが困難になっている状態です。情動的な関わりを促すためには、例えば出来事の詳細や、その時に見えているものや居る場所の様子などを今見ているかのように説明し、どんな服を着ていて何を感じ、何を考えているのかなどの視覚化や思考、身体感覚に集中し直し、その状況をリアルタイムで見ているように語ることです。トラウマ記憶を思い出すことはつらいことだと思いますが、現実の中での危険性はないことを確認し、如実に語ることでアンダー・エンゲージメントを克服できます。。

オーバー・エンゲージメント

「オーバー・エンゲージメント(情動的関わりの過剰)」とは、想像エクスポージャーによって生じた苦痛が強すぎるという意味です。トラウマの記憶を思い出すことは再体験しているように感じてしまいます。体験時と同じ感覚がよみがえったり、フラッシュバックが生じたりします。
エクスポージャーを繰り返してもSUDSレベルが下がらず馴化が起きないこともあります。強い苦痛が持続している場合には、トラウマの処理や整理ができずに行き詰っているからです。

トラウマ体験は、恐怖やつらさで不安は消えないようですが、永遠には続かないことを意識し、今は安全な場所にいることを何度も自分に言い聞かせ、トラウマ記憶を部分的に分けて語ることも必要です。
また、開眼のままや過去形で語ることのほか、声に出して語るのではなく想像エクスポージャー質問用紙に書いて記憶に入り込む方法があります。

PTSDの持続エクスポージャー療法ワークブック:星和書店
バーバラ・O・ロスバウム/エドナ・Bフォア/エリザベス・A・ヘンブリー監訳:小西聖子/金吉春
訳:本田りえ/石丸径一郎/寺島ひとみ:は対象者にとって、とても分かりやすい内容です。

PTSDの持続エクスポージャー療法ワークブック:星和書店

バーバラ・O・ロスバウム/エドナ・Bフォア/エリザベス・A・ヘンブリー監訳:小西聖子/金吉春
訳:本田りえ/石丸径一郎/寺島ひとみ

臨床精神医学講座 外傷後ストレス障害/中山書店2000

「トラウマと回復 ― PTSDからの再生」Judith Herman著、長田暁子訳、明石書店

「PTSDの治療――認知行動療法による効果的なアプローチ」Edna B. Foa, Terence M. Keane, Matthew J. Friedman著、太田良治・小森佳恵訳、金剛出版

「心的外傷を持つ人のための認知行動療法」Victoria M. Follette, Jacqueline Pistorello著、加藤英明・森田明子訳、金剛出版

「TRUST理論に基づく心的外傷後ストレス反応の治療」藤田 昇 著、新興医学出版社

「Trauma and Recovery: The Aftermath of Violence–from Domestic Abuse to Political Terror」Judith Herman著、Basic Books

「The Body Keeps the Score: Brain, Mind, and Body in the Healing of Trauma」Bessel van der Kolk著、Penguin Books

「The Post-Traumatic Stress Disorder Sourcebook: A Guide to Healing, Recovery, and Growth」Glenn R. Schiraldi著、McGraw-Hill Education

「Overcoming Trauma and PTSD: A Workbook Integrating Skills from ACT, DBT, and CBT」Sheela Raja著、New Harbinger Publications

公益財団法人東京都医学総合研究所ウェブサイトhttp://www.igakuken.or.jp/mental-health/IES-R2014.pdf

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