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心的外傷後ストレス障害PTSDの薬物療法と精神療法

目次

心的外傷後ストレス障害(PTSD)の薬物療法と精神療法CPTPE・EMDR・TF-CB療法の紹介と呼吸調整法・漸進的筋弛緩法

薬物療法

現段階でPTSDの病因、病態は解明されていません。そのため薬物療法は限定的に考えられている傾向があります。例えば心理療法の効果を出せなかった場合や、中等度以上のうつ病を併発した場合などに薬物療法が選択肢としてあげられます。

薬物療法の第一選択薬は、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)のパロキセチン塩酸塩水和物と塩酸セルトラリンのエビデンスが高く、日本では保険適用として推奨されています。
臨床的にある程度の反応が期待できるのは4~6週間後であり、4週間から6週間ごとに治療効果を吟味し、継続可能な場合は用量の判定などしながら症状の軽減が期待できるとしています。また、効果が期待できない場合は、別の薬剤に変更を考慮するということになっています。

日本では承認されていませんが、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬SNRIも第一選択薬として推奨されています。その他、三環系抗うつ薬も効果が認められ、四環系抗うつ薬も有効性が示されています。
PTSDは、うつ病やパニック障害、アルコール依存、睡眠障害、不安障害など他の精神障害との合併が多く、それに応じて付加的に薬剤が処方される場合があります。

参考薬

  • モノアミン酸化酵素阻害薬:侵入症状、過覚醒への効果
  • アドレナリン阻害薬:薬種により不眠と悪夢、侵入、過覚醒、解離症状に有効の可能性が報告
  • 抗精神病薬:不眠や悪夢に有効性の報告 ・抗コリン薬:悪夢や侵入症状に有効性の報告
  • 非定型抗精神病薬:難治性のPTSD、過覚醒、攻撃行動、妄想への効果の報告
  • 気分安定薬:感情調整薬が症状の軽減、有効性の報告

精神療法(心理療法)

PTSDの治療の第一選択は精神療法です。精神療法は、長時間暴露療法(PE)、眼球運動による脱感作と再処理(EMDR)、認知処理療法(CPT)、トラウマ焦点化認知行動療法(TF-CBT)、認知療法(CT)、認知再構成(CR)、ストレス免疫訓練(SIT)などが開発され有効性が証明されていますが、どの精神療法がどのような背景のPTSDに有効かは明らかではありません。

治療の有効性の高い療法

認知処理療法(CPT)
筆記による暴露、認知再構成法など
 回避などのために情報処理ができなかったことで生じた認知的なスタックポイントを見つけます。安全・信念・思考・パワーとコントロール・自尊感情(価値)・信頼・親密さにおける認知再構成法です。
 トラウマ記憶の暴露を筆記し、書き付けた暴露を治療者の前で声を出して読み上げます。認知療法を通して情報の再処理をさせ、スタックポイントから解放していきます。
 週1回90分~120分間のセッションを12週行います。 30年以上前に開発され、現在では最も広く研究されているトラウマに焦点を当てた認知行動療法です。
①導入と教育 ②出来事の意味 ③思考と感情を見つける ④スタックポイントを見つける ⑤考え直しの質問 ⑥問題のある思考パターン ⑦信念を考え直す ⑧安全 ⑨信頼 ⑩パワーとコントロール ⑪価値 ⑫親密さ・出来事の意味
長時間暴露療法(PE療法)
リラクゼーション、暴露療法など
PE療法はPTSD治療ガイドラインで推奨されているエビデンスを持った治療法です。 恐怖を覚える事物、状況、記憶やイメージに安全な環境下で患者が向き合うことを促すためにデザインされた技法です。
   
実際の手法としては「実生活内暴露(現実暴露)」「イメージ暴露(想像暴露)」の2つが大きな柱となっています。
週1回90分~120分間のセッションを10~15週行います。
PTSDへの治療効果が多くの研究によって証明され、各種ガイドラインで推奨されており、日本でも保険適用となっています。
⑴ トラウマに対する心理教育、プログラムの概要説明
⑵ リラクセーションのための呼吸法(腹式呼吸・呼吸再調整法)
⑶ 現実エクスポージャー:トラウマ関連の恐怖のために回避していた事象への段階的暴露
⑷ 想像エクスポージャー:トラウマ記憶を繰り返し思い出し語る。内容を録音し聞いて馴化
⑸ プロセシング:想像エクスポージャーの過程で出てきた非機能的な認知の修正
眼球運動による脱感作と再処理法(EMDR)
眼球運動による脱感作、リラクゼーション、認知の植え込みなど
トラウマとなる体験による強い感情や、解離によって不完全となっている情報処理を刺激によって神経のブロックや障害を無効にして再活性化します。
眼球運動を用いた刺激(タッピングや交互に発生する音も用いる)で患者はイメージ体験に関連した認知を評価し、トラウマの認知について別の形で認知の認識も再処理を行います。

治療は心理的苦痛が少なく比較的早く効果が出るとも言われており、患者によって回数は変わることもあります。
1回60分~120分間のEMDRセッションを数回~10回以上とされています。
PTSDに有効なエビデンスのあるトラウマ焦点化治療として、諸外国のガイドラインで推奨されています。
⑴ 評価:トラウマの記憶・感情や身体の反応・患者の捉えている記憶
⑵ 脱感作:トラウマの体験の想起、眼球運動の刺激後の不安や恐怖などのないトラウマ記憶の想起
⑶ 再処理:認知の歪みに修正
⑷ 確認:違和感の確認 ※8段階から構成されていて、過去、現在、未来の3分岐を扱う。眼球運動の介入は4段階から6段階である。
トラウマ焦点化認知行動療法(TF-CBT)
リラクゼーション、思考・感情・身体感覚、行動の関係に気づき、非機能的な思考を修正
恐怖や自責などの非機能的な思考のために回避していたトラウマの記憶を想起し、筆記するか語ることによって、トラウマ体験時の思考、感情、身体感覚、行動などを体験し直します。
断片的な記憶を統合し認知を再構成することで、自分の力で感情や感覚をコントロールすることが可能となります。

治療は週1回90分~120分間で15回程度の回数です。
子供へのPTSDへの第一選択治療プログラムとしても、国際的にその効果が実証されています。
①心理教育 ②リラクゼーション、 ③感情表現の調節 ④認知の修正 ⑤トラウマ物語作り ⑥現実生活内のリマインダーの統制 ⑦セッション ⑧将来の安全感と発達の強化

眼球運動による脱感作と再処理法(EMDR)の手順

EMDRは、トラウマ後ストレス障害(PTSD)の治療に用いられる心理療法の一つであり、その名前は「眼球運動による脱感作および再処理法」の略語です。以下はEMDRの実践方法についての一般的な手順です。

  • 治療目標の設定
    セッションの始めに、治療の目的となるトラウマ体験について話し合い、クライアントの治療目標を明確にします。
  • トラウマ体験の思い出し
    クライアントは、トラウマ体験について思い出し、それに関連するイメージ、感情、感覚、思考などを表現します。
  • 右と左の目を交互に動かす
    クライアントは、治療者が提示する手指やライトなどを、右と左の目で交互に追います。または、耳にイヤホンをつけ、交互に聴こえる音を追います。
  • セットアップ
    治療者は、クライアントに安全な場所を思い出させ、治療目標に関連するポジティブな自己評価を指示します。
  • 再処理
    治療者は、クライアントにトラウマ体験に関連する思考、感情、感覚を思い出させ、それに焦点を合わせながら、交互に動かす視線または音を提示します。このとき、クライアントは、思考や感情の変化を観察し、治療者に報告します。
  • セッションの終了
    セッションの終わりに、クライアントは、治療の内容について話し合い、次回の予定を決めます。

EMDRの手順は、セッションによって異なることがあります。治療者は、クライアントの個別のニーズに合わせて、手順を調整することができます。また、EMDRの治療は、他の心理療法と組み合わせて使用することができます。

治療目標の設定

EMDRの手順は、セッションによって異なることがあります。治療者は、クライアントの個別のニーズに合わせて、手順を調整することができます。また、EMDRの治療は、他の心理療法と組み合わせて使用することができます。

治療目標の設定は、EMDR治療の重要なステップの一つです。治療者とクライアントは、セッションの最初に共同で目標を設定し、治療の方向性を明確にします。

治療目標は、クライアントが解決したい問題や達成したい目的を示します。治療目標は、トラウマ体験に直接関連する場合がありますが、それ以外の問題にも関連している場合があります。例えば、治療目標は、トラウマ体験による不眠症や不安、パニック発作などの症状の改善を目的とする場合もあります。

治療目標は、クライアントが自分自身で達成できるレベルで設定されます。治療者は、クライアントの状況や能力を考慮して、適切な目標を設定することが重要です。また、治療目標は、明確で具体的であり、クライアントが自分の進捗状況を評価することができるようにする必要があります。

治療目標は、クライアントと治療者の共同作業によって設定されます。治療者は、クライアントに対して、治療の進捗状況を定期的に評価するように促し、治療目標を適宜修正することができます。

呼吸調整法

 ゆっくりした呼吸によって不安と緊張を軽減する呼吸法を行います。落ち着くために良く行う深呼吸は深く息を吸う呼吸です。実は深く息を吸うことは不安や恐怖の助けにはなっていません。
人間が怖い目に遭ったり興奮したときには息苦しさを感じるので、酸素が必要だと勘違いし呼吸が早くなったり、呼吸を激しくしてしまい過呼吸を引き起こしてしまいがちです。この必要以上に酸素を吸うことで恐怖感が増し、人間が恐怖や不安の時に脳からの指令により、「逃げるか闘うか」の警報が鳴ってしまい身体がさらなる恐怖感を強めてしまいます。
 気持ちを静めるためには、呼吸のペースを落とし普通に息を吸い、口をすぼめゆっくりと吐き出す呼吸調整法が緊張した際の助けに繋がります。

呼吸法の練習(前もっての深呼吸はしません)
❶ 3秒かけて自然に息を吸います。口をすぼめて6秒程度かけてゆっくりと息を吐きます。                
自分に合う呼吸時間にしてください。
ただし、吸う:吐くは1:2です。 その時に頭の中に「リラーーーックス」という言葉で自分をなだめます。
❷ ❶が慣れてきたら、4-7-8呼吸法①鼻からゆっくり4秒程度かけて自然に息を吸います。②7秒程度息を止めます。③口をすぼめて8秒程度かけて息を吐きます。無理をせず①②③の繰り返しです。
(朝・昼・夕・晩(寝る前)1日4回、1回5分間程度を普段から練習しておく。特に寝る前は有効です。)
呼吸法のコツ
⑴ 息を吸うのが緊張、吐くのがリラックスとなります。リラックスしたい時は息を吸うよりも息を長めに、ゆっくりと細く長く吐いていきます。
⑵ 息を吸うときにはお腹が膨らむように、吐くときはお腹がしぼむように腹式呼吸を用います。
⑶ 息を吐くときには「リラックス」や「落ち着け」と自分に向かって言います。日頃の緊張や疲れ、不安や不満などの嫌な感情が気持ちよく外に吐き出されるのをイメージします。

※PDの症状であるパニック発作と予期不安は、交感神経の興奮による身体反応ですので、不安時にどうしても息を吸い込みがちになります。呼吸法のコツはゆっくり腹式呼吸を用いて息を吐き、コントロールの感覚をもって行います。

漸進的筋弛緩法

漸進的筋弛緩法
ストレス状態のときは、無意識のうちに筋肉が緊張状態になっています。
漸進的筋弛緩法は意識的に筋肉に力を入れて、その後に緩める、を繰り返すことでリラックスしていく方法です。
(椅子に座ったままで行いますが、使わなくてもできます)
やり方 身体の各部分の筋肉に対し、思いっきり力を入れて5秒間緊張させます。その後ストンと力を抜き10秒間リラックスさせます。
両手握りこぶしを作り(5秒間)緊張させます。それからゆっくり広げます(10秒間)。
両腕力こぶを作るように腕を曲げ、脇をしめて力を入れます。ストンと力を抜きます。
両肩両肩を耳まで近づけるようにグーッと上げ緊張させます。ストンと力を抜きます。
首を下げて、首の後ろを緊張させます。ストンと力を抜きます。
目と口をギューッと絞って、奥歯をかみしめます。目も口も一気に大きく開けます。
背中腕を曲げたままグーッと外に広げて、肩甲骨を引き付けます。ストンと力を抜きます。
お腹お腹をへこませ、力を入れます。ストンと力を抜きます。
お尻お尻の穴を引き締めるようにギューッと力を入れます。ストンと力を抜きます。
すねから足全体に力を入れて伸ばし、ギューッと力を入れます。ストンと力を抜きます。
背伸び思いっきりグーッと背伸びをします。ストンと力を抜きます。
コツ:体の部分に力を入れた感覚をじっくりと味わいます。そして力をストンと抜いたときにじんわりと温かくなることを感じます。

イメージ法

イメージ法
①目をつぶります。②額から50㎝位離れたところに、丸い暖かな色の球体をイメージします。
③球体を胸の前に下ろします。④もう一度球体を思い浮かべ、お腹、膝、足のあたりと順番に下ろしていきます。

脳を集中させることにより温かい感じになり、緊張がなくなっていきます。
イメージ法は混雑した電車やバスの中でも人に気づかれることがなく行うことができます。
望ましい自分のイメージ、懐かしいポジティブなイメージ、神秘的なイメージなど自由に行えます。

PTSDの持続エクスポージャー療法ワークブック:星和書店
バーバラ・O・ロスバウム/エドナ・Bフォア/エリザベス・A・ヘンブリー監訳:小西聖子/金吉春
訳:本田りえ/石丸径一郎/寺島ひとみ:は対象者にとって、とても分かりやすい内容です。

PTSDの持続エクスポージャー療法ワークブック:星和書店

バーバラ・O・ロスバウム/エドナ・Bフォア/エリザベス・A・ヘンブリー監訳:小西聖子/金吉春
訳:本田りえ/石丸径一郎/寺島ひとみ

臨床精神医学講座 外傷後ストレス障害/中山書店2000

「トラウマと回復 ― PTSDからの再生」Judith Herman著、長田暁子訳、明石書店

「PTSDの治療――認知行動療法による効果的なアプローチ」Edna B. Foa, Terence M. Keane, Matthew J. Friedman著、太田良治・小森佳恵訳、金剛出版

「心的外傷を持つ人のための認知行動療法」Victoria M. Follette, Jacqueline Pistorello著、加藤英明・森田明子訳、金剛出版

「TRUST理論に基づく心的外傷後ストレス反応の治療」藤田 昇 著、新興医学出版社

「Trauma and Recovery: The Aftermath of Violence–from Domestic Abuse to Political Terror」Judith Herman著、Basic Books

「The Body Keeps the Score: Brain, Mind, and Body in the Healing of Trauma」Bessel van der Kolk著、Penguin Books

「The Post-Traumatic Stress Disorder Sourcebook: A Guide to Healing, Recovery, and Growth」Glenn R. Schiraldi著、McGraw-Hill Education

「Overcoming Trauma and PTSD: A Workbook Integrating Skills from ACT, DBT, and CBT」Sheela Raja著、New Harbinger Publications

公益財団法人東京都医学総合研究所ウェブサイトhttp://www.igakuken.or.jp/mental-health/IES-R2014.pdf

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