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てんかんの概念と概要

目次

てんかんの歴史・概念・定義・分類・疫学・原因・病態・手術・精神的影響などの知識

てんかんの歴史

てんかんは、人類の歴史とともに存在している病気です。古代エジプト、ギリシャ、ローマの時代にも、てんかん発作に関する記録が残っています。

古代エジプトでは、てんかん発作を「神に憑依された」と考え、治療法として呪文や祈りを用いたり、魔術的な方法を試みたりしていました。ギリシャの医師ヒポクラテスは、てんかんを「サクラメント病」と呼び、脳内にある「神聖な火」が燃え上がって発作が起こると考えていました。

中世ヨーロッパでは、てんかんを魔女の呪いや悪魔に憑依されたものとして恐れられ、治療法として火あぶりや水責めなどの残酷な方法が用いられました。しかし、ルネサンス期になると、人体の解剖学的研究が進み、脳がてんかんの原因であることが明らかになりました。

19世紀に入ると、てんかんの研究が進み、イギリスの医師ヒュー・リングストンがてんかんを発作性の疾患として定義しました。また、ドイツの医師ヨハネス・パーキンソンが、てんかんによって起こる知的障害を報告し、てんかんの重篤さを認識するきっかけとなりました。

20世紀に入ると、てんかんの原因や病態生理、治療法の研究が進み、抗てんかん薬の開発やてんかん手術の発展など、てんかんの治療に大きな進歩が見られました。また、てんかん患者の権利の保護や社会的支援など、患者の生活を改善するための取り組みも進んでいます。

現代では、てんかんの研究はさらに進化しており、てんかんの遺伝的要因や、脳神経回路の異常、生活習慣の影響など、多角的なアプローチがされています。そして、患者にとってより効果的な治療法の開発や、社会的な理解と支援の充実など、さまざまな分野での取り組みが進んでいます。

現在、世界保健機関(WHO)によれば、世界で約5,000万人がてんかんを患っています。そして、この数は今後も増加すると予想されています。しかし、適切な治療法や支援が提供されることで、てんかん患者は社会的に積極的に参加し、自立的に生活することができるようになっています。

近年では、人工知能(AI)の技術を活用したてんかんの早期診断や、発作予測の研究も進んでいます。また、てんかん患者が車など運転することに関する法律や規制も各国で検討され、患者の社会参加や自立に向けた取り組みが進んでいます。

これらの歴史的な出来事や最新の研究成果から、てんかんは、古代から現代に至るまで、科学技術や社会的な理解の進歩に伴って、理解が深まり、適切な治療や支援が提供されるようになってきました。

てんかんの概念

てんかんは、脳内の異常な神経活動によって引き起こされる慢性的な神経障害です。この異常な神経活動により、患者は周期的な発作を経験することがあります。発作は、脳の特定の領域で過剰な電気的活動が起こったときに生じ、脳の神経細胞が互いに過剰に活動し、一時的に脳の機能が混乱します。

てんかんは、個人の年齢、発作の種類、発作の頻度、発作がどのように開始されるか、およびその他の要因に基づいて、多様な形態を取ります。てんかんの原因は、脳の損傷、遺伝的因子、先天性欠損、感染症、代謝異常、薬物使用など、多数の要因が関与している可能性があります。

てんかんの治療法は、患者の症状と原因に基づいて個別に選択されます。薬物療法、手術、食事療法、神経刺激療法など、様々な治療法があります。精神医学的なアプローチとしては、認知行動療法やリラクゼーション法などの心理療法も併用される場合があります。

てんかんは、社会的、心理的、身体的な側面から病気の重大な影響をもたらしますが、適切な治療とサポートを受けることで、多くの患者が十分な生活を送ることができます。

てんかんの定義

てんかんの定義は、近年も更新されています。最新の国際てんかん学会連合(ILAE)による定義は、次のようになります。

「てんかんは、脳の神経細胞の異常な活動に起因する、発作の反復傾向を持つ、慢性的な神経障害である」

この定義は、てんかんを発作の病気という単純化された概念から、発作の反復傾向を持つ慢性的な神経障害というより包括的な概念に更新しました。これは、てんかんが単に発作だけでなく、神経学的および心理的な問題を引き起こすことを認識しているためです。また、この新しい定義は、発作の頻度に基づいて、てんかんを軽度、中等度、重度のカテゴリーに分類する方法も提供しています。

この定義は、2014年にILAEによって公表され、2017年に改訂されました。これにより、てんかんを正確に診断し、適切な治療を提供することがより容易になりました。

てんかん発作

てんかん発作は、大脳皮質からの異常な神経活動によって引き起こされます。しかし、てんかん発作が起こる誘因は多岐にわたる個人差があります。

一般的なてんかん発作の誘因には、睡眠不足、ストレス、感染症、薬物中毒、脳外傷、脳手術、ホルモンの変化、過度のアルコール摂取などがあります。これらの誘因は、脳の神経活動に影響を与え、発作を引き起こす可能性があります。

また、てんかんの発作タイプによって誘因が異なります。例えば、脳の一部の領域で起こる部分性発作の誘因は、その領域の脳の損傷や異常な神経活動に関連している場合があります。一方、全般性発作の誘因は、より全体的な脳の機能に影響を与える要因が関連していることがあります。

最新のILAEの定義は、てんかん発作の反復性を重視していますが、発作の誘因やその発生機序を理解することは、適切な治療法の選択や、発作を防止するための生活の調整に役立ちます。

「誘因のない2回のてんかん発作ないし」は、誘因のないてんかん発作が1回のみであっても、次にてんかん発作が起こる確率が60%以上ある場合、それはてんかんと診断されます。

このような定義は、「反復性発作」の概念に基づいています。反復性発作は、同じ種類の発作が少なくとも2回以上発生した状態を指します。てんかんの診断には、一般的に、反復性発作とともに、他の症状や検査所見も考慮されます。

誘因のないてんかん発作が2回以上起こる場合はてんかんと診断されますが、誘因のないてんかん発作が1回のみである場合、次に発作が起こる確率が高いため、注意が必要です。これは、誘因のないてんかん発作が1回目の発作であった場合、再発する可能性が高くなるためです。

医師は、てんかん発作の種類、頻度、発作前の症状、検査結果などを総合的に判断して、てんかんの診断を行います。そして、適切な治療法を選択することが重要です。治療には、抗てんかん薬の投与、手術、神経刺激療法などがあります。

てんかんの分類

2017年に国際てんかん連盟 (ILAE) によって提唱されたてんかんの分類は、部分発作と全般発作に基づく分類でした。しかし、その後の研究や議論を踏まえ、ILAEは2021年に新たなてんかんの分類案を提唱しました。

新しい分類案では、てんかんの発作や病型の特徴に基づいて、以下のように分類されます。

  1. 発作の起源
    • 脳内の発作発生源 (focal)
    • 脳全体で起こる発作 (generalized)
    • 両方の特徴を持つ発作 (combined)
  2. 発作の意識レベル
    • 意識を失う発作 (impaired awareness)
    • 意識を保ったままの発作 (preserved awareness)
  3. 発作の原因
    • 先天性または遺伝性の発作
    • 後天性の発作
  4. 発作の原因が特定されない場合の分類
    • 不明な発作

新しい分類案は、以前の分類よりもより詳細で包括的な分類となっています。また、これにより医師や研究者が患者の症状をより正確に説明し、より適切な治療法を選択することが期待されます。

てんかんの疫学

てんかんは世界中で広く見られる神経系の疾患であり、世界保健機関(WHO)によると、世界中で約5000万人がてんかんを患っています。つまり、人口の約0.6%がてんかんを患っているとされています。

地域的には、低所得国や開発途上国において、てんかんの有病率が高いことが報告されています。このことは、健康状態の改善や適切な医療や支援が提供されていないことが原因とされています。また、先進国においても、高齢化社会の進展に伴って、てんかんの患者数が増加しているとされています。

年齢や性別によるてんかんの罹患率については、年齢が低いほど発症しやすく、男性よりも女性の方が若年期にてんかんを発症する傾向があるとされています。また、遺伝的な要因も一部に関与することが報告されています。

発展途上国においては、適切な治療法や医療施設が不十分なため、てんかんに関する偏見や差別が存在し、社会参加や自立に対するハードルが高いことが課題となっています。一方、先進国においては、運転免許や就業など、社会的活動における制限や制約がある場合がありますが、適切な治療や支援が提供されることで、社会的な活動に参加することができるようになっています。

以下、てんかん発作および熱性けいれんの生涯有病率について、世界保健機関(WHO)の推定値を示します。

  • てんかん発作の生涯有病率:約1%~2%(つまり、100人に1人から2人の割合で発症すると推定されています)
  • 急性症候性発作の場合、発作が止まっていない有病率:10%~50%
  • 熱性けいれんの有病率:3%~5%(5歳未満の小児において発生する熱性けいれんの有病率です)
  • 活動性のてんかん発作の有病率:約3%~5%(つまり、1000人中に30人から50人の割合で、現在もてんかん発作が起こり得る状態にあると推定されています)
  • 活動性のてんかんの有病率は高齢者で増加していて、100人に2人程度となり1/4で明確な原因疾患があり、60%が焦点性てんかんで、10%は脳血管障害が原因となります。

これらのデータは、あくまでも推定値であり、地域や年齢、性別、遺伝的素因など、個人差や環境要因によって異なる場合があります。また、急性症候性発作の場合は、原因や治療法によっても有病率が異なることがあります。

てんかんの病因・病態

てんかんの病因や病態については、現在も多くの研究が進められていますが、詳しいメカニズムはまだ完全に解明されていない部分もあります。以下では、現在までに判明している主な病因や病態について説明します。

【病因】

  • 脳の損傷
    脳の損傷や異常が、てんかんの原因となることがあります。例えば、出生時の虚血性脳症、脳腫瘍、外傷、感染症などが原因となることがあります。
  • 遺伝的要因
    てんかんは、遺伝的素因によっても引き起こされることがあります。遺伝子変異によって、脳の神経細胞の電気的活動が異常になることがあります。
  • 医薬品や物質の副作用
    一部の医薬品や物質の摂取によって、てんかん発作が引き起こされることがあります。
  • 環境要因
    睡眠不足、ストレス、飲酒、薬物乱用など、環境要因がてんかん発作を誘発することがあります。

【病態】

てんかん発作は、脳の神経細胞の異常な電気的活動によって引き起こされます。正常な脳の神経細胞は、電気的なシグナルを発してお互いにコミュニケーションを取ります。しかし、てんかん患者の場合、神経細胞の活動が異常に興奮し、過剰な電気的シグナルを発し、周囲の神経細胞にも拡散していくことがあります。

このような興奮状態が持続することで、てんかん発作が引き起こされます。また、興奮状態が脳全体に波及することもあり、全身けいれんを起こす症状が現れることがあります。

てんかんの手術

てんかんの外科手術を検討する際には、次のような考え方があります。

  1. 抗てんかん薬の効果
    外科手術を検討する前に、抗てんかん薬の投与による発作のコントロールを試みます。抗てんかん薬が効果的であれば、手術は必要がありません。
  2. てんかん発作の種類
    手術の適応は、てんかん発作の種類や頻度、症状の程度などによって異なります。発作が頻繁に起こる場合や、薬物療法によってコントロールできない場合、手術を検討することがあります。
  3. 検査結果
    手術の適応を判断するために、脳波検査、脳画像検査などが行われます。これらの検査結果に基づいて、手術の適応や手術方法を決定することになります。
  4. 手術のリスク
    外科手術には、感染症、出血、脳損傷、言語障害などの合併症があります。手術前に、リスクと利益を評価し、慎重に検討する必要があります。
  5. 患者の意思決定
    外科手術は、患者の意思決定によって行われます。患者や家族には、手術の目的やリスク、予後などについて十分な説明が必要です。また、手術後のリハビリテーションやフォローアップにも十分な配慮が必要です。

てんかんの重症度を評価する基準は、一般的には「てんかんの発作頻度」と「てんかんの発作が引き起こす障害の程度」ですが、次のようにの2つに分けられます。これらは、てんかんの治療方針や手術の適応を決定するために重要な基準となります。

  • 発作頻度の評価には、発作がどの程度の頻度で起こるか、発作間隔はどの程度あるか、発作がいつ起こるか(日中や夜間など)、発作の種類や持続時間などを考慮します。
  • 発作が引き起こす障害の程度には、発作による社会的・学業的・職業的影響、薬物治療の副作用や生活習慣の制限、認知機能の低下や精神症状などが含まれます。

ただし、てんかんの重症度の評価については、明確な基準が示されているわけではなく、医師の判断による場合が多くなります。

てんかんの外科手術は、抗てんかん薬に反応しないてんかん患者に対して、脳の特定の部位を切除する手術です。次に、一般的なてんかんの外科手術の種類を紹介します。

  • 前頭葉切除術
    てんかん発作が前頭葉から発生する場合に行われる手術です。
  • 側頭葉切除術
    てんかん発作が側頭葉から発生する場合に行われる手術です。
  • 後頭葉切除術
    てんかん発作が後頭葉から発生する場合に行われる手術です。
  • 多発部位切除術
    脳の複数の部位で発作が起きる場合に行われる手術です。

これらの手術は、てんかんの原因となっている脳の病変や異常部位を切除することで、発作の頻度や重症度を軽減することを目的としています。手術の前には、患者に対して精密な検査や評価が行われ、手術が適切かどうかが判断されます。

手術の方法は、一般麻酔下で行われ、頭皮を切開し、脳を露出させます。手術中、患者は覚醒している場合があり、医師が脳の機能を監視しながら切除部位を決定します。手術後は、入院と適切なリハビリテーションが必要となります。

てんかんの外科手術は、手術前に細かい検査が必要であり、手術後にもリスクが伴います。適切な患者選択と手術チームの熟練が求められています。

精神的影響

てんかんの発作が繰り返すことで、次のような精神的負担が起こる可能性があります。

  • 不安や恐怖感
    てんかんの発作が起こるたびに、次に発作が起こるかどうか不安になります。また、発作中に自分自身や周囲の他者に危害を加えることがあるため、恐怖感を抱くこともあります。
  • 抑うつ
    てんかんの発作が頻繁に起こると、日常生活に支障をきたすことがあるため、生活の質が低下することで抑うつに陥ることがあります。
  • 社会的孤立
    てんかんの発作が頻繁に起こると、外出が制限されたり、職場や学校で理解されないことがあるため、社会的な孤立感を感じてしまいます。

また、てんかんは精神的疾患との合併症も引き起こすことがあります。例えば、次のようなものがあります。

  • 抑うつ症状や不安症状が重度化することがあるため、抑うつ症や不安障害になることがあります。
  • 思考や行動が変化することがあるため、統合失調症や双極性障害などの精神疾患になることがあります。
  • 発作が頻繁に起こることで、身体的に疲れ果てることがあり、身体表現性障害やソマトフォーム障害になることがあります。

以上のように、てんかんは精神的負担や精神的疾患の合併症を引き起こす可能性があるため、適切な治療が必要です。

てんかんの緊急対処法

てんかんの発作、痙攣を目の前にした場合の緊急対処法は次のようになります。

  1. 周囲の安全を確保する
    痙攣中に周囲に危険なものがあれば、安全を確保します。例えば、近くにある物を避けたり、痙攣を起こした人が座っている椅子やベッドの周りにクッションや枕を置いて頭部を保護するなどの対処が必要です。
  2. 呼吸の確保
    痙攣が終わるまで横にして、頭部をやや上げた状態で呼吸の確保をします。
  3. 救急車を呼ぶ
    痙攣が始まったら、すぐに救急車を呼びます。特に、痙攣が5分以上続いたり、痙攣が2回以上続いた場合は、すぐに医療機関を受診する必要があります。
  4. ケアを続ける
    痙攣が終わった後も、患者さんが安定するまで周囲のケアが必要です。例えば、患者さんの頭をやや上げた状態で横にさせ、安静にします。また、意識が戻った後もしばらく安静にしていてもらい、医師の指示に従って治療を受けるようにします。

以上のように、てんかんの発作、痙攣を目の前にした場合は、周囲の安全確保と救急車の呼び出し、呼吸の助け、そしてケアの継続が必要です。

最後に

てんかんは、神経細胞の異常放電によって引き起こされる脳の慢性疾患であり、多くの種類があります。発作は、突発的に起こり、意識障害や筋肉の痙攣、不自然な感覚や行動など、様々な症状を引き起こすことがあります。てんかんは、様々な原因によって引き起こされる可能性がありますが、多くの場合、具体的な原因は不明です。

診断は、患者の症状や発作の特徴、神経学的検査、画像検査、および脳波検査に基づいて行われます。治療には、てんかんの種類に応じて、抗てんかん薬や手術、神経刺激療法などがあります。また、生活スタイルの改善や、ストレス管理、睡眠の改善なども重要です。

てんかんの症状は、発作が起こる部位や程度、患者の年齢、および原因によって異なるため、正確な診断と治療が必要です。多くの患者は適切な治療法を受けることで、症状の改善や、完全な発作の制御が可能になることも多くあります。しかし、完全に発作を抑えることが困難である場合もあります。それでも、専門家の適切なケアとサポートを受けることで、生産的で充実した人生を送ることが可能です。

てんかんの2022年以降のトピックス

「てんかん(epilepsy)」について、2022年以降の新しい知見や臨床・社会的なトピックスをまとめてお伝えします(2025年5月時点)。

2022年以降のてんかんに関する主なトピックス(臨床・研究・社会動向)

1. 焦点てんかんへの新規治療薬の登場

  • cenobamate(セノバメート)
    → 難治性焦点てんかんに対する新しい抗てんかん薬(AED)。
    → 2022年以降、欧米での臨床使用が増加し、日本でも治験が進行中。
    → 強力な発作抑制効果が期待されるが、薬物相互作用慎重な用量調整が必要。
  • darigabat(GABA-A受容体選択的作動薬)
    → 従来のベンゾジアゼピンと異なる作用機序を持つ。耐性・依存の少なさが期待されています。

2. ドラベ症候群・レノックス・ガストー症候群への新薬

  • fenfluramine(フェンフルラミン)
    → 小児の重症難治性てんかん(ドラベ症候群など)への治療薬として欧米で承認され、日本でも導入準備中。
    → セロトニン作動薬として、従来とは異なるメカニズム。
  • カンナビジオール(CBD)製剤
    → 難治性てんかんに対して、エビデンスが蓄積され、国際的に使用が進む。
    → 日本では規制上の問題があり、今後の法的整備が注目されています。

3. 神経調節治療の進展

  • 迷走神経刺激療法(VNS)・反応性ニューロスティミュレーション(RNS)がより精緻に。
  • 深部脳刺激(DBS):てんかんに対する応用が拡大。前視床(anterior thalamic nucleus)刺激が注目。
  • ウェアラブル型の非侵襲的神経調節(tVNSなど)の臨床試験も進行中。

4. てんかんの「予測」に関するAI研究の進展

  • 脳波解析に基づくAIによる発作予測モデルが改良され、実用化に近づいています。
  • スマートウォッチや脳波ヘッドバンドによる発作検知・アラート機能の開発も進行。
  • 個別の「発作周期(circadian or multiday rhythms)」を解析する研究が注目。

5. てんかんと精神疾患・認知症の関連研究

  • てんかんと双極性障害・自閉スペクトラム症・ADHDとの高い併存率が再確認。
  • 高齢発症てんかんアルツハイマー型認知症との関連が注目され、「てんかんが認知症の前駆症状となり得る」可能性も指摘。

6. 社会的動向と啓発活動

  • 国際的には「てんかんとスティグマ」に対する啓発が引き続き重要視されており、WHOの「てんかんと神経障害に関する10年行動計画(2022–2031)」が開始。
  • 日本でも免許制度の見直しや、就労支援・教育現場での合理的配慮の普及が進行中。

要点のまとめ

項目新トピック(2022年以降)
新規薬物治療セノバメート、フェンフルラミン、CBD製剤
難治性てんかん神経調節(VNS, DBS)、AIによる発作予測
精神・発達との関係ASD・ADHDとの併存、認知症との関連性
技術進展ウェアラブル機器、AI解析の実用化に向けた動き
社会的動向WHOの国際行動計画、教育・就労支援の強化

日本てんかん学会編. (2015). てんかん診療の手引き 2015. 医学書院.

坂本光司・山田猛・山下治彦編著. (2015). 脳神経外科学第2版 中外医学社.

新谷尚紀・岩崎泰治編. (2018). 認知行動療法 クリニカル・ガイドブック 医歯薬出版.

藤本章義・松崎利昭・桜井俊彦編. (2009). 精神療法マニュアル 医学書院.

小泉眞理子・荒木宏幸著. (2017). 精神療法の基本と技法 医学書院.

「てんかんの診療ガイドライン」(日本てんかん学会)

「てんかんのすべてがわかる本」(著者:杉山正明、出版社:学研プラス)

「てんかん・認知症・パーキンソン病など神経疾患のための食事療法」(著者:守屋裕介、出版社:南江堂)

「Epilepsy: A Comprehensive Textbook」(編者:Engel Jr. J, Pedley TA、出版社:Lippincott Williams & Wilkins)

「Seizures and Epilepsy」(著者:Engel Jr. J、出版社:Oxford University Press)

「Handbook of Epilepsy Treatment」(著者:Shorvon SD, Perucca E, Engel Jr. J、出版社:Wiley-Blackwell)

Engel, J. Jr. (2013). Seizures and epilepsy. Oxford University Press.

Fisher, R. S., Acevedo, C., Arzimanoglou, A., Bogacz, A., Cross, J. H., Elger, C. E., … & ILAE. (2014). ILAE official report: a practical clinical definition of epilepsy. Epilepsia, 55(4), 475-482.

French, J. A., & Pedley, T. A. (Eds.). (2007). Clinical practice of epilepsy. Lippincott Williams & Wilkins.

Shorvon, S. D., Perucca, E., & Engel Jr, J. (Eds.). (2015). The treatment of epilepsy. John Wiley & Sons.

Wyllie, E., Gupta, A., Lachhwani, D. K., & Chong, D. J. (2012). The treatment of epilepsy: principles and practice. Lippincott Williams & Wilkins.

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