3時間無料対面カウンセリングを行っています。無料カウンセリング予約フォームでお申し込みください。ボタン

間欠爆発症/間欠性爆発性障害

目次

一人でできる具体的治療

間欠性爆発性障害(Intermittent Explosive Disorder:IED)に対しては、セルフモニタリング → 衝動コントロール(反応妨害) → 拮抗的・代替行動の習得という段階的な行動療法が非常に有効です。IEDは「一瞬の爆発」に見えて、実はその背後に長年積もった怒りの扱い方のクセや不器用さがあります。こうした行動療法的アプローチは、本人が「感情と付き合うスキル」を高める点に効果があります。

治療構成の3ステップ:IED対応版

STEP
セルフモニタリング(怒りの記録とトリガー把握)

▶ 目的:

  • 怒りや衝動的反応が生まれる「きっかけ」「兆候」「状況」「思考」を客観視できるようにする。

▶ 方法:

  • 「怒り日誌」や「トリガー記録表」を使って以下を記録:
時間・状況何があったか(誘因)体の反応思考怒りの強さ(0~10)実際の行動
5/23 13時友人にからかわれた顔が熱くなったなめられた!8机を叩いた
  • 特に、怒りの前段階にある小さな違和感(イライラ・もやもや)をキャッチする練習を行う。
STEP
衝動コントロール(反応妨害 + 怒りの「冷却ステップ」)

▶ 目的:

  • 衝動的反応(暴言、物にあたるなど)をその場で止める力を身につける。

▶ 方法:

次のステップを、怒りが湧いた瞬間に即座に実行するよう練習する。

怒りの冷却ステップ(5ステップ)

  1. STOP!と心で言う(または手をグーに握る)
  2. 身体感覚に意識を向ける(心拍、呼吸、肩の緊張)
  3. 呼吸:4秒吸って→4秒止め→4秒吐く×3回
  4. 距離をとる:その場から物理的に離れる
  5. 落ち着いたら「どう反応したいか」を選ぶ

この一連の流れは、アンガーマネジメントやDBT(弁証法的行動療法)でも使われています。

STEP
 拮抗反応の学習(代替行動の獲得)

▶ 目的:

  • 攻撃的・破壊的な行動の「代わりにできる反応」を増やす。
  • 「表現の仕方」「自己調整の手段」を意識的に育てていく。

▶ 方法(例):

衝動拮抗/代替行動の例
物にあたりたいクッションを叩く/タオルを強くねじる/冷水で顔を洗う
怒鳴りたい紙に書きなぐる/スマホに録音して削除/静かに10秒数える
その場から逃げたい1人になれる場所に行って、壁に手を当てて深呼吸
自分を責めたい思考記録シートに書く/信頼できる人にメッセージ
行動したくてウズウズランニング・筋トレ・体を激しく動かす

※ 代替行動は個人の性格・習慣・生活環境に合わせて選ぶのがコツです。

補助的な支援技法

認知再構成(CBT的思考の修正)

  • 「あいつにバカにされた!」→「本当にそうか?」「そう考える他の視点は?」
  • 自動思考を記録して、柔軟な思考の道を探す練習

感情の語彙を増やす練習

  • 怒り=単一ではない。「イライラ」「モヤモヤ」「悲しさ」「疲れ」「がっかり」など
  • 感情カードや感情リストを使い、怒りの下にある本音を見つける作業

ストレスマネジメント(併存症対策含む)

  • 睡眠・運動・食事・人間関係などの身体と生活環境の整備
  • うつ・不安・ADHDなどの併存症がある場合はそちらの治療も併行

「衝動→代替行動」の個別マッチング表

「衝動 → 代替行動」個別マッチング表(間欠性爆発性障害やBFRBs対応)は、衝動の種類・きっかけ・体感に応じて、自分に合った対処を選ぶことを目的とした、感情調整スキルの“対応辞書”です。

 ワーク活用法(例)

  1. クライエントと一緒に、「よく出てくる衝動・トリガー」を棚卸し
  2. それぞれに合う“自分仕様”の代替行動を一緒にカスタマイズ
  3. シートを見える場所に貼ったり、スマホで撮って持ち歩く
  4. 試したあとの感覚・気分も記録して、効果のあるものを定着させる

衝動 → 代替行動マッチング表(感情調整リスト)

衝動の種類よくあるきっかけ体の感覚考え・信念推奨される代替行動(反応の置き換え)
物を壊したい怒りをバカにされた・遮られたとき顔が熱い、こぶしを握る「バカにされた」「やられたらやり返す」・クッションを叩く
・タオルを強くねじる
・冷たい水に手をつける
・ダッシュして汗をかく
怒鳴りたい・叫びたい言い返したくなったとき胸がドキドキする、喉が詰まる「黙ってると負ける」・紙に怒りを吐き出す
・録音して削除する
・一人の場所で大声を出す(安全に)
誰かを叩きたくなる身近な人との口論・挑発肩が張る、手がムズムズ「わかってくれない!」・拳を握り締めて10秒キープ
・「相手に言いたいこと」を紙に書く
・今すぐその場から離れる(距離をとる)
爪や皮膚をいじりたくなる退屈・不安・集中途切れ指先がムズムズ、顔を触る「手が落ち着かない」「なんか気になる」・ストレスボールを握る
・氷やビー玉を手の中で転がす
・手袋をする/爪に絆創膏を貼る
衝動的に怒って物を言うSNS・メッセージで反射的に返信呼吸が浅くなる、首が熱い「すぐ言い返さないと!」・下書きに3分置く(即送信しない)
・メモ帳に書いて読み直す
・「24時間ルール」で翌日に送るか決める
身体を傷つけたい(自傷)罪悪感・自己嫌悪・無力感胸が苦しい・息苦しい「自分が嫌い」「罰したい」・保冷剤/氷で冷感刺激
・冷水シャワー/手洗い
・怒りを「書いて破る」ワーク

カスタマイズ例:書き込み式(個別セッション向け)

衝動そのときの気持ち体の感じ置き換え行動(自分に合うもの)試した結果(〇/△/×)
例:怒鳴りたい「なめられてムカつく」心臓バクバク・スマホ録音して消す
・その場から離れる
〇…気持ちが少し落ち着いた

「感情→衝動→行動のプロセスマップ」

「感情 → 衝動 → 行動のプロセスマップ」は、衝動的な行動が生じる“心のプロセス”を見える化し、介入ポイントを特定するための心理教育・介入ツールです。

これは、特に次のようなケースに有効です。

  • 衝動を「急に出てくるもの」と感じている人
  • 自分の行動パターンを整理できていない人
  • 衝動の「前段階」に気づけず、自己制御が難しい人
  • IED(間欠性爆発症)、BFRBs、反応性の強いクライエント など

感情 → 衝動 → 行動のプロセスマップとは?

怒りや不安などの感情が、身体感覚・思考・衝動・行動へとどう変化していくかを段階でとらえる図解で、以下のような流れを使って整理します。標準プロセス(6ステップ)

  • 刺激(トリガー)
  • 感情(怒り・不安・悲しみなど)
  • 身体感覚(心拍、こぶし、胃痛など)
  • 自動思考・信念(例:「なめられた」「負けたら終わり」)
  • 衝動(叫びたい、叩きたい、壊したい)
  • 行動(暴言、破壊、自傷、回避など)

このプロセスを「見える化」する目的

活用目的内容
自分の行動の流れを把握する衝動的行動が「突発的」でなく、段階的であると気づく
介入ポイントを探す呼吸法、思考修正、距離をとるなどの適切な場所に介入できる
進捗を確認しやすいどの段階で「気づけたか」「止められたか」を確認・強化できる
教育的な支援保護者や支援者が、本人の状態を具体的に理解しやすくなる

実用例:ワークシート形式での活用

次のような書き込みシートを使って、セッション内や家庭・会社でも使用可能です。

 セルフチェック活用

  • 「どのステップで止められたか」を〇×で記録する
  • 自分の“弱点ステップ”を見つけて、集中的に強化
  • 「次回はどこで止めてみる?」という再構成の目標設定

感情→衝動→行動プロセス記入シート(例)

ステップ内容あなたの場合は?(記入欄)
① トリガー何が起きた?「〇〇が私を笑った」
② 感情どんな気持ちが出た?「ムカついた」「バカにされた感じ」
③ 身体感覚体のどこがどう反応した?「顔が熱い」「拳が硬くなる」
④ 自動思考どんな言葉が浮かんだ?「なめられた」「やり返さないと」
⑤ 衝動どんな行動をしたくなった?「怒鳴りたい」「叩きたい」
⑥ 行動実際どうした?(または抑えられた?)「机を叩いた」「深呼吸して抑えた」

この「感情 → 衝動 → 行動のプロセスマップ」は、CBT(認知行動療法)をベースにしつつ、感情・身体・行動の“流れ”を可視化するアプローチです。

 CBTとの関係:比較と補完

項目CBT(典型的なABCモデル)感情→衝動→行動プロセスマップ
A(Activating Event)出来事・トリガー① 刺激(トリガー)
B(Belief)自動思考・信念④ 自動思考(信念)
C(Consequence)結果(感情・行動)②感情 → ③身体感覚 → ⑤衝動 → ⑥行動
主な特徴認知(考え)の修正が中心衝動性や身体感覚も扱い、即時の介入がしやすい
補完点論理的に考える力が必要なことも感覚や行動からアプローチしやすい(特に衝動性が強い人に有効)

エリアス・アブジャウデとロリン・M・コーラン編集「衝動調節障害」2010年/ケンブリッジ大学出版局

「衝動調節障害:行動依存症の理解と治療のための臨床医のガイド」、ジョンE.グラントとマークN.ポテンザ2018年/W.W.ノートン&カンパニー

Eric HollanderとDan J. Steinが編集「Handbook of Impulsive and Compulsive Disorder」2010年/John Wiley & Sons

ハーヴェイ・B・ミルクマンとケネス・W・ワンバーグが編集「衝動調節障害」2007年/アメリカ心理学会

ナンシーM.ペトリーが編集「行動中毒:DSM-5以降」2016年/オックスフォード大学出版局

ブライアン・P・マコーミック著、2009年/ProQuest「行動の知覚と調節に対する実行機能と動機づけの自己規律の相乗的貢献の神経心理学」

尾崎紀夫・三村將・水野雅文・村井俊哉:標準精神医学第8版/医学書院

1 2
目次