失感情のアレキシサイミア・ASD傾向者などの基本感情8タイプ分類の要因とセルフチェック・感情認識、表出トレーニング
最近は感情の認識や表出の困難(アレキシサイミア傾向)、対人関係への関心の乏しさ(ASD・統合失調質パーソナリティ傾向)を呈する方が増えていると感じています。そこでセルフチェックとして、8つの基本感情ごとの「認識・表出の偏り」を知るためのスクリーニングは、感情への気づきや対話の手がかりとして極めて有効です。
プルチックの基本感情に準拠し、各感情ごとに【認識】【表出】【持続】【回避】の4観点で質問(4×8=32問)し、傾向を可視化します。また、感情の認識や表出の困難に関係する各種要因と、それに対応する説明および支援的コミュニケーション方法をまとめます。
それぞれの感情ごとに短い記述式項目で構成し、「どれだけ感じられるか/表現できるか」を測ります。
このページを含め、心理的な知識の情報発信と疑問をテーマに作成しています。メンタルルームでは、「生きづらさ」のカウンセリングや話し相手、愚痴聴きなどから精神疾患までメンタルの悩みや心理のご相談を対面にて3時間無料で行っています。
8つの基本感情に関するスケール化シート(0~4段階)
■ 評価基準(全感情共通)
スコア | 説明(感情の認識・表出) |
0 | 全く感じない/何もわからない/言葉にできない |
1 | 少しだけ感じるが、あまり自分では意識していない/出せない |
2 | ある程度感じているが、うまく表現できない |
3 | 感じることも表現もある程度できる |
4 | はっきり感じていて、それを適切に表現できる |
対象感情(Plutchik の基本8感情に準拠) | |||
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喜び(Joy) | 悲しみ(Sadness) | 怒り(Anger) | 驚き(Surprise) |
恐れ(Fear) | 嫌悪(Disgust) | 信頼(Trust) | (Anticipation) | 期待
感情:喜びの評価
感情:喜び(Joy) |
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「うれしい」「楽しい」「ほっとする」などの感情に気づいたり、それを言葉や態度で表すことができますか? |
J-1. 自分が楽しい・うれしいと感じていることに、すぐに気づける 最近「うれしいな」「楽しいな」と思ったのはどんなときでしたか? |
J-2. 喜びを感じたとき、それを表情や言葉に出せる 喜びを感じたとき、自然に顔や言葉に出ますか? |
J-3. 楽しい気分がしばらく続くほうだ 楽しい気分って、その後もしばらく続くほうですか? |
J-4. 喜びを感じることにどこか抵抗や恥ずかしさがある 喜びを感じると、なぜか落ち着かなくなったり戸惑うことってありますか? |
「喜び」を感じにくさへの支援的コミュニケーション例
「喜び」は、基本的に安心感のなかでこそ表現される感情です。
クライエントが「喜びを表すのは危険」と感じている場合、それを認識する前にまず“安全な場”であることの体験が重要です。
方法 | 具体例 |
1. 微細な喜びの言語化 | 「ほんの少しでも“ほっとする”とか“気がゆるむ”としたら、どんなことですか?」 |
2. 身体感覚への注目 | 「喜びとまではいかなくても、“楽だった感覚”が体に出た瞬間ってありましたか?」 |
3. 過去の喜びの記憶を探る | 「子どものころ、ほんの一瞬でも嬉しかったものや時間、思い出せますか?」 |
4. 第三者視点の活用 | 「誰かがあなたの“喜んでいる瞬間”を見つけるとしたら、どんな場面だと思いますか?」 |
5. 「喜び」を定義し直す | 「“にっこりすること”が喜びなら、最近いつしましたか?」 「“少し元気になること”なら、どんなことですか?」 |
感情:悲しみの評価
感情:悲しみ(Sadness) |
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「さびしい」「つらい」「しんどい」といった気持ちに気づいて、それを誰かに伝えたりできますか? |
S-1. 自分が悲しいと思っていることにすぐ気づける 「ああ、自分はいま悲しいな」と思う瞬間ってどんなときですか? |
S-2. 悲しさを表現すること(泣く、沈黙するなど)がある 悲しみを感じたとき、泣いたり黙ったり、外に出せることはありますか? |
S-3. 悲しい気持ちがしばらく心に残る 悲しい気持ちって、どれくらい心に残ることが多いですか? |
S-4. 悲しさを感じるのが怖くて避けてしまう 悲しさを感じるのが怖くて、あえて見ないようにすることってありますか? |
「悲しみ」を感じにくさへの支援的コミュニケーション例
悲しみは「感じること」自体に許可と安全が必要です。
「悲しんでも大丈夫」「悲しんでも関係は壊れない」「悲しむあなたも尊重される」という感覚がないと、クライエントは無意識に悲しみを抑えつづけてしまいます。
方法 | 具体例 |
1. 間接的表現から入る | 「“しんどさ”って言葉の方がピンと来ますか?」 「“涙が出そうになったこと”って最近ありましたか?」 |
2. 感情語の幅を広げる | 「“哀しい”ではなく、“切ない”“寂しい”“ぽつんとする”ならどうでしょう?」 |
3. 第三者への共感を手がかりにする | 「映画や音楽で、登場人物が悲しんでいるときに、自分の中に何か動くものはありますか?」 |
4. “もし〜だったら悲しいかも”という仮定法 | 「誰かがこの状況にいたら、“悲しいだろうな”って思うことはありますか?」 |
5. 身体反応を入り口にする | 「胸がぎゅっとすることはありますか?そのときってどんな気持ちか、名前がつけられそうですか?」 |
感情:怒りの評価
感情:怒り(Anger) |
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「腹が立つ」「ムカつく」「納得いかない」と感じたとき、それを自分でわかったり、相手に伝えられますか? |
A-1. 自分が怒っていることに気づける 最近「イラッとした」「腹が立った」と思ったことはありますか? |
A-2. 怒りを表現することができる(言葉・態度) 怒りを感じたとき、言葉や態度に出せるほうですか? |
A-3. 怒りがなかなか収まらないことがある 怒った気持ちがしばらく続いてしまうタイプですか? |
A-4. 怒りを感じること自体が悪いことのように思う 怒りを感じること自体がいけないような気がして、我慢することはありますか? |
「怒り」に気づきにくい・出しにくさへの支援的コミュニケーション例
怒りは「壊す感情」ではなく、「守るための感情」です。
怒りを感じることは、“私はこれが大事”という自己の境界の表現でもあります。
怒りを持つこと=「関係を壊す」ではなく、「より誠実な関係を築こうとする試み」だと再定義することが、クライエントを安心させます。
方法 | 具体例 |
1. 感情の背後を探る | 「最近の出来事で、“もやっとした”とか“納得いかない”感じはありましたか?」 |
2. 感情の温度を段階的に問う | 「ちょっとイライラ」「ややムカムカ」「かなり腹立つ」…などの“強度”スケールで怒りを認識してもらう |
3. 怒り以外の感情から手がかりを得る | 「傷ついた」「がっかりした」「拒絶された気がした」など、一次感情を丁寧に聞く |
4. 「もし他人が同じことをされたら?」の視点 | 「大事な人が同じことされたら、どう感じると思いますか?」 |
5. 身体反応に注目する | 「胸がドキドキしたり、肩がギュッとしたりする瞬間ってありましたか?それって何か言いたかったのかもしれません」 |
感情:驚きの評価
感情:驚き(Surprise) |
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「えっ!」と感じるような意外さやびっくりした気持ちに気づき、それを言葉や表情に出せますか? |
SU-1. 思いがけない出来事に「驚いた」と感じることがある 思いがけないことが起こったとき、「驚いた」と感じることはありますか? |
SU-2. 驚いたとき、表情や声に出る 驚いたとき、声が出たり表情に出たりしますか? |
SU-3. 驚いた気持ちがしばらく尾を引く 驚いた出来事がしばらく心に残ることはありますか? |
SU-4. 驚くことを避けようと日常をコントロールしすぎる 驚きそうなことを避けようと、日常を自分なりにコントロールしている感じはありますか? |
「驚き」に気づきにくい・出しにくいへの支援的コミュニケーション例
「驚き」は五感の反応にもっとも近く、感情の扉を開くスイッチのようなものです。
アレキシサイミア傾向のクライエントにとっては、自分が“驚ける”という実感を得ることが、喜びや恐れなど他の感情にも通じる回復の糸口になります。
方法 | 具体的な問いかけ・工夫 |
1. 「想定外だったこと」を振り返る | 「最近、“えっ、そうなんだ”って思った場面、ありましたか?」 |
2. 驚きの“グラデーション”を意識する | 「『ちょっと意外』『すごく意外』『声が出そうになるほどびっくり』みたいに、強さを分けてみるとどうですか?」 |
3. 身体反応を観察する練習 | 「心拍が一瞬上がったり、体がピクッとしたり、そういう瞬間はありましたか?」 |
4. “驚き”を日常の中に見つけるワーク | 「今日の中で、“ちょっとでも意外だったこと”を3つ書いてみましょう」 |
5. 「驚き=危険ではない」と再定義する | 「びっくりすること=命の危険ではなくて、“世界が広がる体験”かもしれません」 |
感情:恐れの評価
感情:恐れ(Fear) |
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「怖い」「不安だ」「心配」といった感情に気づいたり、それを認めて伝えたりできますか? |
F-1. 自分が怖がっていることにすぐ気づける 自分が「怖いな」「不安だな」と感じる状況って、どんなときですか? |
F-2. 恐怖や不安を誰かに伝えることがある 恐怖や不安を人に伝えることってありますか? |
F-3. 恐れの感情がしばらく続くことがある 怖さがなかなか抜けずに残ってしまうことはありますか? |
F-4. 怖さを感じないように自分を麻痺させてしまう 怖い気持ちを感じないように、自分を鈍くさせてしまっている感じはありますか? |
「恐れ」を意識しやすくなる支援的コミュニケーション
恐れは不快な感情ですが、それは「危険から離れるべきだ」という大切な警告サインです。
恐れに気づけないと、自分を危険にさらしてしまうことがあります。逆に、「自分が今、怖がっている」と認識できることは、セルフケアの第一歩です。
方法 | 具体的な問いかけ・関わり |
1. 「身体の反応」から感情に気づく | 「心拍数が上がったり、呼吸が浅くなったりしたとき、それは“恐れ”かもしれません」 |
2. “怖い”と“警戒している”を分けてみる | 「怖いというより“近づきたくない”と感じること、ありませんか?」 |
3. 「怖さの中身」をゆっくり言葉にする | 「それは、“失敗が怖い”ですか?“怒られるのが怖い”ですか?それとも“無視されるのが怖い”ですか?」 |
4. 恐れの“強度”を数値化する | 「その“怖い”感じ、10点満点で言うと何点くらいですか?」 |
5. “怖い”と言える練習を小さく始める | 「“ちょっと不安”とか“ドキドキする”でもいいので、怖さに近い言葉を探してみましょう」 |
感情:嫌悪の評価
感情:嫌悪(Disgust) |
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「イヤだ」「ムリ」「気持ち悪い」といった気持ちに気づいて、自分を守るための行動をとれますか? |
D-1. 不快なものに対して「嫌だ」と思える 「うわ、嫌だな」「これは無理だ」と思うことってありますか? |
D-2. 嫌悪感を顔や態度に出せる 嫌悪感を表情や言葉に出すことはできますか? |
D-3. 嫌悪の感情が強く残るときがある 一度「嫌だ」と感じると、しばらく引きずることはありますか? |
D-4. 嫌悪を感じると相手を傷つける気がして抑え込む 「嫌い」と思うこと自体が悪い気がして、抑えたり我慢することはありますか? |
「嫌悪」に気づきやすくなる支援的コミュニケーション
嫌悪は、「これはわたしの身体・心に入れたくない」という大切な“境界線”のサインです。
それを感じることはわがままではなく、むしろ自分を大切にする感覚の一部です。
方法 | 具体的な問いかけ・関わり |
1. 身体感覚に注目する | 「そのとき、胃が重くなるとか、息がつまる感じ、ありませんでしたか?」 |
2. 「イヤ」や「苦手」レベルで探る | 「“ちょっと気が進まない”ことって、どんなことですか?」 |
3. “自分と合わないもの”として捉える | 「“あの人の話し方、どうも苦手で…”みたいなこと、心に残ったことありませんか?」 |
4. 「他者と比べて違和感があった場面」を思い出す | 「周りは平気そうだったのに、自分は“うっ”と思った出来事、ありましたか?」 |
5. “嫌悪”を価値判断ではなく“信号”として扱う | 「“これはちょっと自分には合わないかも”という感覚、大事にしてもいいんです」 |
感情:信頼の評価
感情:信頼(Trust) |
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「この人なら大丈夫」「安心できる」と感じたとき、その気持ちを自分で認識して、関係を築けますか? |
T-1. 相手に対して信頼していると自覚できる 「この人のこと、信じられるな」と思った経験はありますか? |
T-2. 信頼している気持ちを言葉にできる 信頼している気持ちを相手に伝えたことはありますか? |
T-3. 信頼の気持ちが続きやすい 信頼の感覚が長く続くほうですか?それともすぐに揺らぎますか? |
T-4. 信頼を口にするのが怖かったり、裏切られそうで避ける 信頼を口にするのが怖くて、あえて何も言わないことはありますか? |
「信頼」に気づきやすくなる支援的コミュニケーション
信頼は、“他者に心を預ける勇気”でもあり、“相手の好意や善意に触れたときの安らぎ”でもあります。
それは無理に感じるものではなく、少しずつ育っていくものです。
方法 | 具体的な問いかけ・関わり |
1. 「小さな安心体験」を思い出してもらう | 「“この人とはちょっと落ち着けた”という人、過去にいましたか?」 |
2. “一瞬だけ安心したこと”を探る | 「ふとしたときに、ちょっと心が緩んだ相手っていましたか?」 |
3. “信頼”=“依存”ではないことを伝える | 「信頼って、“頼り切ること”ではなくて、“安心して自分を出せる”ってことでもあります」 |
4. 身体反応から気づいてもらう | 「誰かといて、背中や肩が少し緩んだ感じになることってありませんか?」 |
5. 信頼が芽生えたときの“戸惑い”を承認する | 「“この人を信じていいのかな”って思って、迷ってしまうのは自然な反応ですよ」 |
感情:予測・期待の評価
感情:予測・期待(Anticipation) |
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「こうなったらいいな」「楽しみかも」と思えることに気づき、それを言葉にできますか? |
E-1. 「これが起こりそう」と思ってワクワクすることがある 「これからこんなことが起きたらいいな」と期待することはありますか? |
E-2. 未来への期待を表現できる 期待や楽しみにしている気持ちを、誰かに話すことはありますか? |
E-3. 期待感が長く続くことがある 期待していた気持ちが長く続くことはありますか? |
E-4. 期待すると裏切られる気がして最初から期待しないようにしている 期待すると裏切られそうで、あえて何も期待しないようにしていることはありますか? |
「予測・期待」に気づきやすくなる支援的コミュニケーション
「期待」は、希望を持つ前の“心の前伸び”です。「失望しないように期待しない」という構えが、無意識に癖づいていることがあります。
そこに気づくことで、“少し期待してみる”という実験を始めることができます。
方法 | 具体的な問いかけ・関わり |
1. “ほんの少しだけ先”の楽しみを聞く | 「明日、少しだけ楽しみにしていることってありますか?」 |
2. 期待=失望とセットではないことを示す | 「もし期待が叶わなくても、“期待した自分”を責めなくていいんですよ」 |
3. “感情より行動”からアプローチ | 「このあと何をするか、ちょっと予定を立ててみませんか? それが“気持ちの予習”になります」 |
4. 体の感覚に注目させる | 「未来のことを考えたとき、体が固くなる感じありますか? 逆に少し軽くなる瞬間ってありましたか?」 |
5. 安心できる“予測可能性”を用意する | 「このセッションの終わりに、“次に何をするか”を一緒に決めておきませんか?」 |
結果の読み取り方法 |
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各感情ごとに4項目を平均して「その感情にどれだけつながれているか」を数値化できます(低いほどアレキシサイミア傾向が高い)。 |
「認識」力は(-1.の1番目)の質問で予測できます。 「表出」力は(-2.の2番目)で予測できます。 また、(-1.の1番目)と「表出」(-2.の2番目)の答えから、感情抑制や回避傾向が予測できます。 (-3.の3番目)は、感情認識の強弱(侵襲的)を示し、 (-4.の4番目)は、感情の抑制や回避の強弱を示します。 |
活用のポイント
- クライエントの表情や間の取り方、語調、沈黙などからも情報を拾えます。
- 「あまり分からない」と答えた場合でも、感情への気づきの難しさ自体が大切な臨床的サインです。
- 回答に対して「そういうことにあまり注意を向けたことはなかったかもしれませんね」といった共感を添えると、安心して振り返りやすくなります。
感情の認識・表出の困難に関わる原因・要因チェックリスト
感情の認識・表出の困難に関連する「原因・要因の簡易チェックリスト(Yes/No式)」の背景要因のスクリーニングとして活用できます。「はい」または「いいえ」でお答えください。
感情の認識・表出の困難に関わる原因要因チェックリスト(Yes / No) |
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1. 遺伝的・神経生物学的な要因 |
親や兄弟にも、感情表現が苦手な人がいる |
小さい頃から感情の起伏が乏しいと周囲に言われた |
ASD(自閉スペクトラム症)などの診断を受けたことがある |
体の感覚や内臓感覚(お腹がすいた、緊張している等)がわかりにくい |
2. 発達過程・環境的な要因 |
幼少期に、感情を表現することを注意されたり否定されたりした |
家庭で怒りや悲しみを見せる人がほとんどいなかった |
「泣いても意味がない」「我慢しなさい」と言われて育った |
感情よりも理屈や正しさを重視する環境だった |
3. 心理的・防衛的要因 |
感情を出すと自分が弱く見える気がする |
自分の気持ちをうまく言葉にできないことが多い |
感情が高まると、混乱したり無感覚になったりする |
感情よりも「何が正しいか」「どうすべきか」を優先してしまう |
4. トラウマ・逆境体験 |
過去に強いストレスやトラウマとなる体験をした(いじめ、DVなど) |
感情を表すことで怒られたり、危険な目にあったことがある |
自分の感情を誰かに否定された体験が何度もある |
「何を感じていいか分からない」状態が長く続いたことがある |
5. 文化・社会的要因 |
「感情を表に出さないのが美徳」という価値観が身についている |
性別や役割(男らしさ・女らしさなど)に縛られた感情抑制を感じている |
周囲が感情について話すことを避ける文化で育った |
感情を表すと「面倒くさい人」と思われそうで不安になる |
6. 身体的・健康状態 |
睡眠不足・疲労が続くと感情が鈍くなる |
慢性的な身体症状(痛み、だるさ)がある |
向精神薬・鎮静系薬を使用している(またはしていた) |
ホルモンバランスや体調によって感情が不安定になる |
「8つの基本感情の偏り」から読み取る心理的傾向(タイプ分類)
「8つの基本感情の偏り」から読み取れる心理的傾向(タイプ分類)の例を示します。
これは、アレキシサイミア傾向やASD傾向、シゾイド傾向を含むクライエントへの理解に役立つよう構成したものです。
感情の偏りから見える「8タイプ分類」
(基本感情×傾向による構造的読み取り) 各タイプは、ある感情にアクセスしにくかったり、逆に過剰に働いたりすることで特徴づけられます。
分類の使い方のポイント
- 各感情の「認識しづらさ」「表出しづらさ」「持続性」「防衛反応」などを手がかりに分類します。
- 感情のバランスを「色の偏り」として扱うと、クライエントも受け入れやすくなります。
「喜び」の感情の認識・表出の困難:原因・要因別の整理
「喜び」のような一見ポジティブな感情にさえ困難を感じていることは、非常に重要なテーマです。
「喜び」は、基本的に安心感のなかでこそ表現される感情です。
「喜びを表すのは危険」と感じている場合、それを認識する前にまず“安全な場”であることの体験が重要です。
- 説明:親や血縁者に感情表現が乏しい傾向がある場合、遺伝的に情動反応の閾値が高く「喜びを感じにくい」傾向が受け継がれる可能性があります。
- クライエントへの言い換え:「もしかしたら、喜びを感じるスイッチが少し静かめに設計されているのかもしれません。でも、それは個性の一部とも言えます」
- 説明:脳の報酬系(ドーパミン系)の機能低下やセロトニン不足などが、喜びの感覚を弱くすることがあります(うつ病・ADHD傾向などとも関連)。
- クライエントへの言い換え:「喜びのセンサーの神経が、ちょっと疲れていたり、静かになっているときもあります。だから“感じてない”というより“感じにくくなっている”だけかもしれません」
- 説明:子ども時代に「喜ぶこと」を抑圧された経験(例:笑うと怒られる、無視される、共感されない)があると、喜び=危険/無意味と学習することがあります。
- クライエントへの言い換え:「もしかすると、喜ぶことを“がまんするしかない”時期があったかもしれません。それが無意識に残っていると、“喜んでいいのかな?”って戸惑ってしまうこともあります」
- 説明:完璧主義や他者配慮型の性格、自己否定傾向により「こんなことで喜んではいけない」「喜んだら誰かが傷つく」という内的禁止が働くことがあります。
- クライエントへの言い換え:「とても優しい方だからこそ、“自分だけが喜ぶのは申し訳ない”という感覚があるかもしれません。でも、喜びは分かち合うものなので、遠慮しすぎなくても大丈夫です」
- 説明:トラウマ体験(虐待・DV・いじめなど)により、喜び=油断=再び傷つく、という無意識の連想が働き、「感情の抑制」が強まるケース。
- クライエントへの言い換え:「つらいことがあった人ほど、“喜んでる場合じゃない”って心が身構えてしまうことがあります。それは心の大切な防衛です。少しずつ、安心を感じるところから練習してみませんか?」
- 説明:日本文化ではとくに「慎み」や「空気を読む」ことが重視され、喜びの表出を控える傾向があります。感情の抑制が“美徳”とされる側面。
- クライエントへの言い換え:「日本では“はしゃぎすぎない”が良いこととされてきたので、喜びを外に出すのが難しいのは自然なことでもあります。でも、自分のなかで“感じる”ところからでも大切にしていいんですよ」
- 説明:慢性疲労、睡眠障害、うつ状態などで全体的なエネルギーが低下していると、そもそも感情の立ち上がりが弱くなります。
- クライエントへの言い換え:「心だけじゃなくて、体も疲れていると、感情がふわっと立ち上がりにくくなることもあります。体調が整うと、感情も少しずつ戻ってきますよ」
「悲しみ」の認識・表出の困難:原因・要因別の整理
「悲しみ」の感情は、感情のなかでもとくに認めること・表すことが難しい感情の一つです。
アレキシサイミア傾向のある方にとって、「悲しみ」を感じることや伝えることには、ときに恐れ・羞恥・無力感・過去の記憶の再活性化などが伴い、それが抑制や否認につながることもあります。
悲しみは「感じること」自体に許可と安全が必要です。
「悲しんでも大丈夫」「悲しんでも関係は壊れない」「悲しむあなたも尊重される」という感覚がないと、クライエントは無意識に悲しみを抑えつづけてしまいます。
- 説明:情動処理の特性が遺伝的に抑制的である場合、悲しみの感情も自動的にシャットアウトされやすくなります。感情が「鈍い」のではなく、「表に出ない」のです。
- クライエントへの言い換え:
「もしかしたら、悲しいという感覚が心の中で“静かに沈んでしまう”ように設計されているのかもしれません。感じていないのではなく、“深く沈んでいる”のかも」
- 説明:セロトニン・ノルアドレナリン系のバランスが崩れていると、悲しみを感じづらくなる(=うつ的鈍麻)か、逆に強く出すぎてしまう(=過感受性)という偏りが出る場合があります。
- クライエントへの言い換え:
「心の悲しみセンサーが、今はちょっと働きにくくなっているだけかもしれません。脳と神経の働きが整ってくると、少しずつ悲しみにも気づけるようになることがあります」
- 説明:子どものころに悲しみを表現すると怒られたり、無視されたり、「泣くな」と抑えられたりした経験があると、「悲しむと見捨てられる」「悲しみは弱さ・不快」と学習してしまいます。
- クライエントへの言い換え:
「悲しいときに誰かに寄り添ってもらえなかった経験があると、“悲しむとひとりになる”という記憶が残ってしまうことがあります。だから無意識に“感じないようにしよう”と心ががんばっているのかもしれません」
- 説明:「強くなければいけない」「泣くのは甘え」「誰かを支えなきゃいけない」という役割や信念があると、悲しみの表出が自己否定に繋がってしまうことがあります。
- クライエントへの言い換え:
「“泣いたら負け”と思ってきた人ほど、悲しみを感じるのが怖くなることがあります。でも、悲しみを感じるのは“心がまっすぐ生きている証”でもあるんです」
- 説明:深い喪失やトラウマ体験を抱えていると、「悲しみを感じてしまったら壊れてしまう」と無意識に判断し、感情を凍結させることがあります(防衛としての解離・否認)。
- クライエントへの言い換え:
「その悲しみは、あまりにも大きかったから、“感じることを一時的に止める”必要があったのかもしれません。心が守ってくれていたんですね」
- 説明:特に男性や年長者において、「悲しみを出す=弱さ」「迷惑をかける」という文化的期待・ジェンダーロールが強く、感情を抑え込むことが社会的に求められてきた背景があります。
- クライエントへの言い換え:
「“泣かないで立派だね”って育てられると、自然と“悲しみは見せないほうがいい”と思うようになります。でも、悲しむことは誰かに支えてもらうための大切な信号でもあるんですよ」
- 説明:抑うつ・倦怠・慢性疼痛などの身体症状があると、そもそも感情を感じる余地やエネルギーがなくなり、悲しみすら「空虚感」「無感覚」として現れることがあります。
- クライエントへの言い換え:
「心が疲れていると、悲しみすら感じられなくなって“何も感じない”状態になることがあります。それは“心の休止状態”なので、責めないであげてくださいね」
「怒り」の認識・表出の困難:原因・要因別の整理
「怒り」は、アレキシサイミア傾向をもつクライエントにとって、特に認識・表出が困難または極端になりやすい感情のひとつです。怒りは本来、自己を守るための大切な感情ですが、発達や文化、トラウマなどの背景によって、「感じること」も「表すこと」も難しくなることがあります。
怒りは「壊す感情」ではなく、「守るための感情」です。
怒りを感じることは、“私はこれが大事”という自己の境界の表現でもあります。
怒りを持つこと=「関係を壊す」ではなく、「より誠実な関係を築こうとする試み」だと再定義することが、クライエントを安心させます。
- 説明:気質的に感情の高まりを感じにくい/感じすぎて抑えにくい特性があると、怒りが「感じられない」または「一気に爆発する」形で現れます。
- クライエントへの言い換え:
「怒りが“湧きあがる”というより、“急にスイッチが入る”ようなことってありますか? それとも、怒り自体が“よくわからない”ですか?」
- 説明:扁桃体や前頭前皮質の機能バランスが不安定な場合、怒りの抑制が過剰または過小になり、感情としての自覚が持ちにくくなります。
- クライエントへの言い換え:
「怒ることが“うまくできない”のは、脳が“まだ安全じゃない”と感じているサインかもしれません。感じることに罪悪感はいらないんです」
- 説明:幼少期に怒りを表すと「否定された」「怖がられた」「逆に怒られた」などの体験があると、「怒り=悪いこと」「嫌われること」と無意識に学習している場合があります。
- クライエントへの言い換え:
「小さいころ“怒ってはいけない”って空気がありませんでしたか?怒る=わがままって言われてきた方ほど、怒りの感覚に気づきづらくなるんです」
- 説明:自分が怒ることへの「罪悪感」「怖れ」「他人との関係悪化への恐怖」などが強いと、防衛的に怒りを感じないようにする傾向があります。
- クライエントへの言い換え:
「怒りを感じないようにしてきたのは、“関係を守るための戦略”だったのかもしれません。それはすごく健気なことだったと思います」
- 説明:虐待・暴力・支配的関係などのトラウマがあると、「怒り=暴力=恐怖」と結びついて、怒りを感じること自体が再トラウマ化となり、回避する傾向があります。
- クライエントへの言い換え:
「過去に“怒り”がすごく怖いものだったなら、今も怒ることが怖く感じられるのは自然なことです。今は“安全な怒りの出し方”を一緒に見つけていきましょう」
- 説明:「怒らないことが美徳」「空気を読むべき」「自己主張しすぎないことが大人」という文化的期待が、怒りの感情を抑制させる背景になります。
- クライエントへの言い換え:
「“怒らないあなたは立派”って言われてきたかもしれません。でも、本当はその奥に“我慢させられていたあなた”がいるかもしれません」
- 説明:慢性的な疲労・無気力・うつ状態では、怒りが「出る前に枯れる」ことがあり、感情の燃料自体が不足していることもあります。
- クライエントへの言い換え:
「エネルギーが枯れているときは、怒ることすらできなくなってしまうことがあります。怒りの感情も“生きている力”の一部なんです」
「驚き」の感情の認識・表出の困難:原因・要因別の整理
「驚き」は、基本感情の中でもやや見落とされやすいものですが、感情のスイッチを入れる起点にもなる、とても重要な感情です。
驚きは、「想定外の出来事への反応」として現れます。
しかしアレキシサイミア傾向のクライエントでは、この“意外さ”や“揺さぶられた感覚”を認識する力が鈍くなっていることがあります。
「驚き」は五感の反応にもっとも近く、感情の扉を開くスイッチのようなものです。
アレキシサイミア傾向のクライエントにとっては、自分が“驚ける”という実感を得ることが、喜びや恐れなど他の感情にも通じる回復の糸口になります。
- 説明:生理的な反応の鈍さや感覚の平坦さにより、「驚く」という刺激への反応自体が弱い傾向があります。感覚処理が抑制的な気質に由来する場合も。
- クライエントへの言い換え:
「びっくりした!って言われる場面でも、自分はあまり何も感じなかった…ということ、ありませんか?」
- 説明:扁桃体や感覚処理システムの過敏/鈍麻によって、「驚き」を感じてもそれがすぐにシャットダウンされたり、過剰に反応したりします(フリーズ、解離など)。
- クライエントへの言い換え:
「びっくりするような場面で、“一瞬止まった”感じがして、そのあと何も感じなかった…という経験、ありますか?」
- 説明:「驚く」「びっくりする」などの自然な感情表出が抑えられたり、「驚いた顔」を見せると叱責されたり、安心できる反応がなかった過去があると、「驚き=危険」として学習されます。
- クライエントへの言い換え:
「子どものころ、“びっくりした”“やめて!”って言っても、大人は気にしなかったり、もっと脅かしてきたりしませんでしたか?」
- 説明:「驚かないように準備しておく」「何があっても動じないのが大人」という信念を強く持っていると、驚きという感情自体を排除する傾向があります。
- クライエントへの言い換え:
「“想定外”をなくすために、すごく先回りしたり、人より先に気づこうとしたりしていませんか?」
- 説明:予測不能なショック(虐待、暴力、事故など)を繰り返し経験した人にとって、驚きは“命に関わる危険”と結びついているため、脳が「驚かないように麻痺させる」ことがあります。
- クライエントへの言い換え:
「驚くこと自体が怖くて、“感じないようにしよう”と無意識にしていた可能性、どう思いますか?」
- 説明:日本文化では「驚き」「感嘆」「びっくり顔」などのオーバーリアクションを“恥ずかしい”と感じる風土もあり、自然な驚きの表現が抑えられがちです。
- クライエントへの言い換え:
「感情を大きく出すのって、どこか“はしたない”とか“子どもっぽい”と思われそうで抑えてきた…そんな経験はありませんか?」
- 説明:慢性的な疲労・うつ・感覚過敏・鈍麻などによって、感覚が刺激に反応しづらくなっている場合、驚くという反応そのものが鈍化することがあります。
- クライエントへの言い換え:
「最近、“何が起きてもぼーっとしてる”ような感覚ってありますか? もしかすると、体が今、“びっくりする余裕がない”のかもしれません」
「恐れ」の感情の認識・表出の困難:原因・要因別の整理
恐れは不快な感情ですが、それは「危険から離れるべきだ」という大切な警告サインです。
恐れに気づけないと、自分を危険にさらしてしまうことがあります。逆に、「自分が今、怖がっている」と認識できることは、セルフケアの第一歩です。
「恐れ(fear)」は、生存本能に深く結びついた感情であり、危険から身を守るための感覚ですが、アレキシサイミア傾向を持つ方にとっては、「わからない不安」や「理由のない回避」という形で現れることも少なくありません。
- 説明:生まれつき不安傾向が低い、または過敏すぎる傾向があり、「恐れ」をうまく認識・調整する機能がアンバランスなことがあります。
- クライエントへの言い換え:
「怖いって感じにくいほうですか?それとも、怖いと感じやすいけど言葉にならない感じですか?」
- 説明:扁桃体や自律神経系(交感・副交感)の反応に過剰または抑制が見られると、恐怖反応が強すぎたり、逆に“感じない”こともあります。強い解離(フリーズ反応)も関連します。
- クライエントへの言い換え:
「すごく怖かった場面で、身体が動かなくなったり、感覚がなくなったりした経験、ありますか?」
- 説明:子ども時代に「怖い」と感じた時に、安全基地となる大人がいなかった、あるいは「怖がるな」と否定された経験により、「恐れ」を認識・表現することが困難になります。
- クライエントへの言い換え:
「怖いって言った時、大人に“情けない”とか“我慢しろ”って言われてきませんでしたか?」
- 説明:「恐れを見せたら負け」「恐怖を見せるのは恥」などの信念、防衛としての過度な合理化・抑圧などにより、恐れが“他人事”になってしまうことがあります。
- クライエントへの言い換え:
「“怖い”って言うのは弱いとか、みっともないって感じてしまう部分、ありますか?」
- 説明:恐れに関連する強いトラウマ(暴力、事故、虐待など)がある場合、恐怖の感情自体がフリーズ・分離され、“感じられない”ように脳が処理します(解離性防衛)。
- クライエントへの言い換え:
「ほんとうはすごく怖かったはずなのに、その時“何も感じなかった”ってこと、思い出せますか?」
- 説明:社会的に「恐れ」や「弱さ」の表出が許されにくい文化では、恐怖感情は“人に見せてはいけないもの”として扱われ、隠されやすくなります。
- クライエントへの言い換え:
「“怖がるな”とか“強くあれ”という空気の中で育ってきた感じ、ありましたか?」
- 説明:慢性的なストレス、睡眠不足、ホルモンバランスの乱れなどがあると、恐怖に対する認識や感情反応が過敏になったり、逆に過剰に抑制されたりします。
- クライエントへの言い換え:
「最近、些細なことにドキドキしたり、逆に全然怖いと思えなくなった…という変化はありませんか?」
「嫌悪」の感情の認識・表出の困難:原因・要因別の整理
「嫌悪(disgust)」の感情は、自己の尊厳や境界を守るための感覚です。腐敗や不潔なものを避ける本能的な反応だけでなく、「これ以上、受け入れられない」「これはわたしに合わない」といった心理的・対人的な拒否反応にも深く関係します。
嫌悪は、「これはわたしの身体・心に入れたくない」という大切な“境界線”のサインです。
それを感じることはわがままではなく、むしろ自分を大切にする感覚の一部です。
しかし、アレキシサイミア傾向やトラウマなどがある方は、「嫌悪」の感情を感じられなかったり、感じても表現できなかったりすることがあります。
- 説明:感覚刺激への感受性の個人差により、「嫌だ」と感じるラインが曖昧だったり、認識されにくいことがあります。
- クライエントへの言い換え:
「“これは無理”とか“気持ち悪い”って思うこと、ありますか? それとも、あまりないですか?」
- 説明:嫌悪反応には島皮質や前帯状皮質などが関与します。これらの部位の機能に偏りがあると、嫌悪感に気づきにくくなったり、逆に過敏になることがあります。
- クライエントへの言い換え:
「ときどき、身体が“うっ…”と反応するのに、心では“平気なふり”してしまうこと、ありませんか?」
- 説明:嫌悪を示すと怒られた、あるいは無視された、逆に「我慢しろ」「いい子にしてなさい」と教え込まれた経験により、「嫌だ」と言うこと自体が抑圧されることがあります。
- クライエントへの言い換え:
「“嫌って言ったらだめ”とか、“わがままは我慢しろ”って、よく言われていましたか?」
- 説明:「嫌だと思うのは悪いこと」「他人に悪く思われたくない」という信念や、過度な自己犠牲的傾向により、嫌悪感を他者のために抑えてしまうことがあります。
- クライエントへの言い換え:
「人に合わせることが多くて、“本当はイヤ”って気持ちが置き去りになっていませんか?」
- 説明:性的・身体的虐待や支配的な人間関係など、「嫌だ」と思うべき対象に対して嫌悪感を感じることを脳が遮断する(防衛する)ことがあります。
- クライエントへの言い換え:
「本当は“気持ち悪い”“やめてほしい”と思ったのに、言えなかった・感じられなかった経験、ありませんか?」
- 説明:日本ではとくに「嫌悪」の表現は失礼・わがまま・思いやりがないとされることが多く、「嫌」と言うことへの罪悪感が根づいています。
- クライエントへの言い換え:
「“嫌い”とか“無理”って、言っちゃいけないことみたいに思ってきましたか?」
- 説明:うつや過労などで身体感覚が鈍化すると、嫌悪のような微細な拒否反応に気づきにくくなります。逆に、過覚醒の状態ではあらゆることが“不快”と感じられることも。
- クライエントへの言い換え:
「最近、“なんとなく不快”とか“やる気が出ない”って感覚が続いていませんか?」
「信頼」の感情の認識・表出の困難:原因・要因別の整理
「信頼(trust)」は、他者や世界、自分自身との安全なつながりを感じるための感情です。信頼は、“他者に心を預ける勇気”でもあり、“相手の好意や善意に触れたときの安らぎ”でもあります。
それは無理に感じるものではなく、少しずつ育っていくものです。
しかし、アレキシサイミア傾向や複雑なトラウマ、愛着の問題を抱えた方は、「信頼」という感情自体が実感できない、または危険なものとして回避されることがあります。
- 説明:人との距離の取り方や不安感に影響を与える気質(回避的、警戒的など)が先天的に強いと、「信じる」ことに対して慎重になる傾向があります。
- クライエントへの言い換え:
「人と仲良くなるのに時間がかかる、またはそもそも人に近づくのが難しいと感じること、ありませんか?」
- 説明:オキシトシンやセロトニンなど信頼形成にかかわる神経伝達物質の調整機能が弱い場合、他者との結びつきを脅威と感じやすくなります。
- クライエントへの言い換え:
「優しくされても、なぜか“裏があるかも”って思ってしまうこと、ありますか?」
- 説明:安定した愛着関係の不足(例:親の気分に左右される、保護者の不在、過干渉など)により、「誰かを信じていい」という感覚が発達しないことがあります。
- クライエントへの言い換え:
「子どものころ、“誰かに頼ると逆に傷つく”って感じたこと、ありませんでしたか?」
- 説明:「どうせ裏切られる」「人を信じるなんてバカだ」など、信頼=危険というスキーマ(信念)が形成されていると、信頼を表すこと自体が抑えられます。
- クライエントへの言い換え:
「“人に頼ると負け”とか、“弱みを見せたらダメ”って、自分に言い聞かせてきたことはありますか?」
- 説明:過去に信じた相手に傷つけられた経験(虐待・いじめ・裏切りなど)があると、「もう二度と誰も信じない」と感情的に決意している場合があります。
- クライエントへの言い換え:
「信じた人に裏切られた経験って、ずっと心に残っていますか?」
- 説明:日本社会では「空気を読む」「和を保つ」ことが優先されるため、本当の信頼よりも建前的な協調が重視されやすく、信頼の感情が育ちにくい面があります。
- クライエントへの言い換え:
「“本音では分かり合えない”って思うこと、よくありますか?」
- 説明:慢性的なストレスやうつ状態では、警戒心が過剰になりやすく、他者との関係に対して「信頼よりも防衛」が優先されてしまいます。
クライエントへの言い換え:
「最近、ずっと気を張っているとか、人と話すと疲れてしまうこと、ありませんか?」
「予測・期待」の感情の認識・表出の困難:原因・要因別の整理
「予測・期待(anticipation, hopefulness)」の感情について整理いたします。
「予測・期待」は、未来への見通しを持ち、心の中で準備したり希望を描く感情です。「期待」は、希望を持つ前の心の前伸び”です。
「失望しないように期待しない」という構えが、無意識に癖づいていることがあります。
そこに気づくことで、“少し期待してみる”という実験を始めることができます。
しかしアレキシサイミア傾向やトラウマの影響がある方にとって、未来に対して感情的な接続を持つことが難しい場合があります。
- 説明:気質的に不安傾向や回避傾向が強いと、将来をイメージする際に「期待」より「警戒」「不安」が先に立ちます。
- クライエントへの言い換え:
「“こうなるかも”って考えたときに、“楽しみ”より“心配”が先に浮かぶこと、ありませんか?」
- 説明:ドーパミン系の活性が低いとうつ傾向や快楽喪失と結びつき、期待すること自体がしんどいと感じられることがあります。
- クライエントへの言い換え:
「先のことを考えても、“どうせ無理”とか、“別に嬉しくない”って思ってしまうこと、ありませんか?」
- 説明:子どものころに期待が裏切られる体験(例:「楽しみにしてたのに…」)が繰り返されたり、期待自体を持つことを否定された環境では、未来を描くこと=怖いという無意識の回避が生じます。
- クライエントへの言い換え:
「“楽しみにしちゃダメ”とか、“期待するとガッカリする”って言われたこと、覚えていますか?」
- 説明:「どうせうまくいかない」「期待する資格がない」といった学習された無力感やセルフスキーマによって、未来を思い描くことそのものを放棄している場合があります。
- クライエントへの言い換え:
「“がんばってもムダ”って、自分に言い聞かせるようなことありませんか?」
- 説明:PTSDや複雑性トラウマを抱える人は、“過去の安全性のなさ”が現在も続いているかのような感覚を持つため、「未来」に感情的にアクセスしづらい傾向があります。
- クライエントへの言い換え:
「未来のことを考えると、なんとなく“危ない”って思ってしまう感じ、ありますか?」
- 説明:日本文化では「先のことを期待しすぎると失敗する」「謙虚であれ」と教えられることが多く、期待の感情にブレーキをかける傾向があります。
- クライエントへの言い換え:
「“楽しみにしてる”って言うと、“浮かれすぎ”って言われる感じ、経験ありませんか?」
- 説明:慢性疲労やうつ状態では、将来の活動に対するモチベーション自体が低下し、期待の感情が感じられにくくなることがあります。
- クライエントへの言い換え:
「“これからのことを考える”って、そもそも体力的にしんどいと感じること、ありますか?」
感情別「つながり強化ワーク」8選
「8つの基本感情 × 感情が希薄/未分化/抑圧されている」クライエントに向けて、それぞれの感情とのつながりを強化するためのワークを感情ごとにご紹介します。
すべて、短時間で取り組めて感情の認識・表出・統合をサポートする内容です。
ワーク名:あなたの中の「ちいさなうれしいメモ」
- 内容:
過去1週間で「ちょっとうれしかったこと」「なんとなく気分がよかった場面」を3つメモします。
例:猫の動画で笑った/お気に入りのマグカップでコーヒーを飲んだ/朝、日差しが気持ちよかった。 - ねらい:
喜びに鈍感な人に「微細な快」を再認識させ、喜びの受容と蓄積を促す。
【感情強化ワーク:喜び】
タイトル:「“小さなうれしい”を発見するレンズづくりワーク」
この感情が希薄な背景にある傾向
- 喜びを感じたあとに「それが奪われた」経験があり、喜びへの防衛反応が強い
- 周囲から「喜びや楽しさを表現してはいけない」「控えめであるべき」と教育されてきた
- 喜び=わがまま/甘え/気を抜いてはいけない、という認知のゆがみがある
- そもそも「自分にとって何が楽しいのかわからない」状態にある
ワークの目的
- 「喜び」という感情に正当性・安全性・許可を与える
- “小さなうれしい”を感知するレンズ(感受性)を取り戻す
- 喜びの身体感覚、持続感、共感性を再経験していく
導入の語り(セラピスト用)
「“喜び”って、大きな出来事にだけあるわけじゃなく、毎日の中に小さく転がっていることもあります。それをちゃんと拾うことができると、自分の世界が少しずつ変わっていくんです。」
ワーク内容
- 最近でも昔でもよいので、「うれしい」と感じた体験を1つ思い出してみてください。
→ 例:ほっとする飲み物を飲んだ/好きな音楽が流れた/誰かが笑ってくれた - それがなぜうれしかったのか、少し言葉にしてみましょう。
「うれしい」を感じた理由に注目することで、喜びの価値観が明確になる。
- その場面を思い出すとき、身体はどう反応していますか?
→ 表情のゆるみ、胸のあたたかさ、軽さ、浮遊感など
身体感覚と言語がリンクすると、“感情がここにある”実感が強まる。
- 喜びの体験にはどんな共通点がありますか?
→ 「静かな時間」「他者とのつながり」「創造性が発揮できたとき」など - どんなときに「これ、うれしいな」と感じやすいか、自分なりにまとめてみましょう。
喜びの“パターン”に気づくと、予測と再現がしやすくなる。
- 「喜びを感じることに、どんな抵抗がありますか?」
- 「喜ぶことを誰かに否定された経験はありましたか?」
- 「今、あなたに“喜んでいいよ”と伝えるなら、どんな言葉になりますか?」
喜びの抑圧や回避は、多くが“他者の声”や“過去の出来事”から来ている。そこを丁寧にほぐす。
補助ワークシート例
質問 | 記入欄 |
最近「うれしい」と感じたできごとは? | 例:花が咲いていたのに気づけた |
それを思い浮かべたとき、身体はどう感じた? | 例:呼吸が深くなった、背中が軽くなった |
自分が喜びを感じる傾向は? | 例:一人で静かに過ごす時間/誰かと笑いあえたとき |
喜びに対する“ブレーキ”はある? | 例:「浮かれてると怒られる気がする」 |
自分にかけてあげたい言葉 | 例:「あなたが喜ぶことに、理由はいらない」 |
感情としての「悲しみ」は、本来「喪失への適応」や「自己と世界のつながりの再構築」を促す大切な機能をもっています。しかし、それが希薄な場合、共感性や内省、自己保護の反応が働かず、空虚・無関心・疲労感として現れることがあります。
ワーク名:「言葉にできない」悲しみを色で描いてみる
- 内容:
「悲しみ」をテーマに、自由に色を使ってクレヨンまたは色鉛筆で描写する(形・言葉なしでも可)。 - ねらい:
言葉にならない哀しみを“前言語的”に感じとる。絵から気づきを拾うことで感情との回路が開く。
【感情強化ワーク:悲しみ】
タイトル:「悲しみは何を守っているのか?」
ワークの目的
- クライエント自身が「悲しみ」という感情の存在と役割に気づく
- 「悲しみを感じても大丈夫」という体験を得る
- 抑圧された“喪失”や“未完了の別れ”にアクセスする準備を整える
ワーク導入の語り例(セラピスト用)
「悲しみって、実は“愛していたもの”や“大切だったもの”に出会った証なんです。
でもそれを感じないようにしてきたとしたら、もしかすると、それだけ大きなものを守ってきたのかもしれませんね。
今日は、その“悲しみの守っているもの”を一緒に見つけてみませんか?」
ワーク内容
以下の問いを使って、クライエントに“悲しみの対象になり得る”体験を探ってもらいます。
- あなたが昔、とても大事にしていた人・物・時間・場所・夢はなんですか?
- そのなかで、もう「戻らない」と思うものはありますか?
- それを失ったとき、どう感じたと思いますか?
「何も感じなかった」という場合も、その“感じなさ”を大切に扱います。「本当は感じたかったけど、感じないようにしていたのかもね」と伝えられるとよいです。
以下のような投げかけで、感情とつながる体験を優しく促します。
- 失ったもののなかで、「今も残っているもの」ってありますか?(記憶・言葉・音楽・感覚など)
- その人/ものがいたからこそ、自分にどんな影響がありましたか?
- もしその存在が今ここにいてくれたら、どんな言葉をかけてほしいですか?
感情を言葉にするのが難しい場合、「写真を見る・絵を描く・音楽を聴く」などのイメージ刺激を使うのも有効です。
- 「その気持ちを思い浮かべたとき、体のどこに何か感じますか?」
- 「重さ、温度、動き、圧迫感、広がりなど、どんな感覚がありますか?」
これは“感情を身体感覚に橋渡しする”プロセスで、未分化な悲しみへのアクセスを助けます。
補助ワークシート例
質問 | 記入欄 |
思い出した“大切だったもの”は? | 例:小学校の担任の先生、祖母との夕食の時間 |
失ったことに気づいたときの感覚は? | (記憶になくてもOK) |
それが残してくれた「今もあるもの」は? | 例:その人からもらった安心感、名前の呼ばれ方 |
その“悲しみ”は、どこにいる感じがしますか? | 例:胸が少し重たい、喉が詰まるような感じ |
ワーク後のフィードバックの例(セラピストの言葉)
「あなたが感じた“悲しみ”は、きっと大切なつながりや記憶を教えてくれていますね。
それは痛みでもあるけれど、同時に“生きてきた証”でもあるんです。
今日ここで、それと向き合おうとしてくれたことが、とても意味のあることだと感じました。」
ワーク名:「NOリスト」をつくる
- 内容:
日常の中で「これはちょっと嫌だった」「これは我慢していた」ことをリストにして、「NO!」と言ってもよかった場面を確認する。 - ねらい:
怒りを“攻撃性”ではなく、“自己主張”として再定義し、自己境界の再確認を図る。
【感情強化ワーク:怒り】
タイトル:「怒りが教えてくれる“本当の自分”」
ワークの目的
- 怒りを「破壊的なもの」ではなく「自己防衛のサイン」として再定義する
- 怒りが希薄/抑圧されている背景にある「自己無視」「境界の曖昧さ」を意識化する
- “言葉にできなかった怒り”を、安全な形で表現する練習を行う
ワーク導入の語り例(セラピスト用)
「怒りって、実は“自分の大事なものが脅かされた”ときに出てくる自然な反応なんです。
でも、人によっては“怒ってはいけない”“怒っても意味がない”って思って抑えてきた方もいますよね。
今日は、怒りの奥にある“本当は大切にしたかったこと”を一緒に見てみませんか?」
ワーク内容
怒りが希薄な人は「怒っていること」にすら気づいていない場合があります。
まずは「怒り」ではなく、「嫌だったこと」「モヤっとしたこと」から探ります。
- 最近イラッとしたこと、小さくても「ん?」と感じた出来事はありますか?
- 子どもの頃、“納得できなかった”出来事にはどんなものがありますか?
- 「今なら怒ってもよかった」と思える場面はありますか?
「怒った記憶がない」というクライエントに対しては、“違和感”や“居心地の悪さ”から入るとスムーズです。
- その時、本当はどんなことを伝えたかったですか?
- 怒りを感じたとき、自分のどんな価値観・願い・大切にしていることが侵されていたと思いますか?
- 「あのとき守ってほしかったもの」は、なんだったと思いますか?
ここでは、怒り=破壊ではなく、怒り=「大切な境界線を示すもの」として再定義します。
- そのときの場面を少し思い出して、体のどこかにエネルギーの動きは感じますか?
(例:手がムズムズする/胃がキリキリする/顔が熱くなる など) - その怒りのエネルギーを、言葉や色、音、動きで表現してみるとしたら、どうなりますか?
ここでは「言語的表現が苦手」な場合のために、色鉛筆やジェスチャーなど非言語表現も有効です。
補助ワークシート例
質問 | 記入欄 |
最近「なんとなくモヤっとした」出来事は? | 例:同僚に話を遮られた、親が勝手に部屋に入ってきた |
そのとき本当はどんな気持ちになっていた? | 例:無視された気がした、自分の空間を大事にしたかった |
怒りが守ってくれていた“大切なもの”は? | 例:自分の意見を聞いてもらうこと、尊重されること |
怒りのエネルギーを色にすると? | 例:赤黒い、熱い感じ |
ワーク後のフィードバック例(セラピスト用)
「怒りは、あなた自身が“これだけは大事にしたい”って思っている証かもしれませんね。
これまで怒ることを我慢してきた分だけ、あなたの中に“大切な何か”が眠っていたのかもしれません。
少しずつ、それを表に出していくことで、自分自身とのつながりも強くなっていくと思いますよ。」
ワーク名:1日1つの「へぇ〜!」体験を集めよう
- 内容:
日常で「知らなかった!」「おもしろい!」と思ったことを記録する(ニュース、小ネタ、気づきなど)。 - ねらい:
驚き=ネガティブな不安源ではなく、「学び」「遊び」への入り口として受容するトレーニング。
感情強化ワーク:「驚き」と出会いなおす
タイトル
「“思ってもみなかった”を取り戻すワーク」
ワークの目的
- 「驚き」という感情を、“混乱”や“恐怖”と混同せずに区別する。
- 予期しない出来事に対する反応(瞬間的な注意喚起・好奇心・新奇性への反応)を自覚する力を養う。
- 無感動・無関心の中に埋もれた「小さな刺激への感受性」を回復する。
ワーク導入の語り例(セラピスト用)
「今日は、“驚き”という感情を扱ってみようと思います。
驚きって、びっくりしたり、ハッとしたり、あるいは“えっ”と意識が切り替わるような感覚のことです。
実はこの“驚き”って、心を閉じていたり、無感動な状態にあると出てきにくいんですね。
今から、“ちょっと意外だった”とか、“へぇ〜と思ったこと”を探してみましょう。
驚きは、“感じてもいいんだ”と思えるようになると、他の感情も動き出しやすくなるんです。」
ワーク内容
- 過去1週間の中で、予想外だった・ちょっと驚いた・意外だったことを3つ思い出してもらう。
- 例:「電車で見た風変わりな服装の人」「いつも冷たい人が挨拶してきた」「思ったより料理がおいしかった」など
- それぞれの“驚き”に対して、
- 体の反応(心臓がドキッとした/まばたきが増えた/息をのんだ など)
- 心の反応(混乱・好奇心・関心・不安・笑い など)を書き出してもらう。
- 驚きの大きさを0~10点で評価。
- なぜその点数になったのか、振り返りの言葉を添える。
- 自分はどんなときに驚きやすいのか?どんなときに驚きを遮断しやすいか?を言語化。
- 過去の体験や環境(例:予測不能な家庭環境で驚きを「危険」と結びつけたなど)について気づきを深める。
補助ワークシート例(記入欄つき)
最近の出来事 | どのくらい驚いた?(0〜10) | 体の反応 | 心の反応 | ひとこと感想 |
コンビニの店員が笑顔で話しかけてきた | 4 | 心臓が少しバクッとした | 嬉しさと戸惑い | 意外と嬉しかったかも |
朝起きたら雪が降っていた | 7 | 息をのんだ | 少し興奮、ちょっとワクワク | 子どものころを思い出した |
道で猫にじっと見られた | 3 | 一瞬止まった | おもしろかった | 何か伝えたいのかなと思った |
ワーク後のフィードバック例(セラピスト用)
「“驚き”って、怖いことじゃないって少し感じられましたか?
驚くことで、“世界って意外と広いんだな”と感じるきっかけになることもあります。
小さな驚きに気づける力がついてくると、感情の幅も自然と豊かになっていきます。
今日見つけた“意外さ”を、また少しずつ日常の中でキャッチしてみてくださいね。」
補足のポイント(セラピスト向け)
- 「驚き」を“脅威”として過去に経験してきた人(例:虐待や突発的なトラブル経験者)は、驚きを抑圧する傾向があります。
- そのため、「驚いても大丈夫だった体験」を丁寧に拾い上げると、安心と自己表現がセットで回復していきます。
- ワークを続けるうちに、「楽しい驚き」や「面白さ」の感受性も少しずつ出てくることがあります。
ワーク名:心の「安全基地マップ」を描く
- 内容:
今までに「ほっとした場所」「安心できた人・物・行動」をマップ状に可視化する(中心に自分を置き、放射状に描く)。 - ねらい:
「不安」への耐性を支える“安心の記憶”にアクセスし、内的安心感と接続する。
【感情強化ワーク:恐れ・不安】
タイトル:「“恐れ”はあなたを守ってきた感情」
ワークの目的
- 「恐れ」や「不安」が湧かない(または湧いても自覚できない)状態を見直す
- 恐れ・不安を「弱さの印」ではなく、「生存と安全のための信号」として理解する
- 抑圧されてきた不安に安全な枠内で触れ、自他への信頼を回復する足がかりをつくる
ワーク導入の語り例(セラピスト用)
「不安や恐れって、できれば感じたくない感情ですよね。
でも、実は“危険を避けようとする賢さ”のサインでもあるんです。
恐れを避け続けると、逆に“身を守る力”や“慎重さ”も麻痺してしまうことがあります。
今日は、恐れの感情と優しくつながってみる時間にしましょう。」
ワーク内容
クライエントにとって「恐れ」を感じたことがある状況を思い出してもらいます。
恐れが希薄な人は、逆に“無防備に突っ込んでしまった経験”がヒントになります。
- 今思うと「危なかったな」と思う出来事はありますか?
- 子どものころ、“怖がってはいけない”“泣いてはいけない”と感じたことはありましたか?
- 周囲が不安がっていても、自分は「よくわからない」と感じていた経験はありますか?
「恐れを感じたことがない」場合は、「周囲が緊張していたけど自分は平気だった」など、“他者とのギャップ”からアプローチします。
- その出来事で、自分は何を守ろうとしていたと思いますか?
- 怖かった場面に、もし今の自分がそばにいたら、どんな言葉をかけてあげたいですか?
- 「恐れ」が教えてくれていた大事なメッセージを言葉にすると?
恐れは「逃げたい」という反応の裏に、“生き延びたい”“安全でいたい”という願いがあることを明確にします。
- 今この場で、ほんのわずかでも「不安」「怖さ」に似た感覚があるとしたら、それはどこにありますか?
(例:胸がザワザワする、のどが詰まる、目の奥が緊張している) - その感覚を、色・形・温度・重さでイメージにすると?
- その“怖がっている自分”に、やさしく寄り添う言葉をかけるとしたら?
感情が乏しい方には、身体感覚やイメージ(絵・比喩・色)を媒介にして感情へ接近していく方法が効果的です。
補助ワークシート例
質問 | 記入欄 |
「ちょっと危なかったかも」と思う出来事は? | 例:夜道を1人で歩いた、スピードを出しすぎた運転 |
そのとき“怖さ”を感じていたとしたら、どんな風だった? | 例:ザワザワする、冷や汗が出そう、言葉にできない緊張 |
その感情が知らせていた“大切なもの”は? | 例:身の安全、安心できる距離、自分の命の価値 |
今、その出来事の自分に声をかけるとしたら? | 例:「怖くていいんだよ」「すぐに逃げてよかった」 |
ワーク後のフィードバック例(セラピスト用)
「“怖い”って感じるのは、本当はあなたの中に“大事にしたい命”があるからかもしれませんね。
恐れを感じられるってことは、実は“自分にとっての安心”を探している証でもあります。
感じたくない感情の中にも、自分の軸に気づくヒントが隠れているんですね。」
ワーク名:「本音の好き・嫌い」練習帳
- 内容:
今日食べたもの/見たもの/聞いたものの中で、「これ好き」「これはちょっと無理」など、本音で○×をつける。 - ねらい:
自分の嗜好=自己感覚の一部として、「嫌い」を否定せず許す感情の土台づくり。
【感情強化ワーク:嫌悪】
タイトル:「“嫌悪感”はあなたの“身を守る境界線”」
ワークの目的
- 「嫌悪」や「拒否感」が感じにくい/表現しづらい状態を見直す
- 嫌悪の感情を「わがまま」や「悪意」ではなく、「自己防衛のセンサー」として再定義する
- 「イヤなものをイヤだと感じること」は、自他の尊重の第一歩であることを体験的に理解する
ワーク導入の語り例(セラピスト用)
「“イヤ”とか“ムリ”って言うのは、なんだか悪いことのように感じることがありますよね。
でも、本当に大切なのは“何が自分に合って、何が合わないか”をちゃんと感じられることなんです。
“嫌悪感”って、実は“これ以上近づかないで”と知らせてくれる境界のサインなんですよ。」
ワーク内容
※「嫌悪感」がピンとこない方には、「居心地が悪い」「ゾワッとする」「なぜか距離を置きたい」などの身体感覚に注目します。
- 思い出してみると、ちょっと「モヤッ」としたり、「なんか嫌だったな」と思うことはありませんか?
- 人付き合い、音、匂い、空間…ちょっと苦手なものは?
- 人から“イヤだ”と思われてはいけない、と思ったことはありますか?
「強い嫌悪」より、「軽い拒否感」からたどっていくのがポイントです。
- その“イヤ”な感覚の中で、心や体はどんな反応をしていましたか?
- それに気づかずに無理してしまったことは?
- その“嫌悪感”が、自分をどんな風に守ろうとしていたと思いますか?
嫌悪は「自己防衛」「衛生感覚」「心理的・身体的な境界感」に関わる重要な感情です。
- 今、この場で「ちょっとだけイヤ」なものがあるとしたら?(音、言葉、空間、印象)
- それを“我慢せずに”表現するならどんな言葉になりますか?
例:「それ、あんまり好きじゃないな」「ちょっと距離をとりたいです」 - “イヤ”を伝えることで、自分を大切にしている実感はありますか?
拒絶や断ることへの罪悪感がある人に、「小さなNOを言える経験」が非常に重要です。
補助ワークシート例
質問 | 記入欄 |
「イヤ」「ちょっと苦手」と思うもの | 例:無遠慮に話しかけてくる人、強い匂い、混雑した電車 |
それを我慢していたときの自分の反応 | 例:頭が痛くなる、疲れる、感覚が鈍くなる |
“イヤ”を我慢して何が起きたか | 例:怒りがたまる、関係がこじれる、自分がわからなくなる |
“イヤ”に気づくことは、どんな自分を守っている? | 例:本当の好み、大切にされる感覚、安心できる空間 |
ワーク後のフィードバック例(セラピスト用)
「“イヤだ”って思う感情は、あなたがあなたをちゃんと守ってるサインなんですね。
自分に合わないものを感じ取れるって、それだけ“自分の感性”を大切にできているということです。
小さな“イヤ”に気づくことで、無理をしなくてもよくなっていきます。」
ワーク名:「信じられた経験」「信じてよかった経験」リスト
- 内容:
「少しだけ誰かに頼った/任せた」ことで、良い方向にいった体験を探し、メモする(小さなことでOK)。 - ねらい:
対人不信の中でも「壊れなかった関係の記憶」を可視化し、信頼の回路を再接続する。
【感情強化ワーク:信頼】
タイトル:「“信じる”ことの原型を、自分の中から見つける」
ワークの目的
- 「信頼」や「安心感」を感じにくい・表現しにくい状態の背景にある防衛を理解する
- 他者への信頼だけでなく、「信頼するという感覚そのもの」にアクセスする
- 小さな信頼の原体験や、体験的な「信じられる感覚」に気づくことを促す
- 「だれかを信じること」=「自己を危険にさらすこと」ではないと再認識する
ワーク導入の語り例(セラピスト用)
「“信頼”って言葉には、ちょっと怖さを感じることもありますよね。
でも本来、“信頼”は、あなたの心が安心できる瞬間に自然と生まれてくるものなんです。
“無条件に信じる”というより、“ちょっと預けても大丈夫だった”という感覚の積み重ねから始まります。」
ワーク内容
「信頼」は大きな決断ではなく、「少しだけ安心できた」「ちょっとほっとした」という小さな経験に根ざしています。
- 子ども時代や最近の記憶で、「なんだか安心できた」「見守られていると感じた」経験は?
- 誰かが自分の話を静かに聞いてくれたときのことはありますか?
- 「あの人なら、たぶん大丈夫」と思えた瞬間は?
「信頼」という言葉がピンとこない場合、「安心」「心がゆるんだ」「まかせられた」と言い換える。
- 上記の安心できた瞬間を思い出したとき、身体のどこにどんな感覚がありましたか?
- 呼吸は? 胸の感じは? 緊張の緩みはありましたか?
「信頼感」は身体的な感覚に根差す場合も多く、ソマティックな記憶とつなげると再アクセスしやすい。
- 人を信じることが怖いと思うとき、それはなぜですか?
- 「信頼すると裏切られる」と思った体験や、それを回避してきた理由は?
- 信頼を寄せることと、自分の主導権を渡すことの違いについてどう思いますか?
信頼=依存/従属という誤解をほどく。信頼は「自分を守る力」と両立できることを確認。
- セラピストに、今「少しなら話せそうなこと」「ちょっと委ねてみてもいい話題」はありますか?
- 全部を話すのではなく、1割でも「信頼の試み」として何かを出してみましょう。
信頼は「全か無か」ではなく、「1割だけ預ける」練習から始めると負荷が少ない。
補助ワークシート例
質問 | 記入欄 |
「なんとなく安心できた」経験はありますか? | 例:友達が待っていてくれた、ペットと一緒にいた時間 |
そのときの身体の感覚 | 例:肩の力が抜けた、息が深くなった、心がゆるんだ |
「信頼すると危ない」と感じたことはありますか? | 例:裏切られた、コントロールされた、自分を否定された |
今、少しだけ“信じてもいいかも”と思えること | 例:話を聞いてくれるこの時間、ルールを守る人への安心感 |
ワーク後のフィードバック例(セラピスト用)
「あなたが“少しなら信じてみてもいいかも”と思えたこと、それ自体がすごく大きな一歩です。
信頼は、何も相手を完璧に信じることではなくて、“このくらいなら預けられる”という、心の小さな橋なんですね。
その橋が増えていくと、いつの間にか心の居場所が広がっていきますよ。」
ワーク名:「今日これだけは楽しみ」ピン留めワーク
- 内容:
1日1つ、「今日はこれだけは楽しみにしてる」「ちょっとワクワクするかも」という予定・要素を朝に1つ決める。 - ねらい:
「期待 → 裏切り」のスキーマに支配されず、「予測の快」を少しずつ取り戻すワーク。
【感情強化ワーク:予測・期待】
タイトル:「小さな“うれしい予感”を感じてみるワーク」
この感情が希薄な背景にある傾向
- 未来を信じにくい・希望を抱くと傷つくという学習歴がある
- 過去の裏切りや落胆の体験から「期待すると損をする」という信念がある
- そもそも未来について考えることに対して麻痺的な防衛がかかっている
- 「楽しいことは他人のもの、自分には縁がない」と感じている
ワークの目的
- 「未来に対してポジティブな予感を抱く」ことを、無理のない範囲で体験する
- 小さくても「楽しみにしてもいい」「待ってもいい」感情の安全性を確かめる
- 「予測や期待」が“失望の前兆”ではなく、“感情の前触れ”として肯定されることを目指す
導入の語り(セラピスト用)
「未来に何かを“期待してもいい”って、ちょっと怖いと感じることもありますよね。
でも、“予測や期待”って、本来は“心が動き出すサイン”なんです。
大きな夢じゃなくて、ほんの少し“これなら待ってみてもいいかも”と思えることから始めてみましょう。」
ワーク内容
- 「明日・今週・今月に、少しだけ楽しみにできることはありますか?」
→ 例:好きな飲み物を飲む/推しの投稿を見る/静かな時間がとれそう など - それが自分にとってどうして心地いいのか、言葉にしてみましょう。
“期待”という言葉を使わず、「ちょっと気になっている」「気分が上がるかも」などの表現から始める。
- ステップ①で挙げた出来事をイメージしているとき、身体にはどんな感覚がありますか?
- 少しでも“前のめり”な気持ち、“温かさ”や“ワクワク”が生まれている場所はありますか?
「期待」は身体にポジティブなエネルギーを呼び込む感覚と連動している。
- これまでに「期待して傷ついた」「希望を持って否定された」経験はありますか?
- そのとき、どんなふうに感じましたか?
- その時の自分に、今ならどんな言葉をかけてあげたいですか?
「期待が悪い」のではなく、「傷ついたことがあった」と整理することで、感情の分化が進む。
- 今、少しだけ「期待しても傷つきにくそうなこと」はありますか?
→ 例:天気が良ければ散歩したい/カフェに行って静かな時間を持てたらいいな - 「たとえうまくいかなくても、自分を否定しない」と前提をつけて、予測してみましょう。
「期待していい」と思える経験が繰り返されることで、感情の希薄化が緩和される。
補助ワークシート例
質問 | 記入欄 |
この1週間で少し楽しみにしていることは? | 例:読書の続き、お風呂にゆっくり入る時間 |
それを思い浮かべたときの身体の感覚は? | 例:胸が軽くなる、表情がゆるむ |
過去に「期待して傷ついた」と感じた経験は? | 例:プレゼントを約束されて守られなかった |
今、少しだけ“期待しても安全”と思えることは? | 例:この時間が静かで穏やかであること |
フィードバックの言葉(セラピスト用)
「“期待”って、叶うかどうかだけが大事なのではなくて、
それを思い浮かべたときの“心の動き”がとても大事なんですね。
それはあなたの感情が未来とつながりはじめたサインかもしれません。」
【感情を媒介とした対人コミュニケーショントレーニング】
アレキシサイミア傾向やシゾイド傾向を持つ方が、感情の感受・表出・理解を少しずつ育みながら、他者との関係性を改善するためのコミュニケーショントレーニングです。
ワーク1:「心の天気予報」チェック
- 毎日、心の状態を天気にたとえて記録(例:くもり/小雨/晴れ間あり)。
- その日の対人接触や出来事と結びつけて振り返る。
「今日は〇〇さんに会って疲れた。小雨気分。」
「誰とも話さなかったけど、散歩して少し晴れた。」
目的:自他との関係が感情に与える影響を気づく訓練。
第1ステップ:「感情の気配」を見つける(自己観察)
目的:
- 感情の「在りか」「変化」に気づく基礎力を養う。
実践例:
例1|心の天気予報
- 今日の気分を「天気」「色」「音」で記録する。
- 例:「今日の心の天気:小雨」「色:グレー」「音:低いベース音」
例2|からだの気配チェック
- 起床時・食事後・就寝前などに「身体の感覚」を観察。
- 例:「胸が重い→何か不満か不安かも」
例3|5秒ストップ法(微細な変化キャッチ)
- 会話・場面の前後で「自分の体や気分が1%でも変わったか」を意識。
- 「人とすれ違った瞬間、なぜか息が浅くなった」
ワーク2:感情カードを使って言語化リハーサル
- 「喜び/怒り/不安/安心」など基本感情語(20~30種)をカード化。
- 日常の出来事に「どれが一番近い感情か」選んで言葉にしてみる。
「買い物中、店員の対応に“モヤモヤ”。たぶん《いらだち》に近い」
目的:感情のラベリングスキル向上 → 自分を他者に伝える足がかりに。
第2ステップ:「感情語」の語彙を増やす(ラベリング訓練)
目的:
- 微細な感情を名づけられる力=自他理解の道具を持つ。
実践例:
例1|感情語マッピング
- 「喜び」から派生する細かな語彙を書き出す。
- 「喜び → 安堵/誇らしさ/ほっとする/感謝/満たされる」
例2|映画・ドラマの感情観察
- 登場人物の表情・セリフを見て「どんな感情?」を当てる。
- 「この人は“怒っている”より“がっかり”してる感じ」
例3|感情×状況のペア探しゲーム
- 感情語カードと「学校で褒められた」「列に割り込まれた」などの状況カードを組み合わせる。
ワーク3:「感情リフレクション」対話練習
- 練習用パートナーと簡単なやりとりを行い、相手の気持ちを推測して返す。
「今日はずっと会議で疲れた」
「疲れたってことは、集中してがんばったんだね。ちょっとイライラした?」
- 回答は正解でなくてOK。重要なのは「推測してみる姿勢」。
目的:共感的応答の模倣と、感情のやりとりに慣れること。
第3ステップ:感情を対人関係でやり取りする
目的:
- 「わかってもらう・わかってみる」体験を増やす。
実践例:
例1|感情あてっこゲーム(ペアまたは小グループ)
- 相手の話を聞いて「それって〇〇って気持ち?」と推測してみる。
- 話者は「YES/NO」でフィードバック。
例2|もしも○○だったら?感情ロールプレイ
- 「友達にLINEを無視された」「家族にお祝いを忘れられた」などを設定。
- 「自分だったらどんな気持ちになる?」を想像して答える。
例3|感情フィードバック交換法(リレー形式)
- 誰かが「今日のうれしかったこと」を話す。
- 他の人は「その話を聞いて自分がどう感じたか」を1文で返す。
ワーク4:「3つの感情つなぎ」法
- 相手の気持ちを想像(想像):「〇〇って感じかな?」
- 自分の気持ちを言う(共有):「自分も同じ感じのことある」
- 質問で返す(関心):「そのとき、どうしたの?」
例:
「電車が遅れてイライラした」
→「わかる、焦るよね(①)」
→「自分も前、遅刻しそうであせった(②)」
→「そのあと間に合った?(③)」
目的:対話が“情報の交換”から“感情の共有”になるよう支援。
第4ステップ:「つながる」対話技法の練習
目的:
- 情報交換で終わらず、感情共有によって関係性が深まる。
実践例:
例1|3つの感情つなぎ練習(想像・共有・問いかけ)
- 「失敗して怒られた」という話を聞いて…
- 「くやしさと恥ずかしさがあったのかな?」(推測)
- 「自分も似た体験で落ち込んだことある」(共感)
- 「そのあとどうやって立て直したの?」(問い)
例2|“感情の橋”を架けるワーク
- 話題が違っても「感情」でつながる。
- A:「最近ペットが亡くなって…」→ B:「自分はペットじゃないけど、別れの時のぽっかりした感じは経験ある」
例3|否定せず感情に寄り添うスクリプト練習
- NG例:「そんなことで落ち込むなよ」
- OK例:「そう感じたんだね。きっとしんどかったよね」
ワーク5:「ミニ感情日記をシェアする」実践
- 週1回などの頻度で、信頼できる人に短い感情日記(1~3行)を共有。
- ルール:評価・アドバイスなしで「読んでありがとう」と伝えるだけ。
例:
「今日は散歩して気分がすっきりした。空がきれいだった」
→「読んだよ、ありがとう。空がきれいだったんだね」
目的:感情表出 → 受容 → つながりの流れを安全に体験させる。
第5ステップ:「安全な関係性」体験を通して統合する
目的:
- 表出しても否定されず、共感される経験を積む。
実践例:
例1|感情日記の交換(安全な空間)
- 1日1回、短く「今日の気持ち」を紙・メッセージなどで共有し合う。
- 「ありがとう」で終わる、評価しない習慣。
例2|“心の履歴書”づくり
- 「人生で印象的な感情体験5つ」を振り返る。
- 喜び、痛み、驚き、恐れ、回復などで構成される「感情の年表」に。
例3|感情のサンドイッチフィードバック法
- 相手に伝えたいことがある時:
- ポジティブ(安心の言葉)
- 本音(気持ち・願い)
- 未来に向けたひとこと
- 例:「一緒に過ごせてうれしかった。けど、昨日はちょっと寂しかった。また話せたらうれしいな」