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拒食症・過食症などの摂食症が身体に及ぼす悪影響

目次

過食症のカウンセリングとセラピーのステップ

【カウンセリング進行のステップ】

STEP
安全確保と関係構築
  • 目標:まずは「安心・安全な関係性」を築くこと。
  • 方法:
    • 否定せずに「どのように辛かったか」を丁寧に聴く。
    • 過去の話を無理に掘り下げず、今の感情を尊重。
    • 「何があっても、ここではあなたを大事にしたい」というメッセージを伝える。
  • 重要ポイント:トラウマ反応や過覚醒が強ければ、グラウンディングなどの安定化技法を取り入れる。
STEP
自己理解の促進(ライフレビューや自己探求)
  • 目標:「何が起きたのか」「今の自分は何に反応しているのか」を一緒に見ていく。
  • 方法:
    • ライフチャートや時系列で人生を振り返る。
    • 感情と身体感覚のリンクに注目。
    • 「何がきっかけで、どう苦しくなるのか」を整理。
  • ツール例:
    • 感情記録表
    • ライフラインチャート
    • 認知のゆがみチェック
STEP
感情調整とセルフケアの学習
  • 目標:過食や癇癪などの“感情に呑まれる”状態を減らす。
  • 方法:
    • 自律神経調整(呼吸法・マインドフルネス・五感刺激)
    • 「今、どんな気持ち?」という身体への気づきを促す。
    • 過食行動の前後で「どんな感情→どんな思考→どんな行動」とつながるかを可視化。
STEP
承認欲求の再構築(対人関係スキル・セルフコンパッション)
  • 目標:他者からの評価ではなく、自分で自分を承認できるようになる。
  • 方法:
    • スキーマ療法的アプローチ(「見捨てられ不安」「無価値感」などの認知の修正)
    • 内的自己対話を育てる:セルフコンパッション(自己への優しさ)
    • ロールプレイを通して境界線の引き方を学ぶ(Assertiveness)
STEP
回復の統合と今後の人生設計
  • 目標:問題の克服だけでなく、自分らしい生き方を再構築。
  • 方法:
    • 興味・価値観探索(バリューカードやACT的アプローチ)
    • 小さな成功体験の積み上げ(できたことノート)
    • 将来的な希望・夢・居場所づくり

想定対象者:女性・過食・HSP傾向・トラウマ歴・抑うつ・自己理解困難

過食症に悩む19歳の女性の相談事例

「過食症に悩む19歳の女性です。過去には不安障害やうつ病の診断をされたこともあります。

特に思春期には、まわりに敏感になってしまい教室に入れなく、保健室登校がおおくなりました。父親は厳しくいつも怒鳴られ、母親もそれに準じていて、私をカバーすることは少なかったです。兄弟でもいれば違ったかもしれませんが、中学ではいじめに会いリストカットやオーバードーズをするようになり学校にいけなくなり、フリースクールに通うことになりました。高校では友達を作れなく、モチベーションは先生を対象とすることがしかなく、認められたいという承認欲求に変わりました。そのために勉強をするようになり、成績だけはトップクラスとなりました。

現在は大学に通いながらアルバイトをしていますが、人間関係の難しさもあり、また、うつ病の症状が辛く大学もアルバイトも休みがちです。以前は休むと多少ながらも気分は落ち着きましたが、自宅にいることも苦痛になってしまいました。感情のコントロールができなく、何かのきっかけがあると家族に当たり散らすことも普通になったのかもしれません。

自分では何が私を苦しめているのかわかりません。病気なのか、性格なのか、ストレスなのか、生きづらさだけが先行し、生きていることが苦しいとしか感じるだけです。現在の対処法は食べることだけです。食べている間は胸のつかえは忘れていますが、過食後には、さらに後悔や情けなさでさらに苦しさが増すばかりです。

カウンセリングやセラピーの進め方を教えてください。

STEP
関係構築と安心感の提供
  • 目標
    • 安全・安心の場を提供し、「ここでは何を話しても大丈夫」と感じてもらう。
  • 内容
    • 自己紹介と面接の枠組み説明
    • 相談動機の確認と希望(「何が気になっているか」)
    • 雑談的な要素を交えつつ、信頼関係の構築
    • 「過食」のタイミングや気持ちに触れる範囲で軽く確認
  • ツール・技法例
    • アイコンタクト・ペーシング
    • 「いま、ここ」へのグラウンディングワーク(例:5感チェック)
STEP
ライフレビュー①(幼少期~小学生)
  • 目標
    • 生育歴を共有し、発達や愛着形成の初期段階にアプローチ
  • 内容
    • 幼少期の記憶(家庭・学校・友人・親との関係)
    • 「覚えてる中で印象的だった場面」や「嫌だったこと」
  • ツール
    • ライフラインチャート(時間軸で思い出を整理)
STEP
ライフレビュー②(中学・高校期)と自己傷害行動
  • 目標
    • 思春期における傷つき体験や自己防衛のパターンを共有
  • 内容
    • いじめ・不登校・保健室登校・ODやリストカットに至った背景
    • その時の気持ちや「なぜそうせざるを得なかったのか」
  • 補足
    • セラピストの評価より、共感と意味の理解を重視
STEP
現在の状態の整理と感情の見える化
  • 目標
    • 現在困っていることを具体化し、「感情→思考→行動」のパターンを把握
  • 内容
    • 過食の前後の感情・身体感覚・思考を整理
    • 家で癇癪を起こしてしまうときの状況ときっかけ
  • ツール
    • 感情記録シート(ABCモデル or コラム法)
STEP
セルフケア・感情調整技法の導入
  • 目標
    • 自律神経や感情の乱れを整える簡単な方法を習得
  • 内容
    • 過食の代替行動(例:五感刺激・冷水・体を動かす)
    • 感情に気づく練習:日々の「感情メモ」
  • 技法
    • マインドフルネス、呼吸法、グラウンディング
STEP
自己像と承認欲求の理解
  • 目標
    • 「自分とはどんな存在か?」「誰にどう思われたいのか?」の探求
  • 内容
    • 「大人に見てほしかった」「認められたかった」感情の背景に触れる
    • 自己肯定感と承認欲求の違いについて話す
  • ワーク
    • 自分が大切にされて嬉しかったエピソードリスト
STEP
対人関係パターンと境界線の確認
  • 目標
    • 対人関係における過剰な期待や依存傾向の整理
  • 内容
    • 友人や大人との関係で「期待しすぎて辛くなる」ことは?
    • 境界線(バウンダリー)の考え方
  • ワーク
    • ロールプレイ:断る練習・頼む練習・気持ちを伝える練習
STEP
過去と今をつなぐ(意味づけと統合)
  • 目標
    • 過去の傷と現在の自分を意味づけでつなぐ
  • 内容
    • 「辛い過去があるからこそ、気づけたこと/優しくなれたこと」などの再構築
  • ワーク
    • 「私のストーリー」ミニエッセイ
    • 過去の自分への手紙
STEP
価値・希望の再発見
  • 目標
    • 自分にとって大切なものを見つけ、未来の方向性を描く
  • 内容
    • 「どんなときに少しでも安心・落ち着いた?」
    • 「もし調子がよくなったら、どんな生活がしたい?」
  • ツール
    • バリューカード、価値観探しワーク
STEP
振り返りと今後の支援設計
  • 目標
    • これまでの面接を振り返り、次の一歩を明確にする
  • 内容
    • 気づけたこと・できたことの確認
    • 継続支援の形(本人の希望・他機関連携)を調整

【過食症クライエントの支援ステップ:7段階モデル】

治療的アプローチと併用できる療法

アプローチ内容・目的
認知行動療法(CBT)認知の歪みに働きかける、食行動記録表・思考記録表を活用
弁証法的行動療法(DBT)衝動のコントロール・感情の調整を学ぶ、特にOD・リストカット傾向がある場合は有効
対人関係療法(IPT)親密な人間関係の課題に焦点をあてる。見捨てられ不安、評価への過剰反応などを整理
マインドフルネス衝動に気づき「今ここ」に戻る力を養う(非評価的な観察)
アートセラピー・表現療法言葉にしづらい感情やトラウマを表現する方法として有効(塗り絵、コラージュなども)
STEP
信頼関係の構築と「食」に対する非評価的態度の提示
  • 過食症のクライエントは非常に羞恥心と罪悪感を抱えています。
  • 「何をどれだけ食べたか」を聞き出す前に、「食べ方」や「量」について評価せずに関心を持つ姿勢を示します。

カウンセラーの姿勢例

「あなたの体験をそのまま聴かせてください。どんな感情があっても、それは大切なサインです。」

STEP
過食行動のトリガー(引き金)を把握する
  • ABCモデル(Activating event → Belief → Consequence)や感情記録表を活用。
  • 「どのような感情・状況・思考のあとに過食が起きるのか?」を具体的に観察。

例:

  • A:バイト先で店長に注意された
  • B:「私はまたダメな子だ、迷惑をかけている」
  • C:帰宅後、ドカ食い、嘔吐、自己嫌悪
STEP
感情処理・コーピングスキルの獲得
  • クライエントは「過食=感情の処理手段」となっているケースが多いです。
  • 感情を味わいながら安全に表現する練習や、「気晴らし」「気分転換」のリスト(代替行動リスト)を作成。

支援例:

  • 「食べたい衝動が来た時に、まず5分間、深呼吸して日記を書く」
  • 「ぬいぐるみを抱きしめる」「ぬるま湯に浸かる」「推しの動画を見る」などの“心の避難先”を一緒に見つける
STEP
自己批判的な思考の修正(認知再構成)
  • クライエントは「過食してしまう私はだめ」「自分は意志が弱い」などの認知のゆがみを持ちやすいです。
  • 思考記録表や“自分を責めた言葉”の観察と再検討を通して、柔らかい見方を育てます。

例:

  • 「過食してしまった。でも、それは今の私の苦しさのサインだった。責めるより、理由を探したい。」
STEP
身体イメージと自己肯定感の再構築
  • 体型・体重・外見に強いこだわりや嫌悪感を抱いている場合があります。
  • 体重よりも「自分の価値」や「体の役割」に意識を向けられるように支援。

アプローチ例:

  • ボディスキャン(マインドフルネス)や、体の感謝日記(例:「今日は歩けた」「この体で笑えた」)
  • 美しさの定義を広げるワーク(「自分が美しいと思う人は?」→「なぜそう思う?」)
STEP
対人関係と生きづらさへの対応
  • 認められたい・見捨てられ不安・境界線の問題が根底にあることが多いです。
  • 対人関係療法(IPT)や、アサーション練習も有効です。

支援例:

  • 「頼みごとを断ったら嫌われるかもしれない」→「でも本当に自分を大事にするならどうする?」
  • 「YESとNOの間に“少し考えます”があることを練習する」
STEP
再発予防とセルフモニタリングの習慣化
  • 衝動が再燃したときの“戻れる場所”や“つながり”を確保。
  • 「気分」「行動」「サイン」を継続して記録するリフィル(例:週ごとシート)を導入。

例:

  • セルフケア・リストの活用
  • 「調子が悪くなる前に現れるサインチェック」→早期対応

過食症の自己ワーク

STEP
食行動記録表

記入のコツ

  • 「完璧に記録する」ことが目的ではなく、「自分のパターンを客観的に見つける」ことが目的。
  • 食べ過ぎた・食べなかった日もOK。そのままを書いてみる。
問い答え
日付
食べた時間
食べたもの(できるだけ詳しく)
食べた量
食べた時の気持ち
食後の気持ち
食べた理由(空腹?ストレス?)
場所・状況(1人/誰かと)
自分へのコメント(気づきなど)
STEP
過食時の感情記録シート(感情ABC記録)
  • 強く出やすい感情(例:怒り、悲しみ、不安、さみしさ)を一覧にしておくと◎
  • 「思考」と「感情」の違いを意識して記録する(例:「どうせダメ」は思考、「悲しい」は感情)
出来事状況・思考・感情・行動・気持ち
日付・時刻
A:きっかけ(状況)
B:そのときの思考(頭に浮かんだ言葉)
C1
:感じた感情(強さ0
〜100)
C2:とった行動(過食・嘔吐など)
その後の気持ち(後悔、安心、など)
STEP
自尊感情回復ワーク(3ステップ式)1

できたこと・頑張ったこと日記(セルフアファメーション)

日付今日できたこと・小さな成功そのときの気持ち自分への一言(労い・励まし)

今日はバイトに行けた

ちゃんと寝る準備ができた
ちゃんと相談できた
STEP
自尊感情回復ワーク2

自己否定思考の棚卸しと変換練習

自分を責めた言葉(自動思考)その言葉の影響(感情・行動)別の見方をすると…(優しい言葉)
「また食べちゃった。私って最悪」罪悪感、やる気喪失「今日はつらかったんだよね。それに気づけたことが大事」
STEP
自尊感情回復ワーク3

自分の価値リストづくりワーク

自由に自分に価値観を質問する回答だから、私は価値のある存在だ!でまとめる
私の好きなこと・夢中になれることは?
私が「ありがとう」と言われた経験は?
私が他の人を助けた経験は?
私が大切にしている価値観は?
私はこんなふうに成長してきた(どんな困難を乗り越えた?)

過食衝動のトリガーチェックリスト

過食症(Binge Eating Disorder: BED)の過食衝動のトリガーの自己チェックリスト(40問)です。質問は、次のような観点から網羅的に構成されています。各項目について、次の4段階で回答してください。
【0】まったくない 【1】ときどきある 【2】よくある 【3】いつもそう

過食衝動のトリガーチェックリスト
過食の頻度とパターン(Q1〜Q10)
1.短時間で大量の食べ物を食べてしまうことがある
2.自分では食べる量をコントロールできないと感じる
3.食べている間に止めようと思っても止められない
4.お腹がいっぱいでも食べ続けてしまう
5.一人で隠れて食べることが多い
6.食べ物を早食いすることが多い
7.過食後に強い罪悪感や自己嫌悪を感じる
8.食事内容や量を他人に知られたくない
9.自分で買いだめした食べ物を一気に食べてしまう
10.食べた内容を思い出せないことがある(記憶があいまいになる)
感情と過食の関係(Q11〜Q20)
11.ストレスを感じると過食してしまう
12.不安なときほど、つい食べ物に手が伸びる
13.寂しさを感じると過食したくなる
14.怒りやイライラを食べることで紛らわそうとする
15.自己否定感が強いときに過食が起きやすい
16.食べることで安心感や慰めを得ようとする
17.食べることで嫌な感情を一時的に忘れようとする
18.気分が落ち込むと無性に食べたくなる
19.過食は「感情の逃げ場」だと思う
20.食後に感情的に不安定になりやすい
身体と自己イメージ(Q21〜Q30)
21.自分の体型や体重に強い不満がある
22.太っている自分を受け入れられない
23.食べたあとに「太ってしまう」と強く思う
24.自分の体が「嫌悪の対象」になっている
25.何度もダイエットに挑戦しては挫折している
26.体重計に頻繁に乗る/気になる
27.体型を隠すような服ばかり選ぶ
28.自分の容姿や体型に自信が持てない
29.食事をしていないときでも体重のことが頭にある
30.理想の体型に強いこだわりがある
日常生活と自己評価への影響(Q31〜Q40)
31.過食によって日常生活に支障が出ている
32.人間関係に悪影響が出たことがある
33.学業や仕事が手につかないことがある
34.自分のことを「だめな人間」だと感じることが多い
35.自分を責める思考が止まらない
36.「もっと強い意志があれば…」と自分を責めてしまう
37.過食以外にストレスの発散法がない
38.自分を褒めたり受け入れるのが難しい
39.過去に「リストカット」や「OD」をしたことがある
40.生活リズムが崩れていて、過食が習慣になっている
過食衝動のトリガーチェックリスト

評価

  • 各項目に対して、0〜3点で自己採点
  • 総得点の範囲:0~120点
合計点評価と解説
0-30点健康的な範囲
食との付き合い方に大きな問題は見られません。ただし、一部ストレス食いなどの傾向がある場合は、早めに気づくことが大切です。
31-60点注意レベル
食行動や感情面にやや問題が見られます。ストレスとの関係や自己イメージのゆがみに注意し、カウンセリングの導入が推奨されます。
61-90点問題傾向あり
過食が頻発しており、自己否定感や感情調整の困難が見られます。心理的サポートと並行して、医療機関での評価も視野に入れましょう。
91-120点高リスク
強い過食傾向および精神的ダメージが認められます。治療的介入(精神科・専門的カウンセリングなど)が早急に必要です。複数の問題(うつ・PTSD・依存など)が重なっている可能性もあります。

神経性やせ症(神経性無食症)のセラピー

神経性やせ症(神経性無食症、Anorexia Nervosa)の治療は、身体面と心理面の両方にアプローチする必要がある多面的な治療が基本です。神経性やせ症における心理療法は、単に「食べられるようになる」ことだけを目的とせず、本人の内面の「思考」「感情」「価値観」「対人関係」などに深く関わりながら、根本的な回復を目指します。

STEP
心理的安全性と治療同盟の構築

目的

  • クライアントが「ここは安心して話してよい場所」と感じられる関係性を築く
  • 治療者との信頼関係を基盤に、心理的な防衛や不信を和らげていく
  • 「治療を受ける価値がある」と感じられるようにし、治療動機を高める
  • 摂食障害の背景にある心の痛み・葛藤・空虚感に焦点を当てられるよう、心の土台を作る

具体的ワーク

  • 気持ちの温度計(今日の気分・不安の強さなどを0〜10で表す)
  • 食事・感情・行動の記録表(食べたもの、直後の気持ち、行動を記録)
  • 安心リスト作り(安心できる行動・人・場所を思い出して一覧に)

アプローチ方法

1. 評価面接を通じた「理解される」体験

  • 治療初期は情報収集よりも、「あなたの物語を大切に聴いている」姿勢を重視
  • 「何があって今こうなっているのか」に寄り添うナラティヴ的態度が有効

2. コントロールや羞恥への配慮

  • クライアントは「太ること」や「自分を晒すこと」に強い恐怖を感じている
  • 体重や摂食状況に触れる際は、一方的な指導・監視と感じられないような関わりを意識

3. 治療の共通理解(サイコエデュケーション)

  • 摂食障害のメカニズム、治療の流れ、心身への影響などを共有し、安心感と希望をもたらす
  • 「症状を否定せず、その機能に敬意を払う」視点も大切(例:「あなたなりの生き延び方だったのかもしれない」)

具体的ワーク

ワーク名内容
セラピーの契約書セラピーの目的、目指すこと、安心して話すためのルールを一緒に作成
心の安全地図「安心できる人・空間・行動」を視覚化して共有。安心の源を再認識する
自己紹介カード「私ってどんな人?」をポジティブ/ニュートラルに語るカードワーク
摂食障害の正しい理解ノート「摂食障害って悪者ではない」「自分を守っていた方法かもしれない」と捉え直す
STEP
摂食症状と認知(思考)の理解

目的

  • 摂食症状(制限、過度な運動、体重へのこだわり)が「自動的な思考(認知)」とどのように結びついているか理解する
  • 歪んだ思考パターン(認知の歪み)に気づく
  • 思考・感情・行動のサイクルを自覚し、他の選択肢を持つための第一歩を作る

具体的ワーク:

  • 自動思考記録表
     「状況→気持ち→頭に浮かんだ考え→根拠→反証→現実的な考え」
  • 認知のゆがみチェックリスト(全か無か思考、過度な一般化など)
  • 食事に関する信念チャート(「太る=悪い」「○kg未満でなければダメ」など)

アプローチ方法

1. 「ABCモデル(認知行動療法)」で理解

項目内容
A(Activating event)体重が増えたと感じる
B(Belief)「太るのは絶対にダメ」「太っている私は価値がない」
C(Consequence)不安 → 食事制限・運動・吐く・自己嫌悪

これをクライアントと一緒に整理し、「思考」がどれだけ症状を引き起こしているかを可視化。

2. 認知の歪みを明確にする

下記のような歪みが多く見られます:

認知の歪み
全か無か思考「1gでも増えたら全部台無し」
過度の一般化「あの人に太ったと言われた → 誰からも嫌われる」
感情的決めつけ「不安だから本当に太っている」
自己への過剰な責任「家族が不機嫌なのは私が食べたから」

3. 「食行動記録+思考モニタリング」の導入

  • 食事を摂った場面における「前後の気持ち」「考え」「行動」を記録
  • 例:食べる前 → 不安「太るかも」/ 食べた後 → 「こんなに食べた自分はダメ」
STEP
ステップ3:感情・自己概念・コーピングの再構築

目的

  • 感情の抑圧や回避から、「感情の識別・受容・表現」へ
  • 自己概念(自己評価、自尊心)を症状ベースから「人間としての全体像」へと広げる
  • 症状以外のストレス対処手段(コーピング)を獲得する

具体的ワーク:

  • 「本当の気持ち」リスト(怒り、悲しみ、孤独、無力感などを探る)
  • 感情日記(感情のトリガー・身体反応・行動パターン)
  • セルフ・コンパッション(自己への優しさ)ワーク
     例:「親友が同じことで悩んでいたら、何と声をかけますか?」
  • マインドフルネス練習(今この瞬間の感覚・呼吸に意識を向ける)

アプローチ方法

1. 感情認識トレーニング

  • 「私は何を感じているのか?」に答えられない方が多い
  • 感情語リストや絵カードを使い、日常の気分をチェックするワークを継続
  • 例:「怒り・悲しみ・恥・罪悪感・孤独」などを識別・記録する

2. 症状による感情コントロールに気づく

  • 食事制限や運動 → 「不安を消す」「達成感を得る」「他者をコントロールする」ため
  • つまり、摂食行動は感情調整の手段になっていることが多い

それに代わる健康的な感情処理方法を探す(例:マインドフルネス、日記、表現など)

3. 自己概念ワーク

  • 自己評価が「体重」「見た目」「達成」に偏っていないかを確認
  • ワーク例:「私が大切にしている10の特徴」「他者が私に感じている長所」

4. コーピングの再構築

ストレス源旧コーピング新しいコーピング候補
孤独過食・制限誰かに連絡、音楽を聴く、アート
不安過運動呼吸法、ストレッチ、認知再構成
STEP
アイデンティティの再構築と価値観の探求

目的

  • 「やせている私」や「コントロールできている私」だけが自分ではないと気づく
  • 自分らしさ・人生の方向性を再構築し、「生きる意味」と再びつながる
  • 社会的な役割・人間関係の中で「自分」を確立する

具体的ワーク:

  • ライフライン(人生年表)と意味づけの振り返り
  • 価値カードワーク(50枚程度の価値観カードから自分に大切なものを選ぶ)
  • 未来のビジョンマップ(5年後・10年後の自分を描く)
  • 自己紹介文ワーク(「私は○○な人です」と文章で表現)

アプローチ方法

1. アイデンティティマップの作成

「私ってどんな人?」を多角的に見つめる:

  • 娘/姉/友達/相談者/学生
  • 好きなこと(絵、音楽、動物)
  • 価値観(誠実さ、思いやりなど)

症状ではなく、「関係・興味・信念」を通じて自分を理解する

2. 価値観ワーク(前述の価値カードワーク)

  • 「やせること」以外で、自分にとって重要なものを可視化
  • 優先価値をもとに「生き方の方向性」を考える

3. ライフラインワーク

  • 幼少期から現在までの自分史を振り返り、「頑張った自分」「失ったもの」「得たもの」を見つける
  • 回復とは「失った人生の再構築」であると気づけるプロセス

4. 未来ビジョンづくり

  • 5年後・10年後の「症状に支配されていない自分の生活」を想像
  • 「私は何をしていて、どんな人と関わっていて、何を大切にしているか」
STEP
対人関係・家族関係の修復と再発予防

目的

  • クライアントの発話のペースに合わせ、急がず尊重する
  • 「変わらなければならない」というプレッシャーを与えない
  • 「私が変えてあげる」ではなく、「一緒に探していきましょう」という並走の姿勢

具体的ワーク:

  • 家族面接・家族の気持ち共有ワーク
  • 対人スキル(アサーション、境界線、NOと言う練習)
  • 再発予防プラン作成(ストレスの兆候チェックリスト、対処法一覧)

アプローチ方法

1. 対人関係パターンの理解(IPT的視点)

  • 「私は人間関係の中でどうふるまってきたか?」
  • 過度な迎合・完璧主義・孤立傾向などを認識し、対人ストレスと症状の関連性に気づく

2. 家族との関係性の見直し

  • 摂食障害が「家族のバランスを保っていた」「注目や安心を得る手段」になっていた可能性も
  • 過干渉・否定・無関心など、過去の関係性の傷に丁寧にアプローチ
  • 家族にも「治療の理解・共感」を深める機会を提供(家族支援セッション)

3. 再発リスクの自己点検と対処計画

  • 再発兆候(体重の執着・孤立・不眠・自己批判など)を自分で見つける
  • 困ったときのSOSリスト(支援者・方法・言葉)を可視化

具体的ワーク

ワーク名内容
関係パターンのふり返り「人間関係でよく起こること」や「傷ついた体験」から、行動パターンを分析
家族マッピング家族関係を図式化し、「誰とどんな距離感だったか」「どんな役割を担っていたか」を可視化
再発予兆チェック表自分特有の“危険サイン”をリストアップし、早期介入ポイントを明確にする
セルフケアの旅支度「私が自分を守れる方法」をまとめたリソース・ボックス(音楽、言葉、行動)を作

よく用いられる心理療法の技法と選択例

アプローチ特徴と活用例
認知行動療法(CBT)歪んだ思考・信念の修正、食行動の記録と行動実験などに活用
動機づけ面接法(MI)「治りたいけど怖い」などの葛藤に寄り添い、変化への意欲を育てる
力動的心理療法深層心理(無意識の欲求や葛藤)を探り、人格全体の成熟を支援
マインドフルネス認知療法(MBCT)「今の自分」に気づき、自己批判から離れる方法を身につける
スキーマ療法幼少期からの「見捨てられ不安」や「無価値感」などの深い信念に取り組む
家族療法親子関係や家族の過干渉・役割構造の見直しに有効

神経性やせ症(神経性無食症)の治療進行チェックリスト

神経性やせ症 治療進行チェックリスト(全4段階)

※ご本人または支援者(医療者・カウンセラー・家族)が治療の進み具合を確認するために使用します。

活用のポイント

  • 完全に○がつかなくても大丈夫です。「以前より進んだ」と感じられることが大切です。
  • 支援者と一緒に定期的に振り返ることで、小さな回復の兆しを見逃さないようにしましょう。
  • チェック項目は必要に応じて追加・修正して使ってください。

【第1段階】身体の安全と生命の安定を確保する段階

チェック項目達成
□ 命の危険がある医学的状態(低体重、電解質異常、心拍異常など)に対応した
□ 入院が必要な場合、医療機関への受診・入院が行われた
□ 医師・スタッフとの基本的な信頼関係が築けつつある
□ 摂取カロリー・栄養管理が医療の下で始められた
□ 再栄養症候群のリスクが評価され、予防策が講じられた
□ 脱水・低血糖などの緊急症状への対処が完了した
□ 点滴やサプリメントなどによる栄養補助が行われた
□ 自殺念慮・自傷リスクについて評価され、必要な支援がされた
□ 体重の記録が始まり、週単位で経過が見えるようになった
□ 家族や支援者が現在の身体状態について正しく理解できた

【第2段階】栄養状態の安定と食行動の回復

チェック項目達成
□ 目標体重・BMIの設定が行われた(例:BMI18.5以上)
□ 食事の量・質の改善に向けた栄養指導が開始された
□ 食事に関する強い恐怖心が軽減してきた
□ 毎食を一定時間内に食べられるようになってきた
□ 過度な運動や排出行動(下剤・嘔吐)の抑制に成功しつつある
□ 拒食・体重計測・鏡を避けるなどの行動が減ってきた
□ 「食べる=悪いこと」という思考に疑問をもてるようになった
□ 栄養を摂ることへの身体的な拒絶反応が減った
□ 支援者と一緒に食べる場面が作られ、共有が可能になってきた
□ 週0.5〜1kg程度の体重増加が見られるようになってきた

【第3段階】心理的課題への取り組みと回復の定着

チェック項目達成
□ 認知行動療法や精神療法など、心理療法が開始された
□ 「やせ=価値がある」という思い込みを話題にできるようになった
□ 感情やストレスへの対処方法を学び始めた
□ 完璧主義・自己否定などの性格傾向に気づき始めた
□ 対人関係や家族関係における葛藤について話せるようになった
□ 自分の「本当の気持ち」に少しずつ気づけるようになった
□ 治療に対するモチベーションや希望が安定してきた
□ 食事や体型をめぐるこだわりが弱まりつつある
□ 趣味・関心・日常活動への意欲が戻ってきた
□ 社会復帰(学校・仕事など)への希望や準備が始まった

【第4段階】再発予防と自立支援のフェーズ

チェック項目達成
□ 自分のストレス要因・再発リスクを言語化できるようになった
□ 症状の初期サインに気づく力がついてきた
□ 食事や体重の不安定さを自分で調整できるようになった
□ 定期的な通院や心理療法を継続している
□ 「治す・生きる意味」について自分なりの意味を見出せている
□ 家族・友人との人間関係が改善・安定してきた
□ 自分を責めすぎずに過ごす力がついてきた
□ 長期的な人生の目標(夢・仕事・人間関係)を考えられるようになった
□ 自立生活に向けて計画や練習が始まった
□ 食事・体重へのこだわりに再び支配されることなく過ごせている

「摂食障害を知る――症状から治療まで」 宮下紘子 

「摂食障害――メンタルヘルス・サポートシリーズ」 田島幹夫

「絶食症の女たち 神経性摂食障害と拒食症」 石井紀子

「やせたい病 拒食症・過食症の治療と回復」 菊地慎一郎 

フェアバーン、CG(2008)認知行動療法と摂食障害/ギルフォードプレス

Wonderlich, S. A., Mitchell, J. E., Crosby, R. D., & Myers, T. C. (2017).摂食障害の慢性化と治療:臨床概要。摂食障害の国際ジャーナル

Treasure, J., & Schmidt, U. (2013).神経性食欲不振症の認知対人維持モデルの再検討:認知的、社会的感情的、対人的素因および永続要因の証拠の要約/摂食障害ジャーナル

Bulik, C. M., Marcus, M. D., Zerwas, S., & Levine, M. D. (2012).摂食障害。臨床心理学の年次レビュー

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