“別れてはよりを戻す”を繰り返すカップルの臨床的タイプ別見立てと事前の個人カウンセリング
見立ての仮説
- 男性:うつ病治療中だが、パーソナリティ傾向(支配・怒りの爆発)も強く、単なる病気のせいでは説明できない。
- 女性:幼少期の愛着不全による共依存パターンが根底にあり、「支えること=愛」としてしまう。抑うつ・希死念慮あり。
- 関係:典型的なモラハラ―共依存カップルの反復パターン。
- 介入:
- まずは女性単独での安全確保と自己理解。
- 両者に「境界線」と「安全な関係枠組み」が作れるかを見極める。
- その上でカップルセッションの可否を検討。
具体的相談内容:
私は39歳の独身女性で東京都に住んでいます。彼とは同棲をしていましたが、別れては戻りの繰り返しを数回重ねて4年が過ぎました。彼はうつ病だということで我慢してきていますが、モラハラが強く感情もむき出しにします。普段からこだわりが強く、私を自分が思うようにコントロールしようとします。指示通りに動かないと強い怒りをぶつけてきます。度が過ぎる時には私も歯向かうことから別れることになります。しかし、調子が良い時にはとてもいいなと思える彼です。そのために別れた後にも私から歩み寄るというパターンが出来上がっています。
今回は別れてから2か月間連絡を取っていません。彼からは、4年間の中で何度別れを繰り返しても、連絡をくれるということはありません。さすがに、私が付き合っていることが彼にとって負担になっているのではないかと思えるようにもなりました。
ただし、私は彼を支えることが生きがいのようにもなっていたのだと思います。別れた後に思いうかべることは、彼が弱っているときに頼ってくる姿です。怒りにまみれた彼を打ち消すぐらい悲哀に満ちていて、私がいなければ、彼はどうなるのかと心配になることが、私を奮い立たせる源となっていたような気がします。
私は幼少期から親に愛されたことも褒められた記憶もありません。どんなに体の調子が悪くても力ずくで学校に行かせられました。中学1年の時にいじめにあったことがあり、学校を休みたいと泣いて両親に訴えましたが、玄関から髪の毛をつかんで引きずり出されたこともあります。私はたった一言「大丈夫」の言葉だけでもかけて欲しかったのに心が通じませんでした。
私はスポーツも勉強もできる方でしたが、妹は劣っていったためなのか、両親に大切にされて育てられるのを見て、うらやましくて仕方がありませんでした。どうして私に厳しかったのかわかりません。その記憶が今でも鮮明に蘇り、苦しくなってしまいます。何かの幸せを感じているときはいいのですが、今回のような苦しいことがあると特に思い出し、普通に生きてはいけないのかなと思い何事にも力が入らなくなります。そのことが生きづらさを招いているのかもしれないと思っています。
私は愛情に対し、恋愛に対して歪んだ認知があるようで、愛されたいの欲望は普通にあると思いますが、尽くしたい、支えたいの方が強いのかもしれません。だからこそ、私が彼のうつ病を支えることが生きがいのようになっていたのだと思います。それでも、平穏な恋愛は望んでいます。
私がもう一度、彼に謝って恋愛を継続しても、今のままだと何も望めることもなく、変わることもなく、同じことの繰り返しになると思います。
彼の怒りは病気から現れるものなのかもしれませんが、薬を3種類飲んでいても病気には勝てないのか、私の愛情が足りないのかはわかりませんが、私の心もどんどんすり減っていくような気がしています。彼から否定されるたびに、自己肯定感も下がり続けていて、自信も無くしています。
それでも、彼を愛する気持ちは変わらずにいます。お付き合いするうえでは、相手の悪いところに目が行くのではなく、良いところを見つけて相手を信じ足りないところは補い合っていきたいと思っています。
この恋愛が成就するために何か方法があるなら、教えて欲しいと心からお願いしたいと思います。チャレンジは最後のつもりでいます。
悩みの症状:怒り、不安、恐怖、悲しみ、寂しさ、後悔、イライラ、死んでしまいたい、トラウマ的
感情の強さ:100
カップルカウンセリングを希望しますが、その前にカップルカウンセリングではどのようなことができるのか、今回のケースは解決できるのかお聞きしたいです。
最初に私一人でカップルカウンセリングの打ち合わせをしたいと考えています。
臨床的見立ての仮説
1. 男性側の特徴(うつ病+パーソナリティ傾向)
- うつ病の診断既往
薬を3種類服用している点からも、精神科治療歴が長いことが推測されます。ただし、薬物療法にも関わらず「強い怒り・コントロール欲求・モラハラ的態度」が持続しているため、純粋なうつ病症状だけでは説明しきれない部分があります。 - 併存可能性
- 強いこだわり・コントロール欲求 → 強迫的・パーソナリティ特性(強迫性・境界性・自己愛性)を示唆。
- 感情の爆発・怒りのむき出し → 衝動制御の困難さ。うつ病の「易刺激性」との重なりも考えられます。
- モラハラ的態度が慢性的である場合、パーソナリティ障害スペクトラムの可能性も視野に入ります。
2. 女性側の特徴(愛着不全+自己価値の低さ)
- 幼少期の愛着不全
- 厳しい養育、妹との比較、身体的強制(髪を引きずられるなど) → 回避型愛着+傷つき体験による見捨てられ不安が根底に存在。
- 「たった一言『大丈夫』が欲しかった」という訴えは、基本的承認欲求が満たされなかった証。
- 対人関係の歪み
- 「尽くすこと」「支えること」を愛情表現と誤認している。
- 相手の弱さに惹かれ、支配やモラハラを受けても「生きがい」として耐えてしまう自己犠牲型のパターン。
- 症状面
- 抑うつ傾向(「普通に生きられない」「力が入らない」)。
- トラウマ再体験(幼少期の記憶が鮮明に蘇る)。
- 自己肯定感の低下。
- 「死んでしまいたい」という希死念慮。
→ 危機介入も視野に入れる必要があります。
3. 関係性のダイナミクス
- 共依存構造
- 彼 → 怒り・支配で関係を維持。
- 彼女 → 支えることで存在意義を確認。
- 「別れても彼女から歩み寄る」→ 共依存的ループが完成している。
- アンビバレンス
- 彼女は「支えたい」が強い一方、「平穏な恋愛を望む」とも表明。
- この二重の欲求の間で葛藤しており、関係を続けても同じパターンが繰り返されることを本人も認識している。
4. 臨床的リスク
- 女性の強い希死念慮と自己価値低下 → 単独での支援が不可欠。まずは彼女自身の安全と心理的安定を優先する必要あり。
- 男性の怒り・モラハラ傾向 → 夫婦・カップルカウンセリングに直接持ち込むと再トラウマ化や二次被害のリスクが高い。
5. カップルカウンセリングの適応について
- まず個別支援が必要
- 女性が自分の「支えすぎるパターン」「愛着不全と共依存の構造」を理解し、自分の心の安全基地を育てること。
- 男性のうつ病とパーソナリティ的傾向について、医療の継続確認。
- カップル同席カウンセリングのリスク
- モラハラ的言動がセッション内で再現され、女性の心的外傷が強化される可能性。
- そのため「最初に女性一人での打ち合わせ」は非常に妥当。
- カップルでの取り組みを行うとすれば
- 境界線(支えすぎない、相手をコントロールしない)の明確化。
- 安全な対話ルールづくり(暴言・威圧を排除する)。
- ただしこれは、両者が一定の動機づけと安定性を得てから。
このページを含め、心理的な知識の情報発信と疑問をテーマに作成しています。メンタルルームでは、「生きづらさ」のカウンセリングや話し相手、愚痴聴きなどから精神疾患までメンタルの悩みや心理のご相談を対面にて3時間無料で行っています。

女性の初回個別面談
クライエントが「整理して理解できた」と感じられるように、専門的すぎない言葉で、臨床的な視点を背景に「初回個別面談で女性に提示できる臨床的整理シート」(例:共依存パターン/愛着背景/支え方のリスク)を作成しました。
セラピストからのメッセージ
あなたが「支える力」を持っていることは、とても大切で素晴らしいことです。
ただし、誰かを支えるためには、まず自分が安心できる土台を持っている必要があります。
ここからは「自分を支える力」を一緒に整えていきましょう。
臨床的整理シート(初回個別面談用)
- 恋愛で「支えたい気持ち」と「平穏を望む気持ち」がぶつかっている
- 相手の怒りや否定に傷つき、自己肯定感が下がってしまう
- 別れても「彼を助けたい」という気持ちが強く働き、また戻ってしまう
- 親からの厳しいしつけ・比較 → 「愛されないのでは」という不安が残っている
- 本当は欲しかったもの → 「安心できる言葉」「認めてもらえる体験」
- この未満足の気持ちが、大人になった今の恋愛関係に影響している可能性がある
- 彼:うつ病・怒り・コントロール → あなたを支配しようとする
- あなた:「彼を支えなければ」「いなくなったら困る」という思い → 戻ってしまう
- 結果:別れる → 戻る → また傷つく … の循環ができている
- 強い不安・恐怖・悲しみ・寂しさ
- 自信の低下・「死んでしまいたい」思い
- 幼少期のつらい記憶がよみがえり、心を消耗させている
- まずは「自分の安全と心の安定」を優先
彼を支える前に「自分を支える力」をつけることが必要 - 恋愛=自己犠牲 ではなく、相互の安心感
どちらか一方だけが消耗する関係は「平穏な愛」とは違う - カップルカウンセリングの前に
- あなた自身が「自分の愛し方・支え方の傾向」を理解する
- 「支えすぎない」「相手の怒りを全部受け止めない」という境界を学ぶこと
- 「支えることが愛になっていないか?」を一緒に振り返る
- 幼少期からの「愛のイメージ」を少しずつ修正していく
- あなた自身の安心できる居場所・人間関係を広げる
- その上で、カップルカウンセリングの可能性を検討する
臨床的整理シート(男性用)
女性版を「自己理解と安心」に重点を置いたのに対し、男性版は 「自分の病気・感情・人間関係のパターンを整理し、責任をどう持つか」 に重点を置く構成が適しています。
セラピストからのメッセージ
病気のせいにできる部分と、あなた自身の行動を変えなければならない部分があります。
相手を傷つける関係を続けてしまうと、あなたが本当に欲しい「支え」「安心」を失ってしまいます。
今は「病気の整理」だけでなく「関係の責任」にも目を向けるときです。
- うつ病として治療を受けている(薬を服用している)
- 調子が悪い時 → 怒りや苛立ちを強く出してしまう
- 調子が良い時 → 穏やかに過ごせるが、波が大きい
- パートナーとの関係は「別れる・戻る」を繰り返している
- 不安や疲れ → 怒りに変わりやすい
- 思い通りにいかない → コントロールしようとする
- 相手が応じない → 強い怒り・否定の言葉
- その後 → 関係が壊れ、孤独や後悔を感じる
- あなた:強いこだわり・怒りの爆発 → 相手を傷つける
- パートナー:支えようと無理をする → 消耗して疲れてしまう
- 結果:「別れる・戻る」のループが続く
- うつ病によって「イライラ」「焦り」「疲れやすさ」が増すことはある
- ただし「モラハラ的な言動」や「コントロール欲求」は、病気だけで説明できない部分もある
- 病気の影響+自分の行動パターンが重なっている可能性
- 怒りは病気のせいだけではない → 自分で向き合う課題でもある
- パートナーを傷つけていないか? を自覚することが関係改善の第一歩
- 「支配」ではなく「協力」 が、恋愛関係を続けるために不可欠
- 彼女が戻ってきたのは「あなたを支えるため」であり、「支配を受けるため」ではない
- 医療:薬の継続と、症状の波を安定させる工夫
- 感情:怒りをそのままぶつけず、整理する練習(カウンセリングで扱える)
- 関係:
- 境界線を尊重(相手を支配しない)
- 安全な対話のルールを作る(大声・暴言を使わない)
- 自分に問うこと:「自分はこの関係を壊したいのか、育てたいのか?」
関係を壊さないための約束リスト
このケースにおいては、カップル同席時に「安全枠組み」をまず合意することが必須です。
次は 「関係を壊さないための約束リスト(合意書形式)」 のサンプルです。
セラピストより
このリストは「責めるため」ではなく「関係を守るため」のものです。
約束を守ることが関係の信頼を少しずつ回復させ、安心を積み上げていく第一歩になります。
関係を壊さないための約束リスト(合意書)
私たちは、お互いの心と関係を守るために、以下の約束を大切にします。
この約束を守ることが、安心して共に過ごすための土台となります。
1. 怒りや感情について
☐ 大声・暴言・威圧的な態度を使わない
☐ 感情が高ぶったときは、まず深呼吸や一時休憩をする
☐ 怒りを相手にぶつけるのではなく、「自分はこう感じている」と言葉にする
2. 相手の尊重
☐ 相手をコントロールしようとしない(行動・考えを強制しない)
☐ 相手の意見・気持ちを途中で遮らず最後まで聞く
☐ 否定や批判よりも、「どうしたら一緒にうまくできるか」を考える
3. 支え合いの姿勢
☐ 支えることと、自分を犠牲にすることを混同しない
☐ 相手に「してほしいこと」は具体的に伝える
☐ 相手の弱さを責めず、回復や成長を一緒に見守る
4. 距離と境界
☐ 話し合いが難しいときは「タイムアウト」を使い、冷静になってから再開する
☐ 相手のプライバシー・自由を尊重する
☐ お互いが「安心できる居場所」を持つことを認め合う
5. 再確認の時間
☐ この約束リストを定期的に振り返り、守れているか確認する
☐ 守れなかった場合は、「次はどう改善するか」を一緒に考える
サイン欄
私は、この約束を守ることに合意します。
日付:______________
署名(本人):______________
署名(パートナー):______________

カップルカウンセリング前の女性への案内資料(Q&A形式)
女性は「まずは自分一人でカウンセラーと打ち合わせをしたい」と希望しており、その背景には
- 彼を連れてくるには勇気と自信が必要
- 「本当に意味があるのか?」を確かめたい
- 「解決できる見通しがあるのか?」を事前に確認したい
という不安と期待があると思われます。
女性が「最初に自分一人で打ち合わせに来る意味」「カップルカウンセリングにどんな効果があるか」を理解しやすいように、安心感を与える Q&A形式の案内資料です。
セラピストからのメッセージ
初回を一人で受けることは、弱さではなく「準備する力」です。
あなたが安心できる土台を作ることが、カップルカウンセリングを成功させる最初の一歩になります。
カップルカウンセリング ご案内(Q&A形式)
女性が「自分の不安」を可視化できるように、不安チェック欄を設けました。これは、カウンセリング前の自己理解にも役立ちます。
あなたの不安チェック&カウンセラーへの希望
女性が「自分の不安」を可視化できるように、不安チェック欄を設けました。これは、カウンセリング前の自己理解にも役立ちます。また、自分の不安を整理して、カウンセラーへ「こうしてほしい」と希望を言葉にしてみます。
カウンセラーからのメッセージ
不安を「希望の形」に変えることができます。
ここに書かれたことは、カウンセリングの場で尊重されます。
安心して話し合うための第一歩として、遠慮なく記入してください。
あなたの不安チェック
次の中で、当てはまるものに ✓ をつけてみてください。
☐ 彼を連れて行っても大丈夫か不安
☐ 相談しても解決にならないのではと心配
☐ 相手に責められたり、カウンセリング中に傷つくのが怖い
☐ 「自分だけが悪い」と言われるのではないかと不安
☐ 彼が怒って途中でやめてしまうのではと心配
☐ 彼に理解してもらえないまま終わるのではと不安
☐ 自分の気持ちをうまく伝えられるか自信がない
☐ 彼が参加してくれないかもしれないと心配
☐ カウンセリングを受けることで関係が余計に悪化しないか不安
☐ 本当は「別れるべきなのか」と迷っている
カウンセラーへの希望
私の不安 | こうしてほしい(希望) |
例:彼が大声を出すのが怖い | そのときはカウンセラーに止めてもらいたい |
例:自分の気持ちを話せるか不安 | カウンセラーから先に質問してもらいたい |
例:責められそうで心配 | 中立的に進めてほしい |

女性のためのカウンセリング進行ステップ
この女性は「彼を支えたい」「でも平穏も欲しい」「一人で抱え込んでいる」という揺れの中にいます。
初回からカップル同席にするのは危険があり、まずは女性本人の安心と整理を優先したステップ構成が適切です。次に、女性のためのカウンセリング進行ステップ案(個別 → カップル) となります。。
- 個別(女性のみ)→ 境界線 → 合意書 → カップル同席 → 選択 の流れ
- 声掛けは「安心」「見える化」「ルール」「選択肢提示」がキーワード
- 常に「相手を変える」ではなく「関係の持ち方を変える」視点を維持
カウンセリング進行ステップ
目的:安心して自分の気持ちを出せる場を作る
- 「臨床的整理シート」を使って、現在の悩みを一緒に見える化
- 「不安チェック+希望欄」で彼を同席させる前の不安を整理
- 希死念慮や抑うつの強さを確認(安全面のアセスメント)
- 声掛け例
- 「今日は、まずあなたが安心して話せる時間にしたいと思います」
- 「彼を連れて来るかどうかは、今すぐ決めなくて大丈夫です」
- 「不安に思っていることを一緒に整理していきましょう」
目的:自分がどのような関係の繰り返しに巻き込まれているか理解する
繰り返しのパターンを見える化
- 幼少期の愛着体験と「支えすぎる傾向」の関連を確認
- 「共依存のループ図」を用いて関係のパターンを視覚化
- 「私はなぜ彼に戻ってしまうのか?」を整理するワーク
- 声掛け例
- 「あなたは彼を支えようと頑張る → 彼は怒りやコントロールを見せる → あなたが疲れて別れる → でもまた戻る…この流れがあるように思いますが、どう感じますか?」
- 「この繰り返しの中で、あなた自身の心はどのように疲れていきましたか?」
- 「子どもの頃に安心や承認を得られなかった体験と、今の恋愛の結びつきを感じますか?」
目的:自分の心を守る「境界線」を学び、実感できるようにする
支えすぎを防ぎ、自分を守る力を育てる
- 「支えること」と「犠牲になること」の違いを見分ける練習
- セルフケア(安心できる時間・人・活動)の強化
- 「もし彼が怒ったらどう対応するか」シナリオ練習
- 声掛け例
- 「支えることと、犠牲になることは違います。どのあたりで境界を引けそうでしょうか?」
- 「もし彼が怒ったとき、あなた自身を守るためにできる対応を一緒に考えましょう」
- 「安心できる時間や人を持つことは、彼を支える力にもつながります」
目的:彼をカウンセリングに招く前に、安全なルールを決める
- 「関係を壊さないための約束リスト(合意書形式)」を提示
- 彼が参加した場合の進め方・安心条件を整理
- 女性が「これなら彼を連れてきても大丈夫」と思える土台を作る
- 声掛け例
- 「カップルで一緒に来るときは、安心のルールを作ってから始めましょう」
- 「例えば、大声を出さない・暴言を使わない・必要なら休憩を取るといった合意です」
- 「これは彼を縛るものではなく、あなたを守るための枠組みでもあります」
目的:関係のルールを実際に話し合う
ルールに基づいた初めての共同作業
- 初回は「合意書」に基づいたルール確認を中心にする
- 感情的な攻防を避け、カウンセラーが進行を管理
- 話し合いの体験を「安心して話せる時間」として記憶させる
- 声掛け例(冒頭)
- 「今日は、まず“関係を壊さないための約束リストを一緒に確認しましょう」
- 「お互いが安心できるためのルールです。守れることを確認してから話し始めます」
- 声掛け例(対話中)
- 「少し声が強くなっています。ここで一度深呼吸をしましょう」
- 「相手を否定するのではなく、自分はこう感じていると伝えてください」
- 「今は解決よりも、相手の話を最後まで聴くことを目指しましょう」
目的:関係を続けるかどうか、距離を取るかを安心感の中で選べるようにする
- 「合意が守られているか」を確認
- 女性が「犠牲ではなく安心を感じられるか」を評価
- 必要なら「関係を続ける」「距離をとる」両方の選択肢を準備
- 声掛け例
- 「今回のルールは守れましたか?どこが難しかったでしょうか?」
- 「あなた自身は、この関係の中で“安心”を感じられた瞬間がありましたか?」
- 「今後どう進めていくか、一緒に考えてみましょう。続ける・距離を取る、どちらも選択肢です」

別れてはよりを戻すを繰り返す理由のチェックリスト
このカップルのように「別れては戻る」関係の背景には、未解決の愛着課題・共依存・恐れと安心の揺れ・相手への理想化と失望の往復 などが関係しています。
そのため、「何を求めて繰り返しているのか?」「本当は何を欲しているのか?」を整理するには、男女別の40問セルフチェックリスト を用意し、さらに二者で比較できるように設計すると効果的となります。
「男性版」と「女性版」を並行して提示します。
(同じ番号で対応するようにしてあるため、同じ設問番号同士を比較することで、二人の違い・重なりを可視化できます。)
№ | 別れては戻るパターンの理由を見つめ直す40問 |
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Part 1 愛情の感じ方 | |
1. | (男)相手の存在が「自分の弱さを補ってくれる」と思うことが多い (女)相手の存在が「支えることで愛されていると感じる」と思うことが多い |
2. | (男)相手に「守られたい」と思うことがある (女)相手に「守ってあげたい」と思うことがある |
3. | (男)相手から離れられると「自分が見捨てられた」と強く感じる (女)相手から離れると「自分が見捨ててしまった」と罪悪感を持つ |
4. | (男)相手に安心を求めながらも、つい怒りを出してしまう (女)相手に安心を与えたいのに、否定されて傷ついてしまう |
5. | (男)「愛されているか不安で、確かめたくなる」 (女)「愛しているか不安で、尽くしたくなる」 |
Part 2 依存と距離 | |
6. | (男)相手がいないと「自分は弱い」と思ってしまう (女)相手がいないと「相手が壊れてしまう」と思ってしまう |
7. | (男)相手をコントロールしようとすることがある (女)相手にコントロールされても「仕方ない」と思ってしまう |
8. | (男)一人の時間が不安で、相手を束縛したくなる (女)一人の時間が怖くて、相手に尽くしたくなる |
9. | (男)相手が自分に合わせるべきだと思うことがある (女)自分が相手に合わせるべきだと思うことがある |
10. | (男)別れた後も「相手が戻ってくる」と期待している (女)別れた後も「自分から戻らなければ」と思ってしまう |
Part 3 過去の体験とのつながり | |
11. | (男)子どもの頃に「自分の気持ちを理解してもらえなかった」と感じる (女)子どもの頃に「安心や承認が足りなかった」と感じる |
12. | (男)叱られるよりも無視されることがつらかった (女)比べられたり期待に応えられないことがつらかった |
13. | (男)「強くならなければ生きられない」と思って育った (女)「我慢しなければ愛されない」と思って育った |
14. | (男)家族に気持ちを話すことが少なかった (女)家族に弱さを見せられなかった |
15. | (男)今でも「過去の怒りや孤独」を思い出すことがある (女)今でも「過去の悲しみや寂しさ」を思い出すことがある |
Part 4 本当は欲しいもの | |
16. | (男)「相手から信じてもらえること」を一番望んでいる (女)「相手から認めてもらえること」を一番望んでいる |
17. | (男)「安心して甘えられる相手」が欲しい (女)「安心して支えを受け取ってくれる相手」が欲しい |
18. | (男)「怒りを出さなくても理解される」関係を求めている (女)「尽くさなくても大切にされる」関係を求めている |
19. | (男)「自由と安心の両立」を望んでいる (女)「安定と愛情の両立」を望んでいる |
20. | (男)「本当は弱さを認めてもらいたい」 (女)「本当は自分も支えられたい」 |
Part 5 別れと復縁の理由 | |
21. | (男)別れると「孤独や見捨てられ不安」が強まる (女)別れると「相手が壊れてしまう」と不安になる |
22. | (男)戻るのは「相手がいないと寂しいから」 (女)戻るのは「相手を放っておけないから」 |
23. | (男)別れを切り出されると「自分の存在を否定された」と感じる (女)別れを切り出すと「罪悪感や自己否定」を感じる |
24. | (男)復縁することで「まだ愛されている」と安心する (女)復縁することで「まだ支えられる」と安心する |
25. | (男)「相手の弱さに惹かれる」ことがある (女)「相手の弱さを支えたい」と思うことがある |
Part 6 葛藤と本音 | |
26. | (男)相手に「安心してほしい」と思う一方で、怒りをぶつけてしまう (女)相手に「愛されたい」と思う一方で、犠牲になりすぎてしまう |
27. | (男)「強い自分を見せたい」と思うが、弱さも抱えている (女)「強く支えたい」と思うが、弱さを隠してしまう |
28. | (男)相手に「もっと理解してほしい」と思う (女)相手に「もっと大切にしてほしい」と思う |
29. | (男)別れても「相手が忘れられない」 (女)別れても「相手を放っておけない」 |
30. | (男)「彼女がいないと、自分は生きづらい」と思う (女)「彼を支えないと、自分は生きづらい」と思う |
Part 7 将来への願い | |
31. | (男)「安心できる家庭」を望んでいる (女)「温かく安定した家庭」を望んでいる |
32. | (男)「自分の弱さを理解して受け入れてくれる相手」と生きたい (女)「自分の優しさを理解して受け入れてくれる相手」と生きたい |
33. | (男)「病気を支えてもらう」よりも「一緒に工夫して乗り越えたい」 (女)「支えるだけ」ではなく「一緒に工夫して歩みたい」 |
34. | (男)「怒りに支配されない関係」を築きたい (女)「犠牲に支配されない関係」を築きたい |
35. | (男)「安心して弱さを出せる夫婦像」を思い描いている (女)「安心して支え合える夫婦像」を思い描いている |
Part 8 自分の課題に気づく | |
36. | (男)怒りを表現する以外の方法を学びたい (女)支えすぎずに距離を取る方法を学びたい |
37. | (男)相手をコントロールしなくても安心できるようになりたい (女)相手に支配されずに安心できるようになりたい |
38. | (男)「自分の弱さ」を正直に話す練習が必要だと思う (女)「自分の望み」を正直に話す練習が必要だと思う |
39. | (男)「自分の病気と感情」を整理する必要を感じている (女)「自分の過去と感情」を整理する必要を感じている |
40. | (男)相手を「敵ではなくパートナー」として見られるようになりたい (女)相手を「負担ではなくパートナー」として見られるようになりたい |
使い方(セラピストの意図)
- 二人に同じ番号で記入してもらい、同じ問いに対する答えの差を比較する。
- 例:「10番」→ 男性は「戻ってくると思っている」/女性は「自分から戻るしかないと思う」→ このズレが「別れて戻る関係」の正体。
- 各パートごとに、本当に欲しいものと行動のパターンのギャップを浮かび上がらせる。
チェックリスト解釈ガイド(4タイプ分類)
カップルが「なぜ別れては戻るのか?」「本当に求めているものは何か?」を理解できるよう、4つのタイプ分類 に整理します。
- タイプA:依存・見捨てられ不安型
-
特徴
- 「相手がいないと不安」「別れたら孤独に耐えられない」
- 相手にしがみつきやすく、別れられない関係を繰り返す
チェック例
- 男性:Q3, Q6, Q10, Q21
- 女性:Q9, Q10, Q22, Q23
解釈
- 「愛されたい/失いたくない」が強く働き、理性よりも不安が行動を支配している
- 別れを選んでも、寂しさに耐えきれず戻ってしまう
臨床的示唆
- 不安に対処する方法を学ぶことが第一歩(自己安定感、安心の確保)
- タイプB:共依存・自己犠牲型
-
特徴
- 「相手を支えることで愛を確かめる」
- 自分の犠牲や消耗を顧みず、相手の弱さを理由に戻ってしまう
チェック例
- 男性:Q2, Q25, Q30
- 女性:Q1, Q7, Q18, Q30
解釈
- 「支えること=愛」という誤解から、自分を傷つけても関係を維持しようとする
- 女性に特に強く出やすい傾向
臨床的示唆
- 「支える」と「犠牲」の違いを明確にするワークが必要
- タイプC:支配・回避型
-
特徴
- 怒りやコントロールで関係を維持しようとする
- 相手を自分の思い通りにしたい欲求が強い
- 表面的には強いが、内側には孤独や不安が隠れている
チェック例
- 男性:Q4, Q7, Q9, Q26, Q37
- 女性:Q8, Q9(受け入れる側として現れる)
解釈
- 男性に多く見られ、「支配的態度」が別れを引き起こす要因
- 女性は「支配を受け入れてしまう側」に回りやすい
臨床的示唆
- 感情表現を「怒り」から「本音(不安・寂しさ)」に変える練習が必須
- タイプD:相互成長・健全な絆型
-
特徴
- 「支え合い」「尊重」「安心の共有」を求める
- 理想的だが、実際には他のタイプに妨げられて実現しにくい
チェック例
- 男性:Q16, Q17, Q33, Q34, Q40
- 女性:Q16, Q18, Q33, Q34, Q40
解釈
- 本音として二人が求めているのは「安心できる協力関係」
- しかし、依存・支配・犠牲のパターンが邪魔している
臨床的示唆
- 共通のゴールを意識化することで、関係を「壊れない方向」に転換できる
解釈の進め方(例)
- 個別集計:男女それぞれがどのタイプに多く✓を入れたか確認
- 二者比較:
- 男性:支配・依存に偏る傾向
- 女性:共依存・自己犠牲に偏る傾向
→ この「かみ合い」が「別れても戻る」構造を作っている
- 統合の焦点:
- 両者の「本当に欲しいもの(タイプD)」を確認
- 「犠牲や支配ではなく、協力と尊重」で近づける方法を検討
- A(依存)+B(共依存)+C(支配) が「別れても戻る関係」を強化する要素
- D(相互成長) が二人が本当に欲しいゴール
- 解釈ガイドを用いることで「繰り返しの理由」→「目指したい関係像」への気づきを得やすい