カップル・夫婦カウンセリングの中の性的な悩みや心理的困難を理解・尊重するセックスセラピー
カップルや夫婦へのセックスセラピー(sex therapy) は、心理的・医学的要因が絡む性的な悩みや困難を、安全で尊重的な枠組みで扱う専門的な心理療法の一領域です。
現実には、夫婦関係・パートナーシップにとって「性」は避けて通れない領域です。性的な悩みに触れられないとクライエントは「自分たちの本当の悩みを理解してもらえなかった」と感じ、逆に心の距離が広がってしまうこともあります。
大切なのは、セラピストが“性”を特別視せず、関係の一部として自然に扱えるかどうかです。
セックスセラピーの定義や概要とは、セラピストが性を「パートナーシップ」「自己理解」「身体と心の健康」の一部として扱い、性的な機能・欲求・行動・親密性に関する悩みを、心理的アプローチを通して改善・調整することを目的としたカウンセリングや心理療法のことを指します。多くの場合、安全・合意・尊重を基本ルールとして進めています。
セラピストにとって重要なのは、性を特別なことではなく、夫婦関係や自己理解の一部として扱う姿勢となります。そして、性そのものを義務や葛藤から解放し、安心・楽しみ・親密性として再構築することであり、「できる行為になること」よりも、「安全で満足できる性の体験を築くこと」が大切となります。
このページを含め、心理的な知識の情報発信と疑問をテーマに作成しています。メンタルルームでは、「生きづらさ」のカウンセリングや話し相手、愚痴聴きなどから精神疾患までメンタルの悩みや心理のご相談を対面にて3時間無料で行っています。
セックスレスへのセラピーの流れ
実際、カップルカウンセリングの現場では「セックスレス」が頻出するテーマで、しかもクライエントにとっては言葉にしにくい領域です。
セラピーでは「なぜレスになっているか」を責めるのではなく、背景を整理し、小さな再接近のステップを作るのが基本になります。
セックスレスのセラピー
- 「なぜできないか」よりも「どうすれば安心して近づけるか」を整理すること。
- 性行為そのものよりも、安全・尊重・段階的なスキンシップを優先すること。
- 失敗や拒否も「練習の一部」として扱うこと。
セックスレスは「性欲の問題」だけでなく、複数の要因が重なっています。最初は「原因探し」ではなく「全体像の地図化」を一緒に行います。
- 心理的要因:不安・怒り・恥・過去のトラウマ
- 関係要因:夫婦間の溝、対立、信頼低下
- 身体的要因:更年期、ホルモン変化、持病、疲労
- 生活要因:仕事・家事・介護・子育てによる時間や余裕の欠如
- 強要や義務感を排除するルールづくり(合意・尊重・中止の権利=セーフワード)
- 性に入る前の日常スキンシップを再導入(手をつなぐ・一緒にお茶を飲む・軽い会話など)
- 拒否の意味づけを整理:「あなたを嫌いだから」ではなく「その時の状態だから」
- 相手の拒否=自分の否定ではない、と翻訳して伝える。
- 「したくない」=「安心できていない」「疲れている」など、背景を言葉にする練習。
セックスセラピーの定番で、段階的アプローチをとります。これは、途中で止めてもよい、失敗してもよいとルール化して安心を確保します。
- ステップ1:非性的スキンシップ(手を握る・ハグ)
- ステップ2:感覚フォーカス(体を触れ合うが性交しない)
- ステップ3:性的スキンシップ(キス・愛撫などを互いに確認)
- ステップ4:性交渉(合意があれば再開)
- 「性は愛情の証」なのか、「健康の一部」なのか、「不要でも関係は成り立つ」なのか。
- 価値観マップやチェックリストを用いて整理し、お互いの理解を広げる。
- 「週に1回は10分話す」「月に1回は一緒に外出する」など、生活全体から親密さを再構築。
- 性を「義務」ではなく「関係を深める選択肢のひとつ」と位置づける。
「性のことは話しづらいテーマですが、実は多くのご夫婦が悩む部分です。ここでは行為そのものではなく、安心と尊重のあり方として整理してみましょう。」「レスという言葉の裏には、本当はどうつながりたいかという願いが隠れています。」

カップルカウンセリングで扱える範囲
セックスセラピーや夫婦の性の問題については、関係修復や相互理解には欠かせないテーマであり、心理カウンセリングの延長線上としてご相談いただけます。
性に関する期待と不安チェックリスト
性に関する期待と不安チェックリスト【男女別10問】の目的は、性生活に関する相互の期待と不安を整理し、安心して話し合う土台をつくる。
記入方法
- 各項目について「はい/いいえ/どちらとも言えない」で答えてください。
- コメント欄に具体的な内容や感情を記入できます。
- 結果はパートナーと共有し、重なりや違いを確認します。
男性用(10問)
No | 質問 | 回答 | コメント |
1 | 性生活を通して愛情を実感したい | ||
2 | 性的なスキンシップが少ないと不安になる | ||
3 | 自分から誘うと断られるのではと不安がある | ||
4 | 性欲の強さや頻度に差があると戸惑う | ||
5 | パートナーの体調や気分をもっと知りたい | ||
6 | 性生活にマンネリを感じている | ||
7 | パートナーからの拒否を個人否定と感じやすい | ||
8 | 性生活について率直に話し合うのが難しい | ||
9 | 性以外のスキンシップ(手をつなぐ等)も大事だ | ||
10 | 性に関する不安や悩みを共有できる場が欲しい |
女性用(10問)
No | 質問 | 回答 | コメント |
1 | 性生活で大切なのは安心感と尊重だ | ||
2 | 性的な要求を一方的にされると怖さや拒否感がある | ||
3 | 相手の誘いを断ると関係が悪化するのではと不安になる | ||
4 | 性欲や頻度の差にストレスを感じる | ||
5 | 自分の体調や気分を理解してほしい | ||
6 | 性生活に楽しみや新鮮さを求めている | ||
7 | 性について話すのは恥ずかしくて難しい | ||
8 | 性生活よりも日常のスキンシップを重視したい | ||
9 | 相手からの配慮や優しさがないと不安になる | ||
10 | 性の話題を安心して共有できる場が欲しい |

安心・尊重ベースの性に関する合意ルールシート
安心・尊重ベースの性に関する合意ルールシートの目的は、性に関する関わりを「安心・尊重・合意」を基盤に整え、お互いが安全に親密さを築けるルールを明文化する。
記入方法
- 各項目を確認し、2人で「合意する/要調整」をチェックしてください。
- 必要に応じてコメント欄に具体的な工夫や希望を書き込みます。
- 最後に署名をして「2人の合意書」とします。
基本ルール
No | 項目 | 合意する | 要調整 | コメント |
---|---|---|---|---|
1 | 性的な関係は常に お互いの合意 に基づく | |||
2 | 暴力・強要・威圧はゼロ である | |||
3 | 途中で「やめたい」と言ったら 即中止する | |||
4 | セーフワード(合図の言葉)を決めておく | |||
5 | 相手の体調や気分を尊重する | |||
6 | 性の話題を安心できる場でのみ共有する |
スキンシップ・親密性に関するルール
No | 項目 | 合意する | 要調整 | コメント |
---|---|---|---|---|
7 | 性行為以外のスキンシップ(手をつなぐ等)も大切にする | |||
8 | スキンシップや性行為は「誘い方・断り方」を尊重する | |||
9 | 拒否は「関係否定」ではなく「その時の状態」と理解する | |||
10 | 月1回など「話し合いの場」を設けて確認する |
自由追加ルール
- □ ______________________________
- □ ______________________________
署名欄
- 夫(署名):_______________________
- 妻(署名):_______________________
- セラピスト:_______________________
- 日付:__年__月__日
性に関する合意ルールシートのステップ
- 「今日は性に関するお話を少し扱います。といっても、テクニックや具体的な行為の話ではなく、安心して向き合えるルールづくりが目的です。」
- 「性のことは話しにくさがありますが、実は尊重や信頼の部分が大きいんです。ですから、このシートを通して安心の約束を一緒に確認しましょう。」
- 「ここに基本ルールが書いてあります。お二人がこれは大事だと思えるものにチェックを入れてください。必要なら要調整でも構いません。」
- 「特に大事なのは、途中でやめたいといったら即中止という点です。これは性だけではなく、日常の会話やスキンシップにも共通します。」
- 「自由欄には、ご夫婦だからこそのルールを追加できます。たとえば体調の悪い日はあらかじめ伝えるとか、スキンシップは必ず日常から始めるなどです。」
- 「チェックが入った項目は、お二人の新しいルールになります。
署名をしていただくのは、約束を守りますという安心のしるしです。」 - 「この紙はお互いの安心のための契約です。守れたら信頼が深まり、守れなかったらもう一度確認すれば大丈夫。失敗はやり直す機会として扱いましょう。」
「拒否は、あなたが嫌いではなく、その時の状態です。」「誘うことも断ることも、安心してできる関係が良い関係の証です。」「性の話題は夫婦の赤信号ではなく、緑信号に変えられるテーマです。」
性に関する価値観マップ
性に関する価値観マップの目的は、性生活をどのように捉えているかを整理し、価値観の違いや共通点を見える化する。
記入方法
- 下記の価値観カテゴリについて、それぞれ「大切にしている/あまり重視していない/どちらとも言えない」に○をつけてください。
- コメント欄に、自分の考えやエピソードを書き込みます。
- 2人の回答を比較し、共通点と相違点を話し合います。
価値観カテゴリ
No | カテゴリ | 大切にしている | あまり重視していない | どちらとも言えない | コメント |
1 | 愛情・親密性(つながりを感じたい) | ||||
2 | 信頼・安心感(尊重・合意を確認したい) | ||||
3 | 楽しみ・遊び心(ワクワク・新鮮さを求めたい) | ||||
4 | 健康・リラックス(ストレス解消・体調改善) | ||||
5 | 自己表現(自分らしさ・魅力を伝えたい) | ||||
6 | パートナーへの貢献(相手を喜ばせたい) | ||||
7 | 夫婦の義務・役割(夫婦として当然のこと) | ||||
8 | 子孫・生殖(妊娠・家族形成の目的) | ||||
9 | 社会的イメージ(世間体・夫婦像を守るため) | ||||
10 | 回避・防衛(不安・罪悪感の回避) |
ふりかえり
- 共通して「大切にしている」部分 → 夫婦の強み
- 共通して「重視していない」部分 → 話題にしなくてもよい領域
- 意見が分かれる部分 → 話し合いが必要な課題
まとめ欄
- 共通点:__________________________
- 相違点:__________________________
- 次に話し合いたいテーマ:__________________
性に関する価値観マップの導入のステップ
- 「今日は性の具体的なことを話すのではなく、性をどんなふうに捉えているかを整理してみます。」
- 「価値観が違うからといって、どちらが正しいという話ではありません。違いを理解して、歩み寄るきっかけにするのが目的です。」
- 「答えにくい項目は、どちらとも言えないで大丈夫です。」
- ワークシートを配布し、それぞれ個別に記入してもらう(10分程度)。
- 例:「大切にしている/あまり重視していない/どちらとも言えない」に○をつけ、コメント欄に補足を書いてください。」
- 記入後、2人の回答を照らし合わせる。
- セラピストが表に共通点・相違点を板書して見える化。
- 差が大きい部分については「どうしてその考え方になったのか?」を丁寧に聴く。
- 「共通して、大切にしている部分は、お二人の強みです。」
- 「意見が分かれた部分は、これからの歩み寄りの課題になります。」
- 「大切にしていない部分は、無理に話題にしなくてもよい領域です。」
- 「今日の結果をもとに、次に話し合いたいテーマを1つ選んでみましょう。」
- 「性に関する価値観は、年齢や体調によっても変化します。定期的に確認すると安心です。」
- 「違いは悪いことではなく、どう尊重するかを考える材料です。」
「あなたにとって性は、愛情の証に近いですか?それとも健康や安心に近いですか?」
「ご夫婦で、ここは同じとわかったことは、関係の安心材料になりますね。」
「相違点は溝ではなく、選択肢と考えてもいいかもしれません。」