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カサンドラ症候群はADHD傾向の夫が要因のケース

目次

夫はADHD傾向、妻は繊細で別居中、カサンドラ症候群に近い状況から夫婦生活の再構築を目指すセラピーワーク

夫婦間の別居の原因は男性が家庭に非協力的で、反省はするもの取り繕って約束も先延ばしにすることが多く、話し合いでは黙り込み、攻められると感情が爆発して抑えきれなくなるようです。男性のADHD特性が現れていて、女性は繊細で敏感な特性を持っています。特に同居していることで、女性が精神的に後悔や焦燥感が激しく仕事も家事も手に使につかないようなケースでカサンドラ症候群に近い状態です。男性のADHDの「特性」としての傾向を伝えつつも、それが「免罪符」や「言い訳」として誤解されないような慎重かつ共感的な心理教育と対話の構築が必要です。

私は36歳の男性です。妻とは大学のサークルで出会い結婚してから2年経ちましたが、結婚生活で同居し始めると、共働きにもかかわらず、私が家庭に非協力的で約束を忘れることも先延ばしにすることも目立つようになってきました。妻はもともと感情的に繊細であるため、妻が精神的につらい状況が続いているにも関わらず何も改善しようとしてきませんでした。
夫婦の話し合いでは、私が黙りこみ話が進まず、話が紛糾すると大声をあげることやものに当たったり、威圧するような暴力を何度も繰り返してきました。話したいことはあるのですが、押さえつけられると言葉が出なくなり、風船が爆発するように情動がコントロールできなくなります。
そのような状況から妻は離婚を強く希望されており、妻の要望で私が現在別居中で、マンスリーマンションで生活しています。妻は後悔や焦燥感が激しく仕事も家事も手に使につかないように追い込まれています。

精神科では、発達障害でADHD傾向があるといわれていて、インチュニブを服用しています。ちなみに妹は小学生の頃に限局性学習障害と診断されています。

私たちには子供はいませんが、夫婦の再構築を望んでいます。私は妻に対する後悔や反省を強くしていて今後の不安を抱えています。どのような行動をしたらよいか教えてください。

心理カウンセラーとしての視点に立ちながら、このケースに有効なアプローチと、服薬中のインチュニブ(ADHD治療薬)を含む留意点について、整理します。

また、カウンセリング時の心理教育および夫婦へのアプローチについて、ご本人向け・奥様向け・カップル双方への伝え方のポイントを整理してみます。

このページを含め、心理的な知識の情報発信と疑問をテーマに作成しています。メンタルルームでは、「生きづらさ」のカウンセリングや話し相手、愚痴聴きなどから精神疾患までメンタルの悩みや心理のご相談を対面にて3時間無料で行っています。

ケース概要の要点

  •  夫婦関係の悪化と暴力性
    • 感情調整困難:大声・物に当たる・威圧的態度
    • 回避的・防衛的傾向:話し合いを避ける・嘘・約束を守らない
  • 男性の自己認識と反省
    • 自責・後悔・不安が強い
    • 変わりたいという明確なモチベーションがある
  • 発達特性(ADHD傾向)
    • 「グレーゾーン」と診断され、インチュニブ(グアンファシン)を服薬中

心理教育の主軸:「責任」と「特性」のバランス

ADHD傾向があるかもしれない、という事実は「行動に責任を持たなくてよい」ということではなく、むしろ「特性を知ることで対処法を見つけていく」ための第一歩です。

ご本人(男性)への心理教育のポイント

point
ADHD傾向の主な特徴(非責任性に見える行動の裏)
  1. 実行機能の弱さ:計画を立てる、実行する、完了する力が弱い(→やると言ってもできない、先延ばしが多い)
  2. 感情制御の難しさ:イライラ・興奮しやすく、感情の爆発が起こる(→大声、物に当たる)
  3. 回避傾向・恥や自己評価の低さ:自分の至らなさに直面すると黙る、逃げる(→話し合いで黙る、防衛する)
point
問題行動と特性を「繋ぐ」説明例

「例えば『やると言ってもできない』のは、意思が弱いからではなく、ADHD傾向によって“実行機能”がうまく働かず、『やる気はあるのに体が動かない』ということがあります。それに気づかないままだと、周囲からは“嘘つき”とか“無責任”と誤解されやすくなります」

point
「変わる力があること」を伝える
  1. ADHDの傾向は「理解と工夫と反復」で改善可能な部分も多い。
  2. 環境調整(可視化、外部管理、声かけ)、感情コントロール訓練、薬物療法の活用など。
  3. 「特性に気づいて努力すること」そのものが信頼回復の第一歩であることを強調。

奥様への心理教育のポイント

point
 ADHD傾向の「見えにくい特性」を説明する
  • ADHDの人は「やらない」のではなく「できない」ことが多いのだが、そのことに奥様だけではなく本人も傷ついている。
  • ただし、「できない」からといって奥様や周囲に負担をかけてよい理由にはならない
point
パートナーとしての限界と安全を尊重する
  • 暴力・威圧があった事実は、ADHDとは別問題であり、明確な線引きが必要。
  • 「特性の理解」と「関係の安全確保」は別軸で両立できることを伝える。
point
回復的対話の可能性
  • パートナーが治療や訓練を通じて「特性に気づき、具体的に行動を変えていくこと」が見えると、少しずつ信頼が戻ることもある。
  • ただし、「過去の傷」はゆっくりとしか癒えないため、「謝ったから、変わろうとしてるから受け入れて」ではなく、長期的な関係再構築が必要。

夫婦向け:共有できる視点

視点
「悪者さがし」ではなく「問題の理解と対処のチーム」になる
  • 例:「どうすれば“やると言ってもできない”をサポートできるかを一緒に考えます」
  • 例:「怒りそうな時、距離をとる合図を決めます」
視点
「再発予防プラン」的な構築
  • 感情が高ぶる前にできる対処
  • 日常での分担の可視化(タスクボード、アプリ活用など)
  • 週一の“振り返り時間”などの導入
視点
再構築には「行動」が何よりの鍵

このケースで重要なのは、「自己反省 → 口約束 → 先延ばし →破綻」のサイクルを終わらせるために、小さくても行動の変化が見えることです。それが「信頼の修復」と「関係の回復」に必要なスタートラインとなります。

自己内省・パターン気づき用チェックシート

関係性における自己内省と行動パターンの気づきを促すためのチェックシートです。これは、再構築か手放しかを決める前段階として、「自分は関係の中でどう反応し、どう守ってきたのか」を見つめるためのセルフワークです。

このワークの意図:このチェックシートは、次の3つを促すためのものです。

  1. 現在の自動反応に気づく(無意識→意識化)
  2. 「なぜその反応が出るのか?」を内省する
  3. 「変化できる部分」と「すでに持っている力」に焦点を当てる

自己内省・パターン気づき用チェックシート(関係性の再構築・手放しの前に)

section
セクション1:感情反応パターンを見つめる

「関係の中で、私がよく陥る感情や反応はどれに近いですか?」

☐ 相手の言葉にすぐに過敏に反応してしまう
☐ 否定されると強く自己防衛したくなる
☐ 自分の気持ちをうまく言語化できない
☐ 感情を表すのが怖くて黙ってしまう
☐ 頭ではわかっていても、態度で怒りを表してしまう
☐ 泣きたくなるのに、代わりに怒ってしまう
☐ 相手の機嫌ばかり気にしてしまう

自由記述:

  • よく出てくる感情は?(例:怒り、不安、孤独、恥)
  • それが出たとき、体や行動はどう反応している?
section
セクション2:思考のクセ(スキーマ的傾向)

「次のような“思い込み”が無意識に出てくることがありますか?」

☐ 自分が何かをしてもどうせ相手は変わらない
☐ 本音を言えばきっと関係が壊れる
☐ 自分が我慢すればすべてうまくいく
☐ 自分ばかりが悪い/自分だけが正しい
☐ 相手に対して期待すると必ず裏切られる
☐ 完璧にできないなら意味がない
☐ 人を信じると最後は損をする

自由記述:

  • 思い当たる思考パターンがあれば書き出してください。
  • それは、どこから来たと思いますか?(育ち・過去の関係など)
section
セクション3:関係の中での「役割」

「あなたはこの関係の中で、どんな『役』を演じてきたでしょうか?」

☐ がまんする人(自己犠牲型)
☐ コントロールする人(主導権型)
☐ 沈黙で関係を保つ人(回避型)
☐ 不満をためて一気に爆発する人(蓄積型)
☐ 愛されようと頑張りすぎる人(過適応型)
☐ いつも正しさを主張する人(正義型)

自由記述:

  • その役を担ってきた背景は?
  • その役割を“降りる”としたら、何が怖いですか?
section
セクション4:本当は望んでいたこと

☐ 本音を受け止めてほしかった
☐ ちゃんと向き合って話をしてほしかった
☐ 過去の自分も許してほしかった
☐ もっと優しく扱ってほしかった
☐ 自分を信じてほしかった
☐ 一緒に問題を乗り越えていきたかった

自由記述:

  • 「私が本当に伝えたかったことは…」
  • 「あのとき、言えなかったけど、心の中では…」
section
セクション5:これからの“私”に必要なこと

☐ 自分の気持ちを穏やかに表現する力
☐ 他人の気持ちを受け取る余裕
☐ 完璧でなくても自分を許すこと
☐ 相手の反応と自分の価値を切り分ける力
☐ 安全な関係を築く「待つ力」「聞く力」

今の自分が、未来に向けて育てていきたいことは?

夫婦関係セルフチェックリスト

男性のような状況にある方が、夫婦生活における不適応のパターンを自己理解し、修正すべき課題を自覚するためのセルフチェックリストです。

〜自分のパターンを見直す30の問い〜

回答形式:次の各項目について、最近の自分の言動をふり返って、次の4段階でお答えください。

  • 0点:まったく当てはまらない
  • 1点:あまり当てはまらない
  • 2点:やや当てはまる
  • 3点:とても当てはまる
夫婦関係セルフチェックリスト
〜自分のパターンを見直す30の問い〜
A. 感情コントロールに関する項目(6問)
1.話し合いになると、自分の感情が先にあふれてしまいがちである
2.イライラすると無言になったり、部屋を出たり、相手をシャットアウトする
3.話が紛糾すると、大声や威圧的な態度になってしまう
4.自分の不安や焦りを相手にぶつけることでしか表現できない
5.すぐ怒鳴る、物に当たるなどの行動がある
6.感情を落ち着かせる「自分なりの対処法」が身についていない
B. 約束と責任に関する項目(6問)
7.やると約束したことを先延ばしにすることが多い
8.自分がやるべき役割を相手に任せきりにすることがある
9.「反省している」と言いながら、同じことを繰り返してしまう
10.家計や生活のことを自分の問題として捉える意識が薄い
11.嘘やごまかしでその場をしのごうとしたことがある
12.相手からの信頼を損なうような行動があると自覚している
C. 対話と関係づくりに関する項目(6問)
13.話し合いの途中で黙り込んでしまう
14.自分の気持ちを相手にどう伝えてよいかわからない
15.相手の言い分を否定的に受け取りがちである
16.意見が食い違うと「勝ち負け」のように感じてしまう
17.相手の話を途中で遮ったり、聞き流してしまう
18.素直に「ありがとう」や「ごめんね」が言いづらい
D. 共に暮らす姿勢に関する項目(6問)
19.家事や育児に対して「自分の仕事ではない」という意識がある
20.相手の苦労や不満に関心が持てなかった
21.家のことに主体的に関わる気持ちが持てない
22.相手が「一人で頑張っている」と感じていたかもしれない
23.「やってあげている」という意識があった
24.パートナーシップより「自分の都合」を優先していた
E. 自己理解と変化に関する項目(6問)
25.自分の短所や未熟さを自覚するのが怖い
26.ADHDや特性について「どう向き合えばいいか」模索中である
27.「自分のせいではない」と感じてしまうときがある
28.問題が起きたとき、誰かに責任転嫁してしまうことがある
29.「変わりたい」という気持ちはあるが、行動に移せていない
30.今の自分のままでは関係が良くならないと思っている

結果の見方(解釈ガイド)

  • 合計点を計算してください。
  • 数値を責める材料にしないでください。これは「自分を責める道具」ではなく、「変わるための出発点」です。
  • 項目ごとに高得点が多かった領域(例:感情コントロールなど)に注目し、どの領域を最初に修正するかを検討してください。
合計点状況の目安解釈
0〜25点適応的自己理解ができており、関係改善に向けてすでに前進しています。維持・補強を。
26〜50点軽度の不適応部分的に関係に負担をかけている行動がある可能性があります。取り組み次第で十分修正可能です。
51〜70点中程度の不適応感情・責任・対話など複数領域で課題がある可能性があります。カウンセリングや第三者支援を活用し、行動変容の実践が必要です。
71〜90点高度の不適応パートナーにとって深刻な苦痛を与えている可能性があります。自己変容に向けて強い覚悟と支援体制を整える必要があります。

夫は本当に変われる可能性があるのか?

奥様の視点から「夫は本当に変われる可能性があるのか?」を冷静に見極めるためのチェックリストです。

〜共に生きる価値があるかを見直す30の観察ポイント〜

回答形式:以下の各項目について、最近の自分の言動をふり返って、次の4段階でお答えください。

  • 0点:まったく当てはまらない
  • 1点:あまり当てはまらない
  • 2点:やや当てはまる
  • 3点:とても当てはまる
「この人は変われるのか?」を見極めるチェックリスト
〜共に生きる価値があるかを見直す30の観察ポイント〜
A. 反省と向き合う姿勢(6問)
1.自分の行動によってあなたが傷ついたことを、具体的に言葉にして認めた
2.表面的な謝罪ではなく、感情をこめて謝ったことがある
3.「自分は変わらなければならない」と繰り返し言葉にしている
4.言い訳やあなたのせいにせず、自分の責任を直視している
5.自分の欠点や未熟さを認めるようになってきた
6.あなたがつらかったことに対して「わかろう」と努力している様子がある
B. 行動と実践(6問)
7.小さくても具体的に「今までと違う行動」を始めている
8.約束や連絡に対する誠実さが以前より増してきた
9.家事や生活への関わりが「やらされている」ではなく自発的になってきた
10.先延ばしせず、期限を守ろうとする努力がある
11.カウンセリングや支援機関に通うことを継続している
12.自分を変えるための学習やメモ、行動記録などをしている
C. 感情と衝動のコントロール(6問)
13.怒鳴る・威圧する・物に当たるなどが減った(あるいは止まった)
14.感情をぶつけずに「今、こう感じてる」と言葉で伝えるようになった
15.感情が高ぶる場面でも、深呼吸や間を取るようになってきた
16.話し合いのときに、落ち着いて聞こうとする姿勢が見られる
17.自分で自分の感情に気づいて、言葉にできることが増えた
18.イライラや混乱を、相手のせいにせず自分で受け止めようとしている
D. 関係修復への誠意(6問)
19.あなたの気持ちや希望を尊重しようとする姿勢がある
20.以前よりもあなたの話を中断せずに聴いている
21.あなたが距離をとっても、その距離を尊重してくれる
22.「一緒にやっていきたい」という思いを押しつけではなく伝えてくる
23.自分が信頼を失ったことを真剣に受け止めている
24.「変わりたいのは、あなたと関係を築き直したいから」という姿勢がある
E. 継続性と自己努力(6問)
25.課題に向き合う姿勢が「一時的」ではなく「継続的」に見える
26.感情や行動の記録をつけて振り返ろうとしている
27.「指摘されたからやる」ではなく、自分で考えて動くことが増えた
28.他者の意見や支援に素直に耳を傾けるようになってきた
29.自分のことを内省したり、弱さを開示することができるようになってきた
30.少しずつでも、自分なりの「変化のプロセス」を意識しているように感じる

結果の見方(解釈ガイド)

  • 合計点を計算してください。
  • 「許すかどうか」ではなく、「変わろうとする力があるか」を冷静に見極める
  • 感情ではなく行動・継続性・誠意の観察に基づいて判断する
  • 自分の尊厳を守る判断材料にする
合計点状況の目安解釈
0〜25点信頼再構築は困難変化への意欲・継続性・誠意が感じられず、関係継続には大きなリスクがあります。安全・尊厳を最優先に。
26〜50点慎重に判断すべき一部に誠意や努力は見られるが、継続性や深さが不足している可能性があります。期限や条件付きで判断することも視野に。
51〜70点条件つきで再構築の可能性あり本人の内省・努力・行動に進展が見られる状況です。信頼を築き直すには時間とステップが必要ですが可能性はあります。
71〜90点関係修復の希望が持てる段階明確な変化の兆候と継続性が確認できる状態です。対等な関係性を築くための新たなスタートの準備ができつつあります。

「信頼の再構築」を前提とした段階的なステップ

男性が奥様との再同居を目指すという場合、信頼関係が大きく損なわれている現在の状況では、拙速な修復は逆効果になる可能性が高いため、「信頼の再構築」を前提とした段階的なステップが極めて重要です。男性の希望を現実にするには、「再び信頼される人間として見てもらう」ことが先です。
そのためには、“戻ってきてほしい”と願う前に、“この人となら安心して暮らせる”と思わせる努力が先行します。
言葉ではなく、具体的な“変化の積み重ね”が唯一の近道になります。

そこで、再同居へ向けたプロセスを「5つのステップ」に整理しました。それぞれの段階で大切なポイントと、実際に取り組むべき行動も付記しています。

STEP
【ステップ1】「誠実な距離の確保」と「自己の取り組みの可視化」

目的:相手の安全と尊厳を最優先し、自分の変化に着手する

相手の信頼を取り戻す第一歩は「距離を尊重すること」と「過去の否定ではなく変化の実践」。この段階では“謝るより、まず変わる”という態度が鍵になります。

やるべきこと

  • 無理に連絡を取ろうとせず、「時間が必要なら待ちます」というメッセージを伝える
  • 感情コントロール・約束の実行力など、ADHD傾向への対処を心理支援のもとで始める
  • 日々の記録(日誌、セルフモニタリング)をつけ、取り組みを「見える化」する
  • 「暴力・威圧の再発を防ぐ対策」を自分で明文化する(※これが最重要)
STEP
【ステップ2】「手紙」での真摯なコミュニケーション

目的:対面での会話を強要せず、思いを伝える手段としての手紙

被害を受けた側にとっては、「口がうまい」「都合のいいときだけ反省する」という印象が定着しています。だからこそ、“自分の気持ち”ではなく、“相手の気持ち”に焦点を当てた手紙が効果的です。

やるべきこと

  • 感情的にならず、次の3点を中心に手紙を書く
     1. 相手の辛さ・怒り・傷つきをどう受け取ったか
     2. 自分の責任として認識している具体的行動
     3. 今取り組んでいる変化と再発防止策(具体的に)
  • 「許してほしい」「戻ってきてほしい」などの“要求”ではなく、「自分はこう変わりたい」ことに重点を置く
STEP
【ステップ3】対面の「話し合い」の再提案(相手が受け入れた場合)

目的:安全・冷静な場所で、お互いの立場を丁寧に確認する

この場では“関係を戻す交渉”ではなく、“相手の気持ちを聞き、受け取る場”として捉えることが重要です。感情的になった場合は、即中断・仕切り直し。

やるべきこと

  • 第三者(カウンセラー・支援者)同席の場を提案(夫婦カウンセリングなど)
  • 話し合いの目的は「戻る・戻らない」の決定ではなく、「関係をどう理解し合うか」
  • 再度の暴言・威圧・感情爆発を起こさない具体的準備(例:メモを用意、タイムアウトの合図)
STEP
【ステップ4】「信頼を回復する行動」の積み重ね期間(別居のまま)

目的:再び同居するに値する信頼・安定性の土台作り

「変わったよ」ではなく、「変わるための努力を続けているよ」を実際の行動で静かに見せる時期です。再び“口先だけ”と誤解されないよう、慎重に。

やるべきこと

  • 日常的に自分を整える取り組みを継続(服薬・感情コントロール・時間管理など)
  • 月1回程度のレポート提出(治療者の許可がある場合):自分の取り組み内容を共有
  • 奥様に対して負担にならない方法で「変化」を示す(例:家計管理の見える化資料)
STEP
【ステップ5】再同居に向けた合意形成(奥様の意志がある場合)

目的:「戻ること」自体がゴールではなく、「どう戻るか」の設計

同居を再開しても「再び感情が高ぶってしまう」「約束が守られない」などのリスクはゼロではありません。そのため、「関係の再構築には、安心・安全の保証が必要」という視点を第一に置くことが大切です。

やるべきこと

  • 最初から全面的な同居ではなく、段階的な接触・生活再開を提案(例:週末の訪問 → 1週間の仮同居など)
  • 「再発した場合どうするか」の約束・ルールを明文化する
  • 定期的な夫婦面談・支援者フォローを継続

再同居に向けた段階的合意プロトコル

「再同居に向けた段階的合意プロトコル」は、夫婦関係が一度破綻しかけ、現在別居中という状況において、一気に「元通り」ではなく、安全と信頼の回復を小さな段階で確認しながら再同居を目指すための“地図”のようなものです。

カップルセラピーのADHD傾向に配慮した形でのプロトコルを紹介します。

【前提】

  1. 一度離れた信頼は「時間と確認」をかけて再構築する必要がある。
  2. 「変わるつもり」ではなく、「変わるための具体的行動と継続」が重要。
    • 一気に「やり直そう」ではなく、「段階ごとに信頼を確認する」構造
  3. 安心と尊重がない再同居は、さらなる再崩壊を生むリスクがある。
    • 妻の「納得感」と「安全感」が中心に据えられる必要がある
  4. ADHD傾向を理解しつつ、責任を回避する言い訳にしない。
    • ADHDの特性を“免罪符”でなく、“理解と工夫”の糸口とする
ステージ
ステージ1:安全の確保と意思の確認(別居中)
項目内容
1. 話し合いの場を持つ公平な第三者(カウンセラーなど)同席が望ましい。
目的は「再同居の可能性を探ること」であって、「責め合い」ではない。
2. 本人の誠意ある説明自分のこれまでの行動(暴力、約束破りなど)に対する明確な「認知」と「反省」を言葉にして説明。謝罪ではなく「説明」。
3. ADHD特性の共有医師・カウンセラーの助言の下、「衝動性・先延ばし・感情調整の困難さ」が夫婦問題にどう関与していたかを具体的に伝える。
4. 自助努力の提示・再発防止行動記録シートを続けている
・服薬・心理支援の継続
・先延ばしへの対策(リマインダーや支援アプリ)導入 など、努力が「見える」こと。
ステージ
ステージ2:試験的な再接近(別居維持中)
項目内容
1. 定期的な会話タイム(週1回〜)テーマを限定(例:「家事の分担」や「今週の感情」)
時間制限(30分〜60分)
攻撃禁止ルール明示(暴言・中断・逆ギレなど)
2. 生活協力の小さな実験・妻の負担にならない形で、家事の一部を担当
・金銭管理アプリの共有
・育児協力(もし子どもがいれば)など
3. ふたりのルールを作る「怒りそうになったら10分席を外す」など、夫婦の安心ルールを合意して文字化
4. 定期レビュー月1回、「できたこと・困ったこと・修正点」をカウンセラーや信頼できる第三者と確認
ステージ
ステージ3:限定的な再同居の試行(同居トライアル)
項目内容
1. 同居は1ヶ月単位で試行「再同居する」と決めるのではなく、「1ヶ月限定の試行」として始める。
2. 週次のふりかえり表を共有行動記録・感情の変化・トラブル時の対処を書き出し、お互いに見せる。
3. ルール違反時の対応を事前に合意威圧・暴言・物に当たるなどの行為が出た場合の対応(例:即時別居再開・カウンセラー報告など)を合意しておく。
4. 第三者評価を受ける月1回、第三者(カウンセラー・支援者)との確認で「進捗」や「課題」を冷静に整理。
ステージ
ステージ4:再同居の本格開始と再構築
項目内容
1. 月1の「夫婦会議」制度「お互いの満足度」「困っていること」を確認する仕組みを持つ。
2. ADHDの特性対応を生活に組み込む・ToDoボードの設置
・リマインダーアプリの活用
・サポートコーチ的な家庭内役割など
3. 信頼を積み上げるための「見える協力」小さな家事、感情表現、金銭の透明化などを“見える形”で行動化。
4. 危機の時の対応ガイドを作るトラブル時の「避難ルール」や「SOSの出し方」を共有しておく。

段階的合意プロトコルのチェックリスト

「再同居に向けた段階的合意プロトコル」に対応した各ステージのチェックリストです。
本人の「具体的行動」と奥様の「主観的評価」の両面から再接近の可否を確認していくことができます。

ステージ
ステージ1:安全の確保と意思の確認(別居中)

◆ 本人チェックリスト(自己評価)

本人チェック項目はいいいえ
自分の過去の言動(暴力・威圧・先延ばしなど)について説明し、責任を認めた
「ごめん」ではなく、「何をしたか」「なぜそうしたか」を自分の言葉で説明できた
ADHD傾向の特性を学び、どう夫婦関係に影響していたかを自覚できた
現在、支援(服薬・カウンセリングなど)を継続している
「変わるための具体的な行動リスト」を作成し、妻に見せた

◆ 奥様向け評価チェック(主観評価)

奥様チェック項目はいいいえ
相手の話し方に責任逃れや逆ギレが含まれていないと感じた
「反省」だけでなく、「何を直すか」の具体性があった
ADHD傾向への理解が、言い訳ではなく説明として伝わった
継続的な変化への意志が「行動」として見えた
自分の気持ち(怒り・失望・不信)を十分に話せる雰囲気があった
ステージ
ステージ2:試験的な再接近(別居中・段階的交流)

◆ 本人チェックリスト(週次)

本人チェック項目今週はできたできなかったコメントを記入
約束した時間に会話を始め、時間通りに終えた
感情的にならず、話を最後まで聴いた
「否定せずに聞く」「遮らない」ことを意識した
自分の役割として小さな家事や金銭管理を試した
会話の中で“謝罪”ではなく“責任ある発言”ができた

◆ 奥様向け評価チェック(週次)

奥様チェック項目はいいいえコメントを記入
会話の中で落ち着いて話し合いができた
感情の暴発や圧力的な態度はなかった
約束が守られ、先延ばしや忘却が減った
「この人は少し変わろうとしているかもしれない」と感じた
話し合いの後、自分が疲れ果てずにすんだ
ステージ
ステージ3:限定的な再同居の試行

◆ 本人チェックリスト(週次)

本人チェック項目実施できたできなかったコメントを記入
家事や予定を自分で管理し、妻の指示待ちにならなかった
衝動的な怒り・無視・モノに当たる行動を抑えられた
「1日1回、感謝または報告を伝える」ことができた
すれ違いの場面で、事前に決めたルールで対応できた
行動記録・日誌・ToDoを継続できた

◆ 奥様向け評価チェック(週次)

奥様チェック項目はいいいえコメントを記入
同居によって以前よりも心が穏やかでいられる
相手の変化が“継続している”と感じる
緊張・不信・過去のフラッシュバックが減った
ルール違反があった時、相手が冷静に対応した
「もう少し続けてみてもいい」と思えた
ステージ
ステージ4:本格的再同居と関係再構築(長期)

◆ 共通の「月1振り返りチェック」

二人の共通チェック項目自分相手コメントを記入
家庭の中での役割分担はうまく機能している
感情や困りごとを言葉にできている
衝突時のルールが守られ、関係悪化が防げた
「また一緒に暮らしてよかった」と思える時間がある
今後も工夫・改善を続けていこうと思える

有効なカウンセリングアプローチ

【自己理解と行動調整】— ADHD的傾向をふまえたCBT+心理教育(Psychoeducation

目的
自己防衛的行動(逃避・嘘・先延ばし)の背景にある感情制御困難・刺激過敏・実行機能の弱さを理解し、行動変容の足場を整える。

実施内容

  • ADHD傾向についての心理教育(インチュニブが作用する神経機序含む)
  • 「感情の脱抑制」や「キレやすさ」「会話の遮断」へのメタ認知ワーク
  • 記録と振り返りによる行動‐感情トリガーの特定(例:話し合い→身体緊張→爆発)
  • スモールステップの約束実行訓練(約束 → 実行 → フィードバック)

【非暴力コミュニケーション】— NVC的対話トレーニング

目的
怒りや威圧ではなく、「ニーズ」と「願い」にもとづいて話し合える対話力を育てる。

実施内容

  • 「観察→感情→ニーズ→お願い」の4ステップ訓練
  • 妻との話し合い練習を想定したロールプレイ・録音フィードバック
  • 過去の暴力的な言動をNVCの形式で書き換えるワーク

【喪失と再構築】— リレーションシップ・グリーフワーク

目的
すでに「別居」「離婚の提案」という段階にあるため、一度関係の終結を見つめ直し、再出発への再構築的態度を持つ

実施内容

  • 「できなかったこと」「嘘をついた理由」などを感情的に掘り下げ、関係喪失のプロセスを通過させる
  • 現在の関係における「希望」「未練」「恐れ」を整理
  • 再構築ではなく「別れの尊厳化」が適切になる可能性も視野に入れる

服用薬「インチュニブ(グアンファシン)」とカウンセリングでの留意点

1. インチュニブの主な作用

  • 中枢α2Aアドレナリン受容体作動薬
  • 「衝動性の抑制」「イライラ・怒りっぽさの緩和」「情動の静穏化」が目的

2. カウンセラーとしての注目ポイント

観察領域着眼点
服薬の影響セッション中の眠気・集中力の変化(副作用として「だるさ」や「眠気」が出やすい)
情動の扱い「静かにはなったが内側で煮詰まっていないか」をモニターする必要あり
タイミングと行動変容感情的爆発が減っていても「反省→実行」の動きが弱い場合、薬物による抑制と内的理解が乖離している可能性もある
薬物依存的な変化観「薬さえ飲めば良くなる」と考えている場合、認知‐行動面の努力が希薄化しやすい

カウンセリング計画例(概略)

フェーズ目標内容
1回状況の受容と現状の整理関係史・暴力の経緯・自責と希望の整理、ADHD傾向の自己理解
2〜4回行動と感情のメタ認知怒り・黙り込み・逃避のパターン把握と行動変容への足がかり
5〜8回再構築/終結の方向性明確化妻との対話準備、離婚/再関係化どちらに進んでも自立的に向き合える力の醸成

夫婦関係回復が可能な条件

次のような要素がそろった場合、関係再構築の可能性が高まります。

  • 加害性(威圧・暴言など)への具体的責任認知と謝罪行動
  • 約束を守る「実行力」の実証的変化
  • 相手のニーズへの共感と受容力の向上
  • 相手が話し合いを「安全だ」と感じられる非攻撃的態度の持続

再構築へのCBT的ワーク

「感情調整困難」や「実行機能の弱さ」に対するCBT(認知行動療法)的アプローチは、ADHD傾向のあるクライエントに特に有効です。

CBT的アプローチ

1. 感情調整困難へのCBT的アプローチ

目的:「怒り」「不安」「羞恥心」「衝動」などの感情が沸き起こる前兆・トリガー・思考パターンを特定し、自動反応を減らす。

STEP
ステップA:感情トリガー・チェーンの可視化ワーク
  • 「感情」が起こる前にある「身体反応」や「自動思考」を特定
  • 可能であれば図式化して視覚的に残す

ワーク名:「感情のスイッチマップ」

項目記入例
状況妻に「なんでまたやってないの?」と言われた
自動思考「責められた」「どうせまた否定される」
身体反応心拍数上昇、胸が苦しい、手が震える
感情怒り95%、不安70%、自己嫌悪
衝動黙る→急に怒鳴る→部屋を出る
結果話し合いが破綻し、より孤立する
STEP
ステップB:コーピングカードの作成

目的:「怒り」などの高ぶり時に、自動反応を切り替える選択肢を視覚的に持つ

カードをスマホのロック画面にする、持ち歩くなどして即時アクセス可能に

例:

状況選べる対応(コーピングカード)
責められたと感じた時・3呼吸する
・「いま自分は怒ってる」と心で言う
・言葉に出さずメモに書く

2. 実行機能の弱さへのCBT的アプローチ

課題の特徴:「やると言ったことをやらない」「先延ばし」「忘れる」「実行力が続かない」

STEP
ステップC:「実行計画」ではなく「開始計画」を立てる
  • 「やるかどうか」ではなく「始めるかどうか」に焦点を当てる
  • ADHD傾向の方は始動困難が問題で、完遂力の問題ではない場合が多い

フレーム:「IF-THENルール」

具体例IF(きっかけ)THEN(行動)
妻に頼まれた修理玄関を通って工具箱を見たらまず1分だけ中身を確認する
仕事のメール返信朝、PCを開いたら1件だけ返信する
STEP
ステップD:「先延ばし記録表」で自己観察

ポイント

  • 「やらなかった」ことも可視化・承認する姿勢を持つ
  • 実行できた/できなかったではなく、自分のプロセスを振り返ることが目的

フォーマット:

日時やろうと思っていたことやらなかった理由本当の気持ち今ならできる小さな一歩
5/20 夜妻にLINEを送る「怒られるのが怖い」不安/恥ずかしい「元気にしてる?」だけ送る
STEP
感情と実行をつなぐ統合ワーク(中級〜)

ポイント

  • 感情と実行を「分けて理解」→「つなげて変容」するCBT的介入
  • 感情を否定しない姿勢で、あくまで望む結果から逆算する発想を育てる

ワーク名:「感情と行動の橋かけマップ」

感情思考身体反応衝動望む結果今できる最小の行動
恐れ「どうせまた怒らせる」胸が痛い黙る話し合いが進む「今、話していい?」とLINEする

再構築 or 手放しのあいだにいる人へのカウンセリング

再構築 or 手放しのあいだにいる人へのカウンセリング構成例全6ステップです。
夫婦関係やパートナーシップの継続可否が不透明な状況において、感情の整理・自他理解・意味の再構築・行動の選択へと丁寧に進む構造を意識した内容になっています。

全体の流れ(フェーズ構成)

フェーズ主なテーマ支援の目的
1. 現状の棚卸し混乱の言語化自分の今を整理する
2. 喪失の受容失ったもの・傷ついたことに触れるグリーフを促進
3. 感情とニーズ感情・欲求の明確化怒り・未練・願いの源を探る
4. 自己理解自分の反応パターンの振り返り再構築の土台形成 or 手放しの納得
5. 意味の再構成この関係が自分に教えたこと内的成長と変化の確認
6. 選択と行動「どう生きたいか」への焦点再構築/手放しを問わず“在り方”を選ぶ
STEP
ステップ1|現状の棚卸し:揺れる心を整える

目標:「関係をどうしたいか」に飛ばず、まずは現状のモヤモヤを言語化。

質問例:

  • 「今、いちばん心がざわつく場面は?」
  • 「この状況の中で、自分がいちばん苦しいのはどこ?」

技法例:

  • 感情ラベリング(悲しみ/怒り/あきらめ…)
  • 「この混乱にタイトルをつけると?」ワーク
STEP
ステップ2|喪失の受容:関係性のグリーフに触れる

目標:失われたものに名前を与える。抑圧された感情を丁寧に掘り起こす。

質問例:

  • 「以前は当たり前だったのに、今できなくなったことは?」
  • 「『もう戻れないかもしれない』と思うとき、どんな気持ちになる?」

技法例:

  • 「変わってしまったものリスト」ワーク(前述参照)
  • 空の椅子技法(関係に語りかける)
STEP
ステップ3|感情とニーズを見つける:怒り・未練の奥にあるもの

目標:怒りや後悔の背後にある「大切にしたかったこと」を掘り出す。

質問例:

  • 「怒っていたとき、心の底では何を望んでいた?」
  • 「“こうありたかった”という理想像は?」

技法例:

  • NVC(非暴力コミュニケーション)モデルの活用(観察→感情→ニーズ→リクエスト)
  • 感情地図ワーク(感情→願い→背景)
STEP
ステップ4|自己理解と関係パターンのふりかえり

目標:自分の関わり方・反応・回避傾向を内省し、行動変容のヒントを得る。

質問例:

  • 「あのとき、なぜそういう行動をとったと思う?」
  • 「同じパターンが繰り返されたのはなぜだろう?」

技法例:

  • スキーマ療法的ワーク(核心信念の洗い出し)
  • インナーパートとの対話(内的自己分裂の整理)
STEP
ステップ5|意味の再構成:この関係が自分に与えたもの

目標:喪失を“意味ある経験”として内面化し、未来への橋渡しとする。

質問例:

  • 「この関係がなかったら、今の自分にない気づきは?」
  • 「この経験から“他者との関係で大切にしたいこと”が見えた?」

技法例:

  • ロゴセラピー的再文脈化(「苦しみの中の意味」)
  • 自己語りワーク(自分史への統合)
STEP
ステップ6|選択と行動:「どう生きたいか」への焦点移動

目標:「離婚するか」「戻るか」ではなく、「どんな自分で生きていきたいか」へ。

質問例:

  • 「この経験を超えて、どういう自分でいたい?」
  • 「“このまま”でも、“戻れなくても”、自分が誇れる選択は?」

技法例:

  • 「未来の自分からの手紙」ワーク
  • 実存的問い:「今、自分は何に忠実でありたいか?」

ポイント|支援者として大切にしたい姿勢

  • 「関係をどうするか」ではなく、「自分をどう育てていくか」にフォーカス
  • 再構築希望があっても、相手を“説得するための変化”にならないよう留意
  • 「痛みの意味づけ」→「自己理解」→「選択の自由」に至るプロセスが自然

関係性のグリーフ

関係の喪失と再構築の狭間にある状態は、典型的な「喪失」でも「修復」でもない、あいまいで揺らぐ心理領域です。これは「関係性のグリーフ(relational grief)」と呼ばれるもので、特に別居中や離婚を検討している夫婦に多く見られます。

こうした状況で有効なのは、「再構築ありきでも、喪失前提でもない」中立的な立ち位置でのグリーフワークです。

1. 「関係性のグリーフ」とは?

  • 愛着対象がまだ存在しているにも関わらず、「心理的に喪失」が起こっている状態。
  • 例:別居、離婚前提の話し合い、感情的断絶、家庭内離婚など。

特徴:

  • 希望と絶望のあいだを揺れる
  • 自責や恨みが交錯する
  • 「未完了な感情」が残り続けやすい

2. 関係性のグリーフワークの基本構造

意図

  • 関係の変化に「名前を与える」ことで、漠然とした苦痛を具体化
  • 感情の抑圧を減らす

ステージ1:喪失の現実と意味の受け止め

ワーク例:「変わってしまったものリスト」

項目内容
昔は自然にできたこと寝る前に話す、笑い合う
今できないこと一緒に食事をする、冗談を言う
その喪失で感じること悲しい、空虚、悔しさ、みじめさ

▶ステージ2:「手放すべきもの/守りたいもの」の仕分け

意図

  • 関係の全否定・全肯定ではなく「選別」できる視点を育む
  • 再構築の希望がある場合でも「感情の棚卸し」は必須

ワーク名:「終わりの中の残したいもの」

手放すもの守りたいもの
妻に期待しすぎる態度子どもとの接点
コントロール欲求「ありがとう」と言える関係
自分の正当化お互いの尊厳

▶ステージ3:喪失の感情を「意味」に変える

意図

  • 関係の痛みを「学び」や「転機」として再文脈化する
  • これは「意味志向的グリーフワーク」とも重なります

ワーク例:「あの関係が私にくれたもの」

出来事感じたこと今の私に残っている影響
妻が泣きながら訴えた夜申し訳なさ、無力感人との関係に対して深く考えるようになった
別居になった日絶望、不安変わる決意が本気になった

▶ステージ4:未来の関係に向けた「姿勢」の選択

目的:「復縁の可能性」や「離婚の確定性」に左右されず、
主体的な姿勢の確立を目指す

問い例(ロゴセラピー的アプローチ)

  • 「どんな自分で、彼女と向き合いたいと思うか?」
  • 「関係がどんな形になっても、大切にしたい在り方は?」
  • 「自分が変わるとして、それは誰のために?何のために?

3. 支援者としての留意点

  • クライエントが「関係を取り戻したい」と語っても、
     その願いの背景にある痛み・悔しさ・後悔をまず丁寧に扱う
  • パートナーに「赦してもらえるかどうか」に焦点が当たりすぎると、回復が条件付きになりやすい
  • 「愛されたい」から「愛することの覚悟」への転換を、自然に支援することが目標

関係性のグリーフワークシート集(全4ステップ)

「別居」「離婚検討中」「関係修復の可否が不透明」といった夫婦・パートナー関係にあるクライエントに用いることを想定した構成です。

関係性のグリーフワークシート集(全4ステップ)

STEP
ステップ1|喪失の現実を言葉にする

ワーク名:変わってしまったものリスト

まずは「今のこの関係において、何が変わってしまったのか」を見つめます。悲しみや怒り、無念さなどが現れても否定せず、書き出します。

昔はあったもの今はなくなったもの

補足質問:

  • 「一緒に笑ったのはいつだった?」
  • 「自然にできていたやりとりはどんなこと?」
STEP
ステップ2|手放すもの・残したいものの仕分け

関係の中で「終わったほうがよいもの」と「まだ守りたいもの」「大事にしたいもの」を仕分けしていきます。

手放したいもの守りたい/残したいもの

補足質問:

  • 「怒りや苦しみの奥に、本当は何を望んでいた?」
  • 「その人との関係で、手放したくないものは?」
STEP
ステップ3|意味の再構築

ワーク名:あの関係が私に教えてくれたこと

喪失や痛みの中にあっても、「学び」「変化」「気づき」を見つけることが、次の自分へのつながりになります。

出来事感じたこと今の私に残ったもの・変わったこと

補足質問:

  • 「この関係があったからこそ、気づけた自分の弱さや優しさはある?」
  • 「今の自分が“あの時”の自分に伝えるとしたら、何を伝えたい?」
STEP
ステップ4|未来への選択

ワーク名:関係がどうなっても、私が選びたい在り方

関係が回復するか、終わりを迎えるかにかかわらず、「自分がどんな人でいたいか」「何を大切にしたいか」を整理します。

私が大切にしたい在り方

  • __________________

今後、どんな関係になっても、守りたいこと

  • __________________

この経験を通じて、育てていきたいもの

  • __________________

補足質問:

  • 「愛されるより、どう“愛する”ことができたら自分を誇れる?」
  • 「この経験を、どう生き直しの糧にしていきたい?」

再発防止・行動記録シート

ADHD傾向をもつ本人が「衝動的・回避的行動の再発を防ぎ、家庭内での信頼を取り戻す」ための行動記録シートです。

■ このシートの目的

  • 衝動的行動や先延ばしの「再発」を防ぐ
  • 感情・行動・結果を客観的に見える化する
  • パートナーとの信頼回復に必要な「行動の継続性」を高める
  • ADHD傾向による特性(集中の波、感情過敏、計画困難)を踏まえた自己モニタリング見直しの習慣づけ
STEP
【1日の記録】(毎日or週に2〜3回の記入を推奨)

1. 今日の自分の感情(2025.5.25)

☐ 穏やか ☐ 不安 ☐ イライラ ☐ 落ち込み ☐ うまくいっている ☐ 感情の波が大きかった
→【一言メモ】_____________________

STEP
 今日の「家庭での行動」

(家事、家計、対話、育児など、自分からやった行動を記録)

  • ☐ 自発的にやったこと:_______________
  • ☐ 約束を守ったこと:_________________
  • ☐ パートナーの話を最後まで聴いた場面:_______
STEP
感情が高ぶった場面と対処法
高ぶった場面どう対処したか結果はどうだったか
例:責められていると感じた時深呼吸して席を外した感情的にならずに済んだ
STEP
 「やると決めていたのに先延ばししたこと」
  • ☐ あった → 何を?:_______ 理由:________
  • ☐ なかった(できた)

→【見直しポイント】
☐ やる時間を決めていなかった
☐ ハードルが高すぎた
☐ 他のことを優先してしまった
☐ 気づいたら忘れていた(対策:メモ/タイマー/リマインダー)

STEP
明日へのひとこと宣言
  • 明日、自分が「意識してやりたい小さな一歩」:
    → ___________________________
STEP
週1回の振り返り(週末に実施推奨)
項目振り返りメモ
1週間でできたこと
感情的にならずに済んだ場面
逆に再発しそうになった場面と気づき
パートナーへの誠意として伝えたい一言
目次