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6歳のASDのお子様を持つお母様からのメール

目次

6歳の感覚過敏+不安定な情動調整(結果的にASD)のお子様を持つお母様からのメールに臨床的初期仮説での見立て

仙台市在住、33歳女性から当研究所宛に障害などやお子様の乳児期、幼少期のことには触れられていませんが、お子様の一部分における症状と「母親である私自身も課題を抱えています」という文面のメールが届きました。また、長い間お子様の症状には気づいていたと思いますが、医師の診断や相談窓口の経緯のことが記載されていないご相談です。
メール内容をもとに、臨床的な観点からの要点整理と見立て(初期仮説)をまとめてみました。
情報が限られている中での一次分析ですが、今後の設計にもつながるように整理をしています。

この女児(6歳)の行動・反応様式だけを分析すると、複数の心理的・発達的・環境的要因が絡み合っている可能性があります。そこで、今回のようなケースでは臨床的にも倫理的にも、一度限りの「無料カウンセリング枠では受けない」との判断が適切であるとの考えから、カウンセリングを行わず、返信メールで支援の地図を差し出すという対応をしています。

今回は、同じような症状のお子様や養育者の方々にお伝えできることがあるのではないかと、メールの文面は要約し、変換させていただいて掲載させていただきました。ご相談内容と解説が皆様の一助となれば幸いです。

3時間対面無料メンタルケアを行っていただきたいのは、6歳の娘のことです。現在、娘は小学校1年生ですが、2学期より学校に行けず自宅でスクーリングをしています。
初対面の人に対してやハイテンションな人などと接すると興奮状態となり、大声を出したり一方的に話し続けるなどの行動が激しくなります。その行動後には悩んでいるのか落ち込む姿を何度も目にします。
母親である私自身も課題を抱えていますが、どのように娘を支えることが出来るのか、本人が楽に過ごせる方法が知りたいと思い、カウンセリングを希望しますが、可能でしょうか。
メールの文面は要約し、変換させていただいております。

以下のことから、結論から申し上げます。今回は誠に申し訳なく思いますが、「3時間対面無料カウンセリングの枠で直接的に介入しない」という結論になります。

  • お子様の状態像がまだ精査されていないこと
  • 母親自身の課題も複合していること
  • 心理的支援よりもまず医療・行政的評価や専門的療育ルートへの導入が優先されること

の3点からとなります。

そのため資料を次の通り、用意させていただきました。PDFファイルをご確認ください。

Ⅰ.ご相談内容の要点整理

1. お子様の基本情報

  • 女児、6歳(小学校1年生)
  • 2学期以降は不登校状態、現在はホームスクーリング中
  • 興奮しやすく、初対面や刺激の強い相手との対人場面で過活動・多弁傾向がみられる
  • 興奮状態の後は「ひどく悩んでいる様子」があり、自己理解や情動調整の困難をうかがわせる

2. 主訴(母親の訴え)

  • 対人場面での高い興奮・自己制御困難
  • 一方的な発話・衝動的行動
  • その後の後悔・落ち込み様子(情動調整の波)
  • カウンセリングを通して、母親として支援の仕方・関わり方を学びたい

3. 家庭・環境背景

  • 母親が主な養育者
  • 「母自身にも課題がある」と自己認識あり(心理的・情動的課題が推察される)
  • 学校に通わず家庭教育を実施(社会的接点の制限)
  • 母親は療育や保育現場での勤務経験を有し、支援的意識が高い

4. 相談の目的

  • 娘にカウンセリングを受けさせたい
  • その可否(適応・対象年齢など)を確認したい
  • 自身も含めた心理的支援の方向を模索している

Ⅱ.臨床的見立て(初期仮説)

1. 発達・情動面の特徴仮説

お子様の行動から次の仮説が立てられます。

観察される行動推定される心理・発達的要因
初対面・刺激の強い人に対し興奮感覚過敏・刺激感受性の高さ(感覚統合的特徴)
一方的に話す、多弁自己調整機能(衝動制御・ターンテイキング)の未熟さ
興奮後に悩む様子メタ認知的自覚・自己否定的反応(自責・恥の情)
学校不適応集団環境での感覚・社会的負荷によるストレス反応

神経発達スペクトラム(ASD/ADHD傾向)+感覚過敏+不安定な情動調整の複合像が考えられます。

ただし、母親が療育支援や保育現場の経験者である点から、観察や行動理解は一定の的確さが期待できる一方、「過剰な支援意識」や「母子一体化的関係」が形成されている可能性も注意が必要です。

2. 母親側の心理的テーマ(文面よりの示唆)

  • 「私自身も課題がある」という自己洞察
     → 不安、罪責、完璧主義、過去の未処理体験の存在を示唆。
  • 「同じような子を支援する居場所を作りたい」
     → 投影的・代償的動機(自己癒しと社会貢献が重なっている構造)
  • 「心理学の知識が乏しい」との記載
     → 専門的支援への距離感や、内省より実践先行の傾向

支援者でありながら、母親としての役割葛藤や共依存的結合のリスクがあるケース。

3. 支援上の初期対応方針(カウンセリング可否含む)

観点内容
対象の可否7歳未満でも「親子同席・プレイ/観察中心」のセッション設計で対応可能。母子関係支援を主軸に。
初期焦点お子様の行動そのものよりも、母子の相互調整・情動共有パターンの理解から開始。
方法面接観察+親面接(母親単独)+環境調整(家庭・学校連携)
注意点母親の支援意識が高いため、カウンセラーへの「評価」や「同業視点」への過敏さに留意。
必要な確認医療機関での発達・心理評価歴(未診断か否か)/家庭でのストレス要因/父親の関与有無。

Ⅲ.まとめ:臨床的見立ての方向性

  1. 感覚過敏・発達特性+情動制御の課題 → 二次的な不安・抑うつ傾向の萌芽
  2. 母親自身の心理的課題 → 共感的過剰・支援依存・自己同一性テーマ
  3. カウンセリング対象 → 「親子支援」形式での導入が最も適切
     (母親支援+お子様の感情表現支援の併行)

この女児(6歳)の行動・反応様式には、複数の心理的・発達的・環境的要因が絡み合っている可能性があります。
ここでは、臨床推論としての「仮説レベル」で、原因・要因を丁寧に分けて整理いたします。

Ⅰ.発達的・神経心理的要因(生物学的基盤)

1. 感覚処理の過敏さ・未熟さ

  • 初対面の人、声が大きい人など「刺激の強い環境」で興奮が誘発される点から、
     感覚統合の未成熟(特に聴覚・視覚過敏)が疑われます。
  • これは、神経発達スペクトラム(ASDやADHD)のお子様にしばしば見られる反応で、
     脳の感覚入力フィルターの調整機能(感覚閾値)が低く、刺激が“洪水”のように流れ込みます。
  • 結果として「過覚醒 → 興奮 → 制御不能 → 疲弊 → 自責」となる典型的な情動曲線をたどることがあります。

2. 自己調整機能(executive function)の発達段階

  • 6歳はまだ「感情を内的に調整する力(自己制御)」が発達途中です。
  • 特に衝動抑制・切り替え・順番を待つ・相手の意図を読むといった機能が未熟だと、
     刺激的な相手に過剰反応しやすく、多弁・自己中心的発話が目立ちます。
  • これは「悪い子」ではなく、脳の前頭前野の発達段階によるものです。

Ⅱ.心理的・情動的要因

1. 不安と羞恥の二重構造

  • 興奮後に「ひどく悩む」点は、単なる多動性ではなく内省・自責・恥の感情が存在することを示します。
  • このタイプの子どもは、「他人と違う自分」に敏感で、
     他者評価に基づく過敏性不安障害的傾向(Social Anxiety Spectrum)を持つことがあります。

2. 愛着・関係性の影響

  • 「母親の課題」という一文が非常に重要です。
     母子間の情動的共鳴の強さ、または不安定な共依存的結びつきがあると、子どもの情動調整が母の情動状態に左右されやすくなります。
  • たとえば母親が緊張・不安・自己否定感を抱えている場合、子どもはその“空気”を無意識に受け取り、過興奮や迎合・過適応行動として表現することがあります。
  • この年齢の女児では、母親との距離が心理的安全の核であるため、母の内的安定がそのまま子の安定化要因になります。

Ⅲ.環境的・社会的要因

1. 学校環境とのミスマッチ

  • 「2学期から不登校」になったという点は、学校の刺激環境(音・人・集団圧力)がお子様にとって過剰なストレス源だった可能性があります。
  • 集団行動や一斉指導に適応できない子どもが、家庭で安心を回復する例は多く、「安全基地としての家庭」へ回避的に戻った形と考えられます。

2. 家庭内での刺激・構造

  • 現在ホームスクーリングで、母親が主に伴走しているため、
     母子の心理的境界がやや曖昧になっているリスクがあります。
  • これは情緒的支えとしては良い面もありますが、
     「子の興奮に母が反応 → 母の不安が子に返る」という相互増幅ループが起きやすい構造です。

Ⅳ.まとめ:多層的な要因モデル(仮説構造)

要因内容
生物学的層感覚過敏・神経発達的特性刺激に対する過覚醒反応、衝動制御の未熟さ
心理的層不安・羞恥・自己否定興奮後に落ち込む/自己評価の揺らぎ
関係的層母子間の情動共鳴共依存・境界の曖昧さ・過保護/過干渉の可能性
社会的層学校・集団との不適合環境過負荷による回避的反応(不登校)

このように、「特性 × 関係性 × 環境」の三重構造で現在の症状が形成されていると考えられます。
単一の“原因”ではなく、相互作用による情動制御の破綻が中心テーマです。

Ⅴ.今後の臨床方針の方向性(次段階の検討)

  1. お子様の神経発達的プロフィールの把握
     (医療機関での発達検査または心理アセスメントの確認)
  2. 母親の情動的背景の探索と支援
     (自己犠牲/支援者役割/過去の未解決課題の影響)
  3. 家庭内リズム・環境調整
     (予測可能なスケジュール、刺激コントロール)
  4. 母子相互作用の観察的理解
     (セッション内での母子の反応パターン記録)

Ⅰ.まず伝えられる安心メッセージ(導入部分)

お子さんが人や環境によって大きく反応される様子、そしてその後に自分を責めてしまう姿に、お母様もどれほど心を痛めてこられたかと思います。
とても丁寧に娘さんを見つめ、支えようとされていることが伝わってきます。

今回のご相談内容からは、カウンセリングよりもまず専門的な発達・心理評価を通してお子様の特性を正確に理解することが、今後のサポートを考える上での第一歩になると感じます。

ステップ1:現状把握と専門相談の導入

目的内容具体的な窓口例
特性の把握発達・感覚・情動の全体像を専門家が確認する① 児童発達支援センター・発達相談センター
② 小児科/児童精神科(発達外来)
③ 市区町村の子育て支援課・教育相談室
医師による診断の必要性ADHD・ASD・感覚処理障害などの有無を確認医療での評価後に療育・支援方針が立てやすくなる
学校との連携在籍校での「教育相談」「通級」利用の可能性担任・スクールカウンセラー・特別支援コーディネーター

まずは専門機関でのアセスメントと支援計画立案をお勧めすることが第一段階です。

ステップ2:家庭でできる日常支援(母親が「できること」)

  1. 予測可能な一日の流れを可視化する
     - 朝・昼・夜の流れを絵カードやホワイトボードで示す。
     - 「次に何をするか」を見通せると、情動の波が減ります。
  2. 刺激コントロールを意識する
     - 声のトーン、照明、テレビ音量などを穏やかに保つ。
     - 興奮後は「静かな回復スペース」をつくる(布団・テント・読書コーナーなど)。
  3. 成功体験を“体感”で積む
     - できた瞬間に言語化せず「ニコッと笑う」「一緒に深呼吸」など非言語的賞賛を増やす。
     - 言葉よりも身体的安心を重視。
  4. 感情言語化を促す習慣
     - 「いま嬉しいね」「びっくりしたね」「疲れたね」と、親が感情のラベリングを行う。
     - これは情動調整の神経ネットワークを育てる基礎になります。
  5. 母親自身の休息と心理的サポート
     - 母親の緊張や焦りは子どもに“伝染”するため、
      お母様ご自身が安心できる仲間・相談先を確保することが何より重要です。

ステップ3:支援・療育につながる選択肢(母親に提示できる言葉)

  • 児童発達支援事業所(発達特性が疑われる小学生も対象の施設があります)
  • 放課後等デイサービス(社会性や情動スキルの練習)
  • 公認心理師・臨床心理士による「発達検査・WISC評価」
  • 教育委員会の「就学支援相談」

→ 「評価 → 支援方針 → 家庭実践」という流れから、お母様は“次に何をすればいいか”を具体的に理解し、安心できます。

Ⅲ.臨床的ポイント

  • お子さんの得意と苦手を知るための“見取り図”を作るステップとして、一度専門家にご相談されると良いと思います。
  • お子さんを支えるには、お母様自身の安心の土台もとても大切です。お母様のご負担や気持ちについても、必要であれば別途サポートを受けながら進めることが必要です。
  • 今回は“初期評価前段階”のため、臨床介入よりも専門機関での見立てを優先する形が望ましいと考えます。

発達・心理相談の流れ(案内例として)

  • 自治体の子育て支援課/発達支援センターへ電話相談
     → 「学校に行きづらく、刺激に敏感な子の発達や行動について相談したい」と伝える。
     → 必要に応じて「発達検査」や「専門医療機関の紹介」を受ける。
  • 医療機関での受診(小児発達外来など)
     → 知能検査・発達検査・感覚評価などを実施。
     → 診断の有無に関わらず、療育や心理支援への橋渡しが行われる。
  • 児童発達支援・放課後等デイサービスの活用
     → 社会的スキルや情動安定を育てるプログラムに参加。
  • 家庭での関わり支援と母親自身のケア
     → 行動理解・セルフケア・安心環境の構築を継続。
STEP
お子さんの反応の「強さ」は、困りごとだけではありません

お子さんが初対面の人や声の大きい人、刺激の強い場面で強く反応したり、興奮した後に自分を責めて落ち込むこうした様子は、「感じやすく」「考えすぎてしまう」感受性の高さからくるものかもしれません。

このような特性は、感覚や感情を繊細にキャッチできる力でもあります。
一方で、刺激が多い環境では疲れやすく、自分を守るために行動が激しくなったり、話が止まらなくなることがあります。

STEP
今すぐにできる、家庭でのサポートのヒント
STEP
見通しのある一日をつくる
  • 朝・昼・夜の流れを絵や文字で「見える化」すると安心します。
  • 予定の変更があるときは、できるだけ早く知らせてあげましょう。
STEP
刺激をやわらげる環境づくり
  • 照明・テレビ・声のトーンを落ち着かせるだけでも違いが出ます。
  • 興奮した後は「静かな場所でひと休み」できる空間を。
STEP
言葉よりも“安心の空気”を
  • 興奮しているときに注意するより、「落ち着いたら話そうね」で十分です。
  • 成功したときは大げさな褒め言葉よりも、笑顔や頷きで伝えると心が安定します。
STEP
お母様ご自身の安心も大切に
  • お子さんは、お母様の表情や呼吸の変化を敏感に感じ取ります。
  • 「お母さんも今ちょっと疲れたな」と正直に伝えることが、実は信頼につながります。
STEP
次のステップ:特性を理解するためのサポート先
支援の目的相談できる場所
感覚・行動・情動の特徴を理解する市区町村の「発達支援センター」「子育て支援課」
医師による発達・心理評価小児発達外来・児童精神科
家庭と学校の連携担任・特別支援コーディネーター・スクールカウンセラー
日常での練習と支援児童発達支援・放課後等デイサービス

ポイント
「診断をつけること」が目的ではなく、「お子さんの得意と苦手を理解する地図を作ること」が目的です。

STEP
お母様へ

お子さんの感じやすさや反応の強さは、決して育て方のせいではありません。
脳と感覚のバランスの“個性”であり、環境との相性で表れ方が変わります。

どうか焦らず、お母様自身も安心できる時間を大切にしてください。
お子さんが落ち着けるのは、何よりもお母様の穏やかなまなざしです。

このたびはご相談内容をお聞かせくださり、ありがとうございます。
娘さんの感じやすさ、反応の豊かさ、そしてその後の悩まれる様子から、ご家庭の中でもお母様が深く寄り添ってこられたことが伝わってまいりました。

ご記載の内容からは、カウンセリングよりもまず、発達や感覚、情動の特徴を専門機関で把握することが今後のサポートをより効果的にしていくための第一歩になると思われます。

市町村の発達支援センターや児童発達支援事業所、小児発達外来などでのご相談をお勧めいたします。
そのうえで、日常生活の中でできる関わりの工夫や安心づくりについては、ご希望があれば改めてお手伝いできる部分もあるかと思います。

お母様が長年子どもたちに関わってこられたご経験は、きっと娘さんの支えになるはずです。
どうぞ焦らず、少しずつ安心できるペースで歩んでいかれてください。

お母様からのご返信

この度は、わずかな情報から子供や子供を取り巻く状況・課題・次に推奨されるアクションまで、非常に丁寧かつ正確に整理して下さってありがとうございました。

おっしゃる通り、子供は自閉スペクトラム症の特性を非常に強く持ち合わせております。
現状では、教育センターにて隔週での心理士さんのプレイセラピーや母の面談機会等を頂いている状況です。これほどまでに、詳細かつ丁寧なガイダンスを頂けて感謝しております。
メールの文面は要約し、変換させていただいております。

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