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ADHD特性+実行機能不全+毒親再演のセラピー

目次

ADHD特性+実行機能不全+毒親再演者の見立てからの解釈と実際のカウンセリングとセラピー

長野県在住の33歳の女性で2人の子供(5歳と2歳)がいます。ADHDの特性を持っていて、興味のあることには没頭できても気が乗らないことには集中できなく、副業の作業も進めることができないく困っています。ただし、準備するためのリサーチは得意であり、商材には大きな買い物も続ける有様です。これは制御の困難さともいえる症状だと思っています。
また、認知のバイアスが強く、例えば、白黒思考のためにグレーゾーンはありません。そのため100点を求めてしまい60点のような点数は許されません。
しかし、仕事では優先順位ができないばかりか時間の管理も不得意であり、気になる外部刺激の影響も伴い注意を維持できずに細かいミスをすることが続いていました。
特に気にしているのは、子供への感情のコントロールができず毒親の再演をしているのかと悩んでいます。幼少期には母親からの期待度が高く、過保護で心配性な感情をぶつけられてきました。・・・・・
ご本人のご相談のメールの文面は要約し、変換させていただいております。

〈ケース要約〉長野県在住、33歳女性・育休中(2児の母)

case
主訴(本人が最も困っていること)

希望:気持ちを整理し、自分の特性を知り、生活・育児を改善したい。

  • 自己否定が止まらない。「ダメな母親」「毒親では」と悩む
  • 感情をコントロールできず、子どもにきつく当たってしまう
  • 行動できない/完璧主義/情報ばかり集める
  • できなかった自分に強い嫌悪
  • 副業や学びへの過集中が止められない
  • 60点で生きることができない(白黒思考)
case
症状・特徴の整理

※診断ではなく「傾向」としての整理

●認知・感情

  • 白黒思考(0か100か)
  • 自己否定依存(否定で安定しようとする)
  • 親の評価に左右される自己価値感
  • 「嫌われるくらいなら関わらない」という回避と依存の混在

●実行機能(生活スキル)

  • 時間管理が苦手
  • 過集中→燃え尽き→行動停止
  • 優先順位づけが困難
  • 準備ばかりで行動に移らない
  • 情報に振り回される

●対人傾向・境界線

  • 過去の「言うこと聞かないと嫌われる」経験による不安
  • 距離を取ってしまう一方、依存的になる関係もある
  • 適切な相手選びが難しい(美容院・保育士への衝動的な相談)

●育児への影響(本人の自覚あり)

  • 子への態度が感情に左右される
  • かつての母親像(支配・評価)が再現されかけている
  • 長女の試し行動/機嫌伺いが気になる
  • 息子との時間が過集中に奪われている自覚

●予備的見立て(診断ではなく臨床仮説)

  • ADHD特性による実行機能の弱り+過集中
  • 過去の親子関係に由来する条件付き価値観(言うことをきく→愛される)
  • 完璧主義と自己否定による回避的行動と依存
  • 育児という「予測不能な状況」で症状が顕在化
case
リスク・緊急性
  • 育児への情緒的影響がすでに現れている
  • 副業・情報商材への依存(サンクコスト効果)
  • 「診断・薬への過度な不安」+「自己否定への執着」
  • 育休期間を「変化できないまま」葛藤し続けている

※ただし、夫がサポート的な姿勢のため、安全性と支えは確保されている

case
強み・保護因子(回復の資源)
  • 調べる力、深掘り力、1対1での信頼関係
  • 過集中を適切に使えば武器になる
  • 夫の高い共感性と育児参画
  • 本人が自覚し助けを求めている(これは非常に大きな強み)
  • 「子どもに同じ思いをさせたくない」という動機づけ
case
本人が心理支援に求めていること

診断よりも「生活改善」「親子関係」「実行機能支援」への希望が大きい。

  • 自分の特性・強み弱みを知りたい
  • 認知の歪み、スキーマを知りたい
  • 行動や思考習慣を変えたい
  • 子育てへの具体的なアドバイス
  • 診断を受けるべきか相談したい

※ADHDや障害のラベリングや投薬には慎重姿勢。

case
初回面接で重点的に扱うべきテーマ
  • 診断よりも生活と育児への実際的支援から始める方が安全
  • 親の再現(条件付き愛)を明確化し「違う関わり方の実感」を作る
  • 過集中→グラデーション(60点)へ導く心理教育
  • 実行機能の負荷を下げる環境調整(時間、スマホ、意思決定)
  • 夫婦の連携(夫は大きな支えのため)
case
提案される初回方針(臨床家側の姿勢)
  • 診断・病名よりも
     → 生活の困り感に具体的対応から始める
  • 責めずに現実を整える方向性を共有
  • 小さな「成功体験」を親子で作る

臨床見立て(統合視点)

ADHD特性を前提にしつつ、精神分析的(発達・対人回避・防衛機制)読み取りを統合した臨床的見立てです。
※診断ではなく、治療方針につながる「心理構造」の理解です。

臨床見立て(統合視点)

1)表面に見える主訴

  • 不注意・過集中・実行機能の困難(ADHD特性)
  • 完璧主義・白黒思考(認知)
  • 自己否定の強さ
  • 育児における怒り・支配性・罪責不安
  • 情報商材、ノートづくり、準備への依存(回避×過集中)

▶ 注意:これらは 「症状」ではなく、防衛機制として働いている可能性

(本人を守るために過剰に働いている)

精神分析的読み取り:核にある不安

2)精神分析的読み取り:核にある不安

存在価値が条件化された自己像

幼少期の親からのメッセージ

「言うことを聞かないあなたは嫌い」
「完璧じゃないと意味がない」

ここから形成されたスキーマ:

  • 存在価値は成績・従順・役に立つことにより保証される
  • 失敗=拒絶・破局
  • 愛は交換可能(条件付き)

自己愛の傷つきと回避

  • 褒められ、認められても「本当の私ではない」という感覚
    肯定が入りにくい自己愛の脆弱性
  • 自己否定の反復は、自己を罰するためではなく
    拒絶されないための予防的回避(自己を低く保つ安全策)
育児で再演される「母‐子関係」

3)育児で再演される「母‐子関係」

再演の構造

かつての自分(子ども)
 
母の支配や条件付きの愛
 
いまの自分(母)

例:

  • 子どもに「言うことを聞かせたい」(過去の母親の同一化)
  • 子どもの「大好き」にプレッシャーを感じる(愛の条件化への恐れ)
  • 怒り、支配が起きた後、自己否定へ(罪責と反動形成)

▶ ポイント

母を再現しているのではなく「母に勝てなかった幼児の防衛を再演している」。
支配ではなく、自分が支配されないための先手防衛。

防衛機制の整理

4)防衛機制の整理

行動防衛の意味
完璧主義失敗=拒絶を防ぐ
自己否定の反芻「自分を責めておけば他者に否定されない」
情報収集・準備依存実行に伴う失敗回避
過集中「正解」を探すことで安心を得る
衝動的な開示拒絶を先に体験しておく「予防的自己破壊」(自己呈示)
育児の厳格化母の価値基準の内面化+拒絶回避

▶ 防衛の核心は「拒絶に対する先手回避」

対人関係の様式

5)対人関係の様式

関係への欲求と恐怖の同時存在(依存と回避の併存)

  • 1対1に依存し、理想化→失望→距離化
    自己愛的な補償関係と回避
  • 複数集団が苦手(自己評価が揺らぐ)
  • 衝動的な情報開示
     → 拒絶され、「やっぱり私はダメ」 という自己像の強化
     → 自己愛がさらに萎縮(悪循環)
ADHDと精神分析構造の結びつき
ADHD特性精神分析的補足
過集中従属不安・分離不安の回避、完璧化防衛
不注意・先延ばし失敗回避=拒絶回避
衝動性関係破綻を先に起こして自分を守る「能動化」
実行機能の弱さ満たされなかった安心基盤=安全基地の欠如

重要:

ADHD症状を増幅させているのは「拒絶回避のための心理的努力」。
単純な障害像で語れない。

治療方針(統合)

7)治療方針(統合)

目標は「症状の除去」ではなく『条件付きの自己価値』からの解放

行動改善と並行して扱うべきテーマ

  1. 条件付き愛の再解釈
  2. 安全基地としての子どもとの関係再構築
  3. 失敗=拒絶ではない関係体験の積み上げ

具体的介入(方向)

  • スキーマ療法(条件付き価値/脆弱な自己)
  • メタ認知×実行機能支援
  • ADHDに適した生活環境調整
  • 母‐子の情緒接触の再構築(遊び・目線・身体性)
  • 「失敗しても関係が続く経験」のセッション内形成
まとめ(要約)

問題の中心は、ADHD特性そのものではなく、拒絶不安に根ざした条件付き自己価値。
ADHDは認知機能として、過集中・計画の困難・衝動性を示すが、
これらを「拒絶回避」や「自己保護」が増幅させている。

育児場面における怒り・支配的行動は、虐待的再演ではなく、拒絶されることへの先手防衛。

治療の方向は、完璧な母親になることではなく、失敗しても愛が続く経験の獲得

実際の面接ステップ

◆導入


気持ちや状況の整理
②今起きていることの理解
③今日からできる負担の少ない工夫

STEP
本人の「今」を言葉にする

▶ 質問(選択式+自由)

今のお気持ちに、一番近いものはどれでしょう?

  1. 不安
  2. 自己否定
  3. 焦り
  4. 子どもへの影響の心配
  5. 診断の不安
  6. その他(  )

一番強いのは、どの感情ですか?

ここで「第一感情」を丁寧に確認する。

▶ 掘り下げ(過去ではなく、現在に限定する)

最近、ご自分を一番責めてしまうのは、どんな場面ですか?
例)子どもへの態度/行動できない/完璧主義…

(※内容より「責め方の癖」=認知バイアスを把握する)

その時、頭の中でどんな言葉が浮かんでいますか?

キーワードを短くメモ:例「ダメ母」「失敗」「嫌われる」「今すぐ改善」

STEP
「母対子」の再演を見える化

▶ シンプルな質問

もし、あなたのお子さんが「言うこと聞けなかったら嫌われる」と不安を抱いたら、何を伝えてあげたいですか?

(※ほぼ全員が「嫌わないよ」「大丈夫」と言語化する)

▶ 要約

今あなたが子どもに伝えたい言葉は、
幼い頃のあなた自身が、当時ほしかった言葉そのもの です。

(「胸の奥の体験」への認知的リンクが生まれる)

▶ 決して責めずに示す

だから、いま起きている「言いすぎてしまうこと」や「完璧に育てたい思い」は、母親になったからこそ再び浮かび上がったテーマ なのです。
過去の繰り返しではなく、やり直しのチャンスとして目の前に出てきた課題 だと考えています。

STEP
即日ワーク「今日からの60点」

▶ 設定

0か100ではなく、60点で生きる練習 を、今日から一緒に始めませんか?

▶ ルール

次のうち たった1つだけ選ぶ。絶対1つ。複数は禁止。

  1. スマホを「子どもが寝る前は見ない」
  2. 寝かしつけ時、イヤホンを外す
  3. 情報検索に1日10分のタイマーをかける
  4. 「あとでね」を1日1回まで
  5. 子どもに一言「ありがとう」だけ言う

▶ Counselor

選んだものは、完璧にやらないでください。60点で。
たとえば「毎日」ではなく、「できたらラッキー」くらいで。

60点は、あなたにとって 挑戦であり、解放でもあります。

STEP
医療とのつきあい方

診断や薬については、決めるのではなく「相談する」ための受診 ができます。
いきなり何かを背負ったり、薬を飲む必要はありません。
あなたの生活に合わせて、道具の一つとして検討する という考え方ができます。

次回までに、「医療に何を相談したいか」のメモを一言にしましょう。
例)「実行機能を改善する方法」など。

STEP
まとめと次回

今日あなたが選んだ60点は、生活を変えるというより「過去の自分への優しさ」 でもあります。

次回は、お子さんとの関係が楽になる、声かけと環境調整 を扱う予定です。
あなたが一人で頑張らなくてもできる方法を、一緒に作っていきましょう。

◆最後の言葉(締め)

変化は、「大きな決意」ではなく、小さな60点の積み重ねから始まります。
今日、その一歩を一緒に決めたことを、私は大切に受け止めています。

心理療法:意味の再整理と安全化

第1回:意味の再整理と安全化
ここを 丁寧に・深く・的確に進められる ことが、第2回の「母との距離調整」、第3回の「過去の自分への同席」へ安全に進むための土台になります。

この1回目は、クライエントの「問題の改善」ではなく、自分を責める方向へ向かう脳と心のメカニズムを理解し、安心と許可を作る回” です。

女性の特徴

  • 自己否定が強い
  • 完璧主義
  • “毒親”という言葉を自責に変換しやすい
  • 過集中で情報の沼に入りやすい
  • 感情の揺れと罪悪感が連動する
  • 育児本通りにできないと混乱
  • 誰かのルールを借りて自分を測りがち
  • 感情の言語化が苦手+後で反芻

理解” を与えることが、最初の治療的介入

第1回:完全構成

内容目的
導入/枠組み説明セッションの“方向”の合意
“最近、自分を責めた場面”聴取具体化・安全な開示
事実と言葉(評価)の分離自己否定の構造を可視化
ADHD特性と実行機能の心理教育「弱さ」→「仕組み」へ
情緒と育児の関係説明“母としての罪悪感”の軽減
セッションの統合/言葉の再定義“許可”と“今後”
STEP
導入(目的設定)

今日のセッションは、“振り返って責めるため”ではなく、“理解して、自分に許可を出すため”の時間にします。

過去を掘り返すのではなく、いま起きている反応を、脳と心の仕組みから整理します。

※目的を明確にし、深堀りではなく整理と理解を中心に置く。

STEP
最近「自分を責めた場面」共有

最近、「うまくできなかった」「またやってしまった」とご自身を責めた瞬間があれば、1つだけ教えてください。育児でも、それ以外でも構いません。

※具体例が出ない場合
→ 生活の場面別に質問
「子ども」「夫」「家事」「自分への目標」

STEP
事実と評価を分ける作業

例:寝かしつけ中にイヤホンを外せなかった

いまの話の中で、起きた“事実”と、あなたが自分に投げた“評価の言葉”を分けてみましょう。

事実 → 「寝かしつけ中にイヤホンをしていた」
評価 → 「私は母親失格」「向き合えていない」

“事実”は1行でも、“評価”は無限に増えます。
自己否定は、事実の解釈を塗り替えてしまいます。

このライン(事実と評価の間)に介入ポイントがあることを示す。

STEP
脳の仕組みとして説明(心理教育)

ADHDの特性として、注意が「一点に強く集まる」ことがあります。
過集中とも呼ばれます。

新しい情報、チャンス、学びに強く反応する脳のクセがあります。

それ自体は才能ですが、育児のように“中断が多い環境”では、脳が疲れやすく、自己制御が効きにくくなるのです。

“できなかったこと”は意志の弱さではなく、脳の限界が来たサインです。

STEP
育児と特性の相性の説明(罪悪感を下ろす)

育児は“正解がない仕事”です。誰もゴールを教えてくれない。

「正解がないこと」に長く付き合うのは、ADHDの方にとって非常に負荷が高いんです。

だから、“うまくできなかった日”があって当然です。

そして、うまくいった日は、“あなたの力が出せた日”です。

評価の軸を移す
→ 自己責任 → 脳のコンディション × 環境刺激の結果

STEP
意味の再定義(この回の結論)

今日、整理できたことは“私はダメだからできなかった”ではなく、
脳の負荷が高い環境で、それでも向き合おうとしてきた”ということでした。

その視点を持てた人だけが、過去の感情に安全に触れていけます。

この回は、“癒し”ではなく “地ならし” です。

第1回の最後に伝える一言(重要)

過去は変えられませんが、過去に意味を与え直すことはできます。
あの時できなかったことは、いまのあなたなら向き合えます。
今日は、その準備が整った時間でした。

癒しのスクリプト

音楽+目を閉じて聴く専用の癒しスクリプトです。
女性(完璧主義/自己否定/育児の疲労/過集中)に合わせて、自己許可・安心・60点の肯定をテーマにしています。

〈導入〉

それでは、軽く息を吸って、ゆっくり、息を吐いていきましょう。
音楽に包まれるように、ここにいる自分を、ただ感じてみてください。

目は閉じたままで大丈夫です。
何かしようと思わないでください。

ただ、この時間に身を委ねてみてください。

〈体と呼吸を緩める誘導〉

まず、肩の力を少しゆるめて……
胸のあたりを、やわらかくして……
胃やお腹に入っていた力も、ほどいていきます。

息を吸うたびに、体がゆっくり広がり、吐くたびに、少しずつ、ほどけていきます。

何か考えが浮かんでも大丈夫。
水面に小さな葉っぱが流れていくように……

追いかけずに、ただ流していきましょう。
あなたの頭の中の言葉も、そのまま流れていきます。

深呼吸をひとつ。

吸って …
吐いて …

あなたは今、ここにいます。
過去でもなく、期待でもなく、もっと完璧にできた未来でもなく。

いま――この瞬間に。

〈自己否定の緩和〉

今まで、たくさん考えてきましたね。
正しくあろうとした日、失敗を責めた夜、選択に迷って、自分を疑った瞬間。

そのどれもが、あなたが大切なものを抱え、守ろうとしてきた証です。

これまで、頑張りすぎてきた時期がありましたね。
「もっとできるはず」
「完璧じゃなきゃ」
そんな思いが、あなたの心を守ろうとしていた時期もありました。

完璧にできなかった日の“自分”を、責めてきたかもしれませんね。

うまく向き合えない時間を、自分の弱さだと思った日もあったかもしれません。

けれど、それは本当は違います。

あなたが疲れていたから。
あなたが一人で抱え続けていたから。
あなたが誰かを傷つけたくなかったから。

あなたが自分を責めたその瞬間、心はこう言っていたのかもしれません。

「怖かった」と。「大切にしたい」と。「嫌われたくない」と。

責めることで守ったもの。諦めることで守ったもの。

そのすべてが、あなたが持っていた優しさの形でした。

もし今日、誰かに優しくできなかった日だったとしても。
それでも、あなたは優しい人です。

優しい人は、いつも優しくできる人のことではなく、優しくできなかった自分を見て、
胸が痛む人のことだから。

今、あなたは目を閉じ、静かな音の中に身を置き、その優しさを取り戻そうとしています。

その行動自体が、あなたの確かな愛情の証です。

ここでひとつ、新しい視点を受け取ってみてください。

「できなかった自分」ではなく、「やり直そうとする自分」が、あなたの本当の姿です。

子どもに向き合えなかった時間より、向き合おうと戻ってきた勇気の方が、
ずっと大きな意味を持っています。

でも、いまはもう、完璧に頑張らなくても、大丈夫です。
いまのあなたに必要なのは、もっと頑張ることではなく、少しゆるむこと。

「この一年」

あなたは、この一年、ずっと走っていましたね。

「変わりたい」「子どもに同じ思いをさせたくない」「自分の人生を取り戻したい」

強く願い、情報を集め、学び、考え続けてきました。

それは逃げではありません。現実から目を背けたのでもありません。

ただ、必死だったのです。守りたかった。未来を変えたかった。

その動きは、あなただけにしかできない勇気でした。

でも――
“守るつもりの行動”が“罪悪感”に変わった瞬間がありましたね。

スマホの画面の向こうに未来を探していたとき、お子さんの声が遠くなっていった日。

寝かしつけの暗い部屋で、イヤホン越しに聞こえる誰かの成功談と、胸の中のざわめき。

「何やってるんだろう、私」「大事な今を失ってる」

そんな声が、胸の奥で静かに響いていた。

あれは「後悔」ではありません。あなたの愛情が語りかけていた声でした。

あなたは言いました。「毒親になるのが怖い」と。

その言葉には、あなたが幼い日に味わった、大人の期待と評価に揺れる心の記憶が
深く影を落としていました。

「言うことを聞かなければ嫌われる」「完璧な子だけが褒められる」

あのときのあなたは、ただ愛されたかっただけ。

ただ、素直に泣きたかっただけ。ただ、わかってほしかっただけ。

言えなかった怒りは色を変えて、静かにあなたの中に残りました。

でもそれは、あなたが弱かったからではなく、あなたが賢くて、優しすぎたからなのです。

そしていま、その経験を「反面教師」にしようとしています。

「同じことを子どもに言いたくない」「怖がらせて支配したくない」「どんな自分でも愛してあげたい」

あなたがその言葉を口にした瞬間、再演の連鎖は、すでに断ち切り始めていました。

気づいた人から、歴史は変わります。

お子さんが「ママ大好き」と言うとき、その言葉には2つの表情がありましたね。

本当に嬉しそうに言うとき。
そして、あなたの顔色を伺うように言うとき。

その違いに気づけたあなたは、もう毒親ではありません。

見逃さない感性を持っている。それが愛であり、才能です。

夫の存在が、あなたにとって唯一の安心だと感じるなら、それは弱さではなく、
人を信じる力が残っているという証拠

信頼できる人が一人いれば、人は強くなれます。

あなたは、できない日をたくさん経験してきました。

泣いてしまう日。不安が溢れる日。シャワーの音にまぎれて、涙を流した夜。

でもどうか思い出してください。

そういう日でも、あなたは母でした。やめなかった。向き合おうとし続けた。

それは「完璧な母」より、ずっと尊い姿です。

ここでひとつ、胸の中で唱えてみてください。

「私は、戻れる母でいたい」

失敗しない母ではなく、怒らない母ではなく、完璧な母でもなく。

戻れる母。やり直せる母。話ができる母。

それで十分です。

子どもが欲しいのは、正しい母ではなく、帰ってきてくれる母です。

そしてあなたは、その力を持っています。

深呼吸をひとつ。

吸って…
吐いて…

胸の奥にある重さが少しだけ緩んでいきます。

あなたは、今日も戦いました。
心の中で。静かに。誰にも見えないところで。

その努力は、誰も拍手してくれなかったかもしれない。

でも私は知っています。あなたの行動は、愛から始まっていることを。

静かに心の中で言ってください。

「私は、不完全なまま愛していい」「私は、やり直せる」「私は、母として今日も進んでいる」

〈母としての不安を緩める〉

子どもに優しくできない日があっても、思った通りに向き合えない瞬間があっても、
それは “悪い母” だからではなく、疲れていたり、余裕がなかったりするだけ。

あなたは、子どもを大切に思っている。その気持ちがあるだけで、子どもは、愛を受け取っています。

そして、子どもが必要とするのは、完璧なお母さんではなく、安心して呼吸できるお母さんです。

あなたは、あなたの母親とは違う道を歩いています。

その証拠に、「このままでいいのか」と悩み、「傷つけたくない」と願い、こうして立ち止まり、
考え直そうとしている。

それだけで、すでに違う未来を選び始めています。

子どもがあなたを求めるとき、それは「完璧な答え」ではなく、
あなたの声、あなたの表情、あなたの存在を必要としているのです。

そして、あなたもまた同じように、子どもに安心を求めていいのです。

〈自己肯定の回復〉

大きな決意はいりません。大きな変化も必要ありません。

今日のように、ほんの少し呼吸をゆるめるだけで、それは未来への小さな一歩になります。

どうか、自分を責める代わりに、自分に小さな休憩をゆるす、優しさ を持ってみてください。

その優しさは、子どもへ向ける優しさと同じ根っこから育っていきます。

〈未来への許可〉

子どもがあなたを求めるとき、
それは「完璧な答え」ではなく、あなたの声、あなたの表情、あなたの存在を必要としているのです。

そして、あなたもまた同じように、子どもに安心を求めていいのです。

どうか覚えておいてください。

あなたは途中で間違えるかもしれない。感情が溢れることもある。逃げ出したい日もある。

それでも、やり直せる。やり直していい。

親子の愛は、
完璧ではなく「戻れること」で育ちます。

いまのあなたは、変わる途中にいます。
無理に急ぐ必要はありません。あなたのペースで、あなたの歩幅で大丈夫。

焦らず、急がず、責めず。今日より、ほんの少し息がしやすい明日へ。

60点で生きていい日々へ。
ゆっくりと、向かっていきましょう。

最後に、心の中でそっと言ってみてください。

「今日はここまでできた。これでいい。」

言葉に出しても、出さなくても構いません。
その感覚が、あなたの心に静かに、ゆっくりと染み込んでいきます。

〈覚醒誘導〉

ゆっくり、深く息を吸って……
吐きながら、体の感覚を少し思い出しましょう

指先や足の感覚に意識を戻しながら……
周りの音や空気を感じてみてください。

◆終わりの言葉

深呼吸をもう一度。

吸うたびに、新しい空気があなたを満たし、
吐くたびに、余計な力が身体から離れていきます。

準備ができたら、ゆっくり目を開けて、
今日の続きを生きてください。

あなたのペースで。あなたのリズムで。

完璧ではなく、呼吸できる生き方で。

目を開けたら、すぐに頑張らなくていいですよ。
余韻のまま、少しだけ静けさを続けても大丈夫です。

特性の強さと生活への影響度の把握セルフチェック50問

単なるADHD診断目的ではなく

実行機能・認知のバイアス・感情コントロール・対人不安・育児への影響まで読み取れる 多角的セルフチェック(50問) です。

点数化は「診断」ではなく特性の強さと生活への影響度の把握を目的とします。

多面的セルフチェックリスト(50問)

対象:成人(特に育児期の女性)

回答形式:
0=ほとんどない
1=ときどき
2=よくある
3=ほぼいつも

【A.実行機能(13項目)】回答
1.やることの優先順位がつけられない。
2.タスクを始めるまでに時間がかかる。
3.「準備」に時間をかけすぎ、本番に入れない。
4.計画を立てても、その通りに進まない。
5.決めたことを後回しにしてしまう。
6.気が散って他のことを始めてしまう。
7.情報や物を整理するのが苦手だ。
8.片づけても散らかりやすい。
9.物の置き場所を決めても、戻せない。
10.時間を把握するのが苦手で、遅れやすい。
11.興味のあることだけ極端に進む。
12.気が乗らないことは、ほとんど手をつけられない。
13.「あとでやる」と言ったまま忘れることが多い。
【B.注意・過集中(10項目)】回答
14.集中しすぎて時間を忘れることがある。
15.過集中の後、疲れ果てて何もできなくなる。
16.重要でない情報を追い続けてしまう。
17.興味がない話は、内容が入ってこない。
18.話を聞いている途中で別の考えに飛んでしまう。
19.複数の作業を同時に進めるのが苦手。
20.手を動かしながらでないと話を聞けないことがある。
21.長い説明を要点でまとめることが難しい。
22.人が話していても、別の刺激に注意が奪われる。
23.忙しい時ほど、不要なことに夢中になってしまう。
【C.認知のバイアス(10項目)】回答
24.「完璧にできないなら、やらないほうがいい」と思うことがある。
25.0か100か、白か黒かで考えがちだ。
26.少し失敗しただけで「全部ダメ」と思う。
27.失敗すると、自分自身を強く責めてしまう。
28.他人からの好意や褒め言葉を受け取りにくい。
29.自分が嫌われているのではと不安になることがある。
30.子どもに「嫌われる母になってしまうのでは」と不安になる。
31.人の行動を「わざと私を困らせている」と感じることがある。
32.結果より「正しい方法」を探すことにこだわる。
33.1つのミスがあると「自分は向いていない」と思ってしまう。
【D.感情コントロール(8項目)】回答
34.イライラして態度や口調が強くなることがある。
35.怒った後に強い自己嫌悪を感じる。
36.感情が高ぶると、言わなくていいことを言ってしまう。
37.気分に左右されて、やりたいことがブレやすい。
38.小さなできごとで気持ちが大きく揺れることがある。
39.頭ではやめたいのに、感情が抑えられないことがある。
40.悲しみ・罪悪感・怒りが長く続きやすい。
41.情報に過剰に期待したり、強く失望したりしやすい。
【E.育児・家庭への影響(9項目)】回答
42.子どもに「言うことを聞かせたい」気持ちが強い。
43.子どもが言うことを聞かないと「わざとだ」と感じることがある。
44.寝かしつけや育児中にスマホを見てしまう。
45.子どもが「ママ大好き」と言うとプレッシャーを感じる。
46.子どもの行動に、自分の育て方の失敗を感じやすい。
47.子どもへの声かけが、その時の気分に左右される。
48.育児の「正解」を探しすぎることがある。
49.子どもに同じ傷を与えてしまうのでは、と強い不安がある。
50.自分の状態が子育てに影響していると感じる。

結果の読み取り(診断目的ではありません)

合計得点

合計得点読み取り
0〜40点特性は低い/生活への影響は周辺的
41〜80点特性は中等度/環境調整・支援が効果的
81〜120点生活に影響大/専門相談の併用が有効
121〜150点強い困難/医療相談+心理支援の併用が望ましい

重要:得点=障害の有無ではありません。

  • 得点が高いほど 「脳の特性が生活に影響している」 ことを示します。
  • 特性は 治すものではなく、整えるもの/支援できるもの です。

医療相談の目安

以下のいずれかに当てはまれば、診断ではなく相談目的で受診を推奨します。

  • 育児や仕事に支障が出続けている
  • 感情のコントロールで苦しむ
  • 過集中と疲労の悪循環
  • 自己否定と罪悪感がやまない
  • 子どもへの影響に不安がある

受診=病名を背負うことではなく、生活をラクにする相談です。

50問セルフチェック 解釈ガイド

前提:この検査は「病気探し」ではありません。

ADHD 特性を含め “困り感の方向性” を見るためのチェックです。
高い=病名がつく、低い=安全、ではありません。
今の生活で、どこにサポートが必要か を見える化するためのツールです。

【総合得点の見方】

得点特徴支援の方向性
0〜40点特性は弱い/環境次第で変化困り感に応じたアドバイス
41〜80点中等度/状況に左右生活環境の調整+心理教育
81〜120点高い/生活に影響が強い医療相談+カウンセリング併用が有益
121〜150点非常に強い影響診断相談と環境調整の併用を推奨

点数が高い=能力が低いではありません。
むしろ特性の強さは、集中力・深い分析・発想力につながる場合もあります。

【領域別の詳細解釈】

①《実行機能》13項目(1〜13)

✔ 何がわかる?

  • 「判断・整理・始める力」の状態
  • ADHDの中心であり、育児・仕事に直結する部分

✔ 得点が高い場合の特徴

  • 行動より「準備」に時間がかかる
  • 決められるが動けない(意志の問題ではない)
  • 片付け・計画・手続きが苦手

支援の方向(説明例)

失敗したくない脳 は、「はじめること」にブレーキをかけます。
意思ではなく 脳の仕組み です。
まずは 60点で動ける環境づくり が効果的です。

医療側に 相談しやすく、生活にすぐ活かせる
「実行機能障害への対処」「過集中のコントロール」を、心理 × 発達脳 × 生活設計 から整理してお伝えします。

【実行機能障害への対処法】

(始められない/続かない/優先順位がつけられない)

鍵は「意志」ではなく 環境を先に作ること(意志は後からついてくる)

実践
“始める”をラクにする方法

3分だけやったら終了してよい
→ 始めるための脳内ブレーキが弱まる

例)

  • 3分だけ片づけ
  • 3分だけ炊事の準備
  • 3分だけ洗濯を畳む

脳にとって「始める=成功」

【道具を出しておく】(準備は前日)

道具が見える=脳は「着手済み」と認識し、始めやすくなる

例:

  • 子どもの服を前夜にセット
  • 朝食の皿だけ出す
  • ゴミ袋をセット済みにしておく

【明日の私に丸投げをしない】

→ 書いておく(1行でOK)

例)
明日は洗濯→保育園セット→外遊び

※箇条書き・メモ帳・冷蔵庫・スマホどれでもOK
→ 「決める労力」を翌日に残さない

実践
 優先順位がつけられないとき

【優先は「困り度」で決める】

分類
困るが短い洗濯・朝食
困らないが長い手帳のデザイン
困る+長い書類・役所手続き
困らない+短い買い物の比較

「困る+短い」から手をつける

実践
続かない人向け:継続の技術

【タイマー原則】

時間で区切る(量で区切らない)

例)

  • 掃除10分で終了
  • 情報検索は15分以上禁止
  • 子どもとの遊びは5〜10分の全集中
実践
【ToDoリスト禁止 → 3つだけ】

今日やること 3つまで
→ 脳の混乱を防ぐ

例)
①保育園準備
②洗濯だけ回す
③食器は夜まとめてOK

実践
【やめどきは「成功の途中」】

成功の直後にやめる → 続けやすい
例:文章、掃除、仕事、趣味

脳は「気持ちいい続き」を翌日に欲しがる

②《注意・過集中》10項目(14〜23)

✔ 何がわかる?

  • ADHDの「不注意」と、「過集中の両面」

✔ 得点が高い場合の特徴

  • 興味があるときに能力が極端に上がる
  • 逆に興味がないことが極端にできない
  • 仕事では波が激しく評価が安定しない

支援の方向(説明例)

集中の才能と、切り替えの弱さがセット で現れるタイプです。
才能を生かすには、

  • タイマー
  • 途中終了ルール
  • できないことは「外部(人・仕組み)」に渡す
    が有効です。

【過集中のコントロール方法】

(止まらない/抜けられない/疲労→自己嫌悪)

実践
「過集中に入る前」に仕掛ける

【開始前チェック】(1分)

  • 食べた?
  • 水分とった?
  • 休息した?
  • 子どもの安全は?(テレビ/柵/夫へバトンタッチ)

※チェックが1つでも△なら 過集中禁止

実践
入った後の対策:抜け道作り

【タイマー×中断メモ】

タイマー「次の一手のメモ」を書いてから離れる

例)
「次は画像選びから」
「文章の見直し途中」

これにより
➡ 戻りやすい
➡ 今すぐ終わらせなくていい

【音を使って抜ける】

  • 自然音
  • ゆっくりしたテンポの曲
  • 逆に無音より「音あり」が抜けやすい

過集中は「音刺激」で分断可能

実践
「失敗しても続く行動」のみ選ぶ
  • 途切れても再開できるもの
  • 完璧でなくても維持できるもの
  • 一日抜けても崩れないもの

失敗しても壊れない仕組み=グラデーション

実践
過集中の疲労を防ぐ:燃え尽き予防

【エネルギータンクの比喩】

100の集中は100消費。
だから、100でやるより 60で長持ちさせる方が賢い

➡ 過集中を否定せず、少量で活用する才能 と捉える

実践
育児期に特有の対策

【子どもの前では“選べる集中”だけ】

  • スマホは「タイマー中のみ」
  • 情報収集は 子どもの昼寝前後以外禁止
  • イヤホンは禁止 → 外界遮断を防ぐ

➡ 「できる集中」より
育児を阻害しない集中 を採用する

医療相談で使える言い方】(負担軽減+正確性UP)

実行機能の相談文

意志の問題ではなく、始めるまでの強いブレーキと、準備に偏る癖 があり、日常生活に支障があります。

過集中の相談文

興味のあることを止められず、疲労や育児の放置につながる過集中 が起きます。
途中で切り上げにくいです。

➡ こう言うと 薬の調整+心理的支援の検討対象 になりやすい。

最後に:クライエントへ伝えたい言葉

あなたの課題は「努力不足」ではありません。
脳の特性に合わない生活を、努力で解決しようとしてきたことの疲れ です。

③《認知のバイアス》10項目(24〜33)

✔ 何がわかる?

  • 完璧主義、白黒思考、自己否定の傾向
  • 幼少期の育ちの影響も強い領域

✔ 高得点の特徴

  • 失敗=拒絶/否定と直結
  • 正しさにこだわる
  • 他人の反応に敏感
  • 愛される条件を気にする

支援の方向(説明例)

過去の経験が、現在に影響しているだけ。
これからは「正しい育児」ではなく、関係が続く育児 を目指すことが大切です。

診察でも相談しやすく、日常で実践できる形
「①自己否定依存 ②完璧主義 ③オールオアナッシング(0か100か)」の改善策をまとめます。
心理療法(認知・スキーマ・精神分析)+発達特性に合わせた生活介入になっています。

実践
自己否定依存への対処

自己否定は「苦しめるため」ではなく、拒絶や失敗から自分を守る防衛行為

特徴

  • 自分を責めていると「本当の能力を試さずに済む」
  • 相手に失望される前に「自分で下げておく」
  • 「努力しない理由」「変わらなくていい理由」として機能

【改善策】自己否定の「代替防衛」を作る

対策①:自己否定を「事実の言い換え」に変える

例:
✖「私ってダメ」

〇「いま疲れていて余力が少ない」
〇「難しいことに挑戦している最中」

性格” ではなく “状態” と言う習慣にする

対策②:自分を責める代わりに「修復」をする

育児では、失敗より 修復が子どもに愛着を与える

例:
「さっき怒りすぎたね。疲れてたんだ。ごめんね」

謝罪は弱点ではなく安全基地の訓練

対策③:自己否定の“目的”を探す(本人に伝える言葉)

自己否定は「変わりたくない気持ち」ではなく、変化が怖い気持ちを守っていた役割 です。

➡ 自己否定を敵とせず、役割を卒業してもらうという説明が有効。

実践
完璧主義への対処(0〜100点思考の背景)

完璧主義は「価値が条件付きで与えられた経験」から生まれる

  • できたら愛される
  • 言うことを聞いたら褒められる
  • 失敗は関係を壊す → 強烈な不安

➡ 完璧を求める心理は 愛着の不安への対策 だった。

【改善策】“100点をやめる”ではなく “60点で成功する”

対策①:60点で終わらせる練習

実行例:

  • 掃除は「10分で終了」
  • 夕食を「完全手作り→8割→6割→惣菜の日を作る」
  • 育児は「毎日より、できた日だけ」

臨床の言葉:できたかどうかではなく、終わらせたことが成功。

対策②:目的を「成果」から「関係」に変える

課題完璧主義改善
育児正しい声かけを探す関係を続ける言葉
掃除家を綺麗に保つ散らかっても暮らせる工夫
副業成功する方法探し失敗しても習慣が続く形

結果より 続けられる方法 を選ぶ。

③ オールオアナッシング(0か100)思考の改善

これは認知の癖+発達特性の組み合わせ

発達特性認知の癖
刺激に過敏一部分を大きく感じる
タスク切り替えが苦手途中を「不完全」と捉える
過集中0か100の反復

発達特性が認知を極端にしているため、精神療法だけでは解決しづらい。

実践
【改善策】「グラデーション思考」を生活に組み込む

対策①:行動に“中間値”を入れる

タスク100%60%30%
掃除全部10分だけ床のゴミだけ
育児完璧な声かけ短い共感一緒にいるだけ
副業全部こなす1ステップのみ準備だけ

最初に 30% → 60% → 100% を選べる設計 にする。

 対策②:10段階評価を「3段階評価」にする

100点=優
60点=良
30点=可

➡ 臨床の言葉:「できたかどうかではなく、どの段階で終えたかを見ましょう。」

対策③:「失敗しても続く行動」のみ選ぶ

  • 途切れても再開できるもの
  • 完璧でなくても維持できるもの
  • 一日抜けても崩れないもの

失敗しても壊れない仕組み=グラデーション

【医療で相談する際の伝え方の例】

完璧主義や自己否定は、性格ではなく
発達特性+愛着不安による防衛の結果 だと感じています。
生活に支障があるため、行動面と認知面の両方から支援できる薬と心理療法を相談したい です。

➡ 医療側が 薬+心理支援の併用 を前提に考えやすくなる。

最後に伝える言葉

あなたが戦ってきたのは「失敗」ではなく、失敗したら愛がなくなるかもしれない不安 でした。

これからの目標は、完璧になることではなく、失敗しても愛が続く生き方を手に入れること です。

④《感情コントロール》8項目(34〜41)

✔ 何がわかる?

  • 感情の揺れ・衝動的発言・罪悪感の動き

✔ 高得点の特徴

  • 怒り→自己嫌悪の悪循環
  • 感情が行動を支配
  • 情報への期待→失望が強い

支援の方向(説明例)

感情は抑えるのではなく、小さく逃がす ことが重要です。

  • 1〜2分だけ席を外す
  • 深呼吸ではなく「吐く呼吸」
  • 失敗後に修復する
    これが 安心してぶつけられる子育て につながります。
⑤《育児・家庭への影響》9項目(42〜50)

✔ 何がわかる?

  • 特性が 子どもとの関係にどう作用しているか

✔ 高得点の特徴

  • 子どもの行動を「自分の失敗」と受け取りがち
  • 「いい母になるための正解探し」に疲れる
  • 子どもの愛情表現に不安を感じる場合も

支援の方向(説明例)

今の課題は 母の失敗を減らすことではなく、失敗しても関係が続く経験を子どもに届けること。
これは 愛情の安全基地 になり、将来の対人関係を守ります。

特性(実行機能の疲労・過集中・愛着不安・完璧主義・自己否定・母子再演への恐れ)を前提に、「育児本通りにできない人のための、具体的で現実的なアドバイス」の目的は 正しい育児ではなく、関係が続く育児 です。

STEP
向き合えない日があっても大丈夫」の理由

なぜ向き合えないのか?

  • 責任ではなく 脳の疲れ(実行機能の限界)
  • 愛着不安が刺激され、感情が暴走する
  • 「育て方=未来の責任」と思い込み過ぎ

向き合えない日は “育児の失敗” ではなく、“母のエネルギー不足”

例え:スマホと同じ

電池切れではアプリは動かない。
充電が優先で、操作は後でいい。

まず親の充電 → その後、関わり

STEP
「予測不可能な育児」に対応するコツ

育児本を捨てるのではなく、「選ぶ」

育児本は 答えではなく、参考例
当てはまらなくていい。
「うちにはこれ使えそう」と一部だけ採用する。

使う基準は「正しさ」ではなく…

親が無理なく続けられるか
子が安心できるか

この2つを満たす「小さなルール」だけ採用する。

STEP
「毒親になりたくない」に振り回されないコツ

✖ NGな考え

「子どもを傷つけてはいけない」
➡ 完璧要求 → ストレス → 爆発 → 自己嫌悪

〇 OKな考え

「傷つけても、あとで直せばいい」
➡ 修復する力 = 安全基地

人間関係の安心は “失敗しないこと” ではなく “修復できること”

修復の例

さっき怒りすぎちゃったね。
疲れてたんだ。
またやり直そうね。

※ “ごめん” より “やり直せる” を強調。

STEP
「今すぐ使える具体的アドバイス」

0〜3歳

関わりは 短時間で濃く

  • 10分集中 → その後は自由遊び
  • 失敗しても、近くに座って「見守り」ができれば◎
  • 声かけより、表情・身体の向き・距離が大事

向き合う=長時間ではなく、“存在の近さ”

 3〜6歳

「指示」ではなく「選択」を渡す

例)
✖ 片づけなさい!
〇 片づける? or 音楽かけて一緒にやる?

✖ やめなさい!
〇 どうしたら安全にできそう?

自分で決めた感覚 → 自尊感情になる

STEP
⑤ 感情コントロールが難しいときの対策

 怒りのシグナル

  • 眉間に力
  • 呼吸が浅い
  • 視野が狭い
    この時点で行動しない

対策:「その場を離れる」

例)

ちょっと疲れてるから、お水飲んでから話すね。

逃げていい。
爆発するより、離れる方が愛情深い。

STEP
夫との役割:理解してもらう台詞

集中しすぎて疲れると、育児がうまくできない時がある。
悪い親だからではなくて、電池切れみたいなものを先に防ぎたい。

理解してほしいのは“性格”ではなく“脳の特性”

STEP
子どもへの言葉の基本テンプレ
場面言葉
泣く・暴れる「気持ちはここに置いていいよ」
言うこと聞かない「一緒に考えよう」
要求が強い「できる範囲で受け取るね」
甘え強い「甘えていいよ。できる分だけね」
ママ嫌い!「そう思う日もあるよ。私は好きだよ」
失敗した「やり直せるよ」

最後に:伝える一言

あなたが目指すべきは「優秀な母」ではなく、「失敗しても戻って来られる母」です。

子どもは完璧な親より、安全に戻れる親 を必要としています。

【総合フィードバック】

あなたの結果は、病気というより、“脳の個性” と “過去の経験からの守り方” が重なっている状態 と考えられます。
問題は性格ではなく、環境設定+認知の癖+感情の扱い方 です。

あなたが求めているのは、完璧な母になることではなく、失敗しても愛が続く関係を、子どもに受け継がせること。
その準備が、今まさに始まっています。

 医療に繋げる際(安心型)

医療に相談することは、病名をつけるためではなく、生活をラクにする選択肢を広げるため です。

診断を受ける=薬を飲む、ではありません。
薬はツールの一つ であり、必要な人だけ選べば良いのです。

【医療で相談する際の伝え方の例】

完璧主義や自己否定は、性格ではなく発達特性+愛着不安による防衛の結果 だと感じています。
生活に支障があるため、行動面と認知面の両方から支援できる薬と心理療法を相談したい です。

➡ 医療側が 薬+心理支援の併用 を前提に考えやすくなる。

最後に伝えたい言葉

あなたが戦ってきたのは「失敗」ではなく、失敗したら愛がなくなるかもしれない不安 でした。

これからの目標は、完璧になることではなく、失敗しても愛が続く生き方を手に入れること です。

ADHDの薬物療法 – 概略

薬物療法とは、ADHDの中核症状(不注意、多動性/衝動性、実行機能困難など)を、脳内の神経伝達物質(主にドパミン/ノルアドレナリン)に働きかけて調整し、「注意力・集中力・衝動のコントロール」を助け、日常の機能改善や安定化を図る方法です。
薬には、大きく分けて 「刺激薬(stimulant)」「非刺激薬(non-stimulant)」 の 2 種類があります。

その他、人間関係で不安や興奮、混乱、反抗、衝動性を改善するために抗不安薬や抗うつ、抗精神病薬、抗てんかん薬などを処方されることもあります。

主な薬の種類と作用

種類代表的な薬脳内での作用特徴
刺激薬メチルフェニデート、アンフェタミン系(長時間型含む)などドパミン & ノルアドレナリンの再取り込みを阻害 → これらの濃度を高め、注意・集中・衝動抑制を促す 。効果の現れが早く、多くの人で症状改善が確認される。成人でも第一選択。
非刺激薬アトモキセチン(ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)、グアンファシン/クロニジン など刺激薬ほど強くはないが、脳の興奮と衝動性をやわらげ、気分や注意の安定に寄与 。乱用・依存性が低く、刺激薬で副作用が強い人、心拍・血圧に問題がある人、不眠/不安が強い人には選択肢。

最近の臨床データでは、成人ADHDの治療において 刺激薬・非刺激薬ともに有効性 がみられると報告されています。

期待される効果・メリット

薬物療法の効果として、以下のような改善が報告されています。

  • 注意力・集中力の持続時間の改善
  • 衝動性の抑制 → 衝動買いや過集中の減少
  • 実行機能(整理、スケジュール遵守、優先順位付けなど)の改善
  • 感情の揺れやイライラの軽減 → 家庭・育児・対人での安定性の向上
  • 二次的に起こりやすい「不安・抑うつ・ストレス」の軽減(特に非刺激薬や併用時)

事故・けが・職場ミス・対人トラブルなどのリスク低下との報告もあり(長期研究で)、特に「育児」「家事」「仕事復帰」「実行機能の困難」「自己否定傾向」「情緒の不安定さ」が混在している場合、薬が “一定の安定基盤” を作ってくれる可能性があります。

副作用・リスク・注意点

薬物療法には 利点と同時に注意すべき副作用やリスク があります。

● 刺激薬に共通するリスク

  • 不眠、食欲減退、体重減少
  • 心拍数上昇・血圧上昇 → 心血管系の既往がある場合は特に注意 
  • 精神的副作用:イライラ・不安増強、気分の浮き沈み、場合によってはチックや過覚醒、不眠など 
  • 過敏な人だと「感情のフラット化」「冷たさ」を感じることも(人間関係や育児での影響あり) 
  • 長期投与・乱用・自己判断の増量で 依存や乱用リスク(特に即効型や短時間型を不適切に使った場合) 

こうしたリスクがあるため、 ADHD治療に詳しい医師 の下での処方が義務づけられている医薬品もあります。

● 非刺激薬にも注意点あり

  • 効果は刺激薬よりやや緩やかで、効き始めるのに時間がかかることがある 
  • 稀に、薬の効果で「感情の鈍さ」「無気力」「眠気」「だるさ」を感じる人もいる 
  • 医師の指示なく止めるのは避ける(特に血圧や心拍に影響あるものは慎重に) 

● ADHDと他の問題が重なっている場合の注意

  • 過去のトラウマ、愛着不安、自己否定、感情の揺れがある人は、薬だけでは「心の傷」の部分には働きかけられない
  • 薬で集中力や実行機能が改善しても、認知の歪み・自己価値感のゆらぎ・親子関係のパターンまでは変わらないため、薬+心理療法・環境調整が理想

医療を選ぶ際の「相談のしかた」と「チェックすべきこと」

医師に相談するなら、次のように伝えると具体的で望ましいと思います:

  • 「集中力・実行機能が育児と日常で支障になっている」
  • 「過集中→燃え尽き→自己否定の悪循環が続いている」
  • 「これまで心理的対処や環境調整を試したが限界がある」
  • 「薬は試す価値があると思うが、副作用や依存が不安」

➡ 医師には、 刺激薬だけでなく非刺激薬の可能性も含めて検討 をお願いし、

  • 心電図など 心血管リスクのチェック
  • 副作用モニタリング(睡眠、食欲、感情)
  • 心理療法や環境調整(カウンセリング、行動療法、生活設計)との併用

を条件に検討するのが安全です。

今回の相談内容(育児の負担、過集中、実行機能の著しい低下、感情の揺れ、不安・自己否定、子どもへの影響の自覚)を総合すると、薬物療法は決して「最後の手段」ではなく、有力な選択肢の一つだと思います。

ただし――

  • 薬だけで「心の傷」「価値観の歪み」「過去のトラウマ」は処理できない
  • 薬はあくまで 「生活の土台を安定させるための補助」
  • だからこそ、 心理療法・環境調整・セルフケア と並行することが大事

と考えます。

ADHDの心理療法– 概略

大人のADHDの治療には、心理療法が有効な場合があります。心理療法は薬物療法と併用する場合もあります。

  • 認知行動療法
    自己規制能力が低い傾向があるため、計画性、社交性や組織活動の問題を改善するために、生きづらさの出来事のワークをするような自己の管理方法や日常の課題を効果的にこなすスキルを学ぶことができます。
  • 行動療法
    行動を変えることによって問題を解決しようとするもので、例えばアラームやタイマーを使用して時間の管理やタスクの実行の改善を促すこともできます。また、ストレス解消コーピングやリラクゼーションの応用も考えます。
  • マインドフルネス瞑想
    自分の感覚や感情に注意を向けて、いま、ここにある自分を受け入れることを目的としています。生きづらさが感情的に不安定になりやすく、瞑想はストレスを軽減し、自己観察力を高めることができます。
  • 呼吸法
    呼吸は唯一、意識的にも無意識的にも制御できる自律神経の機能であり、呼吸に意識を向けてコントロールすることで、心身の状態を調整する実践法です。また、呼吸法は、神経伝達物質の分泌にも影響を及ぼすことや深い呼吸法を実践することで、脳波にも変化が生じることが研究で示唆されています。

これらの治療方法は薬剤療法と併用することで、より効果的な治療が期待できます。また、個々の症状や状況に応じて、最適な治療法を選択することが重要です。
また、苦手なポジションを軽減するように職場の環境を変えることに理解と協力をしてもらうことが大切です。

代表的な呼吸法の技法リストをわかりやすくまとめました。セルフケアにも使えるように、目的・手順・効果を添えてご紹介します。

状況おすすめ呼吸法
睡眠前・不安呼吸調整法(4-7-8呼吸など)、蜂の羽呼吸
会議前・緊張場面箱呼吸、片鼻呼吸
朝・やる気を出したい時カパラバティ呼吸、ウジャイ呼吸
雑念・思考過多数息観、片鼻呼吸、箱呼吸
瞑想や感覚の調整ウジャイ呼吸、数息観
人間関係の親密さ波のような呼吸(横隔幕の腹式呼吸)
自己主張やアサーティブコミュニケーションバストリカ呼吸、ウジャイ呼吸
自己愛・他者への共感ハート呼吸
冷静な判断、洞察力片鼻孔呼吸
心身の安定、リラクゼーション完全呼吸(腹式呼吸・胸式呼吸・肩呼吸組合せ)

母‐子の再演を断ち切る育児言葉

「母‐子の再演を断ち切る」ことを目的とした、60点の育児言葉の台本です。
完璧な声かけではなく、失敗しても関係が続く声を中心に設計しています。

【再演を断ち切る育児ことば台本】

―条件付き愛 → 続く関係の安心へ―

対象:0〜3歳/3〜6歳

〈共通の原則:60点でいい言葉〉

  • 「正しい反応」「理想的な育児」を目指さない

代わりに反応に迷ったら“続く言葉”にする

続く言葉の定義

  • 指示・否定より 関係を切らない言い方
  • 丁寧さより 余裕のある言い方

【A:0〜3歳向け】

テーマ:安心の基礎となる「関係が続く感覚」

case
イヤイヤ・癇癪のとき

→ 行動を止める前に関係を残す

  • 「ダメ!やめなさい!」
  • 「困ったね、止めようか。一緒にね」

意味:行動の制止=拒絶ではないことを伝える

case
危険行動(道路・階段など)
  • 「走らないで!」
  • 「手、つなごう。守りたいからね」

禁止より“守る目的”を先に言う

case
親に余裕ないとき(疲れている等)
  • 「今、疲れてるからゆっくり話すね。待っててくれて助かる」

自己責任にしない → 子が自分を責めなくなる

case
寝かしつけ中、ぐずるとき
  • 「眠たいね。近くにいるよ。安心していいよ」

「寝かせたい」ではなく“そばにいる”のメッセージ

case
甘えが強いとき
  • 「いっぱい甘えたい時間なんだね。できる範囲で、受け取るね」

 全部応じない+拒絶しない、の折り合い

case
子どもが「好き」を連発するとき
  • 「そう言ってくれて嬉しいよ。言いたい時に言ってね」

 「本当に?」と疑問返しをしない(愛を試す行動を減らす)

【B:3〜6歳向け】

テーマ:自己調整(自分で決める力)と続く関係

case
言うことを聞かない/反発
  • 「言うこと聞きなさい!」
  • 「どうしたらうまくできるかな?一緒に選ぼう」

統制→選択に切り替え(主導権を奪わない)

case
嘘・ごまかし
  • 「なんで嘘つくの!」
  • 「言いにくかったんだね。教えてくれて助かるよ」

責めると恐怖が増し、嘘が増加する(精神分析的に重要)

case
できない・失敗
  • 「ちゃんとしなさい」「どうしてできないの?」
  • 「うまくいかない日もあるよ。やり方、考えてみようか」

「できない=拒絶」でない経験を作る

case
乱暴・間違った主張
  • 「そんな言い方する子は嫌い」
  • 「気持ちはわかったよ。言い方は守ろうね」

行動だけを指摘し “存在は否定しない”(親の再演を止める決定技)

case
かまってほしい/過剰な依存
  • 「あなたのこと大切だよ。今終わったら、話を聞くね」

 依存を否定せず 順番を教える(見捨てられ不安を避ける)

case
「ママ嫌い」と言われたとき
  • 「そんなこと言うなんてひどい!」
  • 「そう感じる時もあるよね。私はあなたが好きだよ。」

 対立・拒絶の関係を断ち切る言葉(心理発達に最も大きい影響を持つ)

共通する親への一言(治療的メッセージ)

子どもが必要としているのは、完璧な母ではなく、 感情が安全にぶつけられる母 です。

その安全基地は、60点の声の積み重ねから生まれます。

 補足:親自身が疲れている時は?

できない日は、できなくて大丈夫です。
その日が子どもに何かを残すのではなく、その翌日の小さな修復が子どもの安心を育てます。

謝り方例

  • 「昨日は怒ってしまったよね。疲れてたのかもしれない。今日からまた一緒にやろうね。」

罪悪感ではなく「修復」こそが教育になる。

仕事復帰に向けた対策(金融機関が向いていない可能性)

「診断 → 適切な配置 → 仕事復帰」の流れを、本人に負担をかけない形で進めるための考え方を整理し、金融機関という職種において ADHD 特性が活かされる業務/負担の大きい業務の見極め方 を示します。

仕事復帰は “診断の有無” ではなく “支援条件” から考える

診断=ラベルではなく、支援と配置のための診断書 と考えるのが適切です。
特に金融機関は、配置変更・補助ツール・業務分割 を根拠なく依頼しづらい業界です。

  • つまり、診断は病名をもらうため
  • 合理的配慮を受ける権利を得るため

銀行業務における ADHD の「相性」が悪い理由

金融業務は ADHD 特性にとって 最も苦手が表面化しやすい職場のひとつ です。

金融業務の特徴ADHD側の困難
小さなミスが許されない実行機能×注意の負荷
数百ページの規定遵守ルール過多 → ワーキングメモリ低下
音・電話・来客が多い注意散漫/情報過多
定型手順を高速で処理処理速度の差が露呈

ミスは 能力不足ではなく、脳の負荷の種類が違うだけ

金融業務の中で「向いている/向いていない」を整理

✖ 苦手・避けるべき業務

業務理由
窓口(振込・払い戻し)即時判断+正確性+対人圧+雑音
後方事務でのチェック作業細かい確認・単調・責任が重い
電話応対をしながら入力注意分割が必要/ワーキングメモリ過負荷
複数案件の同時進行優先順位づけ困難/ミス増

〇 得意になりやすい業務(条件付き)または本店業務

業務理由
窓口での接客「説明・案内・提案」集中が続けば説明が上手/共感力を活かせる
特定業務の専門化(投資・外為・保険)過集中しやすい → 武器になる
単独で整理できる事務環境設定ができれば精度が上がる
情報収集・分析・比較業務リサーチ好き、深掘りする強み
企業の研修・人事課など
(能力開発・リスキング支援・組織開発・キャリア設計)
女性が持つADHD特性とキャリアカウンセラーの資格が活かせる

女性のADHD特性を生かせるのは金融機関の支店勤務ではなく、特定業務の専門分野や人事・総務・開発課が望める本店勤務が適切である。
ただし、→ 突発対応/複数タスク/長時間の集中 が必要な業務には注意。

最適な働き方:配置+ツール+時間割

① 配置変更

  • 「複数業務同時処理」より 単一業務担当
  • 後方のチェックではなく前方の案内/相談
  • ノルマより 顧客説明・相談中心の部署

② 時間割(タスクの時間指定)

理由
午前に集中業務(1本)脳のエネルギーが多い時間に集中
午後は単純作業や整理疲労時は細かい判断を避ける

③ ツール使用(合理的配慮)

  • メモの固定化(テンプレート化)
  • 二重チェックは人ではなくシステムで
  • 色分けルールを個人仕様に統一(逆に他人ルールで混乱)
診断後に企業へ伝える「合理的配慮」の言語例

(本人が言うのではなく、診断書+第三者の言葉で 伝えてもらうのが望ましい)

ADHD 特性により
①注意が分散する業務、②同時処理、③小さな確認作業の連続 が困難な状態。

一方で、人事や総務などや、特定業務の専門化(投資・外為・保険)など専門性を持つ個別業務、顧客説明、情報収集、集中業務 に強みを有する。
苦手業務の削減ではなく、適切な配置と業務範囲の明確化 により、安定した職務遂行が期待される。

医療の言葉で明文化すると、職場は受け入れやすい。

復職に向けて本人に伝えたいメッセージ

あなたが仕事に向いていなかったのではなく、向いていない “配置と環境” を押しつけられていただけ。

金融業務ができるかどうかではなく、あなたの特性が生きる配置で働けるか が重要です。

失敗を減らすことより、強みを使える働き方を増やすこと が、安定につながります。

最後に

診断は 原因探しではなく、適切な働き方を選ぶためのパスポート
本人の自己肯定感を保ちながら、制度と環境を味方につけるために使います。

これまでの情報すべてを統合して行う「まとめセッション」

目的は、①安心の形成、②多角的な理解の統合、③今後の行動計画の具体化です。

今日は、これまでのお話を一度まとめて、自分を理解し直す時間 にしたいと思います。
ここまで向き合ってきたのは、問題を解決するため、というより生き方を整える準備 でした。
一緒に振り返っていきましょう。

STEP
本人のこれまでの頑張りを言語化

━ 質問 ━

この数週間、気持ちや行動で変化したことを、1つでも良いので教えてください。

※小さなことを拾い上げて要約

━ 要約例 ━

「できた日」ではなく、自分と向き合おうとした日 が増えたことが、大切な変化です。

STEP
多角的な見立ての共有

脳の特性+これまでの経験が、今の困りやすさを作っているということです。

━ さらに一言ずつ ━

まず脳の面では、実行機能の疲労、過集中、注意の揺れ が起きやすいタイプです。

心の面では、「失敗すると嫌われる」という昔の不安 が、完璧や自己否定に繋がりやすくなっています。

そして育児では、自分が傷ついた経験を繰り返したくない という気持ちが、逆に苦しくさせていました。

━ 最後に ━

つまりこれは、性格の問題でも自己責任でもなく、脳と心の両面から起きている自然な反応
と言えます。

STEP
「問題」ではなく「強み」として再定義

特性は、困りごとだけではなく、情報収集の深さ・分析力・集中力・疑問を持てる力 などとして強みとしても現れています。

変えるのは「脳」ではなく、脳の使い方と環境 です。

※ “あなたは間違っていた” ではなく“合う環境を知らなかっただけ” を強調することです。

STEP
今後の方向性

《A. 医療との連携》

診断は病名ではなく、適切な環境調整・職場配慮を受けるためのパスポート として活用できます。

特に 金融機関での業務配置・負担の調整・非刺激薬の検討 は、生活の安定に役立つ可能性があります。

《B. 育児》

目指すのは、正しい母ではなく、修復できる母。
向き合えない日は「充電日」。
向き合える日は、短時間で濃く関わる。

《C. 自己否定・完璧主義》

自己否定は敵ではなく、失敗から守り続けた防衛 でした。
役割を卒業するために、30点・60点の練習 を続けましょう。

実行行動(具体例)

  • 育児:寝かしつけ中に「イヤホンを外す」
  • 自己否定:状態の言い換え(例:「ダメ」→「疲れてる」)
  • 仕事:診断後の配置相談を医療と連携して進める
  • 過集中:タイマー+「次の一手メモ」
STEP
本人に未来のイメージを描かせる

━ 質問 ━

もし、今よりも少しだけ「呼吸しやすい毎日」だったとしたら、どんな一日になっていそうですか?

※ 具体例を引き出し、未来の“呼吸しやすさ”を言語化。

STEP
最後の言葉(終結メッセージ)

ここまでの時間は、苦しみを直すための時間ではありませんでした。
自分の生き方と、子どもに受け渡す未来を選び直す時間 でした。

目指すのは完璧ではなく、やり直せる毎日。
失敗しても、関係が続く日々。

その第一歩を、今日まで一緒に作れて嬉しく思っています。
ここから、整えながら進んでいきましょう。

ADHD特性+実行機能支援+毒親再演防止を統合した心理教育

STEP
ADHDの困りごとは「努力不足」ではない

 ADHDとは…

  • 集中しすぎる or 失う
  • 行動の切り替えが苦手
  • 忘れ物・段取りが崩れやすい
  • ルールや時間管理で負担が大きい

“意思”ではなく脳の特性と負荷の種類

STEP
実行機能の疲れ=育児ができない日がある理由

実行機能とは

  • 片づける
  • 予定を守る
  • 優先順位をつける
  • マルチタスクをする
  • 計画→実行→切り替え

育児は 常に予測不可能=実行機能に最大の負荷

“できない日” は怠けではなく電池切れ

STEP
過集中は「才能」だが、育児では逆効果のことも

起きること

  • 夢中 → 育児が見えなくなる
  • 情報過多 → 子どもが後回し
  • 燃え尽き → イライラ → 罪悪感

過集中の活かし方

  • 育児中は “選べる集中” のみに切り替える
  • タイマー+中断メモをセット
STEP
「毒親再演」とは?

愛情があるのに傷つけてしまうメカニズム

子ども時代の傷つき

  • 「言うことを聞かないと嫌われる」
  • 「完璧じゃないと価値がない」

大人になると

  • 向けられなかった怒りが 子どもに向かう
  • 子どもを コントロールして安心しようとする
  • 自分の育児に「採点」をして苦しくなる

愛情不足ではなく、不安の再演

STEP
再演を止める鍵は「修復スキル」

親が完全である必要はない→ 失敗しても戻れる関係が愛着

修復の例

「さっき怒りすぎたね。
疲れてたんだ。もう一回やり直そう。」

修復がある親 →子どもは 「失敗しても大丈夫な人間」 に育つ

STEP
育児の目標は「正解」ではなく「呼吸できる親子」

NG:

  • 正しい声かけ
  • いつも冷静
  • 常に子ども最優先
  • 本通りに育てる

OK:

  • 短時間で濃く関わる
  • 向き合えない日は休む
  • 修復すればOK
  • できる範囲で続ける

親子が深呼吸できる時間を作ること

STEP
【実行機能 × 育児】今日からできる支援
行動ポイント
タイマー育児時間で区切る、量で区切らない
中断メモ「次はこれから」と書いて離れる
充電の宣言「5分休んで、また来るね」
育児中はイヤホン禁止“世界から消えない”ことが関係
料理は60点の日を作る生き方にグラデーションを作る
STEP
【毒親再演防止】今日からの習慣
状況言葉の変換
怒りそう「ちょっと休むね」
怒ってしまった「やり直そう」
子どもが反抗「そう思う日もあるよ」
失敗した「次、どうしようか?」
自分を責めた「疲れてたんだね」

行動を変えるより、言葉の空気を変える

STEP
「診断」はラベルではなく、生きやすさの選択権

診断の役割

  • 適切な配置・配慮を受ける権利になる
  • 自分の脳の使い方に合う選択ができる
  • 職場や家庭で負担を軽減できる
  • 自己否定から「脳の特性理解」へ転換

診断は 自分の生き方を主体的に選ぶためのパスポート

STEP
あなたが子どもに渡すものは

あなたが子どもに渡すものは完璧ではなく「戻って来られる安心」

できなかった日がある。
失敗した日もある。
それでも、
やり直せる親子でいられることが、最大の安心。

  • 正しさより「呼吸できる親子」。
  • それが毒親再演を断つ、一番の愛。
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