注意欠如・多動性症(ADHD)の架空例のケースから症状の理解と知識を学ぶ精神医学的物語-1弾
注意欠如多動性症(ADHD)物語
私は小さい頃から何かと人と違うことが多かった。友達もできず先生からも注意を受けることが多く、私は自分が変わっていると感じていた。しかし、その理由は長い間分からずにいた。
小学校、中学校、高校を意味深長で卒業し、大学に進学すると同時に私は独り暮らしを始めた。さらに、私は自分が変わっていると深く感じることになり、結果として遅刻やレポートの提出を忘れるなどのミスが多くなり、大学を留年してしまった。
親が留年のことを知り、私の部屋を訪ねてきた。私は何も考えずに普段通りの部屋にあがってもらったが、親に言われ改めて部屋が乱雑なゴミ屋敷のようになっていたことに気付いた。私はそのことも対人関係も生きづらさも感じていたので、親の言うがまま精神科を受診することに決めた。
診断の結果、私は注意欠如・多動性症(ADHD)であることが判明した。私はこれを聞いて、今までの多くのことが理解できて納得した。私が人と違っていた理由、なぜ友達ができなかったのか、なぜミスが多かったのか。そして、これからは、治療を受けながら自分を理解していくことができると前向きに考えた。
私は治療を受け始め、薬物療法と認知行動療法を受けることになった。最初の数ヶ月は薬物療法による副作用で眠気や頭痛、吐き気に苦しんだ。また、認知行動療法では、自分がどのように感じているのかを表現することが難しく、苦手なことであった。しかし、時間が経つにつれ、私は自分のことを理解することができるようになってきた。
そして、大学を何とか卒業した後、就職活動を始めた。面接では、ADHDであることをカミングアウトし、理解してくれる職場を探していたが、どの企業も受け入れに消極的であり、難しい現実にぶつかり何度も落ち込んでいた。しかし、ADHDを理解してくれる職場を見つけることができた。その会社は障害者にも理解のある職場で、仕事に支障が出ないように適切な配慮をしてくれた。最初は私が普通に見えてしまうためか同僚たちは驚いたが、病気を理解し職務を助けるために協力してくれている。例えば、会議の時間や提出日など、重要なことを常に教えてくれ優しく声をかけてくれている。
社会人としての生活を始めたが、薬物療法と認知行動療法を受けながら働くことができるか心配だった。しかし、私は治療によって自信を持つことができ、自分がどのようなことに注意を払う必要があるのかを理解することができるようになっていた。
ある日、自分の過去を思い出していた。小学校、中学校、高校と友達が少なく、変わり者と思われていた自分のこと、そして、大学を留年してしまったこと。そんな過去を持っていても、考え方を変えられたからこそ、繋がっているいることに気付いた。
「今まで自分を理解してくれる人がいなかったから、こんなに苦しんでいたんだ。でも、今は自分を理解してくれる人がいる。だから、少しずつでも前に進んでいける。」そう思いながら、仕事を続けられている喜びも感じている。
治療を振り返ってみると、認知行動療法はADHDの症状を認め、行動を変えることで症状が克服できるための治療法である。臨床心理士や心理カウンセラーが私の認知と思考パターンを変えることで、行動を変える手法である。例えば、自分が忘れ物をするというネガティブな思い込みを持っていた場合、それを肯定的な思い込みに変えることができる。そうすることで、自分が忘れ物をするわけではなく、注意力が散漫であるために忘れてしまうことを理解することができた。また、タスクを終えるための時間管理技術なども学んだ。一番の強みになったことは、自己肯定感を高めるための方法を学び、自分自身を肯定することで失敗への対処する方法を学んだことだった。
また、精神科医から薬物治療も勧められたことに最初は躊躇していたが、精神科医から「薬物治療を受けることで、あなたの生活が改善されることが期待できます」。と説明を受け治療を開始することにした。
薬物治療は、中枢神経系に作用して、注意力や衝動性を抑制する効果がある。私は薬物治療を受けることで、徐々に改善されていく生活に感謝した。
私は治療を受けながらも、自分を受け入れることができるようになったと同時に、自分がADHDであることを受け入れ、自分が助けを必要としていることを認めることができた。それによって、自分を理解してくれる人と出会い、生きることが楽しくなった。
私は、治療を受ける前と比較すると、段違いに生きることに前向きになり、自信を持って自分を表現するようになった。また、自分がADHDであることをカミングアウトすることで、同じような悩みを抱える人々に勇気を与えることができるのではないかとも思っている。
ADHDは、主に注意欠陥/多動性症として知られており、ICD-11およびDSM-5によって診断されます。この障害は、児童期に始まり、成人期まで続く神経発達障害の一種であり、運動性行動、注意力、自己調整などの認知的機能の欠陥が特徴です。
注意欠陥症状は、集中できず、継続的なタスクに取り組むことが困難であることを示します。また、忘れ物やタスクのスケジュール管理の問題があります。不適切な場面で過剰な運動性行動が現れることを示し、手足のばたつき、席を立ったり座ったり、よくしゃべることなどが挙げられます。
ADHDの疫学については、有病率は学齢期で3〜5%で成人期になると2〜2.5%と低下し、学齢期の男女比率は男性4〜5:女性1となりますが、成人期は男女差が少なくなり2:1程度になります。米国では約5〜7%、欧州では2〜5%の人口に存在するとされています。病因については、神経発達の遅れや遺伝的な要因、環境的な要因が考えられます。また、脳の前頭前野という部位における神経伝達物質の異常が、ADHDの発症に関係していると考えられています。
治療には、薬物療法や認知行動療法、行動療法などがあります。薬物療法には、中枢神経刺激薬が使用され、神経伝達物質の量を増やすことによって症状を改善します。また、認知行動療法では、問題解決、時間管理、タスク管理、社交的スキルなどのトレーニングが行われます。行動療法では、行動を修正するための手法が用いられ、例えば、タスクの分割や報酬を与えることで、望ましい行動を促します。
この物語によって、一般の方にもADHDを理解してもらえることを願っています。
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症状
診断のためには、注意欠如・多動性障害の症状が6ヶ月以上続き、日常生活に支障をきたしていることが必要です。詳しくは、DSM-5によると以下のような症状が挙げられます。
- 集中力がない、すぐに気が散る
- 計画を立てることが苦手で、仕事や学校で課題をこなすのに困難を感じる
- 聞き取ったり理解したりすることが難しく、物事の細かい部分に気づかない
- 組織化された活動を行うことが難しく、日常生活においても乱雑で整理整頓が苦手
- 座っていることができず、身体が落ち着かない
- よくしゃべり、相手を中断することが多い
- 他人のものを勝手に借りたり触ったりすることが多い
- 衝動的に行動することがある(例:危険なことをする、金銭的な問題を起こす)
ICD-11(国際疾病分類第11版)では、注意欠如多動性障害(ADHD)は「発達障害」として分類されています。以下はICD-11の診断基準に基づくADHDの詳細な説明です。
- 注意欠如症状
注意欠如症状とは、以下のいずれかが見られることです。
- 集中力が低下している。
- 情報処理に必要な注意を向けることが困難である。
- 意欲に欠け、タスクを完了することが困難である。
- 多動・衝動性症状
多動・衝動性症状とは、以下のいずれかが見られることです。
- 常に動いている、または落ち着かない。
- 冷静さを欠き、思考や行動について考えずに行動する。
- わがままで、他人に合わせることが困難である。
- 症状の開始時期
症状が常に存在するわけではなく、早期に開始され、継続的に発生することが重要です。
- 機能障害
症状が患者の日常生活に大きな障害を引き起こすことが必要です。
- 他の症状の排除
症状が他の精神疾患や医学的状態の影響によって引き起こされるわけではないことが必要です。
- 詳細な診断
症状の程度や影響、診断を確定するために行われた評価の詳細な記録が必要です。
注意欠如多動性障害の診断には、少なくとも6か月以上の症状が必要であり、日常生活や学業、職業などの領域で機能的障害を引き起こしていることが重要です。診断には、患者の病歴、行動評価、および神経心理学的テストなどが含まれる場合があります。
詳しくは、発達障害のページをご覧ください。