3時間無料対面カウンセリングを行っています。無料カウンセリング予約フォームでお申し込みください。ボタン

家族療法は心理問題が起きるパターンの修正

目次

家族療法のジェノグラム(家族関係図)の解説とコミュニケーション派・MRI派・構造派多世代派など7つの技法の比較

家族療法とは、個人の問題ではなく家族全体を一つの「文脈」、「システム」と捉え、コミュニケーションや関係性の改善を通じて問題解決を目指す心理療法です。

一般的なカウンセリングが「本人一人」に焦点を当てるのに対し、家族療法では家族も一緒に面接に参加し、お互いの影響や悪循環のパターンを変えていくのが特徴であり、家族を一つの有機的な繋がりとみなすことで、誰か一人が悪いのではなく、関係性のバランスや相互作用に問題があると考えます。

個人への支援に、「その方が家族で過ごす関係そのものに働きかける視点」を加えられないと、個人が面接の中で安心や気づきを得ても、帰宅後のやり取りが変わらず、再び苦しさが強まることがあります。家族療法は、この「個人の体験と、生活の中の関係との往復」を扱います。

今回は、3学派の技法に入る前の土台として、家族療法の理論、七つのアプローチの位置づけ、実践の基本的な流れを説明します。

家族療法では、個人の苦しみを、その人と重要な他者との関係や生活背景の中で理解します。

たとえば、本人の不安を理解するときに、その方の記憶、考え方、身体反応を調べることに加えて、「不安が高まったとき、家族はどう反応するか」「その反応を本人はどう受け取り、次に何をするか」を見ていきます。

支援の対象になるのは、会話だけではありません。役割分担、親子の距離、意思決定の仕方、介護負担、家族が共有する価値観、学校や職場との関係も含まれます。家族には血縁者だけでなく、本人にとって家族に相当する重要な人が含まれることもあります。

ここで区別したいのが、「誰を理解・支援の単位とするか」と「誰が面接に参加するか」です。

家族という関係のまとまりを支援の単位としていても、毎回全員が参加する必要はありません。本人のみ、親のみ、夫婦、親子など、目的と安全性に応じて構成を変えます。また、家族療法の目標は、必ずしも「家族が仲よく同居すること」ではありません。安心して意見を言えること、過度な負担を減らすこと、適切な距離を取ること、必要に応じて別々に暮らしながら協力することも目標になります。

理論の中心には、「相互作用」「循環」「文脈」があります。

スクロールできます
基本概念意味面接で注目すること
全体性・相互依存性一人の行動や状態の変化が、他の人の反応にも影響する「本人が変わったとき、周囲はどう応じたか」
円環的因果律反応が次の反応を生み、その結果が再び最初の人に影響する「何が起き、その次に誰がどう反応するか」
開放システム家族が学校、職場、地域、医療、文化などと影響を交換している「家族の外で、負担や支えになっているものは何か」
フィードバック行動の結果が戻ってきて、その後の行動を調整する「その対応の後、問題は弱まるか、強まるか」
恒常性と変化慣れた状態を維持する働きと、新しい状態へ移る働きがある「変えようとすると、何が元に戻そうとするか」
境界・下位システム個人、夫婦、親子、きょうだいなどの間に、役割や関与の範囲がある「誰が決め、誰が誰の問題を背負っているか」
家族ライフサイクル結婚、子の成長、独立、介護、死別などに伴い、必要な関係が変わる「以前は役立ったルールが、今も合っているか」

「開いたシステム」と「円環的因果律」は関連しますが、同じ意味ではありません。前者は家族と外部とのつながり、後者は反応が循環する過程を指します。

また、フィードバックの「正・負」は、善悪を意味しません。正のフィードバックは変化や差を増幅し、負のフィードバックは差を小さくして元の状態に近づける働きです。怒鳴り合いの激化は増幅の例ですが、新しい協力関係が広がることにも増幅は働きます。

恒常性についても、「家族が意図的に誰かを病気にしている」という意味ではありません。慣れた対応が自動的に繰り返され、結果として変化が起こりにくくなる、と理解する方が適切です。

家族療法七つの学派の比較

次は七つの学派の代表的な特徴です。実際には学派間に重なりがあり、同じ学派でも時期や治療者によって考え方が異なります。そのため七つの学派は、「変化の入口をどこに置くか」で比較すると理解しやすくなります。

スクロールできます
学派・アプローチ主に注目するもの変化の入口・代表的な方法
コミュニケーション派・MRI派今ここでのやり取りと、問題を維持している「試みられた解決」問題と対処の反復を具体化し、役立っていない対処を変える。リフレーミング、小さな行動課題
戦略派問題をめぐる行動の連鎖、関係上の力や階層、発達上の課題治療者が目標に向けて介入を設計する。課題、指示、やり取りの順序の変更
ミラノ派家族内の関係パターン、信念、各人による出来事の捉え方仮説形成、円環的質問、中立性。複数の見方を導入し、固定した理解を緩める
構造派境界、夫婦・親子などの下位システム、連合、養育上の役割ジョイニング、エナクトメント、境界づくり。面接内で実際のやり取りを扱う
多世代派世代を越える情緒的反応、三角関係、自己分化、情緒的遮断家系図・ジェノグラム、関係史の整理、反応に巻き込まれず自分の立場を取る練習
社会的ネットワーク派家族を取り巻く親族、友人、地域、支援者とのつながりネットワークを可視化し、本人の同意のもとで協力者や支援資源をつなぐ
ナラティブ・アプローチ人や家族について繰り返し語られる物語と、その社会・文化的背景問題の外在化、問題に支配されなかった出来事の探索、望む生き方の物語を厚くする

MRI派

MRI派は、ワツラウィック、ウィークランド、フィッシュらの短期療法に代表されます。「心配だから何度も確認するが、確認するほど相手が避け、さらに確認したくなる」といった、解決しようとする行動が問題を持続させる過程に注目します。コミュニケーション研究の流れはMRI短期療法より広いため、両者は完全な同義ではありません。

戦略派

戦略派ではヘイリー、マダネス、構造派ではミニューチンが代表的です。前者は「どんな介入を、どの順序で行うか」、後者は「誰と誰の関係や役割を組み替える必要があるか」に力点があります。構造派のエナクトメントは、家族に実際に話してもらい、その場のやり取りに働きかける方法です。親の役割を支えることも、子どもへの権威的支配を強めることとは区別します。

ミラノ派

ミラノ派では、セルヴィニ・パラツォーリ、ボスコロ、チェッキン、プラタらが知られています。「お父さんが黙ったとき、お母さんはどう受け取っているとあなたは思いますか」といった円環的質問によって、関係の捉え方を広げます。ただし、答えはその人の見方であって、他者の内心の証明ではありません。初期の「中立性」は、後に好奇心や仮説への柔軟性という方向へ展開しました。

多世代派

多世代派では、まずボーエンを軸に学ぶと整理しやすいと思います。自己分化とは、感情をなくすことでも家族から離れることでもなく、他者との関係を保ちながら、自分の考えや感情を区別し、自分の立場を取る力です。世代間の問題を扱うことは、親との再接触や和解を一律に求めることではありません。多世代的な潮流には、ボスゾルメニ=ナジの文脈療法などもあります。

社会的ネットワーク派

社会的ネットワーク派は、家族だけに解決を背負わせない点に特徴があります。古典的にはスペックやアトニーヴらの仕事があり、家族外の協力者を含めて支援を考えます。オープンダイアローグとも関連する視点がありますが、同じアプローチではありません。

ナラティブ

ナラティブでは、ホワイトとエプストンが代表的です。「この人は問題のある人だ」という固定化を緩め、問題が生活に及ぼす影響と、それに対して本人たちがしてきた工夫を尋ねます。単に前向きな話に置き換える方法ではなく、本人が大切にしていることを、具体的な経験から言葉にしていきます。

初期のシステム論

初期のシステム論では、治療者が家族を観察し、パターンを見立て、介入する考え方が前面にありました。その後は、治療者の質問や態度そのものが家族の応答を変えることにも注意が向けられました。これは、二次サイバネティクスと呼ばれる視点につながります。

たとえば、「お母さんの過干渉が原因ですね」と言うことと、「助けようとする気持ちが、どの場面では支えになり、どの場面では負担になるのでしょう」と尋ねることでは、その後の会話が変わります。

したがって、見立ては家族に宣告する結論ではなく、本人たちと確かめ、修正する仮説として扱います。「この理解は皆さんの経験に合っていますか」「この話し方で、言いづらくなっている方はいませんか」と、面接の影響も確認します。

歴史的な逆説的介入や症状処方も学習対象にはなりますが、表面的な技法だけを取り出して用いるものではありません。とりわけ威嚇、虐待、身体的危険を伴う行動を、変化のための課題として勧めることはできません。

実践の流れは、各学派を横断すると、次のように整理できます。

これは特定の学派の正式な手順ではなく、共通の見取り図です。

  1. 参加の意思と安全を確認する。
    誰が何を相談したいのか、参加は自発的か、一緒の場で話して不利益が生じないかを確かめます。威嚇や報復への恐れがある場合には、全員同席を前提にしません。
  2. 一人ひとりとの協力関係をつくる。
    最もよく話す人だけでなく、黙っている人や子どもの体験も把握します。発言しない権利も尊重します。
  3. 困り事を具体的な場面として整理する。
    「仲が悪い」を、いつ、どこで、誰が何をし、その次に何が起こるかという出来事に置き換えます。同時に、うまく過ごせている場面も調べます。
  4. 関係・個人・生活環境を含む仮説をつくる。
    相互作用だけでなく、身体疾患、発達特性、トラウマ、疲労、経済的負担なども検討します。
  5. 小さく具体的な目標を合意する。
    「家族全員が理解し合う」よりも、「返事を急がせず待つ」「子どもを夫婦の伝言役にしない」など、行動として確かめられる目標にします。
  6. 面接内や日常で新しい応答を試す。
    質問、会話の練習、役割調整、ネットワークへの働きかけなどを、見立てと目標に合わせて選びます。
  7. 効果と負担を、各人について確認する。
    会話が静かになっただけで成功とは判断せず、恐怖や諦めが増えていないか、誰かの負担だけが増えていないかも評価します。

家族療法のジェノグラム

家族療法や心理社会的アセスメントにおけるジェノグラム(家族関係図)とは、誰と誰が家族なのかに加えて、「困ったときに誰が誰を頼るのか」「誰が仲裁を引き受けるのか」「その関係は、いつから変わったのか」を一緒に見ていくものです。中心となる人物(プロバンド)を起点に、原則として3世代以上にわたる血縁・婚姻関係や世代間のパターン・人間関係を視覚的に図式化したものです。

マレー・ボーエン(Murray Bowen)が提唱した「ファミリー・ダイアグラム」を背景として、後にジェノグラムが発展しました。家族の価値観、行動パターン、感情のつながりや世代間伝達(世代を超えて繰り返される問題や病理、家族の支え合い、困難を乗り切る力、仕事への姿勢、感情を表現する習慣なども検討対象)を理解するための基本ツールとして用いられます。

ジェノグラムの基本記号

ジェノグラムでは、標準化されたシンプルな記号と線を使用して家族関係を表します。

項目基本的な表し方と注意点
男性・女性伝統的には男性を四角( □ )、女性を丸( 〇 )で示します。性別情報やジェンダーについては、本人の説明を尊重し、必要に応じて注記します。
中心となる人物二重枠、太枠、矢印などで示します。中心人物であることは、その人に問題の原因があるという意味ではありません。
死亡人物記号に「×」を重ね、死亡年や死亡時年齢を添える方法が一般的です。黒塗りは疾患など別の意味に使われる場合があるため、死亡の表記として一律には扱いません。
婚姻パートナーを横線で結び、必要に応じて婚姻年を添えます。男性が左、女性が右は伝統的な配置上の慣例です。
別居・離婚関係線に斜線1本( / )で別居、2本( // )で離婚を表す方法が広く使われます。年月も添えると経過が分かります。
同居同じ家で生活する人を囲みます。婚姻していることと、同じ家に住んでいることを区別(同居しているメンバーの範囲を大きな点線(または実線)の円で囲む)します。
親子・きょうだいパートナー間の線から下へ親子線を伸ばし、きょうだいは通常、左から出生順に並べます。
養子・里子・再婚家族実親との関係、法的な親子関係、実際の養育関係を区別して記録します。

「疎遠・対立」は分けます。疎遠、葛藤、融合などは、異なる関係として扱われます。ただし、頻繁に連絡するだけで「融合」、別居しているだけで「情緒的断絶」と判断することはできません。「過密」と「共依存」も、機械的に同一視しないことが重要です。

関係の質よく使われる表現確認したい内容
親密平行な2本線など安心して相談できるか、互いの違いも認められるか
融合・過度の巻き込まれ平行な3本線など相手の気持ちと自分の責任を分けにくいか
疎遠点線など接触や会話が少ない状態か
葛藤・対立ギザギザの線などどのような場面で言い争いや緊張が起きるか
情緒的断絶途中を遮断した線など連絡を断った経緯や、その後の感情はどうか
親密さと葛藤の併存親密線と葛藤線の組み合わせ頻繁に関わりながら衝突も多いか

ジェノグラムに書き込む情報は、3層に分けると整理できます

記録する内容面接での問いの例
第1層:家族の構成年齢、出生順、婚姻、離婚、死亡、同居、養育者「子どもの頃、どなたと暮らしていましたか」
第2層:関係と役割相談相手、仲裁役、介護役、距離、対立、支援「家族で困ったことが起きると、誰が動きますか」
第3層:時間と出来事就職、転居、出産、病気、失職、死別、関係の変化「その出来事の前後で、家族の関わりは変わりましたか」

さらに、「家族を取り巻く条件」を余白に添えます。経済状況、長時間労働、地域の慣習、介護資源の不足などです。これにより、負担の集中を個人の性格だけで説明せずに済みます。

3世代は有用な目安ですが、情報が分からない場合は空欄のままで構いません。本人が家族と考える養育者や重要な人物も含め、必要な範囲から描き始めます。

作成例:家族の仲裁を引き受けて疲れている、35歳女性

以下は、説明のための架空事例です。

Aさんは35歳の女性で、「母から父への不満を聞くことが多く、夫と意見が違うときにも、自分が折れなければと思ってしまう」と相談に来たとします。

まず、関係への評価を入れず、家族の構成を描きます。

下図は画面上で読みやすくするための簡略図です。四角・丸や線の配置は、正式な手描きのジェノグラムを完全には再現していません。「婚姻」と書かれた箇所がパートナー間の結びつきで、そこから子どもにつながっています。

実際に紙へ描くときは、祖父母を上段、父母を中段、Aさんと弟を下段に置き、Aさんを二重丸にします。父母のきょうだいや夫の原家族も、相談内容に関係する場合は追加します。

次に、Aさんの話をもとに情報を添えます。

家族・関係聞き取れた内容
父方祖父と父父は「弱音を吐かずに働くように」と言われて育ったと、Aさんが聞いている。
母方祖母と母母は若い頃から、祖母の夫婦間の不満を聞いていたと話している。
父と母意見が合わないと、父は会話をやめ、母は話し合いを求めることが多い。
母とAさん母は夫婦の問題をAさんに電話で話す。Aさんは疲れていても切りにくい。
Aさんと弟弟は実家への連絡が少ない。ただし、頼まれた手続きには協力する。
Aさんと夫夫が黙ると、Aさんは「怒らせたかもしれない」と考えて先に謝る。
Aさんの支え夫と落ち着いて話せる日もあり、友人には遠慮せずに気持ちを話せる。

ここで大切なのは、情報の出どころを残すことです。

「父は感情を表現しない人」と固定するより、「Aさんによれば、父は意見が合わないと会話をやめることが多い」と書きます。祖父母世代についても、本人が見たことと、家族から聞いたことを区別します。

この図から、どのような見立てを立てるのか

見立ては、図から確定する結論ではなく、面接で確かめていく仮説です。

この架空事例では、次のような問いが生まれます。

検討する仮説さらに確かめる質問
母とAさんに、「上の世代の不満を受け止める役割」が繰り返されている可能性「お母様が祖母の話を聞いていたことと、今のご自分には、似ている点がありますか。違う点もありますか」
父母間の緊張が高まると、Aさんが間に入る可能性「お母様から電話が来る前には、どのようなことが起きていますか」
Aさんは、相手の沈黙を関係悪化の合図として受け取りやすい可能性「ご主人が黙ると、最初にどのような意味に感じますか。ご主人の説明はどうでしょう」
弟は距離を取りながら、実務面では支援している可能性「連絡が少ないこと以外に、弟さんが担っていることはありますか」
Aさんには、対等に話せる関係を築く力もある「友人といるときは、なぜ断ったり希望を言ったりしやすいのでしょう」

「似ているところ」だけでなく、「違うところ」「例外」「うまくいっているところ」を必ず探します。そうすることで、家族全体を問題の物語だけで捉えることを避けられます。

ボーエン理論の三角関係は、二者間の緊張が第三者との関係に移り、そこで調整される過程を理解する概念です。この事例なら、父母間の緊張と母・Aさんの関わりの連動を調べます。3人が親しいというだけで、問題のある三角関係とは判断しません。

また、祖母と母、母とAさんに類似が見つかっても、それだけで「祖母が原因」「病理が遺伝した」とは言えません。この図で分かるのは、あくまで語られた経験と関係のパターンです。

時間軸を添えると、「なぜ今、苦しくなったのか」が見えやすくなります

同じ家族でも、時期によって関係は変化します。先ほどの架空事例に、次のような年表を添えたとします。

時期出来事Aさんが話す変化
Aさん15歳父の仕事が忙しくなる母から父への不満を聞くことが増えた。
28歳Aさんが実家を出る母からの電話が増え、応じないと罪悪感があった。
32歳Aさんが結婚母との電話と夫婦の時間の調整が難しくなった。
34歳父が退職父母が一緒にいる時間が増え、母からの相談も増えた。
現在Aさんの仕事が繁忙期同じ電話の頻度でも、負担が大きく感じられる。

このように並べると、「Aさんが断れない」という説明に加えて、家族の生活の変化と、Aさん自身の余力の減少が重なっている可能性が見えてきます。

ただし、出来事と困りごとが同じ時期に起きたことは、因果関係の証明ではありません。「この頃に何が変わったのでしょう」と確かめる手がかりにします。

面接では、どのような順番で作成するか

以下は、整理した進め方の例です。標準化された治療手順ではありません。

目的を共有する

最初に、「家族のつながりや、これまで担ってきた役割を一緒に整理するために描く」ことを説明します。分からないことは空欄にでき、話したくないことは扱わなくてよいと伝えます。

誰に見せる記録なのかも確認します。個人面接で作ったものを、本人への確認なしに家族へ共有しないことが大切です。

現在の生活から始める

現在の同居者、相談相手、負担になっている関係、助けになる人から確認します。最初から幼少期のつらい経験を詳しく尋ねる必要はありません。

親世代、祖父母世代へ広げる

年齢や家族構成を先に置き、それから「どのような暮らしだったか」「困ったときに誰が助けたか」を聞いていきます。

関係を、具体的な行動として尋ねる

「お母様とは共依存ですか」と尋ねるより、「電話はどのくらいありますか」「出られないときは何が起きますか」「そのとき、どう感じますか」と確認します。

線は、その話を整理した後に入れます。本人と相談しながら、「近い関係ですが、断りにくさもある、と書いてよいでしょうか」と確認する方法が使えます。

出来事と関係の変化をつなぐ

「いつから」「その前後で」「誰の役割が変わったか」を確認します。現在の関係と過去の関係が大きく違う場合は、図を分ける方が明確です。

本人の気づきを先に聞く

支援者が解釈を説明する前に、「こうして眺めると、どこが気になりますか」「思っていたことと違うところはありますか」と尋ねます。支援者の仮説が本人の経験に合わなければ、修正します。

今の生活で試せる、小さな選択につなげる

図を完成させることを終点にせず、現在の困りごとに戻ります。その場で変化を決めたくなければ、「今日は気づきを持ち帰る」でも構いません。

作成後の介入は、「自分の関わり方を選べること」につなげます

先ほどのAさんであれば、本人が望み、安全に実行できる範囲で、次のような選択を検討できます。

図から見えてきた負担試せる選択の例
母からの電話に、疲れていても応じてしまう話せる時間を自分で決め、難しいときは別の時間を伝える。
父母の間の伝言役になっている両親それぞれの話を聞くことと、相手を説得する役割を分ける。
夫が黙ると、すぐに自分を責める謝る前に、夫が何を考えているのか、休憩が必要なのかを確認する。
自分だけが家族を支えると感じる弟や外部サービスなど、実際に協力を求められる相手を整理する。

ボーエンのいう自己分化は、感情に気づきながら自分の考えを保ち、他者との関係の中で行動を選ぶという方向性を含みます。家族への同意や反発だけで意思決定しないことが、重要な視点です。

なお、暴力・虐待・強い支配がある場合には、安全のために距離を取ることが必要です。それを「分化が低い」「断絶だから改善すべき」と評価したり、家族との再接触を一律に課題にしたりしません。また、暴力は「お互いの関係の問題」という表現だけで扱わず、誰が誰に何をしたかを明確に記録します。

実践で取り入れる際に、特に大切にすること

ジェノグラムには、家族の情報を整理する働きと、本人が自分の経験を眺め直す働きがあります。ただし、作成しただけで症状の原因や家族の診断が確定するわけではありません。

記録では、次の3つを分けると、見立てが丁寧になります。

区別するもの記録例
報告された出来事・行動「母から週4回程度電話がある。Aさん談」
本人が感じている意味「出ないと、母を見捨てた気がする」
支援者の仮説「母の感情への責任を強く感じている可能性。今後確認」

そして、図には「相談できた叔母」「実務を手伝う弟」「意見が違っても話し合えた夫」なども残します。

セルフチェックとジェノグラムワーク

家族のつながりを振り返るセルフチェックとジェノグラムワーク

家族の中で大切にされてきたこと、自分が担ってきた役割、支えになっている関係を整理します。答えた内容を家族の図に移し、今の生活で大切にしたいことを考えます。

これは心理教育のための独自ワークです。信頼性・妥当性を検証した心理検査ではなく、診断、重症度の判定、世代間伝達の証明には使いません。

記入日:     年   月   日  呼び名:         

今日、考えてみたい家族・関係:                 
振り返る時期:□ 最近1か月 □ その他(            )

最初に思い浮かぶ人を書きます

実名でなく、続柄やイニシャルで構いません。血縁に限らず、養育者や大切な人も含められます。

呼び名や続柄今の関わりや同居の有無
○○
○○
○○

見せてもよい相手:          見せたくない部分:        

家族の価値観と自分の役割

1ページ目で選んだ家族と時期を思い浮かべ、各項目に一つ印を付けます。過去の出来事は、今振り返ってどう感じるかで答えます。空欄でも構いません。

家族で大切にされてきたこと

01 家族の希望と自分の希望が違うと、迷うことがあります。

□ あてはまる □ 少し □ あてはまらない □ 不明・保留

02 家族の中には、口にしなくても守る決まりがあると感じます。

□ あてはまる □ 少し □ あてはまらない □ 不明・保留

03 休むことや助けを求めることに、ためらいがあります。

□ あてはまる □ 少し □ あてはまらない □ 不明・保留

04 これからも大切にしたい、家族から教わったことがあります。

□ あてはまる □ 少し □ あてはまらない □ 不明・保留

自分が担ってきた役割

05 家族同士が言い争うと、私が間に入ることがあります。

□ あてはまる □ 少し □ あてはまらない □ 不明・保留

06 誰かの話や不満を聞き続けて、疲れることがあります。

□ あてはまる □ 少し □ あてはまらない □ 不明・保留

07 自分の予定を変えて、家族の用事を引き受けることがあります。

□ あてはまる □ 少し □ あてはまらない □ 不明・保留

08 家族の役割を、相談して分け直せることがあります。

□ あてはまる □ 少し □ あてはまらない □ 不明・保留

気持ちのつながりと距離

09 家族の機嫌が変わると、自分の気持ちも大きく揺れます。

□ あてはまる □ 少し □ あてはまらない □ 不明・保留

10 希望や断りを伝えると、関係が悪くなるのではと心配します。

□ あてはまる □ 少し □ あてはまらない □ 不明・保留

11 家族と距離を取ることで、落ち着けることがあります。

□ あてはまる □ 少し □ あてはまらない □ 不明・保留

12 意見が違っても、安心して話せる家族や大切な人がいます。

□ あてはまる □ 少し □ あてはまらない □ 不明・保留

気になった番号:     支えや強みと感じた番号:     

関わりのパターンと支え

1ページ目で選んだ家族と時期を思い浮かべ、各項目に一つ印を付けます。過去の出来事は、今振り返ってどう感じるかで答えます。空欄でも構いません。

困ったときのやり取り

13 意見が合わないと、話をやめたり、その場を離れたりします。

□ あてはまる □ 少し □ あてはまらない □ 不明・保留

14 相手が黙ると、返事や説明を強く求めたくなります。

□ あてはまる □ 少し □ あてはまらない □ 不明・保留

15 二人の問題を、別の家族を通して伝えることがあります。

□ あてはまる □ 少し □ あてはまらない □ 不明・保留

16 落ち着いてから、改めて話せることがあります。

□ あてはまる □ 少し □ あてはまらない □ 不明・保留

出来事と世代のつながり

17 引っ越し、病気、死別などを機に、役割が変わったことがあります。

□ あてはまる □ 少し □ あてはまらない □ 不明・保留

18 親や祖父母の話に、自分と似た役割や関わり方を感じることがあります。

□ あてはまる □ 少し □ あてはまらない □ 不明・保留

19 前の世代とは違う選び方ができたことがあります。

□ あてはまる □ 少し □ あてはまらない □ 不明・保留

20 家族が困難を乗り越えた工夫を、聞いたり見たりしたことがあります。

□ あてはまる □ 少し □ あてはまらない □ 不明・保留

支えと自分の選択

21 家族の外にも、相談できる人や場所があります。

□ あてはまる □ 少し □ あてはまらない □ 不明・保留

22 負担があるとき、助けを頼めることがあります。

□ あてはまる □ 少し □ あてはまらない □ 不明・保留

23 引き受けることと、引き受けないことを選べる場面があります。

□ あてはまる □ 少し □ あてはまらない □ 不明・保留

24 これから大切にしたい、自分なりの関わり方があります。

□ あてはまる □ 少し □ あてはまらない □ 不明・保留

気になった番号:     支えや強みと感じた番号:     

答えを家族の図に移します

最初に自分を描き、親や養育者、その上の世代を上方向に加えます。きょうだい・パートナー・子どもは該当する人だけ加えます。3世代は目安です。分からない人物や関係は空欄にしてください。

基本記号:□ 男性 ○ 女性 本人は二重枠 死亡は記号に×と年を添えます。
性別の表し方に迷うときは、名前だけでも構いません。婚姻は横線、親子は下向きの線でつなぎます。養育・養子・同居などは言葉でも区別します。

このワークでは関係の質を短い言葉で添えます。例:「相談できる」「断りにくい」「距離がある」。いつのことか、誰の見方かも書きます。

祖父母などの世代

親や養育者などの世代

私ときょうだいとパートナーなど

子どもや大切な人など

気になる項目の番号を、関係する人や線のそばに書きます。支えになる人には「支え」と添えます。同居者は囲み、作成日を書きます。

今の私の見方です。家族の気持ちや事実が、これだけで確定するわけではありません。

出来事と世代を比べます

変化のあった出来事を一つか二つ選びます

話せる範囲で書きます。出来事の前後で変化があっても、その出来事が原因と決まるわけではありません。仕事・経済・地域の事情も含めて考えます。

いつ頃出来事前後で変わった関わりや役割
○○
○○
○○

一つのテーマを世代で比べます

テーマの例:助けを頼むこと、けんかの後の話し方、介護の分担、喜び方。
選んだテーマ:                         

世代知っていることと情報の出どころ
祖父母など
親や養育者など

情報の出どころは「自分で経験」「誰かから聞いた」「推測」「不明」を添えます。知らないことを埋める必要はありません。

似ている点:

________________________________________________________________

違う点や、うまくいった例外:

________________________________________________________________

受け継いでいきたい支えや工夫:

________________________________________________________________

気づきとこれからの選択を整理します

チェックの多さを評価せず、気になったことを一つ選んで書きます。どの答えにも、その時の事情があります。

選んだ項目と具体的な場面

________________________________________________________________

________________________________________________________________

そのとき感じることや身体の反応

________________________________________________________________

________________________________________________________________

これまでの関わり方が守ってきたものや助けたこと

________________________________________________________________

________________________________________________________________

今は負担になっていること

________________________________________________________________

________________________________________________________________

続けたいことと少し変えたいこと

________________________________________________________________

________________________________________________________________

次の一歩は自分で選びます

□ 今日は気づきを持ち帰る □ 支援者と考える □ 小さく試す
試すなら何を、いつ、誰の助けを借りて:

________________________________________________________________

難しかったときの戻り方や相談先:

________________________________________________________________

今の状態:□ 落ち着いている □ 少し疲れた □ 休みたい
この後に自分をいたわること:                   

記入例

以下は架空例です。自分の家族を、この例に当てはめる必要はありません。

Aさんが選んだ項目

Aさんは35歳です。「06 誰かの話や不満を聞き続けて、疲れることがあります」に印を付けました。母の電話を聞いていると、自分の夕食が遅くなることが気になっています。

図に添えた言葉

母とAさんの間に「母から父の不満を聞く。Aさんの話では週4回程度」と書きました。夫には「一緒に散歩すると落ち着く」、友人には「断っても関係が続く」と添えました。

世代を比べて気づいたこと

母が祖母の相談を聞いていたことは、母から聞いた話です。Aさんは「似ているかもしれない」と感じましたが、祖母と母の当時の事情は分からないため、不明としました。自分には、家族の外にも相談相手がいるという違いがありました。

一つの場面を整理しました

書くところAさんの記入例
具体的な場面夕食の準備中に母から電話があり、40分話した。
感じたこと疲れた。切ると母が寂しがる気がした。
守ってきたもの母を気にかける気持ち。つながっている安心。
今の負担食事や休息を後回しにしてしまう。
小さな選択余裕がある日に、今日は10分なら話せると伝えてみる。
難しかったとき無理に続けず、支援者と別の方法を考える。

この例から母の病気、家族の責任、世代間伝達の原因が分かるわけではありません。支援の焦点は、Aさんが自分の事情も大切にして選べることです。

導入と分量の調整

本人が扱いたい関係と目的を先に確認します。初回は全ページを課さず、1ページ目と気になる数項目だけでも使えます。目安はチェック10〜15分、図と対話15〜30分ですが、所要時間より本人の負担を優先します。成人向けであり、子どもにそのまま実施しません。

問いを開いたままにします

「どの場面でそう感じますか」「そうならないときはありますか」「そのやり方は何を助けてきましたか」と尋ねます。親密さを融合、距離を断絶と即断せず、文化、経済、介護負担、本人の選好を確認します。世代間の一致は仮説の手がかりであり、因果・遺伝・診断を意味しません。

記録を分けます

本人の経験・他者から聞いた話・本人の意味づけ・支援者の仮説を区別し、情報源と時期を添えます。家族間で説明が異なる場合は、それぞれの見方として残します。未知の家族歴や記憶を推測で埋めたり、誘導して思い出させたりしません。

安全と共有の範囲

暴力、虐待、強い支配が疑われる場合は、共同記入や関係改善の課題より個別の安全確認を優先します。暴力の責任を双方のやり取りに均等化しません。安全のための距離を問題視せず、家族への連絡・和解を課題にしません。強い動揺や現実感の低下があれば中断し、必要な支援につなぎます。

記入内容を誰が保管し、誰が見るかを確認します。本人の同意なく家族に見せる運用は避けます。例外的な情報共有義務がある場合は、適用される規則に沿って説明します。家族の診断名を未確認のまま記入させません。

MRI派家族療法(コミュニケーション家族療法)

MRI派を理解する中心は、「困り事に対して行ってきた解決努力を調べ、その中に問題を持続させている働きがあれば、その循環を変える」という考え方です。

まず、コミュニケーション理論とMRI短期療法を、二つの層として捉えると理解しやすくなります。

MRIは、米国パロアルトのMental Research Instituteを指します。背景にはベイトソンらのコミュニケーション研究があり、ジャクソン、ワツラウィック、ウィークランド、フィッシュらの仕事を通じて、相互作用に着目する理論と短期療法が発展しました。

コミュニケーション理論は、「人と人とのやり取りが、どのように関係を形づくるか」を考える土台です。その土台を臨床に焦点化したMRI短期療法では、「現在の困り事を維持している反復を、どこから変えられるか」を検討します。現在のBrief Therapy Centerも、役立たなかった解決努力を同定して変えることをモデルの中心に置いています。

したがって、MRI派の家族療法は、話し方の練習だけをするものではありません。「説明する」「黙る」「確認する」「代わりに行う」「待つ」「避ける」といった行動が、相手の次の応答にどう影響しているかを扱います。

また、家族全員の参加が必須というわけではありません。変化を望み、問題に関わる自分の対応を変えられる人と面接を始めることもできます。

コミュニケーション理論では、言葉の内容だけでなく、やり取りの成り立ちを見ます。

ワツラウィック、ビーヴィン、ジャクソンは、次の五つをコミュニケーションについての基本的な命題として提示しました。これらは臨床的に観察するための枠組みであり、すべての人間関係を例外なく説明する診断基準ではありません。

スクロールできます
命題理解の要点面接での着眼点
コミュニケーションしないことはできない相互作用の場では、沈黙や退出も相手に何らかの意味として受け取られる発言のないとき、相手は何を受け取っているか
内容と関係の側面がある同じ言葉でも、頼み事、命令、気遣いなどとして受け取られ方が変わる「何を言ったか」と「どのような関係のメッセージとして届いたか」
やり取りの区切り方が異なる各人が、自分の行動を相手への反応として説明するそれぞれが、どこを始まりと考えているか
デジタルとアナログの様式がある言語のような記号的表現と、声・表情・身振りなどが組み合わさる言葉と伝え方の組合せがどう受け取られるか
対称的・相補的な相互作用がある似た立場で応じ合う関係と、異なる役割が組み合う関係がある張り合いが激化していないか、役割が固定していないか

たとえば、「何でも話していいよ」という言葉の後に、話すたびに訂正や説教が続くと、聞き手には「話してもよいが、期待に合う内容だけ」という関係のメッセージとして届く可能性があります。

ただし、治療者が「本当はそういう意味ですね」と決めるのではなく、

「『何でも話していい』と言われたとき、どのように受け取りましたか」

「話し始めた後、どのあたりから話しにくくなりましたか」

と確かめます。送る側の意図と、受け取る側への影響を分けて理解することが重要です。

また、沈黙が相手に影響することは、沈黙した人が意図的に操作していることを意味しません。対称性・相補性も、それ自体で健康・不健康が決まるものではありません。状況に応じて柔軟に変えられるかが大切です。

MRI派の見立てでは、「困難」と「困難への対応」を分けて調べます。

生活には、意見の違い、予定の変更、失敗、不安などが生じます。これらに対する対応が役立つこともあれば、当初は役立った対応が、繰り返すうちに逆効果になることもあります。

MRI派が注目するのは、後者です。

学習用に、同居する成人の兄弟AさんとBさんが、共用スペースの片づけをめぐって対立している場面を考えます。

経過観察できる行動
困り事が起きる共用テーブルにBさんの物が残っている
Aさんが解決を試みる片づけるよう繰り返し説明する
Bさんが応答する理由を説明したり、話を切り上げたりする
Aさんが対応を強める分かってもらおうとして、説明をさらに詳しくする
やり取りが続くBさんが会話を避け、片づけも話し合いも進まない

この場合、「物が残る」という生活上の問題と、「説明と回避が繰り返される」という相互作用上の問題を区別します。

Aさんの説明を、初めから問題の原因と決めるわけではありません。説明が役立った場面、Bさんが片づけられない事情、実際の分担の公平さも調べます。そのうえで、説明を増やすほど会話が避けられ、問題も解決しないという反復が確認できれば、そこを介入候補にするという順序です。

この「試みられた解決」は、善意か悪意かではなく、結果としてどう働いているかによって評価します。

同じ解決努力は、言い方を変えても続いていることがあります。

「叱るのをやめて、優しく長く説明するようにしました」という変化があっても、その基底に「相手が納得するまで説得を続ける」という共通点が残っていることがあります。

MRI派では、この共通点を見抜くことが重要です。

表面上の異なる対応共通する解決努力の可能性
注意する、説教する、理由を詳しく説明する相手を説得して納得させようとする
質問する、電話する、メッセージを重ねる確認によって不確実さをなくそうとする
励ます、気晴らしを勧める、明るく振る舞わせる相手のつらい感情を早く消そうとする
代行する、先回りする、失敗を防ぐ本人が困らないように周囲が管理する

これらの行動が常に悪いわけではありません。何に対して、どの程度行い、その直後と後日に何が起きているかによって意味が変わります。必要な援助まで「やめるべき解決努力」に分類しないことが大切です。

一次変化と二次変化は、「同じ対応を調整すること」と「対応を支えるルールを変えること」の違いです。

一次変化は、同じ枠組みの中で量や程度を変えることです。たとえば、相手が納得するまで説明する方針を保ちながら、説明を短くする、穏やかにする、といった変化です。

二次変化では、「実行のためには、まず相手を納得させなければならない」という前提そのものを変えます。たとえば、納得を一致させることから、互いに実行可能な役割と期限を具体的に決めることへ移ります。

ただし、「声をかける回数を減らす」ことが必ず一次変化になるわけではありません。それによって関係のルールが変わるなら、二次変化につながる可能性があります。技法の見た目ではなく、何が維持され、何が変わったかで判断します。

MRI派でいう「180度の転換」も、単純に反対の行動をすることではありません。問題を維持してきた解決努力の方向から離れる、という意味で理解してください。

実践では、最初に「誰が、何に困って、何を変えたいのか」を明確にします。

家族面接では、相談申込者と、問題があると指摘されている人と、変化を望む人が一致しないことがあります。

初回では、各人に次のように尋ねます。

  • 「今日は、どのようなことが少し変われば、相談に来た意味があると思いますか」
  • 「そのことで、あなたご自身は何に一番困っていますか」
  • 「今回、相談しようと思ったきっかけは何でしたか」
  • 「ご自分の対応であれば、どの部分を一緒に考えられそうですか」

ここで、「Bさんをちゃんとさせてください」という依頼を、そのまま治療目標にはしません。

「Bさんがどうなればよいかに加えて、今の生活の何が変わると、Aさんの困り事が減るでしょうか」

と尋ね、支援可能な目標に具体化します。

一緒に話せる条件、同意、守秘の扱いも初回に確認します。威嚇や報復への恐れがある場合は、通常の相互調整の課題を出す前に面接構成を見直します。これはMRI派に限らず、家族面接を成立させる条件です。

次に、最近の一場面を、出来事の順序に沿って細かく聞きます。

「いつも無責任です」「家族関係が悪いです」といった説明から、観察できる場面へ移ります。

「一番最近それが起きたのは、いつでしたか」

「最初に、どなたが何と言いましたか」

「そのとき、相手は何と言いましたか」

「それを聞いて、あなたは次にどうしましたか」

「そのやり取りは、どう終わりましたか」

質問の目的は、細部を集めること自体ではありません。どの行動が次の行動を引き出し、何が繰り返されるのかを把握することです。

気持ちも尋ねますが、気持ちの説明だけで終わらせず、「その不安が出たとき、実際には何をしましたか」と行動につなげます。

面接内でも同じパターンが現れたら、丁寧に確かめる材料になります。

「今、Aさんが説明を追加されて、Bさんが話を終えようとされたように見えました。ご自宅でも似たことがありますか。それとも、ここでは違いますか」

面接内の数分を、家庭全体の証拠として決めつけないことも必要です。

三つ目に、これまでの解決努力を、その効果とともに調べます。

「いろいろ試しました」という言葉を、具体化していきます。

「うまくいかないとき、まず何をしてきましたか」

「それで変わらないと、次にはどうしましたか」

「他のご家族は何をしましたか」

「一時的には役立ちましたか。その後はどうなりましたか」

「相談先で勧められたことで、続けているものはありますか」

治療者や支援者からの助言も対象になります。たとえば、「もっとよく話し合ってください」という助言が、すでに疲弊している説得の反復を増やしている場合も考えられます。

逆に、役立った対応は残します。MRI派の見立ては、「家族の対応に問題を見つけること」ではなく、役立つものと、持続・増幅に関わるものを区別する作業です。

四つ目に、「最小限、何が変われば前進か」を決めます。

目標は、家族全体の理想像よりも、生活の中で確認できる変化にします。

抽象的な希望確認できる目標の例
お互いを理解したい一つの依頼について、実行するか、難しいかを返答できる
責任感を持ってほしい合意した共用部分の片づけを、決めた時点までに行う
口論をなくしたい同じ話題で説明と反論を繰り返す時間を短くする
家族を大切にしてほしい予定変更が必要なとき、合意した方法で知らせる

ここで大切なのは、静かになったことだけを改善としないことです。諦めて発言しなくなったのであれば、本人の負担は減っていないかもしれません。問題の頻度や持続時間とともに、実際の生活上の支障や各人の負担を確認します。

五つ目に、本人の「立場」を理解してから、介入を提案します。

MRI派で重視される立場とは、その人が何を大切にし、問題をどう説明し、どのような変化なら受け入れられるかということです。

Aさんが「説明しないのは、相手を見捨てることだ」と考えているなら、「説明をやめましょう」と提案しても受け入れにくいでしょう。

そこで、

「説明を控えると、どのようなことが心配ですか」

「今まで続けてこられた対応には、何を守る意味がありましたか」

と尋ねます。

そのうえで、

「必要なことを伝える役割は残しながら、同じ説明を繰り返す部分だけを変える、という試みならどうでしょうか」

と、本人の大切にしているものと、変える行動を両立させます。

これは相手を巧みに誘導するためではありません。本人にとっての意味を理解し、無理なく合意できる介入を組み立てるためです。

主な介入方法は、見立てと結びつけて選びます。

スクロールできます
方法狙い学習用の例
解決努力の中断・縮小問題を持続させる対応を減らす依頼後に同じ理由を繰り返して説得する部分を控える
相互作用の順序の変更いつもの応答の連鎖を変えるその場で結論を迫らず、返答する時点を合意する
リフレーミング出来事の捉え方を広げ、新しい行動を可能にする「任せることは放棄」という理解を検討し、責任の範囲を明確にすることと結びつける
課題・行動実験日常で異なる対応を試し、結果を確かめる一つの生活場面だけを選び、合意した対応を試す
メタコミュニケーション話の内容だけでなく、話し合い方を扱う「理解を確かめる会話が、同意を求め続ける会話に変わっていないか」を確認する
逆説的介入制御しようとする努力が逆効果になる構造に働きかける古典的には症状処方や変化の抑制など。適応判断と専門的訓練が必要

リフレーミングは、否定的な行動を何でも肯定的に言い換える技法ではありません。「支配も愛情です」といった説明は、被害を見えにくくします。事実と影響を保ったまま、本人が別の応答を選べる理解を探します。

また、メタコミュニケーションは理論的には重要ですが、それを長く説明することが必須ではありません。MRI短期療法では、理解が十分に一致しなくても、日常の応答が変わり、困り事が軽減することを重視します。

逆説的介入については、学び直しの初期には、概念を理解することと実施することを分けてください。「症状を出してください」という表面的な指示を模倣するものではなく、自傷・暴力など危険な行為を課題にすることはできません。

先ほどのきょうだいの例なら、介入は次のように組み立てられます。

ここでは、両者が自由に断ったり意見を言ったりでき、片づけの分担自体にも合意できる状況を想定します。

見立ての仮説は、「Aさんが納得を得ようと説明を重ねるほど、Bさんが会話から離れ、その反応を見てAさんがさらに説明する」というものです。

介入の狙いは、片づけの必要性を消すことではなく、納得を得るための反復から、実行可能な取り決めへ移ることです。

治療者は、たとえば次のように提案できます。

「必要なことを伝えても、説明が長くなるにつれて、かえって返事や片づけが進まなくなる場面があるようです。この理解はお二人の経験に合っていますか」

「次回まで、一つの共用部分についてだけ試してみませんか。何を、いつまでに片づけるかをお二人で決め、難しい場合には、その時点で伝えるようにします」

「Aさんは、合意した時点まで同じ理由の説明を追加しない。Bさんは、実行が難しくなった場合に黙ってやり過ごさず、変更を伝える。これなら試せそうでしょうか」

この課題の要点は、「もっと穏やかに話す」だけではなく、説得を繰り返すやり取りから、具体的な約束と返答へ移ることです。

ただし、相手が実行しない場合の負担をAさんが一方的に引き受ける設計にはしません。合意が成立しない場合は、なぜ成立しないかを調べます。能力、時間、分担の不公平さが問題なら、その調整が必要です。

課題を出すときは、「誰が・どの場面で・何を変えるか・いつ振り返るか・何が起きたら中断するか」を明確にします。一度に多くを変えると、どの変更が役立ったか分からなくなります。

次回面接では、「課題を守れたか」よりも、「何が起きたか」を調べます。

「前回の後、実際に試した場面を一つ教えてください」

「いつもの対応を変えた直後、相手はどうしましたか」

「その後、あなたはどう応じましたか」

「生活上の困り事は減りましたか。それとも、会話だけが減りましたか」

「どなたかの負担が増えていませんか」

その結果によって、次の判断をします。

結果治療者が検討すること
困り事と負担が軽くなった何が役立ったかを具体化し、無理なく続ける
課題は試せたが変化がない維持要因の仮説や、狙った行動が適切だったかを見直す
課題を試せなかった難しさ、納得の不足、タイミング、家族への影響を調べ、課題を修正する
表面上は改善したが誰かの負担が増えた改善の判断を保留し、役割や影響を再評価する
状況が悪化した課題を中止・修正し、安全性と支援方針を再評価する

「やってくれないから、もっと強く課題を勧める」という対応は、治療者自身が同じ解決努力の反復に入ることになります。うまくいかないときには、家族の抵抗だけに理由を求めず、治療者の理解や提案も見直します。

複数回の面接は、回数ごとの課題よりも、作業の進み具合で組み立てます。

たとえば、次のような経過が考えられます。これは固定した回数の処方ではなく、面接計画の例です。

時期主な作業次に進む目安
初回各人の依頼、具体的な問題場面、解決努力、目標を把握する何を変化の対象にするかが共有できる
第2回前後反復の仮説を確かめ、小さな介入を試す課題の意味と実行方法に合意できる
中盤結果を評価し、介入を修正する困り事や負担が軽減し、役立つ対応が分かる
終結に向けた面接変化の維持、再発時の対応、残る問題を整理する家族が自分たちで調整でき、合意した目標がおおむね達成される

初回に十分な情報が得られれば、小さな課題を提案することもあります。反対に、見立てが曖昧な段階では、課題を急いで出さず、観察と整理にとどめます。

終結では、「もう問題が起きない」ことを求めるよりも、

「以前のやり取りに戻り始めたとき、何が最初のサインになりますか」

「そのとき、どの対応を繰り返さないようにしますか」

「自分たちで調整しにくいのは、どのような場合ですか」

を確認します。未解決の問題が残る場合には、それが今回の目標とどう関係するかを整理し、必要な支援につなげます。

MRI派と解決志向ブリーフセラピーは、区別して学ぶと技法の目的が明確になります。

MRI派の中心的な問いは、「何をして解決しようとし、それがどう問題を持続させているか」です。解決志向では、「望む状態はどのようなものか」「すでにうまくいっている場面では何が違うか」に力点があります。

両者には歴史的なつながりがあり、共通する質問もありますが、ミラクル・クエスチョンや例外探しを行うことだけで、MRI派の介入になるわけではありません。MRI派を学ぶ段階では、問題の具体化、解決努力の同定、その方向を変える介入、結果の検証というつながりを意識すると、技法の寄せ集めになりにくくなります。

また、古典的なコミュニケーション理論に含まれるダブルバインド仮説などを、現在の精神疾患の確立した原因論として用いることはできません。MRIの見立ては、現在の相互作用を検討するための仮説として使い、医学的・発達的・社会的要因の評価も保ちます。

原典の学習では、コミュニケーション理論の基礎に『Pragmatics of Human Communication』、変化の理論にワツラウィックらの『Change』、面接実践にフィッシュ、ウィークランド、シーガルの『The Tactics of Change』が位置づきます。MRIの主要論文をまとめた『Focused Problem Resolution』も、モデルの発展を追う資料です。

チーム・アプローチは、面接を担当する治療者と、観察・助言を担当する専門家が協力する方法です。MRI派やミラノ派などで用いられてきました。治療者自身も家族との相互作用に入るため、別の視点から見立てを点検する意味があります。

道具使い方主な目的
ワンウェイミラー面接室側からは鏡に見え、隣の観察室からは面接の様子を見られる設備です。チームが音声も聞きながら観察します。発言だけでなく、表情、沈黙、誰が誰に応答するかなどを、面接の進行に追われず観察する。
インターホン観察室から面接担当者へ、質問や介入の提案を伝えます。必要に応じて休憩を取り、担当者がチームと相談する場合もあります。見落としを補い、面接中に仮説や進め方を修正する。
VTR(録画)面接を録画し、終了後に担当者やチームが見直します。現在は主にデジタル映像です。やり取りの順序、介入前後の変化、治療者自身の応答を検討し、研修やスーパービジョンに役立てる。

つまり、ワンウェイミラーは「その場で観察する」、インターホンは「その場で助言する」、VTRは「後から振り返る」ための道具です。三つを必ずそろえる必要はありません。現在のBrief Therapy Centerでも、オンラインで面接を観察し、担当者に助言する研修形態が紹介されています。

観察や録画は、事前に目的、参加者、閲覧範囲、保存・削除方法を説明して同意を得ます。観察室が見えないことと、観察している事実を家族に知らせないことは別です。

逆説処方については、「症状や問題をなくそうとする努力が、かえって問題を強めるとき、その努力の方向を変える介入」と捉えると理解しやすくなります。単に、希望と反対のことを命じる技法ではありません。

古典的には、症状を意図的に行うよう求める「症状処方」や、変化を急がないよう求める介入などがあります。ただし、同じ「逆説」という名称でも、狙いや方法は異なります。

現在も検討されている具体例が、不眠に対する逆説志向・逆説意図(paradoxical intention)です。「眠らなければ」という努力が緊張を高める場合に、眠ろうとする努力を手放し、受動的に覚醒している方向へ切り替える方法です。徹夜や睡眠不足を勧める意味ではありません。2022年掲載のメタ分析では改善が示された一方、より質の高い研究が必要とされています。

構造派家族療法

構造派の中心にあるのは、家族の中の役割、境界、意思決定、協力の仕方を調整することで、一人ひとりがより生活しやすくなるよう支えるという考え方です。サルバドール・ミニューチンが発展させました。

MRI派が「問題を維持する解決努力」に焦点を当てるのに対し、構造派は、そのやり取りを繰り返し生み出している家族の関係の組織化に注目します。

以下の質問や会話例は、学習用に私が作成したもので、原典の逐語引用や固定された治療手順ではありません。

最初に、「構造」は家族構成ではなく、繰り返される関係のルールを指します。

同じ「親二人と子ども一人」という家族構成でも、関係のあり方は異なります。

たとえば、子どもの相談に対して、親同士が相談して応じる家族もあれば、一方の親だけが対応し、もう一方の親には子どもが伝言する家族もあります。

構造派でいう家族構造とは、このような、

  • 誰が誰に話しかけるか。
  • 誰が判断し、誰が従うか。
  • 誰が誰を助け、誰の代わりに行動するか。
  • 意見が違うとき、誰が誰と組むか。
  • 誰が関わりすぎ、誰が関わりにくくなっているか。

という反復のまとまりです。

構造そのものは目に見えません。治療者は、実際のやり取りから仮説として捉えます。ミニューチンの原著では、夫婦・親・きょうだいなどの下位システムと、その境界、内外のストレスへの適応が理論の中心に置かれています。

理論を理解するには、まず六つの概念を押さえると整理できます。

概念意味面接で見ること
下位システム家族内で特定の機能を担うまとまり。個人、夫婦、養育者、きょうだいなど誰が、どの役割を担っているか
境界誰がどの話題や役割に、どの程度参加するかを定めるルール本人の領域は尊重されるか。必要な支援は届くか
階層・権限意思決定と責任の配置決定する人と、責任を負う人が適切に対応しているか
提携・連合協力の組合せ。特に連合では、二者が第三者に対抗する形が問題になることがある誰と誰が協力し、そのことで誰が排除されるか
柔軟性状況に応じて関係や役割を変える力病気、仕事、子の成長などに対応できるか
発達・生活文脈家族の発達段階や、経済・文化・地域などの条件以前の役割が、現在の生活にも合っているか

「階層」は、人間としての上下を意味しません。未成年の子どもの家庭であれば、大人が養育上の責任を負い、子どもの意見や発達に応じた自己決定を支えるという関係です。夫婦間に上下関係を設けたり、成人した子どもを親に従わせたりすることが目標ではありません。

また、養育者のまとまりは、必ずしも婚姻関係にある男女二人とは限りません。ひとり親、祖父母、別居する共同養育者など、実際に誰が養育を担っているかを見ます。現在のミニューチン・センターも、社会的条件や家族の多様性を踏まえ、家族の強みを活用することを重視しています。

境界は、「近いほどよい」「離れているほど自立している」とは判断しません。

構造派では、境界をおおむね次のように捉えます。

境界の状態関係の特徴支援の方向
曖昧な境界他者の気持ちや課題に入り込みやすく、代弁・介入が増える。個人の意思が分かれにくい自分で話す、選ぶ、引き受ける範囲を明確にする
明確で柔軟な境界それぞれの領域があり、必要なときには助けを求められるその働きを維持し、状況に応じて調整する
硬直した境界関わりが少なく、必要な情報や支援が届きにくい無理のない接点と協力を増やす

曖昧な境界と関連して語られるのが「纏綿・過度の密着(enmeshment)」、硬直した境界と関連するのが「遊離・疎遠(disengagement)」です。訳語には揺れがあります。

ただし、家族全体に一つのラベルを貼るものではありません。 同じ家庭でも、ある親子間では密着が強く、別の親子間では関わりが乏しいことがあります。介護や病気の時期には、通常より密接な支援が必要な場合もあります。

判断の基準は、距離そのものではなく、その関係が本人の意思、発達、生活機能を支えているかです。

構造派では、症状を家族の中に位置づけますが、家族構造だけを原因とは考えません。

たとえば、一人の子どもが「問題のある子」とされているとき、その子への対応に家族の関心が集中し、他の人の負担や親同士の調整不足が見えなくなっている可能性を検討します。

しかし、「その子が家族を保つために症状を出している」と断定することはできません。症状には医学的、発達的、心理的、社会的な要因があり、症状によって家族の関係が変わった可能性もあります。

構造的な見立ては、現在の困り事を軽くするために、どの関係や役割を調整できるかを考える仮説です。

MRI派との違いは、同じ場面を何の手がかりとして見るかにあります。

観点MRI派構造派
中心的な問い解決しようとする何が、問題を持続させているかどのような境界・役割・協力関係が、この反復を支えているか
例として見るもの確認するほど避けられ、さらに確認する一人が連絡をすべて仲介し、当事者同士が直接相談しない
主な介入の入口役立たない解決努力の方向を変える当事者同士の直接的なやり取りや、責任の配置をつくり直す
面接で重視すること問題場面と対処の具体化その場で家族にやり取りしてもらい、関係のあり方に働きかける

両者は重なりますが、構造派では特に、面接の中で新しい関わり方を経験することに力を入れます。

実践の土台は、ジョイニング――家族と協力して働ける関係をつくることです。

ジョイニングは、単に親しみやすく接することではありません。各人の立場や、家族がこれまで生活を維持してきた工夫を理解し、治療者の提案を一緒に試せる関係をつくります。

初回には、たとえば次のように尋ねます。

「ご家族として、これまで何とか乗り越えてこられたことはありますか」

「今の役割は、どのような事情から引き受けるようになりましたか」

「今日の相談で、ご自身としては何が変わることを望んでいますか」

よく話す人だけでなく、発言の少ない人にも関心を向けます。ただし、全員に同じ量の発言を求めることではありません。

古典的には、家族の会話や行動を追うトラッキング、家族のペースや言葉遣いに合わせるアコモデーションなどがあります。構造派を取り入れたBSFTでも、各人との協力関係を保ちつつ、実際の家族間のやり取りを観察することが重視されています。なお、BSFTは構造派と戦略派を統合したモデルです。

ジョイニングの次に、家族のやり取りを観察し、構造的な仮説をつくります。

面接では、話の内容と同時に、次の点を見ます。

  • 本人に質問したとき、誰が答えるか。
  • 意見が違うとき、誰が会話をまとめるか。
  • 誰の発言が中断され、誰の発言が決定になるか。
  • 誰かが困ると、誰が直ちに助けに入るか。
  • 家族の一部が話し始めると、誰が外れていくか。
  • 子どもが大人同士の調整役になっていないか。

ここで、母親が一度代弁しただけで「母子密着」と見立てることはしません。本人が代弁を希望している場合や、言語・発達上の支援が必要な場合もあります。反復するパターンと、その機能を確かめます。

得られた情報は「家族構造図・構造的マップ」として整理できます。世代を越える歴史を描くジェノグラムと比べ、構造的マップは、現在の境界、提携、葛藤、意思決定の配置に重点を置きます。図は確定診断ではなく、面接を通して書き換えるものです。

構造派の中心的技法が、エナクトメントです。

エナクトメントでは、家族に治療者へ説明してもらうだけでなく、家族同士で実際に話してもらいます。 過去の口論を忠実に再現させる必要はありません。現在の小さな相談事を扱うこともできます。

たとえば、

「そのことを、今ここで、お父さんに直接伝えていただけますか」

「次の週末の予定について、お二人で相談してみてください。私は少し聞かせていただきます」

と促します。

進め方には三つの動きがあります。

  1. やり取りを引き出す。
    扱える話題を選び、当事者同士で話してもらいます。
  2. いつものパターンを観察する。
    代弁、割込み、仲介、回避、決定の仕方などを見ます。
  3. 一部分を変えて、もう一度試す。
    発言の順番、話しかける相手、介入する人の範囲などを調整します。

したがって、エナクトメントは、評価と介入を兼ねています。 構造派の技法は、ミニューチンとフィッシュマンの『Family Therapy Techniques』で詳しく扱われています。

主な介入技法は、「どの構造を変えるためか」と結びつけて理解します。

スクロールできます
技法狙い面接での働きかけの例
境界づくり誰が話し、判断し、関わるかを明確にする「まずご本人から伺います。その後で補足をお願いします」
下位システムへの働きかけ必要な人同士の相談や協力を支える養育者同士で相談し、子どもを伝言役にしない形を試す
リフレーミング個人への固定した評価を、関係の中の役割として捉え直す「何もしない人」という説明から、参加しようとしたときの応答を調べる
焦点化多くの話題の中から、重要な一場面にとどまる「今、本人の返事の前に別の方が答えられた場面を、少し見てみましょう」
強度の調整新しいやり取りが流れ去らず、経験として成立するよう支える落ち着いて同じ依頼を繰り返し、本人が話し終えるまで待つ
アンバランシング固定した力関係や役割を動かすため、一時的に特定の人・下位システムを支持する発言が通りにくい養育者が、自分の考えを相手に伝える間、その立場を支える
能力・強みの活用家族がすでに持つ協力の力を、問題場面にも広げるうまく役割分担できている場面の工夫を、別の課題で試す

境界づくりには、座席の配置を変える、発言の順番を設ける、面接の参加構成を変えるなども含まれます。ただし、席を離せば心理的な境界ができるわけではありません。 配置の変更は、直接話す、代弁を待つといった行動を支える補助です。

また、「強度を上げる」は、大声や圧力を強める意味ではありません。大切な場面から治療者がすぐに話題を変えず、新しい応答が成立するまで丁寧に支えることも含まれます。

アンバランシングは、単に全員へ順番に発言を促すことより踏み込んだ技法です。治療者の支持によって家族内の影響力を一時的に動かすため、協力関係の損傷や面接後の影響を見極める力量が必要です。家族の誰かを悪者にしたり、威圧的な人の権限を強めたりするためには使いません。

学習用の例で、見立てから介入までをつなげてみます。

養育者A・Bと14歳の子どもが、週末の外出予定について相談するとします。AとBは安全に話し合える関係ですが、普段は連絡や相談の多くを子どもが仲介しています。

面接で子どもがBに外出の相談をすると、Aが代わりに説明します。Bは子どもに「Aはどう言っているの」と尋ね、子どもがAとBの意見を調整し始めました。

このとき、治療者は次のように仮説を立てます。

観察構造的な仮説介入の方向
Aが子どもの代わりに説明する子ども自身が話す領域が狭くなっている可能性子どもが自分の希望を伝える機会をつくる
BがAの意見を子どもに確認する養育者同士の直接的な相談が少ない可能性AとBが互いに直接尋ねる
子どもが両者を調整する大人同士の調整役を子どもが担っている可能性養育者が調整の責任を引き受ける

介入では、まず本人の発言を支えます。

「Aさん、後ほど補足をお願いします。まず、ご本人がどのように考えているか、最後まで聞いてみたいと思います」

続いて、Bには、「Aさんがどう考えているかは、Aさんに直接尋ねていただけますか」と促します。

その後、「ご本人の希望は伺えましたので、安全面で確認したいことと、任せられることを、今度はAさんとBさんで相談してみてください」

と、養育者同士のやり取りを支えます。最後に子どもへ戻し、

「今の話を聞いて、実行できそうなこと、難しいこと、もう一度伝えたいことはありますか」と尋ねます。

ここで目指すのは、単に外出を許可するかどうかを決めることではありません。子どもは自分の希望を話し、大人は大人同士で責任を持って相談し、そのうえで子どもと調整するという関わり方を経験することです。

子どもの意見を排除して大人だけで決めることと、子どもを大人同士の仲介役から外すことは、区別します。

面接は、次の七つの作業を行き来しながら進みます。

これは構造派の考え方を学習用に整理したもので、必ず順番どおりに進める正式な七段階法ではありません。

作業主な内容次へ進む目安
① 依頼と参加条件を確認する各人の希望、参加の意思、安全、守秘、生活上の課題を把握する一緒に扱える課題と面接構成が定まる
② ジョイニングを進める各人の立場、努力、家族の強みを理解する提案や修正を一緒に試せる関係ができる
③ 構造的な仮説をつくる境界、役割、意思決定、協力関係を観察する困り事と関係するパターンが具体化する
④ エナクトメントで確かめる小さな実際の相談を家族同士で行う仮説に合う点・合わない点が分かる
⑤ 新しいやり取りを支える境界づくり、直接的な相談、役割調整を試す治療者の支援のもとで別の応答が成立する
⑥ 日常へ広げて評価する家庭で試し、負担と効果を各人に確認する面接外でも新しい関わり方が使える
⑦ 支援を減らし終結を検討する治療者がいなくても調整できるか確かめる合意した目標が達成され、自分たちで修正できる

複数回の面接では、初期に関係づくりと見立て、中盤に面接内外での練習、後半に維持と終結の検討という比重になります。ただし、ジョイニングは初回で終わりません。働きかけによって誰かが理解されていないと感じたら、協力関係を立て直します。

また、家族全員の面接、養育者だけの面接、親子面接などを、目標に応じて組み合わせます。参加構成を変えるときは、その目的と情報共有の扱いを説明します。

改善は、「家族が静かになったか」よりも、「誰が何をできるようになったか」で評価します。

たとえば、次のような変化を確認します。

  • 本人が、他の人に代弁されずに希望を伝えられる。
  • 養育者同士が、子どもを介さず相談できる。
  • 一人に集中していた責任を、現実的に分担できる。
  • 必要なときに助けを求め、断ることもできる。
  • 意見が異なっても、関係が切れたり罰を受けたりしない。
  • 治療者が話の交通整理をしなくても、相談が進む。
  • 当初の症状、生活上の支障、本人たちの負担が軽減している。

家族の役割が変わっても、本人の苦痛が増えていれば、改善と判断しません。新しい役割が能力や生活条件に合っているかを見直します。

実践で特に気をつけたいのは、治療者が「正しい家族像」を押しつけないことです。

構造派は能動的に働きかけるため、治療者自身の価値観が介入に入りやすい面があります。「親ならこうあるべき」「夫婦は何でも共有すべき」といった前提は、家族の文化、障害、病気、生活条件に合わない場合があります。

また、恐怖や支配がある場面で、直接話すことや共同決定を一律に促すと危険が増すことがあります。その場合は安全と個別の支援を優先し、通常のエナクトメントの適否を見直します。

ジョイニングでは、カウンセラーが家族それぞれの立場や努力、家族独自の言葉やペースを理解し、関係に参加します。ただし、家族の誰かの味方として取り込まれるのではなく、各人との協力関係を保ちながら、やり取りを観察して働きかける立場も維持します。「入り込む」には、この二つの立場を同時に持つ意味があります。

実演化(エナクトメント)では、普段の関わり方が現れるように、家族同士で実際に話していただきます。過去の口論を再現していただく必要はなく、「今週の予定を相談する」といった現在の小さな話題でも構いません。

そして、いつもの会話をしていただくだけで終わらず、そこで現れた関わり方の一部を変えて、もう一度試していただくところが治療的な働きかけになります。

たとえば、本人への質問に別の家族が答えたときには、

「補足は後ほどお願いします。まず、ご本人の言葉で聞いてみましょう」

と働きかけます。その結果、本人が話し、周囲が待ち、本人の言葉を受けて応答するという、新しいやり取りを経験できます。

面接室でも訪問先でも、この基本は同じです。ジョイニングが介入を受け入れられる土台となり、実演化が観察と変化の場になる。 さらに、その場でできた関わり方が家庭の日常でも使えるようになったかを、次の面接で確かめていきます。

多世代派家族療法

多世代派では、その理解を、「これから自分はどう応答するか」へつなげることが重要です。今回はボーエンを中心に、理論、ジェノグラムを使った見立て、介入、面接の進め方をご説明します。

まず、多世代派は一つの統一された療法ではありません。

世代を越える家族関係を扱う流れには、いくつかの立場があります。

代表的な流れ主に注目すること支援の方向
ボーエンの家族システム理論不安、情緒的反応、三角関係、自己分化、世代間の反復関係の中で自分の反応を観察し、自分の立場から行動できるようにする
ボスゾルメニ=ナジの文脈療法世代間の忠誠心、公平さ、与えることと受け取ること、信頼見えにくかった貢献や不公平を認め、責任ある対話をつくる
精神力動的な多世代的アプローチ家族に託された期待、同一化、未解決の葛藤など過去からの期待と、自分自身の希望を区別する

ジェノグラムは、これら以外の家族療法や医療・福祉でも使われます。図を描くことと、ボーエンの理論に基づいて介入することは、同じではありません。

ボーエンの基本は、家族を「情緒的なつながりを持つ単位」として捉えることです。

家族の一人が不安になると、他の人が心配して助けたり、苛立ったり、距離を取ったりします。その応答が、最初の人の不安にも影響します。

ボーエンは、このような自動的な相互反応を、現在の家族だけでなく、親や祖父母の世代へと広げて理解しました。ここでいう「情緒」は、本人が言葉で自覚できる感情より広く、接近、回避、緊張、相手への反応などを含む理論上の概念です。

ただし、理論のすべての仮説が実証的に確立しているわけではありません。「この家系だから、この症状が出る」と予測するためではなく、観察と検討の枠組みとして用います。

八つの基本概念は、次のように整理できます。

スクロールできます
概念理論上の意味面接で検討する問い
自己分化感情と考えを区別し、他者との関係の中でも自分の立場を保つ力相手が不満でも、自分で考えた選択を保てるか
三角関係二者間の緊張が第三者へ広がり、関係が調整される過程二人が対立すると、誰が相談役・仲裁役になるか
核家族の情緒的過程現在の家族で、不安が葛藤、距離、特定の人への負担などとして現れる過程緊張が高まると、どの関係や誰の生活に影響が出るか
家族投影過程親の不安や解釈、対応が子どもに集中し、子どもの反応と相互に影響する過程心配が集中している子どもに、周囲はどう応答しているか
多世代伝達過程情緒的な関わり方や自己分化のあり方が、世代を通じて形づくられるという仮説似た役割や応答が、別の世代にも見られるか
情緒的遮断未解決の情緒的な結びつきを、距離や接触の回避によって調整すること距離を取ることで、何が楽になり、何が残っているか
きょうだい位置出生順位や実際に担ったきょうだい役割の影響年齢順にかかわらず、誰が世話役だったか
社会の情緒的過程社会的な不安や圧力が、集団や家族の反応にも関係するという考え経済、労働、差別、災害などが、家族の余裕にどう影響したか

出生順位から性格を決めつけたり、親の不安から子どもの病気を説明し切ったりしないことが大切です。これらは関連する概念ですが、個々の家族に当てはまるかを確かめます。

治療の中心となる自己分化は、「感情を抑えること」ではありません。

たとえば、家族から依頼されたときに、断ると申し訳ない、怒られるのが怖い、と感じることがあります。自己分化に向けた作業では、その感情を認めながら、自分にできること、引き受けたいことを考えます。

「申し訳なさはあります。それでも、今週は引き受けられません」と伝えられることが一例です。

他者に頼ることや協力することも、自分で選んだ行動であれば自己分化と両立します。逆に、いつも反対することも、相手への自動的な反応であれば、自分の立場を持つこととは異なります。

臨床では「分化が低い人」と評価を貼るより、「どの関係、どの状況で、自分の考えを保ちにくくなるか」と具体的に考える方が役立ちます。

三角関係を見ると、家族内の緊張の動きが分かりやすくなります。

たとえば、親Aと親Bが対立したとき、Aが成人した子どもCにBへの不満を話します。CがBを説得すると、AとBが直接話す機会は減り、Cの仲裁役が続く可能性があります。

ここで見るのは、三人いること自体ではなく、

  • 緊張が高まったとき、誰が誰に近づくか。
  • 第三者が入ると、誰が一時的に楽になるか。
  • その後、誰の負担が増えるか。
  • 当事者同士のやり取りはどう変わるか。

という過程です。

第三者への相談は有益な支援にもなります。第三者がいるだけで「不健康な三角関係」とは判断しません。 ボーエンの三角関係は、構造派でいう「二人が第三者に対抗する連合」より広い概念です。

ジェノグラムでは、家族の配置に「時間」と「関係」を重ねます。

通常は三世代程度を入口にしますが、情報が乏しければ分かる範囲で十分です。ボーエン自身の「家族図(family diagram)」をもとに、ジェノグラムとして発展した方法には違いもあります。ボーエン・センターは、図を、出来事と家族の反応を調べる研究・臨床の道具として説明しています。

描く順序は、次のようにすると進めやすくなります。

描き加える情報具体的な内容留意点
① 家族の基本配置本人、きょうだい、親、祖父母、パートナー、子ども、重要な養育者血縁だけでなく、実際の生活や養育関係を含める
② 基本情報年齢、生没年、同居・別居、婚姻・離婚など不明は不明のまま記す
③ 重要な出来事出生、死別、病気、転居、失業、介護開始、子の独立など年と、そのときの本人の年齢を添える
④ 関係の特徴葛藤、疎遠、相談、世話、仲介など誰の見方か、いつの時期かを明記する
⑤ 強みと支援資源安心できた人、協力できた時期、家族外の支え困難だけで図を埋めない

記号は、一般的には四角・丸などの人物記号、パートナー関係の横線、親子関係の縦線を使います。死亡、別居・離婚、同居範囲、関係性などを追加しますが、表記法には差があります。凡例を付け、本人の性別・関係の認識を確認して使うことが大切です。

「母は支配的」と書くよりも、「本人によると、進路について母の意見に反対できなかった」と具体化します。記憶、伝聞、確認された出来事を分けると、図が断定の道具になりにくくなります。

ジェノグラムを作るときの面接は、尋問ではなく、共同で整理する対話です。

導入では、たとえば次のように説明できます。

「今の困り事を理解するために、ご家族の関係や大きな出来事を一緒に整理してみませんか。分からないことや、今は話したくないことは空白で構いません」

質問は、出来事から始めて、反応や役割へ進めます。

「お祖父様が亡くなったのは、あなたが何歳の頃でしたか」

「その後、生活の中で誰の役割が変わりましたか」

「誰が一番忙しくなり、誰がその人を支えましたか」

「当時、ご自身は何をするようになりましたか」

「その役割は、今も続いていますか」

一方で、最初から「お母様も祖母に支配されていたのではありませんか」と尋ねると、理論に合う答えを誘導しやすくなります。まず出来事と具体的な対応を聞き、その後に似ている点と異なる点を検討します。

見立てでは、反復を見つけることと、因果関係を証明することを分けます。

学習用に、次のような情報が得られたとします。

世代・時期語られた出来事と役割
祖母の世代家族の病気をきっかけに、祖母が生活上の責任を多く担った
親の世代親は幼い頃から祖母を助け、「心配をかけない」ことを大切にしてきた
本人の現在家族が困ると即座に引き受け、断った後も不安で何度も確認する

ここから、「家族が困ったときに、自分が多くを引き受ける対応が、複数の世代で見られるかもしれない」という仮説は立てられます。

しかし、「祖母の苦労が本人の症状を生んだ」とは言えません。各世代の経済状況、選択肢、病気、支援の有無なども異なります。

さらに、「引き受けずに済んだときはありましたか」

「同じ家庭で、違う対応をしていた方はいますか」

と、仮説に合わない情報も探します。多世代伝達は理論上の概念であり、ジェノグラムから遺伝やエピジェネティックな機序を判定することもできません。

介入は、図で得た理解を、現在の小さな応答の変更へつなげます。

ボーエン派では、治療者が本人の観察と実践を支える「コーチング」という表現を使います。個人、夫婦、家族のいずれでも行われ、全世代を面接に集める必要はありません。

主な働きかけは、次のとおりです。

方法目的質問・働きかけの例
プロセス質問誰が悪いかという説明から、反応の順序へ注意を向ける「その言葉を聞いた後、あなたはどうしましたか」
自己観察感情・考え・行動を分けて捉える「断りたい気持ちが出てから、引き受けるまでに何が起きましたか」
Iポジション自分で考えた立場を明確にし、行動に移す「私は今回はここまで引き受けます。それ以上はできません」
脱三角関係化仲裁や伝言を自動的に引き受ける役割を変える「話は聞きますが、私から相手を説得することはしません」
過剰機能・過少機能の調整一方が担いすぎ、他方が担えなくなる反復を見直す「援助が必要な部分と、本人ができる部分を分けましょう」
家族についての事実の探索固定した家族像を広げ、関係史を具体化する安全で本人が希望する場合、親族の話や既存の資料を確認する
反応後の振り返り相手を変えることより、自分の応答の変化を評価する「相手が不満を示した後、ご自身はどう対応しましたか」

過剰機能・過少機能は、人格や能力を決めるラベルではありません。病気や障害による必要な支援を、「相手を依存させるから」という理由で減らさないことが重要です。

Iポジションは、Iメッセージの言い回しよりも広いものです。

「私はあなたに変わってほしい」と言うだけでは、自分の立場が明確とは限りません。

Iポジションでは、

  • 自分は何を大切にするのか。
  • 何を引き受け、何を引き受けないのか。
  • 相手が賛成しなくても、どのように行動するのか。

を考えます。

たとえば、先ほどの「家族の困り事をすべて引き受ける人」であれば、

「家族を助けたい気持ちはあります。今週できるのは土曜日の二時間です。ほかの時間は仕事を優先します」

という立場を検討できます。

その後、不安から何度も謝罪したり、相手が納得するまで説明し続けたりすると、従来の反復に戻る可能性があります。面接では、その反応も責めずに観察します。

自己分化の指標は、相手がすぐ納得したかではなく、相手の反応を受け止めながら、自分で考えた行動を保ち、必要なら現実に合わせて修正できたかです。

脱三角関係化は、人間関係から退場することではありません。

家族の一方から他方への不満を聞くときに、話を聞くことと、裁定や説得を代行することを分けます。

「つらかったことは聞きたいと思っています。ただ、私がどちらが正しいかを決めたり、代わりに伝えたりする役割は引き受けません」という対応が考えられます。

治療者自身も、「先生から夫に言ってください」「母がおかしいと認めてください」という形で三角関係に誘われることがあります。その場合も苦痛や事実を受け止めながら、本人が選べる行動へ戻します。

ただし、虐待や暴力を「双方の問題」として中立化することはありません。安全のために第三者が介入すべき状況と、自動的な仲裁を減らす状況は区別します。

情緒的遮断については、「距離を取ること」と「未解決の情緒を距離だけで調整すること」を分けます。

ボーエンは、接触を断っても、強い反応や関係へのとらわれが残る場合に注目しました。

しかし、離れて暮らすことや連絡しないことだけで、情緒的遮断とは判断できません。危険から離れることは必要な選択です。再接触、和解、許しを治療の条件にしないことが大切です。

再接触を希望する場合にも、目的、相手の反応、本人の負担を検討し、段階的に考えます。故人や接触できない相手についても、分かっている歴史と現在の自分の反応を整理する作業は可能です。

複数回の面接では、次のように進めると実践につながります。

以下は学習用の構成で、正式な「七段階法」ではありません。

作業面接で行うこと得たいもの
① 現在の相談目標を定める今、何に困り、何を変えたいかを具体化する家族史を調べる目的
② ジェノグラムの骨組みを描く分かる範囲で家族配置と基本情報を整理する家族全体の見取り図
③ 出来事と関係の変化を重ねる喪失、病気、移動、独立などの前後を聞く役割や反応が形成された背景
④ 現在とのつながりを仮説化する三角関係、引き受けすぎ、距離の取り方などを検討する本人が確かめられる仮説
⑤ 自分の立場と小さな行動を決める一つの関係・場面で、実行可能な変更を選ぶ具体的な実践課題
⑥ 結果を振り返る相手と自分の反応、生活への影響を確認する続ける点と修正する点
⑦ 自分で観察・調整できるか確かめる再び反応が強まったときの対応を整理する終結や面接間隔を考える材料

初期から家族史をすべて調べ上げる必要はありません。現在の課題とのつながりが見えたら、早い段階で小さな実践を始め、必要に応じて図を追加します。

ボーエン理論では、比較的安定した自己分化の水準と、ストレスによって変動するその時々の機能を区別します。数回で反応や生活が改善しても、「自己分化そのものが大きく変わった」とまでは断定せず、観察できる変化を評価します。

評価では、家族の変化と本人の変化を分けて確認します。

「家族から頼まれる回数が減ったか」に加えて、

「頼まれたとき、即答する前に考えられたか」

「断った後の不安から、引き受け直すことが減ったか」

「自分で抱えず、必要な支援を頼めたか」

「睡眠、仕事、生活上の負担はどう変わったか」

を尋ねます。

相手が一時的に不満を示したことだけで失敗とは判断しませんが、悪化を「変化の証拠」と決めつけることもできません。負担や危険が増えた場合は、行動と見立てを修正します。

家族療法の重要性

家族療法が重要なのは、個人の苦しみを理解することに加えて、その方が日々暮らす関係や環境にも働きかけられるからです。 本人の変化と、周囲の応答の変化を結びつけるところに、家族療法の大きな意義があります。

第一に、一人に集まっている「問題」と「変化の責任」を、より広い文脈で捉え直せます。

家族の中では、「この人が変わればよい」という理解が生まれることがあります。しかし、その人の苦しさには、身体や心理の状態に加え、役割の重さ、周囲の期待、意思決定の仕方、援助の届きにくさなども関わっているかもしれません。

家族療法では、「本人が困っていること」と「家族が本人について困っていること」を分けながら、それぞれに必要な支援を考えます。

これは、責任を全員に均等に分けることではありません。誰が何に困り、何を担い、どの部分なら変えられるかを明確にすることです。

第二に、善意で続けてきた対応を、より役立つ形へ調整できます。

心配だから確認する、困らないように代わりに行う、分かってほしくて説明を重ねる。こうした対応には、家族を支えようとする気持ちがあることも少なくありません。

ただ、その対応が相手には負担となり、回避や反発を招き、さらに心配や介入が増える場合があります。

MRI派で学んだのは、このような反復を具体的に調べる視点でした。努力を否定することなく、「その願いを実現するために、別の対応を試せないか」と検討できます。

第三に、理解を「関係の中の経験」へつなげられます。

「相手の話を最後まで聞くことが大切」と理解しても、実際の場面では、心配や苛立ちから口を挟んでしまうことがあります。

構造派の実演化では、その場で本人が話し、周囲が待ち、聞いた内容に応答する経験を支えます。本人にとっては「自分の言葉で話せた」、家族にとっては「代わりに答えなくても話せるのだ」という発見になります。

何を理解したかに加えて、互いに何ができるようになったかを扱えることが、家族療法の特徴です。専門職団体も、家族療法の役割として、相互理解、関わり方の変化、家族の強みを生かした支え合いを挙げています。

第四に、過去から続く役割を理解し、現在の選択肢を広げられます。

多世代派では、「いつも仲裁する」「心配をかけない」「自分が全部引き受ける」といった対応が、どのような歴史の中で身についたのかを考えました。

ジェノグラムを通して、その役割が当時は必要だったことや、家族を支えてきた面に気づくこともあります。その理解をもとに、現在も続けたい部分と、変えたい部分を選び直します。

過去の理解は、親を責める結論にも、親を許さなければならない義務にもつなげる必要はありません。今の自分が、関係の中でどう生きるかを考える材料になります。

第五に、家族自身の疲労や孤立も支援できます。

支える側も、分からなさ、不安、罪悪感、怒り、疲労を抱えています。家族に協力を求めるだけでは、その負担を増やす場合があります。

そのため、家族療法には、知識を共有する、役割を分ける、休息を確保する、医療・福祉・地域の支援につなぐという側面もあります。家族の外へ支援を広げることも、家族をシステムとして理解する実践です。

ここまで学んだ三つの学派は、次のように整理できます。

学派中心となる問い主な変化の入口
MRI派解決しようとしている何が、問題を持続させているか役立たなくなった対応の方向を変える
構造派境界、役割、協力、意思決定はどのように組織されているか面接内のやり取りを通して、関係のあり方を調整する
多世代派・ボーエン世代を通じた情緒的反応の中で、自分はどう応答しているか自分の反応を観察し、自分の立場から行動する

どの学派も、家族を一つの理想形に当てはめるためのものではありません。その家族の生活に合った、より柔軟で負担の少ない関わり方を探すための視点として使います。

一方で、家族療法がすべての問題に最適というわけではありません。研究上の効果も、対象となる問題や年齢、用いる方法によって異なります。たとえば、構造派と戦略派を統合したBSFTでは、青年期の薬物使用や関連する行動問題について研究されていますが、その結果を家族療法全般にそのまま広げることはできません。

個人療法、医学的治療、生活支援と組み合わせることもあります。威嚇や報復への恐れがある場合には、合同面接より安全の確保や個別支援を優先します。また、同居や和解を一律の目標にはせず、距離を取ることが生活を支える場合もあります。

不登校・ひきこもりへの支援を、家族療法からの視点

登校・ひきこもりへの支援を、家族療法の視点から学ばれることには、大きな意義があると思います。 特に、本人が相談につながりにくい段階でも、家族の苦痛を軽くし、本人と関わる環境を整えるところから始められる点は重要です。

ただし、「家族支援が役立つこと」と「家族関係が原因であること」は別です。 この区別を土台に学ばれると、支援の可能性を広げながら、親にも本人にも責任を背負わせずに進められます。

不登校・ひきこもりでは、家族への支援が「相談の入口」になり得ます。

不登校とひきこもりは重なる場合もありますが、同じ状態ではありません。背景には、いじめ、学校や職場との不適合、不安、抑うつ、発達特性、身体の不調、挫折や喪失、経済的問題など、さまざまな事情があり得ます。

したがって、家族療法だけで解決しようとせず、本人の状態、生活環境、学校・医療・福祉とのつながりを併せて考えます。厚生労働省も、ひきこもりを本人と家族だけの問題に限定せず、相談、居場所、家族会、地域のネットワークを含む支援を進めています。

家族との面接で扱えることは、たとえば次のような内容です。

支援の対象面接で考えること
家族の不安と疲労将来への不安、孤立、罪悪感を整理し、休息や相談先を確保する
日常のやり取り登校・就労の話題が出ると何が起こるか、どんな接し方なら会話が続くかを調べる
役割と負担一人だけが説得役、監視役、世話役になっていないかを確認する
本人の意思の尊重本人が嫌がること、望んでいること、今なら選べることを理解する
外部との接続学びの場、居場所、医療、地域支援など、本人に合う選択肢を整える

目標は、登校や就労だけに限定しません。安心して過ごせる、必要な援助を求められる、学びや人との接点を選べる、といった変化も重要です。一方で、ただ待ち続けることを唯一の方針にせず、本人が望む活動への小さな段階や、環境調整を一緒に考えます。

本人が来談しなくても、家族自身の相談は始められます。

ただし、その場合は「本人を間接的に治療している」と考えるよりも、家族自身の困り事と、家族が変えられる応答を支援していると位置づける方が明確です。家族の話だけで、会っていない本人の診断や内面を決めることはできません。

訪問についても、親の希望だけで本人に突然会いに行くと、家庭内の安心を損なう可能性があります。本人への説明や意思確認を含めて、接触の方法を調整します。

体的には、次の順序です。

  1. 不登校・ひきこもりの多様な背景と、本人の体験を学ぶ。
    家族療法の理論に加え、当事者の語り、発達・精神医学・学校環境の理解を取り入れます。
  2. 家族への心理教育と相談援助を学ぶ。
    家族の不安を受け止め、日常のやり取りを具体化し、小さく実行可能な変更を検討します。
  3. 継続的な事例検討・スーパービジョンを確保する。
    家族の訴えと本人の利益がずれる場面や、支援が進まない場面を、一人で判断し続けない体制をつくります。
  4. 地域の支援者と役割を分担して実践する。
    不登校では学校の相談職や教育支援センター、ひきこもりでは地域支援センターなどとの連携を考えます。

厚生労働省の上記ページには「ひきこもり支援ハンドブック~寄り添うための羅針盤~」も掲載されています。

英国・家族システミック心理療法協会の説明

FBTの基本原則に関する論文

MRI短期療法を継承するBrief Therapy Center

SAMHSAによる古典的アプローチの概説

チェッキンによる中立性・仮説・円環性の再検討

ボーエン・センターの理論解説

Dulwich Centreのナラティブ解説

Brief Therapy Centerによるモデルの説明

原著『Pragmatics of Human Communication』

MRI短期療法センターの論文集の書誌情報

『Families and Family Therapy』

BSFTの開発者らによる解説

『Family Therapy Techniques』

多世代伝達過程の理論説明

厚生労働省「ひきこもり支援に関する取組」

目次