アレキシサイミア傾向だが、怒りの感情に対する自己抑制・同調・自己犠牲の防衛的沈黙タイプが身体症状のしびれに影響
アレキシサイミアの疑いを感じて39歳の男性が相談に来所されました。アレキシサイミアのセルフチェックでは126/150のスコアであり、傾向が強く現れている可能性があるという結果となりました。
また、アレキシサイミアの症状別では、感情の言語表現力の不全:47/50、感情的対人関係の欠如:41/50、体感・感情の認識力の不全:38/50、空想・想像力の欠如:37/50、表層的思考パターン:37/50のスコアがあり、総評では200/250の非常に高いアレキシサイミアの可能性があることがわかりました。
そこで、8つの基本感情ごとの「認識・表出の偏り」を知るためのスクリーニングは、プルチックの基本感情に準拠し、各感情ごとに【認識】【表出】【持続】【回避】の4観点で質問(4×8=32問)し、傾向を可視化してみます。これは、感情の認識や表出の困難に関係する各種要因と、それに対応する説明および支援的コミュニケーション方法を目的とします。結果として、怒りの感情の【表出】【持続】【回避】に問題があり、「怒りに鈍感、または過敏」タイプであり、過剰順応/爆発回避型が強く現れました。
ここからの、カウンセリングのステップを解説していきます。
私は39歳の男性で千葉県に住んでいます。妻は29歳です。結婚して2年目ですが、妻からあなたは何を考えているのかわからない。私に興味がないの?と言われています。特に、あなたには自分の意見がないの?どうして怒らないの?どうして黙るの?感情がないようで怖いとも言われます。
仕事でも、言い争いになるような会議やミーティングは苦手で、意見を出せません。逆に資料を作成したり情報の収集では一目を置かれることもあります。
上司からは、「君は何も否定もしないし、まじめに考えていないだろう」というように言われたこともあり、何年も混とんとした気持ちでした。さらに妻からの攻撃で疲れ切っています。
幼少の頃に、両親から何でも言うことを聞く子供で、おりこうさんだねと言われて育ちました。周りからも手のかからない子供だねと褒められていたような記憶があります。小学生の時に先生からは、落ち着いていていつもニコニコしていて生活態度も勉強もしっかりしています。と評価されるのがうれしかったのが今でも忘れていません。
1年前ぐらいから、妻の感情が激しくなり攻められることが多くなりました。過去の小さなことも含めて怒鳴り散らすこともあります。鬱気味なのか、機嫌が悪いのか、私では物足りないのかもしれません。結婚を失敗したとも言われるようになりました。
私は相手の勘違いや間違っていることでも非難するようなことはできません。できないというより、私の中では平和であってほしいということしか考えられません。ここ数か月の間に両足にしびれが出るようになりました。そのことは妻には話せませんでしたが、妻からあなたはアレキシサイミアでしょ。カウンセリングに行きなさいと言われています。いい機会なので、どこにも向けられない気持ちと足のしびれのことをカウンセラーに聞いていただきたいと思います。
このページを含め、心理的な知識の情報発信と疑問をテーマに作成しています。メンタルルームでは、「生きづらさ」のカウンセリングや話し相手、愚痴聴きなどから精神疾患までメンタルの悩みや心理のご相談を対面にて3時間無料で行っています。
クライエントの現状まとめ(仮説整理)
項目 | 内容 |
主訴 | アレキシサイミア(足のしびれ(両脛)による生活・仕事への支障) |
きっかけ | 奥様から「感情がない」と言われて来所 |
感情傾向 | アレキシサイミア(セルフスコア200/250)/怒りが極めて低い |
関係性 | 妻の行動化・責める言動の継続後のしびれ悪化/妻を一切悪く言わず、自己非難 |
スキーマ評価 | 不適応スキーマの該当なし(自己・他者イメージに歪みを訴えない) |
解離性運動障害/ 機能性神経症状の可能性 | あり(身体症状が感情トリガーで変動する) |
一次感情との乖離 | 高い可能性(怒りの抑圧) |
行動特性 | 他者に適応しすぎる・自己抑圧・症状化による訴え |
背景にある力動的仮説 | ・怒りや葛藤の身体化(サイコソマティクス) ・防衛的適応(良い子/良い夫スクリプト) ・過去の葛藤・トラウマの未処理(無意識的) |
考えられるセオリー的アプローチ
1. 感情のスケール化+認知トレーニング(怒り・嫌悪・驚き)
- 基本8感情の認識・スケール(0~4段階)の導入
- 特に「怒り」の感情の特に【表出】【持続】【回避】に問題がありました。
- 要するに「怒り」の認識は少なからずも感じているということになります。
導入文例
「怒っていないと思っていても、1~3くらいの微かなムッとした感覚が体のどこかに残っていることもあります。今日は自分の中にどれくらいその感情が存在するかを一緒に探してみませんか?」
2. 身体化された怒り・防衛としてのしびれへの理解促進
- 「症状=心が語ろうとする声」としてのフレーム導入
- 感情の代わりに現れる身体症状としての意味づけ
例
「怒れないあなたのかわりに、足がもう動きたくないと訴えてくれているようにも見えますね。」
3. マインドフルネス・ボディスキャン(アレキシサイミア対応)
- 感情を「認識する」のが難しい人に、まずは身体感覚の言語化から開始
- 特に「しびれ」や「重さ」「緊張」に意識を向ける
推奨技法
- ボディスキャン瞑想(10分~)
- 言語化ワーク
例)「いま足に感じるしびれを天気にたとえるとどんな感じですか?」(→比喩的表現で情緒アクセス)
4. 内的対話・エンプティチェア法(怒りに近づく)
- まずは自分の身体や感情に対して語りかける形で開始
- 次に奥様との対話をエンプティチェアでシミュレートする
- 怒りを「表現」することではなく、「認識」することを目標とする
例:導入ステップ
- ステップ1:「あなたの足のしびれが椅子に座っているとしたら、今、あなたにどんなことを言いたがっていると思いますか?」
- ステップ2:「奥様から攻められたと感じた時の自分の椅子に座ってみましょう」

身体症状に気づくためのセルフチェック
アレキシサイミア+身体症状(しびれ)+感情の抑圧(特に怒り)+対人関係での過剰適応 を抱える方に対応した、「抑圧された感情と身体症状に気づくためのセルフチェック」です。
「あなたの中の気づかれていない感情セルフチェック」
― 身体が語るこころの声に気づくために ―
全40項目(Yes / No)スコア加算方式:Yes=1点、No=0点 → 合計点で目安評価
№ | 怒り・嫌悪・驚きの身体症状に気づくためのセルフチェック |
---|---|
【1】怒り・苛立ちの抑圧傾向 | |
1. | 人に怒った記憶がほとんど思い出せない |
2. | 「怒るくらいなら我慢したほうがいい」と思う |
3. | 自分が悪いとすぐに感じてしまう |
4. | 他人に強くものを言うことが怖い |
5. | 「怒ってはいけない」と育てられてきた |
6. | 誰に対しても基本的に敵意を感じない |
7. | 大声や暴力を見ると、固まる/黙り込む |
8. | 怒りよりも「疲れ」や「無力さ」の方が感じやすい |
【2】嫌悪・拒絶感の抑圧傾向 | |
9. | 人に対して「嫌だ」と思うことが少ない |
10. | 嫌いな人がいたとしても、表に出さない |
11. | 人からの頼みを断るのが苦手 |
12. | 「不快」という感覚がよくわからない |
13. | 嫌悪感よりも「申し訳なさ」が先に出る |
14. | 本音を出すと、関係が壊れるのが怖い |
15. | 不衛生・暴言などに対する拒否反応が鈍い |
16. | 「嫌うことはいけないこと」と思ってきた |
【3】驚き・ショック反応の低感度 | |
17. | 突然の出来事にもあまり驚かない |
18. | 他人の怒りや失敗に、感情が動きにくい |
19. | 感動する場面で涙が出にくい |
20. | 驚くよりも「頭で理解しよう」とする |
21. | 感情の起伏をほとんど感じない |
22. | 驚くふりはできても、本当には動かない |
23. | 衝撃を受けると、なぜか冷静になってしまう |
24. | 子どものころから、ショックを顔に出さなかった |
【4】自己感覚と感情の分離傾向(アレキシサイミア特性) | |
25. | 自分の感情がわからないと感じることがある |
26. | 何を感じているのか言葉にしにくい |
27. | 人から「何を考えてるかわからない」と言われる |
28. | 喜怒哀楽が少ないと自覚している |
29. | 感情よりも論理で動いている |
30. | 日記を書こうとしても、気持ちが出てこない |
31. | 「元気?」と聞かれても、返答に困る |
32. | 感情を話すより、状況を説明することが多い |
【5】身体に出る感情のサイン(身体化傾向) | |
33. | 足や手にしびれ・違和感を感じることがある |
34. | ストレス時に頭痛・腹痛・吐き気などが出やすい |
35. | 感情が動いたとき、身体のほうが反応している |
36. | 怒りや悲しみの後に体調を崩すことがある |
37. | 感情の代わりに「しびれ」で苦しむことがある |
38. | 感情の表出ができない代わりに体がこわばる |
39. | 気持ちを我慢したときに、身体に痛みが出る |
40. | 心より先に身体が「もう限界」と訴えてくる感じがある |
評価
- 各「はい」に対して1点を与えます。
- 合計点を計算してください。
合計点 | 解釈ガイド |
---|---|
0-10点 | 感情と身体のつながりは比較的認識できている状態です。ただし、特定の感情だけ抑圧していないか再確認を。 |
11-20点 | 感情と身体の間に軽度のズレがある可能性。自分の気持ちを感じにくく、無意識に抑えている場面があるかもしれません。 |
21-30点 | 中等度の感情抑圧・身体化傾向が考えられます。しびれなどの身体症状が、感情のサインである可能性があります。 |
31-40点 | 高度な感情抑圧とアレキシサイミア傾向が示唆されます。セラピーでの感情との再接続が重要です。身体からの声に耳を傾ける段階かもしれません。 |
39歳の男性のスケール結果は32点で、高度な感情抑制が出ていて身体症状症の可能性があります。
「怒れない私」感情探索ワークシート
怒りを感じるって、どういうこと?
― 怒ることができない私が、自分の気持ちに近づくために ―
【構成の目的】
- 自分の中の怒り(または怒りに近いもの)を安全に探索する
- 怒りにまつわる価値観・抑圧の歴史を見つめる
- 怒りを身体や比喩・状況を通して間接的に探る
- 「怒ることは○○なことだ」
→ 例:「恥ずかしい」「悪いこと」「人を傷つけること」 - 怒ってはいけないと思った場面を思い出せますか?
→ □家族との場面 □仕事での場面 □パートナーとの関係 □学校生活 □その他( ) - 怒った記憶のなかで、今も引っかかる出来事はありますか?
→ □ある(内容: )
→ □ない(理由: )
次のようなとき、自分にはどんな反応が出ることが多いですか?
該当するものに ✓ をつけてください。
状況 | 感情 | 身体反応 | 行動 |
批判された | □しゅんとする □何も感じない | □顔が熱くなる □足がしびれる | □黙る □謝る |
無視された | □不安になる □イライラする | □胸がざわざわする □体が硬直 | □何も言えなくなる |
怒鳴られた | □怖くなる □フリーズする | □涙が出そうになる □手が冷たくなる | □笑ってごまかす |
責められた | □自分が悪いと思う | □しびれが出る □呼吸が浅くなる | □謝り続ける |
不当な扱いをされた | □怒りを感じない □無力感 | □胃が重くなる □首や肩が固まる | □我慢する |
最後に聞きます。
「これらの反応のどれかに、怒りの代わりとして表れている可能性はあると思いますか?」
次はすべて、「怒り」に似た、または怒りの周辺にある感情です。
当てはまりそうなものにチェックを入れてください。
- □ イライラ
- □ もやもや
- □ 不満
- □ 納得いかない
- □ なんとなく疲れた
- □ 胸がざわつく
- □ なんで?って思う
- □ 見下された気がする
- □ 押しつけられた感じ
- □ 恥ずかしい
- □ 自分が小さく思える
チェックが入ったものはありますか?
それはどんなときに感じることが多いでしょうか?
次のように体に意識を向けてみてください。
- しびれを感じるとき、足は「なんて言ってそうですか?」
→ 例:「もう立ち上がりたくない」「逃げたい」「重くて動けない」 - 最近、体に力が入ったり、こわばったりしたことはありますか?
- 呼吸は浅くなっていませんか?
- 胸や喉、胃に違和感があるとしたら、それは何を訴えているように思いますか?
あなたのなかに少しでも怒りの気配があるとしたら、それはどんな言葉になりそうですか?
- □「本当はやめてほしかった」
- □「それは違うと思った」
- □「傷ついた」
- □「私のことを考えてほしかった」
- □「ちゃんと話を聞いてほしかった」
- □(その他、自由記述: )
最後に、自分にこう問いかけてみてください。
「怒りがあることは、悪いことだろうか?」
「怒りは、私を守るために生まれたのかもしれないと思えるだろうか?」
表現の目的は、「爆発」ではなく「発見」であり、「怒っていない」のではなく、「怒りにアクセスできないだけ」です。しかも、「怒りを出せない優しさ」や「自己抑圧が生き延びるためだった」という価値づけっだったのかもしれません。

状態に関する2次的臨床視点
否定され続けた体験
例えば、「まじめに考えてない」「君は何も感じてないんだろう」と言われたのであれば、これは感情の抹消という二次的な暴力でもあります。それを繰り返し浴びた人は、自分でも「感じてはいけない/感じても伝わらない」と学習してしまいます。
怒りの失感情ではない可能性
怒りが「感じられなかった」のではなく、感じてはいけないと強く条件づけられていて、これは怒りの抑圧や凍結のプロセスに近く、アレキシサイミアとは異なる防衛的沈黙だったのかもしれません。
症状の理解:怒りの
感情抑制と身体化
怒りは、本来「自分の領域を守る力」です。でも、それを出すことで人から嫌われたり、傷つけられる経験が続くと、「怒ってはいけない」「感じるだけ損だ」と心が判断してしまいます。
そうすると、怒りは行き場を失い、「感じないようにする」「口にしないようにする」ことで自分を守ろうとします。
けれど怒りは、完全に消えるわけではなく、しびれやこわばりなどの身体症状や人との距離に出てくることもあるります。
今、それに気づいたということは、凍っていた感情が溶けはじめたということです。
「怒りについて」
不快感情の中でも「怒り」は最も強いエネルギーを持った感情です。不当な扱いを受けたり、理不尽な言動に晒されたときに感じる二次感情です。環境や状況に対し、直前に感じた傷つきのような一次感情「不安」「困惑」「恐れ」「寂しい」「悲しい」「恥ずかしい」「辛い」「苦しい」というようなネガティブな感情が「怒り」の裏に隠されています。ほとんどの場合「怒り」は強いエネルギーの情動で表現されるため、一次感情を自覚せず「怒り」だけが感じられているようです。
また、怒りは他者の言動を第三者視点で捉えている時にも怒りが起こります。これは不正などを罰する規範などであり、利害関係がない他者に対しても起こり得ることです。
このことからも、「怒りの」本質的な原因は自己にあるということになります。
補足:「怒り」は『自分を守る力』としての感情
怒りは「壊す感情」ではなく、「守るための感情」です。
怒りを感じることは、『私はこれが大事』という自己の境界の表現でもあります。
怒りを持つこと=「関係を壊す」ではなく、「より誠実な関係を築こうとする試み」だと再定義することで安心感を得ることも必要です。
対処スタイル:特徴と成り立ち
観察される行動 | 背景にある心理 |
相手の感情を先に読む | 相手を怒らせない・混乱させないように先回りする |
自分の気持ちや不満を言わない | 自分が我慢すれば「場」が壊れないと思っている |
暗黙のうちに役割を引き受ける | 「良き夫」「頼れる人」「空気を読む人」などの役割に同化している |
感情を抑えて冷静に振る舞う | 感情が表に出ると「迷惑」「面倒」と思われる恐れ |
身体症状で表れる | 感情を抑えすぎた結果、心ではなく身体が訴え始める(FND・身体化) |
なぜこうした対処が形成されたのか?
多くの場合、次のような発達的・関係的背景が関係しています。
背景にある可能性のある体験
- 「感情を出すと迷惑がかかる/混乱が起きる」環境で育った
例:「お母さんを怒らせないように」「家では黙っているのが一番」 - 「いい子」「聞き分けの良い子」を期待されてきた
例:「〇〇くんはいつもちゃんとしてるね」「手がかからない子だね」 - 家庭や職場で黙る=大人の対応とされてきた
自己表現が「未熟」「ワガママ」などと見なされた体験の積み重ね - 愛着的に回避型・過剰順応型のスタイル
情緒的距離を保ちながら、安定・評価を得ようとする
臨床的に大切な視点
「怒りを出せない」のではなく、「怒らないことに価値を感じ、機能させてきた」という視点が重要です。
怒りを我慢することで、
- その場が荒れなかった
- 相手が助かった
- 評価された
- 関係が続いた
こうした怒らないことで得てきた成功体験があるからこそ、怒りを表すことは「危険」や「損失」として無意識に位置づけられている可能性があります。
「今まで怒りを出さずにきたのは、きっと周りの人の気持ちにすごく敏感だったからです。それは優しさや配慮の表れだったと思います。
ただ、もし怒らない以外にも選べる方法があるとしたら、どうですか?
言葉で伝えることで、関係が壊れるどころか、より理解されることも多いと思います。」
アプローチの方向性:再定義と選択の拡張
認識すべきこと | セラピーで目指す再定義 |
我慢=大人の対応 | 自己犠牲ではなく「自己選択」の道を広げる |
怒らない=安全 | 怒りは「自分の大切な価値を伝える手段」 |
相手に合わせる=配慮 | 自分の気持ちを伝えることも「関係を守る力」 |
自己抑制・同調・自己犠牲傾向セルフチェック
以下の項目について、該当するものにチェックを入れてください。
(はい=✓ いいえ=空欄)
順応的自己抑制
□ 他人の期待に応えようと無意識に行動してしまう
□ 自分の感情よりも場の空気を優先することが多い
□ 不満を感じても、表に出さずやり過ごすことが多い
□ 怒りや違和感を感じたこと自体に気づきにくい
□ 「迷惑をかけたくない」が口ぐせになっている
□ 誰かの期待を裏切るのがとても怖い
□ 感情を表すと面倒なことになると感じている
□ 「いい人」でいることに安心感がある
□ 自分が我慢すれば丸く収まると思う
□ 思ったことを飲み込む癖がついている
過剰同調
□ 相手の気持ちや意図を先回りして考えてしまう
□ 自分が納得していなくても相手に合わせてしまう
□ 関係がこじれないように、あえて主張を控える
□ 自分の意見を伝えるとき、強い不安や緊張を感じる
□ 沈黙や空気の悪さがとても怖い
□ 場の雰囲気を壊さないように言動を選んでいる
□ 自分の本音が分からなくなることがある
□ 嫌なことも笑って受け流してしまう
□ 「空気を読むのが得意」と言われる
□ 相手が不機嫌だと、自分のせいかと思う
関係維持型自己犠牲
□ 自分を後回しにして相手を優先するのが当たり前
□ 自分が我慢すれば丸く収まると思っている
□ 頼まれると断るのが難しく、後で疲弊する
□ 助けすぎてしまった後に虚しさを感じることがある
□ 相手が困っていると、自分のことよりも優先してしまう
□ 断ることで相手を傷つけたくない
□ 人に迷惑をかけるくらいなら、自分が引き受けたほうがいい
□ 無理をしてでも他人に尽くしてしまう
□ 人間関係の中で責任感を強く感じる
□ 人との距離感が近すぎると感じることがある
✓の数 | 解釈の目安 |
0〜3個 | 該当傾向は低め・影響は限定的 |
4〜6個 | 中程度の傾向・特定の場面で表れやすい |
7〜10個 | 強い傾向あり・日常生活や対人関係で広く影響している可能性あり |
キーワード
「感情抑制」「他人の期待優先」「いい人ロール」
特徴
- 感情の自己認知が低下(特に怒り・違和感)
- 「自分を消す」「黙る」「従う」が無意識の反応に
- 内在的に「期待に応えねば」「波風立ててはいけない」が根深い
背景にある可能性
- 幼少期から「いい子」として育てられた
- 怒りや反発を「否定されるもの」「危険なもの」として経験
- トラブルを避けることで安心を得てきた歴史
支援の焦点
- 「怒り・欲求の肯定と解凍」
- 「自己感情のラベリング練習」:例)私はいま◯◯と感じている
- 「我慢ではなく、選択的抑制」との違いの自覚
- 感情と価値を守る行動の接続(怒り=自分を守る力)
キーワード
「空気読みすぎ」「感情共鳴過多」「自己不明瞭」
特徴:
- 対人関係での緊張・同調が過剰
- 「相手の気持ちに反応しすぎて自分がわからなくなる」
- 本音を飲み込んで後悔するパターンの反復
背景にある可能性
- 家族内で「和を乱さないこと」が第一だった
- 親の機嫌を読むことが生き残りの術だった(機能的役割)
- 「本音=否定される/人を困らせる」という恐れ
支援の焦点
- 「自他境界線の再構築」:自分と他人の内側を区別する練習
- 「自分の声を聴くワーク」:本当はどうしたい?どう思った?
- 「主張する=関係を壊す」スキーマの修正
- 小さな本音の表出から始める段階的アサーション
キーワード
「我慢」「尽くしすぎ」「断れない」「対人境界の希薄化」
特徴
- 対人関係のなかで自分を後回しにすることが習慣化
- NOと言うことに強い罪悪感
- 与えたあとに空虚感・怒り・疲労感が残る(助け疲れ)
背景にある可能性
- 「人に尽くすこと=愛されること」だった
- 親の世話をする子ども(ヤングケアラー)的役割
- 「期待に応えなければ見捨てられる」という対人不安
支援の焦点
- 「自己犠牲の裏にある怖れ」を可視化
- 「自己優先=利己的」のスキーマ修正
- 「NOと言える小さな実験」の導入(例:「今は5分待ってください」)
- 「与える」以外の関係構築スキルの獲得
全体に共通するカウンセリングの視点
課題 | 支援方針 |
自分の感情に気づきにくい | 「今、何を感じていますか?」と定期的に問う・感情語リストの活用 |
他者優先が自動化している | 「あなた自身の希望は?」と自分の声を繰り返し照らす |
主張することが怖い | 「対話の中で安全な違いを体験する」ためのロールプレイ |
断れない・抑え込む | 「断ることが関係を育てる」という視点の再定義 |
機能性神経症状症(FND)の段階的トレーニング
このケースでは、怒りや嫌悪など「境界線を守る感情」の抑圧が非常に顕著で、それが長期的に機能性神経症状症(FND)や身体化症状として現れている可能性があります。
視点 | 説明 |
解離性運動障害 | 感情トラウマに起因する無意識の「感情からの切断」反応。足のしびれ=逃走や回避の象徴として出現することあり。 |
機能性神経症状症(FND) | 情動ストレスと脳機能のミスマッチによって生じる。しびれ・運動異常・発声困難などが主症状。感情処理の苦手さとの関連が指摘される。 |
アレキシサイミア傾向 | 感情への気づきが弱く、身体化へとつながりやすい。今回のクライエント様もその傾向が見られる。 |
次に感情アクセスと身体との統合を図るための段階的トレーニングプランを解説します。
「怒りを持った別の誰か」の声を書き出す
内容
- 第三者視点で「怒っている人」を想像してもらい、言葉を書き出してもらう
- 例:「部下が突然怒り出したとき、何と言っていた?」
- 例:「映画やドラマで『あの人よく怒ってたな』というセリフを思い出して書く」
- 最後に、「自分だったらどこまで言えるか?」を0〜10でスケーリング
目的
- 自我の防衛を迂回しながら、「怒りの言葉」と接触する第一歩
- 投影的に怒りを認識・体験する練習
目的:
- 感情の「種類」「出やすい場面」「身体感覚」「反応傾向」を可視化し、感情と自己感覚の地図的なつながりをつくる。
- 自分の内的反応パターンに気づく練習。
感情地図ワークシート(基本構造)
感情名 | 出やすい場面(具体例) | 体の反応(場所・感覚) | 思考・口ぐせ | 行動傾向 |
怒り | 無視されたとき/正当な理由が伝わらないとき | 肩・腕が熱くなる/息が荒くなる | 「なんで?」/「言ってもムダだ」 | 黙る・離れる・資料に没頭する |
不安 | ミーティング直前/人前で話すとき | 胃が重い・指先が冷える | 「失敗したらどうしよう」 | 書類を何度も確認する・避ける |
嫌悪 | 汚いトイレ・暴言を聞いたとき | 額がひきつる・眉が下がる | 「やだな」「気持ち悪い」 | 表情を無にする・視線をそらす |
喜び | 賞賛されたとき/家で一人の時間があるとき | 胸がふわっとする/体が軽い | 「うれしい」「助かる」 | 小さく笑う・姿勢がよくなる |
1感情ずつ埋めていきます(怒り・悲しみ・喜び・不安・嫌悪・驚き・信頼・期待など)
日時 | しびれの場所と程度(0〜10) | その時の出来事 | 頭の中にあったこと | 抑えたかった感情(推定) | ||||
目的
- 「しびれ」=身体が感情を代わりに語っていることに気づく
- 感情と身体の因果的接続性を体験する(気づきの種を育てる)
「怒りは壊すもの?守るもの?」対話スクリプト
誘導スクリプト例
- 「怒ったらどうなると思いますか?」 「壊れる、否定される」
- 「もし怒ることで、大切なものが守られたとしたら、それはどう思いますか?」
- 「怒ることが『自分の境界』を知らせるサインだとしたら?」
使用カード例
- 「怒りの機能カード」
- 自分の時間を守る
- 相手との境界をはっきりさせる
- 尊厳を主張する
- 身体の異変を知らせる合図
構造
- 状況:○○さんが突然書類を投げてきた
- 感情:驚いた・嫌だった・悲しかった
- Iメッセージ:「私は、あの時とてもびっくりして、困った気持ちになりました」
目的
- 怒りを「攻撃」ではなく、「自己表現」として安全に再学習
- 言語と身体の乖離を少しずつ埋めていく
「嫌ってもいい地図」作成ワーク
内容
- 自分が「嫌いだと感じてもいい対象」「不快を表明してもいい場面」をシート化
- 例
- 他人が暴言を吐くとき → その場を離れることが許される
- 匿名のSNS中傷 → 反応しない/ブロックしてもいい
狙い:
- 「嫌う=悪」から「嫌う=自己防衛」へのスキーマ修正
- 「我慢=美徳」スキーマのほぐしと再定義
「怒りや嫌悪」が長年封印されていた場合、それらに気づくこと自体が自分の存在を取り戻すような再統合体験になります。
無理に「怒る」ことを目指すよりも、日常の中で気づけた自分を喜ぶ土台づくりが第一歩として非常に重要です。
怒りの役割と価値を再定義
「怒りは壊すもの?守るもの?」というセッションテーマは、怒りの抑圧や誤解が強いクライエントに対して、怒りの役割と価値を再定義していく重要なステップになります。
特に今回のように、「怒るくらいなら我慢する」「怒る=人間関係を壊すもの」というスキーマ(信念)を持っている場合、怒りを自分と他者を守るための自然な感情として再位置づけることが、回復の鍵になります。
ステップ3の目的:怒りの意味づけの転換
Before(誤解) | After(再定義) | |
怒りは人間関係を壊す | 怒りは「自分の境界を知らせるサイン」 | |
怒るのは悪いこと/幼稚 | 怒りは「正義感・期待・違和感」を守る力 | |
怒ったら嫌われる | 怒りを伝えることで「信頼の回復」もできる |
「怒り」とはどんな感情?
セラピストの語り
「怒りって、どんなときに出てくると思いますか?例えば、許せない悔しいとか、違うだろうって感じたとき。実は、怒りの奥には守りたいものがあることが多いんです。」
クライエントに問う
- 「あなたが本当は怒ってもよかったと思う場面は、どんなときでしたか?」
- 「そのとき、何が一番守りたかったのでしょう?」
(この問いかけだけで、怒りの背後にある価値・大切なものが浮かび上がってきます)
「怒り=壊す」or「守る」対話スクリプト
セラピスト:
「怒りを出すと、関係が壊れてしまうと思いますか?」
(クライエントが「はい」と答える)
「その気持ち、すごくよくわかります。私たちは小さい頃から、怒るのはよくない、我慢しなさいって教わってきましたよね。
でも一方で、もし誰かがあなたの大事なものを傷つけようとしたとき、怒りって壊すために出ると思いますか?それとも守るためでしょうか?」
【対話の焦点】
- 怒りの「破壊的側面」と「防衛的側面」を両方言語化する
- 守るために怒る人(親が子を守る場面など)を例示する
「怒りの価値再定義シート」
怒りが出た場面 | 守ろうとしたもの | 怒りの表現がどう働いたか(または表現できなかった) |
例:無視された | 自分の存在・尊厳 | 表現せず黙って我慢した。今思うと「存在を無視されるのがつらかった」 |
このワークで、「怒りが壊した」のではなく、「怒りを言えなかったこと」が自分を削ってきたのかもしれない…と気づきが起こります。
「怒りは、暴れることじゃなくて、大事なものを守ってほしいという心の声なんです。
怒りの中には、大事にしてほしい、分かってほしいという願いが隠れていることが多いんですよ。」
怒りを「壊すエネルギー」から「自分の境界を守るエネルギー」へと転換

アレキシサイミア傾向の「Iメッセージ」トレーニング
怒りの表現が苦手で感情が出せない/抑えてしまうアレキシサイミア傾向の方が、Iメッセージを使って「自己主張」と「共感的な対話」を両立できるようになるためのトレーニング例を、次のように構成します。
トレーニング全体の目的と焦点
目的 | 内容 |
自他の感情の予測と理解 | 相手の感情・思考の背景に意識を向ける練習 |
自己の感情の認識と言語化 | 感じたことを言葉にするワーク/Iメッセージ化 |
境界と主張 | 感情を抑えず、攻撃せず、主張する力の育成 |
対話的姿勢 | 相手の気持ちを否定せず、理解を伝える力の育成 |
パートナー(奥様)との関係場面
〈ねらい〉怒りを封じる代わりに、「驚き」「混乱」「守りたい気持ち」を言語化する練習
Iメッセージ例:
「私は、急に強い言い方をされるとびっくりして、何を返していいかわからなくなってしまいます。気持ちはちゃんと聞きたいと思っているので、少し落ち着いて話してもらえると助かります。」
「我慢=優しさ」から「表現=尊重」への転換
Iメッセージ例:
「私は、言わないで我慢してしまうことが多くて、あとで自分にもあなたにも申し訳なく感じることがあります。もう少し自分の気持ちも言えるようになりたいと思っています。」
「怒り → 固まる」反応を「感じたことの共有」に切り替える
Iメッセージ例:
「あなたが強く怒っていると、私は怖くなって体が動かなくなる感じになります。でも、あなたの言いたいことは大事だと思っているので、少し時間をもらってからちゃんと聞きたいと思います。」
「嫌悪・違和感を伝える=関係の維持のため」という認識強化
Iメッセージ例:
「私は、こう言ったら嫌われるかもと思って、本音を言うのをやめてしまうクセがあります。でも本当は、お互いに正直に話せる関係がいいと思っています。」
「喜び・安心」を伝えることにも慣れていく練習
Iメッセージ例:
「一緒に静かに過ごしている時間は、私にとってとても安心できる瞬間です。ありがとう。」
感情が表現できない理由を誠実に伝える
「私は、自分の気持ちをどう言葉にしたらいいかわからなくなることが多くて、ちゃんと感じてはいるのに、相手を思う気持ちが優先してしまい、伝えるのが遅れてしまいます。」
「迎合」の代わりに自分の意思を示す練習
「私は、あなたに合わせようとして本音を言わなかったけど、本当は○○について少し違う考えを持っています。」
回避のパターンを言語化
「私は、不満を強くぶつけられると、頭が真っ白になって、どう反応していいのか分からなくなります。」
「感じたこと」を明確に
「私は、問い詰められているような話し方をされると、自分が責められているように感じて黙ってしまいます。」
萎縮感の言語化とリクエスト
「私は、強い言い方をされると怖くなって萎縮してしまいます。伝えたいことがあるので、もう少し柔らかいトーンだとありがたいです。」
境界線を引く言葉の練習
「私は、頼まれるとすぐ応えたくなってしまうんですが、正直ちょっと疲れてしまうことがあります。」
関係を維持したい気持ちの表現
「私は、怒っているあなたを見て怖くなることもあるけれど、本当はちゃんと話し合いたいと思っています。」
違いを出すことへの肯定的転換
「私は、意見が違うと関係が壊れるような気がして引いてしまうけれど、本当は違っていても大丈夫だと信じたいです。」
ポジティブな気持ちの言語化
「私は、さっき一緒にテレビを見ていた時間がとても心地よかったと感じました。ありがとう。」
ビジネス・職場でのケース
怒りを使わずに、境界を示す練習
Iメッセージ例
「私は今、手一杯で集中している仕事があるので、急に他の業務を任されると混乱してしまいます。スケジュールがわかっていれば調整できると思うので、前もって相談してもらえるとうれしいです。」
「感情を抑える自分」を説明して、少しずつ表現に挑戦する
Iメッセージ例
「私は、会議で発言するときにとても緊張して、気持ちが固まってしまうことがあります。でも、意見を伝える必要も感じているので、少しずつでも言えるようになりたいと思っています。」
怒りを言語化し、攻撃せずに自分の立場を表明する
Iメッセージ例
「私は、その言い方をされると責められているように感じてしまって、話し合いが難しくなります。もう少し違う伝え方をしてもらえると、落ち着いて話せそうです。」
喜びも悲しみも共有する土台づくり
Iメッセージ例
「私は、資料作成にかなり時間をかけたので、少しでも何か感想をもらえたらうれしかったなという気持ちがあります。」
怒りの一次感情(期待・失望)を含めて伝える
Iメッセージ例
「私は、あなたの作業の進め方について、もう少し丁寧に確認してほしいと思っています。期待していた分、今回は少し残念に感じました。」
怒りではなく「困惑感」として伝える
Iメッセージ例
「私は話の途中で遮られると、うまく考えがまとまらなくなって困ってしまいます。最後まで話す時間をもらえるとうれしいです。」
境界侵犯への気づきと主張
Iメッセージ例
「私は、自分が作成した資料に手を加えられると、自分の仕事が軽く扱われたように感じて、戸惑います。」
萎縮感の言語化とリクエスト
Iメッセージ例
「私は、強い口調で言われると内容が頭に入ってこなくなってしまいます。もう少し冷静に説明してもらえると理解しやすいです。」
怒りを伝えず「期待」を軸にする
Iメッセージ例
「私は、あなたの成長を期待しているからこそ、気になった点を伝えるべきだと思っています。少し時間をもらって話させてもらっていいですか?」
状況と感情のセットで伝える
Iメッセージ例
「私は、急な依頼があると今の仕事との調整が難しくなってしまいます。事前に相談いただけると助かります。」
苛立ちではなく、ニーズの共有
Iメッセージ例
「私は、今集中して取り組みたい業務があるので、少し静かな環境だとありがたいです。」
感じたことの内省と伝達
Iメッセージ例
「私は、挨拶しても反応がなかったとき、もしかして自分に何かあるのかなと不安になることがあります。」
被害感ではなく、正直な感想を
Iメッセージ例
「私は、自分の提案に反応がなかったとき、少し寂しく感じました。考慮されなかった理由を聞けると助かります。」
感情の受け止め直しと関係修復
Iメッセージ例
「私は、前にあなたが不満を言ってくれたときに、うまく返せなかったことを気にしています。ちゃんと聞き直したいです。」
自己選択の再確認
Iメッセージ例
「私は、最近疲れ気味で静かに過ごしたい気持ちが強かったので、今回はイベントに参加しない選択をしたいと思っています。」
変換フォーマット
- 相手の言動
- 大声で責められた
- 自分の感じたこと(感情)
- 驚いた・怖くなった
- 背景にある思考
- 話を聞いてもらえないと感じた
- Iメッセージ文例
- 「私は急に大きな声を出されると驚いて、頭が真っ白になってしまいます。落ち着いて話してもらえると助かります。」
感情語の補助ツール
- 「怒り」…腹立たしい、イライラ、ムカムカ、圧迫感
- 「不安」…そわそわ、緊張、びくびく、落ち着かない
- 「悲しみ」…がっかり、空虚、寂しい、後悔
- 「喜び」…うれしい、安心、ほっとした、嬉しさがこみ上げた
大切なのは、
「怒り=関係を壊す」から「怒り=関係を守る力」へのスキーマ転換です。
Iメッセージを活用することで、
- 怒りや嫌悪などの否定的に見える感情も安全に伝えられる
- 他者を思いやりながらも、自分を犠牲にしない自己表現
という新しい関係性の在り方を練習・体得していく道筋となります。
感情の背景理解+共感的なIメッセージ練習
感情の背景理解+共感的なIメッセージ練習に非常に効果的です。
クライエントが自分と相手の感情・思考を言語化し、関係性の中での自己主張を安全に練習するために理想的な構成です。
パートナー・夫婦間のケース
- パートナー: 「また否定するの?私の考えっていつも否定されるよね!」
- 相手の感情: 怒り、悲しみ
- 相手の感情の背景: 「自分が認められていない」「尊重されていない」感覚
- 自分の感情: 戸惑い、緊張
- 自分の感情の背景: 「否定のつもりではないが、受け止められていない」
- Iメッセージ: 「あなたの考えを否定したかったわけじゃないんだ。自分の視点も加えたくて言ったけど、伝え方がよくなかったと思う。大切に思ってることは変わらないよ。」
- 非言語的コミュニケーション: 真剣なまなざし、姿勢を相手に向ける、落ち着いた声
- パートナー: 「なんで黙ってるの!?何か言ってよ!」
- 相手の感情: フラストレーション、不安
- 相手の感情の背景: 「この人と分かり合えない」「無視されてる感じ」
- 自分の感情: 恐怖、混乱
- 自分の感情の背景: 「怒りにさらされると固まってしまう」
- Iメッセージ: 「私は強い感情を向けられると、言葉が出なくなってしまうところがあるんだ。でもあなたと話したい気持ちはある。少しだけ時間をもらえたら、言葉にできそうです。」
- 非言語的コミュニケーション: 手を胸元にあてる、静かにうなずく、目を合わせる
- パートナー: 「覚えてないの?私にとって大事な日だったのに……。」
- 相手の感情: 悲しみ、失望
- 相手の感情の背景: 「自分が大切にされていないのでは?」という思い
- 自分の感情: 罪悪感、焦り
- 自分の感情の背景: 「悪気はなかったが、相手を傷つけた」
- Iメッセージ: 「大事な日を忘れてしまって、本当にごめん。あなたにとって大切な記念日だったのに、自分の不注意で傷つけてしまったと思う。埋め合わせをさせてほしい。」
- 非言語的コミュニケーション: 少し前傾して謝意を表す、柔らかい目線、そっと手を差し出す
- パートナー: 「最近、話しかけても上の空じゃない?」
- 相手の感情: 寂しさ、不満
- 相手の感情の背景: 「無視されている」「関心がないのでは」
- 自分の感情: 疲労、プレッシャー
- 自分の感情の背景: 「仕事やタスクで余裕がなくなっていた」
- Iメッセージ: 「最近、心がいっぱいでぼーっとしてしまうことが多くて…。あなたの言葉をちゃんと受け止められずにいたこと、申し訳なく思っています。」
- 非言語的コミュニケーション: 深呼吸してから話す、アイコンタクト、姿勢を戻す
- パートナー: 「ねぇ、ちゃんと聞いてる?」
- 相手の感情: 疑念、不満
- 相手の感情の背景: 「関心を持たれていない」「自分の話が無視されている」
- 自分の感情: 圧迫感、疲労
- 自分の感情の背景: 「一方的に聞かされると息が詰まる」
- Iメッセージ: 「ごめん、今少し疲れていて、話をちゃんと聞けてなかったかも。少し休んでから、改めてちゃんと聞かせてもらえる?」
- 非言語的コミュニケーション: 柔らかい声で、手のひらを見せるジェスチャー
- パートナー: 「全部私ばっかりやってるじゃない!」
- 相手の感情: 怒り、孤独
- 相手の感情の背景: 「一人で抱えている負担感」「理解されていない」
- 自分の感情: 申し訳なさ、気まずさ
- 自分の感情の背景: 「どう手伝えばいいかわからない/責められている感じ」
- Iメッセージ: 「大変な思いをさせてしまって、ごめん。自分の中でも気づけてなかった部分があったと思う。もう少し分担の仕方を一緒に考えたいです。」
- 非言語的コミュニケーション: 相手の表情を見てうなずく、手を合わせる仕草
- パートナー: 「私の話よりスマホの方が大事なんだ……。」
- 相手の感情: 嫉妬、不安
- 相手の感情の背景: 「私は軽視されているのでは」
- 自分の感情: 無自覚だった驚き、反省
- 自分の感情の背景: 「無意識だったが、相手にとっては大事な時間だった」
- Iメッセージ: 「確かにスマホばかり見ていたかも…。あなたと過ごす時間をちゃんと大事にしたいと改めて思いました。今日はスマホをしまって、ゆっくり話を聞かせてほしいです。」
- 非言語的コミュニケーション: スマホを伏せて置く、体を相手に向ける
- パートナー: 「どうしてそんな言い方になるの?」
- 相手の感情: 傷つき、困惑
- 相手の感情の背景: 「攻撃された」と感じた
- 自分の感情: 焦り、防御感
- 自分の感情の背景: 「責められていると感じて、反射的に反応した」
- Iメッセージ: 「自分でも言い方が強かったと思います。責められている気がしてとっさに反応してしまったけど、それはあなたを傷つける意図じゃなかったです。」
- 非言語的コミュニケーション: 視線を外さず、声のトーンを落とす
- パートナー: 「どうして何でも1人で決めるの?」
- 相手の感情: 疎外感、怒り
- 相手の感情の背景: 「自分が信頼されていない」「仲間に入れてもらえない」
- 自分の感情: 自責、戸惑い
- 自分の感情の背景: 「迷惑をかけないように黙っていた」
- Iメッセージ: 「あなたに負担をかけたくなくて、一人で考えてしまう癖があるみたい。でも、本当は一緒に考えた方がいいってわかってる。これからはちゃんと共有していきたい。」
- 非言語的コミュニケーション: 深くうなずく、静かに手を差し出す
ビジネス上のケース
- 相手: 「これ、今日中にお願いね。」
- 相手の感情: 信頼、業務依頼として当然という感覚
- 相手の背景: 「仕事ができる人だから頼める」「言わなくてもやってくれる」
- 自分の感情: プレッシャー、困惑
- 自分の背景: 「余裕がないのに断れない/不満が言えない」
- Iメッセージ: 「私もできる限り協力したいのですが、今日の予定が詰まっていて、難しさを感じています。明日でも問題ない部分があれば調整したいのですが、いかがでしょうか?」
- 非言語的コミュニケーション: 落ち着いた声で、メモを見せながら伝える
- 相手: (発言中に)「でも、それは違うと思うよ。」
- 相手の感情: 焦り、議論を進めたい気持ち
- 相手の背景: 「早く結論を出したい」
- 自分の感情: 驚き、無力感
- 自分の背景: 「自分の話が軽視されたと感じる」
- Iメッセージ: 「今の部分は、私の考えの大事なポイントだったので、最後まで聞いてもらえるとありがたいです。その上で意見を伺えたらと思っています。」
- 非言語的コミュニケーション: 姿勢を正し、アイコンタクトを維持する
- 相手: 「何回言ったらわかるんだ!」
- 相手の感情: 怒り、苛立ち
- 相手の背景: 「同じミスが繰り返された」「責任感からの怒り」
- 自分の感情: 萎縮、恐怖
- 自分の背景: 「叱られると冷静でいられなくなる」
- Iメッセージ: 「強く言われると混乱してしまって、内容をうまく理解できなくなってしまいます。できれば落ち着いて説明していただけると、正確に受け止められると思います。」
- 非言語的コミュニケーション: 丁寧な姿勢とやや小声で話すことで非対立的に伝える
- 相手: (無反応)
- 相手の感情: 忙しさ、気づいていない
- 相手の背景: 「処理が追いついていない」「返信を後回し」
- 自分の感情: 不安、軽視された感じ
- 自分の背景: 「確認されていない=信頼されていないのでは」
- Iメッセージ: 「以前送った件について、確認されていないのかなと不安になりました。ご多忙とは思いますが、返信いただけると安心します。」
- 非言語的コミュニケーション: 柔らかな声と丁寧な言葉づかい
- 相手: 「○○さん、これもお願いできますか?」
- 相手の感情: 信頼、依存
- 相手の背景: 「頼めばやってくれる」
- 自分の感情: 焦り、負担感
- 自分の背景: 「断ると関係が悪くなるかも」
- Iメッセージ: 「今すでにいくつかの対応で手一杯なので、急ぎでなければ少し時間をいただけるとうれしいです。」
- 非言語的コミュニケーション: 両手を見せるジェスチャーで状況を可視化
- 相手: 「すみません、また間違えてしまいました……。」
- 相手の感情: 不安、恐縮
- 相手の背景: 「怒られるかも」「失望されたくない」
- 自分の感情: 苛立ち、でも叱れない戸惑い
- 自分の背景: 「自分が怒ると関係が壊れるのでは」
- Iメッセージ: 「同じミスが続くと、こちらも焦ってしまうことがあります。でも改善してほしいと思っているからこそ伝えています。一緒にミスの原因を探しましょう。」
- 非言語的コミュニケーション: 姿勢を相手と同じ高さに合わせる、声のトーンを穏やかに
- 相手: 「それ、僕が言ったことにしてもいい?」
- 相手の感情: 打算、軽視
- 相手の背景: 「自分が評価されたい」
- 自分の感情: 怒り、悔しさ
- 自分の背景: 「自分の努力が見られていない感じ」
- Iメッセージ: 「その提案は私が出した内容なので、自分の貢献として評価されたい気持ちがあります。チームとして共有するのは構わないのですが、出所は明確にしてもらえるとうれしいです。」
- 非言語的コミュニケーション: 目を合わせる、言葉を区切って冷静に伝える
- 相手: (大きな声で笑っている)
- 相手の感情: 楽しさ、リラックス
- 相手の背景: 「職場に余裕がある」「場を和ませたい」
- 自分の感情: イライラ、集中力の低下
- 自分の背景: 「集中できないと不安になる」「締め切りがある」
- Iメッセージ: 「今ちょっと集中したい業務があって、周囲の声が気になってしまっています。申し訳ないけど、少し声を落としてもらえるとうれしいです。」
- 非言語的コミュニケーション: 落ち着いた声と、笑顔を含めた表情
- 相手: (いつも仕事を助けてくれる)
- 相手の感情: 特に感情的反応はない
- 相手の背景: 「支援は当然/見返りを求めていない」
- 自分の感情: 感謝、でも照れくささ
- 自分の背景: 「言うタイミングを逃してしまった」
- Iメッセージ: 「最近いろいろフォローしていただいて、本当に助かっています。直接伝えるのが遅くなってしまいましたが、感謝しています。」
- 非言語的コミュニケーション: 軽く頭を下げる、笑顔でしっかり目を見て話す
- 相手: 「うーん、他にないかな」
- 相手の感情: 不満、物足りなさ
- 相手の背景: 「もっといい案を求めている」
- 自分の感情: 虚しさ、自信喪失
- 自分の背景: 「認められない=価値がない」
- Iメッセージ: 「私としては一生懸命考えたアイデアなので、簡単に却下されると少し残念に感じます。改善点があれば具体的に教えてもらえるとうれしいです。」
- 非言語的コミュニケーション: 姿勢を前に出す、相手の反応を確認しながらゆっくり話す