3時間無料対面カウンセリングを行っています。無料カウンセリング予約フォームでお申し込みください。ボタン

双極性障害(躁うつ病)の診断エピソードと8分類の型

目次

双極性の分類は軽躁病双極Ⅰ型障害双極Ⅱ型障害気分循環性障害、特定不能の双極性障害混合性急速交代型の8通りとなります。図とエピソードで解説しています。

私たちは誰にでも気分の波はごく普通にあり、朝の目覚めたときの気分次第で行動が変わることもあります。また、良いことがあったときは楽しく幸せな気持ちであり、嫌なことがあったときは悲しく落ち込んでしまうというような気分の浮き沈みがあります。
しかし、周囲から見て「いつもと違い、行き過ぎた状態」だと思われたり、ハイテンションで迷惑や信用を失うような行動が起きる場合は正常ではありません。
この普段と違う明るさや暗さが急に出てしばらく続くようであれば、双極性障害を疑うことも必要です。この病気は本人よりも周囲の方が気づくことが多いのも事実です。

双極性障害とは(状態・発症年齢・有病率・他の障害との合併)

双極性障害は、気分障害の一種で、過剰な高揚感と深刻なうつ病の症状が交互に現れる疾患です。双極性障害は、躁状態、うつ状態、混合状態、または症状が軽度の場合もあります。

躁状態は、高揚感、興奮、活力、自信過剰、睡眠不要、過剰な社交性、危険な行動などを特徴とします。一方、うつ状態は、悲しみ、無力感、絶望感、不眠、食欲不振、疲れや倦怠感、自分自身への否定的な感情などを特徴とします。

混合状態は、躁状態とうつ状態の症状が混合されることがあり、同時に高揚感と不安、混乱、憤慨、イライラなどが現れる場合があります。

躁状態は、普段の気分の波を超えて自分ではコントロールできない行き過ぎる言動、眠らなくても平気でアイデアも湧いくるのだが集中はできてはいない、浪費や性的逸脱行動にも走るような躁状態が一定期間現れます。そして、真逆のうつ状態は抑うつ気分で強い罪責感、無価値観、絶望感、悲哀などに襲われ、何も楽しいとは思えず体の調子も悪くなり疲れやすく、生きるのが辛くなるような状態が一定期間続きます。双極性障害は、このような躁状態とうつ状態を繰り返す病気です。ただし、平常の寛解期には特に症状は現れません。
以前は、双極性障害を「躁うつ病」と呼ばれていたためうつ病の種類だと誤解されがちですが、異なる病気として分類されており遺伝的要素が高く治療薬も治療方法もうつ病とは異なります。しかし、うつ病の中にも相反する躁的因子を有するものがあるということに注目されています。

躁状態として気分の高揚、開放的・易怒的、活力や活動性の増加、睡眠欲求の減少などが少なくとも4日程度(軽躁)または1週間以上ほぼ毎日、1日の大半続きます。また、うつ状態として抑うつ気分・気分の低下、活力や活動性の減退などがほとんど毎日、2週間の間(双極Ⅰ型は躁の存在は必須ではない)、または2週間以上に存在します。

発症年齢
双極性障害は20歳以前が多く10歳以下でも稀ではありません。また、20代、30代も多数発症していますが、総合的には25歳以前が主であると言われています。ただし、割合は少なくなりますが、40代以上、高齢者にも発症します。

生涯有病率
生涯有病率の統計は幅広く、海外の中央値はⅠ型1%前後、Ⅱ型1〜5%です。
日本は海外より遅れていて双極性障害をうつ病と診断されたままの方もいるとも言われ、世界精神保健/日本の調査では双極性障害Ⅰ型・Ⅱ型ともに12カ月有病率は1%、生涯有病率はⅠ型0.4%、Ⅱ型は0.1%との統計もありますが、一般的には約0.7〜1%と言われていて男女差は統計にはありません。肥満を有する人は50%以上でⅡ型糖尿病の合併も10%と報告されています。

合併症
欧米のデータをもとにすると、不安障害である社会不安障害、パニック障害、強迫性障害、PTSDに加えアルコールなどの物質使用障害は高い値を示します。また、パーソナリティ障害や摂食障害も多いとされています。

双極性障害は躁状態とうつ状態が交代で起こりますが、どちらが先に始まるか、それぞれの期間はどのくらいか、強さ、病症内容などのエピソードは人により様々です。
躁病エピソードの診断基準をDSM-5統計マニュアルで見てみます。

躁病の診断基準
 A. 気分が異常かつ持続的に高揚し、開放的または易怒的になる。加えて異常かつ持続的に亢進した活動または活力がある。このように普段とは異なる期間が少なくとも1週間、ほぼ毎日、1日の大半において持続する(入院治療が必要な場合はいかなる期間でもよい)。
気分がよくなり周りからも陽気に捉えられ、進んで他者にも話し掛け、外見的にも派手になります。この高揚と開放的言動が認められないと易怒的になる可能性があります。
 B. 気分が障害され、活動または活力が亢進した期間中、以下の症状のうち3つ(またはそれ以上)(気分が易怒性のみの場合は4つ)が優位の差を持つほどに示され、普段の行動とは明らかに異なった変化を象徴している。
 下記の7項目の中で3項目が当てはまり、持続することが診断上必要になります。また、高揚や開放的な気分より易怒性が中心的な場合は下記の4項目が当てはまることが診断基準となります。
 ⑴自尊心の肥大、または誇大
自己肯定感が高まり誇大思考が過ぎると行き過ぎてしまい、誇大妄想につながることもある。
 ⑵睡眠欲求の減少
3時間眠っただけでも十分な休息が取れ休まっていると感じる。
 ⑶普段より多弁であるか、しゃべり続けようとする切迫感
早口で声も大きくなり、重要ではないことも次々と浮かび周りから遮ることもできないくらいになる。
 ⑷観念奔逸、またはいくつもの考えがせめぎ合っているといった主観的な体験
考えが一度にいくつも浮かび、プロセスとは関係なく話す内容も変化していく。
 ⑸注意散漫が報告される、または観察される
注意しなければならないことも関係のない外的刺激に反応し、気が散り集中できない。
 ⑹目標志向性の活動の増加、または精神運動焦燥
社会的、職場または学校内、宗教的な目的を持った行動面が多くなることや、貧乏揺すりや足踏み、手を揺するなど精神運動性焦燥を起こす
 ⑺困った結果につながる可能性が高い活動に熱中すること
制御の利かない浪費、無意味な投資、性的逸脱など社会的にも生活的にも好ましくない結果につながることに熱中する。
 C. この気分の障害は、社会的または職業的機能に著しい障害を引き起こしている、あるいは自分自身または他人に害を及ぼすことを防ぐため入院が必要であるほど重篤である、または精神病性の特徴を伴う。
これらの症状が本来自分の持っている社会的や職業的機能に悪影響を与え、精神病性の特徴として幻覚や妄想がある症状は入院が必要となる。
DSM-5精神疾患の診断。統計マニュアル医学書院に簡易説明加筆

うつ病の診断基準の詳しい内容はこちら↓

双極性障害の分類

軽躁病
基本症状と症状項目は抑うつ診断基準のエピソードと同じですが、軽躁病は躁病ほど極端ではない状態です。平常時と違う明確なエピソードの期間も4日以内で社会的能力はあり、社会的や職業的機能障害を起こしてなく入院も必要ない状態です。
自身では睡眠が少なくても活発に活動でき、苦痛は感じられずいつもより良好な状態であると認識しています。しかし、知り合いからはいつも通りでないことは気づかれてしまう状態です。 

躁病エピソード軽躁エピソード
幻想や妄想が時には生じる
社会的機能を大きく損なう
時には入院を必要とする
エピソードが長い
観念奔逸を生じる
制御の利かない活動をして深刻になる
幻想や妄想は生じない
能力が改善されたり対人関係が活性化される
入院は必要ない
エピソードは短い
時には観念奔逸を生じる
可能性はあるが 深刻には至らない

双極Ⅰ型障害
少なくとも1回、または複数回の明白な社会的および職業的機能を破綻させるような躁病エピソードに加え、多くは複数回の抑うつエピソードの存在(うつエピソードは必須条件ではない)により定義されます。

双極Ⅱ型障害
少なくとも1回、または複数回のうつエピソードに加え、少なくても1回の軽躁病エピソードの存在により定義されます。

気分循環性障害
複数の軽躁病エピソードに加え、抑うつエピソードの診断基準に至らない抑うつ症状を示す期間が2年以上あることが定義となります。

特定不能の双極性障害
明らかに双極性障害に準じた特徴はあるが、軽躁、Ⅰ型、Ⅱ型、循環性で現れる障害の具体的な診断を満たさない症状です。

混合性の特徴を伴う基準
躁状態からうつ状態へ、あるいはうつ状態から躁状態へ移り変わる双極性障害の経過中に躁エピソードと抑うつエピソードが入り混じって出現する場合を混合性と呼びます。一般的には躁の状態は「興奮」で気分は高揚し、思考は激しく、行動は活発になります。うつ状態は「減弱」で気分は沈み、思考は停滞し、行動は停止します。しかし、混合性の場合は三要素が同じ方向を示さないという事です。例えば気分はうつなのに、考えや行動は躁の状態になっているようなことです。
精神活動の「気分」「思考」「行動」の3種に2極の「減弱」「興奮」を想定すると2³で8通りとなります。

状態気分思考行動
興奮興奮興奮
うつ減弱減弱減弱
躁うつ混合状態

気分は落ち込み不安であるのに、思考は次から次へと浮かんできて、じっとしていられない行動の状態は図のようになります。
「気分は減弱」「思考は興奮」「行動は興奮」
この状態は精神障害の中で最も自殺率が高くなります。

抑うつエピソードより混合性躁病・軽躁病エピソードより混合性
抑うつエピソードの基準を完全に満たし、現在のまたは直近の抑うつエピソードの期間の大半において、以下の躁、軽躁症状のうち少なくても3つ以上が存在する。躁病または軽躁病エピソードの基準を完全に満たし、現在または直近の、躁病または軽躁病エピソードにおいて、以下の症状のうち少なくとも3つ以上が存在する。
⑴高揚した開放的な気分
⑵自尊心の肥大または誇大
⑶普段より多弁であるか、しゃべり続けようとする心拍
⑷観念奔逸またはいくつもの考えが競い合っているという主観的体験
⑸気力または目標志向性の活動の増加
⑹困った結果につながる可能性が高い活動に熱中すること
⑺睡眠欲求の減少
⑴その人自身の言葉か、他者の観察によって示される、顕著な不快気分または抑うつ気分
⑵すべて、またはほとんどすべての活動における興味または喜びの著しい減退
⑶ほぼ毎日の精神運動性の制止
⑷易疲労感または気力の減退
⑸無価値観または過剰であるか不適切な罪責感
⑹死についての反復思考、特別な計画はないが反復的な自殺念慮、または自殺企図または自殺するための特別の計画
混合性症状は他者によって観察可能で、その人の通常の行動から変化を起こしている。混合性症状は他者によって観察可能で、その人の通常の行動から変化を起こしている。
混合性の特性:DSM-5精神疾患の診断、マニュアルより

急速交代型(ラピッドサイクラー)
うつ病相、軽躁病相、躁病相、混合性のいずれかが、1年に4回以上現れ繰り返します。急速交代型は難治性で自殺率も高くなります。
原因の一つとして、抗うつ薬使用、甲状腺機能の低下、物質使用障害の合併を伴いやすい点などを挙げています。

双極性障害のセルフチェックリスト

双極性障害(Bipolar Disorder)の自己評価・セルフチェックリストです。このリストは、双極性障害の兆候や症状を評価するためのツールとして使用できます。各質問には、次のように回答してください。

1: 全く当てはまらない 2: あまり当てはまらない 3: 時々当てはまる 4: よく当てはまる 5: いつも当てはまる

このチェックリストは自己評価のためのものであり、正式な診断を行うものではありません。結果に関係なく、心配な症状がある場合は、必ず専門の精神科医やカウンセラーに相談してください。

双極性障害の自己評価・セルフチェックリスト
1.気分が異常に高揚することがある。
2. 極度の自信過剰を感じることがある。
3.活動量が増え、あまり眠らずに済むことがある。
4.思考が次々と浮かび、集中できないことがある。
5.過剰に社交的になることがある。
6.急に非常にイライラすることがある。
7.物事を急に計画し、行動に移すことがある。
8.衝動的な買い物をしてしまうことがある。
9.無謀な運転をすることがある。
10.衝動的に仕事を辞めたくなることがある。
11.自分が特別な力や能力を持っていると感じることがある。
12.物事に対して極端な考えを持つことがある。
13.普段より多弁になることがある。
14.急に過剰なエネルギーを感じることがある。
15.不適切なユーモアや行動を取ることがある。
16.頭の中で考えが止まらなくなることがある。
17.普段とは違う趣味や興味を突然持つことがある。
18.他人の話に対して急に批判的になることがある。
19.異常に幸福感を感じることがある。
20.極端に悲観的になることがある。
21.睡眠時間が極端に短くなることがある。
22.興奮状態が長く続くことがある。
23.自分が何をしているのか分からなくなることがある。
24.衝動的な発言や行動をしてしまうことがある。
25.身の回りのことに対して急に無関心になることがある。
26.仕事や学業に対して興味を失うことがある。
27.自分が無力だと感じることがある。
28.自分が価値のない存在だと感じることがある。
29.食欲が急に増えたり減ったりすることがある。
30.睡眠時間が極端に長くなることがある。
31.自分が死にたいと感じることがある。
32.他人に対して急に攻撃的になることがある。
33.自分が監視されていると感じることがある。
34.過去の出来事を思い出して苦しむことがある。
35.他人から批判されていると感じることがある。
36.自分が何をしているのか理解できないことがある。
37.極端に無気力になることがある。
38.自分の行動がコントロールできなくなることがある。
39.頭の中で考えがまとまらなくなることがある。
40.自分が他人よりも優れていると感じることがある。
41.他人の意見を全く聞かないことがある。
42.自分が何をしたいのか分からなくなることがある。
43.自分が他人に対して無関心になることがある。
44.急に極端な感情の変化を感じることがある。
45.何もかもが面倒に感じることがある。
46.他人と全く関わりたくなくなることがある。
47.自分が特別な存在だと感じることがある。
48.自分の感情がコントロールできなくなることがある。
49.自分が異常だと感じることがある。
50.他人に対して急に冷たくなることがある。

双極性障害の自己評価・セルフチェックリスト

評価基準

合計点BDの評価
50-100点双極性障害の可能性は低いです。ただし、気になる症状がある場合は専門家に相談することをお勧めします。
101-200点中程度の双極性障害の兆候が見られます。詳しい評価と診断のために専門家に相談することを強くお勧めします。
201-250点高度な双極性障害の兆候が見られます。専門家による緊急の評価と治療が必要です。

双極性障害の詳しい解説

双極性障害(躁うつ病)の診断では、「躁病エピソード(Manic Episode)」が非常に重要な概念になります。

現在は主に精神医学の診断基準である DSM-5-TR に基づいて判断されます。

躁病エピソードの診断基準

A. 気分の異常な高揚または易怒性
少なくとも1週間以上、異常に高揚した気分、異常に開放的な気分、異常に怒りっぽい気分(易怒性)がほぼ毎日続いている。
また、活動性エネルギーが著しく増加している。
B. 以下の症状が3つ以上(気分が怒りっぽいだけの場合は4つ以上)
① 自尊心の肥大・誇大性

自分は特別な能力を持っている
誰よりも優秀だ
有名人になれる
神に選ばれた
重症になると妄想レベルになることもあります。
② 睡眠欲求の減少

2~3時間しか寝ていない
それでも全く疲れない
「寝るのは時間の無駄」
これは不眠症とは異なります。
不眠症:「眠りたいのに眠れない」
躁状態:「眠らなくても平気」
③ 多弁

いつもより明らかに話が多い
話し続ける
相手が止められない

⑤ 注意散漫

周囲の刺激にすぐ反応する
集中できない
話が脱線する
④ 観念奔逸(考えが次々浮かぶ)

頭の回転が異常に速い
アイデアが止まらない
話題が飛ぶ
本人は「絶好調」と感じることが多くなります。
⑥ 目標志向活動の増加

仕事を徹夜で始める
新規事業を何個も立ち上げる
本を書く
投資を始める
一見すると「やる気がある人」に見える場合があります。
⑦ 快楽的活動への没頭
結果を考えずに行動する。
例:高額な買い物
ギャンブル
投機的投資
無計画な起業
性的逸脱行動
借金
C. 社会生活への重大な影響
症状によって
仕事・家庭・対人関係が著しく障害される。
または、入院が必要、精神病症状がある場合も含みます。
D. 薬物や身体疾患では説明できない
例えば
覚醒剤
コカイン
ステロイド
甲状腺機能亢進症
などによる状態ではないこと。
臨床でよくみる躁状態のサイン
クライエント本人は「絶好調」と思っていることが多く、家族が先に異変に気づくことがあります。
典型例としては、
睡眠時間が急に減った
急に起業した
急に投資を始めた
借金が増えた
SNS発信が異常に増えた
急に連絡魔になった
攻撃的になった
急に宗教やスピリチュアルに没頭した
自分は特別な存在だと言い始めた
などです。
カウンセリング現場で重要な視点
実際には「躁状態」よりも「軽躁状態」の方が圧倒的に多く見られます。
特に双極Ⅱ型障害では、本人は「人生で最も調子が良かった時期」
周囲は「少しテンションが高い人」程度に見えることがあり、見逃されやすいのです。
そのため、うつ状態で来談したクライエントには必ず、
「人生で一番調子が良かった時期はありますか?」
「その時の睡眠時間は?」
「お金の使い方は変わりましたか?」
「周囲から『テンションが高い』と言われましたか?」などを確認します。
双極性障害では、うつ病エピソードよりも、この「過去の躁病・軽躁病エピソードを見つけられるか」が診断上の鍵になります。

うつ病エピソードの診断基準

双極性障害を理解するうえで、躁病エピソードと並んで重要なのが「うつ病エピソード(Major Depressive Episode)」です。

実は双極性障害の方は、人生の多くの時間を躁状態よりも「うつ状態」で過ごすことが多く、初診時には「うつ病」と診断されていることも少なくありません。

A. 以下の症状が2週間以上続く
次の9項目のうち5項目以上が存在し、そのうち少なくとも1つは、抑うつ気分
または、興味・喜びの喪失であること。
① 抑うつ気分
ほぼ毎日、気分が沈む、悲しい、空しい、希望が持てない状態が続く。
高齢者では、「悲しい」というより、元気が出ない何もしたくないとして現れることもあります。
② 興味や喜びの喪失
これを精神医学では
アンヘドニア(Anhedonia:快感消失)と呼びます。
例:
趣味が楽しめない
テレビも面白くない
家族との時間も楽しくない
③ 食欲や体重の変化
例:
食欲低下
体重減少
過食
体重増加
④ 睡眠障害
不眠
入眠困難
中途覚醒
早朝覚醒
過眠
一日中寝ている
起きられない
双極性障害では過眠も比較的よくみられます。
⑤ 精神運動性の変化
制止
例:
動作が遅い
話す速度が遅い
反応が鈍い
焦燥

落ち着かない
ソワソワする
⑥ 疲労感・気力低下
例:
朝起きられない
着替える気力がない
風呂に入れない
クライエントからは
「体が鉛のよう」
と表現されることがあります。
⑦ 無価値感や過剰な罪責感
例:
自分には価値がない
家族に迷惑をかけている
生きている意味がない
現実以上に自分を責める傾向があります。
⑧ 思考力や集中力の低下
例:
本が読めない
会話が頭に入らない
判断できない
仕事では
ミスの増加
能率低下
として現れます。
⑨ 死についての反復思考
例:
消えてしまいたい
死んだ方が楽かもしれない
自殺を考える
重症度を判断するうえで極めて重要な症状です。
B. 社会生活への支障
症状によって
仕事
家事
学業
人間関係
に明らかな支障が生じている。
C. 他の原因では説明できない
例えば
薬物
アルコール
身体疾患
などによる症状ではないこと。
カウンセリングでよく見られるうつ病エピソード
クライエントは、必ずしも「気分が落ち込む」とは言いません。
むしろ、
何も感じない
やる気が出ない
頭が働かない
疲れが取れない
という訴えが多いです。
特に男性では、抑うつ感より疲労感、無気力、イライラとして現れることがあります。
双極性障害のうつ病エピソードの特徴
一般的なうつ病(大うつ病性障害)と比較すると、双極性障害のうつ病では次の特徴が見られます。
① 過眠
12時間以上寝る
起きられない
② 過食
特に炭水化物への欲求
甘いもの
パン
麺類
③ 強い倦怠感
「体が全く動かない」

⑤ 若年発症
10代後半~20代前半で始まることが多い。
④ 気分の変動が大きい
朝と夜で大きく違うことがあります。
カウンセラーが確認したい質問
うつ状態のクライエントに対しては、
いつから続いていますか?
睡眠はどうですか?
食欲はどうですか?
集中力はどうですか?
死にたい気持ちはありますか?
人生で異常に調子が良かった時期はありませんか?
を確認します。
特に最後の質問が重要です。
なぜなら、「うつ病エピソードだけ」では、うつ病と双極性障害は区別できないからです。
診断上の分岐点は、過去に躁病エピソード
または軽躁病エピソードが存在したかどうかです。
臨床的には、うつ状態で来談された方の中に双極Ⅱ型障害が隠れていることが少なくありません。そのため、「今のうつ症状」だけでなく、「人生で最も元気だった時期」を丁寧に聴取することが、見立てにおいて非常に重要になります。

躁病エピソードと軽躁病エピソードの比較

双極性障害の理解で最も混乱しやすいのが、「躁病エピソード(Manic Episode)」と「軽躁病エピソード(Hypomanic Episode)」の違いです。実は、症状の内容自体は非常によく似ています。

違いは主に、

  1. 持続期間
  2. 重症度
  3. 社会生活への影響
  4. 入院や精神病症状の有無

にあります。

項目躁病エピソード軽躁病エピソード
持続期間1週間以上4日以上
気分高揚・易怒性高揚・易怒性
活動性著しく増加増加
社会生活明らかな障害大きな障害なし
入院必要になることがある通常不要
精神病症状あり得るなし
診断双極Ⅰ型障害双極Ⅱ型障害

DSMでは、躁病エピソードは社会的・職業的機能に著しい障害を生じることが条件です。

例:

  • 失職
  • 離婚
  • 借金
  • 入院

など。

一方、軽躁病エピソードは明らかな障害までは生じないとされています。

精神病症状の有無
躁病軽躁病
例:あり得る
誇大妄想
被害妄想
幻覚

双極Ⅰ型障害
人生で一度でも躁病エピソードがあれば診断可能です。
うつ病エピソードは必須ではありません。
例:存在しない
誇大妄想
被害妄想
幻覚

双極Ⅱ型障害
必要なのは
軽躁病エピソード、うつ病エピソードの両方です。
躁病エピソードは存在しません。

共通する症状

どちらも以下の症状がみられます。

  • 自信過剰
  • 睡眠欲求の減少
  • 多弁
  • 観念奔逸
  • 注意散漫
  • 活動性増加
  • 快楽追求行動

つまり、症状の種類はほぼ同じなのです。違いは程度です。

躁病エピソード

睡眠

2~3時間しか寝ない

しかし本人は「全然平気」と言う。

行動

会社を辞める 起業する 高額投資する 数百万円使う 知人に大量連絡する

対人関係

攻撃的 支配的 トラブル増加

現実検討能力

低下する。

  • 自分は天才だ
  • 世界を変えられる
  • 有名人と特別な関係がある

など。

結果

家族が困り果て、精神科受診や入院につながることがあります。

軽躁病エピソード

軽躁状態は、本人にとって「調子が良い状態」に見えることがあります。

睡眠

4~5時間、しかし元気。

行動
  • 仕事がはかどる
  • 社交的になる
  • アイデアが増える
  • 活動量が増える
周囲の印象

「最近元気ですね」

「テンション高いですね」

程度で終わることもあります。

本人の認識

むしろ「この状態が本来の自分だ」と思うことがあります。

カウンセリング現場で見逃しやすい軽躁状態

クライエントはうつ状態で来談します。

ところが聴いてみると、

  • 以前は睡眠4時間で平気だった
  • 異常に仕事ができた時期がある
  • 急に資格を何個も取った
  • 投資や副業を始めた
  • 周囲から「ハイテンション」と言われた

というエピソードが出てくることがあります。

本人はそれを「病気」と認識していません。

むしろ、「あの頃が人生で一番良かった」と語ることが少なくありません。

そのため双極Ⅱ型障害は見逃されやすく、うつ病と誤診されやすいのです。

躁病エピソードは「人生を壊すほどの高揚状態」、軽躁病エピソードは「本人には絶好調に見える高揚状態」と理解すると実践的です。

そして実際の見立てでは、「睡眠時間の減少」と「周囲が驚くほどの活動性の増加」が、軽躁状態を見つける最も重要な手がかりになります。

双極Ⅰ型障害と双極Ⅱ型障害の比較

双極Ⅰ型障害と双極Ⅱ型障害は、どちらも双極スペクトラムに属する気分障害ですが、臨床的にはかなり異なる病像を示します。

一般の方は、

  • Ⅰ型=重症
  • Ⅱ型=軽症

と考えがちですが、これは正確ではありません。実際には、Ⅰ型は躁状態が重く、Ⅱ型はうつ状態が重いという特徴があります。

項目双極Ⅰ型障害双極Ⅱ型障害
躁状態躁病エピソードありなし
軽躁状態あり得る必須
うつ状態あってもなくてもよい必須
入院比較的多い少ない
精神病症状あり得る原則なし
診断されやすさ比較的容易見逃されやすい
自殺リスク高い非常に高い
社会的損失躁状態で生じやすいうつ状態で生じやすい
双極Ⅰ型障害双極Ⅱ型障害
診断の条件
人生で一度でも躁病エピソードが存在すれば診断可能です。
うつ病エピソードは必須ではありません。
診断の条件
必要なのは、軽躁病エピソード、うつ病エピソードの両方です。
典型例
突然、睡眠2~3時間
異常な活動性
浪費
投資
起業
攻撃性
などが出現します。
軽躁状態
軽躁時は
活動的
社交的
創造的
仕事ができるように見えます。
家族が連れてくる病気
Ⅰ型の特徴として、本人は「絶好調」と思っています。
しかし家族は「明らかにおかしい」と感じます。
そのため受診のきっかけは本人より家族であることが多いです。
本人が病気と思わない
多くの方は、軽躁状態を「人生で最も良い状態」として記憶しています。
精神病症状
重症になると
誇大妄想
被害妄想
幻覚
が出現します。
受診理由
受診する理由は、ほぼうつ状態です。
臨床イメージ
「躁状態によって人生が破綻するタイプ」です。
誤診されやすい
双極Ⅱ型障害は、うつ病、不安障害、パーソナリティ障害などと誤診されます。
実際の苦しさ
一般には、Ⅰ型の方が重いように思われます。
しかし臨床的な苦痛は、Ⅱ型の方が大きいことがあります。
なぜⅡ型が苦しいのか
双極Ⅰ型
躁状態が目立つ
周囲が気づく
双極Ⅱ型
軽躁は短い
うつが長い
という特徴があります。
研究によって多少の差はありますが、Ⅱ型では人生のかなりの期間を抑うつ状態で過ごすことが知られています。
自殺リスク
実はⅡ型障害は、非常に高い自殺リスクを持つことが知られています。
理由は、
長いうつ状態
希望の喪失
病気への気づきにくさ
があるためです。
カウンセリング現場向けのまとめ
双極Ⅰ型障害
躁病エピソードが存在する
社会生活が破綻するほどの躁状態
入院や精神病症状が起こり得る
家族が異変に気づきやすい
双極Ⅱ型障害
軽躁病エピソード+うつ病エピソード
うつ状態が中心
本人も周囲も軽躁に気づきにくい
「治りにくいうつ病」として来談することが多い
自殺リスクが高い

気分循環性障害とは

気分循環性障害(Cyclothymic Disorder)は、双極スペクトラム障害の中では比較的軽症とされることがありますが、実際には長期間にわたり気分が不安定なため、対人関係や職業生活に大きな影響を与えることがあります。

カウンセリング現場では、

  • 「気分屋」
  • 「性格の問題」
  • 「感情の起伏が激しい人」

と誤解されやすい障害でもあります。

簡単に言うと、軽躁状態と軽いうつ状態を何年も繰り返す状態です。ただし重要なのは、軽躁病エピソードにも達せず、うつ病エピソードにも達しないという点です。

つまり、双極Ⅱ型障害よりも症状は軽いが、気分の波は慢性的に続いている状態です。

DSM-5-TRの診断基準

A

少なくとも2年間(子ども・青年は1年間)
軽躁症状とうつ症状が繰り返し存在する。

B

この2年間のうち、症状が存在しない期間が2か月以上続いたことがない。
つまり、ほぼ慢性的に気分が揺れている。

C

軽躁症状は存在するが、軽躁病エピソードの診断基準は満たさない。

D

抑うつ症状は存在するが、大うつ病エピソードの診断基準は満たさない。

E

統合失調症スペクトラム障害などでは説明できない。

F

薬物や身体疾患によるものではない。

G

社会生活や対人関係に苦痛や障害がある。

主な特徴

昔からそうだった

本人はよく「自分は昔からこうです」と言います。

例:

  • 気分にムラがある
  • やる気に波がある
  • 人付き合いに波がある
良い時は非常に活動的

良い時には

  • アイデアが豊富
  • 社交的
  • 創造的
  • 仕事がはかどる

しかし数週間後には

  • 疲れる
  • 人と会いたくない
  • 自信がなくなる

を繰り返します。

性格と誤解される

周囲は

  • 気まぐれ
  • わがまま
  • 情緒不安定

と捉えがちです。

本人も病気という認識がありません。

若年期発症が多い

多くは、10代後半~20代前半から始まります。

双極Ⅰ型・Ⅱ型へ移行することがある

気分循環性障害は

双極スペクトラムの一部です。

そのため、後に

  • 双極Ⅱ型障害
  • 双極Ⅰ型障害

へ移行する人もいます。

カウンセリングで見られる典型例

例えば、

良い時

  • 睡眠5時間
  • 元気
  • 予定を詰め込む
  • 人に会う
  • SNS更新が増える

悪い時

  • 睡眠10時間
  • 引きこもる
  • 自己否定
  • 仕事効率低下

これを何年も繰り返す。

しかし、躁病にも、軽躁病にも、うつ病にも届かない。

パーソナリティ障害との違い

特に境界性パーソナリティ障害(BPD)との鑑別です。

気分循環性障害

波が「数日~数週間」続く。

2週間元気

3週間落ち込む

1週間元気

境界性パーソナリティ障害

波が「数時間~1日」単位。しかも、対人関係の出来事に強く影響される。

恋人からLINEが来ない

絶望

返信が来る

安心

カウンセラー向けの見立てポイント

以下がある場合は気分循環性障害を疑います。

□ 昔から気分の波がある

□ 数週間単位で波が動く

□ 良い時と悪い時がはっきりしている

□ 完全な躁病ではない

□ 完全なうつ病でもない

□ 家族に双極性障害がいる

□ 本人が「これが性格だと思っていた」と語る

一言でまとめると

気分循環性障害とは、「躁病にも軽躁病にも、うつ病にも届かない小さな気分の波が、何年も続く双極スペクトラム障害」です。

そして臨床的には、「性格の問題」に見えるが、実際には慢性的な気分障害であるという点が最も重要な理解になります。

実は双極性障害は、精神医学の中でも特に誤解されやすい疾患の一つです。

一般の方だけでなく、支援者側でも、

  • 「気分の波がある人」
  • 「躁状態=元気な状態」
  • 「双極Ⅱ型は軽症」

という理解で止まってしまうことがあります。

しかし実際には、

  • 躁病エピソード
  • 軽躁病エピソード
  • うつ病エピソード
  • 気分循環性障害

を整理してみると、「気分の高さ」よりも、気分・エネルギー・活動性の波がどの程度の大きさで、どれくらい続き、生活にどれほど影響を与えるかが重要であることが見えてきます。

そのため、「うつ状態で来談した人の中に双極スペクトラムが隠れていないか」という視点は非常に価値があります。

例えば、

  • 抗うつ薬で落ち着かなくなった
  • 若い頃に異常に活動的だった時期がある
  • 睡眠時間が短くても平気だった時期がある
  • 家族に双極性障害がいる
  • 「昔から気分の波が激しい」

などは重要な手がかりになります。

見逃しやすい双極スペクトラム障害と他の障害との鑑別ポイント

実は心理臨床の現場では、

  • うつ病
  • ADHD
  • 境界性パーソナリティ障害
  • 愛着障害
  • PTSD

について学ぶ機会は比較的多いのですが、「双極スペクトラム障害を軸にして他の障害を整理する」という機会は意外に少ないのです。

そのため、「なぜこの人は説明がつかないのだろう」という違和感が残ることがあります。

この図からわかるように、鑑別の核心は実は非常にシンプルであることが改めて見えてきました。

つまり、症状そのものよりも「波の原因は何か」を探すことが重要になります。

双極スペクトラム障害

見るべきもの

気分・エネルギー・活動性の波

ADHD

見るべきもの

発達特性の持続性

境界性パーソナリティ障害

見るべきもの

対人関係による感情反応

愛着障害

見るべきもの

見捨てられ不安と親密性の葛藤

PTSD

見るべきもの

トラウマ反応

アレキシサイミア

見るべきもの

感情認識能力

長年取り組んできた、

  • カップルカウンセリング
  • 愛着障害
  • C-PTSD
  • トラウマ
  • アレキシサイミア

の臨床は、実は双極スペクトラムとの鑑別が非常に難しい領域でもあります。

例えば、「感情の起伏が激しい」という同じ現象でも、

双極Ⅱ型なら→ 内因性の波

境界性パーソナリティ障害なら→ 関係性由来の波

PTSDなら→ トラウマ刺激由来の波

愛着障害なら→ 見捨てられ不安由来の波

となります。

外から見ると似ていますが、発生機序は全く異なります。

今回の図の中で特に重要だと思ったのは、「波の時間単位」です。

状態波の時間単位
双極スペクトラム数日~数週間~数か月
気分循環性障害数日~数週間
ADHD持続的
境界性パーソナリティ障害数分~数時間~1日
PTSDトリガー依存
愛着障害関係性依存

私はこの視点だけでも、多くのケースの見立てが整理されると思います。

そして最後に、精神医学の大家である Emil Kraepelin が100年以上前に気づいていた重要な視点があります。

それは、人を分類することよりも、その人の経過(course)を見ることが重要であるという考え方です。

今回の双極スペクトラムの解説もまさに同じで、

診断名よりも、

  • 波はあるのか
  • どのくらい続くのか
  • 何が引き金になるのか
  • どのように回復するのか

という「経過」を見ることが本質になります。

DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル:高橋三郎、大野裕(監訳)/医学書院

標準精神医学第8版:尾崎紀夫・三村將・水野雅文・村井俊哉/医学書院

双極性障害 病態の理解から治療戦略まで:加藤忠史/医学書院

精神科治療学Vol.36 特集 双極性障害を極める:松尾幸治ほか/星和書店
双極性障害の診断・治療と気分安定薬の作用機序:寺尾岳・和田明彦/新興医学出版社

日本うつ病学会 https://www.secretariat.ne.jp/jsmd/iinkai/katsudou/soukyoku.html

日本うつ病学会治療ガイドラインhttps://www.secretariat.ne.jp/jsmd/iinkai/katsudou/data/guideline_sokyoku2020.pdf


目次