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強迫性セックス症-性依存症

目次

強迫性セックス症の概要、臨床、診断、要因、依存症との違い

強迫的セックス症とは、自分自身や他人に対して異常な性的欲求や行動が現れる精神障害の一つです。性的嗜好や欲求が常に強く、性的行動に対する抑制力が低下している状態を指します。そのため、性的行動に対して常に強迫的な欲求を持ち、性的行動を過剰に行ってしまう傾向があります。強迫的セックス症は、性(セックス)依存症と同じ意味で用いられたりします。

また、性(セックス)依存症(性嗜好障害)と強迫性セックス症は同じものではありませんが、類似点があります。強迫性セックス症は、性的な妄想や欲求によって生じる強迫的な性的行動が主な特徴であり、一方で性依存症は、セックスへの執着や、そのために時間やエネルギーを費やしすぎることが主な特徴です。両疾患は、性的行動に対するコントロールの欠如や、行動が日常生活を妨げることなど、一部の症状が類似しています。

ただし、性依存症は、コンピューターやスマートフォンなどのインターネットを用いた性的行動に偏っていることもあり、強迫的な性的行動を伴わないことがある一方、強迫性セックス症は、性的行動が必ずしも依存的であるわけではなく、強迫的であることが重要な特徴です。また、性依存症は、薬物乱用やアルコール依存症などの依存症と同様に、神経学的なメカニズムに基づいている可能性がありますが、強迫性セックス症の原因やメカニズムはよく分かっていません。

臨床症状と診断

強迫的セックス症の主な臨床症状は次のとおりです。

  • 反復的な性的妄想や性的行動を行う強い衝動
  • セックスに対する強迫的な渇望や欲求
  • 実際のセックス行動や性的妄想によって、社会的、職業的、またはその他の重要な領域で重大な問題が生じる
  • 心理的苦痛や苦悩を引き起こす
  • 自己抑制力の欠如や自制心の低下を伴うことがある

ただし、強迫的セックス症は、性的行動に対する強迫的な衝動が強いという点で、性依存症と共通しているとされています。

ICD-11においての強迫的セックス症の診断基準があります。

ICD-11において、強迫的セックス症は「強迫的な性的行動を繰り返し行い、その行動が自己や他人に重大な苦痛を与え、社会的、職業的、その他の重要な機能に障害を与える」と定義されています。具体的には次の診断基準があります。

  • 強迫的な性的行動を繰り返すことにより、自己や他者に重大な苦痛を引き起こすことがある。
  • 強迫的な性的行動が、社会的、職業的、またはその他の重要な機能に障害を引き起こすことがある。
  • 強迫的な性的行動が、物理的な危険、性感染症、法的問題、またはその他の問題を引き起こすことがある。
  • 診断のためには、これらの基準を満たす症状が、その人の性的嗜好、文化、宗教的背景、社会的コンテキスト、および法的規制といった文脈に関連していることが必要です。

疫学的データ・他の精神疾患との併存

強迫的セックス症に関する正確な疫学データはまだ限られています。しかし、いくつかの研究によると、男性よりも女性の方がこの症状に苦しむ傾向があるとされています。また、精神疾患や薬物乱用などの既往がある人や、性的虐待の被害者である人にも多く見られる傾向があります。

強迫性セックス症の疫学に関するデータは限られていますが、アメリカ合衆国の成人人口の約3〜6%が生涯において強迫性セックス症を経験しているとされています。また、男性よりも女性に多く見られるとされています。ただし、この疾患は自己申告による調査のため報告数が不足しているのは確かです。また、性的行動への制御が困難なため、性感染症やHIV感染のリスクが高くなる可能性があります。

強迫性セックス症は、他の精神疾患と併存することがよくあります。具体的には、次のような疾患が挙げられます。

  • 抑うつ症状や不安障害
    強迫性セックス症は、抑うつや不安の症状を引き起こすことがあります。また、逆に抑うつや不安の症状が強迫的セックス行動を誘発することもあります。
  • バイポーラ障害(双極性障害)
    バイポーラ障害は、気分の高揚と落ち込みが交互に現れる疾患です。強迫性セックス症は、バイポーラ障害の気分の高揚期に増悪することが知られています。
  • アルコール依存症や薬物依存症
    アルコールや薬物の乱用は、強迫的セックス行動を誘発することがあります。
  • パーソナリティ障害
    特に、境界性パーソナリティ障害との併存が報告されています。

強迫性セックス症と併存する他の精神疾患は個人差がありますが、上記のような疾患との併存が比較的多い傾向があります。

架空のケース例

強迫的セックス症は、異常な性的衝動や行動によって特徴づけられる性的衝動制御障害の一種であり、次に架空のケースを挙げます。

1つ目のケースは、女性のAさんです。Aさんは若い頃からセックスに強い衝動を感じ、何度も異性と関係を持つことになってしまいます。しかし、その後も彼女はセックスに対する衝動が止まらず、さらに強くなっていきました。Aさんは仕事中でも、公共の場でも、異性に対して性的な関心を持ち、誰かに触れたい、自分自身を見せたいという欲求を抑えることができません。Aさんは自分の性的行動に対する罪悪感と恥ずかしさを感じており、これらの感情から逃れるためにアルコールや薬物に頼るようになりました。

2つ目のケースは、男性のBさんです。Bさんは子供の頃から異常な性的興奮を感じ、他の子供たちに対して性的な行為を行うようになってしまいました。この行動はBさんにとって当たり前のことであり、罪悪感や恥ずかしさを感じることはありませんでした。しかし、彼は成長するにつれて、自分の行動が他人から受け入れられないことに気づき、自己嫌悪に陥ります。さらに、Bさんは自分の行動によって他人が傷ついていることに気づき、自分自身を責めるようになりました。

3つ目のケースです。ある男性、Aさんは自分が女性とセックスすることに強い衝動を感じるようになりました。Aさんはこの衝動を抑えられず、職場の女性に対して嫌がられるようなセクシャル・ハラスメント行為を繰り返してしまいました。そのため、職場での人間関係が悪化し、解雇される結果になりました。しかし、Aさんはセックスに対する衝動を抑えられず、他の女性に対しても同様の行為を繰り返し、法的な問題を抱えることになりました。

4つ目のケースです。Bさんは長年にわたり、自分が子供のころに性的虐待を受けたトラウマから、性的な思考が頭から離れず、それを抑えることができませんでした。そのため、Bさんは公共の場で性的な行為を行うような問題行動をとり、逮捕されることになりました。Bさんはこの問題を認識していましたが、自己コントロールができず、治療を受けることを拒否していました。しかし、逮捕後、強制的に治療を受けることになり、セックスに対する衝動が抑えられるようになりました。

強迫的セックス症のケースには、性的虐待やトラウマ、性的に不適切な行為を繰り返すことで、法的な問題を引き起こすケースがあります。また、自己コントロールができず、治療を拒否することがあるため、家族や社会的支援の必要性が高い病態です。

要因とリスク

強迫性セックス症の正確な原因は不明ですが、次の要因が関与する可能性があります。

  • 生物学的要因
    神経伝達物質の不均衡、脳の構造的異常、ホルモンレベルの変化などが関与する可能性があります。
  • 環境要因
    過去のトラウマ、不安、うつ病、家族や個人のセックスの価値観、性教育の欠如などが関与する可能性があります。
  • 社会的要因
    社会的規範や文化的なセックス観念、過激なメディアの影響などが関与していることがあります。

これらの要因が相互に作用し、強迫的セックス症を引き起こすことがあります。しかし、この障害がどのように発生するかについては、まだ十分に理解されていません。

強迫性セックス症は、個人的な苦痛や機能の障害を引き起こす可能性があります。
性的関心や行動が常に強迫的な性質を持っているため、人間関係、職場環境、社会的生活などに問題を引き起こすことがあります。
また、性的な行動に伴うリスクとして、性感染症の感染や妊娠などが挙げられます。強迫的な性的行動を行うために合法または非合法な方法を取ることがあり、その結果、法的な問題や社会的な非難を引き起こすこともあります。加えて、強迫的な性的妄想や行動によって、自己イメージに悪影響を与えることになります。
全般的に言えることですが、強迫性セックス症は、多大な苦痛をもたらすだけでなく、その周囲の人々にも影響を与える可能性があるため、適切な治療を受ける必要があります。

治療法

強迫的セックス症の治療法には、次のようなものがあります。

  • 認知行動療法
    強迫的な性的行動に対する不適切な思考パターンを変えることで、自己制御を促進する治療法です。
  • 薬物療法
    抗うつ薬や抗精神病薬などの薬物が使用されます。これらの薬物は、性的衝動を抑制する効果があるとされています。
  • サポートグループ
    強迫的セックス症を持つ人々が集まり、互いに支援し合うグループです。治療を受けるうえでの情報交換や相談などに役立ちます。
  • 家族療法
    家族が患者の治療に参加し、患者を支えることで、治療の効果を高める治療法です。

ただし、強迫的セックス症に対する治療法はまだ十分に確立されていないため、治療法の選択は個別の症状や状況に応じて決定されるべきです。また、強迫的セックス症は性的行動依存症の一種とも考えられるため、性的行動依存症の治療法が用いられることもあります。

エリアス・アブジャウデとロリン・M・コーラン編集「衝動調節障害」2010年/ケンブリッジ大学出版局

「衝動調節障害:行動依存症の理解と治療のための臨床医のガイド」、ジョンE.グラントとマークN.ポテンザ2018年/W.W.ノートン&カンパニー

Eric HollanderとDan J. Steinが編集「Handbook of Impulsive and Compulsive Disorder」2010年/John Wiley & Sons

ハーヴェイ・B・ミルクマンとケネス・W・ワンバーグが編集「衝動調節障害」2007年/アメリカ心理学会

ナンシーM.ペトリーが編集「行動中毒:DSM-5以降」2016年/オックスフォード大学出版局

ブライアン・P・マコーミック著、2009年/ProQuest「行動の知覚と調節に対する実行機能と動機づけの自己規律の相乗的貢献の神経心理学」

尾崎紀夫・三村將・水野雅文・村井俊哉:標準精神医学第8版/医学書院

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