無料面談の不適応的スキーマの見立てと「こころ」の心理教育を併用した3時間対面による生きづらさへの無料メンタルケアを実施しています。
メンタルケア研究室では皆様がwebで不適応的スキーマのセルフチェック180問と質問用紙90問で見立ての目安が行えるように掲載していました。
しかし、さらに一歩踏み込んで3時間無料面談による18領域を各10問に設定した面談用の質問用紙を作成しました。180問の質問用紙の試案で該当する領域から本人の困りごとに近いものを一、二領域選び、具体的な一場面に当てて共同で検討します。
『このスキーマがあります』と断定する代わりに、『この場面では、この予測が強く働いたかもしれません』の提案を加え、ご本人の反証や別の説明による現実的で安全な行動と、必要な支援につながる道筋を一緒に考えていく作業です。
面談用の180問の質問用紙と具体的な場面を組み合わせる
点数が高い領域をすべて一度に扱うより、ご本人が困っている具体的な場面を一つ選び、関係しそうなスキーマを1~2個検討すると進めやすくなります。例えば同じ「人に合わせる」行動でも、怒られるのが怖いなら⑩服従スキーマ、相手を苦しめたくないなら⑪自己犠牲スキーマ、よく思われたいなら⑫評価と承認の希求スキーマが手掛かりになります。
このページを含め、心理的な知識の情報発信と疑問をテーマに作成しています。メンタルルームでは、「生きづらさ」のカウンセリングや話し相手、愚痴聴きなどから精神疾患までメンタルの悩みや心理のご相談を対面にて3時間無料で行っています。
質問用紙は第1群から第18群の180問
この用紙は独自に作成した面談補助資料です。標準化された Young Schema Questionnaire(YSQ)や診断検査ではありません。
001:親しい人の態度が少し変わるだけで、関係が終わるのではないかと不安になる。
011:人からの助けを受けると、後で見返りを迫られるのではないかと身構える。
021:つらいときに気持ちを十分に受け止めてくれる人はいないと感じる。
031:自分には、人に知られたら嫌われるような根本的な欠点があると思う。
041:集まりに参加していても、自分だけ輪の外にいるように感じる。
051:日常の大切な判断を、一人で下す自信が持てない。
061:安全を確認しても、重大な危険を見落としている気がする。
071:身近な人と考えが違うと、自分が何を望むのかわからなくなる。
081:評価される機会では、自分の能力不足が明らかになる気がする。
091:自分の希望を伝えるより、相手に決めてもらうほうが安全に感じる。
101:自分の負担が増えても、相手のつらさを減らせるなら引き受ける。
111:周囲にどう見られるかが、自分の選択を大きく左右する。
121:何かを始めると、成功より失敗した場合の損失が先に浮かぶ。
131:悲しい気持ちを見せるより、平静に振る舞うべきだと思う。
141:自分に課した高い目標を達成しても、すぐ次の課題が気になる。
151:人が間違いを犯したら、事情にかかわらず厳しく責任を取るべきだと思う。
161:自分にとって重要なら、周囲の都合より自分の希望が優先されてよいと思う。
171:重要だとわかっている作業でも、退屈だと先延ばしにする。
① AB 見捨てられ/不安定
「大切な人はいずれ離れる」「頼れる関係は続かない」という予感です。相手の返信の遅れや予定変更が、強い不安を呼ぶことがあります。背景には、養育者の関わりが予測しづらかったこと、突然の別離、安定しない関係などが考えられます。
② MA 不信/虐待
「人は自分を傷つけ、利用するかもしれない」という警戒です。背景として、裏切り、暴力、いじめ、境界線を無視された経験などがありえます。
③ ED 情緒的剥奪
「自分が必要とする温かさ、理解、支えは得られない」という予想です。世話は受けていても、気持ちを聴いてもらえなかった経験などが背景となりえます。求めているものが「親しさ」「共感」「助けや助言」のどれなのかで、必要な対応も変わります。
④ DS 欠陥/恥
「本当の自分を知られたら嫌われる」「自分には根本的な欠陥がある」という感覚です。繰り返された批判、屈辱、拒絶、条件つきの受容などが背景になりえます。
⑤ SA 社会的孤立/疎外
「自分はどこにも属せない」「周囲とは根本的に違う」という感覚です。いじめ、排除、環境との不一致、少数派としての経験などが関わることがあります。
⑥ DI 依存/無能
「助けがなければ日常の判断や課題をこなせない」という思い込みです。過保護、挑戦する機会の少なさ、自分で行ったことを繰り返し否定された経験などが関わりえます。
⑦ VH 損害や疾病に対する脆弱性
「いつ重大な病気、事故、災害などが起きてもおかしくない」「起きたら対処できない」という強い予感です。実際に怖い出来事を経験したことや、危険を強調され続けたことなどが背景になりえます。
⑧ EN 巻き込まれ/未発達の自己
親しい人の気分や希望と自分のものとの境目が曖昧になり、「別の選択をすると相手を傷つける」と感じやすい状態です。家族内で過度に密着していたこと、子どもが大人の気持ちを支える役割を担ったことなどが背景となりえます。
⑨ FA 失敗
「自分は人並みに達成できない」「どうせ失敗する」という思い込みです。比較や失敗への厳しい評価、得意分野を見つける機会の不足などが関わりえます。
⑩ SB 服従
「自分の希望や怒りを示すと、相手に攻撃されたり見捨てられたりする」と感じ、選択を相手に委ねやすくなります。意見を述べると強く罰せられた経験や、支配的な関係が背景になりえます。
⑪ SS 自己犠牲
「人を助けなければ申し訳ない」と感じ、自分の休息や必要を後回しにします。人の世話を担う役割が早くからあったことや、助けた時にだけ認められた経験などが背景になりえます。
⑫ AR 評価と承認の希求
「認められていない自分には価値がない」と感じ、選択の基準が他人の反応になりやすい状態です。成果や体裁を重視する環境、条件つきの称賛などが背景となりえます。
⑬ NP 否定/悲観
よいことが起きても、「やがて悪くなる」と危険や損失に注意が向きやすい状態です。先の読めない生活、繰り返された失望、周囲から受け継いだ心配の仕方などが関わりえます。
⑭ EI 感情抑制
怒り、喜び、悲しみ、親しさなどを表すと、恥をかく、否定される、制御できなくなると感じます。感情表現を叱られた経験や、感情を見せにくい環境が背景となりえます。
⑮ US 厳密な基準/過度の批判
「もっとできるはず」「休んではいけない」と、自分や周囲に高い基準を課します。失敗を強く責められたこと、成果によって評価されたことなどが背景になりえます。
⑯ PV 罰
「間違えた人は厳しく罰せられるべきだ」と考え、自分や他人の失敗に強い怒りを向けます。失敗への容赦がない環境などが背景となりえます。
⑰ EG 権利要求/尊大
「自分の希望は優先されるべきだ」と感じ、相手の負担や公平なルールを見落としやすくなる状態です。適切な制限を経験しにくかったことなどが関わる場合があります。また、無力感を隠すために強く振る舞う場合もあり、背景は一様ではありません。
⑱ IS 自制と自立の欠如
長期的に望むことのために、目先の不快さや衝動を調整するのが難しい状態です。生活の中で一貫した枠組みや練習機会が少なかったことなどが関わりえます。ただし、睡眠不足、強いストレス、発達特性など、ほかの要因も確認が必要です。
面談では次の5項目を一枚に書くと、ワークを日常につなげられます。
| 確認すること | 記入例 |
| 起きたこと | 「友人から半日返信がなかった」 |
| 浮かんだ考えと気持ち | 「嫌われたかもしれない。不安8/10」 |
| いつもの行動 | 「何度も連絡する」 |
| 別の見方と必要なこと | 「忙しい可能性もある。安心できる連絡の取り方を相談したい」 |
| 今回試す小さな行動 | 「追加の連絡は一度にし、落ち着いてから希望を伝える」 |
質問用紙180問は面談で仮説を立てるための独自の試案です。高得点を診断や原因の証明として扱わず、本人の経験、現在の環境、生活上の困りごとと照らし合わせます。単回の面談では、無理に過去のつらい場面を詳しく再体験するより、現在の安全を確かめ、持ち帰れる小さな対処を一つ決める形が使いやすいと思います。
不適応的スキーマについて面談することで、繰り返す困りごとを、クライエントと一緒に「理解できる一連の反応」として捉えられることができます。例えば「相手から返信がない」という出来事を、「見捨てられる」という予測、不安、何度も確認する行動、その後の関係への影響へとたどれます。スキーマ療法では、こうした予測が活性化したときの対処や心の状態も併せて扱います。

クライエントにとっての利点
第一に、自分を責めるだけで終わらずに済みます。 「どうしていつも同じことをするのだろう」を、「不安になったとき、何を守ろうとしていたのだろう」と考えられます。反応を正当化するためではなく、その役割を理解したうえで、別の行動を選べるようにするためです。
第二に、感情が強くなる瞬間に気づきやすくなります。 「返信がない」という事実と、「嫌われたに違いない」という予測を分けてみると、すぐに行動する前に立ち止まる余地が生まれます。実際にスキーマ療法を継続して受けた人への質的研究でも、自己理解や感情への気づきが得られたという報告があります。ただし、これは1回の面談だけで同じ変化が起きることを示す研究ではありません。
第三に、本当に必要だったものを言葉にできます。 「相手を責めたい」の奥に「安心したかった」、「黙って従った」の奥に「拒絶されたくなかった」があるかもしれません。必要が見えると、例えば「責める」以外に「不安だったので、話せる時間を教えてほしいと伝える」という選択肢を検討できます。
次のように説明できると思います。
「ここでは、過去の原因を決めたりするためにスキーマを調べるわけではありません。つらくなる場面で、心が何を予測し、どう自分を守ってきたかを一緒に確かめます。その方法が今も役立っている部分と、別の方法を試せそうな部分を見つけていきましょう。」
面談を行う専門家にとっての利点
複数の高得点スキーマを、具体的な場面から見分けやすくなります。 例えば同じ「返信がないと強く不安になる」でも、中心にある予測は「相手は去る」(見捨てられ)、「私の気持ちは分かってもらえない」(情緒的剥奪)、「本当の私を知られたら嫌われる」(欠陥・恥)など、異なり得ます。質問票の点数だけで一つに絞るより、「その瞬間、いちばん怖かったことは何ですか」と尋ねる方が、本人に即した見立てにつながります。
また、支援する対象を具体化できます。 スキーマの内容、苦痛への対処、現在の相手との関係を分ければ、「予測を検討する」「感情を落ち着ける」「必要を伝える」など、どこから取り組むかを本人と相談できます。モードを用いた事例理解も、状態の切り替わりと介入点を整理するために提案されています。
1回完結(3時間無料)の面談での使い方
3時間の面談では、18種類をすべて確定することより、本人が持ち帰れる「一つの反応の地図」を作ることが実用的だと考えます。最近の出来事を一つ選び、次の順に確認できます。
| 確かめること | 質問例 |
| 出来事 | 「何が起きましたか。相手が実際に言ったことは何ですか」 |
| 心の予測 | 「その瞬間、何が起きると思いましたか」 |
| 感情と身体 | 「どんな気持ちや身体の変化がありましたか」 |
| 守る行動 | 「そのつらさを和らげるために、何をしましたか」 |
| 結果と必要 | 「その場では役立ちましたか。その後どうなりましたか。本当は何が必要でしたか」 |
| 次の一歩 | 「似た場面があれば、試せそうな小さな行動はありますか」 |
専門家の理解
面談の終わりには、「あなたには見捨てられスキーマがあります」と断定するより、「見捨てられるという予測が、この場面では強く働いたように見えます。ご自身の感覚に合いますか」と、本人が修正できる仮説として返すのが適切だと思います。
質問用紙は独自に作成したものであるため、得点の境界値や高得点の順位を診断的に扱うことはありません。また、相手からの暴力、支配、継続的な侮辱など現実の危険がある場合は、不安をスキーマだけで説明せず、安全と事実関係を先に確認します。
なお、スキーマ療法の有効性を示す比較試験はありますが、例えば一つの試験で検討されたのは50回の治療です。1回面談の到達点はスキーマの「治療完了」ではなく、反応への理解、本人が使える言葉、次に試す行動を一つ得ることと設定するのが妥当です。
3時間無料メンタルケアの面談組み立て
こころの働きを説明し、クライエントが最近経験した一場面を一緒にたどる。そこでスキーマの質問を使う、という流れです。心理教育を聞いた直後に自分の体験へ結びつけられるため、用語の説明だけで終わらずに済みます。
3時間面談の組み立て例
| 時間の目安 | 内容 | クライエントが持ち帰るもの |
| 30分 | 呼吸法やマインドフルネス、困りごとと、今日扱いたい場面の確認 | 面談の目的 |
| 45分 | こころの心理教育。他者、感情、記憶、経験から生じる予測、身を守る反応を説明 | 自分を理解するための言葉 |
| 35分 | 最近の出来事を一つ、具体的に振り返る | 反応が始まるきっかけ |
| 40分 | スキーマの質問と、コーピング・モードの確認 | 繰り返す反応の仮説 |
| 30分 | 図やメモにまとめ、日常で試す一歩を決める | 持ち帰れる「自分の反応の地図」 |
時間は目安です。強い苦痛が出た場合は振り返りを止め、現在の安心を取り戻すことに時間を使います。
スキーマの質問では、18種類の名前を順に尋ねるよりも、次の順番が面談に使いやすいと考えます。
- 「そのとき、実際には何が起きましたか」
- 「その出来事を、どのような意味として受け取りましたか」
- 「いちばん怖かったことは何ですか」
- 「どんな感情や身体の変化がありましたか」
- 「そのつらさから自分を守るために、何をしましたか」
- 「その方法は、その場ではどう役立ち、その後どうなりましたか」
- 「本当は、相手や自分自身から何を必要としていましたか」
例えば「返信が来ないと不安」という話でも、恐れていることが「去られる」「気持ちを分かってもらえない」「欠点を知られて嫌われる」のどれに近いかで、面談で扱う内容は変わります。また、同じスキーマから異なる対処やモードが生じ得ます。点数と名称を先に決めず、本人の言葉で確かめることに意味があります。
質問紙を使う場合も、結果は会話の入口として扱うのがよいと思います。特に独自に作成した質問紙には、得点からスキーマを確定するための検証済みの基準がありません。高得点の項目を二、三種類選び、「どの場面で、どのように当てはまるか」を聞く使い方が面談にはなじみます。
面談の結びには、例えば次のようになります。
「今日は、相手の反応が見えないときに『見捨てられるかもしれない』という予測が強まり、不安を減らすために何度も確かめたくなる、という流れが見えてきました。これは現時点の仮説です。ご自身の感覚に合う部分と、違う部分はありますか。次に似た場面が来たとき、最初に気づけそうな合図を一つ決めましょう。」
この進め方の到達点は、「私にはこのスキーマがある」と決めることより、「この場面で、私の心はこう反応する」と本人が分かることです。継続的なスキーマ療法を受けた人の研究では、自己理解や感情への気づきが有益だったと報告されています。一方、1回面談に同じ治療効果を見込めるという意味ではありません。面談では、「理解できたこと」と「次に試す小さな行動」を成果として置くのが誠実だと思います。
不適応的スキーマとコーピング・モード
早期不適応的スキーマとは、自分自身、他者、対人関係について身につけてきた、比較的持続する感じ方や予測のパターンです。「私は見捨てられる」「私の気持ちは大切にされない」といった考えだけでなく、それに結びつく記憶、感情、身体の反応も含めて理解します。幼少期から青年期にかけての経験、基本的な情緒的欲求がどのように満たされたか、生まれ持った気質などが、形成に関わると考えられています。ただし、現在の反応から過去の原因を一つに決めることはできません。
日常の出来事がそのスキーマと関係する意味を持つと、スキーマが活性化することがあります。例えば、大切な人から返信がないとき、「忙しいのかもしれない」と考える前に「見捨てられるのではないか」という予測が強まり、不安や身体の緊張が生じる場合です。このときの「返信がない」は出来事であり、「見捨てられる」はその人の中に生じた解釈です。実際に何が起きているかは、別に確かめる必要があります。
活性化に伴う苦痛に対し、人はこれまで身につけた方法で自分を守ろうとします。スキーマ療法では、その代表的な対処を「服従」「回避」「過剰補償」と整理します。スキーマの内容を事実であるかのように受け入れる、つらい気持ちや場面から距離を取る、その内容と反対の立場を強く取る、といった方法です。こうした対処は短期的には苦痛を和らげることがありますが、同じ方法を繰り返すと、別の受け止め方や行動を試す機会が減る場合もあります。
スキーマモードとは、ある瞬間に前面に出ている感情、考え、身体の反応、行動のまとまりです。例えば、置いていかれるように怖い「傷つきやすい子ども」の状態、つらさを感じないようにする「感情を切り離す保護者」の状態などがあります。スキーマが活性化した際に、何を感じ、どのように対処しているかによって、現れるモードは変わり得ます。一方、不安に気づきながら状況を確かめ、必要を適切に伝える「健全な大人」の状態で対処できる場合もあります。
このように面談では、過去に身につけた予測、現在のきっかけ、そのときの感情と身体の反応、自分を守る行動、その後の結果を一緒にたどります。目的は反応に名前を付けて確定することではなく、「何が起きたとき、心がどう働き、自分には何が必要だったのか」を理解することです。
重要なのは、「スキーマモード=コーピングの次に起こる最後の段階」と捉えすぎないことです。モードは、その時点の心身と行動をまとめて表す言葉です。「傷つきやすい子ども」の状態が強く感じられた直後に、感情を切り離す状態へ移ることもあります。同じ見捨てられスキーマが関わっていても、場面や対処によって異なるモードが現れます。

| 確かめること | 「親しい人から返信がない」場面の例 |
|---|---|
| 出来事・きっかけ | 返信が予定より遅い |
| スキーマに沿った予測 | 「相手は離れていくかもしれない」 |
| 感情・身体 | 不安、胸の苦しさ、落ち着かなさ |
| 対処 | 何度も確認する、気持ちを遮断する、相手を責めるなど |
| その時のモード | 怖くて取り残されたような状態、感情を切り離した状態など |
| 必要と次の行動 | 安心や状況の確認が必要。落ち着いてから伝え方を選ぶ |
この例でも、行動だけを見てコーピングやモードを決めることはできません。 「何から自分を守ろうとしていたか」を本人に尋ねます。また、実際に相手から脅しや支配を受けている場合は、その危険を現実の問題として確かめる必要があります。スキーマ療法でいうコーピングは、主としてスキーマの活性化をどう扱うかを指します。
早期不適応的スキーマの形成・コーピングスタイル・スキーマモード
早期不適応的スキーマの形成・コーピングスタイル・スキーマモード(二つの説明)
まず、三つの言葉の関係を整理します。
| 言葉 | 何を指すか | 例 |
|---|---|---|
| スキーマ | 自分や他者について、長く持ち続けている感じ方・予測 | 「大切な人は、いずれ私から離れる」 |
| コーピングスタイル | その予測が呼び起こす苦痛に対処する、慣れた方法 | 相手に合わせる、距離を取る、先に相手を責める |
| スキーマモード | ある場面で前面に出ている感情・考え・行動のまとまり | 見捨てられそうで怖い状態、感情を遮断している状態 |
同じスキーマを持つ人でも、場面によって異なる対処やモードが現れます。スキーマは比較的持続する傾向、モードはその時々の状態です。
解説
スキーマは、これまでの経験を通して身についた「心の予測」です。 子どもには、安心して人に頼れること、自分で試して育つこと、気持ちや希望を表せること、遊び楽しむこと、適切な決まりの中で自制を学ぶことなどが必要です。こうした必要が長く満たされなかったり、つらい経験が重なったりすると、「私は大切にされない」「失敗したら価値がない」といった予測が身につくことがあります。もともとの感じやすさや、家庭以外での経験も関係します。スキーマがあることだけで、特定の人や出来事を原因と決めることはできません。
例えば、親しい人から返信がないとき、「見捨てられるかもしれない」というスキーマが強まったとします。その不安から自分を守ろうとする方法は、一つとは限りません。
| 対処の型 | その場で起こりうる反応 |
|---|---|
| 服従 | 「やはり嫌われた」と受け取り、関係を失わないために自分の希望を引っ込める |
| 回避 | 傷つく気持ちから離れるため、連絡や親密な関係を避ける |
| 過剰補償 | 置いていかれる前に相手を責めたり、関係を強くコントロールしようとしたりする |
専門家として説明・見立て
形成について。 古典的なスキーマ療法は、気質と発達環境の相互作用の中で、基本的な情緒的欲求が持続的に満たされないと、早期不適応的スキーマが形成されやすくなると仮定します。検討する経験には、情緒的な応答の不足、虐待や被害、過保護や自律の機会の不足、非現実的な期待、適切な限界設定の不足などがあります。養育者だけでなく、同級生との関係やその後の経験も聴取対象です。古典的な18スキーマと五つの欲求は有用な臨床モデルですが、理論の再検討も進んでいます。
研究上は、幼少期の虐待・ネグレクト歴と成人期のスキーマ得点との関連が報告されています。ただし、33研究を含む系統的レビューで縦断研究は1件でした。個々のクライエントについて、現在のスキーマから過去の原因を逆算して確定する根拠にはなりません。
コーピングについて。 服従・回避・過剰補償は、主にスキーマが活性化したときの内的な苦痛をどう扱うかを表します。服従はスキーマを真実として受け入れる方向、回避は活性化を感じない・遭遇しない方向、過剰補償はスキーマと反対の立場を強く取る方向です。対人行動だけで分類せず、本人がその行動によって何から身を守ろうとしていたかを確かめます。
モードについて。 面接では、次の四群を区別すると状態の変化を追いやすくなります。
| 群 | 主な例 | 面接で確かめること |
|---|---|---|
| 子どもモード | 傷つきやすい子ども、怒れる子ども、衝動的な子ども、満たされた子ども | 今、どんな感情や必要があるか |
| 対処モード | 従順な服従者、感情を切り離す保護者、過剰補償者 | 何を避け、何を守ろうとしているか |
| 内在化された親モード | 罰する親、厳しく要求・批判する親 | 自分にどのような言葉を向けているか |
| 健全な大人モード | 健全な大人 | 感情を認めつつ、現実を確認し、必要をどう満たせるか |
これは初期の代表的なモードの整理です。モード名を当てはめること自体より、場面ごとの切り替わりと、そのとき満たされていない必要を共同で理解することが面接では重要です。
実際の面接では、最近の具体的な一場面について、①何が起きたか、②その瞬間に何を予測したか、③どんな感情・身体感覚があったか、④どう身を守り、直後と後日に何が起きたか、⑤本当は何を必要としていたか、の順に一緒にたどると、スキーマ・対処・モードを区別しやすくなります。現在進行中の暴力や支配が疑われる場合は、スキーマによる「思い込み」と解釈する前に、現実の安全を確認してください。
スキーマの形成とコーピングスタイルとモード
クライエント向けの説明と専門家向けの見立て
この資料は、早期不適応的スキーマがどのような経験の中で形成されうるか、苦痛に対するコーピングスタイルがどのように働くか、スキーマモードが何を表すかを説明します。前半はクライエントに伝えられる言葉、後半は面談で仮説を立てるための専門的な整理です。
スキーマは一つの出来事から機械的に生まれるものではありません。過去の経験や現在の困難を、本人あるいは家族の責任だと決めつける資料でもありません。説明が実際の経験に合っているかを、本人と一緒に確かめてください。
第1部 クライエントに伝える説明
スキーマはどう育つのか
「子どもは、安心して頼れること、自分で試せること、気持ちや希望を表せること、遊んだり休んだりできること、必要な決まりを教わることを通して、人や自分について学んでいきます。こうした経験が不足したり、怖い経験が繰り返されたりすると、『自分は大切にされない』『失敗したら見捨てられる』といった見方を身につけることがあります。」
「その見方は、当時を生き抜くためには役立ったかもしれません。ただ、大人になって状況が変わっても同じ予想が強く働くと、今の相手の行動を確かめる前につらくなったり、望まない行動を繰り返したりします。生まれつきの気質や、その後の経験も影響します。過去の一つの出来事で、その人の人生が決まるわけではありません。」
どのような経験が関わるのか
いつも気持ちを聴いてもらえなかった、必要なときに守られなかった、いじめや裏切りを経験した、といったことが一例です。一方で、何でも代わりに決めてもらって自分で試す機会が少なかったり、適切な境界を学ぶ機会がなかったりすることも、別の見方に関係しえます。家庭だけでなく、学校、友人関係、職場なども影響します。
「心当たりがないのに点数が高い」こともあります。そのときは無理に原因を探すより、いま困っている場面を手がかりにしてよいのです。
コーピングスタイルとは
スキーマが刺激されて苦しくなったとき、心が自分を守ろうとして取る、いつもの反応を指します。同じ『見捨てられるかもしれない』という不安でも、次の三つの方向がありえます。
- 従う
- 「やっぱり捨てられる」と感じ、相手の予定に合わせすぎたり、何度も確認したりする。つながりを守ろうとする行動です。
- 避ける
- 「不安になるくらいなら親しくならない」と距離を取り、つらい気持ちに触れないようにする。傷つきを減らそうとする行動です。
- 反対方向に強く振る舞う
- 「絶対に相手に左右されない」と相手を強く管理したり、先に突き放したりする。無力感から自分を守ろうとする行動です。
これらは身を守るために身についた反応です。ただ、目先のつらさが軽くなっても、安心した関係や助けを得る機会が減り、もとの予想が残る場合があります。行動を責めるより、その奥で何を必要としていたかを確かめます。
スキーマモードとは
モードは、ある瞬間の気持ち、考え、体の反応、行動がまとまった『その時の心の状態』です。スキーマが普段から持っている見方だとすると、モードは出来事に触れたときの実際の反応です。一人の中で短時間に切り替わることもあります。
| 心の状態の呼び名 | クライエントへの説明 |
|---|---|
| 傷つきやすい子ども | 孤独、怖さ、悲しさが強くなり、『助けてほしい』と感じる状態。年齢を子どもに戻すという意味ではありません。 |
| 怒っている子ども | 大切な必要が満たされず、怒りとして表れている状態。怒りの理由を確かめつつ、相手を傷つけない表し方を選びます。 |
| 守ろうとする状態 | 従う、気持ちを切り離す、強く出るなど、傷つきを避けようとする状態。守る意図と今の影響の両方を見ます。 |
| 厳しい内なる声 | 『もっと頑張れ』『失敗したら罰を受けるべきだ』と自分を責める状態。その言葉が役立っているか確かめます。 |
| 健康な大人 | つらい気持ちを認め、事実と予想を分け、必要な支えや境界を考えられる状態。 |
| 安心している子ども | 受け入れられ、遊びや楽しさ、親しさを感じられる状態。これも大切な心の働きです。 |
「子ども」や「親」という名前は、心の反応を理解するための比喩です。実際に別の人格がいるという意味ではありません。
一つの場面をつなげます。
例えば、大切な人から返事が来ないとします。『いつか見捨てられる』という見方が刺激され、強い不安を感じるかもしれません。そこで何度も連絡する人も、先に心を閉ざす人もいます。不安に飲まれているとき、心は傷つきやすい子どものような状態かもしれません。『忙しい可能性もある。落ち着いてから希望を伝えよう』と考え直せたなら、健康な大人の働きが加わっています。
「どの反応も、あなたを悪い人と決める材料ではありません。まず何が起きたかを確認し、そのとき本当に必要だったことを考えてみましょう。」
第2部 専門家向けの整理
形成に関する理論と研究の位置づけ
Youngの従来のモデルは、気質と発達環境の相互作用の中で、基本的な情緒的欲求が繰り返し十分に満たされないと、自己・他者・世界について持続的な表象が形成されると仮定する。想定された五つの欲求は、①安全と養育を含む安定したつながり、②自律・有能感・自己同一性、③欲求や感情を表現する自由、④自発性と遊び、⑤現実的な限界と自己制御である。これは形成を考える理論的枠組みであり、個別事例で一対一の因果を証明するものではない。
| 形成に関わりうる経験 | 面談で確認すること |
|---|---|
| 必要な応答の不足 | 温かさ、共感、保護、練習機会など、何が必要で得られなかったか。経験の頻度と、その人にとっての意味。 |
| 危険や被害 | 脅し、虐待、裏切り、排除などの実態。現在も続く危険の有無。安全な環境や保護者の存在。 |
| 過保護や境界設定の不足 | 本人に任されなかったこと、適切な限界を学べなかったこと。障害や実際の支援必要量との区別。 |
| 周囲の考え方の取り込み | 家族や仲間から繰り返し聞いた言葉、モデルにした対処、所属する集団や文化の規範。 |
研究のレビューは、成人のスキーマ得点と幼少期の情緒的ネグレクトや虐待との関連を報告した。ただし縦断研究は一件で、個人のスキーマから原因を逆算する根拠にはならない。児童・青年の研究でも関連はみられるが、経験によって研究量は異なる。
成人後の人間関係や生活環境も予期を強めたり修正したりしうる。親だけを原因に置かず、気質、仲間、排除、保護的な経験と現在の安全も検討する。
スキーマ コーピング モードの区別
| 概念 | 時間的な特徴 | 臨床で尋ねる問い |
|---|---|---|
| スキーマ | 比較的持続する予期。特定の場面で活性化する。 | 『何が起こると思いましたか』 |
| コーピングスタイル | 活性化したスキーマの苦痛を扱う習慣的な方向。複数を使い分けうる。 | 『その不安や痛みをどう乗り切ろうとしましたか』 |
| スキーマモード | その瞬間に前景化する感情・認知・身体感覚・対処を含む状態。切り替わりうる。 | 『その時、どんな自分になった感じがしましたか』 |
臨床モデルでは、現在の誘因がスキーマを活性化し、それへの対処によって特定のモードが前景化する。モードは対処行動だけでなく、感情や認知を含む状態を表す。『行動そのものがスキーマ』と同一視しない。
三つのコーピングスタイルと維持の仕組み
- 降伏
-
スキーマの内容を事実として受け入れる方向。『私は見捨てられる』と信じて必要以上に従ったり、実際に不安定な関係にとどまったりしうる。短期的には葛藤を避けられるが、必要を表して応答を受ける経験を得にくくなる。従順な服従者モードは一つの表れであり、行動だけから決めない。
- 回避
-
スキーマに結びつく感情や状況から離れる方向。親密さを避ける、感情を切り離す、活動に没頭して考えないなどがありうる。短期的には痛みが減るが、安全な人との関係や新しい学習の機会も減りやすい。孤立や無感覚は切り離す保護者モードとして現れる場合がある。
- 過剰補償
-
スキーマと正反対の位置に立ち、傷つきを打ち消そうとする方向。『無力な自分は認めない』と強く支配したり、『欠陥を知られないよう完璧でいなければ』と振る舞ったりする。短期的には力や安心を感じても、弱さや必要を表しにくくなる。相手に害が出ている場合は明確な限界設定も必要である。
以上の三類型はスキーマへの内的な対処を説明する。外から見た『仕事に熱心』『人に合わせる』などの行動と一対一に対応しない。健康で文脈に合った対処まで病理化しない。
反復による維持は、降伏では『やはり予測どおりだ』と感じる経験、回避では予測と異なる安全な経験の不足、過剰補償では親密さや相互性が損なわれる可能性として整理できる。ただし必ずそうなるわけではなく、危険な環境では回避や警戒が身を守る。関係上の被害を本人の対処の結果として責めない。
代表的なスキーマモード
| 群とモード | 状態と支援の焦点 |
|---|---|
| 子ども 傷つきやすい子ども | 怖さ、悲しさ、孤独、無力感が前景化する。まず経験を認め、現在の安全と必要な支えを確認する。 |
| 子ども 怒っている子ども | 必要が満たされず、怒りや抗議が強くなる。必要は受け止め、相手を傷つける表現には境界を設ける。 |
| 子ども 衝動的な子ども | 目先の欲求を優先し、遅延や不快感への耐性が低い。理解に加えて現実的な限界を支える。 |
| 子ども 満たされた子ども | 受容、楽しさ、好奇心、安全なつながりを感じる。安定した体験や遊びの余地を支える。 |
| 対処 従順な服従者 | 拒絶や対立を恐れ、従いすぎて必要を表せない。現実の脅威を先に確認し、安全な選択肢を広げる。 |
| 対処 切り離す保護者 | 感情や必要を感じにくくして耐える。防御の機能を尊重し、急に感情表出を強いない。 |
| 対処 過剰補償者 | 優位性、攻撃、管理、過度の完成度などで脆弱さを覆う。背景の必要と行動の影響をともに扱う。 |
| 内在化した親 要求的な親 | 『もっとできるはず』『弱みを見せるな』などの厳しい規則が働く。基準とコストを見直す。 |
| 内在化した親 罰する親 | 誤りに『罰されるべき』という声が働く。責任と人格への攻撃を区別する。 |
| 健康な大人 | 必要を認め、現実を評価し、他者の権利と自分の境界を守って行動を選ぶ。 |
この一覧は代表的な整理であり、モードの名称や下位分類は文献や時期によって異なります。『子ども』『親』は状態を理解するための比喩であり、人格の数を示すものではありません。
近年の理論的再整理では、降伏を resignation、過剰補償を inversion と呼び替える提案もあります。活性化したスキーマを事実として受け入れるか、避けるか、反対の自己像で打ち消すかという機能を理解します。モードは機械的な順番で生じるものではなく、必要や状況に応じて重なり、切り替わります。
見捨てられ不安の一場面から考える
誘因が『パートナーの返信が半日ない』であれば、まず予定や既知の事情、相手の過去の振る舞いを確認します。その上で『捨てられる』というABの予期と孤独・不安が活性化するかを問うことです。何度も連絡する、親密さを断つ、相手の行動を厳しく管理するなど、異なる対処が現れ可能性があります。強い不安のときは傷つきやすい子ども、感情を切り離すときは切り離す保護者、支配的になるときは過剰補償者が前景化する、と仮説が置けます。ただし名称は本人の体験を理解するための道具であり、行動から機械的に決めません。
代替となる健康な大人の行動は、①いまの事実を確かめる、②不安やつながりを求める気持ちを認める、③連絡の希望を落ち着いて伝える、④必要に応じて相手との関係の実際の安全性を評価する、という順で考えられます。
単回面談での進め方
1 現在の危険、体調、強い解離や自傷の切迫など、先に対応すべきことを確認する。
2 最近の一場面を選び、出来事と本人の予測、感情、身体の反応を分けて聞く。
3 その場で何から自分を守ろうとしたかを聞き、対処の短期的な利点を認める。
4 必要ならモード名を仮に示し、『合っていますか』と本人と検討する。
5 本人が本当に必要としていたものと、今選べる小さな行動や支援先を確認する。
過去の記憶を扱う技法や椅子を使う対話は、モデル上の重要な技法であっても、この説明に必須ではありません。単回面談では、安定化と現在の生活に戻れる終わり方を重視し、現在進行中の被害には安全と必要な支援を優先します。
面談の確認欄
一つの場面について、本人の言葉を中心に記入します。モード名は必要な場合のみ仮に用い、訂正や別の説明を優先します。
| 確認すること | 本人の言葉と面談で確かめたこと |
|---|---|
| 起きた場面と現在の安全 | |
| 浮かんだ予測 | |
| 感情と体の反応 | |
| 対処したことと役に立った点 | |
| その時の心の状態 | |
| 本当に必要だったもの | |
| 今回選ぶ小さな行動と支援 |
領域の概念:International Society of Schema Therapy, Schema Therapy Central Concepts. https://schematherapysociety.org/Schema-Therapy
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