自己でも躁病相の状態を感じず双極性障害はうつ病との見分けが難しくなります。双極性障害ⅠとⅡの分類でわかる躁とうつの病相期間などの統計と躁・うつの違いをデータにしています。
双極性障害は躁の状態とうつの状態があります。躁病相には強弱はありますが、気分の高揚と開放感の状態が現れますので自己の調子が良好であると錯覚を起こしがちです。対局するうつ病相は抑うつ気分、無価値観、自責感などを生じるため、生きづらいと感じ苦しさを伴います。このことからも、うつ病相の状態で精神科の診察を受けることが多くなります。しかし、自己にはうつ状態しかないと思い込み医師に不実を申告してしまいます。実際は双極性障害でありながら、この思い込み申告が医師を惑わし最初の診察では65%もがうつ病であると診断されてしまう理由となります。
双極性障害はうつ病と見分けが難しい
- 初期診断で最も多かった診断は?
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- うつ病/うつ状態(65%)
- 自律神経失調症(14%)
- パニック障害(11%)
- 双極性障害の診断がつくまで受診した訪問病院数
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- 最初または2件目(70%)
- 3件以上(30%)
- 正確な診断に至るまでに時間がかかった主な要因
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- 躁の症状を病気として認識しておらず、医師に伝えなかった(39%)
- 双極性という疾患を知らなかった(38%)
- 医師とのコミュニケーション不足
- 正確な診断に至った主な要因
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- 治療の過程で医師が双極性障害の可能性を疑った(57%)
- 躁状態に切り替わった(30%)
- 他の医師を受診したら診断が変更された(28%)
双極性障害の方は躁の状態を調子が良好状態だと感じていて、病気という意識がない方が多いようです。
- Ⅱ型は双極性障害が判明しにくいですが、治療しないと躁うつ状態が一生のうちに何度も繰り返しやすくなります。
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Ⅱ型の場合は50%がうつ期間で、軽躁病相は1%強、混合病相は2%強の期間ですので、精神科の受診時に躁、軽躁の意識は少なく、うつ病相の苦しい時に訪れているようです。このことが最初の診断で双極性障害の方もうつ病と診断されるケースが多くなるということです。
海外のAngst,jet al,Arch Gen psychiatry2011の報告では、うつ病の症状で医療機関を受診した患者の16%が双極性障害だったということが示されています。 - 双極性障害の経過の割合は双極性Ⅰ型は30%がうつ病相の期間で、躁または軽躁、混合病相の期間は15%で過ごしています。
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最初の双極性の状態からの再発は数年(5年位)かかります。治療を受けなければ2度目、3度目の再発の間隔は短くなり、再発の繰り返しが再発を生み1年で4回、5回以上と増していくこともあります。寛解期間(平常時)が少なくなるということは、特にⅠ型では社会機能に大きな影響をおよぼすだけではなく、社会機能に対する後遺症も残すことになります。また、Ⅱ型の場合はⅠ型へと変化することも考えなくてはなりません。
- 一生のうちに再発の繰り返しは90%以上になります。
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・数回から30回以上繰り返しますが、平均としては9回程度躁
・年に4回以上繰り返す急速交代制は10%〜20%(抗うつ薬によって引き起こされるケースがある)
・治療を受けなかった場合は躁病相は2〜3カ月、軽躁、抑うつ躁は6カ月以上続くケースがある
・うつ病よりも自殺率は高く精神疾患の中で最もリスクが大きい(一般と比較すると15倍と考えられ、急速交代型の場合が最も高い)
双極性障害とうつ病の抑うつ状態の違い
DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル:高橋三郎、大野裕(監訳)/医学書院
標準精神医学第8版:尾崎紀夫・三村將・水野雅文・村井俊哉/医学書院
双極性障害 病態の理解から治療戦略まで:加藤忠史/医学書院
精神科治療学Vol.36 特集 双極性障害を極める:松尾幸治ほか/星和書店
双極性障害の診断・治療と気分安定薬の作用機序:寺尾岳・和田明彦/新興医学出版社日本うつ病学会 https://www.secretariat.ne.jp/jsmd/iinkai/katsudou/soukyoku.html
日本うつ病学会治療ガイドラインhttps://www.secretariat.ne.jp/jsmd/iinkai/katsudou/data/guideline_sokyoku2020.pdf