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「適応症」物語-医学的知識編

目次

適応症(適応障害AD)架空例のケースから症状の理解と知識を学ぶ精神医学物語-4弾

適応症(AD)物語

高校まで成績はトップクラスで希望の大学にも入学できた。友達も多い方で何一つ不自由なく過ごしてきた。
大学卒業後は一流企業に就職することができ、人事部に配属された。人事部で3年後に係長に昇進、その後は総務課に移動した。同期の中で役職が係長に昇格したのは一番早かった。昇格を契機に恋人との結婚も約束していた。総務課では2年間在籍したのちに4月に経理課に配属された。

経理課は人事部や総務課の業務内容と著しく異なり、数字を扱うことが多かった。実は、学生時代から数字に関する分野が苦手で計算ソフトなどには触れたこともなく興味もなかった。また、業務では数字を見ながらの入力は戸惑うことが多く苦労している。同僚も先輩も親切に教えてくれるのだが、何分頭に入ってこない。そのためミスも多く、業務を理解するのに戸惑いがある。
既に経理課に移動して2カ月経過しているが、一人でできることは少ない。そのため、いちいち他者に確認しながら業務を進めていることが多く、遅れが出るようになってきている。それでも係長という肩書で期待されてきたため、仕事はできる振りをしているせいか精神的に疲労が感じられるようになってきている。

7月は梅雨時期の影響か、だるくて朝起きるのが辛くなってきている。しかし、今まで風邪1つひいたことがなく、会社も休んだことがないくらい体力には自信がある。気合で何とかなると思い無理して出勤するが、経理課での業務は普段からの遅れに単純ミスが頻繁に出るようになってきている。なんとなく周りからの視線も気になりだした。

8月に入って間もない日に、朝起きて会社に向かうとするが不安を感じて動悸が強く、会社を休んでしまった。次の日には会社に向かう電車の中で不安が生じ、会社を休むことにした。その夕方、彼女が心配して部屋まで来てくれた際には不安などの症状がなく、外食したうえにカラオケにも行けるくらいの体調だった。

しかし、次の日も朝になると不安を感じ動悸がしたうえに足もすくんだ。心配になり内科を受診したが、疲れが溜まっているのではということだった。その後は会社に出勤はしたものの、業務に対する不安感や意欲の低下で集中できない為に精神科を受診した。
精神科ではベンゾジアゼピン系不安薬の処方された。服用すると動悸は改善されるものの眠気が生じて業務に支障をきたすため、改善されたとはいえない。うつ状態には抗うつ薬があると紹介されているが、少量を短期間使うのが基本だと言われている。そもそも、総務課の業務についていけないのが原因だとわかっているが、プライドが許さず葛藤状態であると自覚している。

精神科の医師からは、明らかにストレスになる要因があり、それに反応して情緒面や身体面、行動面に支障をきたしている。ストレスの発端から3ヶ月以内に症状が現われていることから、適応障害だと診断された。基本的に薬での治療法はないようだ。問題は、はっきりしているので職場の環境調整などの解決案を考えることが先決であると指導を受けた。このまま6カ月以上も症状が続くとうつ状態にもなりかねないとのことだ。

問題は、わかっているので解決策としていくつか挙げてみた。
➀・思い切って会社を辞める
➁・上司に事情を相談して他の部署に配属してもらう
③・休養を申し出て、スクールなどで計算ソフトの基礎からの操作を学ぶ

このようなことが浮かんだ。➀➁はプライドが許さないために③にするのが自分にとっては適切だと考えたが、会社が認めてくれるかが心配だった。
会社の判断は、そこまでして頑張る気持ちがあるのだったら応援する。社員には明かさないので気にするな。頑張れ!と、気持ち良い返答だった。

そこから、3カ月かけて経理の基礎から計算ソフトについて学ぶと同時に実務に向けての訓練をした。数字に向かうことに楽しささえ覚えた。

翌年の1月から復帰した。社内のやり方はあるものの、スクールで学んだ以上の複雑な業務はないため、知識的には優位に立つこともできていて、現在は満足いく仕事ができている。彼女との結婚の話も順調に進んでいる。

医師の考えを予測をしてみた

この男性は適応障害の典型的な例と見なすことができます。彼は学業や職業での成功と社交性に恵まれていたが、新しい職場で遭遇した課題に直面して、心身のストレスに苦しみ始めました。特に、彼は新しい業務に対する知識やスキルが不足していたことだけではなく、数字に対する苦手意識が以前からあったようです。それなのに周囲から期待されているレベルに達することができず、自信を失い、ミスを犯し、遅れを取り戻そうとして過労に陥りました。

彼が経験した症状は、適応障害の典型的な症状であると言えます。適応障害とは、ストレスが強い状況に対処するために必要な心理的な資源が枯渇し、心身に多くの症状を引き起こす状態です。彼の場合、主な症状は不安、動悸、疲れ、意欲の低下、集中力の低下、そして業務の遅れが出るようになっています。

また、適応障害は、長期間にわたってストレスにさらされ続けることによって引き起こされることもあります。この男性は、学生時代から高い成績を収めてきたことから、自己要求が高く、常に完璧を求める傾向があるかもしれません。また、彼の意識なのか、職場の方針なのか高い業績を求め厳しい評価基準をもっている可能性があります。このような意識を強く持つことや環境で働くと、ストレス強くがかかり、適応障害を引き起こす可能性が高くなります。

彼の適応障害は、うつ病や不安障害など、他の精神疾患と混同されることがあります。彼が体験している症状は、不安や動悸など、不安障害と重なる部分があります。しかし、適応障害は、特定のストレス要因に直面したときにのみ発生する傾向があるため、彼が経理課に移動したことが引き金になった可能性があります。

治療面では、ベンゾジアゼピン系不安薬を処方したという点に留意する必要があります。これらの薬剤は、短期的には症状の軽減に役立つことがありますが、長期的には依存症や離脱症状のリスクがあることが知られています。不安薬は、一般的に不安症状の軽減に効果がありますが、副作用として眠気を引き起こすことがあります。彼はこの薬を服用することで動悸を改善することができましたが、眠気が生じて仕事に支障をきたしていました。このような場合、薬の種類や用量を調整することが必要とされます。
そのため医師は、薬物療法だけでなく、認知行動療法やストレス管理技術などの非薬物療法を併用することが望ましいとこの男性に適切な説明を行ったと考えられます。
心理療法は、ストレス管理、問題解決、認知行動療法などの技法で、ストレスを管理するためのスキルを患者に教えます。

診断

診断

ICD-11によると、適応障害は、一つ以上のストレス源によって引き起こされる反応性のある不適応な症状が現れる状態であり、そのストレス源が解消されると症状が改善することが特徴です。

DSM-5によると、適応障害は、一つ以上のストレス源に対する適応の失敗によって引き起こされる症状であり、そのストレス源が存在する限り症状が持続することが特徴です。また、適応障害は、主に以下の3つに分類されます。

  1. 適応障害(不安/うつ病混合型):不安やうつ病の症状があらわれるタイプ
  2. 適応障害(不安型):不安症状があらわれるタイプ
  3. 適応障害(うつ病型):うつ病症状があらわれるタイプ
知識

適応障害の疫学については、一般人口で約10%、診療所や病院などで診察を受けた人々では、約50%が適応障害を発症することが報告されています。

適応障害の主な臨床症状には、不安、うつ病、身体的症状(頭痛、胃腸障害、疲労感など)などがあります。

診断には、ストレス源が特定され、そのストレス源によって引き起こされる症状が存在することが必要です。治療には、ストレス源の除去や軽減、ストレスへの対処法の習得、認知療法、リラクゼーション法などが用いられます。また、必要に応じて抗不安薬や抗うつ薬などの薬物療法も行われます。

適応症の概要

適応障害(Adaptive Disorder)とは、人々が緊張、不安、ストレスなどによって、日常生活において機能しなくなる状態を指します。適応障害は、人生の変化、ストレス、トラウマなどによって引き起こされ、通常は数週間から数か月続きますが、治療がない場合には長期化することもあります。

適応障害は、通常、以下のような症状を引き起こします:

  1. 気分の変化:憂うつ、不安、不安定な気分、イライラなどの気分の変化が現れます。
  2. 身体的症状:頭痛、腹痛、吐き気、めまい、身体の痛みなどの身体的症状が現れることがあります。
  3. 睡眠障害:寝付きが悪くなったり、眠りが浅くなったり、早朝覚醒したりすることがあります。
  4. 不安感:不安感、過剰な心配、恐れ、不安感、緊張感などが現れます。
  5. 行動の変化:活動量の低下、社交的な活動の制限、社会的な撤退、仕事や学業の低下、食欲の変化などが見られることがあります。

適応障害は、通常、心理療法やカウンセリング、ストレスマネジメント技術、薬物療法などが用いられます。治療の目的は、症状の緩和、ストレスへの対処方法の改善、および再発予防のための能力の向上です。治療の期間は人によって異なりますが、一般的には数か月から数年にわたります。

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