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回避的特性とアレキシサイミアへのACTセッション

目次

対人恐怖の症状を回避性パーソナリティ症とアレキシサイミアの特性を疑う患者へのACTアプローチを具体的会話で行ったセッションを公開

回避性パーソナリティ障害(Avoidant Personality Disorder: AvPD)と、アレキシサイミア(Alexithymia)の特性を疑う場合は、感情表現や人間関係の回避、内的感情の理解・認識に困難を伴うため、アプローチを慎重に考える必要があります。

回避性パーソナリティ障害に対しては、自己批判や恐怖の認識と修正、段階的な曝露を通じて、対人関係の回避傾向を克服するようなアプローチが必要となり、アレキシサイミアには、感情の認識と表現をトレーニングし、身体感覚に注意を向けることで感情へのアクセスを促進します。

回避的特性とアレキシサイミアを疑う相談

 保育園に入園しましたが、自分の発話について羞恥心が強く保育園内では挨拶等の定型文以外ほぼ話せない場面緘黙症のような状態が続きました。 家族間では会話ができるのに保育園での対人では思ったことを話せない状況となります。そのため、対人関係に恐怖を感じており、小学校に入学すると一部の同級生などに気持ちが悪いとからかわれるようになりました。また、 学生時代を通して夏休みや冬休みの長期休暇時の課題に集中できなく、担任や同級生の目が気になり、その度に自己嫌悪に陥ることになりました。

自分の分析や自己評価では、幼い頃から回避性パーソナリティ障害を持っていたのだと思います。最近ではアレキシサイミア の傾向が強くあるようです。

現在は33歳ですが、仕事上だけでなく社会的に人間と関わることをを恐れていて、特に対人場面を避けることでその場をしのいでいて、とても生きづらさを感じています。

今までは、心理カウンセラーのもとで認知行動療法を行ってきましたが、既に放棄している状態です。CBTは私に合わないような気がしています。

今後の希望としては、まず自分自身の特徴を知ることで、気持ちの整理することから初めて、人間関係ではコミュニケーションが取れるようになりたいと思っています。

このページを含め、心理的な知識の情報発信と疑問をテーマに作成しています。メンタルルームでは、「生きづらさ」のカウンセリングや話し相手、愚痴聴きなどから精神疾患までメンタルの悩みや心理のご相談を対面にて3時間無料で行っています。

ACTのアプローチのセッション

クライエントの心理相談内容は、場面緘黙症とも感じられる対人恐怖、回避性パーソナリティ障害、アレキシサイミアの傾向、そして人間関係の難しさに焦点が当てられています。これらの問題に対して、アクセプタンス&コミットメントセラピー(ACT)は有効なアプローチですが、特にクライエントがこれまでの認知行動療法に適応できなかった経験から、より柔軟で受容的な方法が必要です。

ACTセッションの簡素化した進行例

最初にラポール形成とクライエントの受容をサポートすることが重要です。その後、デフュージョンや現在の瞬間への意識を高めることで、過剰な不安や思考の囚われを緩和し、クライエントが自己を観察する視点を持つように促します。最終的に、価値観に基づく具体的な行動に向けたコミットメントを促すことで、クライエントが小さな成功体験を積んでいけるようにサポートします。

STEP
導入とラポール形成
  • セラピスト: 「ここでは、自分を無理に変えようとせず、自分自身を理解し、受け入れることを重視します。まず、あなたが感じていることをそのまま話していただければと思います。あなたの話を聞かせてください。」
  • クライエント: 「自分の考えや感情が分からなくなってしまって、人と関わることが怖いです。」
STEP
アクセプタンス(Acceptance)

ACTの最初のステップは、クライエントが自分の感情や考えを否定せず、受け入れる準備を整えることです。

  • セラピスト: 「自分の考えや感情を否定せず、そのまま認めることは難しいかもしれませんが、まずはどんな感情が自分にあるのかを一緒に見つめてみましょう。どんな気持ちが今ありますか?」
  • クライエント: 「怖さと、どうしたらいいか分からない無力感があります。」
  • セラピスト: 「その怖さや無力感を、ここで感じていることに対して、無理にそれを変えようとせず、ただそのままにしておくことができるか、一緒にやってみませんか?」
STEP
認知デフュージョン(Cognitive Defusion)

考えに距離を置くことで、それに対する過剰な反応を和らげます。

  • セラピスト: 「私たちは時々、考えに囚われてしまいますよね。『私はこうでなければならない』『うまくやれない』といった考えが浮かんできたとき、それをただの考えとして見ることができますか?」
  • クライエント: 「難しいです。頭の中でその考えがぐるぐる回ります。」
  • セラピスト: 「その考えを目の前に浮かべてみて、それに名前を付けるとしたら、何と名付けますか?」
  • クライエント: 「『怖い』ですね。」
  • セラピスト: 「その『怖い』という考えを少し距離を置いて見つめてみましょう。その考えはあなた自身ではなく、ただの言葉です。」
STEP
現在の瞬間に焦点を当てる(Present Moment Awareness)


マインドフルネスの技法を使って、今この瞬間に意識を向けることを促します。

  • セラピスト: 「今ここで一緒にいるこの瞬間に、ただ意識を向けてみましょう。何が見えますか?何を感じていますか?」
  • クライエント: 「椅子の感触や、部屋の空気の冷たさを感じます。」
  • セラピスト: 「それは素晴らしい気づきです。今この瞬間にいることができると、過去や未来の不安から少し距離を置くことができます。」
STEP
自己観察(Self-as-Context)

自分を「体験者」として、感情や思考から分離した存在として捉えます。

  • セラピスト: 「あなたの考えや感情は、あなたの一部ではありますが、それがすべてではありません。あなたは、その考えや感情を経験している存在です。その体験者として、今の自分をどのように感じますか?」
  • クライエント: 「まだ怖いけれど、考えや感情が少し外側にあるような感じがします。」
STEP
価値観の明示(Values Clarification)

クライエントの人生における価値観を明確にし、それに基づいて行動を導きます。

  • セラピスト: 「あなたが本当に大切にしていることは何ですか?どんな人間関係や生き方をしたいと思っていますか?」
  • クライエント: 「安心して人と話したいし、人とつながることを大切にしたいです。」
STEP
コミットメント行動(Committed Action)

クライエントが価値観に基づいて行動を取り始めるためのステップです。

  • セラピスト: 「それでは、その価値観に沿って、まずできる小さな行動を一緒に考えてみましょう。例えば、次回、職場や家庭で試してみたいことはありますか?」
  • クライエント: 「少しずつでも、自分の考えを言葉にすることを試してみたいです。」

ACTセッションの詳細な進行例

1⃣ 導入とラポール形成

回避的特性とアレキシサイミアを疑う33歳のクライエントのケースです。最初の段階となる「導入とラポール形成」は、セラピストとクライエントの信頼関係を築くために非常に重要です。クライエントが過去に心理カウンセリングを受けているものの、うまく進まず、現在はCBT(認知行動療法)を放棄している状況であるため、この段階での丁寧な対応が必要です。

導入とラポール形成におけるポイント

  • クライエントの気持ちや経験に共感する: クライエントが感じている苦痛やこれまでの試行錯誤に共感し、安心感を提供します。
  • 安全な空間の提供: クライエントが心を開きやすくするため、非批判的で受容的な態度を示します。
  • 今後の進め方を柔軟に提案: クライエントが以前にCBTが合わないと感じていたことを尊重し、新しいアプローチがどのように違うかを説明します。

導入とラポール形成の段階では、クライエントが過去に感じていた心理的負担を理解し、それを受容する姿勢を示すことが重要です。クライエントに安心感を与えるため、特に「無理をしない」「そのままの自分を受け入れる」というメッセージを強調し、新しいアプローチに対して柔軟に対応できるよう配慮します。

STEP
セッション開始時の導入

セラピーの最初の部分では、クライエントの気持ちを丁寧に聞き出し、共感的な姿勢を取ることが大切です。

  • セラピスト: 「今日はお越しいただきありがとうございます。今、あなたが感じていることや考えていることを、どんなことでもいいのでお話しください。ここでは無理に自分をつくる必要はありませんので、ありのままのあなたを受け止めますよ。」
  • クライエント: 「最近、自分が何を考えているのか分からなくて、誰とも話したくないし、人と関わることが怖いです。昔からそういう気持ちはありましたが、最近はそれがひどくなっている気がします。」
STEP
共感とクライエントの気持ちを確認

クライエントが自分の気持ちを表現したことに対し、共感し、その気持ちを正確に理解しようとすることが大切です。

  • セラピスト: 「そうですね、人との関わりが怖くて、それがひどくなっているということですね。そうした気持ちを抱えていると、とても辛いと思います。そのように感じた時、どんなことが頭に浮かびますか?」
  • クライエント: 「なんというか、自分は他の人とうまくやれないし、きっと嫌われているんだろうと思います。それに、自分の考えや気持ちがよく分からないことが多くて、どう話せばいいのか分からないんです。」
STEP
非批判的で安全な空間の提供

クライエントが自分の内面を表現できるよう、安全で受容的な空間を提供します。

  • セラピスト: 「そのように感じている時に、無理に何かを話したり、無理に関わる必要はありません。まずは、あなたが今ここでどのように感じているのか、そのままを受け止めることから始めましょう。ここでは何を感じても大丈夫です。」
  • クライエント: 「ありがとうございます。ここでは少し安心できます。今まで、相談しても変わらないんじゃないかと思っていましたが、ゆっくり話すことで落ち着くような気がします。」
STEP
過去のカウンセリング経験に触れる

クライエントはCBTが自分に合わないと感じていたため、その経験を確認し、新しいアプローチについて柔軟に提案します。

  • セラピスト: 「これまでカウンセリングを受けてきた中で、CBTが合わないと感じたとおっしゃっていましたね。その経験についてもう少しお話しいただけますか?」
  • クライエント: 「CBTでは、自分の考え方を変えることが大事だと言われたんですけど、どうしてもそれが難しくて、自分を変えることが無理に感じてしまったんです。」
  • セラピスト: 「そうだったんですね。無理に自分を変えるというのは、とても負担に感じられたと思います。ここでは、無理に変えようとするのではなく、まずはあなたが今感じていることを受け入れ、それをどう扱っていくかを一緒に考えていきます。少し違ったアプローチですが、どう思われますか?」
  • クライエント: 「そうですね、それならやってみてもいいかもしれません。」
STEP
新しいアプローチの説明と信頼関係の強化

新しいアプローチをクライエントに対して柔軟に提案し、安心感を与えます。

  • セラピスト: 「私たちは、あなたが自分自身を理解し、少しずつその感情や考え方と向き合うことができるようにサポートします。そして、その過程で、少しずつ他の人と関わるための方法を一緒に見つけていきますね。無理せず、ゆっくり進めていきましょう。」
  • クライエント: 「今は少し安心しました。少しずつでも、自分の気持ちを整理できるようになりたいです。」

2⃣ アクセプタンス(Acceptance)

33歳のクライエントのケースにおける「アクセプタンス(Acceptance)」は、クライエントが自分の感情や思考、過去の経験を否定せず、受け入れるためのステップです。アクセプタンスは、クライエントが自身の苦痛や困難な感情と向き合い、それを排除しようとするのではなく、ありのまま受け入れることに焦点を当てます。特にこのクライエントは、対人関係の恐怖や自己嫌悪、アレキシサイミア(感情の認識と表現が難しい状態)を経験しているため、このステップが重要です。

アクセプタンスのポイント

  • 感情や思考を無理に変えようとするのではなく、ありのまま受け入れる。
  • 感情にラベルを付け、それを客観的に見る練習をする。
  • クライエントにとって受け入れがたい感情も、ただその存在を認め、共にあることを許容する姿勢を促す。


このステップを経て、クライエントは自分の感情に対する抵抗感を減らし、より自分自身に対して受容的な態度を持つことができるようになります。

STEP
苦痛や感情を認めることの重要性を説明

まず、クライエントが「感情を受け入れる」ことの意味とその重要性を理解できるように説明します。ここでは、感情をコントロールしようとせず、その存在を認めることがカギです。

  • セラピスト: 「私たちは時々、苦しい気持ちや不安な感情を感じたとき、それをどうにかして消そうとか、無視しようとすることがありますよね。でも、実はその気持ちを排除しようとするほど、それは大きくなってしまうことが多いんです。今の感情をそのままに感じること、受け入れることができると、それが少し楽になることがあるんです。」
  • クライエント: 「そうですね、確かに今まで不安な気持ちを感じるたびに、それをなくそうと頑張っていました。でもそれが余計に辛くなったかもしれません。」
STEP
具体的な感情に焦点を当て、受け入れる練習

クライエントの現在の感情や体験に焦点を当て、それを否定せずに受け入れることをサポートします。クライエントが感じている感情を言葉にし、それを受け止める手助けを行います。

  • セラピスト: 「今、例えばこの瞬間に何か感じている不安や緊張はありますか?どんな小さな感情でもかまいません。その気持ちを少し観察してみましょう。」
  • クライエント: 「今は少し不安です。この先どうなるか分からないというか…自分がちゃんと変われるのか心配です。」
  • セラピスト: 「そうですね、不安な気持ちがあるんですね。その不安な感情を今、なくそうとせずに、ただ『不安があるんだな』って感じてみましょう。どう感じますか?」
  • クライエント: 「不安があるのは分かるんですけど、すごく嫌な感じがします。」
STEP
感情と共にあることの練習

クライエントに、感情に対して戦わず、共にあることを練習させます。ここでは感情を避けるのではなく、それを受け入れて共に過ごす方法を学びます。

  • セラピスト: 「不安が嫌な感じだと感じるのは当然です。でも、その不安な気持ちがあること自体を、ただ『不安がここにある』という感じで認めることができるか、試してみましょう。不安は今、あなたの一部かもしれませんが、それがすべてではないということを覚えておいてください。」
  • クライエント: 「不安があることは分かります。でも、まだそれが少し怖いです。」
  • セラピスト: 「その怖さも含めて、今のあなたの感情として受け入れる練習です。不安や怖さが今、ここにいることを認めつつも、それをどうにかしようとしないで、ただ感じるということです。」
STEP
感情に名前を付ける(ラベリング)

クライエントが感情を受け入れる手助けとして、感情に名前を付ける(ラベリング)技法を使います。感情をラベル付けすることで、その感情を客観的に見やすくなります。

  • セラピスト: 「例えば、『これは不安だな』とか、『今感じているのは怖さだ』というように、感情に名前を付けることで、それが少し距離を持つようになります。今、感じている感情に名前を付けてみてください。」
  • クライエント: 「今感じているのは、不安と怖さだと思います。」
  • セラピスト: 「そうですね、それらの感情が今ここにあるんですね。それを無理に変えようとせずに、『今は不安があるな』『怖さがあるな』というふうに受け止めてみてください。どう感じますか?」
  • クライエント: 「少しですが、ただそれを感じることはできるような気がします。」
STEP
感情の存在を許容する

最後に、感情があってもそれを持ち続けて生きていくことが可能であるという考えを強調します。感情は一時的なものであり、それに支配されることなく、共に歩むことができるというメッセージを伝えます。

  • セラピスト: 「不安や怖さがあっても、それは一時的な感情です。そして、それらの感情があっても、あなたはそれに支配されることなく、日々を生きていくことができます。感情はただの感情であり、それに巻き込まれる必要はないんです。」
  • クライエント: 「そうですね、それがただの感情だと思えば、少し気が楽になるかもしれません。」

3⃣ 認知デフュージョン(Cognitive Defusion)

認知デフュージョン(Cognitive Defusion)は、クライエントが自分の思考や感情と距離を取ることで、それらに囚われず、事実として受け取るのではなく、ただ「思考」として捉える力を養うことを目的としています。クライエントのケースでは、過去の対人関係や自己評価に関するネガティブな思考や感情に強く囚われている状態がみられるため、認知デフュージョンは非常に有効です。

認知デフュージョンのポイント

  • 思考と感情を事実として受け入れるのではなく、ただの心の活動として観察する。
  • ネガティブな思考にラベルを付けたり、物理的な形に視覚化して距離を取る技法を使う。
  • 思考に巻き込まれず、反応せず、ただ「そこにある」と気づくことを繰り返す。

このアプローチにより、クライエントは自分の思考や感情に振り回されることなく、距離を置いて観察する能力を養うことができます。これが不安や自己嫌悪感に対する新しい対処方法となり、生きづらさの軽減に繋がります。

STEP
デフュージョンの概念を説明する

まずは、思考に巻き込まれることと、思考を単に観察することの違いについてクライエントに説明します。ここでの目的は、思考を事実のように捉えるのではなく、ただの「心の中の声」として見る練習をすることです。

  • セラピスト: 「私たちの頭の中には、いろいろな考えや感情がいつも浮かんできますね。その中には、役立つものもあれば、私たちを傷つけたり、不安にさせたりするものもあります。今、あなたが感じている『人と関わるのが怖い』とか『自分はうまくやれない』といった考えは、これまでずっとあなたの中にあったかもしれません。でも、それらの考えは本当に事実なのでしょうか?それとも、ただ頭の中で浮かんでいる考えの一つに過ぎないのでしょうか?」
  • クライエント: 「うーん、そうですね。ずっとそう感じてきたけど、確かにそれがいつも本当かどうかはわからないかもしれません。」
STEP
具体的なネガティブな思考を引き出す

クライエントが自分の中で抱えているネガティブな思考を特定し、その思考に対してデフュージョンの練習を行います。例えば「自分は人と関われない」「自分には価値がない」といった思考を扱います。

  • セラピスト: 「例えば、今あなたがよく感じているネガティブな思考は何でしょうか?最近強く浮かんできた考えや感情がありますか?」
  • クライエント: 「そうですね。よく感じるのは、『自分は誰とも良い関係を築けない』という思いです。」
  • セラピスト: 「なるほど。それでは、この思考について少し違った見方をしてみましょう。」
STEP
デフュージョンの技法を使う

具体的なデフュージョンの技法として、「思考を声に出してみる」「歌にしてみる」「視覚化して距離を取る」などがあります。ここでは、「思考にラベルを付ける」という技法を使ってみましょう。

  • セラピスト: 「では、次にこの思考にラベルを付けてみましょう。例えば、『自分は誰とも良い関係を築けない』という思考が頭の中に浮かんできたとき、それを『私は今、〇〇という思考を持っている』と言い換えてみましょう。」
  • クライエント: 「ええと、『私は今、良い関係を築けないという思考を持っている』ということですか?」
  • セラピスト: 「そうです。それに加えて、もしその思考に名前を付けるとしたら何と呼びたいですか?」
  • クライエント: 「うーん、そうですね……『自分はダメな人間だ』みたいな思考ですかね。」
  • セラピスト: 「そうですね。今、その思考に『私はダメな人間だという思考が浮かんでいる』というラベルを付けることで、それがただの考えであって、必ずしも事実ではないことに気づくことができましたか?」
  • クライエント: 「そうかもしれません。ただの考えなのかもしれないです。」
STEP
思考と距離を取る練習

さらに、クライエントにデフュージョンの効果を実感させるために、思考を物理的な対象として視覚化する練習を行います。

  • セラピスト: 「次に、あなたが持っているこの『ダメな人間だ』という考えを、頭の中のスクリーンに映し出してみるイメージをしてみましょう。まるで映画の字幕のようにその言葉が浮かんでいるところを観察してください。どう見えますか?」
  • クライエント: 「文字が頭の中で浮かんでいるのが見える気がします。」
  • セラピスト: 「その文字がただのスクリーン上の言葉であるように、あなたの思考もただ頭の中で浮かんでいるに過ぎません。それをただ観察して、何も判断せずに眺めることができるでしょうか?」
  • クライエント: 「そうですね、少し距離を取って見れる気がします。考えが頭の中にあるけど、それに反応する必要がない感じです。」
STEP
デフュージョンの感覚を確認する

最後に、クライエントが認知デフュージョンを体験し、自分の思考や感情に対して新しい視点を持てるようになったかどうか確認します。

  • セラピスト: 「今、思考と少し距離を取ることができたようですね。どう感じましたか?」
  • クライエント: 「思考に振り回されることなく、それをただの考えとして見ることができる感じがします。」
  • セラピスト: 「そうですね。それがデフュージョンの効果です。これを日常でも、何かネガティブな思考が浮かんできたときに、ただそれを『思考として観察する』ことを続けていけそうですか?」
  • クライエント: 「そうですね、やってみたいと思います。」

4⃣ 現在の瞬間に焦点を当てる(Present Moment Awareness)

「現在の瞬間に焦点を当てる(Present Moment Awareness)」は、クライエントが現在の瞬間に意識を集中させ、過去や未来の思考や不安に巻き込まれず、今の体験に意識を向けることを目的としています。このステップはマインドフルネスに基づいており、クライエントが感情や思考を観察し、評価や反応をせずにただ「今」を受け入れる練習です。

33歳のクライエントの場合、過去の対人関係の恐怖や自己嫌悪、未来への不安(対人関係や生きづらさに対する心配)に囚われがちです。現在の瞬間に焦点を当てることにより、こうした過去・未来に向かう思考を和らげ、今の瞬間に意識を戻すことができるよう支援します。

現在の瞬間に焦点を当てるポイント

  • 呼吸や五感を使って「今」に意識を集中する:体感に注意を向けることで、現在の瞬間を感じやすくします。
  • 思考や感情を観察する:浮かんでくる思考や感情をただ観察し、反応せずに受け入れる。
  • 「今」に戻る練習を繰り返す:過去や未来に囚われることがあっても、何度でも現在に戻ることができるという安心感を与えます。

このようにして、クライエントは「今」という瞬間に存在し、過去や未来の思考から解放される感覚を得られるようになります。これが、アクセプタンス&コミットメントセラピー(ACT)の一環として、クライエントが日常生活の中でも実践できるようになるための重要なステップです。

STEP
現在の瞬間に意識を向ける導入

まずは、クライエントが現在の瞬間に焦点を当てることがどのように役立つか説明し、体験に基づいた気づきを促します。

  • セラピスト: 「私たちは、過去の経験や未来への不安に囚われてしまうことが多いですよね。そうすると、今ここにある瞬間を見逃してしまうことが多くなります。今の瞬間に意識を向けることで、少しでも過去や未来から解放されて、落ち着いた気持ちを持つことができます。今、一緒にそれを試してみませんか?」
  • クライエント: 「今まで、過去のことやこれからどうなるかを考えてばかりでした。今の瞬間に意識を向けるというのは、どうやってやればいいのでしょうか?」
STEP
呼吸に意識を向ける練習

現在の瞬間に集中するために、最もシンプルで効果的な方法として呼吸に意識を向ける練習を行います。

  • セラピスト: 「では、まずは目を閉じてみてください。ゆっくりと深呼吸をしてみましょう。吸って、吐いて……。呼吸に意識を向けてみてください。あなたの体がどう動いているか感じてみてください。息を吸うとき、胸やお腹が少し膨らむ感覚。そして、息を吐くときに、体がどう沈むか。その動きを観察しましょう。」
  • クライエント: 「呼吸がゆっくりしていくのが分かります。」
  • セラピスト: 「そうですね、その感覚に注意を向けてください。今、他の思考や感情が浮かんできても、それに反応せずに『意識を呼吸に戻します』と言って、ただ呼吸に戻ってくることを意識しましょう。どう感じますか?」
  • クライエント: 「少し落ち着いてきました。浮かんでくる思いがあっても、ただ呼吸に戻ることができる気がします。」
STEP
五感に焦点を当てる練習

次に、五感に焦点を当てることで、クライエントが今ここで体験している感覚に気づきを促します。

  • セラピスト: 「次に、五感に意識を向けてみましょう。まずは、周りの音に注意を向けてみてください。どんな音が聞こえますか?風の音や、部屋の中の微かな音などに意識を向けてみてください。」
  • クライエント: 「時計の音や外の車の音が聞こえます。」
  • セラピスト: 「いいですね。それらの音をただ観察しましょう。次に、何か触れている感覚に注意を向けてみてください。椅子に座っている感覚や、手の温かさなど、何か感じますか?」
  • クライエント: 「手が少し暖かくて、椅子の感触も感じます。」
  • セラピスト: 「そうですね、今この瞬間、あなたが感じているすべての感覚に意識を向けてみてください。視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚、すべての感覚が今ここにあります。何か特別なことをしなくても、ただこの瞬間に存在していることが分かりますか?」
  • クライエント: 「はい、今ここにいるという感じがします。」
STEP
思考に気づく練習

クライエントが浮かんでくる思考や感情を観察し、それに反応するのではなく、ただ存在するものとして気づくことをサポートします。

  • セラピスト: 「次に、頭の中にどんな思考や感情が浮かんでくるかに注意を向けてみてください。それがどんなものであっても、それに反応せずに、ただ『今、こんな思考が浮かんできた』というふうに気づいてみましょう。何か思い浮かんでくることがありますか?」
  • クライエント: 「未来のことや、また不安な気持ちが浮かんできます。」
  • セラピスト: 「その不安な気持ちや未来への思考が浮かんできたことに気づきましたね。それに反応することなく、『ああ、今不安があるんだな』とただ観察するようにしてください。どう感じますか?」
  • クライエント: 「それに振り回されることなく、ただあるという感じが分かる気がします。」
STEP
「今」に戻ることの練習

クライエントが思考や感情に巻き込まれるたびに、再び現在の瞬間に意識を戻す練習をします。これは、感情や思考が湧いてくるたびにそれを無視するのではなく、単に気づいて手放し、今に戻る練習です。

  • セラピスト: 「過去や未来への思考がまた浮かんできても、それは自然なことです。気づいたら、ただ呼吸や今の感覚に戻ってくる。それが大切です。焦らずに、何度でもやり直せます。どうですか?」
  • クライエント: 「少しずつできるようになってきた気がします。思考があっても、それに引きずられずに戻ってこれます。」


5⃣ 自己観察(Self-as-Context)

自己観察(Self-as-Context)は、クライエントが「自分」という存在を、固定されたアイデンティティや思考・感情から離れた、より広い視点で観察する能力を養うためのアプローチです。このステップでは、「自分とは何か」という視点を広げ、思考や感情を抱えている存在としての自己を認識することを目指します。特に、33歳のクライエントの場合、自分自身をネガティブな思考や感情と同一視している傾向が強いので、この技法が有効です。

自己観察のポイント

  • 「自分」とは、思考や感情に囚われる固定的な存在ではなく、それらを観察する「広がりを持った自己」であることを理解させる。
  • 思考や感情、身体感覚を客観的に観察する練習を繰り返す。
  • 過去や未来への不安に対する自己を観察し、今の自己との距離を取る体験を通して、自分の思考・感情に振り回されない感覚を育てる。

このアプローチによって、クライエントはネガティブな自己認識から解放され、自分の感情や思考を冷静に観察し、対処する力を高めることができます。

STEP
「自己観察」についての導入

まず、クライエントに「自己観察」の概念を説明します。ここでの目的は、クライエントが自分の思考や感情だけでなく、それを観察している「自分」がいることを認識することです。

  • セラピスト: 「私たちが自分をどう感じるかは、自分の考えや感情と強く結びついてしまいますね。例えば、あなたは『人と関わるのが怖い』と感じると、その瞬間に自分自身を『対人関係が苦手な人』と捉えてしまうかもしれません。しかし、実際はその考えや感情を抱いているあなたがいて、さらに、そのあなたがそれらを『観察』しているんです。」
  • クライエント: 「そうですね。私は今まで、自分が考えていることがそのまま自分だと思っていました。」
STEP
自分を「観察する存在」として認識する練習

次に、クライエントに自分の思考や感情を客観的に観察し、それを抱えている「自分」を見つける練習をします。このとき、感覚や身体の反応も含めて、「それを体験している自分」がいることに気づかせます。

  • セラピスト: 「今、少し目を閉じてください。そして、あなたが感じていることや考えていることをそのまま観察してみてください。何か特別なことをしなくていいので、ただ浮かんでくる思考や感情に気づいてください。どんなものが浮かんできますか?」
  • クライエント: 「最近のことですが、『人と話すのが怖い』とか、『うまくやれない』という考えが浮かんできました。」
  • セラピスト: 「その考えが浮かんできているときに、それを体験しているあなたがいることに気づいていますか?考えや感情が浮かぶあなたと、それを感じている別のあなたが存在するという感覚です。」
  • クライエント: 「うーん、そうかもしれません。考えている自分がいて、それを見ている自分もいるような感じがします。」
STEP
「観察する自己」と「思考・感情の自己」の違いを強調する

ここでは、クライエントが思考や感情そのものではなく、それを「抱えている存在」であることを強調します。「観察する自己」を意識することで、自分の思考や感情と距離を取り、自分がそれに支配されないことを学びます。

  • セラピスト: 「今、あなたは『怖い』という感情や考えを感じていますね。その一方で、それを観察しているもう一人のあなたがいることに気づけましたか?これが『観察する自己』と呼ばれる部分です。」
  • クライエント: 「確かに、感じている自分がいるけど、それを遠くから見ているような感覚もある気がします。」
  • セラピスト: 「そうです。この『観察する自己』は、どんな考えや感情が浮かんできても、それに巻き込まれることなく、ただそれを見つめることができます。これはとても大切な能力で、あなたが自分の感情や思考に支配されずに、冷静にそれらを見る力を強化する助けになります。」
STEP
体験を通して観察する自己を感じる

クライエントに「観察する自己」を実感してもらうために、さらなる実践を行います。ここでは、過去の記憶や未来への不安に対する自己を観察させる方法を用います。

  • セラピスト: 「次に、過去の思い出や未来への不安を少し考えてみましょう。例えば、小学校の時に対人関係でつらい経験があったと言っていましたね。その記憶を思い浮かべた時、今どんな気持ちや体の反応がありますか?」
  • クライエント: 「緊張感や、また同じ失敗をするんじゃないかという不安がよみがえってきます。」
  • セラピスト: 「その感情を抱えている自分と、それを観察している自分がいることに気づいていますか?過去のつらい経験を思い出しても、それを観察している今のあなたは、安全な場所にいますね。」
  • クライエント: 「ええ、そうですね。過去のことは辛いけれど、今の自分はそれを遠くから見ている気がします。」
STEP
観察する自己を日常に活かす方法を学ぶ

最後に、クライエントが日常生活でも「観察する自己」を活用できるようにサポートします。これにより、今後ネガティブな思考や感情が湧いたとき、それに巻き込まれずに対処できる力を育みます。

  • セラピスト: 「この『観察する自己』を日常生活の中でも意識できると、何かネガティブな感情や考えが浮かんできたときに、それをすぐに自分と同一視せず、少し距離を取って見ることができるようになります。例えば、対人関係で不安を感じた時、どうやってこの方法を使えると思いますか?」
  • クライエント: 「次に人と話す時に、不安が湧いてきたら、それを自分そのものとして捉えるのではなく、『今、不安が浮かんでいる』と感じて、それをちょっと離れて見るようにしてみます。」
  • セラピスト: 「それは素晴らしいですね。この視点を持つことで、今後少しずつ生きづらさが和らぐことができます。」

6⃣ 価値観の明示(Values Clarification)

「価値観の明示(Values Clarification)」は、クライエントが自分の人生において何が本当に重要で、どのような価値観に基づいて生きたいかを明確にするステップです。この過程では、クライエントが人生の方向性を明確にし、その価値観に基づいて行動を選択できるようにします。33歳のクライエントの場合、人間関係や自己評価に苦しんでおり、その中で「本当に大切にしたいこと」を探ることが、自己成長の鍵となります。

価値観の明示のポイント

  • クライエントに自分の価値観を明確にし、それに基づいた行動を見つけてもらう。
  • 価値観が変わることがないものであると伝え、目標を達成するための方向性を明確にする。
  • 価値観に基づいた行動が自分の人生における充実感や達成感をもたらすことをクライエントに実感してもらう。

このプロセスを通じて、クライエントは自分の人生における方向性を明確にし、その価値観に沿った行動を選びやすくなります。それにより、人間関係や自己認識における困難が軽減され、より充実した人生を歩むサポートができるようになります。

STEP
価値観についての導入

まず、価値観が何か、そしてそれが日常生活や選択にどう影響するのかを説明します。ここでの目標は、クライエントにとって価値観が人生の方向性を定める羅針盤であることを理解してもらうことです。

  • セラピスト: 「私たちが日々の行動や決断をする際に、実は無意識のうちに『価値観』というものに基づいています。価値観は、私たちが何を大切にしているか、どのように生きたいかを示すものです。例えば、あなたが自分にとって一番大切だと感じることは何でしょうか?」
  • クライエント: 「うーん、そうですね…最近は自分の価値観が何なのか、よくわからなくなってきています。でも、家族との絆や、安心感を大切にしたいと思っているかもしれません。」
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価値観リストの作成

クライエントが自分にとって何が大切かを具体化できるように、価値観に関するキーワードを提示し、これに基づいて自分がどの価値観を大切にしたいかを考えてもらいます。価値観のリストを作成することで、クライエントが自分の優先事項を明確にしやすくなります。

  • セラピスト: 「今から、いくつかの価値観を挙げてみましょう。例えば、『人間関係』、『誠実さ』、『挑戦』、『自由』、『学び』、『感謝』など、さまざまな価値があります。この中で、あなたが自分の人生で特に大切にしたいと思うものを選んでみましょう。」
  • クライエント: 「そうですね…『人間関係』と『安心感』、そして『誠実さ』が大事だと感じます。」
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価値観の優先順位を決める

選んだ価値観の中で、どれが最も重要なのか、優先順位を決めることをサポートします。ここで、クライエントにとって本当に大切なものが浮かび上がります。

  • セラピスト: 「今挙げてくれた価値観の中で、特に優先順位が高いものはどれだと思いますか?もし、ある状況で全てを大切にすることが難しいとしたら、どれを最も優先したいと感じますか?」
  • クライエント: 「うーん、『安心感』が一番大事かもしれません。私は、人との関わりにおいても、自分が安全だと感じられる環境がないと、うまくやれないんです。」
  • セラピスト: 「それはとても重要な気づきですね。安心感があなたにとっての基盤であることがわかります。では、次に『安心感』をどのように日々の生活の中で感じられるかを考えてみましょう。」
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価値観に基づいた行動を探る

価値観が明確になったところで、次にそれを日常生活や人間関係にどう活かせるかを考えます。このステップでは、価値観に基づいた具体的な行動や決断を見つけます。

  • セラピスト: 「安心感があなたにとって大切だと感じているので、それを日常生活や人間関係でどのように感じられるか、具体的に考えてみましょう。例えば、安心感を得るためにどんな行動ができるでしょうか?」
  • クライエント: 「安心感を感じるためには、まずは私が信頼できる人たちともっと時間を過ごしたいです。そして、自分に無理をしない範囲で、人との接触を増やしていくことも大切かもしれません。」
  • セラピスト: 「それは良いアイデアですね。信頼できる人との時間を増やすことが、安心感を得るための行動になります。そして、その安心感があるからこそ、少しずつ新しい人間関係にも挑戦していけるのだと思います。」
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価値観に基づいた目標の設定

価値観に基づいて目標を立て、それを実現するための行動計画を一緒に考えます。このプロセスは、クライエントが目標に向かって前進するモチベーションを保つために役立ちます。

  • セラピスト: 「今、あなたの価値観である『安心感』に基づいて、少しずつ新しい人間関係にも取り組んでいきたいと言っていましたね。それを目標にするなら、どのような小さなステップから始められると思いますか?」
  • クライエント: 「まずは、同僚や友達と少しずつ会話を増やしてみます。それも、私が安心できる場所や状況でやってみたいです。」
  • セラピスト: 「それは素晴らしいスタートですね。その小さなステップを通して、安心感を感じながら少しずつ自分を広げていけるでしょう。重要なのは、常にあなたの価値観に基づいて行動することです。」
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価値観を再確認しながらのフォローアップ

最後に、クライエントが行動を実行した後、どのように感じたか、価値観に基づいて行動できたかを振り返ります。また、行動の途中で挫折を感じた場合でも、価値観に基づいて修正を行うことで、再度モチベーションを維持することができます。

  • セラピスト: 「最近、人間関係の中で少しずつ新しい行動を取ってきたかと思いますが、どんな感じがしましたか?安心感を持ちながらできましたか?」
  • クライエント: 「少し不安でしたが、相手が理解してくれると感じたときに安心感がありました。でも、うまくいかなかったと感じることもあって…。」
  • セラピスト: 「それも自然なことですね。うまくいかないと感じたときも、自分の価値観である『安心感』を基準にして、次にどう行動するかを考えてみましょう。たとえ失敗しても、それがあなたにとって大切な価値観に基づいているなら、それは成長の一部です。」

7⃣ コミットメント行動(Committed Action)

「コミットメント行動(Committed Action)」は、価値観に基づいてクライエントが意識的に行動し、その結果として望ましい変化や成長を実現するためのプロセスです。ここでは、33歳のクライエントが価値観に基づいて具体的な行動を計画・実行し、それに対する継続的な努力をサポートする会話の流れを説明します。コミットメント行動は、行動療法の一部であり、クライエントが日々の生活の中で小さな一歩から始め、最終的に大きな変化につなげていくために重要です。

コミットメント行動のポイント

  • 価値観に基づいた現実的な行動目標を設定し、段階的に進める。
  • 行動に対する障害や恐れを予測し、それに対する対策を事前に考える。
  • 行動を実行した後に振り返り、成功体験や改善点を整理し、次の行動を計画する。
  • 長期的な行動計画をサポートし、クライエントの成長を促すための指針を提供する。

このセッションを通じて、クライエントは小さなステップを重ねることで、自分の価値観に沿った行動を取り続ける自信を持ち、長期的な自己成長につなげることができます。

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コミットメント行動の重要性を説明する

まず、コミットメント行動が何であるか、その目的についてクライエントに説明します。ここでは、価値観に基づいて行動することが、長期的な成長や自己実現につながることを強調します。

  • セラピスト: 「私たちは前回、あなたにとって大切な価値観について話し合いましたね。安心感や信頼を大切にしていることがわかりました。これから、その価値観に基づいてどのように行動していけるか、一緒に考えていきましょう。ここで大事なのは、一度に大きな変化を起こすのではなく、価値観に基づいた小さな行動から始めて、それを継続していくことです。」
  • クライエント: 「そうですね、何か変えたいとは思っていますが、どう行動に移していいのかわからないことが多いです。」
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具体的な行動目標を設定する

次に、クライエントが価値観に基づいて実現可能な小さな行動目標を設定するプロセスをサポートします。行動は現実的で達成可能なものにし、ステップを細かく分けることで、クライエントが取り組みやすくします。

  • セラピスト: 「安心感や信頼感を感じるために、どんな小さな行動から始められると思いますか?例えば、日常生活の中で少しでも安心できる場所や状況を増やすために、何ができそうですか?」
  • クライエント: 「まずは、もっと自分にとって安心できる人との時間を増やすことかな…。それから、職場でも、安心感が持てるようにもっと積極的にコミュニケーションを取ることを試してみたいです。」
  • セラピスト: 「それは素晴らしいスタートですね。では、その『安心できる人との時間を増やす』という行動を、どのように具体的に計画しますか?例えば、毎週何回か、その人と連絡を取って会ってみるとか。」
  • クライエント: 「そうですね、週に1回は友達に連絡して、軽くお茶でもする時間を作ってみようと思います。」
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行動に向けた障害や困難を予測する

クライエントが行動にコミットする際、必ずしもスムーズに進むとは限りません。ここでは、行動を妨げる可能性のある障害や、クライエントが感じる不安や恐れを予測し、その対策を一緒に考えます。

  • セラピスト: 「週に1回友達と会うという行動は、現実的なステップだと思いますが、実際にそれを続けるうちに、どんな困難が起こるかも予測しておくといいかもしれません。例えば、どんな障害が考えられますか?」
  • クライエント:「そうですね…疲れていたり、忙しいとつい先延ばしにしてしまうかもしれません。」
  • セラピスト: 「それはよくあることですね。もし忙しさや疲れを感じたとき、どうすればそれでも行動を続けられるでしょうか?無理のない範囲で調整する方法を一緒に考えましょう。」
  • クライエント: 「たしかに、無理に予定を詰め込むのは避けたいです。もし疲れていたら、電話やメッセージで軽く連絡を取るだけでもいいかもしれません。」
  • セラピスト: 「それも立派な行動です。大切なのは、完璧である必要はないということです。あなたが価値観に基づいて、少しずつでも行動を続けることが重要です。」
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行動の進捗を確認し、修正する

クライエントが行動を実行した後、進捗を確認し、必要に応じて行動計画を修正します。ここで、クライエントがどのように感じたか、行動が価値観と一致していたかを振り返り、成功体験や課題を整理します。

  • セラピスト: 「この前、友達と会う時間を作ってみようという話をしましたが、その後どうでしたか?」
  • クライエント: 「はい、実際に友達とお茶をする時間を作れました。最初は少し緊張しましたが、会って話すうちにリラックスできました。でも、やっぱり仕事が忙しいときは、予定を立てるのが難しかったです。」
  • セラピスト: 「リラックスできたというのは大きな成果ですね。そして、忙しいときにどうするかというのは、今後の改善ポイントです。さきほど話してくれたように、電話やメッセージでつながる方法を試してみるのはどうでしょう?」
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長期的な目標の調整と継続

最後に、クライエントが目標を達成するための継続的な努力をサポートし、長期的に価値観に基づいて行動するための指針を提供します。クライエントが成長を感じ、次のステップに進む準備ができたら、新たな目標を設定します。

  • セラピスト: 「あなたが続けていくことで、少しずつ安心感を感じられる場面が増えていくと思います。今後も、この行動を続けていくことが重要です。そして、さらに安心感や信頼感を増やすために、新しい目標を考えることもできるでしょう。例えば、今後さらにどんなことに挑戦してみたいと思いますか?」
  • クライエント: 「そうですね、もっと自分から仕事場でのコミュニケーションにも積極的になってみたいです。でも、まだ少し怖い部分もあります…。」
  • セラピスト: 「それも自然な感情です。まずは小さなステップから始めてみましょう。例えば、同僚に自分から簡単な質問をしたり、少し話しかけてみるだけでも、大きな一歩になるかもしれません。」
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