認知症の原因であるアルツハイマー病とレビー小体型認知症の臨床・診断・療法
認知症は、年齢とともに認知機能が低下し、日常生活に支障をきたす病気の総称です。主な原因としてアルツハイマー病、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症などがあります。それぞれの認知症には特徴的な症状があり、診断には臨床的観察や画像検査、神経心理学的検査などが用いられます。
治療法には薬物療法やリハビリテーションなどがあり、早期発見・早期治療が重要です。
予防には、認知機能を刺激すること、健康的な生活習慣の維持、ストレスの軽減、高血圧や糖尿病などのリスクファクターの管理が必要です。
このページでは、「アルツハイマー病」と「レビー小体型認知症」の原因の臨床、診断、検査、療法などをみていきます。
アルツハイマー病
アルツハイマー病(AD)は、認知症の一種であり、神経変性疾患の一つです。主に中高年以上の人々に発症し、徐々に進行する病気で、最終的には日常生活に支障をきたすほどの深刻な障害を引き起こします。
ADの主な症状は、認知機能の低下です。初期段階では、軽度の記憶障害や言葉の出しにくさ、物忘れ、迷子になることなどが現れます。進行すると、判断力や認知能力が低下し、物事を理解することが困難になり、日常生活の自己管理が難しくなります。最終的には、自己介助が必要な状態になります。
ADは、脳内の神経細胞の死滅や萎縮が原因で起こります。死滅した神経細胞の主要成分であるアミロイドβ(Aβ)タンパク質が異常に蓄積され、神経細胞の機能を破壊することが原因の一つとされています。また、別のタンパク質であるtauタンパク質の異常も、神経細胞の死滅に関与していると考えられています。
ADの診断には、神経心理学的検査、神経画像検査、脳脊髄液検査などがあります。現在の治療では、ADの進行を遅らせる効果があるとされるアセチルコリンエステラーゼ阻害薬やNMDA受容体拮抗薬が用いられますが、完治する方法はありません。
※2023年には、アルツハイマー病治療薬「レカネマブ」承認をしています。今までは対処療法に限られていましたが、「レカネマブ」はアルツハイマー病の原因物質に直接働きかける新薬で進行を穏やかにする効果を証明した保険適用の治療薬としています。
アルツハイマー病の原因
アルツハイマー病の病因は、脳内の神経細胞の死滅や神経細胞の間のシナプスの機能低下に関与する病理学的な変化が主な原因とされています。
具体的には、アミロイドβプロテインの異常蓄積とTauタンパク質の異常リン酸化が、神経細胞死やシナプス機能低下につながる神経細胞内のタンパク質凝集体の形成につながります。
これによって、脳内の神経細胞の機能低下、神経細胞死、脳萎縮などの病理学的な変化が起こり、ADが進行していきます。また、遺伝的要因も関与していると考えられており、遺伝子の異常がアミロイドβプロテインやTauタンパク質の凝集を促進することが報告されています。
アルツハイマー病の臨床所見
アルツハイマー病の臨床所見は、初期段階では主に認知症の兆候が現れます。次に、軽度、中度、重度の3つの段階に分かれる臨床経過を見ていきます。
軽度のADでは、主に記憶障害が現れます。日常生活に支障をきたす程度ではなく、本人自身も認知障害に気付かない場合があります。そのため、家族や周囲の人が異変に気付き、病院を受診することが多くなります。また、記憶障害以外にも、言語障害や判断力の低下、注意力の低下などが見られることがあります。
中等度のADでは、認知障害がより進行し、日常生活に支障をきたすようになります。家族や周囲に依存することが多くなり、自己中心的な行動や反応が増えることがあります。また、言語障害や行動障害、空間認知障害が現れることもあります。
重度のADでは、認知障害が深刻なものになり、日常生活の自立が不可能になります。脳萎縮が進行し、体重の減少、寝たきり状態、運動機能の低下など、身体的な問題も増えてきます。最終的には、言語障害、失認、失禁などが現れ、最終的には死亡することが多くなります。
以上のように、アルツハイマー病は徐々に進行し、軽度から重度へと段階的に進行していく病気です。
アルツハイマー病の診断基準
ICD-11におけるアルツハイマー病の診断基準は以下の通りです。
- 主要症状
- 急激な始まりではない、持続的な認知機能の障害
- 認知症のために日常生活に支障がある
- 病理組織学的所見
- βアミロイドの沈着と神経原線維変化、神経細胞の損傷、または神経細胞死による神経原線維変化の証拠がある
- 注意欠陥、失語、失行、失認、失用のような異常行動があることがある
これらの症状がある場合、アルツハイマー病の診断が疑われます。ただし、臨床的に確認された病理組織学的所見がある場合に限り、確定的な診断が可能です。
アルツハイマー病の鑑別診断
アルツハイマー病の鑑別診断には、他の種類の認知症や神経変性疾患を含めたいくつかの疾患があります。次にいくつかの例を挙げます。
- レビー小体型認知症
認知症とパーキンソン病の症状を合わせ持つ疾患。視覚空間障害、錯覚、幻覚などの精神症状も見られる。 - 前頭側頭型認知症
社会的判断力や抑制力の低下、強迫的・刺激的な言動、認知症の前段階には行動・言語の変化が見られる。 - パーキンソン病性認知症
パーキンソン病の症状(震え、筋硬直、動きの遅延)と認知症を合わせ持つ疾患。 - 前頭側頭葉変性症
言語障害、行動異常、情動性、自己介入的な行動、不適切な判断力や社会的振る舞いが見られる。 - 脳血管性認知症
脳梗塞や脳出血などの脳血管疾患が原因で発生する認知症。急性の発症や、症状が局所的であることが特徴。 - 薬物性認知症
長期間の薬物使用、または薬物の誤使用が原因で発生する認知症。特定の薬物が原因である場合もある。
これらの疾患を鑑別するために、症状の詳細な調査や検査が必要となります。診断には臨床医の経験や知識、画像検査や神経心理学的検査などの情報を総合的に考慮することが重要です。
アルツハイマー病の画像診断
ADの画像診断には、主に次の方法がある
- 脳神経核医学検査
- ポジトロン断層法(PET):脳内に蓄積したアミロイドβや神経原線維変化の指標となるタウタンパク質などを可視化し、アルツハイマー病の診断に役立つ。しかし、高価格であることや、放射能被曝のリスクがあることから、臨床現場での利用は限定的である。
- シンチグラフィー:アルツハイマー病の病態に関連する生理活動の指標となる脳内の代謝物質や受容体を可視化する。PETよりも低コストであり、診断に役立つ。
- 磁気共鳴画像(MRI)
- 脳の萎縮の程度:脳内の神経細胞の死滅や脱落によって脳が小さくなる現象である脳萎縮が、アルツハイマー病の診断に役立つ。
- 脳領域の萎縮:ADの初期症状は海馬にみられるため、海馬部分の磁気共鳴画像を確認することが診断に役立つ。
- CT
- 脳の萎縮の程度:MRIと同様に、脳萎縮の程度がアルツハイマー病の診断に役立つ。
ただし、これらの画像診断は診断に必須というわけではなく、臨床症状、神経心理学的検査結果、および血液・脳脊髄液検査結果を含めた総合的な評価が重要であることに留意する必要があります。
ADの画像診断には、主に次の2種類がある
- 構造的画像診断
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構造的画像診断では、脳の形態的変化を評価するために、主にMRI(磁気共鳴画像)が使用されます。アルツハイマー病では、脳の萎縮(atrophy)が見られることがあります。
脳萎縮は特に海馬や側頭葉に影響を及ぼすことが多く、これらの領域の萎縮度合いは、アルツハイマー病の進行度合いを評価するための指標として使用されます。 - 機能的画像診断
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機能的画像診断では、脳の活動や代謝を評価するために、主にPET(陽電子放出断層撮影法)やSPECT(単一光子放出型コンピュータ断層撮影法)が使用されます。
アルツハイマー病では、脳内のβアミロイド蛋白質が蓄積することがあり、βアミロイド蛋白質は、アミロイドプラークと呼ばれる斑点状の構造を形成することがあります。これらの斑点の存在は、アルツハイマー病の診断において重要な指標の1つとされています。また、アルツハイマー病では脳内のグルコース代謝率の低下が見られることがあり、機能的画像診断ではこの低下を評価することができます。
以上のように、アルツハイマー病の画像診断においては、脳の構造や機能の変化を評価することが重要となります。ただし、診断には臨床症状や他の検査結果との総合的な判断が必要であり、単独での画像診断だけでは診断が確定されない場合もあります。
アルツハイマー病の薬物療法
アルツハイマー病に対する薬物療法は、主に症状の軽減や進行の遅延を目的として行われます。次に代表的な薬剤について、中核症状に対する効果や注意点などをまとめました。
- コリンエステラーゼ阻害薬
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アルツハイマー病患者の脳内アセチルコリン濃度が低下することが知られています。コリンエステラーゼ阻害薬は、アセチルコリンの分解を抑制し、脳内のアセチルコリン濃度を上昇させることで症状の改善を図ります。
代表的な薬剤としてドネペジル、ガランタミン、リバスチグミンがあります。これらの薬剤は、軽度から中等度のアルツハイマー病患者に対して効果があり、認知機能の改善や日常生活動作の維持・改善が期待されます。 - NMDA受容体拮抗薬
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NMDA受容体拮抗薬は、グルタミン酸という神経伝達物質の作用を抑制し、神経細胞の死滅を防止することで症状の改善を図る薬剤です。メモリーに関する症状に効果があるとされています。
代表的な薬剤としてメマンチンがあります。 - 抗精神病薬
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アルツハイマー病患者には、幻覚や妄想などの中核症状が現れることがあります。このような症状に対しては、抗精神病薬が投与されることがあります。
代表的な薬剤としてリスペリドン、オランザピンがあります。しかし、アルツハイマー病患者に抗精神病薬を使用する場合、注意が必要であり、薬剤によっては副作用や死亡リスクの増加につながる可能性があるため、慎重に使用する必要があります。
現在、アルツハイマー病の根治薬として承認されているものはありません。病気の進行を遅らせることができる薬物はいくつかありますが、病気を完全に治すことはできません。病気の進行を遅らせる薬物には、コリンエステラーゼ阻害薬とメマンチンがあります。
近年、アミロイドβタンパク質を除去することを目的とした新しい治療法が研究されています。アミロイドβタンパク質はアルツハイマー病において重要な役割を果たしているため、アミロイドβタンパク質を除去することができれば、病気の進行を遅らせることができる可能性があります。例えば、抗アミロイドβ抗体療法やベータセクレターゼ阻害薬が、アミロイドβタンパク質の除去に効果的であるとされています。しかし、これらの治療法はまだ臨床試験の段階にあり、安全性や効果について確立されているわけではありません。
※2023年7月には、アルツハイマー病治療薬「レカネマブ」承認をしています。今までは対処療法に限られていましたが、「レカネマブ」はアルツハイマー病の原因物質に直接働きかける新薬で進行を穏やかにする効果を証明した保険適用の治療薬としています。
※2024年7月には、アメリカの製薬会社が開発したアルツハイマーの初期症状の進行を遅らせる「ドナネマブ」(発売名称「キンスラ」)が承認になりました。この薬はアルツハイマーの患者の脳に蓄積されるアミロイドβの異常なたんぱく質を取り除くことで、進行を遅らせるというものです。臨床試験では、1年半の間に病気が進行するリスクの29%低かったと認められています。ただし、2%に深刻な副反応が認められています。
アルツハイマー病に対する免疫療法
アルツハイマー病に対する免疫療法については、現在も研究が進んでいる段階であり、まだ治療法としての確立には至っていません。過去には、アルツハイマー病の治療に向けたアミロイドβタンパク質を標的としたワクチン療法の研究が行われましたが、副作用の問題から中止された例があります。
近年、抗アミロイドβ抗体療法によるアルツハイマー病治療が注目を集めています。抗アミロイドβ抗体は、アミロイドβタンパク質の異常な蓄積を抑制することができます。いくつかの臨床試験が行われており、一部の研究では脳萎縮の進行を遅らせる効果が認められたと報告されていますが、有効性や安全性についてはまだ十分な検証が必要です。
アルツハイマー病の非薬物療法
アルツハイマー病の非薬物療法は、患者の生活の質を改善することを目的としています。以下は、一般的な非薬物療法の例です。
- 認知療法
認知療法は、患者が正確に思考し、問題解決能力を向上させるために、患者が日常的に行っている認知的活動の継続を奨励することを含みます。また、認知療法は、記憶、言語、注意、問題解決など、特定の認知機能の訓練にも用いられます。 - 運動療法
運動療法は、認知症患者の運動能力を向上させ、筋力やバランスを改善し、身体的活動性を促進することを目的としています。また、運動療法は、認知症患者のうつ症状を軽減するのにも効果的であるとされています。 - 音楽療法
音楽療法は、患者の心身機能を改善し、コミュニケーションや社会的交流を促進することを目的としています。音楽療法は、認知症患者の記憶力や認知機能を向上させ、行動障害を軽減するのにも効果的であるとされています。 - アート療法
アート療法は、患者が絵を描いたり、彫刻を作ったりすることで、認知症患者の創造性を刺激し、自己表現能力を向上させることを目的としています。アート療法は、認知症患者のうつ症状を軽減し、自尊心を高めるのにも効果的であるとされています。 - 娯楽療法
娯楽療法は、認知症患者に楽しい時間を提供し、彼らの社会的交流や心理的健康を促進することを目的としています。娯楽療法は、音楽、ダンス、映画、演劇、ゲームなどの活動が該当します。
レビー小体型認知症
レビー小体型認知症(DLB; Dementia with Lewy Bodies)は、脳内に存在するレビー小体というタンパク質の異常蓄積によって引き起こされる神経変性疾患の一つで、加齢に伴って発症することが多くなります。レビー小体はアルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患でも見られますが、DLBでは特に大量に存在することが特徴となります。
レビー小体型認知症の症状・診断・療法
- 【症状】
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DLBの主要な症状としては、注意力・意識レベルの変動や、視覚幻覚、錯乱状態、運動機能障害、抑うつ症状、自律神経症状などが挙げられる。また、アルツハイマー病やパーキンソン病と同様に、DLBでも痴呆症状が見られる。
- 【診断】
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診断には臨床症状、脳画像、脳波検査、またはSPECTやPETなどの脳機能画像検査などが用いられる。DLBはアルツハイマー病やパーキンソン病と鑑別が必要であり、特にDLBとパーキンソン病の認知症(PDD; Parkinson’s Disease Dementia)は症状が類似しており、区別が困難な場合もある。
- 【治療】
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治療には、アルツハイマー病の治療に用いられるコリンエステラーゼ阻害剤や、パーキンソン病の治療に用いられるドーパミン作動薬が一部有効である場合がある。また、抗精神病薬が幻覚や錯乱などの精神症状に対して効果がある場合がある。
レビー小体型認知症の疫学
レビー小体型認知症(DLB)は、認知症全体でみてADの4割程度、認知症全体の15%程度と予測されます。DLBの男女比は1:1.5〜2程度と考えられています。
DLBの病因は明確にはわかっていませんが、脳内のレビー小体と呼ばれる神経細胞内のタンパク質の異常が原因であると考えられています。レビー小体は、アルツハイマー病やパーキンソン病でも見られますが、DLBでは特に脳幹部や大脳皮質に多く存在することが特徴です。また、DLBの発症には、遺伝的要因や環境的要因も関与している可能性があります。
ICD-11でのレビー小体型認知症の診断基準
ICD-11では、以下のようにレビー小体型認知症(DLB)が診断されます。
- 主要な診断基準
- 注意の障害、視覚空間的障害、錯乱、幻覚または妄想を含む認知症症状がある。
- パーキンソン症状(筋強剛、ジストニア、レストレスレッグス症候群など)がある。
- レビー小体が脳の自由水準に存在することが確認された。
- 確定診断基準
- 必須項目:主要な診断基準を満たすこと。
- 補足的な診断基準:うつ病、不安症状、不随意運動、自律神経症状などがある場合、それを示唆する徴候がある。
- 排除基準:パーキンソン病、多系統萎縮症、前頭側頭型認知症など、他の原因による認知症がある場合は除外する。
これらの診断基準に合致する場合に、レビー小体型認知症の診断がつけられます。
レビー小体型認知症の臨床・経過・画像
DLBの全体的な臨床所見には次のようなものがある
- 認知症状の進行
- 注意欠陥、視覚空間的困難、錯視、幻視などの錯覚・幻覚・妄想
- 異常な昼夜リズム
- 可逆的な意識レベルの変動
- 自律神経機能障害(例:起立性低血圧)
- 筋強剛(カタプレキシー)
- 不随意運動(例:パーキンソン症候群様症状)
DLBの臨床経過は、次のように大まかに分けられる
認知症症状、注意欠陥、視覚空間的問題、幻視などの錯覚や妄想が見られます。また、昼夜リズムの変化や、意識レベルの変動が起こることもあります。
認知症症状が進行し、注意力や日常生活動作に問題が生じます。幻覚や妄想などの錯覚が増加することもあります。パーキンソン症候群様症状、筋強剛、または不随意運動などの異常運動が現れることもあります。
認知症症状がさらに進行し、患者は自己の判断力を失い、完全に介護が必要になることがあります。また、筋肉の硬直や、高次脳機能の障害による言葉の理解力や意思決定能力の低下なども起こります。
DLBの画像所見
レビー小体型認知症(DLB)の画像所見は、アルツハイマー病と重なることが多く、脳萎縮や脳室拡大、脳血流の低下が観察されることがあります。
DLBの特徴的な所見としては、脳幹の機能障害がある場合に、脳幹周辺の代謝低下が認められることがあります。また、DAT(ドパミン輸送体)PETを用いることで、レビー小体が存在する脳領域でのドパミンシグナルの低下が認められることがあります。ただし、レビー小体自体はMRIやCTでは観察できず、診断には主に臨床所見が用いられます。
レビー小体型認知症の薬物療法
レビー小体型認知症 (DLB) の薬物療法は、症状を改善するためのものがありますが、その他の薬剤は注意が必要です。主な薬物療法には次のものがあります。
- コリンエステラーゼ阻害剤
DLBには認知症の特徴であるアセチルコリン欠乏が関与しているため、コリンエステラーゼ阻害剤が使用されることがあります。この薬剤は、アルツハイマー病にも使用されています。 - NMDA受容体拮抗薬
認知症におけるグルタミン酸シグナルの過剰刺激がDLBにおいても関与しているため、NMDA受容体拮抗薬が使用されることがあります。 - 抗精神病薬
DLBには幻覚や妄想などの精神症状が見られることがあります。抗精神病薬は、これらの症状を改善するために使用されることがありますが、注意が必要です。DLBに対して一般的な抗精神病薬であるハロペリドールは、副作用が多く、使用する際には慎重に判断する必要があります。 - レビー小体除去剤
DLBには脳内のレビー小体が特徴的に見られるため、これらの除去を目的とした薬剤が研究されていますが、まだ臨床的に確立されていません。
注意が必要なのは、抗コリン薬、抗ヒスタミン薬、抗うつ薬、鎮静剤、オピオイド系薬剤など、DLBにおいては錐体外路症状を引き起こすことがある薬剤があります。これらの薬剤の使用は、DLBの症状を悪化させる恐れがあるため、注意が必要です。
- 「認知症ケアQ&A」(杉山泰介、廣済堂出版)
- 「認知症診療マニュアル」(加藤徹、医学書院)
- 「認知症の介護とケア」(高橋千晶、中央法規出版)
- 「認知症患者の家族のためのケアブック」(石田昌子、南江堂)
- 「認知症の看護ケア」(神田由紀子、医学書院)
- 「認知症を理解する」(宮下順子、PHP研究所)
- 「認知症と向き合う」(西野芳彦、講談社)
- 「認知症の人を理解する」(河村和子、中央法規出版)
- 「認知症介護の実践」(田中勝美、医学書院)
- 「認知症を生きる」(高橋源一郎、講談社)
- 「標準精神医学第8版」(尾崎紀夫・三村將・水野雅文・村井俊哉/医学書院)