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マイクロアグレッションは微細で無意識な言動攻撃

目次

微細で無意識・意識的な相手への言動の攻撃をマイクロアグレッションと呼びますが、ハラスメントとも差別とも捉えられない差異に焦点を当てた攻めです。

マイクロアグレッション( micro aggression)とは、無意識的、恣意的、意識的に相手に対して微細で否定的または攻撃的な影響を及ぼす対話や行動、態度を示しています。マイクロアグレッションは差別やパワハラとは言えないまでも受ける側のアイデンティティや屈辱、差別的な攻撃であり、心理的なストレスや不安を引き起こす可能性があります。
この概念は主に人種的、文化的背景、国籍、性別、宗教、障害、性的指向、価値観などに基づく差異に焦点を当てています。マイクロアグレッションへの対応は個人や組織の努力が必要であり、包括的で尊重される環境を構築するために様々なアプローチが取られています。

微細な攻撃

マイクロアグレッションは、大きな差別行為ではなく、微細で小さな行動や発言から成り立っています。これらの行為は積み重なり、被害者に対して精神的なストレスを引き起こすことがあります。

無意識の偏見

マイクロアグレッションは、発言者が自覚していない無意識の偏見やステレオタイプに基づいています。これは、人々が社会的に学んだバイアスや差別的な信念が、言動に影響を与えていることを示しています。

多様な属性への影響

人種や性別だけでなく、様々な属性に関連するマイクロアグレッションが存在します。たとえば、文化的な違い、障害に対する偏見、職業に関するステレオタイプなども該当します。

日常的な出来事

マイクロアグレッションは、仕事場、学校、社会的な場で日常的に発生しています。これが個別の出来事として小さいように見えても、継続的な攻撃が相手に影響を与える可能性があります。

心理的影響

被害者は、これらの微細な攻撃によって傷つき、疲弊してしまいます。長期間にわたるマイクロアグレッションは、被害者のメンタルヘルスや仕事のパフォーマンスに悪影響を及ぼす可能性があります。

教育と啓発の必要性

マイクロアグレッションの問題を解決するためには、教育と啓発が不可欠です。人々が無意識のバイアスに気づき、相互尊重と理解を促進するための取り組みが必要です。

種類
  • マイクロインサルト(Microinsults)
    小さな侮辱的なコメントやジェスチャーなどで無意識的であっても、相手にとっては攻撃的に感じる可能性があります。
  • マイクロアサルト(Microassaults)
    より明確で意識的な攻撃行動で、差異的な態度や行動です。直接的な差別や攻撃に近い形態を取ります。
  • マイクロインバリデーション(Microinvalidations)
    個人のアイデンティティや経験を無視し、存在や感情を無効化する言動であり、特定の人種や性別に基づく先入観的な発言がこれに当たります。
  • 環境型マイクロアグレッション((Environmental Microaggressions))
    社会構造や社会環境や場所において、特定の属性を持つ人への意識・無意識の偏見や差別が発生する現象を指します。
影響
  • 心理的影響
    マイクロアグレッションは被害者に心理的なストレスや不安を引き起こし、長期的にはメンタルヘルスの問題に繋がる可能性があります。
  • 対人関係の悪化
    マイクロアグレッションが繰り返されると、被害者と加害者の関係が悪化し、信頼の欠如や対立が生じる可能性があります。
  • 自尊心の低下
    マイクロアグレッションは被害者の自尊心を低下させる可能性があり、持続することでうつ病や不安症などのメンタルヘルスの問題につながることがあります。
対応策
  • 教育と意識の向上
    マイクロアグレッションの存在や影響についての教育が重要となり、自らのバイアスや先入観を認識し、他者とのコミュニケーションの向上につなげます。
  • コミュニケーションスキルの強化
    コミュニケーションスキルを向上させ、異なるバックグラウンドや文化を持つ人々との対話を促進することが重要です。
  • 組織の文化の変革
    組織は差別的な態度や行動に対してゼロトレランス(毅然たる対応)の方針を採用し、包括的で多様性を尊重する文化を築くことが求められます。

マイクロアグレッションの4種類

マイクロインサルト

マイクロインサルト(Microinsults)は、相手に対して小さな侮辱や軽蔑的なコメント、態度、ジェスチャーなどの無意識的で微細な行動や発言のことを指します。これらの言動は、発言者が差別的な意図がなく、無意識のうちに差異的なステレオタイプや偏見が影響している場合もあります。受け手がこれを感じると、心理的な不快感や攻撃を受けたという感覚を抱くことがあります。

マイクロインサルトの一般的な例

  • 軽蔑的なジョークや冗談
    一般的な容姿、職業、性格、育ち、生活などや、特定の人種、性別、宗教、性的指向などに関するステレオタイプを含んだジョークや冗談は、相手に対して侮辱的に感じさせることがあります。
  • 軽んじる言葉遣い
    意識的でなくても、言葉遣いや表現が軽蔑的である場合、相手に対して尊重されていないと感じさせることがあります。
  • 無視や軽視
    特定の属性を持つ人々を無視する行動や言葉による軽視するような態度も、マイクロインサルトの一形態です。
  • ステレオタイプの使用
    特定のグループに対する一般的で偏ったイメージやステレオタイプを使うことも、相手にとっては侮辱的に感じられることがあります。
  • 微妙な差別的サイン
    非言語的な行動や微妙な合図が、相手を差別的に見なすことが意図されているように感じられる場合もあります。

これらの行動が単発であっても、積み重なることで受け手に心理的なストレスや不安を引き起こし、職業環境や人間関係に悪影響を与える可能性があります。マイクロインサルトに対処するためには、教育とコミュニケーションが重要であり、意図的でない場合でも影響を理解し、相手を尊重するよう心掛けることが求められます。

マイクロアサルト

マイクロアサルト(Microassaults)は、相手に対して意識的であり、また直接的で明確な攻撃的な行動や態度を指します。これは、差別的な態度や行動が比較的はっきりとした形で表れ、一般的には故意であることが特徴です。マイクロアサルトは、他のマイクロアグレッションとは異なり、より積極的で直接的な差別や攻撃の形態をとります。

マイクロアサルトの一般的な例

  • 人種差別的な言葉や侮辱
    直接的に一般的な環境や特定の人種や民族に対する侮辱的な言葉を使うことや、人種に基づく差別的な発言が該当します。
  • 差別的なジェスチャー
    特定の人々に対して攻撃的なジェスチャーや仕草を行うことも、マイクロアサルトの一形態です。
  • 差別的な行動
    特定の属性を持つ人々に対して直接的な差別的な行動を取ること、例えば、不当な扱いや排斥などが該当します。
  • 差別的なステレオタイプの宣伝
    特定のグループに対する差別的でステレオタイプな広告や宣伝を行うことも、マイクロアサルトと見なされることがあります。
  • 物理的な攻撃
    身体的な接触や攻撃的な行動が該当する場合もあります。ただし、これは極端なケースであり、通常のマイクロアサルトの範疇ではないことがあります。

マイクロアサルトは、被害者に対して意識的に直接的で攻撃的な行動や言葉であり、環境内での安心感や心理的な健康に深刻な影響を与えることがあります。これらの言動は社会的な規範に反するものであり、組織や社会全体での啓蒙と教育が必要です。対処法としては、個別の対話やトレーニング、組織の方針の改善などが考えられます。

マイクロインバリデーション

マイクロインバリデーション(Microinvalidations)は、他者のアイデンティティや育った環境などを無視し、存在や感情を無効化する行動や発言のことを指します。例えば、特に異なる文化的背景、人種、性別、性的指向、宗教など特定の属性を持つ人々に対して行われる微細で否定的な行動や発言であり、無意識のうちに行われることがあります。例えば、特定の属性を持つ人が存在感を示そうとしても、無視や否定、無価値化すること、否定的、経験の排除、または差異を無視して平等な扱いだと表現、扱いをしていることも該当します。被害者は、自分の文化的背景や経験や感情が理解されず、無視されていると感じる可能性があります。

マイクロインバリデーションの例

  • 感情や経験の否定
    特定の属性を持つ人が育った独自の環境や文化的背景、感情を共有したときに、それを無視したり、軽視したりする言動です。例えば、「だから違うんだね」「それは特殊だね」「普通だと感がられない」「それは大したことないでしょう」とか「気にするな」といった言葉が挙げられます。
  • 無意識のステレオタイプの適用
    特定の属性を持つ人に対して、無意識のうちにステレオタイプを適用することがあります。これにより、その人の独自の環境や経験、個性が無視される可能性があります。
  • 無視や不可視化
    特定の属性を持つ人が存在感を示そうとしても、無視や否定、無価値化することがあります。これは、会話やグループの中で意図的ではなくても発生することがあります。
  • 無意識の偏見や差別の表現
    発言者が無意識のうちに差別的な態度や言葉を使用し、それが被害者に対して否定的、経験の排除、または差異を無視して平等な扱いだと表現、扱いをしていることも該当します。
  • 個人の特性の否定
    特定の属性を持つ人々に対して、その属性に基づいた否定的なステレオタイプや先入観が行われることがあります。

これらの行動は単発であっても、被害者に対して心理的な不安や孤独感を引き起こす可能性があります。組織や社会では、無意識の差別を減少させ、相互理解を促進するために教育や意識向上が必要です。また、個々のコミュニケーションや対話においても、相手の特定の属性を持つ人の存在感や経験、感情を尊重し理解することが重要です。

環境型マイクロアグレッション

環境型マイクロアグレッション(Environmental Microaggressions)は、社会構造や社会環境、あるいは特定の場所において、特定の属性やアイデンティティを持つ人々に対して、意識的または無意識の偏見や差別が織り交ぜられたり、発生したりする現象を指します。これは、特定の環境が特定のグループにとって敵対的であるか、適応困難であるかのように感じられる場合に発生します。環境型マイクロアグレッションは、一般的には機関や組織、団体、地域、あるいは文化において発生しやすくなります。

環境型マイクロアグレッションの例

  • 不平等な組織ポリシー
    特定の属性を持つ人々に対して不平等な組織のポリシーや慣行が存在する場合、それが環境型マイクロアグレッションと見なされることがあります。例えば、昇進や報酬の制度が公平でない場合などが挙げられます。
  • 文化的な排除
    特定の文化や背景に属する人々が組織や社会の中で無視されたり、排除されたりする状況が、環境型マイクロアグレッションとなり得ます。
  • 差別的な言語やシンボルの存在
    特定の場所や環境において、差別的な言葉やシンボルが存在する場合、それが特定のグループに対する攻撃や排除を促進することがあります。
  • 無意識のバイアス
    組織や社会の中で無意識のバイアス、例えば、風土や文化、慣習が存在し、それが特定のグループに対する不公平な扱いにつながる場合があります。
  • アクセスの不平等
    特定の環境や場所において、偏見や差別で特定のグループがリソースや機会にアクセスするのが難しい状況が発生することがあります。

これらの要素が組み合わさることで、環境型マイクロアグレッションは特定のグループに対して偏見や差別を助長し組織全体において不平等が強化され、その結果として被害者たちは不快感やストレスを感じることがあります。対処法としては、組織や社会のポリシーの見直しや改善、意識向上の取り組み、多様性と包括性の促進などが挙げられます。

マイクロアグレッションと差別の違い

マイクロアグレッションと差別は、両方とも異なる形態の偏見や差別的な行動や言動を指しますが、その性質や範囲においていくつかの違いがあります。簡潔に言えば、マイクロアグレッションは小さな、積み重なる差別的な行動や言動を指し、差別はより大規模で組織的な構造や法的な規制に基づく差別行為を指します。両者とも差別に関連していますが、その程度や影響、起こる文脈が異なります。

マイクロアグレッション

  • 微細で積み重なる行動や言動
    マイクロアグレッションは、一般的には小さな行動や発言の積み重ねであり、単一の行為が大きな差別行為とは見なされません。しかし、これが繰り返されることで被害者に対する負担が蓄積されます。
  • 無意識の偏見が関与
    マイクロアグレッションは発言者の無意識の偏見に基づいています。発言者が意識的に攻撃的である必要はなく、無意識に差別的な態度に表れることがあります。
  • 文脈依存性が強い
    マイクロアグレッションは文脈によって異なる解釈がされます。同じ言葉や行動でも、状況や関係性によってその影響が変わることがあります。

差別

  1. 明確で大規模な差別行為
    差別は、個人やグループに対する明確で大規模な差別行為を指します。これは法的な規制や社会的な慣習に基づいており、広範な影響を及ぼすことがあります。
  2. 組織的な構造が影響
    差別は組織や社会の構造に根ざしています。法律や政策、組織の慣習などが、あるグループに不利な形で働くことがあります。
  3. 意図的な差別が関与することがある
    差別は時折、個人や組織が特定の属性を持つ人々を故意に差別することを指します。これには偏見や悪意が絡むことがあります。

マイクロアグレッションとパワハラの違い

マイクロアグレッションは恣意的や無意識のことが多く、加害者が悪意を持っているとは言え難くとも、相手に対して差別や屈辱感を与えてしまう可能性があります。次の例は、パワハラではなくマイクロアグレッションの可能性が高いケースとなります。

  • 性差別的なマイクロアグレッション
    • 「女性なのに結構頭がいいね。」女性を下に見るなどの先入観から起こる差別や意識を感じさせる発言となります。
  • 人種差別的なマイクロアグレッション
    • 「外国人風の人に対して、『日本語がお上手ですね』と言うことは、その人が外国人であることを前提にしたステレオタイプ的な発言となります。」
  • 年齢差別的なマイクロアグレッション
    • 「新入社員に対して、『若いのにしっかりしていますね』と言うことは、若さに対する先入観に基づく発言となります。」
  • 障害差別的なマイクロアグレッション
    • 「障害のある人に対して、『障害があっても前向きですね』と言うことは、その人の障害に焦点を当て、他の能力や特徴を無視してしまう可能性があります。」
  • 言語やアクセントに基づくマイクロアグレッション
    • 「特定の言語やアクセントを持つ人に対して、『日本語が上手ですね』『地方の方言はいいですね』と言うことは、その人の言語やアクセントに対するステレオタイプを助長する可能性があります。」
  • 外見に基づくマイクロアグレッション
    • 「外見に注目して、『黒髪が似合っているね』と言うことは、特定の外見や髪型に対するステレオタイプを反映しているかもしれません。」
  • 宗教差別的なマイクロアグレッション
    • 「特定の宗教を持つ人に対して、『宗教を信じていて、素晴らしい人だね』と言うことは、その人の宗教に対する先入観を表す可能性があります。」
  • 体型に基づくマイクロアグレッション
    • 「体型に注目して、『スリムで素敵だね』と言うことは、特定の体型への期待やステレオタイプを強調しているかもしれません。」
  • 職業に基づくマイクロアグレッション
    • 「特定の職業に従事する人に対して、『きつい職業なのに頑張っているんだね』と言うことは、その職業に対する先入観を反映しているかもしれません。」
  • 家庭構成に基づくマイクロアグレッション
    • 「特定の家庭構成を持つ人に対して、『子供がいないのに充実しているんだね』と言うことは、家庭構成に対するステレオタイプを含む可能性があります。」

これらの例は、相手の属性に焦点を当て、ステレオタイプや先入観に基づく発言や態度がマイクロアグレッションとして現れることを示しています。

カバートアグレッションとマイクロアサルトの違い

「マイクロアサルト(Microassault)」と「カバートアグレッション(Covert Aggression)」は似ているようでいても微妙な違いがあり、文脈によって使い方が異なります。
要するに、マイクロアサルトは微細な否定などを明確的に特定の属性やグループに向けた攻撃的な行動や言動を指し、比較的オープンであり認識しやすいのが特徴です。一方、カバートアグレッションはより隠れた形態の攻撃であり、明示的ではありません。

ただし、これらの用語が使われる文脈によっては、混同されることがあるため、具体的な文脈においてどのように使われているかを考慮する必要があります。

マイクロアサルト(Microassault)

  • マイクロアサルトは、特定の属性やグループに対する明確な攻撃的な行動や言動を指します。これは比較的オープンで明確な形態を取ります。
  • 主に差異的、差別的な言葉や行動、ステレオタイプの強調などです。明示的であり、攻撃的な意図が明確です。

カバートアグレッション(Covert Aggression)

  • カバートアグレッションは、通常、明示的な攻撃や攻撃的な意図が視覚的、感覚的には認識しにくい行動や手法を指します。
  • これは感情的な敵意、悪意、または悪質な攻撃が隠れており、表面的には穏やかであることが特徴です。暗黙の形で行われることが多くなります。

カバートアグレッションを行う人の特徴

カバートアグレッションを行う人には特定の特徴があるわけではなく、様々な要因が影響を与えている可能性があります。カバートアグレッションの背後には様々な要因が絡むため、その理解や対処には個別の状況や個人の特性を考慮する必要があります。

カバートアグレッションの人の特徴

  • 非直接的なコミュニケーションスタイル
    カバートアグレッションの人は、直接的なコミュニケーションよりも暗黙的な手法を好みます。感情や意図を暗示的に示し、他者がすぐに気づかないような形で攻撃的をします。
  • 感情の不表明
    カバートアグレッションの人は、自分の感情を率直に表現せず、感情を抑えたり隠したりする傾向があります。これにより、他者に対して攻撃的な感情を表面化させないような行動が生まれます。
  • 対立回避
    カバートアグレッションの人は、直接的な対立を避けることを好みます。感情や意見の相違を直接的に表明するよりも、間接的な方法で不満や敵意を表現します。
  • 自己中心的な考え方
    カバートアグレッションの背後には、自分中心的な考え方や他者への理解不足がある場合があります。他者の感情や視点を適切に理解できないことがカバートアグレッションの原因となることがあります。

カバートアグレッションになってしまう原因

  • ストレスや不安
    カバートアグレッションは、ストレスや不安を感じているときに増加します。感情を直接的に表現することが難しくなり、その代わりに暗黙で関節的な形で感情を処理しようとすることがあります。
  • コミュニケーションの不足
    適切なコミュニケーションスキルが不足している場合、感情や考えを適切に伝えることが難しくなります。これがカバートアグレッションの原因になることがあります。
  • 自己防衛機制
    カバートアグレッションは、自己防衛の一環として発生することがあります。他者との直接的な対立を避けつつも、感情や意見を表現しようとする行動が、カバートアグレッションとして現れることがあります。
  • 社会的な影響
    社会的な環境や文化が、カバートアグレッションを助長する場合があります。特定の価値観や慣習が間接的なコミュニケーションを奨励されている場合、それに従うことがあります。

マイクロアグレッションに対する批判的な視点

マイクロアグレッションに注目することに対する反対意見には、客観性の欠如、表現の萎縮を招く可能性、および被害者意識の強化といった主な要素が挙げられます。これらの反対意見は、マイクロアグレッションの議論において異なる視点が存在することを示しています。対話や教育を通じて、適切なコミュニケーションと理解を促進する方法についての継続的な検討が求められています。

客観性の欠如
  • 批判的意見
    マイクロアグレッションは主観的な解釈に基づいており、同じ行動や発言でも異なる感じ方をすることがあります。そのため、何がマイクロアグレッションと見なされるかについて客観的な定義が難しく、個々の感受性や文脈に依存するという批判があります。
  • 主張
    客観的な判断が難しい場合、ある言動が差別的であるかどうかを断定するのは難しいと主張する一部の人々がいます。個別の行動や発言が差別的であると見なすかどうかは、文脈や個人の経験に依存するため、絶対的な客観性が欠如するという立場です。
表現の萎縮を招く可能性
  • 批判的意見
    マイクロアグレッションへの過度な注視は、自分の言動に対して慎重になり、表現の自由を制約される可能性があるという意見があります。言葉や行動に対して常に警戒することで、コミュニケーションの自然な流れが損なわれ、対話が阻害されると主張しています。
  • 主張
    マイクロアグレッションへの過敏さが高まると、人々は意図しない差別的な発言を恐れて自粛し、意見や感情を抑える可能性があります。これが表現の自由を損なう恐れがあるとされています。
被害者意識の強化
  • 批判的意見
    マイクロアグレッションの概念が広まることで、個々の言動に対する被害者意識が強まる可能性があります。すべての発言や行動を差別的な意図を持って行われたものとして解釈することで、過剰な被害者意識が生まれ、社会的な対話が困難になるという立場があります。
  • 主張
    被害者意識が強まると、コミュニケーションや協力が難しくなり、対話の品質が低下するとの主張があります。ある言動が差別的であると感じる場合でも、過度な被害者意識が相互理解を妨げる可能性があると考えられています。

マイクロアグレッションの肯定する見解

マイクロアグレッションに対する肯定派のの見解は、主にコミュニケーションや教育の側面から、または無意識のバイアスを理解するための機会として捉える立場があります。これらの見解は、マイクロアグレッションを単なる問題点としてだけでなく、成長や変革の機会として捉える立場を示しています。ただし、それには十分な教育や意識向上が必要であり、組織や社会全体が協力して取り組むことが求められます。

教育の機会

マイクロアグレッションが起こった場合、それを問題と見なすのではなく、教育の機会として捉える見解があります。これにより、差別的な行動や偏見がなぜ問題なのかを理解し、その改善に向けて学習することが期待されます。

コミュニケーションの促進

マイクロアグレッションが発生した場合、それをきっかけにコミュニケーションが促進される可能性があります。関係者同士が対話し、異なる視点やバックグラウンドについて理解を深めることができます。

無意識のバイアスの自覚

マイクロアグレッションが問題として認識されることで、個人や組織が無意識のバイアスに気づく契機となります。その結果、バイアスに基づく行動や態度を修正するための取り組みが始まることが期待されます。

組織文化の改善

マイクロアグレッションが浮き彫りにされることで、組織がより包摂的で多様性を尊重する文化を築く機会となります。組織がこれに対処することで、従業員全体の幸福感や生産性が向上する可能性があります。

個人成長の促進

マイクロアグレッションが発生する状況に直面することで、自身の感受性やエンパシーを向上させ、他者との関係構築を向上させる契機となります。

職場での対処法、対策

職場でマイクロアグレッションが起きた場合の対処法や対策の一般的なアプローチです。ただし、具体的な状況によって適用すべき対策が異なるため、個別のケースに応じて柔軟に対処することが重要です。対処法は、問題を早期に認識し、適切に対処するための一般的なガイドラインです。状況によっては、特定の組織のポリシーや文化に従った対処法が求められます。

  • 冷静な反応
    マイクロアグレッションに直面した場合、急激な感情的な反応を避け、冷静に対処することが重要です。感情的になることなく、事実を確認し理性的な対話を心がけます。
  • 言葉で問題を指摘
    発生したマイクロアグレッションに対して、具体的な事例や言葉を指摘して問題を共有します。相手に自身の言動の意図や影響について認識させることが重要です。
  • フィードバックを求める
    対話の中で、相手に対してフィードバックを求めることも必要なケースもあります。これにより、相手がなぜそのような言動をとったのかを理解し、コミュニケーションを進める上での改善点を見つけることができます。
  • 上司や管理職に報告
    もしマイクロアグレッションが繰り返され、自分だけで解決できない場合は、上司や人事部などの管理職に報告することが適切です。組織内の対処プロセスを利用して問題解決に取り組むことが期待されます。
  • 教育やトレーニングの促進
    マイクロアグレッションを防ぐために、組織全体で多様性と包摂性に関する教育やトレーニングを促進することが重要です。従業員に対して異なるバックグラウンドや文化に対する理解を深める機会を提供します。
  • サポートを受ける
    マイクロアグレッションに対処するのはストレスを引き起こすことがあります。必要であれば、サポートを受けるために同僚や上司、専門家、労働組合、カウンセリングサービスなどを活用します。

マイクロアグレッション減らせる範囲

マイクロアグレッションを減らすためには、個々の意識と言動の変容が必要です。これらの対策は、個人や組織が異なるバックグラウンドや文化を尊重し、差別や偏見を減少させるために取り組むべき方向を示しています。自己の意識を高め、他者とのコミュニケーションにおいて敬意をもち、包括的な環境を促進するために努力することが不可欠です。

STEP
自分の言動を観察する
  • 自己認識の向上
    マイクロアグレッションを減少させる第一歩は、自己認識の向上です。自分の行動や発言が他者にどのように受け取られるかを理解し、潜在的なバイアスやステレオタイプに気づくことが重要です。
  • フィードバックの受け入れ
    他者からのフィードバックを受け入れる姿勢を持つことも重要です。他者の視点から見た自分の行動や言動を理解し、改善の余地があれば積極的に修正することが求められます。
  • 言葉遣いの注意
    言葉は強力な影響を持つため、特に注意が必要です。差別的な表現やステレオタイプを避け、包括的で尊重される言葉遣いを心がけます。
STEP
相手の文脈を理解する
  • エンパシーの向上
    相手の状況や文脈を理解するためにエンパシーを発揮することが重要です。異なるバックグラウンドや経験を持つ人と対話する際には、相手の視点に立ち、個々の独自性を尊重します。
  • 文化的敏感さ
    文化的な差異や異なる価値観に対する理解を深めることも大切です。異なる文化や背景を持つ人々とのコミュニケーションにおいては、適切な敬意を払い、配慮を示すことが求められます。
STEP
指摘を受け入れ修正する
  • 謙虚な姿勢
    マイクロアグレッションに指摘された場合、謙虚な姿勢を持つことが重要です。自らの行動を客観的に見つめ直し、相手の経験や感情に敏感になりながら、改善への意欲を示します。
  • 継続的な学び
    マイクロアグレッションを減少させるためには、継続的な学びと成長が必要です。文学やトレーニングを通じて、差別や偏見についての理解を深め、自己の認識を高めることが重要です。
  • 共感的な対話
    マイクロアグレッションが生じた場合には、当事者となった相手と共感的な対話を行い、お互いの視点を理解することが対処の一環となります。共に問題を解決し、より包括的な環境を築くために努力します。

マイクロアグレッションのセルフチェックリスト

マイクロアグレッションの自己評価・セルフチェックリストです。このリストは、マイクロアグレッションの4つの種類(マイクロインサルト、マイクロアサルト、マイクロインバリデーション、環境型マイクロアグレッション)に基づいて構成されています。次の質問に対して、1 = 全く当てはまらない、2 = あまり当てはまらない、3 = どちらとも言えない、4 = ある程度当てはまる、5 = 非常に当てはまるのスケールで回答してください。

マイクロアグレッションのセルフチェックリスト
マイクロインサルト(Microinsults)
1.他人の能力や知識を軽視する発言をすることがありますか?
2.他人の文化や習慣を批判することがありますか?
3.性別に基づいて他人を判断することがありますか?
4.人種や民族に関するステレオタイプな発言をすることがありますか?
5.他人の職業や経歴を見下す発言をすることがありますか?
6.他人の外見について批判的なコメントをすることがありますか?
7.他人の発言を聞かずに自分の意見を押し付けることがありますか?
8.他人の成功を羨ましく思い、その努力を軽視することがありますか?
9.他人のアイデンティティやバックグラウンドを侮辱することがありますか?
10.他人の話を無視したり、軽視する態度をとることがありますか?
マイクロアサルト(Microassaults)
11.ジョークとして差別的な発言をすることがありますか?
12.他人の信念や価値観を直接否定することがありますか?
13.他人を不快にさせる言葉や行動を故意に取ることがありますか?
14.他人の外見や性別に基づいて侮辱することがありますか?
15.他人の意見や行動を嘲笑することがありますか?
16.差別的な言葉や行動を用いて他人を傷つけることがありますか?
17.他人の存在を否定するような態度を取ることがありますか?
18.他人の文化や背景を攻撃することがありますか?
19.他人のアイデンティティを侮辱することがありますか?
20.他人の権利や自由を侵害する発言や行動をすることがありますか?
マイクロインバリデーション(Microinvalidations)
21.他人の感情や経験を否定することがありますか?
22.他人の意見や感覚を無視することがありますか?
23.他人の問題や困難を軽視することがありますか?
24.他人の経験や感情を軽んじる発言をすることがありますか?
25.他人の困難を「大したことない」と思うことがありますか?
26.他人の意見や感情を無視することがありますか?
27.他人の背景や経験を無視する発言をすることがありますか?
28.他人の苦しみや困難を軽視することがありますか?
29.他人の意見や感情を軽んじる態度を取ることがありますか?
30.他人の困難や苦しみを理解しようとしないことがありますか?
環境型マイクロアグレッション(Environmental Microaggressions)
31.差別的なポスターや標語がある環境を支持することがありますか?
32.特定のグループを排除するような環境を作ることがありますか?
33.特定の人種や性別が少数派である環境を維持することがありますか?
34.差別的な文化や慣習を支持することがありますか?
35.他人を無視するような環境を作ることがありますか?
36.他人のアイデンティティを否定するような環境を支持することがありますか?
37.特定のグループを排除するような言葉や行動を取ることがありますか?
38.他人を軽視するような環境を作ることがありますか?
39.他人の権利を無視するような環境を支持することがありますか?
40.他人の自由を制限するような環境を作ることがありますか?
マイクロアグレッションのセルフチェックリスト

評価

  • 各セクション(4種のマイクロアグレッション)ごとに質問に対するスコアを合計し、以下の基準で評価します。
合計点評価内容
10-20点マイクロアグレッションの可能性が低い
21-30点多少のマイクロアグレッションの傾向が見られる
31-40点明確なマイクロアグレッションの傾向が見られる
  • 『マイクロアグレッション:人種、性差別、そして多様性の心理学』
    • 著者: Derald Wing Sue
    • 出版社: Wiley
  • 『マイクロアグレッション・マニュアル:レジスタンスの心理学』
    • 著者: Derald Wing Sue, David Rivera, Michelle Capodilupo, Aisha M. Holder
    • 出版社: Routledge
  • 『心の中のバイアス:なぜ私たちは差別を続けるのか』
    • 著者: Jennifer L. Eberhardt
    • 出版社: Viking
  • 『オーバーシュート:平等のアイデアから深いバイアスまで』
    • 著者: Jonathan Haidt, Greg Lukianoff
    • 出版社: Penguin Press
  • 『逆誤解:無意識のバイアスと人間関係』
    • 著者: Robin J. Ely, David A. Thomas
    • 出版社: Harvard Business Review Press
  • 『Microaggressions and Marginality: Manifestation, Dynamics, and Impact』
    • 著者: Derald Wing Sue, Christina M. Capodilupo, Kevin L. Nadal, et al.
    • 発行社: Wiley
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