MBCT:マインドフルネス認知療法
マインドフルネス認知療法(Mindfulness-Based Cognitive Therapy: MBCT)は、うつ病の治療と再発予防を主な目的として開発されたプログラムで、Jon Kabat-Zinn博士のマインドフルネスストレス低減法(MBSR)と認知行動療法(CBT)の要素を組み合わせています。1990年代にZindel Segal、John Teasdale、Mark Williamsらによって開発されました。
マインドフルネスと認知行動療法の技法を通じて、ネガティブな思考パターンや感情に対する新しい対処法を学ぶプログラムは8週間にわたり、様々なうつ病やストレス、不安、燃え尽き症候群、摂食障害などに対する有効なアプローチとして認識されています。
- MBCTの基本概念
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MBCTは、マインドフルネスと認知行動療法の技法を統合し、次の点に焦点を当てています。
- マインドフルネス:現在の瞬間に注意を向けることで、自動的な反応やネガティブな思考パターンに気づき、これらに対する新しい対処法を身につけます。
- 認知行動療法:ネガティブな思考パターンや信念を認識し、それらをより現実的で適応的なものに変える技法です。
- MBCTの目的
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MBCTの主な目的は次の通りです。
- うつ病の再発予防:過去のうつ病エピソードに関連する思考パターンを変えることで、再発を防ぎます。
- ストレス管理:マインドフルネスの実践を通じて、ストレスに対する新しい対処法を学びます。
- 感情調整:ネガティブな感情やストレスに対する反応を調整し、より健康的な感情管理を促進します。
- 自分の思考や感情に対する新しい視点を持つ:自己批判的な思考や感情に対して、新しい視点を持ち、自己受容を促進します。
8週のプログラムの構成
MBCTは通常8週間のプログラムとして構成され、毎週2時間程度のグループセッションが行われます。
- 目的:自動思考から現在の瞬間に注意を向けることの重要性を理解する。
- 実践:簡単な呼吸法やボディスキャン。
- 目的:思考が過去や未来にさまようことに気づき、現在の瞬間に戻る方法を学ぶ。
- 実践:静座瞑想、歩行瞑想。
- 目的:身体の感覚に注意を向けることで、ストレスや感情の変化を早期に察知する。
- 実践:ヨーガやボディスキャン。
- 目的:ストレスや困難な状況に対する反応パターンを認識し、それに対する新しい対処法を探る。
- 実践:反応と反射の違いに気づくエクササイズ。
- 目的:日常生活の中で現在の瞬間に注意を向ける方法を実践する。
- 実践:マインドフルネスな食事、歩行瞑想。
- 目的:思考と現実を区別し、思考に対する新しい視点を持つ。
- 実践:思考に対する観察と距離を置く練習。
- 目的:自己ケアの重要性を理解し、具体的な計画を立てる。
- 実践:自己ケアプランの作成。
- 目的:学んだ技法を振り返り、今後の実践方法を確認する。
- 実践:グループでのシェアリングと総復習。
効果と研究
MBCTの精神療法の特徴
マインドフルネス認知療法(MBCT)は、マインドフルネスと認知行動療法(CBT)の要素を組み合わせた独自の精神療法です。
マインドフルネスと認知行動療法を組み合わせたアプローチで、うつ病の再発予防やストレス管理に効果的な精神療法です。マインドフルネスを通じて現在の瞬間に意識を集中させ、ネガティブな思考パターンに対処し、自己受容とセルフコンパッションを強化します。グループセッション形式で行われ、日常生活に応用可能な持続可能な実践法を提供します。
- マインドフルネスの活用
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MBCTは、マインドフルネスの技法を中心に据えています。マインドフルネスとは、現在の瞬間に注意を向け、判断をせずにその瞬間を受け入れることを指します。
- 現在の瞬間に意識を集中
過去の後悔や未来の不安にとらわれることなく、現在の瞬間に注意を向けることを学びます。 - 観察と受容
思考や感情を観察し、評価や判断をせずにそのまま受け入れる能力を養います。
- 現在の瞬間に意識を集中
- 認知行動療法(CBT)の要素
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MBCTは、認知行動療法の要素も取り入れています。CBTは、ネガティブな思考パターンを特定し、それをより現実的で適応的なものに変えることを目指します。
- 思考の認識
ネガティブな思考パターンを認識し、それが感情や行動に与える影響を理解します。 - 思考と現実の区別
思考を事実と区別し、思考は単なる思考であり、必ずしも現実を反映しているわけではないことを学びます。
- 思考の認識
- 自動操縦モード(自動思考)からの脱却
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多くの人がストレスやうつ病に陥る原因として、自動操縦モード(自動的な反応や習慣的な行動)が挙げられます。MBCTでは、この自動操縦モードから意識的に抜け出すことを重視します。
- 意識的な行動
日常生活において、意識的に行動することを学びます。 - 選択の自由
反応する前に一息つき、選択の自由を持つことを学びます。
- 意識的な行動
- うつ病の再発予防
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MBCTは、特にうつ病の再発予防に効果的であることが証明されています。過去のうつ病エピソードに関連する思考パターンを変えることで、再発を防ぎます。
- 再発の兆候の認識
うつ病の再発の兆候を早期に認識し、それに対処する方法を学びます。 - ストレス対処法の習得
ストレスに対する新しい対処法を学び、再発を予防します。
- 再発の兆候の認識
- セルフコンパッション(自己慈悲)の強化
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MBCTは、自己に対する優しさや思いやりの態度を養うことにも焦点を当てています。これにより、自己批判的な思考から解放され、自己受容が促進されます。
- 自己批判の軽減
自己批判的な思考に気づき、それを和らげる方法を学びます。 - 自己受容
自分自身を受け入れ、優しさと理解をもって接する態度を育みます。
- 自己批判の軽減
- 瞑想と実践の多様性
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MBCTは、さまざまな瞑想と実践を取り入れており、これにより多面的にマインドフルネスを体験できます。
- 静座瞑想
呼吸や身体の感覚に意識を向ける基本的な瞑想法。 - ボディスキャン
身体の各部位に注意を向け、感覚を観察する瞑想法。 - 歩行瞑想
歩くという動作に意識を集中させる瞑想法。 - ヨガ
身体の動きとマインドフルネスを組み合わせた実践。
- 静座瞑想
- グループセッション形式
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MBCTは通常、グループセッション形式で行われます。これにより、参加者は互いにサポートし合い、共通の体験を共有することができます。
- 相互サポート
グループ内での体験の共有とサポートを通じて、学びを深めます。 - 共感と理解
他の参加者の経験を聞くことで、共感と理解が深まります。
- 相互サポート
- 日常生活への応用
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MBCTは、瞑想やマインドフルネスの実践を日常生活に取り入れることを強調しています。これにより、プログラム終了後も持続可能な習慣として定着させることができます。
- 日常のマインドフルネス
日常のあらゆる場面でマインドフルネスを実践する方法を学びます。 - 持続可能な実践
プログラム終了後も継続して実践できるように、自己ケアの計画を立てます。
- 日常のマインドフルネス
認知行動療法の要素
マインドフルネス認知療法(MBCT)は、マインドフルネスと認知行動療法(CBT)の要素を組み合わせた治療法です。
MBCTは、マインドフルネスと認知行動療法の技法を融合させたアプローチです。CBTの要素である思考の認識と記録、認知再構成、行動活性化、暴露療法、認知的解離などを取り入れ、ネガティブな思考パターンや信念を変える方法を学びます。これにより、うつ病の再発予防や不安の軽減、ストレス管理に効果的な治療法となっています。
認知行動療法の基本概念
認知行動療法(CBT)は、次の基本概念に基づいています。
- 認知の影響
人の感情や行動は、出来事そのものよりも、その出来事に対する認知や思考によって影響を受ける。 - 思考の修正
不適応な思考パターンを特定し、より現実的で適応的なものに変えることで、感情や行動も改善される。 - 行動の変化
行動を変えることが、思考や感情の変化を促進する。
MBCTにおけるCBTの要素
- 思考の認識と記録
- 思考の認識:MBCTでは、日常生活でのネガティブな思考や自動思考に気づくことを重視します。参加者は、自分の思考パターンを観察し、どのような思考が感情や行動に影響を与えているかを認識します。
- 思考記録:ネガティブな思考や自動思考を記録することで、それらを客観的に分析し、どのような状況で特定の思考が生じるかを理解します。
- 認知再構成(リフレーミング)
- 認知再構成法:CBTの主要技法である認知再構成を取り入れ、歪んだ思考や不適応な信念を現実的で建設的なものに変える方法を学びます。例えば、「私は失敗者だ」という思考を、「私は時々失敗するが、それは成長の一部である」という新しい視点に置き換えます。
- 行動活性化
- 行動活性化法:CBTの行動活性化技法を使って、活動レベルを上げ、ポジティブな経験を増やすことで、うつ病の症状を改善します。参加者は、楽しみや充実感を感じる活動を計画し、実行するよう促されます。
- 暴露
- 暴露療法:CBTの一部である暴露療法も取り入れます。恐怖や不安を引き起こす状況に対して、徐々に直面することで、その状況に対する恐怖感や不安感を減少させます。
- 認知的脱中心化
- 認知的脱中心化:思考や感情から距離を置き、それらを客観的に観察する技法です。MBCTでは、マインドフルネスを通じて思考や感情を観察し、それに巻き込まれずに距離を置く方法を学びます。これにより、ネガティブな思考や感情に対する反応を変えることができます。
MBCTの具体的なテクニックとCBTの融合
マインドフルネス瞑想と認知行動技法の統合
- 呼吸への集中:呼吸に注意を向けることで、現在の瞬間に意識を集中させます。これは、ネガティブな思考に気づき、それを中断するためのCBTの技法と関連しています。
- ボディスキャン:身体の感覚に注意を向けることで、身体的なストレスや緊張に気づき、それを緩和します。これは、CBTの身体的感覚と感情の関連を理解する技法と結びつきます。
グループセッションでの認知行動技法
- ディスカッション:参加者は、グループセッションで自分の経験や気づきを共有します。これにより、他者の視点や新しい認知の仕方を学びます。
- ワークシート:CBTで使われるワークシートを用いて、思考記録や認知再構成の練習を行います。
効果と研究
うつ病の再発予防
- 研究成果:MBCTは、特に3回以上のうつ病エピソードを経験した人に対して、再発率を有意に低下させることが示されています。CBTの認知再構成とマインドフルネスの自己観察が相乗効果を生み出しています。
不安やストレスの軽減
- 研究成果:MBCTは不安障害やストレス関連障害にも効果があります。認知行動療法の技法を通じて、不安を引き起こす思考パターンを変えることができます。
MBSRとMBCTとの比較
MBSR(マインドフルネスストレス低減法)とMBCT(マインドフルネス認知療法)は、どちらもマインドフルネスを取り入れた精神療法ですが、それぞれ異なるアプローチや目的を持っています。
MBSRとMBCTは、マインドフルネスを中心に据えたアプローチであり、ストレスや心理的な問題に対処するための有用な手段です。MBSRはより広範なストレス管理に焦点を当てており、MBCTは特にうつ病の治療と再発予防に特化しています。MBCTは、MBSRの基本的なアプローチに加えて、認知行動療法の技法を組み合わせ、より具体的な認知や感情に対処するスキルを提供します。
MBSRとMBCTとの比較 | |
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MBSR マインドフルネスストレス低減法 | MBCT マインドフルネス認知療法 |
目的 | |
MBSRの主な目的は、ストレスの軽減と生活の質の向上です。元々は慢性的な痛みやストレスに苦しむ人々に向けられましたが、現在では広範囲にわたるストレスや環境への対処方法を学ぶことを目指しています。 | MBCTの主な目的は、うつ病の治療と再発予防です。MBSRと同様にマインドフルネスを中心に据えていますが、認知行動療法(CBT)の要素も取り入れ、うつ病に特化したアプローチを提供します。 |
焦点 | |
MBSRでは、マインドフルネスを通じて現在の瞬間に注意を向け、ストレスや痛みに対処するための技法を学びます。特に、静座瞑想やボディスキャンなどのマインドフルネス瞑想法が重視されます。 | MBCTでは、マインドフルネスと認知行動療法の技法を組み合わせ、過去のうつ病エピソードに関連する思考パターンや感情に対処することを重視します。認知再構成や行動活性化などのCBTの技法が導入されます。 |
プログラムの構成期間 | |
通常は8週間のプログラムで行われます。 | 通常は8週間のプログラムで行われます。MBSRと同様にグループセッションや瞑想練習が行われますが、CBTの要素も組み込まれています。 |
プログラムの構成内容 | |
グループセッションや瞑想練習、課題の実施などを通じて、マインドフルネスの実践を学びます。自己観察や自己受容の促進が重要な要素です。 | MBSRのマインドフルネス瞑想法に加えて、認知行動療法の技法や課題が提供されます。参加者は、自己観察だけでなく、不適応な思考や感情に対処するスキルも身につけます。 |
応用範囲 | |
広範な応用:MBSRは、慢性的な痛みやストレスだけでなく、うつ病、不安、睡眠障害、燃え尽き症候群など、様々な心理的および身体的健康問題に対処するためにも利用されます。 | うつ病に特化:MBCTは、特にうつ病の治療と再発予防に焦点を当てています。うつ病の治療や再発予防に有効であり、過去のうつ病エピソードに関連する認知的なパターンの変化を促進します。 |
心理的問題へのアプローチ | |
MBSRは主にストレス管理と生活の質の向上に焦点を当てています。マインドフルネスを通じて、現在の瞬間に注意を向け、ストレスや痛みに対処する技法を提供します。 | MBCTはうつ病の治療と再発予防に特化しています。マインドフルネスの技法に加えて、認知行動療法の要素を取り入れ、過去のうつ病エピソードに関連する認知的なパターンや感情に対処するスキルを提供します。 |
認知の変化へのアプローチ | |
MBSRでは、マインドフルネスを通じて自己観察を促進し、現在の瞬間に集中することで、思考や感情に柔軟な関係を築くことが重視されます。しかし、MBSRは認知的な変化に重点を置いた療法ではありません。 | MBCTでは、認知行動療法の要素が導入され、過去のうつ病エピソードに関連するネガティブな思考や信念に対処するためのスキルが提供されます。認知再構成や自己観察を通じて、思考のパターンを変え、感情や行動に影響を与える認知的な過程に介入します。 |
応用範囲と治療効果 | |
MBSRは広範なストレス管理や痛みの緩和に効果があります。また、不安やうつ症状の軽減にもこうかがありますが、MBCTほど特化しているわけではありません。 | MBCTは特にうつ病の治療と再発予防に有効であり、過去のうつ病エピソードに関連する思考パターンを変えることで再発を防ぎます。認知行動療法の要素の導入により、治療の効果が向上し、うつ病の再発率が有意に低下します。 |
ACT:アクセプタンス&コミットメント・セラピー
アクセプタンス&コミットメント・セラピー(Acceptance and Commitment Therapy:ACT)は、認知行動療法(CBT)の枠組み内で開発された心理療法の一つです。ACTは、1990年代にスティーブン・C・ヘイズを中心に開発され、高次の認知行動療法のリレーショナルフレーム理論に基づいています。
アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)は、現実の受容、コミットメント、マインドフルネス、認知のデフュージョン、価値観の明確化、自己如実性などの核心プロセスに基づいており、これらを組み合わせることで心理的な苦しみからの解放や充実した人生の実現を促進します。
- ACTの主な要素
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- アクセプタンス(Acceptance)
- ACTでは、現実を受け入れ、それに対して抵抗することなく、客観的に見ることが重要です。つまり、自分の思考や感情、身体的感覚を否定するのではなく、受け入れることでストレスを軽減し、心の柔軟性を高めます。
- コミットメント(Commitment)
- コミットメントは、価値観や目標に基づいた意味のある行動を選択すること指します。自分が本当に重要だと思うことに向かって、行動することで意味を見出し、充実感を得ることができます。
- マインドフルネス(Mindfulness)
- マインドフルネスは、現在の瞬間に意識を集中し、客観的に自分の思考や感情を観察する能力です。ACTでは、マインドフルネスを通じて、自己観察を高め、価値観に基づいた行動を促進します。
- 認知のデフュージョン(Cognitive Defusion)
- 認知のデフュージョンは、自分の思考と一体化せず、それらを客観的に見ることを意味します。ACTでは、思考と感情から離れ、それらに囚われることなく、自由な行動を選択することが重視されます。
- 価値観の明確化(Values Clarification)
- 価値観の明確化では、自分にとって本当に大切なことを見出し、それに基づいて行動することが促進されます。自分の人生の目的や意味を明確にし、それに従って行動することで、充実感や満足感を得ることができます。
- アクセプタンス(Acceptance)
- ACTのアプローチ
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- 6つの核心プロセス
- ACTは、「アクセプタンス」「コミットメント」「マインドフルネス」「認知のデフュージョン」「価値観の明確化」「自己如実性」の6つの核心プロセスに基づいています。これらのプロセスを組み合わせることで、心理的な苦しみからの解放や充実した人生の実現を促進します。
- 行動実験
- ACTでは、クライアントが直面する問題に対して、実際に行動して経験を積むことが重要視されます。行動実験を通じて、新しい行動パターンや視点を開拓し、自己の柔軟性を高めます。
- コミットメントへの自己への問いかけ
- クライアントは、自分の人生の価値観や目標について深く考え、それらにコミットメントするよう促されます。自己への問いかけを通じて、クライアントは自己の方向性を見出し、それに従って行動することが重視されます。
- 6つの核心プロセス
- ACTの適用範囲
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- 幅広い精神的問題への適用
- ACTは、うつ病、不安症、摂食障害、PTSD(心的外傷後ストレス障害)など、様々な精神的問題に適用されています。また、ストレス管理やパフォーマンス向上など、非臨床的な目標にも応用されています。
- 個人セラピーとグループセラピー
- ACTは個人セラピーとグループセラピーの両方で効果的に行われています。個人セラピーでは、クライアントの個別の問題に焦点を当て、自己の目標や価値観に向かって行動する支援を提供します。一方、グループセラピーでは、他者との共感や支援を通じて学び、成長する機会が提供されます。
- 幅広い精神的問題への適用
ACTの特徴
アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)の精神療法としての特徴は、次のように要約されます。
- マインドフルネスと認知のデフュージョン
- ACTでは、マインドフルネスの実践を重視し、現在の瞬間に意識を集中させることで、自己の思考や感情を客観的に観察します。認知のデフュージョンは、自分の思考と一体化せず、それらを客観的に見る能力を高めることを指します。
- アクセプタンスと価値観の明確化
- ACTでは、現実を受け入れ、自己の価値観や目標に基づいた意味のある行動を選択すること指します。自分が本当に大切だと思うことに向かって行動することで、意味を見出し、充実感を得ることができます。
- 認知行動療法の拡張
- ACTは認知行動療法(CBT)の枠組み内で開発されましたが、従来のCBTよりも柔軟で包括的なアプローチを提供します。感情や思考のコントロールではなく、それらと共存するスキルを強化します。
- 行動実験とコミットメントへの自問自答
- ACTでは、クライアントが直面する問題に対して、実際に行動して経験を積むことが重要視されます。また、自問自答を通じて、自己の方向性を見出し、それに従って行動することが促進されます。
- クライアント中心のアプローチ
- ACTは、クライアントの個々のニーズや目標に合わせて柔軟にアプローチします。セラピストは、クライアントの自己理解と成長を支援するために、個別に適応したテクニックや戦略を選択します。
- 非臨床的な目標への適用
- ACTは非臨床的な目標にも適用されます。例えば、パフォーマンス向上やストレス管理などの目標に対しても、価値観に基づいた行動やマインドフルネスの実践が効果的です。
- 科学的根拠に基づくアプローチ
- ACTは、科学的な根拠に基づいて開発されたアプローチであり、多くの研究によってその有効性が支持されています。臨床試験や実践において、ACTは幅広い精神的問題に対して有益であることが示されています。
MBCTとACTとの比較
MBCT(マインドフルネス認知療法)とACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)は、どちらもマインドフルネスを取り入れた精神療法ですが、異なるアプローチや焦点を持っています。
MBCTとACTはともに有効な精神療法であり、それぞれ異なる焦点やアプローチを持っています。MBCTは主にうつ病に特化し、認知的なパターンや感情に対処することに焦点を当てます。一方、ACTは幅広い精神的問題に適用され、クライアントが自己の価値観に基づいた充実した人生を実現するためのスキルを促進します。
MBCTとACTとの比較 | |
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MBCT マインドフルネス認知療法 | ACT アクセプタンス&コミットメント・セラピー |
目的 | |
MBCTの主な目的は、うつ病の治療と再発予防です。特に、過去のうつ病エピソードに関連する認知的なパターンや感情に対処し、再発を防ぐことを目指します。 | ACTの主な目的は、個々の価値観に基づいた充実した人生の実現です。クライアントが現実を受け入れ、自己の価値観や目標に向かって行動することで、心理的な苦しみから解放されることを目指します。 |
焦点 | |
MBCTでは、マインドフルネスと認知行動療法(CBT)の要素を組み合わせ、うつ病に関連する認知的な再構成や感情規制のスキルを強化します。 | ACTでは、アクセプタンス、コミットメント、マインドフルネス、認知のデフュージョン、価値観の明確化、自己如実性などの核心プロセスを促進します。 |
プログラムの構成 | |
MBCTは通常、8週間のプログラムで行われます。グループセッションや瞑想練習、認知的な宿題などが含まれます。 | ACTは通常、8週間のプログラムで行われますが、MBCTと比較して、より幅広いテーマやテクニックをカバーすることがあります。グループセッションや個別セッションでの活動も含まれます。 |
アプローチの特徴 | |
MBCTでは、うつ病の治療と再発予防に特化したアプローチが提供されます。クライアントは、認知的なパターンや感情に対処するスキルを学び、マインドフルネスを通じて自己観察を高めます。 | ACTは、マインドフルネスの実践に加えて、アクセプタンス、コミットメント、認知のデフュージョンなどの特徴的な要素を強調します。クライアントは、自己の思考や感情を柔軟に扱い、自己の価値観に従って行動するスキルを向上させます。 |
焦点の違い | |
MBCTはうつ病の治療と再発予防に特化し、認知的なパターンや感情に焦点を当てます。一方、ACTは価値観に基づいた充実した人生の実現に焦点を当て、幅広い精神的問題に適用されます。 | |
アプローチの違い | |
MBCTはマインドフルネスと認知行動療法の組み合わせを強調しますが、ACTはマインドフルネスと独自の核心プロセスを強調します。 | |
応用範囲の違い | |
MBCTは主にうつ病の治療と再発予防に使用されますが、ACTはうつ病だけでなく、不安、ストレス、摂食障害など、さまざまな精神的問題に適用されます。 |
MBSR・MBCT・ACTの特徴と比較
MBSR(マインドフルネスベースストレス低減法)、MBCT(マインドフルネスベース認知療法)、そしてACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)の特徴や比較のまとめです。
- MBSR・MBCT・ACTの特徴と比較
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- MBSR(マインドフルネスベースストレス低減法)
- MBCT(マインドフルネスベース認知療法)
- ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)
- 特徴
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MBSR
- ストレス管理と生活の質の向上を目的とする。
- ジョン・カバットジンによって開発された。
- マインドフルネス瞑想、ボディースキャン、ヨガなどを用いる。
MBCT
- うつ病の治療と再発予防を目的とする。
- MBSRと認知行動療法を組み合わせたアプローチ。
- Zindel Segal、John Teasdale、Mark Williamsによって開発された。
ACT
- 自己の価値観に基づいた充実した人生を実現することを目的とする。
- スティーブン・C・ヘイズによって開発された。
- マインドフルネス、アクセプタンス、コミットメント、認知のデフュージョンなどの要素を含む。
- 焦点
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MBSR
- 現在の瞬間に注意を向け、ストレスや痛みに対処するスキルを提供する。
- 自己観察を通じて、自己の行動や思考パターンを理解し、変容させる。
MBCT
- 過去のうつ病エピソードに関連する認知的パターンや感情に対処する。
- マインドフルネスを通じて、再発を防ぎ、充実した人生を実現する。
ACT
- 現実を受け入れ、自己の価値観や目標に向かって行動するスキルを向上させる。
- マインドフルネスを通じて、自己観察を高め、柔軟な心の状態を養う。
- 焦点の違い
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- MBSR
ストレス管理と生活の質の向上。 - MBCT
うつ病の治療と再発予防。 - ACT
自己の価値観に基づいた充実した人生の実現。
- MBSR
- アプローチの違い
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- MBSR
マインドフルネスと自己観察に焦点。 - MBCT
マインドフルネスと認知行動療法の組み合わせ。 - ACT
マインドフルネス、アクセプタンス、コミットメント、認知のデフュージョンなどの要素を統合。
- MBSR
- 応用範囲の違い
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- MBSR
ストレスや痛み、うつ病などに適用される。 - MBCT
特にうつ病に焦点があり、再発予防に効果がある。 - ACT
幅広い精神的問題に適用され、価値観に基づいた充実した人生の実現をサポートする。
- MBSR
- 書籍: “Full Catastrophe Living: Using the Wisdom of Your Body and Mind to Face Stress, Pain, and Illness”
- 著者: Jon Kabat-Zinn
- 出版所: Bantam
- 書籍: “Wherever You Go, There You Are: Mindfulness Meditation in Everyday Life”
- 著者: Jon Kabat-Zinn
- 出版所: Hyperion
- 書籍: “The Mindful Way Through Depression: Freeing Yourself from Chronic Unhappiness”
- 著者: Mark Williams, John Teasdale, Zindel Segal, Jon Kabat-Zinn
- 出版所: Guilford Press
- 書籍: “Mindfulness-Based Cognitive Therapy for Depression: A New Approach to Preventing Relapse”
- 著者: Zindel V. Segal, J. Mark G. Williams, John D. Teasdale
- 出版所: Guilford Press
- 書籍: “The Mindful Way Workbook: An 8-Week Program to Free Yourself from Depression and Emotional Distress”
- 著者: John D. Teasdale, J. Mark G. Williams, Zindel V. Segal
- 出版所: Guilford Press