アイ・アクセシング・キューの法則は、相手の目の動きから言葉に出ない思考の情報が予測できます。また、脳が示すジェスチャーやノンバーバルの観察も相手の心を見抜く指標となります。
私たちは普段会話するときに相手の目の動きに注目したりはしません。しかし、人が考えるときに目の動きを伴うことがあります。例えばよく昔から言われるのが、「目が動くと嘘をついている」などです。このような目の動きの方向性の法則を「アイ・アクセシング・キュー」やアイパターンと言います。人間の視線は五感に連動しているということで、日本では「視線解析」と呼ばれています。
会話の中で目の動きが示す先には、今までに体験した映像や音、身体感覚の記憶が示す過去を振り返っているのか、これから感じることを想像しているのか、また、その人が心で自問自答しているのかが予測できるとしています。
表象システムの五感はアイ・アクセシング・キューに影響しますが、五感の中の視覚は見たことがある記憶とイメージ(想像)、聴覚は聞いたことがある記憶とイメージ、触覚・臭覚・味覚は体感したことのある身体感覚、そして自己対話や内部対話は脳や心にアクセスします。このアクセスには一定の目の動きの法則性があるのですが、基本的な法則であって個人の癖も関わっています。目の動きの癖は成人期の頃までには決まると言われているので「心を読める」までは言えないことです。
例えば、「明日海に行きましょう」に対して視線が左下を見ていたら、相手は「海に行く」に対して自己対話していますので、行くか行かないかと迷っているのではと予測してみます。そこで、何か問題があるのかと考え、「水着はあるのと」尋ねてみました。相手の視線は右上を見ています。そこで、水着が無いため買うことを想像しているのかな、と予測してみます。
また、一時的に混乱の中で情報を処理しようとすると目が小刻みに左右に揺れます。
これは当たるも、当たらぬも自分の想像次第ということになりますので、より正確性(真意)に近づけるには、次のように、呼吸のパターンや声のトーン、話し方、姿勢、ジェスチャーなども加味しなければなりません。
視線の動きからわかる脳へのアクセス先とは
視線(目)の動き (右利きの場合※左利きは反対) | 視覚・聴覚・内部対話・体感覚のアクセス先 |
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(対面では右上) 視覚:想起・記憶 | 本人の視線が左上記憶(本当?)された視覚情報にアクセスしています。 実際に見たことのある過去のイメージを思い出しています。 例:昨日の夕ご飯は何を食べましたか? |
(対面では左上) 視覚:構成・想像 | 本人の視線が右上想像(嘘?)される視覚イメージにアクセスしています。 実際に見たことはないが、新しい視覚イメージをつくりだしています。 例:リンゴが黒かったら買いますか? |
(対面では右横) 記憶された音 | 本人の視線が左横記憶された聴覚情報にアクセスしています。 実際に聞いたことのある音や声を思い出しています。 例:荒波の音イメージしてください。 |
(対面では左横) 構成された音 | 本人の視線が右横想像される聴覚イメージにアクセスされています。 実際に聞いたことはないが、新しい聴覚イメージをつくりだしています。 例:校歌をジャズ風に歌ってください。 |
(対面では右下) 内部対話 | 本人の視線が左下 自己対話・内部対話にアクセスしています。 声に出さずに自問自答、ひとり言の心の会話をしています。 例:有名な童話を心で語ってください。 |
(対面では左下) 身体感覚 | 本人の視線が右下身体感覚にアクセスしています。 触覚・味覚・臭覚をを使いながら体の感覚を感じています。 例:父の手と母の手の感覚はどのように違いますか? |
相手の思考を読む?
相手の視線の動きを見ることで、どんな情報にアクセスしているかの思考を予測することができます。いま、どのようなことを考えているか予測するだけでも会話の進行に役立ちます。相手のパーターンを読み取る助けにもなります。
嘘を見抜く?
過去のことを聞いたときに、相手の目線が右上に動くということは、未来の視覚情報を構成しようとしています。もしかして、嘘をつこうとしている?です。ただし、左利きや癖になっている場合もありますので、確実性はありません。
相手の優位感覚がわかる?
目線が上に動く頻度の高い人は視覚情報が優位です。左右に動く頻度の高い人は聴覚情報が優位です。目線が下に動く人は身体感覚が優位です。これによって言葉の選択や目に訴えるのか、声のトーンやスピードに気を配るのかなどがわかります。
詳しくは、真上や真ん中、真下の動きも気になるところですが、右上、右下を理解しておくと役に立ちます。
有意感覚 | 呼吸、声のトーン、話し方、姿勢パターン、使われやすい叙述語 |
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視覚優位 | 目が上を向きやすい、声のトーンが高い、早口な傾向、姿勢がいい、ジェスチャーが多い 叙述語:注目する・映す・反映する・イメージ・見通し・視野・明確な・鮮明・まぶしい・見解など |
聴覚優位 | 目が横を向きやすい、話し方の速度は程よく正確、首をかしげる動作がある 叙述語:説明・論じる・響く・テンポ・雑音・静か・呼ぶ・耳にする・ざわざわ・騒がしいなど |
身体感覚優位 | 目が右下を向きやすい、声のトーンは低い、話し方はゆっくり、前傾姿勢、頭がうな垂れ気味 叙述語:感覚・緊張・安心・触る・感じる・温度・緊張・温かい・ふわふわ・頭に入る・押すなど |
コミュニケーションでは、相手のアイ・アクセシング・キューから読み取る優位な表象に合わせた声のトーンやスピードで話すことが受け入れやすく、ジェスチャーや姿勢などのモデリングすることがラポールを築きやすくなります。また、叙述語を合わせるだけでも同調される会話となります。
ジェスチャーでわかる脅威に対する反応
基本的な脅威に対しての反応 | 危険を察した際の3つの段階 |
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過剰補償:闘う(fight) | 実際とは真逆を真実であることのように振舞い、全く違う存在であるようにするために他者と闘う言動をします。 ・いきなり怒ったり、机をたたくなど攻撃に転じて自身を守ろうとします。 |
回避:逃げる(flight) | 常に真実が活性化されないように用心します。もし活性化されそうになったら素早く反応を押さえ込もうとする言動をとります。 ・体を後ろに反らしたり、後ずさりや視線を逸らすなど距離をとろうとします。焦りも見られます。 |
服従:麻痺する(freeze) | 真実でなくても鵜呑みにしてしまいます。従ってしまうことを確信した言動をとります。 ・言葉に詰まって不自然な間ができてしまう反応や、うなずくことあります。 |
マイクロジェスチャー | なだめ行動嘘を隠すときに無意識に身体が反応します。例えば、こめかみに力が入る、目をそらす、唾をのむ、鼻を触る、貧乏ゆすり、こぶしを握る、唇をなめる、噛みしめるなど、その他、ノンバーバル行動もあります。 |
目の動きは上図のように正確な予測はつかないこともありますが、その人特有の目の動きのパターンを持っています。相手のアクセシング・キューの特徴をつかむことは記憶や想像にアクセスしている予想ができることに加え、優位表象システムを知る手がかりにもなりますのでコミュニケーションに上手に活かしていくことが望めます。
例えば、左上を見ているということは記憶された視覚であって本当のことであると予想ができ、左上だったら新しく事実を作ろうとしているのかもしれません。次に左下だったら発する言葉選びしているのではと予想できるため、疑ってみたりするのも面白いかもしれません。
また、自分で目を動かすことでアイデアを出したり、記憶を思い出すことにも役立ちますので効果的に取り入れることで必要に応じて記憶や想像にアクセスすることは効果的となります。
アイ・アクセシング・キュー:ケース2
アイ・アクセシング・キュー(Eye Accessing Cues)は、NLP(神経言語プログラミング)におけるコミュニケーションの手法の一つです。この手法では、相手の目の動きや注視点に着目し、その情報を利用して、相手の思考プロセスや内的表現を理解することを目指します。以下に、アイ・アクセシング・キューの手法や技法についてまとめます。
- アイ・アクセシング・パターン
アイ・アクセシング・パターンは、相手の目の動きが特定の思考プロセスや内的表現と関連しているという仮説に基づいています。NLPでは、一般的に以下のようなアイ・アクセシング・パターンが提唱されています。
- 視覚(Visual):上方を見上げることで視覚的な情報の処理を行います。イメージや視覚的なイメージを思い浮かべる際に使われるパターンです。
- 聴覚(Auditory):横を見ることで聴覚的な情報の処理を行います。音声や内部的な声を聞いたり、他人の声を想像したりする際に使われるパターンです。
- 感覚(Kinesthetic):下方を見下ろすことで身体感覚や感情の情報の処理を行います。感情や身体的な感覚、触覚などを思い起こす際に使われるパターンです。
- 内部対話(Internal Dialogue):斜め上を見上げることで内部的な対話や思考の処理を行います。自己との対話や言葉を使った思考をする際に使われるパターンです。
- アイ・アクセシング・キューの観察
アイ・アクセシング・キューを利用するためには、相手の目の動きと注視点に注意を払います。
例えば、相手が視線を上方に向けている場合、視覚的なイメージや思考を処理している可能性があります。
また、横方向や下方向を見ている場合も、それぞれのパターンに関連した思考プロセスが進行している可能性があります。 - フィードバックとキャリブレーション
アイ・アクセシング・キューを利用して相手の思考プロセスや内的表現を理解するためには、フィードバックとキャリブレーションが重要です。相手の目の動きや注視点に基づいて仮説を立て、それに対して相手の反応や行動を観察します。
例えば、視覚的なアイ・アクセシング・キューに対して相手が肯定的な反応を示す場合、それが正しい仮説である可能性が高まります。
逆に、相手の反応が予測と異なる場合は、仮説を再評価する必要があります。このようなフィードバックとキャリブレーションを通じて、より正確な情報を得ることができます。
アイ・アクセシング・キューは、相手の思考プロセスや内的表現を推測するための有用な手法ですが、あくまで目安として利用するべきです。個人差や文化的な要素によって、アイ・アクセシング・パターンが異なる場合もあります。したがって、確証を得るためには、相手とのコミュニケーションやキャリブレーションを通じて情報を補完する必要があります。
以上が、アイ・アクセシング・キューの手法や技法についてのまとめです。アイ・アクセシング・キューを熟練させることで、相手の思考や内的表現により敏感にアクセスし、より効果的なコミュニケーションを実現することができます。
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