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スキーマ療法の知識、概念、起源、定義など視点を変えて再度学習

目次

コーピングスタイルの概論

コーピングスタイルは、個人がストレスや困難な状況に対処するために使用する特定の方法や戦略のことを指します。コーピングスタイルは、直面するストレスフルな状況に対する認識や評価、個人のリソースやスキル、個人的な特性によって形成されます。

スキーマ療法において、クライエントは不適応なEMSに基づく問題を解決するために、健全なコーピングスタイルを身につけることが必要です。コーピングスタイルは、問題解決やストレスへの対処方法のことを指します。スキーマ療法では、コーピングスタイルは3つに分類されます。

非機能的コーピングスタイルには、さまざまな反応パターンがあります。次に3つの一般的な非機能的コーピングスタイルの例を示します。

非機能的コーピングスタイルの捉え方

服従(Surrender)

服従的なコーピングスタイルは、自己のニーズや意見を無視し、他者の要求や期待に従う傾向があります。個人が自己表現や自己主張を抑制し、他者の受け入れや承認を求めることが特徴です。このコーピングスタイルは、自己否定や自己評価の低下につながる場合があります。

回避(Avoidance)

回避的なコーピングスタイルは、問題や困難な状況から逃避する傾向があります。個人は困難な感情や課題に直面するのを避け、問題解決や対処を回避します。回避は一時的にはストレスを軽減するかもしれませんが、長期的には問題の悪化やストレスの増大につながる可能性があります。

過剰補償(Overcompensation)

過剰補償的なコーピングスタイルは、自己不足感や不安を補うために、過度な努力や行動を行う傾向があります。個人は自己価値や能力の証明を求め、過度な成果や完璧主義に取り組むことがあります。しかし、このコーピングスタイルは疲労やストレスを引き起こし、バランスの取れた生活を阻害する可能性があります。

これらの非機能的なコーピングスタイルは、早期不適応的スキーマやスキーマモードの活性化に関連して現れます。スキーマ療法では、これらのコーピングスタイルを認識し、代替の適応的なコーピング戦略を開発することを重視しています。

積極的コーピングスタイルへの捉え方

積極的なコーピング

積極的なコーピングとは、問題に対処するために、より適切な方法を採用することです。このスタイルは、問題解決に役立ち、より健全な結果をもたらす可能性があります。

アボイダンス

アボイダンスとは、問題から逃げることでストレスを回避する傾向のことです。このスタイルは、問題を解決しないため、長期的にはより大きな問題を引き起こす可能性があります。

オーバーコンペンセイティング

オーバーコンペンセイティングとは、過剰に努力することで、問題に対処しようとする傾向のことです。このスタイルは、過剰な努力によってストレスを引き起こす可能性があります。

スキーマ療法においては、クライエントは健全なコーピングスタイルを身につけ、自己支配的な態度を育成することが目標となります。これによって、不適応なEMSを克服し、より健全な人生を送ることができるようになると考えられます。

積極的なコーピング

積極的なコーピングとは、問題やストレスに対して積極的な対処をすることを指します。これは、問題を解決しようとすること、または問題を扱うために自分自身を強化することが該当します。

積極的なコーピングの種類には、次のようなものがあります。

  • 問題解決型コーピング
    • 問題を解決するために、情報を収集したり、計画を立てたり、実行したりすることを指します。このアプローチでは、問題に焦点を当て、可能な解決策を探します。
  • 情動調節型コーピング
    • ストレスや不安などの負の感情を減らすために、リラックスしたり、自己肯定感を高めたり、自己効力感を向上させたりすることを指します。このアプローチでは、ストレスに焦点を当て、感情的な反応を減らすことを目指します。
  • 社会的サポート型コーピング
    • 信頼できる人々からのサポートを求めたり、他の人々とつながりを持つことを指します。社会的サポートを受けることで、ストレスに対処する能力が向上し、負の感情が減少することがあります。
  • 心的回避型コーピング
    • ストレスや問題に直面する代わりに、他のことに注意を向けたり、物事を見過ごしたりすることを指します。しかし、このアプローチは一時的なものであり、問題を長期的に解決することはできません。

積極的なコーピングは、より効果的で健康的な生活を送るために重要な役割を果たします。スキーマ療法においては、問題解決型コーピングや情動調節型コーピングが重要視され、クライアントが自己肯定感や自己効力感を向上させ、より効果的な社会的サポートを得ることを支援することが目的となっています。

アボイダンス

アボイダンスとは、問題やストレスを回避することを目的として、不健康な方法でそれらに対処しないことを指します。アボイダンスは、しばしば短期的にはストレスを軽減しますが、長期的には問題を悪化させることがあります。

例えば、社交不安障害を持つ人が、不安を感じるイベントや場面を回避することによって、短期的には不安を減らすことができますが、長期的には社交スキルを向上させず、問題を悪化させる可能性があります。

また、アボイダンスは短期的に過食や過剰なアルコール摂取、ドラッグ使用、自己傷害など、問題を軽減するための行動につながることがあります。

スキーマ療法において、クライアントは自分がどのようなアボイダンス行動を取っているかを認識し、それらを変更するための方法を見つけることが重要です。アボイダンス行動を変更することにより、クライアントはストレスに対処し、自己成長を促進することができます。

オーバーコンペンセイティング

オーバーコンペンセイティングとは、個人が自分の欠点や弱点を過度にカバーしようとして、逆に問題を悪化させてしまうことを指します。この現象は、特定のスキーマ(例えば「不完全さと不備」、「不十分さ」など)に苦しんでいる場合によく見られます。

例えば、「不完全さと不備」のスキーマに苦しむ人は、自分自身に対して厳しい基準を設定し、完璧を求める傾向があります。オーバーコンペンセイティングでは、この人が自分自身に対して過度に厳しい基準を設定し、完璧を求めることで、実際には問題を悪化させてしまうことがあります。この場合、個人は時間をかけて何度も同じ作業を繰り返し、完璧な仕事をすることを求めますが、これによってストレスを増やし、パフォーマンスを低下させることがあります。

オーバーコンペンセイティングは、過度の努力やプレッシャーによって、個人が正常な生活を送ることを妨げる可能性があります。スキーマ療法においては、この現象に注意を払い、個人が自分自身に対して設定する基準を実際の能力や状況に基づいて見直すことが必要です。また、完璧主義的な傾向を持つ個人に対しては、適切なアドバイスやテクニックを提供し、ストレスや不安を軽減することが重要です。

積極的なコーピングは、より効果的で健康的な生活を送るために重要な役割を果たします。スキーマ療法においては、問題解決型コーピングや情動調節型コーピングが重要視され、クライアントが自己肯定感や自己効力感を向上させ、より効果的な社会的サポートを得ることを支援することが目的となっています。

積極的なコーピングスタイルの概念をまとめ

1⃣ 問題志向型コーピング(Problem-focused coping)

問題志向型コーピングは、ストレスの原因や問題自体に対処するための戦略です。具体的な問題を解決し、状況を改善することに焦点を当てます。例えば、情報収集や計画立案、問題解決のスキルを活用し、具体的なアクションを起こすことでストレスを軽減しようとします。

2⃣ 感情志向型コーピング(Emotion-focused coping)

感情志向型コーピングは、個人が感情やストレスに対処するための戦略です。自身の感情を認識し、受容し、調整することに焦点を当てます。感情を表現したり、リラクゼーションやマインドフルネスの技法を使用して感情を調節することで、ストレスを軽減しようとします。

2⃣ 避ける型コーピング(Avoidant coping)

避ける型コーピングは、ストレスや困難な状況を避けるために使用する戦略です。問題や感情に直面せず、それらを回避しようとします。これには、物事を無視したり、問題から目をそらしたりすることです。一時的にストレスを軽減するかもしれませんが、長期的には問題を解決せず、ストレスを増加させる可能性があります。

3⃣ 社会的サポートの利用(Social support seeking)

社会的サポートの利用は、他者からの支援や援助を求めることでストレスに対処する戦略です。個人は、信頼できる人々とのつながりを活用し、助言や情緒的なサポートを受けることで、ストレスを軽減しようとします。このコーピングスタイルは、人間関係や社会的な結びつきの重要性を強調しています。


4⃣ 反省型コーピング(Rumination coping)

反省型コーピングは、過去の出来事やストレスについて反省し、考え込む傾向のある戦略です。マイナスの出来事や感情について継続的に思い巡らし、それについて考えることで、自己分析や理解を深めようとします。しかし、このコーピングスタイルは、ストレスを増大させる可能性があります。

これらは一部の一般的なコーピングスタイルの例ですが、コーピングスタイルは多様であり、状況や個人の特性によって異なります。また、複数のコーピングスタイルを組み合わせて使用することもあります。

重要な点は、効果的なコーピングスタイルは状況に適応し、問題解決や感情調整に役立つことです。適切なコーピングスタイルを選択するためには、自己認識やスキルの開発、ストレスの評価などが重要です。また、適切なコーピングスタイルを学ぶためには、スキーマ療法が役立ちます。

早期不適応スキーマとコーピングスタイルは、個人の思考や行動に影響を与える重要な要素です。早期不適応スキーマは、幼少期に形成された中核的な信念や感情的な欲求を反映しており、これらが活性化することで特定の思考パターンや感情反応が引き起こされます。

また、コーピングスタイルは、個人がストレスや困難な状況に対処するために使用する行動パターンや戦略を表します。これらのコーピングスタイルは、早期不適応スキーマに基づいて形成されていて、個人が特定のスキーマによって影響を受ける場合、それに応じたコーピングスタイルを選択する傾向があります。

したがって、早期不適応スキーマとコーピングスタイルは相互に関連し合い、個人の思考や行動に影響を与えています。スキーマが活性化すると、特定のコーピングスタイルが反応として現れるます。そして、この組み合わせが個人のストレス応答や心理的な健康に影響を与える可能性があります。

ただし、これらの要素は個人によって異なる組み合わせや変化が生じますので、経験や環境、個性などが影響を与え、多様性が存在します。そのため、個別のケースにおいては、スキーマとコーピングスタイルの相互作用を詳しく評価する必要があります。

スキーマモードの定義と概念

スキーマモードは、スキーマ療法における重要な概念の一つです。スキーマモードとは、特定の状況や環境下で特定のスキーマ(無意識の信念や思考パターン)が活性化し、感情・行動のパターンを形成する状態を指します。

スキーマモードは、個人の感情や行動を支配する特定の心理的状態であり、特定のスキーマが活発になり、それに関連する感情や行動が優位になることを特徴とします。スキーマモードは、スキーマ療法において不健全なパターンや問題行動の原因となる要素として考えられています。

スキーマモードは、個人の異なる側面としてやパートナーシップの関係の中で現れることがあります。例えば、自己犠牲的モード、攻撃的モード、過剰な責任感モードなどがあります。それぞれのモードは、特定のスキーマに基づき、特定の感情や行動パターンを引き起こします。

スキーマモードの特徴は次の通りです。

  • 活性化と抑制
    • スキーマモードは、特定のトリガーや刺激によって活性化され、一定の期間続くことがあります。一方、他のモードや防衛メカニズムによって抑制されることもあります。
  • 特定の感情と行動
    • 各スキーマモードには、特定の感情や行動パターンが関連付けられています。例えば、自己犠牲的モードでは被害者意識や無力感があり、他人のニーズを優先する傾向が見られます。
  • 自己と他者への影響
    • スキーマモードは、個人の自己観や他者との関係に影響を与えます。例えば、攻撃的モードでは他人への攻撃的な行動や言動が見られることがあります。

スキーマモードの理解は、個人が問題行動や不健全なパターンに陥る理由を明らかにするために重要となります。

スキーマモードの活性化

スキーマモードの活性化に関して、次のような流れが考えられます。

流れ
スキーマの活性化

スキーマは、過去の経験や早期の生育環境から形成された無意識の信念や思考のパターンです。特定のトリガー(刺激)が現れることで、関連するスキーマが活性化されます。これにより、個人は過去の痛みや不適応なパターンを再現しやすくなります。

流れ
コーピングスタイルの反応

スキーマの活性化によって、非機能的なコーピングスタイルが反応します。コーピングスタイルは、個人がストレスや困難な状況に対処する方法やパターンです。例えば、過度の回避、攻撃的な反応、自己犠牲的な行動などがあります。これらの反応は、スキーマによって形成された早期の防御メカニズムの一部です。

流れ
スキーマモードの活性化

スキーマの活性化とコーピングスタイルの反応が相互作用することで、スキーマモードが活性化されます。スキーマモードは、特定の感情、思考、行動のパターンであり、個人の感情体験や行動に影響を与えます。スキーマモードは、過去の経験に基づいて形成された自己の特定の側面を表現し、一時的に他の健康なモードを抑制することがあります。

流れ
スキーマモードの影響

スキーマモードの活性化によって、個人はそのモードに関連する感情、思考、行動を経験します。これは、現実の知覚や自己の評価にも影響を与えることがあります。スキーマモードが活性化されると、過去の苦い経験や無意識の信念に固執し、より健康的な視点や行動が制限される可能性があります。

以上の流れによって、スキーマの活性化、非機能的なコーピングスタイルの反応、スキーマモードの活性化が相互に作用し、個人の感情体験や行動に影響を与えます。

スキーマモードのカテゴリー

スキーマモードは、個々の中核的感情欲求や関連するスキーマのパターンに基づいて形成されます。一般的には、次のような大きなカテゴリーに分類されます。

保護モード(Protective Modes)
保護モードは、自分自身を保護しようとする傾向を示すモードです。このモードには、自己犠牲的な行動や過度の配慮も該当します。例えば、被害者モード(Victimized Mode)や被害者加害者モード(Victimizer Mode)などがあります。
自己規制モード(Overcompensating/Overcontrol Modes)
自己規制モードは、過度に自己規制し、コントロールしようとする傾向を示すモードです。このモードには、完璧主義者モード(Perfectionist Mode)や厳格な規則者モード(Punitiveness Mode)などがあります。
無力モード(Surrender Modes)
無力モードは、無力感や無気力感を経験し、自己を放棄しようとする傾向を示すモードです。このモードには、放棄モード(Abandonment Mode)や麻痺モード(Emotional Deprivation Mode)などがあります。
刺激追求モード(Self-Stimulation/Self-Aggrandizement Modes)
刺激追求モードは、過剰な刺激を求め、自己を高めようとする傾向を示すモードです。このモードには、エンターテイナーモード(Entertainer Mode)やエキサイトメントシーカーモード(Excitement-Seeking Mode)などがあります。
連続性モード(Connectedness Modes)
連続性モードは、他者とのつながりや関係性を求める傾向を示すモードです。このモードには、関係依存モード(Dependence Mode)や過剰な共感モード(Mistrust/Abuse Mode)などがあります。

これらは一般的なカテゴリーであり、実際のスキーマモードは個人によって異なります。人々は複数のモードを組み合わせて持つことがあり、異なる状況や経験に応じて変化します。

スキーマモードの細分化

スキーマモードは、さらに細分化されることがあります。次に、各カテゴリーがより具体的なモードに分類される例を示します。

  • 保護モード(Protective Modes):
    • 被害者モード(Victimized Mode)
    • 被害者加害者モード(Victimizer Mode)
    • 弱者モード(Subjugated Mode)
    • 追従者モード(Compliant Surrenderer Mode)
    • 隠蔽者モード(Detached Protector Mode)
  • 自己規制モード(Overcompensating/Overcontrol Modes):
    • 完璧主義者モード(Perfectionist Mode)
    • 厳格な規則者モード(Punitiveness Mode)
    • 無感情モード(Emotionally Cut Off Mode)
    • 統制欲モード(Self-Aggrandizer Mode)
    • 堅苦しいモード(Rigid Mode)
  • 無力モード(Surrender Modes):
    • 放棄モード(Abandonment Mode)
    • 麻痺モード(Emotional Deprivation Mode)
    • 無力感モード(Helplessness Mode)
    • 認知的閉塞モード(Defectiveness/Shame Mode)
    • 無気力モード(Depressed Mode)
  • 刺激追求モード(Self-Stimulation/Self-Aggrandizement Modes):
    • エンターテイナーモード(Entertainer Mode)
    • エキサイトメントシーカーモード(Excitement-Seeking Mode)
    • 自己中心的なモード(Grandiosity Mode)
    • 自己鼓舞モード(Self-Stimulator Mode)
    • 冒険者モード(Adventurer Mode)
  • 連続性モード(Connectedness Modes):
    • 関係依存モード(Dependence Mode)
    • 過剰な共感モード(Mistrust/Abuse Mode)
    • 規範への順応モード(Approval-Seeking/Recognition-Seeking Mode)
    • 他者の依存モード(Subjugation to Others Mode)
    • 反抗モード(Counterdependence Mode)

これらのモードは一般的な例であり、実際の人々の経験には個別のバリエーションや組み合わせが存在しています。

保護モードの具体的なモードとその特徴

被害者モード
  • 自分は常に被害者であると感じる。
  • 他人に依存し、自己効力感が低い。
  • 自己否定的な信念や感情を持ち、他人からの承認を求める。
  • 無力で無価値な存在としての自己イメージを持つ。
被害者加害者モード
  • 自分を被害者として扱い、他人に対して攻撃的な態度をとる。
  • 自己中心的で他人を支配しようとする傾向がある。
  • 自分の感情や欲求を他人に押し付けることが多い。
  • 自分を守るために他人を攻撃する。
弱者モード
  • 自分は弱く無力であり、他人に従う必要があると感じる。
  • 自己主張が弱く、自己価値感が低い。
  • 自分の欲求や意見を抑え、他人のニーズを優先する。
  • 自分の意見や感情を表現することを恐れる。
追従者モード
  • 他人に合わせることを重視し、自己を犠牲にする。
  • 自己主張が弱く、他人の意見や要求に従う傾向がある。
  • 自己否定的な信念や感情を抱きながらも、他人からの承認を求める。
  • 自己価値感が低く、他人の評価に過度に依存する。
隠蔽者モード
  • 自分の感情やニーズを抑制し、他人に対して冷たい態度をとる。
  • 自己保護のために感情的な距離を保ち、関わりを避ける。
  • 自己中心的な行動をとり、他人との絆を制限する。
  • 自己防衛や孤立を優先する。

これらのモードは、幼少期の経験や中核的感情欲求の満たされ方に関連して形成されます。

自己規制モードの具体的なモードとその特徴

完璧主義者モード
  • 非常に高い基準や要求を自分に課す。
  • 自己評価が完璧さに依存し、失敗や欠点を受け入れることが難しい。
  • 自己肯定感は極めて厳しい基準によって規定される。
  • 常に努力し続けるが、達成感や満足感を得にくい。
厳格な規則者モード
  • 自分と他人に対して厳しい規則や基準を課す。
  • 自分や他人の行動やパフォーマンスに対して厳しく評価し、罰を与える傾向がある。
  • 自己否定的な信念や感情を持ち、罪悪感や不安を抱えやすい。
  • 自己規制が強く、楽しむことや自由な表現を制限する。
無感情モード
  • 自分の感情を抑え、感情的なつながりや表現を避ける。
  • 感情的な深さや豊かさを制限し、冷静で理性的な振る舞いを重視する。
  • 自分の感情を受け入れることに苦労し、他人の感情にも適切に共感することが難しい。
  • 自己を保護するために感情的な関わりを避ける。
統制欲モード
  • 自分を優れた存在と見なし、他人よりも上位であると考える。
  • 自己中心的な傾向があり、他人を支配しようとする。
  • 自分を強調し、称賛や賞賛を求める。
  • 自己肯定感は他人からの評価や成功に依存する。
堅苦しいモード
  • 強いルールや構造を求め、柔軟性や適応性に欠ける。
  • 自分自身や他人に対して厳しい規律を守ることを重視する。
  • 綿密な計画や予測可能性を好み、変化や不確実性に対して不安を感じる。
  • 緊張やストレスが増えると、コントロールの欲求が強まる。

これらの自己規制モードは、早期の経験や環境によって形成されます。幼少期に十分なサポートや安定性を経験せず、感情的な安全や自己表現の自由が制限された場合、これらのモードが発達する可能性が高くなります。これらのモードは、感情や欲求の自然な流れを抑制し、自己保護のために過剰なコントロールや厳しさをもたらす傾向があります。

スキーマ療法では、これらのモードを認識し、その特徴や影響を理解することが重要です。クライエントは、自己規制モードが活性化した際にどのような思考や行動が起こるかを認識し、そのパターンを打破するための戦略を開発することに焦点を当てます。スキーマモードを適切に管理することで、より健康的な感情の経験や自己の発展が促進されることが期待されます。

無力モードの具体的な特徴

放棄モード
  • 自己が無価値であり、他者に見捨てられると信じる傾向がある。
  • 過去の放棄や拒絶の経験から、孤独や不安を感じる。
  • 他人への依存や承認を求める傾向があり、自己価値感は外部からの評価に依存する。
麻痺モード
  • 感情的なつながりや豊かな感情の経験が欠如していると感じる。
  • 感情の抑制や鈍化を経験し、自己や他人との深い感情的なつながりを避ける。
  • 自己表現や情緒の自由が制限され、内なる空虚感や不満足感を抱える。
無力感モード
  • 自己に対して無力であると感じる傾向がある。
  • 問題解決や自己の能力に対する希望や自信が低く、困難に対処する能力を制限される。
  • 他人に依存し、自己の力を過小評価する傾向がある。
認知的閉塞モード
  • 自己に欠陥や不完全さがあると感じる。
  • 自己否定的な信念や恥ずかしい感情に囚われ、劣等感や罪悪感を抱える。
  • 自己の価値を低く見積もり、他人と比較して自己を貶める傾向がある。
無気力モード
  • 意欲やエネルギーが低下し、活動的でない状態になる。
  • 自己への関心や関心を失い、生活の喜びや興味を失う。
  • 無力感や絶望感を抱え、自殺的な思考や行動を示すことがある。

これらの無力モードは、幼少期の経験や関係パターンに基づいて形成されます。適切なサポートや自己肯定感の欠如、トラウマ的な出来事などが、これらのモードの発達を促します。

刺激追求モードの具体的な特徴

エンターテイナーモード
  • 周囲の人々を楽しませることに焦点を当てる傾向がある。
  • 魅力的で社交的な一面を持ち、他人からの注目や称賛を求める。
  • 自己の不安や内なる空虚感を隠すために、外向的なパフォーマンスやユーモアを活用する。
エキサイトメントシーカーモード
  • 刺激を求める傾向があり、ハイリスクな活動や冒険を追求する。
  • モノトニーさや退屈さを避け、スリルや刺激を求めるために挑戦的な行動をとる。
  • 刺激的な経験や新奇な状況を通じて、自己の存在感や自己肯定感を高めようとする。
自己中心的なモード
  • 自己を特別で優れた存在だと信じる傾向がある。
  • 自己中心的な思考や行動、自己の重要性を強調する。
  • 批判や批判的な評価を受け付けず、他人に対して優越感を示す。
自己鼓舞モード
  • 自己を活性化させるために外部の刺激や活動に頼る傾向がある。
  • 飽きっぽく、刺激のない状況やルーチンに不安や不満を感じる。
  • 焦燥感や不安を和らげるために、自己刺激行動や娯楽活動に頼る。
冒険者モード
  • 新しい経験や挑戦を求める傾向がある。
  • 好奇心が旺盛で、変化や成長を追求する。
  • 安定性や予測可能性を犠牲にしてでも、自己成長や自己発見を追求する。

これらの刺激追求モードは、個人の欲求や自己肯定感の補完、あるいは内なる空虚感や不安を和らげるために形成されます。

連続性モードの具体的な特徴

関係依存モード
  • 他者に依存し、自己の価値や安全を他人に委ねる傾向がある。
  • 孤独や切り離された感覚を避け、他人との親密な関係を求める。
  • 自己のニーズを優先することが難しく、他人のニーズや要求に対して優位に立つことを避ける。
過剰な共感モード
  • 他人への不信感や虐待の経験に基づく傾向がある。
  • 他人を疑い、攻撃的な態度や防御的な姿勢をとる。
  • 過剰な警戒心や不信感があり、他人との関係を傷つける可能性がある。
規範への順応モード
  • 他人の承認や認知を求める傾向がある。
  • 自己の価値や存在意義を他人の評価に依存し、自己肯定感を得ようとする。
  • 自己の真のニーズや欲求を抑制し、他人の期待に合わせようとする。
他者の依存モード
  • 他人の意見や要求を優先し、自己を犠牲にする傾向がある。
  • 自己表現や自己主張が制限され、他人の支配や権力を受け入れる。
  • 他人に依存することで安全や愛情を得ようとする。
反抗モード
  • 他人との関係を避ける傾向がある。
  • 独立性や自立性を重視し、他人への依存を拒否する。
  • 過度な独立や孤立を経験し、信頼や親密さを避ける傾向がある。

これらの連続性モードは、関係やつながりに対する個人の信念や経験に基づいて形成されます。適切なバランスや健全な関係の構築が求められます。

モードワーク

モードワークとは、スキーマ療法において、特定の状況や関係性における個人の感情、思考、行動のパターンを理解するために、各モードを活性化させる作業を指します。

スキーマ療法では、過去の養育体験に基づく中核的スキーマが、現在の関係性に影響を与え、健康的な行動を阻害する可能性があるとされています。モードワークは、これらの中核的スキーマをアクティベートさせ、それに関連する感情、思考、行動を明らかにすることで、個人の問題の本質を理解し、治療を促進することを目的としています。

モードとは、特定の状況や関係性下で現れる、感情や思考、行動のパターンのことを指します。例えば、「内なる子供モード」は、養育者に対する不適切な扱いによって形成された感情や行動のパターンであり、「完璧主義者モード」は、自分に対して極度の厳しさや完璧主義的な思考や行動を示すパターンのことを指します。

治療者は、クライエントとのセッションにおいて、クライエントの様々なモードを特定し、そのモードがアクティベートされた際にどのような感情、思考、行動が現れるのかを共同で観察します。そして、クライエントが健康的な対処法を見出せるよう、適切なアドバイスやホームワークを提供します。モードワークは、クライエントに自己理解を促し、より健康的な思考や行動を促進することが期待されます。

スキーマ・コーピングスタイル・スキーマモードのまとめ

早期不適応的スキーマは、幼少期に形成されることが多いとされていますが、一般的には人間の発達過程全体でスキーマは形成されていきます。幼少期は特に重要な時期であり、早期の環境や関係性がスキーマの形成に大きな影響を与えると考えられています。中核的感情欲求が満たされず、早期の経験がトラウマや負の感情を引き起こす場合、早期不適応的スキーマが形成されやすくなります。

早期不適応的スキーマは、個人の持つ特定のテンプレートやパターンであり、その経験に基づいて形成されます。一般的に、幼少期の経験がより強くスキーマの形成に影響を与える傾向がありますが、人間の発達は継続的なプロセスであり、スキーマは生涯にわたって形成・変容していく可能性があります。

コーピングスタイルやスキーマモードは、個人がスキーマに対処するために発達させる心理的な反応やパターンです。これらの対処方法は、早期不適応的スキーマによって引き起こされる心理的なストレスや困難に対処するために形成されます。

コーピングスタイルやスキーマモードは、スキーマに対する反応やパターンとして機能します。一部のコーピングスタイルやスキーマモードは、早期不適応的スキーマを打ち消すような対応をすることがあります。例えば、一部の人は「過剰な共感モード」を持っており、自己を犠牲にして他人のニーズを満たすことで自己肯定感を得ようとする場合があります。

また、コーピングスタイルやスキーマモードは個人によって異なりますし、その強さや頻度も異なることがあります。一部の人は特定のコーピングスタイルやスキーマモードがより顕著に現れ、他の人はそれほど顕著ではない場合もあります。

「スキーマ活性化に関しては」、具体的な刺激やトリガーが存在する場合にスキーマが活性化されます。これは個人の経験や環境によって異なります。例えば、過去のトラウマや負の経験に関連する刺激や状況が現れることで、それに関連するスキーマが活性化され、関連する感情や思考が浮かび上がってくることがあります。

スキーマの活性化は、個人の認知や感情に影響を与えます。活性化されたスキーマに基づいて、認知的な歪みやネガティブな思考パターンが現れることがあります。また、それに伴って対応するスキーマモードも活性化されることがあります。

スキーマ療法では、スキーマの活性化や関連するスキーマモードの認識が重要です。治療者はクライエントと共に、スキーマの活性化に関連するトリガーやパターンを識別し、それに対処するための戦略を開発します。具体的な手法や技法には、スキーマの対話的探求、認知再構築、イメージリプロセッシング、エモーショナルリフォーカシングなどがあります。

スキーマ療法は個人の内面のプロセスを理解し、早期不適応的スキーマやそれに関連する認知・感情・行動のパターンを変容させることを目指します。これにより、より健康的な思考や行動を促進し、クライエントがより充実した人生を送ることができるよう支援します。

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「スキーマ・セラピー – 自己欺瞞からの解放」 (Jeffrey E. Young 著、藤田和弘・小田島俊子 訳、金剛出版、2009年)

「スキーマ療法マニュアル – 自己欺瞞スキーマの心理教育と認知行動療法」 (Arnoud Arntz, Gitta Jacob 著、小田島俊子・松本祥子 訳、金剛出版、2017年)

「スキーマセラピー事典」 (Martin Bohus, Christian Schmahl, Vedat Sar 著、須田泰成・柴田春江・太田晶子 訳、金剛出版、2019年)

「スキーマ療法の実際」 (Arnoud Arntz 著、中山正美 訳、金剛出版、2011年)

「スキーマ療法による複雑性PTSD治療の手引き」 (Marylene Cloitre, Lisa R. Cohen, Karestan C. Koenen 著、岩田朋子・内田美穂 訳、金剛出版、2021年)

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