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スキーマ療法の知識、概念、起源、定義など視点を変えて再度学習

目次

18の早期不適応的スキーマ

Jeffrey E. Young博士によって提唱された18の早期不適応的スキーマを列挙します。

1⃣切り離しスキーマ/(断絶と拒絶)
放棄と不安スキーマ(Abandonment/Instability)(見捨てられ・不安定)
不信スキーマ(Mistrust/Abuse)(不信・虐待)
社会的孤立スキーマ(Social Isolation/Alienation)(社会的孤立・疎外)
責任逃れスキーマ(Emotional Deprivation)(情緒剥奪)
価値なしスキーマ(Defectiveness/Shame)(欠陥・恥)
2⃣自己否定スキーマ/自律性と行動の損傷
依存スキーマ(Dependence/Incompetence)(依存・無能)
失敗スキーマ(Failure)(失敗)
巻き込まれ/未発達スキーマ(Enmeshment/Undeveloped Self Schema)
決定的な対人関係の問題スキーマ(Unrelenting Standards/Hypercriticalness)
3⃣他者への依存スキーマ/(他者への追従)
服従スキーマ(Subjugation Schema)
自己犠牲スキーマ(Self-Sacrifice)(自己犠牲)
評価と承認の希求のスキーマ(Evaluation – approval Seeking)
4⃣過剰な警戒スキーマ/過剰警戒と抑制
感情の抑制スキーマ(Emotional Inhibition)(感情抑制)
不完全さと不備スキーマ(Negativity/Pessimism)(否定・悲観)
過度な責任感スキーマ(Punitiveness)(厳密な基準・過度の批判)
罰スキーマ(Punishment Schema)
5⃣制限的な自己スキーマ/制約の欠如
権利要求・尊大スキーマ(Entitlement/Grandiosity)(過剰な責任感)
自制と自立の欠如スキーマ(Insufficient Self-Control/Self-Discipline Schema)

1領域:切り離しスキーマ/(断絶と拒絶);「養育者または親密な他者との安全なアタッチメント(安全で安定した滋養的かつ受容的な関係)」が満たされないことによって損傷を受けるスキーマ領域

1⃣ 放棄と不安(見捨てられ・不安定)スキーマ

放棄と不安スキーマは、早期に主要な両親や養育者から見捨てられ感を経験したことによって形成されるスキーマです。このスキーマを持つ人は、自分自身がすぐに捨てられると感じ、寂しさや不安を感じる傾向があります。他人との関りは非常に不安定であり、たとえ今自分と関わっている人であっても、その人は今にでも自分を見捨てて立ち去ってしまうだろうと感じています。

このスキーマを持つ人は、他人との関係に不安を感じ、常に誰かに依存しているように感じるか、あるいは対人関係を回避することがあります。また、このスキーマを持つ人は、不安定な対人関係を持つ傾向があり、他人と深くつながることを望みながら、自分を守るために人から距離を置くことがあります。

放棄と不安スキーマを持つ人は、何か新しいことを始める前に、すでに失敗すると思い込んでしまうことがあります。また、このスキーマを持つ人は、自分自身を常に非難し、自分が被害者であると感じることがあります。このスキーマを持つ人が自分の感情をコントロールできなくなると、過剰な依存や自傷行為をすることがあります。

2⃣ 不信(不信・虐待)スキーマ

不信スキーマは、早期に信頼できる養育者から裏切られたり、信じた人物から嘘をつかれたりした経験から形成されるスキーマです。このスキーマを持つ人は、他人を信じることに対して不安を感じ、他人に対して不信感や疑心暗鬼に陥りやすくなります。

不信スキーマを持つ人は、周囲の人々の言葉や行動を常に疑い、自分自身が守られることを信じられなくなることがあります。また、このスキーマを持つ人は、自分が常に損をする側にいると感じることがあり、自分自身を守るために他人から距離を置くことがあります。

不信スキーマを持つ人は、他人からの承認や愛情を求めながら、信じることができないために、対人関係に不安定さを抱えやすくなります。また、このスキーマを持つ人は、信じることができないために、相手に対して攻撃的な行動をとることがあります。また、他人はすべて自分につけ込み、自分をいじめ、食い物にするような「虐待者」であり、まったくもって信用することができないと感じています。

不信スキーマを持つ人が自分自身の感情を抑制できなくなると、パニック症状やうつ病の症状が現れることがあります。治療の目的は、自己探求や自己成長を通じて、このスキーマに基づく誤った信念を変え、より健康的で満足のいく対人関係を築くことです。

3⃣ 社会的孤立(孤立)スキーマ

社会的孤立スキーマは、人々との関係が希薄であるために、常に孤立していると感じるスキーマです。このスキーマを持つ人は、周囲の人々との交流が少なく、孤独を感じやすく、社会的な関係を構築することが困難であることがあります。例えば、自分は人と違っており、どのようなコミュニティにも所属することができない孤立した存在であると感じています。

このスキーマを持つ人は、周囲の人々から支持や理解を受けることができないため、自分自身を孤立した存在と感じることがあります。また、このスキーマを持つ人は、周囲の人々との交流が少ないため、自己表現能力が低下することがあり、自分自身をうまく表現することができなくなることがあります。

社会的孤立スキーマを持つ人は、社交的な場に参加することを避け、社会的な集団に参加することを避ける傾向があります。このため、自己肯定感が低下し、自己価値感が低下し、社会的に孤立しやすくなります。

治療の目的は、このスキーマに基づく誤った信念を変え、健康的な対人関係を築くことです。治療者は、クライエントが社会的な集団に参加するように支援し、自己表現能力を向上させるためのテクニックを提供します。また、治療者は、クライエントが社会的な集団で自信を持って行動することを助けることで、自己肯定感を向上させることができます。

4⃣ 責任逃れスキーマ

責任逃れスキーマは、個人が自分の行動や生活に対して責任を持つことを避け、責任を転嫁する傾向があることを示すスキーマです。このスキーマを持つ人は、自分の過ちや失敗についての責任を自分自身で取らず、他人や状況のせいにすることがあります。

このスキーマを持つ人は、自分の責任を回避するために様々な方法を用いります。例えば、自分が抱える問題に対して他人に依存し、解決策を他人に求めることがあります。また、自分が責任を取らなくてもよい状況を作り出すことで、自分自身の責任を軽減しようとすることがあります。

責任逃れスキーマを持つ人は、自分自身を守るために、自分が何らかの失敗や負の結果を引き起こした場合に備えて、予め言い訳や説明を考えておくことがあります。そのため、自分自身が問題を引き起こした場合でも、他人に責任を転嫁することができます。

このような責任逃れスキーマを持つ人は、自己効力感や自己価値感が低下し、自己評価が負の方向に向かうことがあります。また、責任を回避することで、成長や発展の機会を逃すこともあります。

5⃣ 価値なし(欠陥・恥)スキーマ

価値なしスキーマは、自分自身には価値がなく、愛されるに値しないという考え方を持つスキーマです。このスキーマを持つ人は、自分自身を否定し、低い自己評価を持つ傾向があります。

価値なしスキーマを持つ人は、自分自身に対して厳しい基準を設け、完璧でなければならないと感じています。また、自分が他人と比較して劣っているとも感じています。このような考え方があるため、自分自身を否定することが多く、自分を許すことができません。

このスキーマを持つ人は、自分自身を受け入れることができないため、常に自分に対して批判的であり、罰することがあります。また、他人からの批判や拒絶を恐れる傾向があり、自分自身を守るために表現することを避けたりすることがあります。

治療の目的は、このスキーマに基づく誤った信念を変え、自分自身受け入れることを促すことです。治療者は、クライエントに自分を肯定する方法を教え、受け入れることができるように支援します。また、治療者は、クライエントが肯定的に考えることを助けるための課題を提供し、自分自身を評価する方法を改善することをします。さらに、治療者は、クライエントが守るために使用している防衛機制を理解し、自分表現する方法を改善できるようにします。

2領域:自己否定スキーマ/自律性と行動の損傷;「自立性、有能性、自己同一性の感覚」が満たされないことによって損傷を受けるスキーマ領域

6⃣ 依存(依存・無能)スキーマ

依存スキーマは、他人に依存し、自分自身の力で問題を解決することができないと感じる傾向がある人に見られる、一般的な認知スキーマのパターンです。例えば、日常生活をおくるにあたって自分は無能であり、他者からの助けがなくてはまともに生きていけないと感じています。

依存スキーマを持つ人は、孤独や不安などの感情に直面すると、すぐに他人に頼ろうとする傾向があります。また、自分の意見や欲求を表明することに躊躇することがあり、他人の意見やニーズに合わせて自分を犠牲にすることもあります。

このスキーマは、幼少期に保護者から十分な愛情や支援を受けられなかったり、保護者に依存しすぎたりすることで形成されることがあります。依存スキーマを持つ人は、過去の経験に基づいて、自分自身が問題を解決することができないという信念を持ち、自分が無力であると見なしています。

依存スキーマを扱うためのスキーマ療法のアプローチには、自己主張や自己決定能力を高めるためのトレーニング、自分自身を肯定するための認知行動的なアプローチ、過去のトラウマ的な体験に対処するためのEMDRなどがあります。また、自己助力グループに参加することも有益である場合があります。

7⃣ 失敗スキーマ

失敗スキーマは、自分自身に対して持っている過度に厳しい期待や、自己評価が低いために、成功につながる結果を得られなかったと感じる傾向があります。例えば、「自分のしてきたことは失敗ばかりだ」「何をやっても失敗するだろう」と感じ、自分を「失敗者」だと思っています。

失敗スキーマを持っている人は、自分が失敗することを恐れて、挑戦やリスクを回避したり、完璧主義に走ったり、自分自身を過度に責めたりする傾向があります。また、失敗を経験すると、その結果に対して過度に反応したり、失敗をすぐに忘れることができず、長期間にわたって自己評価が低下したり、自己効力感を失ったりすることがあります。

このスキーマの背景には、過去に失敗や否定的な経験をしたことに対するトラウマがある場合があります。また、過度に成功への期待が高く、それに対する恐れがある場合もあります。

失敗スキーマを持つ人が、これを克服するためには、成功と失敗は人生において自然なものであることを理解し、失敗をチャンスとして捉えることが重要です。また、過去の失敗を繰り返さないためには、新しい手法やアプローチを学び、失敗を学びの機会として捉えることが必要です。心理療法では、認知再構成や行動実験などの技法が使用されることがあります。

8⃣ 巻き込まれ/未発達スキーマ

巻き込まれ/未発達のスキーマは、個人の自己と他者との境界が不明瞭で、自己の発達が十分に行われていない状態を指します。このスキーマを持つ人は、他者との関係に過度に依存し、自己の独立性や自己のニーズの把握に課題を抱える傾向があります。
例えば、自分が他者(多くは親)に感情的に巻き込まれており、あたかも他者と一体化しているように感じられています。「自分がない」と感じ、自らのアイデンティティを感じることができません。

次に、巻き込まれ/未発達のスキーマを持つ人の特徴をいくつか挙げます。

  • 境界の不明瞭さ
    自己と他者との境界が曖昧で、個人のニーズや感情が他者のものと混同されることがあります。自己の意見や欲求を明確に表現することが難しく、他者の期待や要求に過剰に応える傾向があります。
  • 過度な他者への依存
    自己の価値や安全を他者に依存して見つけようとします。他者の承認や愛情を求め、自己を犠牲にしてまで他者のニーズを満たそうとする傾向があります。
  • 自己の発達の欠如
    個人の自己の発達が十分に行われていないため、自己のアイデンティティや個別性が不明瞭です。自己のニーズや目標を明確に把握することが難しく、他者のニーズに優先してしまうことがあります。
  • 自己の感情の抑制
    自己の感情を抑制し、他者への合わせることが多いです。自己の感情や欲求を表現することが難しく、自己の内面世界を他者に見せることを避ける傾向があります。
  • 自己の犠牲と自己否定
    自己のニーズや欲求を抑えてまで他者を満たそうとし、自己を犠牲にすることがあります。自己否定的な感情や罪悪感を抱くことがあり、自己の存在価値を他者の承認に依存する傾向があります。
9⃣ 決定的な対人関係の問題スキーマ

決定的な対人関係の問題スキーマは、自分が他の人より劣っている、嫌われている、価値がない、あるいは恥ずかしいと感じるという信念や感情のパターンです。このスキーマは、幼少期に拒絶や否定、屈辱的な体験を経験した人によく見られます。このスキーマを持つ人は、常に自分が他人にとって不十分であるという感覚を抱き、他人に否定されることや拒絶されることを恐れます。

このスキーマを持つ人は、自己評価が低く、自分が価値があるとは思えず、恥ずかしいと感じることがよくあります。他の人が自分を嫌っていると信じたり、批判したりすることを常に心配しています。このような考え方によって新しい人間関係を築くことが難しくなり、自分に対する否定的な信念を強化する傾向があります。

治療においては、このスキーマを扱うために、慣れ親しんだ環境から抜け出し、新しい人間関係を築くことを推奨することがあります。また、自己肯定感を高めることや、自己受容を促進することで、このスキーマに対する対処法を学ぶことができます。このようなアプローチによって、スキーマの影響を軽減し、より健康的な対人関係を築くことができるようになります。

3領域:他者への依存スキーマ/(他者への追従);「正当な欲求と感情を表現する自由」が満たされないことによって損傷を受けるスキーマ領域

 服従スキーマ

服従スキーマは、相手から嫌われたくない、見捨てられたくない、攻撃されたくないなどの思いから、自己の意見や感情を抑え、他人のニーズや要求に過度に従う傾向を示すスキーマです。自己評価が低く、他人の承認や評価に依存し、自己のニーズや欲求を犠牲にすることがあります。
自己の意見や欲求を抑えて他人のニーズや要求に従う傾向を示すスキーマであり、このスキーマを持つ人は、他人の承認や評価を重視し、自己評価が低くなりがちです。
自己主張が苦手で、他人の意見や要求を優先してしまうことがあります。また、他者に見捨てられたり報復されたりしないためには、自分の欲求や感情を犠牲にして他者に服従するしかないと感じています。

  • 自己評価の低さ
    自己の価値や能力を過小評価し、他人の意見や評価に過度に依存します。
  • 自己犠牲
    自己のニーズや欲求を犠牲にし、他人の要求やニーズを優先します。自己の利益や幸福よりも他人の幸福を重視する傾向があります。
  • 批判や拒絶の恐れ
    自己の意見や感情を表明することに抵抗を感じ、他人からの批判や拒絶を恐れます。そのため、自己表現や自己主張が制限されることがあります。
  • 強制的なコントロール
    自己を律するために厳しい規則や規律を設けることがあります。自己をコントロールするための厳しい基準や規則に従い、他人の要求に応えようとします。
  • 対人関係の偏り
    他人との関係において、服従や従順さが主体となります。パートナーや友人との関係でも、自己の欲求や意見を抑えてしまうことがあります。

服従スキーマを持つ人は、他人の評価や承認に依存することで自己価値を確保しようとしますが、その結果、自己表現や自己実現の機会を制限してしまう可能性があります。スキーマ療法では、このスキーマを理解し、自己主張や自己価値感を強化するための取り組みを行います。

 自己犠牲スキーマ

自己犠牲スキーマとは、相手の喜びを求め、自分自身のニーズや希望を犠牲にして、他人のために尽くすことを強制的に求められた経験から形成された、早期不適応的スキーマの一つです。このスキーマを持つ人は、他人の要求や期待を満たすことを優先し、自分自身のニーズや希望を無視する傾向があります。また、自分より他者を優先し、他者の欲求や感情を自分自身が満たしたり癒したりすることに過度にとらわれています。

自己犠牲スキーマを持つ人は、自分自身に対する配慮や関心が不足しているため、自分のニーズや感情を認識することが難しくなります。また、他人からの承認を得るために尽力するなど、他人の評価に過剰に依存する傾向があるとされています。

このスキーマを持つ人は、自分自身を犠牲にして他人を助けることで、自分が重要な存在であると証明しようとすることがあります。しかし、その結果として、自分のニーズが無視され、疲れやストレスに苦しむことがあります。また、自分のニーズを無視することが長期的には心身の健康に悪影響を与える可能性があります。

 評価と承認の欲求スキーマ

他者からの評価や承認されることに過度にとらわれており、他者の評価を得るための自らの行動を選びます。スキーマの背景には、他人の評価がすべてであり、他人に認められなければならなず、自分の評価は他人からの評価次第といった思いがあり、何とかして褒められたいというとらわれがあります。
常に他人の評価を気にし、他人からの評価や褒められるために自らの行動を選びます。自分の好みや意思に基づいて発言し行動することは考えていません。つねに他人に認められるか、他人に褒められるかという基準で自らの言動を選択します。評価され、褒められれば、「自分に価値がある」と思えてうれしくなるし、逆に思うように評価されないと、「自分に価値がない」と思ってひどく落ち込みます。

  • 「他人に認められなければならない」「他人に評価されたい」「他人に褒められたい」が基本にあるため、もっぱら自分の印象を相手に印象付けるために振る舞います。


4領域:過剰な警戒スキーマ/過剰警戒と抑制;「自発性と遊びの感覚」が満たされないことによって損傷を受けるスキーマ領域

⒔ 感情の抑制スキーマ

感情の抑制スキーマとは、自分自身の感情を抑圧することによって、自分や他人との間の深いつながりや満足を妨げる傾向を示す思考・行動のパターンを指します。このスキーマを持つ人は、自分の感情を表現することを恐れたり、自分の感情に耐えることができなかったりします。そのため、感情を抑えることで、自分を守ろうとする傾向があります。

感情の抑制スキーマを持つ人は、自分自身の感情に対して否定的な考え方を持っていることがあります。自分に対して「感情を表現することは弱さだ」と思ったり、自分の感情を否定することで、他人から受ける承認や愛情を得ようとします。また、このスキーマを持つ人は、他人が自分の感情を受け入れてくれないことを恐れる傾向があります。そのため、自分の感情を抑えることで、他人との関係を損なわないようにしようとします。

このスキーマを持つ人は、感情を抑制することによって、ストレスや不安、うつ病などの心理的な問題を引き起こすことがあります。また、感情を抑制することが長期的に続く場合、身体的な疾患にもつながることがあります。

感情の抑制スキーマを克服するためには、まずは自分自身の感情を受け入れ、表現することが重要です。感情を表現することができるようになることで、自分自身や他人との間の深いつながりを築くことができます。
感情の抑制スキーマを克服するためには、感情を表現することに対してポジティブな考え方を持つことが大切です。

 不完全さと不備(否定/悲観)スキーマ

不完全さと不備スキーマとは、自分自身が何らかの欠陥を抱えていると感じ、自分が他の人よりも劣っていると考える傾向があるという認知的パターンを指します。これらのスキーマは、自己評価が低く、自信がなく、自分を大きく過小評価することがあります。また、自分の能力や価値が劣っていると信じているため、完璧主義的になることがあります。

このスキーマの原因には、過去に失敗や失望を経験し、それによって自己評価が低下したことが挙げられます。また、周囲から厳しく批判されたり、過度に要求された経験がある場合にもこのスキーマが形成される可能性があります。

このスキーマに陥っている人は、自分の不備を隠すために努力したり、自分を常に改善することに熱心になる傾向があります。しかし、常に自分に対して厳しく、失敗を受け入れられず、自分に対して不公平な批判や評価を与えることがあります。また、周囲の人々が期待することを達成できないと、自分自身を非難することがあります。

 過度な責任感(厳密な基準/過度の批判)スキーマ

過度な責任感スキーマは、自己が過剰な責任感を抱き、自分自身や他人、状況に対して責任を持ちすぎる傾向があるとされるスキーマです。過度な責任感を持つ人は、常に自分自身に対して非常に高い基準を設け、その基準に達しないと自己評価を低下させます。

このスキーマは、過去に何らかの理由で責任を負わされた経験がある場合や、親や家族の期待に応えるために常に責任を負わされた経験がある場合に形成されると考えられています。また、他人の期待に応えることで愛情や承認を得ることができたという経験がある場合にも、過度な責任感が形成される可能性があります。

このスキーマを持つ人は、自分自身や他人、状況に対して責任を持ち過ぎるため、常に緊張感やストレスを感じています。また、過度な責任感を持つ人は、他人にも同様の責任感を求めがちで、周囲の人々を煩わせることがあります。さらに、自分自身のニーズや欲求を犠牲にしてでも、他人や仕事に対して責任を果たそうとするため、自己犠牲スキーマとも関連があります。

過度な責任感スキーマを克服するためには、自分自身に対して適切な基準を設定し、自分が責任を持つべきこととそうでないことを見極めることが重要です。また、他人に対して責任を求めることに対しても、適切な距離感を持つことが必要です。認知行動療法では、過度な責任感に関する自己評価や信念に対して、検証や再評価を行い、より健康的な思考や行動を促すことが効果的とされています。

⒗ 罰スキーマ

人は失敗したら厳しく罰せられるべきだと信念を抱いています。そのため、自分や他人の過失を簡単に許すことができません。

  1. 自己非難と自己嫌悪
    罰スキーマを持つ人は、自分を罰し、自己嫌悪的な感情を持ちやすい傾向があります。過去の過ちや失敗を自己非難することが一般的です。
  2. 他者からの拒絶への過度な敏感さ
    罰スキーマを持つ人は、他人からの批判や拒絶に非常に敏感で、これを過剰に意識することがあり、他人の意見や評価が、自己評価に大きな影響を与えます。
  3. 自己制約と自己犠牲
    罰スキーマを持つ人は、他人に合わせて自己を犠牲にし、自己制約を強制することがよくあります。自分を罰し、他人に合わせようとする傾向が強いため、自己肯定感や幸福感が制約されることがあります。
  4. 他者への避難
    他人に向けられる場合は、相手を責め、叱責し、懲罰を与えようとします。「人は罰せられるべきだ」「うまくいかなければ罰を与えられるべきだ」と信じています。

5領域:制限的な自己スキーマ/制約の欠如;「現実的な制約と自己制御」が満されないことによって損傷をうける領域

 権利要求・尊大スキーマ

権利要求・尊大スキーマとは、自分が過度に責任を負わなければならないと感じ、それがストレスや苦痛を引き起こす信念や傾向のことを指します。このスキーマを持つ人は、自分自身や他の人に対して高い要求水準を持っており、完璧主義的であることが多いです。また、失敗や失望を恐れ、周りからの評価や批判に過敏に反応する傾向があります。

権利要求・尊大スキーマを持つ人は、自分自身に対して厳しく、自分の期待に応えることができない場合には自己評価を低下させます。また、他人に対しても高い期待を持ち、失望したり、怒りや不満を持ったりすることが多くなります。このような傾向は、職場や家庭などの人間関係において問題を引き起こすケースもあります。

権利要求・尊大スキーマは、幼少期に親や保護者から高い期待を持たれたり、完璧主義的な価値観が強く押し付けられたりしたことが原因とされています。また、過去に失敗や責任を感じる出来事があった場合にも、このスキーマが形成される可能性があります。

過剰な責任感スキーマを解消するためには、自分自身や他人に対する期待を現実的なものに調整することが大切です。また、自分が責任を負わなければならないことと、責任を負わなくてもよいことを区別することが必要です。認知行動療法などの心理療法は、このスキーマを改善するために有効な手段とされています。

 自制と自立の欠如スキーマ

自制と自立の欠如スキーマは、自己の欲求や衝動をコントロールする能力や自己規律が不十分であると感じる傾向を指します。このスキーマを持つ人は、自己制御が難しく、自分の欲求に対して即時の充足を求める傾向があります。また、欲求不満耐性が非常に低く、自らの要求や衝動を制御することや、目標に向けて計画的に自分を律することができません。

次に、自制と自立の欠如スキーマを持つ人の特徴をいくつか挙げます。

  • 衝動的な行動
    自制が弱く、欲求や衝動に対して即座に応じることがあります。短期的な快楽や欲求の充足を追求し、長期的な目標や価値を見失うことがあります。
  • 自己規律の欠如
    自分自身を規律正しく行動することが難しく、自己制御が不十分です。自分自身に対してルールや目標を設定し、それに従うことが困難である場合があります。
  • 即時的な報酬の追求
    即時の報酬や快楽に重点を置き、将来の利益や長期的な目標を犠牲にする傾向があります。自己の欲求を抑えることが難しく、自己規制に苦労することがあります。
  • 個人的な成果の欠如
    長期的な目標の追求や個人的な成果を達成することが難しくなる傾向があります。自己の努力や取り組みを継続することが困難で、モチベーションの維持に課題を抱えることがあります。
  • 自己否定的な感情
    自制や自律の欠如により、自己評価が低下し、自己否定的な感情や罪悪感を抱くことがあります。自己の欠点や失敗に焦点を当て、自己評価を下げる傾向があります。

自制と自立の欠如スキーマを持つ人は、自己制御の強化や自己規律の向上を目指すことが重要です。

異なる文献や研究者によってスキーマのカテゴリー分類が異なる例です。それぞれのスキーマを理解する際には、その内容と特徴に焦点を当てることが重要です。

恥ずかしい思いをするスキーマ

恥ずかしい思いをするスキーマ(Shame Schema)は、個人が自己価値感や自己イメージに関して恥ずかしい思いをする傾向にあるという信念や思考パターンを指します。このスキーマは、一般的に過去の経験に起因しており、感情的に苦痛な出来事や個人的に重要な人物からの評価に基づいて発生する可能性があります。

恥ずかしい思いをするスキーマを持つ人は、自分自身に対して非常に厳しく、完璧主義的である傾向があります。過去の失敗や挫折、社会的な拒絶、批判、嘲笑などに対して、常に強い恥ずかしさや罪悪感を感じることがあります。このスキーマは、自己肯定感や自己効力感を低下させ、社会的なつながりや自己開示の欠如につながる可能性があります。

スキーマ療法において、恥ずかしい思いをするスキーマに焦点を当て、個人がそのスキーマを認識することで、自己肯定感を高め、社会的な関係をより良くすることが目指されます。治療には、過去の経験に関連するトラウマやエモーショナルな出来事に対する認知的再構成、自己肯定感の増強、自己開示の訓練、社会的スキルの向上などの技法が用いられます。

転移反応スキーマ

転移反応スキーマとは、過去の関係や経験に基づいて、現在の人間関係において過剰な反応を示すことを指します。転移とは、過去に存在したある種の感情や態度を現在の関係に転移させてしまう現象のことです。例えば、親や教師などとの関係で虐待や無視などのトラウマ的な体験をした人は、その体験を現在の人間関係に転移させてしまうことがあります。

転移反応スキーマは、自分自身や他人との関係において、過度に攻撃的に反応する、過度に依存する、あるいは過度に避けるといった行動を引き起こします。例えば、過去に父親に虐待された人が、男性に対して敵対的な態度をとる場合があります。また、過去に拒絶された経験がある人が、現在の人間関係において過度に依存したり、恋愛関係を避けたりすることがあります。

転移反応スキーマは、人間関係において深刻な問題を引き起こすことがあります。このため、スキーマ療法では、転移反応スキーマについての認識や洞察を深め、現在の人間関係において過剰な反応を示すことを防止する方法を学ぶことが重要なテーマの一つとされています。

孤立した力スキーマ

孤立した力スキーマは、個人が自分自身を社会的に分離された存在と感じ、自己の成果や業績、物質的な繁栄にのみ価値を見出す傾向があるスキーマです。個人は、孤独感を抱えながらも、外部の成功や評価に対して強い執着心を持ち、社会的なつながりや情緒的な絆を軽視する傾向があります。

このスキーマを持つ人は、一人で問題を解決しようとして他人を頼ることを避けたり、競争的な状況を求めたりします。また、自分の能力を評価されないことに強い不安や怒りを感じ、他人との間に対立や争いを生じることがあります。

このスキーマは、過去に孤立した経験をしたり、虐待や家庭内暴力などの不健康な家庭環境で育った人々によく見られます。また、成功への強い渇望がある一方で、人間関係に苦手意識を持っている人々にも見られます。治療においては、個人が自己と他者のつながりを再構築し、より良い対人関係を築くことが目的となります。

損害や疾病に対する脆弱性スキーマ

生活で疾病や損害に対する過剰な不安や恐怖を引き起こすことがあり、その結果、精神的な苦痛や問題行動が生じる可能性があります。例えば、今にも破却的な出来事が起こり、自分はそれを防ぐこともできないし、対処することもできないと感じています。

  1. 過度な懸念と恐れ
    損害や疾病に対する脆弱性スキーマを持つ人は、日常生活で過度な不安や恐れを感じることがあります。たとえば、些細な健康問題やリスクに対して過敏に反応し、緊張感や不安を絶えず抱えています。
  2. 健康への過度な注意
    このスキーマを持つ人は、自身の健康に異常なほど注意を払うことがあります。体調や症状に対して過剰に注意を向け、病気や損害の兆候を常に探し求めてしまいます。
  3. 生活の制約
    損害や疾病に対する脆弱性スキーマを持つ人は、自己の安全や健康を守るために生活を制約することがあります。たとえば、特定の食事制限、運動制限、または社会的な活動の回避などがあります。これにより、生活の質が低下につながっています。
  4. 対人関係の影響
    このスキーマは、他人との関係にも影響を与えることがあります。過度な不安や恐怖が、家族や友人との関係にストレスを引き起こし、孤立感を増幅させています。

プライドスキーマ

プライドスキーマとは、自己の価値や能力を高く評価し、他者に優位に立ちたがる傾向を示す早期不適応的スキーマのことです。

このスキーマを持つ人は、自分自身を過大評価し、自己陶酔的な思考や行動に陥ることがあります。また、他者の評価や承認を強く求め、それに基づいて自己評価を決定する傾向があります。一方で、自己評価が低下すると、自己否定的な感情や思考に苦しむことがあります。

このスキーマを克服するためには、自己評価に基づく価値観を見直し、自分自身に対しても他者に対しても公正な評価をすることが必要です。また、自分自身にとって本当に大切なことを見つけ、それを追求することが重要です。さらに、自己評価が低下したときに自分自身を励ますための自己回復戦略を身につけることも有効です。

残忍スキーマ

残忍スキーマは、自分自身または他人に対して悪意があると信じ込んでいる、不健全な信念や観念のことを指します。このスキーマを持つ人は、自分や他人に対して敵対的な意図を読み取り、危険な状況に陥りやすくなります。例えば、他人の行動を誤解し、敵意を感じ取ったり、過剰に注意を払ってしまうことがあります。

このスキーマは、早期に虐待や暴力的な環境に晒された人によく見られます。そのため、自分自身や他人に対して暴力が加えられる可能性が大きいと考えるようになります。また、他人に暴力を振るう可能性も高くなります。残忍スキーマは、人間関係に大きな障害を与え、社会的孤立やうつ病、不安症状などの精神的な問題を引き起こすことがあります。治療には、このスキーマを認識し、不健全な信念や観念を修正する認知行動療法が用いられます。

早期不適応的スキーマの定式化による再形成

ヤングが提唱したスキーマ療法では、18の早期不適応的スキーマ(EMS)を特定し、それらが問題となっている人々に対して、適応的なスキーマを再構築することを目的としています。

具体的には、スキーマ療法は、クライエントの早期の痛みやトラウマが形成されたときに、それらが形成された状況や環境を再現することから始まります。次に、クライエントと治療者は、早期不適応的スキーマ(EMS)がどのようにクライエントの現在の生活や感情の問題に貢献しているかを共同で探求します。その後、クライエントと治療者は、より適応的なスキーマを開発し、EMSを軽減するための行動戦略を検討します。

スキーマ療法の最終的な目標は、クライエントがより自己肯定感を高め、より適応的な行動をとることができるようになることです。このプロセスには、クライエントと治療者が協力して、クライエントのEMSを再構築し、適応的なスキーマを確立することが不可欠です。

コーピングスタイルとスキーマモードの詳しい解説は3⃣をご覧ください

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