STEP⒋のエンパワーメントと自己ケアの強化
スキーマ療法におけるエンパワーメントと自己ケアの強化について詳しく説明します。
- エンパワーメントと自己ケアの強化
- スキーマ療法では、クライエントのエンパワーメント(力を与える)と自己ケアの強化に焦点を当てます。
これは、クライエントが自己を肯定し、自己のニーズを理解し、自己ケアを行う能力を高めることを目指すものです。具体的な手法としては、次のようなものがあります。
- 自己意識の向上
クライエントに対して、自己をより深く理解するための自己意識の向上を促します。自己観察や内省の習慣を養い、自己の感情や思考、行動のパターンに気づくことで、自己理解を深めます。 - 自己規制能力の強化
クライエントが自己をコントロールし、望ましい行動や選択を行えるようにするために、自己規制能力の強化が重要です。クライエントと共に具体的な目標を設定し、自己規制のトレーニングや戦略を提供します。 - 自己ケアのプラクティス
クライエントに対して、自己ケアのプラクティスを導入し、日常的なケアやリラクゼーションの方法を学びます。ストレス管理技術やリラクゼーション法、マインドフルネスなどのツールやテクニックを提供し、クライエントが自己ケアを行い、心身のバランスを保つ能力を向上させます。
- 自己意識の向上
- スキーマ療法では、クライエントのエンパワーメント(力を与える)と自己ケアの強化に焦点を当てます。
- リソースの活用
- クライエントが持つ内外のリソースを活用することで、エンパワーメントと自己ケアの強化を図ります。具体的な方法としては、次のようなものがあります。
- 内的なリソースの活用
クライエントと一緒に、自己の強みや価値観、達成した経験などの内的なリソースを見つけ出し、活用します。これにより、クライエントは自己の能力や資源に気づき、自信や希望を持つことができます。 - 外的なリソースの活用
クライエントのサポートシステムや専門家の支援を活用します。家族や友人、パートナーなどの人間関係や、カウンセラーやコーチなどの専門家の支援を受けることで、クライエントは必要なサポートやアドバイスを受けながら成長や変容を達成します。 - コミュニティやグループへの参加
クライエントには、共通の関心や目標を持つコミュニティやサポートグループへの参加を勧めることもあります。これにより、クライエントは他の人とのつながりや共感を体験し、自己理解や成長の場を見つけることができます。
- 内的なリソースの活用
- クライエントが持つ内外のリソースを活用することで、エンパワーメントと自己ケアの強化を図ります。具体的な方法としては、次のようなものがあります。
- エンパワーメントの促進
- クライエントが自己の力を発揮し、自己決定や行動を行えるようにすることも重要です。治療者はクライエントをサポートし、自己のニーズや目標を明確化し、自己効力感を高めるためのプロセスを支援します。
クライエントが自己の力を信じ、自己の人生に対して意識的な選択を行えるようになることで、エンパワーメントが促進されます。
- クライエントが自己の力を発揮し、自己決定や行動を行えるようにすることも重要です。治療者はクライエントをサポートし、自己のニーズや目標を明確化し、自己効力感を高めるためのプロセスを支援します。
STEP⒌の家族や社会的な関係への介入の手法
スキーマ療法における家族や社会的な関係への介入について詳しく説明します。
- 家族や社会的な関係への介入
- スキーマ療法では、クライエントの家族や社会的な関係がスキーマの形成や維持にどのような影響を与えているかを理解し、必要に応じて介入を行います。
家族や社会的な関係への介入は、クライエントの成長や変容を支援するための重要な要素となります。具体的な手法としては、次のようなものがあります。
- 家族セッション
クライエントの家族をセッションに参加させ、家族の関係や相互作用を探求します。
家族のメンバーがお互いにスキーマをどのように刺激し合い、関係がどのように影響されているかを理解し、問題解決やコミュニケーションの改善に取り組みます。 - 介入的なテクニック
家族や社会的な関係において、スキーマに関連するパターンや問題が特定された場合、介入的なテクニックが使用されることがあります。
例えば、特定のスキーマを刺激する行動への変更や、健全な関係の構築を支援するためのコミュニケーションスキルの習得などです。 - サポートネットワークの活用
クライエントの社会的なサポートネットワークを活用し、健全な関係やサポートを受けることを支援します。
家族や友人、グループ、専門家などのサポートシステムを活用することで、クライエントはより健全な関係を築き、支えを受けながら自己成長を達成することができます。
- 家族セッション
- スキーマ療法では、クライエントの家族や社会的な関係がスキーマの形成や維持にどのような影響を与えているかを理解し、必要に応じて介入を行います。
- コミュニケーションの改善
- 家族や社会的な関係におけるコミュニケーションの改善を促すこともあります。
クライエントや家族メンバーが感情やニーズを適切に表現し、共感し合い、理解し合うことは、健全な関係の構築に不可欠です。具体的な手法としては、次のようなものがあります。
- アクティブリスニング
アクティブリスニングは、相手の話を注意深く聞き、理解しようとするスキルです。
クライエントや家族メンバーにアクティブリスニングのトレーニングを提供し、感情やニーズを受け入れる態度で対話することを促します。 - 非攻撃的なコミュニケーションスタイルの学習
クライエントや家族メンバーが非攻撃的なコミュニケーションスタイルを学ぶことは重要です。
攻撃的な言葉や行動を避け、相手の尊厳や感情を尊重しながら意見を伝える方法を学びます。 - エンパシーの促進
クライエントや家族メンバーがお互いの感情や視点に共感し、理解し合うことは、コミュニケーションの改善に役立ちます。
エンパシーを促す演習や技術を提供し、相手の立場を受け入れる能力を向上させます。 - コミュニケーションスキルのトレーニング
コミュニケーションスキルのトレーニングは、クライエントや家族メンバーが効果的なコミュニケーションを行えるようにするために行われます。
具体的なスキルとしては、アサーション(自己主張)のスキルやフィードバックの提供、共感表現などがあります。
- アクティブリスニング
- 家族や社会的な関係におけるコミュニケーションの改善を促すこともあります。
STEP⒍の終結とアフターケアの手法
スキーマ療法における最後のフェーズである終結とアフターケアについて説明します。
- 終結とアフターケア
- スキーマ療法における終結とアフターケアの段階では、クライエントと治療者はセッションを終了する準備を進め、クライエントが独自に自己ケアを継続できるように支援します。
具体的なアプローチとしては、次のようなものがあります。
- 治療の成果の振り返り
クライエントと治療者は、治療の過程で達成された成果や進歩を振り返ります。
クライエントの成長や変容を共有し、自己の成果に対して認識や誇りを持つことが重要です。 - 未解決の課題の整理
残っている未解決の課題やスキーマに対する取り組みについて、クライエントと治療者は共有します。
クライエントが自己の成長を継続するために取り組むべき課題やアクションプランを作成し、具体的な目標に向かって進むことが重要です。 - アフターケア計画の作成
クライエントがセッションの終了後も健全な状態を維持できるように、アフターケア計画を作成します。この計画には、クライエントが自己ケアや健康状態の維持に役立つリソースや戦略が含まれます。
治療者は、クライエントが必要なサポートやリソースを見つけるための情報やツールを提供し、クライエントがセルフケアを継続できるようサポートします。 - フォローアップセッション
終了後の定期的なフォローアップセッションを設定することもあります。
これにより、クライエントの進捗状況や課題について定期的に評価し、必要に応じてサポートや調整を行うことができます。
- 治療の成果の振り返り
- スキーマ療法における終結とアフターケアの段階では、クライエントと治療者はセッションを終了する準備を進め、クライエントが独自に自己ケアを継続できるように支援します。
境界性パーソナリティ障害のスキーマ療法
境界性パーソナリティ障害(BPD)は、自己イメージの欠如、過度の不安定性、対人関係の混乱、強い恐怖や怒りの感情などの特徴を持つ重篤な精神障害の一つです。スキーマ療法は、BPDの治療において効果的なアプローチの1つとされています。
スキーマ療法においては、BPDクライエントの中核的スキーマと呼ばれる問題的な信念や感情を中心に取り組みます。具体的には、BPDクライエントの中核的スキーマには、自己犠牲的な信念や、自己の無力感や無価値感、自己イメージの欠如などが含まれることが多く、それらに対処するための適切な戦略を開発することが重要です。
また、BPDクライエントのスキーマを改善するために、スキーマモードという概念を用いた治療法が行われます。スキーマモードとは、特定の時点で支配的な感情や行動のパターンのことであり、それらがクライエントの中核的スキーマに関連している場合があります。スキーマモードに対処することで、中核的スキーマを変えることができるとされています。
スキーマ療法において、BPDクライエントの治療には次のようなアプローチが用いられます。
- 中核的スキーマの評価
- BPDクライエントの中核的スキーマを評価し、それらがどのように彼らの人生や日常の機能に影響を与えているかを明らかにします。
- スキーマフォーカスド・コグニティブ・テクニックの使用
- スキーマフォーカスド・コグニティブ・テクニック(SFT)と呼ばれる治療技法を使用し、BPDクライエントの中核的スキーマを変えます。
- モードワーク
- BPDクライエントが感じるさまざまな感情や行動のパターンを理解するために、モードワークが用いられます。
これにより、治療者は、クライエントがどのような状態になり、どのような感情を経験するかを把握することができます。
- BPDクライエントが感じるさまざまな感情や行動のパターンを理解するために、モードワークが用いられます。
- 感情調整
- 境界性パーソナリティ障害の人は、強い感情を抱きやすく、これを適切に処理することができません。
スキーマ療法では、感情調整のために、自己規制や感情の認知と区別、感情の表現の仕方を学ぶトレーニングを行います。
- 境界性パーソナリティ障害の人は、強い感情を抱きやすく、これを適切に処理することができません。
- 無効化への対処
- 境界性パーソナリティ障害のクライエントは、自分自身を無価値だと感じる傾向があり、無力感や孤独感を抱きます。
スキーマ療法では、このような感情に対処するために、自分の達成や能力を認めることや、自分の欲求やニーズを満たす方法を学ぶことが重要です。
- 境界性パーソナリティ障害のクライエントは、自分自身を無価値だと感じる傾向があり、無力感や孤独感を抱きます。
- 関係性の改善
- 境界性パーソナリティ障害のクライエントの多くは人間関係に問題を抱えており、他人に依存することがあります。
スキーマ療法では、健全な人間関係の構築と維持に焦点を当て、信頼できる人々を見つける方法や、相手とのコミュニケーション方法を学びます。
- 境界性パーソナリティ障害のクライエントの多くは人間関係に問題を抱えており、他人に依存することがあります。
- 過去のトラウマの解決
- 境界性パーソナリティ障害のクライエントの多くは、過去のトラウマや不安定な家庭環境によって影響を受けています。
スキーマ療法では、過去のトラウマを解決するために、安全な場所で感情を表現することや、自分自身を許し、過去に起きたことを手放すことが重要です。
- 境界性パーソナリティ障害のクライエントの多くは、過去のトラウマや不安定な家庭環境によって影響を受けています。
- 持続的なスキルの習得
- 境界性パーソナリティ障害のクライエントは、症状が改善した後も、持続的なスキルを習得することが必要です。
スキーマ療法では、自己観察、自己規制、感情の調整、自己効力感の向上、健全な人間関係の構築などのスキルを継続的に練習することが重要です。
- 境界性パーソナリティ障害のクライエントは、症状が改善した後も、持続的なスキルを習得することが必要です。
自己愛性パーソナリティ障害のスキーマ療法
自己愛性パーソナリティ障害(NPD)は、自分自身に対する過度の自己優位感、他者への共感や関心の欠如、自己中心的な行動などが特徴的です。スキーマ療法は、自己中心的な行動や他者への関心の欠如に対処するのに役立つことが示されています。
スキーマ療法の治療プロセスは、境界性パーソナリティ障害の場合と同様に、スキーマアセスメント、スキーマフォーカスド・インターベンション、およびモードワークに分けることができます。
スキーマアセスメントは、パーソナリティ障害を評価するために使用されるスキーマアセスメント・フォーム(SAF)を使用して、自己愛的スキーマを同定します。自己愛的スキーマには、優位性の追求、エンタイトルメント、他者利用、自己中心的な思考、感情的な排他性、感情的なハンドリング、自己中心的な行動、強迫的な規範、無感覚性などです。
スキーマフォーカスド・インターベンションは、治療的関係を構築し、自己中心的な行動を改善するために行われます。自己愛的スキーマを扱うために、特定のテクニックが使用されます。例えば、強迫的な規範のスキーマに対しては、柔軟性のある思考や行動の促進を目的とした認知再構築のテクニックが使用されます。他者利用のスキーマに対しては、個人が自己中心的な行動を減らすための適切な境界線を引くことを促すテクニックが使用されます。
モードワークでは、自己中心的な行動に関連する感情的なモードを識別し、それらのモードを扱います。例えば、強迫的な規範のモードに対しては、拒絶や恐れ、または安心感を扱うテクニックが使用されます。
総合的に、自己愛性パーソナリティ障害のスキーマ療法は、個人が自己中心的な行動に対処し、他者との関係を改善することを含め、自己愛性パーソナリティ障害の場合、主なスキーマは「特別であるという感覚」、「自己中心的な期待」、「優越感」、「弱さの否定」、「感情の自己調整の欠如」などですので、これらのスキーマに焦点を当てて、次のようなアプローチを取ります。
- スキーマの理解と洞察
- 自己愛性パーソナリティ障害のクライエントは、自分自身が特別であると信じています。スキーマ療法では、この信念を理解するために、クライアントに自分の欲求と優越感について問いかけます。
治療者は、クライアントが自分自身と他者についてどのような期待を抱いているかを探求し、自分自身に対する彼らの認識を理解します。
- 自己愛性パーソナリティ障害のクライエントは、自分自身が特別であると信じています。スキーマ療法では、この信念を理解するために、クライアントに自分の欲求と優越感について問いかけます。
- 関係のパターンの探究
- 自己愛性パーソナリティ障害のクライエントは、自分が中心であると信じており、他者を利用することがあります。
スキーマ療法では、クライアントの人間関係のパターンを探求し、自分自身を中心に据えて他者と接する方法を変えるようにアドバイスします。また、クライアントには、自分自身と他者を平等に扱い、相互に尊重することの重要性について教育します。
- 自己愛性パーソナリティ障害のクライエントは、自分が中心であると信じており、他者を利用することがあります。
- 感情調整の訓練
- 自己愛性パーソナリティ障害のクライエントは、感情を調整することが困難です。
スキーマ療法では、クライアントに自己観察の訓練を行い、感情を認識することから始めます。その後、感情の自己調整の技術を教え、怒りや不安などの感情をより健康的に処理する方法を探ります。
- 自己愛性パーソナリティ障害のクライエントは、感情を調整することが困難です。
- 自己肯定感の強化
- 自己愛性パーソナリティ障害のクライエントは、自己肯定感が低く、優越感を維持するために他者に頼っています。
スキーマ療法では、クライアントが自己肯定感を強化するようにアドバイスし、自分自身を中心に据えて自己決定を下し、自分自身を尊重する方法を探ります。
- 自己愛性パーソナリティ障害のクライエントは、自己肯定感が低く、優越感を維持するために他者に頼っています。
複雑性PTSD(C-PTSD)のスキーマ療法
複雑性PTSD(C-PTSD)は、長期間にわたる複雑な外傷体験によって引き起こされる精神障害で、通常のPTSDと比較してより深刻な症状が見られます。スキーマ療法は、C-PTSDの治療において有望なアプローチの1つとされています。
スキーマ療法は、C-PTSDによって引き起こされる問題として、身体的感覚と感情の調整の困難、自己認識と他者の認識の障害、および関係性の問題に焦点を当てています。スキーマ療法の治療戦略には、個々のスキーマを特定し、スキーマの原因となる外傷を探求することが該当します。治療者は、クライアントが自分の感情、思考、および行動を認識することを支援するために、マインドフルネスや認知行動療法の技法を使用することがあります。また、トランスファーレンシャル・フォーカス型スキーマ療法では、クライアントと治療者の関係を活用し、クライアントが安全な関係性を経験することで、過去のトラウマの影響を払拭し、安定した感情調整を促すことができます。
C-PTSDは、長期にわたって不安定な環境にさらされたり、トラウマを経験したりした人々によく見られます。スキーマ療法は、そうした人々にとって有効な治療法の1つであり、外傷体験に対する感情的反応を緩和し、機能的な調整方法を身につけることができる可能性があります。ただし、治療期間が長く、治療の過程でトラウマ体験を再度経験することがあるため、治療者とクライアントの信頼関係が重要となります。
スキーマ療法の総論
スキーマ療法は、認知行動療法の一形態であり、心理的な問題や不適応なパターンに取り組むための効果的な治療手法です。次にスキーマ療法の総論をまとめます。
- 早期不適応的スキーマ
-
幼少期の中核的感情欲求が満たされないことによって形成され、不健全な信念やパターンとして現れるスキーマです。18の早期不適応スキーマがあり、それらが悩みや問題の根底にある可能性があります。
- コーピングスタイル
-
コーピングスタイルは、不快な感情やスキーマの活性化に対処するための個人の反応パターンです。スキーマに基づいて形成され、自己の保護や解決策を追求するために使用されます。
- スキーマモード
-
スキーマモードは、特定の状況やトリガーに反応して活性化する特定の状態やパターンです。これらのモードは、スキーマに基づいて思考や行動を制御し、不健康なモードを示すことがあります。
- 治療目標
-
スキーマ療法の目標は、早期不適応的スキーマの認識と変容、非機能的なコーピングスタイルの変更、健康的なスキーマモードの強化、自己観察と自己規制の向上です。これにより、より健康的な思考や行動パターンを促進し、心理的な問題を改善します。
- 治療手法
-
スキーマ療法では、認知的・行動的手法を使用してスキーマとコーピングスタイル、そしてスキーマモードにアプローチします。具体的な技法には、スキーマの探索と認識、思考の修正、行動の実験、感情の調整、イメージリサイズなどがあります。
- 治療のプロセス
-
スキーマ療法は通常、個別のセッションやグループセッションを通じて行われます。治療プロセスでは、クライアントと治療者が信頼関係を構築し、早期不適応スキーマや非機能的なコーピングスタイルを共同で探索します。クライアントは、スキーマに関連する感情や行動パターンを自己観察し、問題を解決するための新しいスキルを学びます。
- 治療の効果
-
スキーマ療法は、様々な心理的な問題や障害に対して有効な治療手法とされています。スキーマ療法によって、クライアントは自己のスキーマやモードを理解し、より健康的な思考や行動への変容を実現することができます。これにより、自尊感情の向上、関係の改善、感情の調整、個人の成長などが促されます。
- スキーマ療法の適用範囲
-
スキーマ療法は、さまざまな心理的な問題や障害に対して適用されます。うつ病、不安障害、人格障害、摂食障害、トラウマ後ストレス障害など、幅広い症状や状態に対して効果的です。また、世界や人間関係の問題や自己成長の促進にも活用されることがあります。
- スキーマ療法の限界
-
スキーマ療法は効果的な手法ですが、完全な解決やすぐれた結果を保証するものではありません。治療はクライアントの積極的な参加と努力を必要とし、時間と忍耐が求められます。また、スキーマ療法は他の治療手法と組み合わせて使用されることがあります。
スキーマ療法は、早期不適応スキーマと非機能的なコーピングスタイル、そしてスキーマモードに焦点を当て、クライアントの自己観察と変容を促進します。
スキーマ療法の目標の一つは、クライアントが早期不適応スキーマや非機能的なコーピングスタイル、不健康なスキーマモードを認識し、変容させることです。このプロセスを通じて、より健康的な思考や行動パターンを促進し、クライアントがより充実した生活を送ることができるよう支援します。
健康的な思考は、過去の負の経験やスキーマに基づく信念に対して客観的な見方や柔軟な解釈を持つことを意味します。クライアントは、自己評価や他者との関係、世界への見方などにおいて、より建設的で肯定的な思考パターンを開発していくことが求められます。
健康的な行動は、スキーマに基づく非機能的なパターンから脱却し、より適応的な行動をとることを指します。クライアントは、早期不適応スキーマやモードの活性化に対して、より健康的な対応やコーピング戦略を身につけることが重要です。例えば、自己規制や自己効力感の向上、自己ケアや健康な関係の築き方などが健康的な行動の一例です。
スキーマ療法では、クライアントが自己のスキーマやモードに対して自己観察し、健康的な思考や行動にシフトするための具体的なスキルや戦略を学びます。治療者は、クライアントとの共同作業を通じて、個別に適したアプローチや技法を提供し、成長と変容を支援します。
結果として、スキーマ療法によってクライアントはより健康的な思考や行動を身につけ、自己のスキーマやモードに囚われずにより充実した生活を送ることができるようになるのです。
Arnoud Arntz and Gitta Jacob, “Schema Therapy in Practice: An Introductory Guide to the Schema Mode Approach” (Wiley, 2012).
Wendy T. Behary, “Disarming the Narcissist: Surviving and Thriving with the Self-Absorbed” (New Harbinger Publications, 2013).
Kate L. Hertweck and Robert L. Trestman, “Schema therapy for patients with borderline personality disorder: A comprehensive review of its empirical foundations, effectiveness and implementation possibilities” (Borderline Personality Disorder and Emotion Dysregulation, 2018).
Susan Simpson, “Schema therapy for complex PTSD: A case study” (Journal of Clinical Psychology, 2017).
「スキーマ・セラピー – 自己欺瞞からの解放」 (Jeffrey E. Young 著、藤田和弘・小田島俊子 訳、金剛出版、2009年)
「スキーマ療法マニュアル – 自己欺瞞スキーマの心理教育と認知行動療法」 (Arnoud Arntz, Gitta Jacob 著、小田島俊子・松本祥子 訳、金剛出版、2017年)
「スキーマセラピー事典」 (Martin Bohus, Christian Schmahl, Vedat Sar 著、須田泰成・柴田春江・太田晶子 訳、金剛出版、2019年)
「スキーマ療法の実際」 (Arnoud Arntz 著、中山正美 訳、金剛出版、2011年)
「スキーマ療法による複雑性PTSD治療の手引き」 (Marylene Cloitre, Lisa R. Cohen, Karestan C. Koenen 著、岩田朋子・内田美穂 訳、金剛出版、2021年)
「Schema Therapy for Borderline Personality Disorder」(Arnoud Arntz, Gitta Jacob 著、Wiley, 2013年)
「Cognitive Behavioural Approaches to the Understanding and Treatment of Dissociation」 (Christine A. Courtois, Julian D. Ford 著、Routledge, 2013年)
「Trauma and the Struggle to Open Up: From Avoidance to Recovery and Growth」 (Robert T. Muller 著、W. W. Norton & Company, 2018年)
「Reinventing Your Life: The Breakthrough Program to End Negative Behavior…and Feel Great Again」 (Jeffrey E. Young, Janet S. Klosko 著、Plume, 1994年)