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心理的防衛機制80例

目次

ポジティブな成熟した防衛機制

ポジティブな防衛機制は意識的に行われるもので、社会の中で自己を見据えていくために重要なものとなります。また、既に表記したネガティブな防衛を制御する役目も果たします。自己のストレス要因(出来事、状況など)を理解し見つめ直すのはもちろんのこと、他者のストレス要因をも冷静に受け止め、いま反応している防衛機制の意味を理解できることで自己が心身ともに健康に過ごせると考えます。
また、抱えられない辛いストレス要因に直面した際に、意識的にポジティブな防衛を使えないとネガティブな防衛が表出してしまい、コーピングが非適応的に転じてしまいます。もともと防衛は無意識的、前意識的(意識はされていないが、注意を集中すれば意識化できる・意識と無意識を繋ぐ領域)、意識的にも単体で使われるだけではなく、ポジティブとポジティブ、ネガティブとネガティブ、ポジティブとネガティブの防衛機制と複雑な絡み合い、および強弱によって表出しています。

私たちの現実的な目標としては、社会や生活で意識的に優先的にポジティブな防衛の使い方ができるようになることだと考えています。
防衛機制は抱えられないストレッサーに対するコーピングです。今まで私たちは多くのネガティブな防衛と交じり合ってコミュニケーションしてきています。ポジティブな防衛は悪いものと考えるのではなく、コントロールができないでポジティブな防衛のみ使うのは、自己のこころを傷つけることにもなりかねません。
また、ポジティブな防衛を使えてもバラエティ富んで使えていないのなら、苦しさを抱えながら真実ではない自己をつくり続けいずれ破綻します。ネガティブとポジティブな防衛機制を組み合わせて使えるように、日ごろから意識することが大切となります。

ポジティブな防衛機制には、ネガティブな防衛機制も含まれています。このことからも防衛機制は意識的に上手に使うことで望ましい生き方ができるようになるということです。

ポジティブで成熟した防衛機制

受容(アクセプタンス)
今の置かれた現実の状態や状況を変化や抵抗させずに理解しようとする姿、行為。その対象の多くはネガティブで不快である場合が多い。
例:家族の突然の死を受容する。
愛他主義(利他主義)
自分が不利益を被っても、第一優先を他者と考え他者に利益をもたらすことも良しと考える
例:他人のミスや他人から受ける損害を寛容な心をもって許す。
先取り
将来の悪くなる状況を予想して、現実的な計画を立てる。
例:成功を強くイメージして、失敗のパターンを想定しリハーサルを行う。
禁欲主義
悪い結果を生み出す欲望に捉われないように、欲望を捨て徳に進むようにする。
例:酒乱傾向があるので、ソフトドリンクを注文してお酒を飲まない。
感情の自己コントロール(セルフコントロール)
誘惑や衝動に直面した際に、自制心をもって自分の感情や思考、行動を抑制する。
例:ダイエットするために、トレーニングを強化し食事制限をする。
感情的レジリエンス
不利な立場やストレスなどで自己の気持ちに歪みが生じた際に取り戻そうとする能力。
例:トラブルを脅威と思わずに、自己の成長につながる行動だと捉える。
ユーモア
人を和ませる【おかしみ】(対人関係の緊張を和らげる)をセンスで言えるだけではなく、ユーモアが成すことの理解もできる。
昇華
社会では受け入れがたい欲求、感情、衝動を望ましい建設的なエネルギーへと積極的に転化させていく表現。
例:逸脱した性的欲求などをスポーツや芸術で表現する。
自己主張・自己表現
敬意をもって他者に意思、意見、要望を言葉で表現することであって、他者を攻撃、威圧、操作の意図をもって主張することではない。
例:自分や他者が目指すゴールや目標に到達する目的として自己主張する。
同一化/同一視
同一化は自分が理想とする人や尊敬する人、または自分にない名声や権威を真似ることで欲求を満たし自分を高める。また、受け入れがたい感情や欲求から、他人に自分を重ね合わせ、自己評価を高めること。
・同一視は他人を真似るのではなく自分のものだとする。
同一化の例:アイドルにあこがれ、髪形を同じにした。
同一視の例:他者の状況などを自分のことだと思い、感じ行動する。
抑制
不安的衝動や叶わぬ願望など考えることを意識的に避けたり延期したりする。
・意識的に忘れる
例:試験の不合格を忘れるように勉強に没頭する。
補償
自分の足らない弱い部分から生じる葛藤や不安を補うために、他の部分を強化し鍛えていく。ある一面、特定の劣等感をほかの分野での優越感で補おうとする。
例:自分はスポーツが不得意な分、勉強を頑張って埋め合わせをしている。
友好関係
他者に助けや助言などのサポートを求める。自己の問題を分かち合うことになる。
例:柔軟に自己を開示し、他者の意見に耳を傾けられる。
自己洞察
葛藤やストレスに対処するために自身の感情、思考、行動を解消し、不適切だと思われる部分を適切な内容に変えていく。また、他者の気持ちを自分に当てはめることで他者の気持ちを理解する。
例:反省を自己洞察で得る。共感能力で適切な人間関係を築く。
同定と取り込み
他者の性格的特徴や価値観、行動などの良いところを客観的に認識し、自分自身にもあるように思う。
例:相手の良い部分を見習い自分にも取り入れていく。
転換
本能的な欲望や衝動を社会的に受け入れられる形に変えるプロセスを指します。感情や衝動は建設的な活動や創造的な表現に転換されます。
例:怒りを芸術的な創造に向けたり、性的な欲望をロマンス小説の執筆に転換することが考えられます。
その他
「勇気」「許し」「感謝」「謙虚」「慈悲」「節制」「忍耐」「尊敬」「寛容」…

臨床における防衛である感情転移

転移
幼児期に存在した重要な人物(両親や養育者)との間で生じた欲求、感情などの情動、葛藤、空想、態度、行動、防衛様式を今現在の目の前にいる対象者に向ける(転じて移す)無意識的に反復される非現実的態度を転移と言います。この転移には母親転移、父親転移、両親の他の養育者転移、その他祖父母、恩師、教師、先輩転移の場合もあります。この現象の防衛様式には「同一視」「投影」「置換え」「退行」「脱価値」などが同時に複数発生している状態です。
転移には、転移される情動の性質から「陽性転移」と「陰性転移」に分けられ、この2つは一方だけが出現するのではなく、本来は陽性と陰性の両転移がともにみられる両価傾向があります。このことからもアンビバレンスであり、状況の変化によって変容しやすい心理機制だということです。
・転移:カウンセリングの過程でクライエントが過去の自分にとって重要だった人物に対して向けた感情や態度をカウンセラーに向けること。
・逆転移:クライエントからの転移に対しカウンセラーが抱く感情や態度。
陽性転移
転移の対象者に好意的感情からなるもので信頼感を基盤とし、好意、親しみ、甘え、依存、信頼、愛情、尊敬、理想化などの「意識する親愛感情」となるものです。
また、「無意識に抑圧されている性愛感情」の性愛化された転移も現れることがあり「移転性恋愛」と呼ばれ、性的な欲望と恋愛感情を抱いています。
これはどちらか一方が現れるということではなく、2つの感情が同時に現れることが多くなります。
陰性転移
転移の対象者に敵対感情からなるもので抵抗感を基盤とし、敵意、嫌悪、非難、なじみにくさ、腹立ち、不信、軽蔑、恐怖などのネガティブな感情を示します。

社会や生活を営む上で様々なストレッサーに晒されます。無意識が状況をストレスと予測すると自我や意識のダメージを回避するために、その人特有の体験で使われて適応とされてきた防衛機制が発動されます。その反動としてストレッサーに対する認知の歪みが生じると考えられます。「合わせて読みたい」の認知の歪み、偏りのバイアスは防衛機制よりもコンパクトにまとめられていてわかりやすいので参考にしてください。

参考web

場末P科病院の精神科医のblog http://blog.livedoor.jp/beziehungswahn/archives/cat_925299.html

キャリアコンサルタントドットネット https://career-cc.net/defence-mechanism/
参考書籍
自我と防衛機制:アンナ・フロイト/誠信書房
面白いほどよくわかるフロイトの精神分析:監修立木康介

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