
アレキシサイミアのセルフケアや対処法
アレキシサイミアのセルフケアや対処法として、感情の認識を高めるためには、自己観察と感情を理解する練習が重要です。具体的なアプローチとして、次の感情リストを使用する方法が有効です。
感情日記をつける
感情日記をつけることは、感情を認識し、整理し、より深く理解するための効果的なセルフケア手法です。日常生活の中で感じた感情を振り返り、具体的に記録することで、感情のパターンやトリガーに気づきやすくなり、自己理解が深まります。
- 方法: 毎日、その日の出来事やそれに対して感じたことを記録します。最初は感情を具体的に表現することが難しいかもしれませんが、「嬉しい」「悲しい」「ストレスを感じる」などの基本的な感情から始め、徐々に詳細に記述していきます。
- 目的: 自分の感情に気づき、それを文章化することで、感情の認識力が向上します。また、時間をかけて繰り返し行うことで、感情のパターンやトリガーを理解するのに役立ちます。
「感情日記をつける」の具体的な練習方法や実践的なステップ
感情日記の目的は、自分の感情に気づき、感情の変化やパターンを把握することです。感情がどんな出来事や状況によって引き起こされ、どのように影響しているのかを記録することで、自己認識や感情調節能力が向上します。
- 毎日の終わりに振り返る: その日の出来事や出会った人、起きた感情について1日の終わりに書きます。時間をかけて感情を振り返ることができ、静かな環境でじっくりと書き込める時間を作るのが理想です。
- 感情が強く湧き上がったときに書く: 特に感情が強く揺れた瞬間(怒り、悲しみ、喜びなど)には、その場でメモやスマホアプリなどを使って簡単に記録し、後で詳細に書き足すのも効果的です。
感情日記では、ただ単に「嬉しかった」「悲しかった」といった感情だけを記録するのではなく、次のようにできるだけ具体的に記録することが重要です。
- 出来事の概要
その日に起きた主な出来事や状況を簡潔に書きます。
例: 「仕事で上司にプロジェクトを褒められた。」 - 感じた感情
その出来事に対して自分がどのような感情を抱いたか、具体的に言葉で表現します。感情リストを使ってもよいでしょう。
例: 「嬉しかったが、少し緊張していた。」 - 感情の強さ
感じた感情の強さを数値で表すことで、感情の強弱を把握しやすくなります。10点満点のスケールで評価してもよいです。
例: 「嬉しさ: 7/10、緊張: 4/10」 - 感情の身体的反応
その感情を抱いた際に、身体にどのような反応が起こったかを記録します。
例: 「心臓が少し早くなった。手のひらに汗をかいた。」 - 思考パターンや連想
その感情を感じたとき、頭の中でどのような考えや連想が浮かんだかを書きます。
例: 「このまま評価が上がれば、次の昇進も期待できるかもしれない。でも、もっと努力が必要だ。」 - 行動や反応
感情を感じた後、自分がどのように行動したかや、周囲にどう反応したかを書きます。
例: 「笑顔でありがとうと言ったが、その後急に緊張して黙ってしまった。」 - 感情のトリガー
その感情がどのような状況や出来事によって引き起こされたのか、振り返って考えてみます。
例: 「褒められるのは嬉しいけれど、期待が高まると緊張してしまう。」 - 改善や振り返り
その感情を次回どのように扱いたいかや、感じ方を改善したい場合はどんなアプローチを試みるかを考えます。
例: 「褒められたときは、深呼吸をしてリラックスし、自分に自信を持つように心がけたい。」
アレキシサイミアの傾向がある場合、感情を特定するのが難しいことが多くなります。そのため、感情リストを使って自分が感じた感情を言葉で表す練習をすると効果的です。例えば、次のような感情リストを参考にします。
- 喜び: 幸福、満足、興奮、誇り
- 怒り: イライラ、怒り、憤慨、攻撃性
- 悲しみ: 悲しい、孤独、喪失感、無気力
- 恐れ: 不安、恐怖、心配、パニック
- 驚き: 驚き、戸惑い、びっくり
- 嫌悪: 嫌悪感、拒絶、軽蔑、不快
感情リストを日記の横に置いておくと、自分がどの感情を感じているのかを明確にしやすくなります。
感情日記を継続することで、徐々に自分の感情パターンに気づくことができるようになります。例えば、「特定の状況ではいつも不安になる」「ある出来事が起きた後はいつも落ち込む」など、感情のトリガーや繰り返しのパターンを発見することができます。この発見が、自己成長や感情の調整に役立ちます。
感情日記をつけることは、カウンセリングや心理療法でも非常に役立ちます。自分の感情を整理して書き出しているため、専門家と共有する際に自分の感情や思考をより正確に伝えることができ、治療効果を高めることができます。
感情日記を続けるためのコツとして、無理に毎日たくさん書こうとせず、短時間でも良いので気軽に書く習慣をつけることが大切です。完璧を求めず、シンプルに感じたことを書き留めることが継続の鍵です。また、最初は感情をうまく表現できなくても、徐々に言葉にする力がついてくるので、焦らず続けていきましょう。
感情日記をつけることは、アレキシサイミアに限らず、感情を理解し表現する能力を向上させる有効な方法です。

感情に名前をつける練習
「感情に名前を付ける」練習は、感情を明確に認識し、その感情に対して適切な言葉を与えることで、自己理解を深め、感情をコントロールする力を養う手法です。特に、感情の認識が難しいアレキシサイミア傾向のある人にとっては、感情に名前をつける練習は、感情を言語化する能力を高めるための効果的なステップとなります。
- 方法: 日常生活の中で何かを感じたとき、その感情に具体的な名前をつける練習をします。例えば、「今、イライラしている」「ちょっと不安を感じる」と言葉で自分に伝えます。難しい場合は、感情リストを活用し、自分が感じている感情を選ぶところから始めてください。
- 目的: 感情に名前をつけることによって、その感情を客観的に見ることができ、より深く理解できるようになります。
感情に名前を付ける練習は、自分の内面的な世界をより明確に認識するための重要なステップです。感情を言葉で表現する力を養うことで、自己理解や対人関係の質が向上し、感情をコントロールする力も強まります。この練習を通じて、感情をもっと自然に、そして効果的に扱えるようになり、アレキシサイミア傾向の軽減にもつながる可能性があります。
「感情に名前を付ける」の具体的な練習方法や実践的なステップ
感情に名前を付けるためには、まず基本的な感情の種類やそれぞれの違いを知ることが大切です。感情を大まかに理解するために、次のような感情リストを使って、日常的に感じる感情の名前を覚えることから始めます。
基本的な感情カテゴリー:
- 喜び: 幸福、満足、興奮、誇り
- 怒り: イライラ、怒り、憤慨、攻撃性
- 悲しみ: 悲しい、孤独、喪失感、無気力
- 恐れ: 不安、恐怖、心配、パニック
- 驚き: 驚き、戸惑い、びっくり
- 嫌悪: 嫌悪感、拒絶、軽蔑、不快
このように感情を6つの基本的なカテゴリーに分け、それぞれの具体的な感情を覚えていきます。
日常生活で感情が湧いたときに、その感情に意識を向けてみます。最初は「今、何を感じているのだろう?」と自問するだけでも良いです。その後、感情リストを参考にしながら、感じている感情に最も近い名前を付けてみます。
例:
- 仕事で上司に褒められたとき → 「嬉しい、でも少し不安かも」
- 友達が予定をキャンセルしたとき → 「悲しい、少し怒っているかも」
感情は単純に「悲しい」や「怒っている」だけではなく、さまざまな強さやニュアンスを持っています。練習を重ねることで、自分の感情がどの程度の強さなのか、微妙な違いにも気づけるようになります。
例:
- 怒り → 軽い「イライラ」、強い「激怒」
- 不安 → 軽い「心配」、重い「パニック」
感情に名前を付けた後、その感情がどのくらい強く感じられるかも評価してみましょう。10点満点で評価する方法や、数値化することで感情の強度を視覚化しやすくなります。
例:
- 「今感じている不安は7/10くらいだ」
- 「喜びは10/10のレベルではないけれど、5/10くらいかな」
感情に名前を付けたら、次にその感情がなぜ生じたのかを考えます。どのような状況や出来事が感情を引き起こしたのかを意識することで、感情の背後にある原因やパターンが見えてきます。
例:
- 「友達が約束をキャンセルしたとき、なぜこんなにイライラするんだろう?自分が期待しすぎていたのかもしれない。」
- 「褒められたのに不安を感じたのは、失敗することへの恐れがあるからかもしれない。」
感情に名前を付けたら、その感情を声に出して表現してみます。自分自身に「今、私はイライラしている」「今、私はとても不安だ」と声に出すことで、感情をより具体的に意識することができ、次第に感情を認識する力が高まります。
例:
- 「今、私はとても悲しい。友達が約束を守らなかったことが理由だ。」
- 「緊張している。新しい仕事を始めるのが不安なんだ。」
最初は基本的な感情に名前を付けることから始めますが、徐々に感情のレパートリーを広げていくことが目標です。感情をより細かく言語化する練習を続けることで、自分の感情を多角的に理解できるようになります。
例:
- 「単に悲しいのではなく、裏切られたように感じている。」
- 「怒りを感じるけど、実際には恐れが背後にあるかもしれない。」
感情に名前を付ける練習を通じて、自分の感情に気づくだけでなく、それを他者に伝える力も養うことができます。対人関係において、自分の感情を明確に言葉で伝えることで、相手とのコミュニケーションがスムーズになります。
例:
- 「今の状況に少しイライラしているけど、どう対処すればいいか考えている。」
- 「あなたの言葉に少し悲しみを感じた。」
感情に名前を付ける練習をさらに深めるために、視覚的な感情チャートや「感情の輪」などのツールを使うのも効果的です。これらは感情を円形に整理し、さまざまな感情のつながりや強弱を視覚的に把握するのに役立ちます。
感情に名前を付ける練習は、短期間で完了するものではなく、継続的な取り組みが必要です。感情に気づき、認識し、表現する力は、時間とともに高まります。定期的に感情日記を書いたり、感情リストを見返したりして練習を続けます。

感情を他者に話してみる
「感情を他者に話してみる」ことは、自分の内面にある感情を他者に言葉で伝えることで、感情の認識力や対人関係の質を向上させる重要なコミュニケーションスキルです。特にアレキシサイミア(感情の認識や表現が困難な状態)を抱える人にとっては、感情を他者に話す練習は、感情を明確に認識し、言語化するための有効な手段となります。
感情を他者に話すことは、自己認識の向上や対人関係の強化に繋がる有効な手段です。感情をシンプルな形で話すことから始め、徐々に感情の原因や背景を説明する能力を養うことで、感情の言語化が自然にできるようになります。また、相手の反応に対してオープンになり、非言語的なコミュニケーションにも注意を払うことで、より深いレベルで感情を共有できるようになります。
「感情を他者に話してみる」の具体的な練習方法や実践的なステップ
感情を他者に話すためには、まず自分が安心して話せる相手や環境を選ぶことが大切です。信頼できる友人、家族、あるいはカウンセラーなど、感情を共有しても否定されたり批判されたりしないと感じられる相手を選びます。
例:
- 親しい友人に「最近、仕事のことで不安を感じているんだ」と話してみる。
- カウンセラーに「日常でどんな感情を感じているのか、まだよく分からないんですが、少し話してみたいです」と始める。
最初は、感情に名前を付けること自体が難しいこともあります。そのため、複雑な感情ではなく、シンプルで認識しやすい感情から始めましょう。「嬉しい」「悲しい」「怒っている」「不安」など、簡単な感情を話題にしてみます。
例:
- 「今日はいい天気で気分がいい」
- 「最近、少しイライラすることが多いんだ」
感情を他者に伝える際は、「私は~と感じている」という主語を自分に置く表現を使うと、相手に対して責めたり攻撃的な印象を与えることなく、自分の感情を伝えることができます。この「Iメッセージ」は、感情を自分の問題として捉え、相手と建設的なコミュニケーションを取るために有効です。
例:
- 「私は、今この状況に不安を感じています」
- 「私は、あなたの発言に対して、少し悲しい気持ちになりました」
感情を他者に伝える際には、ただ「怒っている」「悲しい」と言うだけではなく、その感情がどこから来ているのか、原因や背景を説明すると、相手がより理解しやすくなります。感情のトリガーを自分で把握することは、自己認識を深める一環でもあります。
例:
- 「最近、仕事が忙しすぎて、疲れていてイライラしやすいんだ」
- 「友達との約束が急にキャンセルされて、少し孤独を感じたんだ」
自分の感情を他者に伝える際、無意識に「こんな感情を抱くのは良くない」などと、感情に対して批判的な思考を持つことがあるかもしれませんが、感情に「良い」や「悪い」という評価を付けることなく、素直に自分の感情をそのまま受け入れて伝えることが大切です。
例:
- 「こう感じるべきじゃないかもしれないけど、今はとても不安なんだ」と言わず、「今、私はとても不安なんだ」と、ありのままの感情を伝える。
感情を話す際、相手の反応がどのようになるか不安に感じるかもしれませんが、聞き手がどう反応するかを過度に心配せず、自分の感情を表現することに集中することが大切です。多くの場合、相手が自分の感情を理解してくれることで、関係性が深まり、お互いの理解が進むことが多くなります。
例:
- 「この感情を話すと相手はどう思うだろう?」と心配せずに、「私は今、こう感じています」と伝える。
感情を他者に伝えるとき、言葉だけでなく、声のトーン、表情、体の動きなどの非言語的なコミュニケーションも感情表現に大きな影響を与えます。たとえ感情を言葉で表現するのが難しくても、表情やジェスチャーを使って感情を補完することができます。
- 悲しい感情を伝える際に、静かな声でゆっくりと話す。
- 不安を感じているときに、眉をひそめたり、手をこすったりして感情を示す。
感情を他者に話すことで、相手からフィードバックをもらうことができます。相手の反応を通じて、自分の感情が他人にどう受け取られているかを学び、その過程で自分の感情認識が深まります。相手のフィードバックを建設的に受け入れることが、感情をより適切に表現できるようになる一歩です。
例:
- 「あなたがそんなに不安を感じていたとは知らなかった。次回から、もっとサポートできるようにするね」
- 「そんなに悲しいことがあったんだね。どうしたら良いか考えてみよう」
感情を話すことは、最初はぎこちなく感じるかもしれません。しかし、練習を重ねることで、次第に自然に感情を言葉で表現できるようになります。特に感情を表現することに抵抗がある場合は、少しずつ練習を重ね、徐々に感情をシェアすることに慣れていくことです。
例:
- 最初は「少し緊張している」とだけ伝える練習から始め、徐々に「緊張している理由は、新しい環境が怖いからだ」といったように、感情の原因まで話すようにします。
感情を話すことができるようになると、相手の感情にも敏感になり、共感的な関係を築くことができます。自分が感情を表現するだけでなく、相手の感情を理解し、それに対して適切に反応することも、感情を共有するプロセスの一部です。
例:
- 「あなたも同じように感じたことがある?それについてどう思った?」
- 「それを聞いて少し驚いたけれど、あなたの気持ちを理解しようとしているよ」

リラクゼーションと身体感覚に注目する
アレキシサイミア(失感情症)のセルフケアや対処法の一つに、リラクゼーションと身体感覚に注目する方法があります。このアプローチは、感情を認識し表現する能力が低いアレキシサイミアにとって、身体感覚を通じて感情に気づくための重要なステップとなります。
- 方法: リラクゼーションの一環として、深呼吸やヨガ、漸進的筋弛緩法(筋肉を意識的に緊張させてから緩める方法)を行い、身体の感覚に集中します。身体にどんな変化や感覚が起きているかを丁寧に観察することがポイントです。
- 目的: アレキシサイミアでは、感情が身体的な症状として現れることが多いです。自分の体の感覚に意識を向けることで、感情に気づきやすくなります。例えば、肩のこりがストレスと結びついていることに気づくことで、感情を理解する手助けになります。
アレキシサイミアにおけるリラクゼーションと身体感覚への注目は、感情を認識しやすくするための重要なセルフケア方法です。これらのリラクゼーション法や身体感覚の練習を通じて、身体が感情にどのように反応しているかを理解し、感情の認識と表現をサポートします。
「リラクゼーションと身体感覚への注目」の具体的な練習方法や実践的なステップ
マインドフルネス瞑想は、今この瞬間に意識を集中させ、過去や未来にとらわれず、自分の身体感覚や感情に注意を向けることを目的とします。アレキシサイミアにとって、感情を認識するきっかけとなる実践です。
やり方:
- 静かな場所で座り、目を閉じて深呼吸をします。
- 体の各部位に注意を向け、どこに緊張があるかを感じ取ります(例えば、肩や首、胸、胃など)。
- 呼吸に意識を集中させ、吸う息と吐く息を観察します。息を吸うたびにリラックスを感じ、吐く息で緊張を手放すイメージを持ちます。
- 感情が浮かんできたら、その感情を否定せずにただ「今、こう感じているんだ」と受け入れる練習を行います。
プログレッシブ・マッスル・リラクゼーションは、身体の緊張を感じ取り、それを意識的に緩めることで、感情と身体の結びつきを強化する方法です。この方法を通じて、身体がどのように感情に反応しているかに気づきやすくなります。
やり方:
- 座るか横になり、目を閉じて深呼吸をします。
- 頭からつま先まで、各部位を一つ一つ緊張させ、その後で緩めます。例えば、拳を強く握り、その後で完全にリラックスさせます。これを順に全身で行います(肩、腕、脚、顔など)。
- 体の緊張が解ける感覚に集中し、それと共に心がどのように感じているかに注意を向けます。リラックスした体の感覚を、感情的な解放と結びつけることが目的です。
ボディスキャンは、身体の各部位に注意を向けることで、感情的な変化を察知する方法です。アレキシサイミアは、感情を言語化するのが難しい場合でも、身体感覚を通じて感情を理解することができます。
やり方:
- 静かな場所でリラックスした姿勢をとります。目を閉じて、ゆっくりと深呼吸します。
- 頭からつま先まで、順番に各部位に注意を向けます。例えば、「頭はどんな感じがするか?」「肩に緊張はないか?」など、体の各部分に焦点を当てます。
- 身体のどこに緊張や違和感があるかを意識し、そこに関連する感情があるかを探ります。例えば、「胃が緊張している=不安かもしれない」「肩が凝っている=ストレスを感じている」など。
- 感情と身体の反応を関連づけることを学び、自分の感情に気づく手助けをします。
ヨガやストレッチも、身体と感情をつなげる効果的な方法です。ゆっくりとした動作を通じて、筋肉の緊張を解きほぐしながら、心の緊張も解放します。ヨガのポーズは身体感覚を強化し、呼吸法と組み合わせることで感情の認識が促されます。
やり方:
- ヨガマットや布団の上で、簡単なストレッチやヨガのポーズを取り入れます。たとえば、猫と牛のポーズ(背骨を丸めたり反らせたりする動作)や、チャイルドポーズ(前屈してリラックスするポーズ)が効果的です。
- ストレッチ中に体の緊張を感じ、その緊張がどの感情と関連しているかを意識します。
- ポーズごとに呼吸を深くし、緊張と共に感情も解放するイメージを持ちます。
深呼吸や腹式呼吸は、リラックスを促し、感情のバランスを取り戻すのに役立ちます。特に、ストレスや不安を感じた時に行うことで、感情を落ち着け、体と心をつなげる効果があります。
やり方:
- 背筋を伸ばして座り、手をお腹の上に置きます。
- 鼻からゆっくり息を吸い込み、お腹を膨らませます。このとき、胸ではなくお腹に空気を送ることを意識します。
- 口からゆっくりと息を吐きながら、お腹を引っ込ませていきます。
- これを数回繰り返し、呼吸を通じて体がリラックスするのを感じます。緊張が解けた状態で、どのような感情が浮かんでくるかにも注意を向けます。
漫画や小説、映画を通じて感情を学ぶ
- 方法: 感情豊かなキャラクターが登場する漫画、小説、映画などを鑑賞し、その登場人物がどんな感情を感じているのかを観察します。そして、自分がその状況だったらどう感じるか、またその感情に名前をつける練習をします。
- 目的: 他者の感情表現を通じて、感情のバリエーションや状況に応じた反応を学ぶことができます。フィクションを通して、感情表現のヒントを得ることで、自分の感情認識能力を向上させることが可能です。
アートセラピーや創作活動
- 方法: 絵を描いたり、文章を書いたり、音楽を演奏したりする創造的な活動を通じて、感情を表現します。自分が感じていることを、言葉ではなくビジュアルや音楽などの形で表現していく方法です。
- 目的: 言語化が難しい感情でも、創作活動を通じて外に出すことで、感情の存在に気づきやすくなります。特に、感情を視覚化したり形にすることで、その感情について理解する手がかりになります。
感情について学ぶ
- 感情に関する教育: 感情の基本的な知識や理論を学ぶことで、感情の認識や表現に対する理解が深まります。書籍やオンラインのリソースを利用して、感情に関する教育を受けることが役立ちます。
- 心理教育: 自己理解を深めるために、心理学に関する基本的な知識を学ぶことも有益です。感情のメカニズムやその影響について学ぶことで、感情の認識が改善される可能性があります。
サポートを求める
- カウンセリングやセラピー: 認知行動療法(CBT)やアクセプタンス&コミットメントセラピー(ACT)など、感情認識を促進するための治療法を利用することができます。専門家と共に取り組むことで、感情の認識や表現が向上します。
- サポートグループ: 同じような問題を持つ人々と交流することで、感情に関する理解や支援を受けることができます。サポートグループに参加することで、共感や情報を得ることができます。
「アレキシサイミア」と「アンヘドニア」
「アレキシサイミア(失感情症)」とポジティブな情動を感じない「アンヘドニア」は、どちらも感情に関する問題ですが、それぞれ異なる特徴を持っています。アレキシサイミアは感情の認識と表現の困難さを指し、アンヘドニアは喜びや満足感を感じることができない状態を指します。
アレキシサイミアとアンヘドニアは異なる性質を持つものの、どちらも日常生活に大きな影響を及ぼし、対人関係や幸福感を損ねる要因となります。感情の認識とポジティブな情動の再体験を促すことが重要です。
アレキシサイミアは、ギリシャ語で「感情に名前をつけることができない」という意味で、「失感情症」とも呼ばれます。この状態の人は、主に次のような特徴や症状を示します。
- 感情の認識や表現が困難:アレキシサイミアの人は、何を感じているのかを自分で認識することが難しい場合が多く、また、それを他者に伝えるのも困難です。例えば、悲しみや怒りといった感情が湧き上がっても、その感情を言葉にして表現することができません。
- 身体的症状の訴え:自分の感情を「心の痛み」ではなく「体の痛み」として捉える傾向があります。例えば、緊張や不安が高まると、「胸が苦しい」や「胃が重い」といった身体的な不快感を感じますが、それを「不安」や「心配」という感情として捉えることが難しい場合があります。
- 想像力や空想の欠如:内面的な経験や空想に乏しく、感情を通じて世界を豊かに感じることが少ない傾向にあります。そのため、創造的な活動や感情豊かな対話が苦手です。
- 対人関係の困難:感情表現の不足や理解の欠如により、他者との関係が希薄になることが多く、対人関係で摩擦が生じやすくなります。
アレキシサイミアは、感情に気づく能力や、それを処理・表現する力の問題であり、必ずしも感情自体が欠如しているわけではありません。心理療法やカウンセリングを通じて、感情認識のスキルを少しずつ向上させる支援が有効とされています。
アンヘドニアは、通常の生活で喜びや満足感を感じることができない、もしくはその感覚が著しく低下する状態です。アンヘドニアは、うつ病や統合失調症、双極性障害などの精神疾患に多く見られる症状の一つです。主な特徴としては次のようなものがあります。
- 快楽や喜びの喪失:日常的に楽しみとして感じられていた活動に対して、関心や興味が薄れます。例えば、趣味や食事、対人関係などに喜びを感じにくくなり、感情が鈍くなる状態が続きます。
- 動機づけや意欲の低下:楽しいことをしても喜びが得られないため、活動に対する意欲が低下しやすくなります。例えば、友人と会うことや旅行など、以前は楽しんでいた活動も煩わしく感じることがあります。
- 二次的な孤立や社会的孤立:喜びを感じにくいため、社交的な場から離れることが増え、他者と距離を置くようになる傾向があります。これにより、孤独感や社会的な疎外感が強まります。
- ポジティブな情動の鈍麻:アンヘドニアの人は、幸福感や達成感といったポジティブな感情がわきにくいため、全体的に心の動きが抑制されることが多くなります。ネガティブな感情は感じやすい場合もありますが、ポジティブな情動に関してはほとんど感じられないことがあります。
違い
- アレキシサイミアは、感情を認識することが難しいため、感情を表現することや他者とのコミュニケーションが制限される状態です。
- アンヘドニアは、認識はできるものの、ポジティブな感情(特に喜び)を感じにくくなることにより、生活に満足感や幸福感を感じることが少なくなる状態です。
共通点と関連
- どちらも感情に関する問題を抱えており、対人関係や生活の満足度に影響を及ぼします。
- アレキシサイミアの人が感情を感じる力が乏しいため、アンヘドニアと似たような状態に陥ることもあります。喜びを認識できなければ、ポジティブな経験から満足感を得ることが難しくなり、アンヘドニア的な傾向が強まる可能性があります。
臨床支援の視点
アレキシサイミアやアンヘドニアの症状を持つクライエントには、心理療法や認知行動療法が有効です。
- アレキシサイミアのクライエントには、感情ラベリングの練習や感情認識のスキルアップを支援することが重要です。自分の気持ちを言語化することで、少しずつ感情表現の方法を身につける支援が行われます。
- アンヘドニアのクライエントには、活動に対する興味や関心を再び持てるよう、段階的な目標設定やポジティブな体験を再び体感する方法を学ぶ支援が有効です。また、日常生活の中で小さな達成感を得ることで、ポジティブな情動を再発見するサポートが行われます。
アレキシサイミアとアンヘドニアは異なる性質を持つものの、どちらも日常生活に大きな影響を及ぼし、対人関係や幸福感を損ねる要因となります。クライエントに合わせた支援を通じて、感情の認識とポジティブな情動の再体験を促すことが重要です。
失体感症(アレキシソミア/Arexisomia)については、次ページで解説しています。