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トラウマに対するACT療法の実践セッション

目次

PTSDや愛着障害のトラウマをもつクライエントに対するACT療法の実践セッションをセラピストとクライエントの具体的会話例から紹介

心的外傷後ストレス障害(PTSD)や愛着障害のトラウマに対して、アクセプタンス&コミットメントセラピー(ACT)が効果的である理由は、ACTの心理的柔軟性へのアプローチが、トラウマ体験やその後に生じる苦痛に対する適切な対処法を提供するからです。

PTSDや愛着障害は、トラウマに関連する感情や思考を避けようとすることが一般的ですが、この回避行動が長期的には症状を悪化させることにつながります。ACTは、これらの感情や思考を避けるのではなく、受け入れることを促すと同時に感情や思考に対して抵抗するのではなく、それらが存在しても、それに囚われずに生きるを学ぶことで、トラウマに関連する苦痛を減少させられます。このことを「感情の受容」と言います。

また、トラウマによる苦痛や症状がある限り、日常生活に重大な影響を及ぼすことから、ACTでは、自分にとって重要な価値観を見つけ、それに基づいた行動を選択することを支援し、クライエントの価値観に焦点を当てることで、トラウマによって制限されていた生活を取り戻し、より有意義な生活を送る手助けとなります。

特に、過去のトラウマに関連するフラッシュバックや過剰な警戒心が現れる場合に、マインドフルネスの実践は、現在の瞬間に意識を集中させ、過去のトラウマに対する反応を減少させる助けとなります。これにより、トラウマ体験からの距離を取ることができ、症状の軽減が期待できます。

多くは、トラウマに関連する固定的な思考や信念を持つことがありますが、これらの思考は、自己批判的であったり、絶望的であったりします。ACTは、これらの思考を柔軟に扱い、新しい視点を受け入れることで、より健全な認知を促進します。認知的柔軟性が高まることで、トラウマの影響をより効果的に処理できるようになります。

このページを含め、心理的な知識の情報発信と疑問をテーマに作成しています。メンタルルームでは、「生きづらさ」のカウンセリングや話し相手、愚痴聴きなどから精神疾患までメンタルの悩みや心理のご相談を対面にて3時間無料で行っています。

ACTにおいてセラピストとクライエントのセッション

クライエントのトラウマへの背景

私が物心ついたころを振り返ると、父親の存在はなく母親の愛情も感じたことがありませんでした。シングルマザーだと理解できるようになった小学生の低学年には、父親と名乗る男性が一緒に住むようになりましたが、私が身体への虐待を受けるようになったのは間もなくでした。それから中学卒業までネグレクトのような育て方をされてきました。そのような状態が災いして友達もできなく、いつも一人でいることが多く孤独を感じながら過ごしてきました。

私は働きながら定時制高校を卒業しましたが、社会に出てからも他人との交流方法がわからないために人付き合いを避けることが多く、特に男性に対して恐怖感を持ってしまい過度の警戒や不信感を抱いています。そんなことから、私は愛着障害とPTSDをもっているのではないかと考えています。

一番の悩みは、義理の父親からの暴力の記憶が抜けなくトラウマになっています。夜寝ていても思い出され目が覚めることがあり、生活上で男性の大きい声を聞いただけでも恐怖感が現れ胸が苦しくなります。それと同時に、義理の父親には悔しい思いだけでなく、強い恨みが湧いてきて一人で動揺することがあります。

先ずは、父親から仕打ちを受けた悪い記憶を和らげたいと思っています。また、母親の愛情も感じてみたいと思っています。ただし、私は中学生を卒業してから家族との接点がありません。家族から逃げるように自分で働きながら定時制高校に進学しています。その後で構いませんが、他人とのコミュニケーションが少しでもとれるようになりたいと思っています。

このケースに対するアクセプタンス&コミットメントセラピー(ACT)のアプローチは、クライエントが過去のトラウマや虐待の影響から解放され、より充実した生活を送るために、感情や思考への受容と価値観に基づく行動を促進するものです。

トラウマに対するACTセッション-簡潔編

STEP
導入・ラポール形成
STEP
セッションの始まり

セラピスト: 「今日はお越しいただきありがとうございます。お話ししていただいた背景をもとに、あなたの感じている苦しみや悩みを一緒に探っていけたらと思います。まずはリラックスして、何でも自由にお話しください。」

クライエント: 「はい、ありがとうございます。何から話せばいいのかわからないですけど…。」

セラピスト: 「無理に順序立てて話さなくても大丈夫です。あなたが思い浮かぶことからお話しいただければ、それで十分です。」

STEP
信頼関係の構築

セラピスト: 「ここでは、あなたの感情や思考が否定されることはありません。どんな感情でも、私たちはそれを一緒に受け入れ、理解していくつもりです。」

クライエント: 「そう言ってもらえると少し安心します。」

STEP
アクセプタンス(Acceptance)
STEP
感情の受容

セラピスト: 「あなたが経験したことはとても辛いものでしたね。そのことを思い出すと、どんな感情が湧いてきますか?」

クライエント: 「怒りと悲しみです。そして、時々それが自分自身に対する嫌悪感に変わることもあります。」

セラピスト: 「その感情は、あなたの体験に対する自然な反応です。それを否定するのではなく、その感情があなたの中にあることを認めてみましょう。これは、感情が存在していても、それに支配される必要はないということを意味します。」

STEP
体験の承認

セラピスト: 「辛い思い出があなたにどんな影響を与えたかを考えることも大切ですが、その前に、あなたがその時に感じた感情や体験を正当なものとして受け入れることを試みましょう。」

クライエント: 「自分の感情が正当なものだと認めるのは、少し難しいです。」

セラピスト: 「それも自然な感覚です。少しずつで構いません。感情が湧き上がってきた時に、それを否定せずに、ただ『これは私の感じていることだ』と認識してみてください。」

STEP
認知デフュージョン(Cognitive Defusion)
STEP
思考との距離を置く練習

セラピスト: 「過去の記憶が強く思い出されると、それが今も起こり得る現実であるかのように感じてしまうことがありますよね。でも、その思考や記憶は、今のあなたに影響を与えるただの『言葉』や『イメージ』であることを認識していきます。」

クライエント: 「言葉やイメージ…?」

セラピスト: 「そうです。例えば、義理の父親のことを思い出すとき、そのイメージがあなたにとってどんな影響を与えるか考えてみましょう。その思考を『ただの思考』として見る練習をしてみませんか?」

STEP
具体的な練習

セラピスト: 「例えば、『私は何もできない』という思考が浮かんだときに、それをそのまま受け入れるのではなく、『私は何もできないという思考が今浮かんでいる』と認識してみるのです。どう感じますか?」

クライエント: 「少し距離が置けるような気がします。」

セラピスト: 「それがデフュージョンです。思考に距離を置くことで、それがあなたの行動を制限することを防ぎます。」

STEP
現在の瞬間に焦点を当てる(Present Moment Awareness)
STEP
マインドフルネスの導入

セラピスト: 「今、私たちがここで一緒にいるこの瞬間に、あなたが感じていることに意識を向けてみましょう。今、何を感じていますか?」

クライエント: 「少し緊張しているかもしれません。でも、セッションが進むにつれて少し楽になってきました。」

セラピスト: 「その感覚に注意を向けることが、現在の瞬間に生きているということです。過去や未来に囚われることなく、今ここに意識を向けることで、あなたがコントロールできることに集中することができます。」

STEP
呼吸法の練習

セラピスト: 「呼吸に意識を向けてみましょう。ゆっくりと息を吸って、ゆっくりと吐きます。この呼吸に集中することで、今この瞬間に意識を向けることができます。」

クライエント: 「呼吸に集中すると、少し落ち着きますね。」

STEP
自己観察(Self-as-Context)
STEP
自己との新しい関係

セラピスト: 「あなたが経験したことや感じていることは、あなたの一部ですが、それがあなた全体ではありません。あなたは、それらの経験を超えて存在しているのです。」

クライエント: 「それを理解するのは難しいですが、興味深いです。」

セラピスト: 「私たちは自分の感情や思考を観察し、それらをただの『経験』として捉えることができます。感情や思考は自分の全体を決定するものではないと考えることが、自己観察の始まりです。」

STEP
新しい視点の提供

セラピスト: 「例えば、あなたが過去に経験したトラウマはあなたにとって重要な出来事ですが、それはあなたが何者であるかを完全に定義するものではありません。それを理解することで、自己との新しい関係を築くことができます。」

クライエント: 「その視点を持つことで、少し気が楽になるかもしれません。」

STEP
価値観の明示(Values Clarification)
STEP
価値観の探求

セラピスト: 「今、私たちはあなたの中で何が本当に重要かを探っていきます。あなたが大切にしている価値観は何でしょうか?」

クライエント: 「私は、自分が愛されていると感じたいし、自分が他人を信頼できるようになりたいです。」

セラピスト: 「それは素晴らしい価値観です。では、その価値観に基づいて、どのような行動をとることができるか、一緒に考えてみましょう。」

STEP
価値観に基づく目標設定

セラピスト: 「あなたが愛されていると感じるためには、どんな行動が必要だと思いますか?」

クライエント: 「他人との関わり方を少しずつ学びたいです。そして、少しずつ信頼を築いていきたいです。」

セラピスト: 「それは素晴らしい目標です。価値観に基づいた行動をとることで、過去のトラウマに囚われず、より充実した人生を送ることができます。」

STEP
コミットメント行動(Committed Action)
STEP
具体的な行動計画

セラピスト: 「最後に、これからの一週間でどのような行動をとるか、具体的に計画してみましょう。小さな一歩で構いません。」

クライエント: 「まずは、職場で一人の同僚と少し話すことから始めたいです。」

セラピスト: 「素晴らしいですね。その行動があなたの価値観に沿ったものであることを意識しながら、無理のない範囲で進めていきましょう。」

STEP
継続的なサポート

セラピスト: 「この行動を通じて得られた感情や思考を次回のセッションで一緒に振り返りましょう。

トラウマに対するACTセッション-詳細編

ACT6ステップのための一人でできるトレーニング「マインドフルネス・エクササイズ・フレームワーク」をご覧ください。

STEP
導入・ラポール形成

導入とラポール形成は、セラピストとクライエントの信頼関係を築く重要なステップです。この段階では、クライエントが安心感を持ち、セラピストと一緒に取り組む意欲を高めることを目指します。

導入とラポール形成の段階では、クライエントが安心して話せる環境を整えることが最優先です。セラピストは、クライエントのペースに合わせて進行し、無理をせずに信頼関係を築くことが重要です。この信頼関係が後のACTセッションの基盤となり、クライエントが自己受容や価値観に基づいた行動に取り組む意欲を高める手助けとなります。

導入・ラポール形成

STEP
セッションの始まり

セラピスト:
「こんにちは、今日はお越しいただきありがとうございます。お会いできて嬉しいです。私は[セラピストの名前]です。どうぞリラックスして、今日はどんなお話をしても構いませんから、気軽に話してください。」

クライエント:
「こんにちは…今日はよろしくお願いします。」

セラピスト:
「こちらこそ、ありがとうございます。まずは、今日ここに来てくださったことを大切にしたいと思っています。これから一緒にセラピーを進めていく中で、あなたがどんなことを大切に感じているのか、どんなことが気になっているのかを、少しずつお話ししていただけると嬉しいです。」

STEP
セッションの進行

セラピスト:
「少し、あなたのこれまでの経験についてお聞きしたいのですが、大丈夫ですか?無理に話す必要はありませんから、話したいと思ったことを少しずつ教えてください。」

クライエント:
「…実は、過去にすごくつらい経験をしました。父親代わりだった人から虐待を受けていて、そのことがずっと心に残っています。」

セラピスト:
「お話ししてくださってありがとうございます。とても大変な経験をされたのですね。ここでは、そのような体験を共有することで、少しでも負担を軽くするお手伝いができたらと考えています。あなたが感じていること、考えていることを尊重しながら、ゆっくりと進めていきましょう。」

クライエント:
「ありがとうございます。正直、今でもそのことが頭から離れなくて、夜もよく眠れないんです。」

セラピスト:
「そのような夜を過ごすのは本当に苦しいですよね。ここでは、そうした感情や経験に対して、どのように向き合っていけるか、一緒に探っていければと思っています。まずは、あなたが安心してこの場所にいることができるように努めていきたいと思っています。」

STEP
信頼関係の構築

セラピスト:
「私たちのセッションは、あなたが安全だと感じることが一番大切です。何か心配なことや不安に思うことがあれば、いつでも教えてくださいね。その場で解決できるように一緒に考えます。」

クライエント:
「…安心しました。自分のことを話すのが少し怖かったけど、話せる気がしてきました。」

セラピスト:
「そう言っていただけて嬉しいです。ゆっくりと進めていきましょう。そして、この場所があなたにとって安心できる場所になれるように、私は全力を尽くしていきます。」

STEP
感情の確認と安心感の強化

セラピスト:
「これからも、あなたのペースでお話ししていきましょう。もし、何か感じたことや気になることがあれば、その時にお話しください。私たちは一緒にこの道のりを進んでいくことになります。」

クライエント:
「わかりました。少しずつでいいなら、やってみたいと思います。」

セラピスト:
「それで十分です。少しずつ、一歩ずつ、一緒に進んでいきましょう。」

STEP
アクセプタンス(Acceptance)

アクセプタンスのステップでは、過去の出来事から感じる自分の感情や感覚に対して抵抗するのではなく、それらを受け入れることを目指します。アクセプタンスは、苦痛や不快な感情を無理に排除しようとするのではなく、それらが存在しても価値ある人生を送るための第一歩です。

アクセプタンスのステップでは、クライエントが自分の感情や感覚に対して無理に抵抗するのではなく、それらを受け入れることを学びます。セラピストはクライエントが感じる恐怖や不安を尊重し、その感情と向き合うための安全な空間を提供しながら、少しずつ感情の受容を促します。このプロセスを通じて、クライエントは苦痛な感情に対する新しい対処方法を学び、より自由に価値ある行動を選択できるようになります。

アクセプタンス

STEP
セッションの始まり

「前回のセッションで、過去の経験やその影響について少しお話をしていただきましたね。今日は、その感情や経験にどのように向き合っていけるのかを一緒に考えてみたいと思いますが、いかがでしょうか?」

クライエント:
「はい…正直、まだ少し怖いです。でも、何とかして前に進みたいと思っています。」

セラピスト:
「その気持ちはとても大切ですね。今日は、その恐怖や不安に対して、無理に排除しようとせずに、少しずつ受け入れていくという方法についてお話ししてみたいと思います。まず、恐怖や不安があなたにとってどのようなものか、少しお話しいただけますか?」

STEP
感情や思考の観察と受容

クライエント:
「…過去のことを思い出すと、本当に怖くて、心臓がバクバクして、逃げ出したくなります。でも、それを無理に忘れようとしても、逆にそのことばかり考えてしまうんです。」

セラピスト:
「そうですね、無理に忘れようとすればするほど、そのことがますます頭から離れなくなることがあります。例えば、場面の映像や言葉、音や匂いなども感じたり、思い出されることもありますね。でも、少しだけその感情や感覚をただ感じてみましょうか。もし怖くなったら、その時点で止めても構いません。」

クライエント:
「わかりました…。でも、正直怖いです。」

セラピスト:
「それで大丈夫です。怖いという気持ちは、あなたがそれだけの経験をしてきた証でもあります。無理にその気持ちを消そうとしなくてもいいんです。ただ、その感情や感覚が今ここにあることを認識してみましょう。深呼吸をしてみて、少しずつで構いませんから、その感情を感じてみてください。」

クライエント:
「…(深呼吸しながら)まだ怖いです。でも、少し感じることができているかもしれません。」

STEP
感情との共存と受容の強化

セラピスト:
「素晴らしいですね。今、怖さがまだあることを感じながらも、その感情を感じ続けることができているんですね。それはとても大きな一歩です。この感情は、あなたの過去の経験から生まれた自然な反応です。そして、それが今ここにあることを許すことで、あなた自身がそれとどう向き合うかを選ぶ自由が少しずつ生まれてきます。」

クライエント:
「少し楽になってきた気がします。まだ完全には受け入れられていないけど、逃げ出したい気持ちは少し和らぎました。」

セラピスト:
「それは素晴らしい進展です。受け入れるということは、必ずしもその感情が心地よくなるという意味ではありません。むしろ、その感情が存在しても、あなたがそれにどう反応するかを選べるようになることです。少しずつ、この感情と共にいる練習を続けてみましょう。そして、必要な時には私がサポートします。」

STEP
アクセプタンスの実践

セラピスト:
「次に、感情を受け入れるという練習を、日常生活の中で少し取り入れてみることを提案したいと思います。例えば、次に不安や恐怖を感じたときに、今と同じように深呼吸をして、その感情を感じてみてください。そして、その感情があることをただ認識してみましょう。どうでしょうか?」

クライエント:
「やってみます。でも、できるかどうか少し不安です。」

セラピスト:
「それは当然のことです。新しいことを試すのは勇気が必要ですが、あなたにはその勇気があります。うまくいかなくても構いません。その時の感情をそのまま感じることが大切です。そして、次のセッションでその経験を一緒に振り返りましょう。」

クライエント:
「わかりました。少し怖いけど、やってみます。」

セラピスト:
「その意欲がとても大切です。一緒にこのプロセスを進めていきましょう。そして、どんな結果でも、それを受け入れて次のステップを考えましょう。」

STEP
認知デフュージョン(Cognitive Defusion)

認知デフュージョンのステップでは、クライエントが自分の思考や信念に過度に巻き込まれるのではなく、それらを客観的に観察し、思考が必ずしも現実や真実を反映しているわけではないことを理解することを目指します。これにより、思考にとらわれず、より柔軟に行動することができるようになります。

認知デフュージョンのステップでは、クライエントが思考に巻き込まれることなく、それを客観的に観察し、思考と現実との間に距離を持つことを学びます。セラピストはクライエントが思考に対して柔軟な視点を持ち、それによって苦痛を軽減し、より自由な行動選択ができるようにサポートします。

認知デフュージョン

STEP
セッションの始まり

セラピスト:
「前回は、あなたが持っている感情や記憶に対して少しずつ受け入れていくというお話をしましたね。今日は、思考について少しお話ししてみたいと思います。日常生活の中で、あなたの頭の中に浮かんでくる考えや言葉について、どう感じていますか?」

クライエント:
「そうですね、よく“私は価値がない”とか、“誰も私を愛してくれない”という思いが浮かんできます。それが頭の中で繰り返されると、すごく苦しくなって、何も手につかなくなるんです。」

セラピスト:
「それは辛いですね。その思考が頭の中に浮かぶと、まるでそれが真実であるかのように感じてしまうことはありませんか?」

クライエント:
「はい、そうなんです。そう感じると、その通りだと思ってしまって、どんどん落ち込んでしまいます。」

STEP
認知デフュージョンの導入

セラピスト:
「そのように感じるのは自然なことです。思考は私たちに強い影響を与えますが、今日お話ししたいのは、その思考が必ずしも真実ではないという視点です。例えば、‘私は価値がない’という思いが浮かんできたとき、それをそのまま真実だと受け取るのではなく、それが「ただの言葉」として浮かんでいるに過ぎないという見方をしてみます。そこで、思考と現実が混同されて影響を受けていることを確認するため少し試してみましょうか?」

クライエント:
「どうやってやるんですか?」

STEP
デフュージョンの実践例

セラピスト:
「まず、目を閉じてリラックスしてみましょう。そして、‘私は価値がない’という思考が浮かんできたときに、それをそのまま受け取るのではなく、その‘私は価値がない’という言葉を頭の中で20秒くらい繰り返しながら、‘これはただの言葉だ’と自分に言い聞かせてみてください。」

クライエント:
「(目を閉じて)…‘私は価値がない’…‘これはただの言葉だ’…でも、まだその思いが消えません。」

セラピスト:
「その思考が消えなくても大丈夫です。今は、その思考に巻き込まれずに、ただ観察していることが重要です。次に、その思考を少し変えてみましょう。‘私は価値がない’という思考に『私はと、という思考を持っている』を付け加えて、『‘私は、「価値がない」という思考を持っている’』と言い換えてみてください。」

クライエント:
「(少し戸惑いながら)…‘私は、価値がないという思考を持っている’…」

セラピスト:
「どう感じますか?」

クライエント:
「少し距離ができたような気がします。まだ悲しいけど、その思考が自分自身ではないような感じです。」

セラピスト:
「それは素晴らしい変化です。今、あなたはその思考と自分との間に少し距離を持つことができましたね。思考が浮かんできたとき、それをそのまま自分自身だと感じるのではなく、「ただの言葉」や「考え」として見ることで、その影響力を弱めることができます。」

STEP
認知デフュージョンの応用と強化

セラピスト:
「今度は、その思考をもう少し遊び心を持って見てみましょう。例えば思考の言葉を面白い声や、アニメキャラクターの声で言ってみるとどうなるか試してみましょうか。」

クライエント:
「えっ、そんなことしていいんですか?」

セラピスト:
「はい、大丈夫です。これは、思考が単なる言葉であり、私たちに対して力を持ちすぎないようにするための方法です。少し笑えるような声で言ってみてください。」

クライエント:
「(アニメキャラクターの声を真似しながら)…‘私は価値がない’…あはは、なんだかバカバカしく聞こえます。」

セラピスト:
「そうですね、それはまさに思考が単なる言葉であり、私たちがそれをどう受け取るかによって、その意味が変わることを示しています。このようにして、思考に対する新しい視点を持つことができると、その影響力が減り、より自由に行動することができるようになります。」

クライエント:
「なるほど…。思考に振り回されるのではなく、「ただの言葉」として見ることができれば、もっと楽になれるかもしれません。」

セラピスト:
「その通りです。これから、日常生活の中でもこの練習を続けてみてください。辛い思考が浮かんできたときに、それをただの言葉として観察し、それにどう反応するかを選ぶことができるようになります。そして、次のセッションでその経験を振り返りながら、さらにこのスキルを強化していきましょう。」

STEP
現在の瞬間に焦点を当てる(Present Moment Awareness)

現在の瞬間に焦点を当てる(Present Moment Awareness)は、クライエントが過去のトラウマや将来の不安にとらわれることなく、今この瞬間に注意を向けることを学ぶプロセスです。このステップでは、マインドフルネスの技法を通じて、クライエントが現在の感覚や経験に気づき、それに対して非判断的な態度を持つことを目指します。

「現在の瞬間に焦点を当てる」セッションでは、クライエントが過去や未来にとらわれることなく、今この瞬間に注意を向けるための技法を学びます。セラピストは、クライエントがマインドフルネスを通じて現在の感覚や思考に気づき、それに対して非判断的な態度を持てるようサポートします。

現在の瞬間に焦点を当てる

STEP
セッションの始まり

セラピスト:
「今日は、現在の瞬間に焦点を当てる練習をしてみたいと思います。過去の記憶や将来の不安にとらわれることがよくありますが、そうしたときに、今ここで感じていることに注意を向けることで、心の安定を取り戻すことができるようになります。」

クライエント:
「確かに、過去のことばかり考えてしまって、今を楽しむことができないことが多いです。」

セラピスト:
「そうですね。過去や未来に気持ちが引きずられるのは自然なことですが、今日は少しずつ今この瞬間に注意を向ける練習をしてみましょう。まずは、リラックスして座っていただけますか?」

クライエント:
「はい。(姿勢を整える)」

STEP
マインドフルネスの導入

セラピスト:
「では、目を閉じて、ゆっくりと深呼吸をしてみましょう。息を吸うときにお腹が膨らむのを感じ、息を吐くときにお腹がゆっくりと縮むのを感じてみてください。」

クライエント:
「(ゆっくりと深呼吸をしながら)…」

セラピスト:
「呼吸に集中しながら、自分の体が今どのように感じているかを観察してみてください。椅子に座っている感覚、足が床に触れている感覚、手が膝の上に置かれている感覚に気づいてみてください。」

クライエント:
「…手が温かく感じます。床に足がしっかりとついている感じがします。」

STEP
現在の瞬間への注意を向ける

セラピスト:
「とても良いですね。今、この瞬間の感覚に意識を向けることができています。次に、周りの音に注意を向けてみましょう。部屋の中や外で聞こえる音に気づいて、その音がどんな感じかを観察してみてください。」

クライエント:
「…時計の音が聞こえます。遠くで車が通る音もします。」

セラピスト:
「その音をただ聞き、評価せずにそのまま観察してください。音が消えるときも、その消えていく感覚に注意を向けてみましょう。」

クライエント:
「音が遠ざかっていく感じがします。なんだか、音が気にならなくなってきました。」

セラピスト:
「素晴らしいですね。その感覚に気づくことができています。今度は、心の中で何か考えが浮かんできたときに、その考えをただ観察して、浮かんでは消える様子を感じ取ってみてください。その考えが出てきたら、それにとらわれず、ただ‘今、こういう考えが浮かんでいる’と気づくだけにしてみましょう。」

クライエント:
「…何か言葉が浮かんできましたが、特に意味を持たせずに流すようにしています。」

セラピスト:
「とても良いですね。考えが浮かんでも、それに引きずられるのではなく、ただの一時的なものとして観察できています。このように、過去や未来に心がとらわれそうになったときに、今ここで感じていること、体の感覚や周りの音、呼吸に意識を戻すことで、心が安定しやすくなります。」

STEP
練習の応用と振り返り

セラピスト:
「今日の練習はここまでですが、このようなマインドフルネスの練習を日常生活の中でも取り入れてみてください。何か不安や恐怖が湧いてきたときに、まずは呼吸に注意を向けて、今の瞬間に意識を戻すことで、落ち着きを取り戻せるかもしれません。」

クライエント:
「確かに、今ここに意識を向けることで少し安心感が出てきました。これを続けることで、もっと落ち着けるようになる気がします。」

セラピスト:
「その通りです。少しずつ練習を重ねていくことで、過去や未来にとらわれることなく、現在の瞬間を感じながら生活できるようになります。そして、次回のセッションでもまたこの感覚を確認しながら、さらに深めていきましょう。」

STEP
自己観察(Self-as-Context)

自己観察(Self-as-Context)は、クライエントが自分自身を「観察する存在」として捉え、思考や感情、経験から切り離して、自分を客観的に見つめることを学ぶプロセスです。このアプローチは、クライエントが自分を固定された「自己」としてではなく、常に変化する経験を観察し、受け入れる「自己」として認識することを促します。

自己観察のセッションでは、クライエントが自分自身を「観察する存在」として認識し、感情や思考に左右されることなく、客観的に自分を見つめる力を養うことを目指します。セラピストは、クライエントがこの視点を実践できるよう、具体的な練習を通じてサポートします。このプロセスを通じて、クライエントは過去のトラウマや感情から距離を取り、より安定した自己を築くことができます

自己観察

STEP
セッションの始まり

「今日は、自己観察というテーマで話を進めていきたいと思います。これまでのセッションで、過去のトラウマや現在の瞬間に意識を向ける練習をしてきましたが、今回はその意識を少し広げて、自分自身をどう捉えるかについて考えてみましょう。」

クライエント:
「自分自身をどう捉えるか、ですか?」

セラピスト:
「そうです。私たちは日常の中で、自分のことを‘私’として感じていますが、その‘私’が固定されたものであるかのように考えてしまうことが多いです。でも実は、‘私’という存在は、様々な経験や感情、思考を観察する存在であるとも言えます。このことを、自己観察という視点で考えてみましょう。」

STEP
自己観察の導入

セラピスト:
「例えば、あなたが今まで経験してきたことを思い出してみてください。いい思い出もあれば、つらい思い出もあると思います。それらすべての経験を、ある視点から見ている‘あなた’がいます。その‘あなた’は、どんな状況でも変わらずに存在している観察者です。」

クライエント:
「観察者…?少し難しいですが、なんとなく分かります。自分の経験を見ている別の‘私’がいる感じでしょうか。」

セラピスト:
「その通りです。過去のトラウマやつらい思い出は、もちろん私たちに影響を与えますが、それを観察する存在としての‘あなた’は、実はその経験とは切り離されたものなんです。この‘観察者’としての自分を意識することで、思考や感情に振り回されることなく、より安定した視点を持つことができるようになります。」

クライエント:
「でも、どうやってその‘観察者’の感覚をつかめばいいのでしょうか?」

STEP
自己観察の練習

セラピスト:
「では、少し練習してみましょう。まず、目を閉じて、少し前にあった出来事を思い出してみてください。それが良い出来事でも、悪い出来事でも構いません。そして、その出来事に関する考えや感情が浮かんできたら、それを観察する‘あなた’がいることを意識してみてください。」

クライエント:
「…あ、なんとなくわかる気がします。過去の出来事が浮かんできて、それに対する自分の気持ちも出てきますが、その気持ちを冷静に見ている‘私’がいる感じがします。」

セラピスト:
「素晴らしいです。そうやって、自分の感情や思考を観察する‘あなた’がいることに気づくことが、自己観察の第一歩です。その‘あなた’は、過去の経験や感情に左右されることなく、ただそれを見つめる存在です。この感覚を日常の中でも意識してみましょう。」

クライエント:
「なるほど、これが自己観察なんですね。少し気持ちが軽くなった気がします。」

セラピスト:
「その通りです。この視点を持つことで、トラウマやつらい感情に飲み込まれることなく、それらを冷静に見つめることができるようになります。そして、あなたはいつでもこの‘観察者’としての視点に立ち戻ることができます。」

STEP
応用と振り返り

セラピスト:
「今日は、自己観察の感覚をつかむための練習をしました。この練習を続けることで、過去の記憶や感情にとらわれることなく、それを観察することで少しずつ距離を取ることができるようになります。次回のセッションでは、この感覚をさらに深めていきましょう。」

クライエント:
「はい、少しずつやってみたいと思います。これができるようになると、もっと楽になれる気がします。」

セラピスト:
「その気持ちを大切にして、続けていきましょう。あなたが観察者として自分を見つめることができるようになることで、過去や感情に対する新しい見方が生まれてくるはずです。」

自己観察の具体的ケース

「自己観察(Self-as-Context)」では、自分が感じている感情や思考を単なる「現象」としてラベリングし、それを「観察している自分」を意識することで、感情や思考に飲み込まれずに済むようにすることができます。この練習を繰り返すことで、過去のトラウマや強い感情に対して距離を置き、冷静に対処する力を養うことができます。

義理の父親の虐待シーンのトラウマとして記憶がフラッシュバックしている際の自己観察
STEP
気づきのステップ

フラッシュバックが起こったとき、まず「今、自分の心にどんな映像や記憶が浮かんでいるのか」を意識します。たとえば、「義理の父親に暴力を振るわれたシーンが今、頭の中に強く浮かんでいる」と認識します。

STEP
ラベリングのステップ

この体験を「ただの記憶」または「過去の出来事の思い出」とラベル付けします。「これは今起きている現実ではなく、過去の記憶が再生されているだけだ」と自分に言い聞かせます。

STEP
観察者としての自分を意識するステップ

自分を「その記憶や感情をただ見つめている存在」として位置づけます。「私は今、この記憶を思い出しているが、それは過去のものだ。私は今、この記憶をただ観察しているだけだ」と感じます。

STEP
呼吸を整える

深呼吸をしながら、自分が今いる場所(例えば、セラピストの部屋や自分の家)が安全であることを感じ、自分が過去の記憶とは別の「今ここ」にいることを意識します。

生活上で男性の大きい声を聞いただけでも恐怖感が現れ胸が苦しくなる際の自己観察
STEP
気づきのステップ

恐怖感が急に襲ってきたとき、「今、自分は男性の大きな声を聞いて恐怖を感じている」ということに気づきます。

STEP
感情と身体反応のラベリング

恐怖感と胸の苦しさを「これは恐怖という感情であり、それが胸の圧迫感として表れている」とラベル付けします。「私は今、恐怖を感じていて、それが胸に重くのしかかっている」と観察します。

STEP
観察者としての自分を意識するステップ

自分を「恐怖という感情と身体反応をただ見つめている存在」として捉えます。「私は今、恐怖感が現れているのを観察している。それはただの感情であり、私はその感情を感じている自分を観察しているだけだ」と意識します。

STEP
地に足をつける

今いる現実に注意を向け、深呼吸をしながら、自分がどこにいて、何をしているのかを再確認します。「私は今、安全な場所にいて、この恐怖は現実の危険を表しているわけではない」と感じることを目指します。

価値観の明示コミットメント行動4種6ケース

価値観の明示(Values Clarification)は、クライエントが自分の人生において何が本当に大切なのかを明確にし、それに基づいて行動するための指針を見つけるプロセスです。これにより、クライエントは人生の方向性を見失わず、充実感や満足感を得ることができます。

コミットメント行動(Committed Action)は、クライエントが自分の価値観に基づいた行動を実際に起こし、それを持続していくためのプロセスです。このステップでは、クライエントが日常生活の中でどのようにして価値観に基づく行動を取り続けるかを具体的に計画し、その行動を実行し続けるためのサポートを行います。

クライエントの今後の希望

一番の悩みは、義理の父親からの暴力の記憶が抜けなくトラウマになっています。夜寝ていても思い出され目が覚めることがあり、生活上で男性の大きい声を聞いただけでも恐怖感が現れ胸が苦しくなります。それと同時に、義理の父親には悔しい思いだけでなく、強い恨みが湧いてきて一人で動揺することがあります。

先ずは、父親から仕打ちを受けた悪い記憶を和らげたいと思っています。また、母親の愛情も感じてみたいと思っています。ただし、私は中学生を卒業してから家族との接点がありません。家族から逃げるように自分で働きながら定時制高校に進学しています。その後で構いませんが、他人とのコミュニケーションが少しでもとれるようになりたいと思っています。

このようにクライエントの価値観の明示とコミットメント行動の優先順位としての1番は、「父親から仕打ちを受けた悪い記憶を和らげたいと思っています」。2番は、「母親の愛情も感じてみたいと思っています」。3番は、「他人とのコミュニケーションが少しでもとれるようになりたいと思っています」。この3点とクライエントが将来「家族とつながりが持てた際の回復を目標とします」。を想定して4種6ケースを挙げてみます。

父親の記憶を和らげる:コミットメント1⃣

STEP
価値観の明示(Values Clarification)

「義理の父親からの暴力の記憶が抜けなくトラウマになっている」というクライエントの要望に対して、ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)における価値観の明示(ValuesClarification)を行うセッションの一例を、具体的な会話形式でご紹介します。このセッションの目的は、クライエントが自分にとって本当に大切な価値観を明らかにし、それに基づいてトラウマへの対処法を見つけることです。

STEP
セッションの開始

セラピスト:
「今日は、義理の父親から受けた暴力の記憶についてお話を伺いましたが、その記憶が現在もあなたにとってとても辛いものだということがよくわかりました。まずは、その辛い記憶にどう向き合っていきたいかを一緒に考えてみましょう。そして、今日は特に、あなたにとって本当に大切なもの、つまり価値観について少し掘り下げていきたいと思います。」

クライエント:
「はい、その記憶がいつも頭から離れなくて、どうすればいいのか分からなくて…。」

STEP
価値観の探求

セラピスト:
「その記憶があなたに与えている影響について、今までのセッションでもたくさんお話してきましたね。その中で、あなたがこの記憶と向き合うことで何を大切にしたいと思っているのか、もう少し詳しくお聞かせいただけますか?」

クライエント:
「そうですね…やっぱり、まずはこの記憶から解放されたいというのが一番です。でも、それだけじゃなくて、何かもっと自分が安心できる場所や感覚が欲しいんです。」

セラピスト:
「なるほど。安心感や安全を感じたいということですね。それは非常に重要な価値観です。安全や安心感を持つために、どんなことができると思いますか?例えば、今後どのようにしてこの記憶と向き合っていくと、その価値を実現できると感じますか?」

クライエント:
「うーん…今はその記憶をどうにかして忘れたい、消したいと思っています。でも、いつもそう思うと逆に思い出してしまうんです。」

セラピスト:
「その気持ち、とてもよく理解できます。無理に記憶を消そうとすると、かえって強く意識してしまうことがありますよね。そこで、少し視点を変えて、あなたがこの記憶と共存しながらでも、安心感や安全を感じるためには、どんな方法があるかを一緒に考えてみましょうか?」

クライエント:
「共存…?それって、記憶を無くすんじゃなくて、何か違う方法で対処するってことですか?」

セラピスト:
「そうです。記憶を無理に消そうとするのではなく、その記憶があなたに与えている影響を少しでも和らげるために、どうしたら良いかを考えることです。例えば、どんな環境や状況であなたが少しでも安心できるか、それを探してみるのも一つの方法です。」

クライエント:
「なるほど…。もしかしたら、何かをしている時に少し安心できるかもしれません。例えば、趣味とか…。」

セラピスト:
「趣味を通じて安心感を得ることも素晴らしい方法です。では、もう少し掘り下げてみましょう。今後、あなたが安心感を大切にしながら生活していくために、具体的にどんなことをしていきたいですか?」

クライエント:
「今のところは、まずその記憶が頭に浮かんだ時に何か別のことに集中するようにしてみたいです。それから、もっと自分が安全だと感じられる環境を作りたいです。」

セラピスト:
「その具体的な行動、素晴らしいですね。それは、あなたが安心感という価値観を実現するための大切な一歩です。記憶が浮かんだ時にどう対応するかを決めることで、少しずつ自分の感情をコントロールできるようになるかもしれません。」

STEP
次のステップ

セラピスト:
「これから、記憶が浮かんだ時にどう対応するか、そして安心感を得るためにどんな行動を取るかを一緒に計画していきましょう。また、あなたが本当に大切にしている価値観に基づいて、どんな未来を築いていきたいかも考えてみましょうか。」

クライエント:
「そうですね、少しずつでも、何か行動に移していけるようにしたいです。」

セラピスト:
「焦らずに、少しずつで大丈夫です。これから一緒にそのステップを踏んでいきましょう。次回も、この価値観に基づいてさらに深く考えていけたらと思います。」

このセッションでは、クライエントが自分の価値観、特に「安心感」や「安全」という価値観を明示し、それを実現するための具体的な行動を探るプロセスを進めました。クライエントがトラウマにどう向き合い、どんな価値を大切にしていくかを明確にすることで、トラウマの影響を軽減し、より前向きな生活を築くための道筋を描いていくことができるようになります。

STEP
コミットメント行動(Committed Action)

「義理の父親からの暴力の記憶が抜けなくトラウマになっている」というクライエントの要望に対するACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)のコミットメント行動(Committed Action)を扱うセッションの一例を、具体的な会話形式で紹介します。コミットメント行動のセッションでは、クライエントが自身の価値観に基づいて具体的な行動を取るための支援を行います。

STEP
セッションの開始

セラピスト:
「前回のセッションで、あなたが大切にしている価値観、特に『安心感』や『安全』について話しましたね。それに基づいて、今日は具体的にどんな行動を取っていくかを考えてみましょう。これを『コミットメント行動』と呼びます。」

クライエント:
「はい、少しずつ行動に移していけたらいいなと思っています。でも、どうやって進めたらいいかがまだ不安です。」

セラピスト:
「不安を感じるのは自然なことです。大切なのは、小さな一歩から始めることです。まずは、あなたが感じているトラウマに関連して、どんな具体的な行動を取っていきたいと思っていますか?」

クライエント:
「そうですね…暴力の記憶が頭に浮かんだとき、何かできることがあればと思っています。今はその記憶が出てくると、何もできなくなってしまうんです。」

STEP
行動の計画と目標設定

セラピスト:
「その記憶が浮かんだときに、あなたが取れる行動について一緒に考えてみましょう。まず、記憶が浮かんできたときにどう反応するか、具体的に何か試してみたいことはありますか?」

クライエント:
「ええと…深呼吸をしてみるとか、何か気を紛らわせるものを探してみるとかでしょうか。」

セラピスト:
「素晴らしいですね。深呼吸をして心を落ち着けることは、非常に有効な方法です。また、気を紛らわせるために、どんな活動が役立ちそうですか?」

クライエント:
「多分、趣味の本を読んだり、音楽を聴いたりするのがいいかもしれません。」

セラピスト:
「それは良いアイディアです。では、まず次の一週間で、記憶が浮かんできたときに深呼吸をしてみること、そして何か気を紛らわせる活動を試してみることを目標にしましょう。それを実際にやってみることにコミットメントしてみますか?」

クライエント:
「はい、やってみます。」

STEP
障害と対処法の確認

セラピスト:
「これを実行する上で、何か不安や障害になりそうなことはありますか?」

クライエント:
「そうですね…実際にその記憶が出てきたとき、深呼吸するのを忘れてしまいそうです。それに、その時の気分がすごく落ち込んでいたら、気を紛らわせることができないかもしれません。」

セラピスト:
「そのような状況が起こることもありますね。まずは、深呼吸をすることを意識的に思い出せるように、例えばスマホのリマインダーを設定してみるのはどうでしょうか?また、気分が落ち込んでいるときには、無理に大きなことをするのではなく、例えばただ音楽を聴くだけでも良いのです。重要なのは、小さなステップを踏むことです。」

クライエント:
「リマインダー、いいかもしれません。音楽を聴くだけでもいいんですね。それならできそうです。」

STEP
進捗の確認と調整

セラピスト:
「そうですね。次回のセッションで、どんな状況でこれらの行動を取ることができたか、そしてどんな気持ちになったかを一緒に確認しましょう。もしうまくいかなかった場合も、それを一緒に振り返り、別の方法を探すことができます。」

クライエント:
「わかりました。次回までに、できるだけ試してみます。」

セラピスト:
「それでは、これから一週間、あなたが大切にしている安心感を得るために、記憶が浮かんだときに深呼吸をし、気を紛らわせる活動に取り組んでみましょう。これを実行することにコミットメントできたあなたは素晴らしいです。一歩一歩、進んでいきましょう。」

このセッションでは、クライエントがトラウマに関連して、自分の価値観に基づいて具体的な行動を取ることにコミットメントするプロセスを進めました。クライエントが深呼吸や趣味を活用してトラウマの影響を和らげる行動を計画し、それを実行に移すための支援を行うことで、徐々に安心感を取り戻し、トラウマと共存する力を育んでいくことを目指しています。

父親の記憶を和らげる:コミットメント2⃣

STEP
コミットメント行動(Committed Action)

家族との関係が疎遠であり、過去のトラウマが深く影響しているため、コミットメント行動のセッションでは「自分の価値観に基づいて新たな行動を起こし、トラウマからの回復を目指す」ことに焦点を当てることが重要です。

STEP
セッションの始まり

セラピスト:
「今日は、これまでのセッションで明確にしてきたあなたの価値観に基づいて、どのような行動を起こしていくかを一緒に考えていきましょう。家族との接点がないという状況の中で、どんな行動がトラウマの回復に役立つかを探していきます。」

クライエント:
「そうですね…家族との関係はもうどうしようもないので、別のことを考えないといけないのはわかっています。でも、正直、何をすればいいのか全くわかりません。」

STEP
行動の方向性を探る

セラピスト:
「まず、家族との関係がなくなった今、あなたが大切にしたいことや、心の中で望んでいることについて少し話してみましょう。例えば、どんなことを成し遂げたいとか、どんな人間関係を築きたいとか、何か思い浮かぶことはありますか?」

クライエント:
「うーん…強いて言えば、他人を信じられるようになりたいです。でも、今までずっと人と距離を置いて生きてきたので、どうやって信頼を築けばいいのか全くわかりません。」

セラピスト:
「他人を信じられるようになりたいというのは、とても重要な価値観ですね。過去のトラウマから距離を置き、自分の人生を豊かにするために、その信頼を築くことを少しずつ練習していくことが大切です。 例えば、まずは職場で信頼関係を築くための小さな一歩を踏み出してみるのはどうでしょう?」

STEP
具体的な行動の提案

セラピスト:
「例えば、職場で毎日少しだけでも他の人と会話する時間を意識して作ることから始めてみるのはどうですか?もちろん、無理に深い話をする必要はありません。小さな挨拶や短い会話で大丈夫です。」

クライエント:
「それなら、少しずつできそうな気がします。でも、人と話すときにどうしても緊張してしまって…」

セラピスト:
「その緊張感は自然なものです。トラウマを抱えていると、どうしても警戒心が強くなりますから。でも、まずはその感覚を無理に変えようとせずに、そのまま受け入れながらも、少しずつ新しい行動を試してみ。例えば、毎日一人に挨拶をする、というような小さな目標を立ててみるのはどうですか?」

クライエント:
「うん…それなら少しずつできるかもしれません。試してみます。」

STEP
行動を持続するための支援

セラピスト:
「素晴らしいですね。それでは、その行動を続けていくためのサポートを考えましょう。例えば、日記にその日の会話を簡単に書き留めて、どんな感情を感じたかを振り返ることで、少しずつ自分の成長を実感できるかもしれません。」

クライエント:
「確かに、自分がどんなふうに感じていたかを書き留めておくと、後から振り返るときに役立ちそうです。」

セラピスト:
「そうですね。無理のない範囲で、少しずつ自分のペースで進めていきましょう。そして、もし困難を感じることがあれば、それも次のセッションで一緒に考えましょう。」

STEP
振り返りと次のステップ

セラピスト:
「今日のセッションでは、新しい信頼関係を築くための小さな行動計画を立てました。次回のセッションでは、その行動を通じてどんな感情や考えが出てきたかを一緒に振り返りながら、さらに進めていく方法を考えましょう。」

クライエント:
「ありがとうございます。少しずつですが、やってみます。」

セラピスト:
「その意識が大切です。無理せず、自分のペースで進めていきましょう。また次回お会いできるのを楽しみにしています。」

このケースでは、クライエントがトラウマを抱えていることから、新たな信頼関係を築くための小さな行動を計画することに焦点を当てています。セラピストは、クライエントがトラウマに向き合いながらも、自分の価値観に基づいた行動を少しずつ試みることで、トラウマからの回復を支援しています。このようなアプローチを通じて、クライエントは過去の傷を乗り越え、新しい関係を築いていくための力を養うことができます。

母親の愛情を感じたい:コミットメント1⃣

STEP
価値観の明示 (Values Clarification)

クライエントが母親との愛情を再確認し、関係を修復したいと感じている場合、価値観の明示とコミットメント行動を通じて、その願いを具体的な行動に移していくプロセスが重要です。

STEP
セッションの例

セラピスト:
「お母様との関係について、今どんな気持ちを抱いていますか?どんなふうにしていきたいと思っていますか?」

クライエント:
「ずっと母親との接点がなかったので、愛情を感じたことがありません。でも、今は母親がどう思っているのか、どんなふうに愛情を表しているのかを知りたいと思っています。」

セラピスト:
「お母様との関係で、あなたが最も大切にしたい価値観や願いは何ですか?」

クライエント:
「うーん…やっぱり、愛情を感じたいという気持ちが一番強いです。母親がどんなふうに私を思っているのか、正直に知りたいです。」

セラピスト:
「愛情を感じたいというのは、非常に重要な価値観ですね。そのためには、どんなことができると思いますか?例えば、どんな行動をとるとその価値観を実現できると思いますか?」

クライエント:
「まずは母親に連絡を取って、直接会って話すことから始めたいです。でも、どうやって話を切り出せばいいのか不安です…。」

セラピスト:
「確かに、その一歩は勇気がいることですね。でも、その行動はあなたが大切にしている『母親との愛情を再確認する』という価値観に基づいています。次に、その行動をどのように進めていくか、一緒に考えてみましょう。」

STEP
コミットメント行動 (Committed Action)

母親との愛情を再確認するための価値観を明確にし、それに基づいてコミットメント行動を起こすことが重要です。セラピストは、クライエントが母親との対話を通じて愛情を感じるためのサポートを提供し、そのプロセスを通じて新たな行動を促進します。

STEP
セッションの例

セラピスト:
「母親と直接会って話すことが、あなたは愛情を感じるための大切な一歩になるということですね。それでは、そのための準備を一緒にしてみましょう。どんなことを話したいか、考えてみましょうか?」

クライエント:
「まずは、これまでどうして母親と離れていたのか、そして今、母親に会いたいと思った理由を伝えたいです。」

セラピスト:
「それは非常に重要なことです。お母様との対話の中で、自分の気持ちを正直に伝えることが大切ですね。また、お母様の気持ちを理解しようとする姿勢も大切です。どんな質問をしたいですか?」

クライエント:
「母親が当時、どうして自分を放っておいたのか、その理由を知りたいです。それに、今どう思っているのかも聞きたいです。」

セラピスト:
「それでは、その質問を実際にすることで、どんな気持ちが湧いてくるかを考えながら、対話のシナリオを少し練習してみましょう。例えば、どんな言葉で話し始めると良いと思いますか?」

クライエント:
「『お母さん、久しぶりに会えてうれしいです。今までいろいろとあったけど、ずっと聞きたいことがありました。どうして私と距離を置いていたのか、その理由を教えてくれませんか?』こんな感じで話し始めるのがいいかな…。」

セラピスト:
「とても誠実で、母親との関係を深めるための良いアプローチだと思います。その対話がスムーズに進むために、他にどんな準備をしたら良いと思いますか?」

クライエント:
「正直、母親がどう答えるかが不安です。怒られたり、無視されたりしたらどうしようって…」

セラピスト:
「その不安は自然なものですね。お母様がどんな反応をするかに関係なく、あなた自身の価値観に基づいて行動することが大切です。その結果がどうであれ、あなたの行動が価値あるものであることに変わりはありません。それでも、無理に進める必要はなく、自分のペースで進めていきましょう。」

STEP
行動を続けるための支援

母親との対話が実現した後、クライエントはその経験を通じて感じたことを振り返り、次の行動に結びつけます。

セラピスト:
「今回の母親との対話を通じて、どんな感情や考えが湧いてきたかを次回のセッションで一緒に振り返りましょう。そして、さらに母親との関係を深めるために、どんな行動が取れるかを考えてみましょう。」

クライエント:
「そうですね。まずは話してみて、その後の気持ちを整理したいです。」

セラピスト:
「素晴らしいです。今回の行動が、あなたが求めている愛情を感じるための大きな一歩になることを願っています。また次回、お話を聞かせてください。」

母親の愛情を感じたい:コミットメント2⃣

このセッションでは、クライエントが母親との関係で大切にしている価値観を明確にし、その価値観に基づいて行動を取るための計画を立てました。セラピストは、クライエントが「絆」や「理解」を実現するために、まず母親に感謝の気持ちを伝えることや、少しずつコミュニケーションを取ることを提案し、その行動を支援しました。これにより、クライエントは母親との関係を深めるための一歩を踏み出すことができるようになります。

STEP
価値観の明示(Values Clarification)

「母親の愛情を感じてみたい」というクライエントの要望に対するACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)の価値観の明示(Values Clarification)を扱うセッションの一例を、具体的な会話形式で紹介します。価値観の明示では、クライエントが自身の行動を導くための価値観を明確にし、それに基づいて行動を決定する手助けをします。

STEP
セッションの開始

セラピスト:
「前回、あなたが母親との関係についてお話ししてくださったことを覚えていますか?特に、『母親の愛情を感じてみたい』という願いについて話してくれましたよね。」

クライエント:
「はい。母親とはあまり関わりがなかったので、どうすればいいかよくわからないです。でも、母親の愛情を感じてみたいと思うんです。」

セラピスト:
「それはとても大切な気持ちですね。今日は、母親の愛情を感じるために、あなたにとって大切な価値観を一緒に探ってみましょう。価値観は、あなたがどのような人でありたいか、どんな人生を送りたいかを決めるための指針になります。」

STEP
価値観の探索

セラピスト:
「まず、あなたにとって母親との関係は、どのような価値観に基づいていると感じますか?母親との関係で大切にしたいことは何ですか?」

クライエント:
「ええと…たぶん『絆』とか『理解』とかですかね。今まで母親と深い話をしたことがなくて、どうやって接すればいいのかがわからないんです。」

セラピスト:
「『絆』や『理解』は、すごく大切な価値観ですね。あなたが母親との関係において、これらの価値観を実現するために、どのような行動を取れると思いますか?」

クライエント:
「たぶん、少しずつ母親と話す機会を増やすことですかね。でも、何を話せばいいのかがよくわからなくて…。」

セラピスト:
「なるほど。では、最初の一歩として、母親に感謝の気持ちや、最近の出来事について話してみるのはどうでしょう?また、あなたの気持ちを少しずつ伝えることで、絆を深めることができるかもしれません。」

クライエント:
「そうですね…感謝の気持ちを伝えるのはいいかもしれません。でも、そんなことを言ったことがないので、少し恥ずかしいです。」

STEP
価値観に基づく行動の計画

セラピスト:
「恥ずかしさを感じるのは自然なことです。でも、それも含めてあなたの成長の一部と捉えることができます。もし、母親に感謝の気持ちを伝えられたら、どんな気持ちになると思いますか?」

クライエント:
「たぶん、少しは距離が縮まるかもしれません。母親がどんな反応をするかわからないですけど、少しでも愛情を感じられたら嬉しいです。」

セラピスト:
「その通りですね。あなたが大切にしている『絆』や『理解』を基にして、母親との会話を少しずつ増やしていくことができます。そして、その行動を取ることが、母親との関係を築くための第一歩となるでしょう。」

クライエント:
「はい、やってみます。」

STEP
障害の予測と対処

セラピスト:
「実際に母親と話をしようとするときに、不安や障害となることはありますか?」

クライエント:
「うーん…母親がどんな反応をするのかが怖いですね。もし冷たくされたらどうしようかと考えてしまいます。」

セラピスト:
「それは心配になりますね。でも、その不安を持ちながらも、あなたにとって大切な価値観に基づいて行動を取ることが必要ですね。そのときには、例えば、深呼吸をして落ち着いてから話を始めるのも一つの方法です。」

クライエント:
「そうですね。不安があるけど、少しずつ進んでみたいです。」

STEP
まとめと次のステップ

セラピスト:
「素晴らしいです。次回のセッションまでに、母親に感謝の気持ちを伝えたり、最近の出来事を話したりしてみることに取り組んでみましょう。これが、あなたが大切にしている『絆』や『理解』を深めるための一歩になりますね。」

クライエント:
「わかりました。試してみます。」

セラピスト:
「それでは、次回にその経験を共有していただけるのを楽しみにしています。あなたが自分の価値観に基づいて行動を取ることが、母親との関係をより良いものにしていく手助けになりますよ。」

STEP
コミットメント行動(Committed Action)

「母親の愛情を感じてみたい」というクライエントの要望に対するACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)のコミットメント行動(Committed Action)を扱うセッションの一例を、具体的な会話形式で紹介します。コミットメント行動では、クライエントが自身の価値観に基づいて具体的な行動を起こし、それを維持するための計画を立てます。

STEP
セッションの開始

セラピスト:
「前回、あなたが母親の愛情を感じたいという気持ちについてお話ししましたね。そして、そのためにあなたが大切にしている価値観、例えば『絆』や『理解』について考えました。今日は、これらの価値観に基づいて具体的にどのような行動を取るか、そしてその行動をどのように続けていくかについて話してみましょう。」

クライエント:
「はい。まだ少し不安がありますが、やってみたいと思います。」

STEP
行動の具体化

セラピスト:
「素晴らしいです。では、まずどのような行動を最初の一歩として取りたいと思っていますか?」

クライエント:
「母親に電話をして、まずは最近のことを話してみようと思います。それから、少しずつ感謝の気持ちを伝えられるようにしたいです。」

セラピスト:
「いいですね。電話をするというのは、あなたにとって大切な『絆』を深めるための重要な行動です。そのために、まず何を準備しますか?例えば、話す内容を考えたり、話すタイミングを決めたりするのはどうでしょうか。」

クライエント:
「そうですね。最初に話す内容を少し考えておきたいです。母親が好きな話題とか、最近あったことを話すのが良いかもしれません。」

セラピスト:
「素晴らしい計画です。それでは、具体的にどんな話題を選びますか?」

クライエント:
「母親が昔から好きだった花の話題とか、最近行った場所の話をしてみようと思います。」

STEP
障害の予測と対処

セラピスト:
「それはとても良い話題ですね。話をする時に、どんなことが障害になるかもしれないと感じていますか?」

クライエント:
「電話をする前に不安が大きくなってしまうかもしれません。もし、母親が冷たい態度を取ったらどうしようと考えてしまいます。」

セラピスト:
「その不安はよくわかります。でも、その不安を抱えたままでも、行動を起こすことができます。もしその不安が出てきたときには、深呼吸をして、自分の価値観である『絆』や『理解』を思い出してみましょう。それがあなたを支えてくれるはずです。」

クライエント:
「わかりました。少しでも不安を和らげるようにしてみます。」

STEP
行動の維持と計画

セラピスト:
「一度電話をしてみた後、どんな気持ちになるかをぜひ観察してみてください。そして、その経験がどんなものだったかを一緒に振り返りましょう。もし、続けていく中で難しさを感じたら、その都度調整していけばいいです。何よりも大切なのは、あなたが母親との『絆』を深めたいという気持ちを持ち続け、それに基づいて行動を取ることです。」

クライエント:
「はい。電話をするのは怖いですけど、それを続けていくことで何かが変わるかもしれないですね。」

セラピスト:
「その通りです。そして、その変化を受け入れながら、自分自身の成長を感じてみてください。次回までに、母親に電話をして話をしてみて、その経験を一緒に共有しましょう。」

クライエント:
「はい、やってみます。」

STEP
まとめと次のステップ

セラピスト:
「素晴らしいです。次回、どんな話をしたのか、どんな気持ちになったのか、そして母親との関係がどう変わったのかをお話ししていただけるのを楽しみにしています。どんな結果であっても、それがあなたの成長の一歩ですからね。」

クライエント:
「はい、楽しみにしています。」

他人とのコミュニケーションへのコミットメント

STEP
価値観の明示(Values Clarification)

「他人とのコミュニケーションが少しでもとれるようになりたい」というクライエントの要望に対するACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)の価値観の明示(Values Clarification)を扱うセッションの一例を、具体的な会話形式で紹介します。価値観の明示では、クライエントが自分にとって本当に大切なことを明確にし、それを行動の指針として設定します。

STEP
セッションの開始

セラピスト:
「今日は、あなたが『他人とのコミュニケーションが少しでもとれるようになりたい』という目標について話してみましょう。この目標を達成するために、まずはあなたが大切にしている価値観について一緒に考えてみませんか?」

クライエント:
「はい、それが大切なことだと思います。」

STEP
価値観の探索

セラピスト:
「では、少し想像してみましょう。もし、他人とのコミュニケーションが今よりも上手にとれるようになったとしたら、それはあなたにとってどんな意味がありますか?また、どんな気持ちを感じるでしょうか?」

クライエント:
「うーん…たぶん、孤独感が少し減って、もっと安心できるようになるかもしれません。人ともっとつながっている感じがすると思います。」

セラピスト:
「それは素敵ですね。そのつながりや安心感を持つことは、あなたにとってどんな価値があると感じますか?」

クライエント:
「私は、他の人と一緒にいても不安にならないでいられるようになりたいです。もっと『信頼』や『安心』が持てるようになりたいと思っています。」

セラピスト:
「なるほど。『信頼』や『安心』は、あなたにとってとても大切な価値観のようですね。それらがあると、どんなことが変わると思いますか?」

クライエント:
「もし『信頼』や『安心』があれば、もっと人と話しやすくなって、友達もできるかもしれません。そうなれば、孤独感も減ると思います。」

STEP
価値観の明確化

セラピスト:
「では、その『信頼』や『安心』を大切にしながら、どのような行動があなたにとって大事だと思いますか?それを考えることで、どんな行動を取るべきかが見えてくるかもしれません。」

クライエント:
「最初は、職場で簡単な挨拶から始めるとか、少しずつ会話をしてみることかなと思います。でも、いつも不安がついて回るので、それをどうしたらいいのかがわからなくなります。」

セラピスト:
「その不安を持ちながらも、あなたが大切にしている『信頼』や『安心』のために、少しずつ行動を起こしてみることができるとしたら、それはどんな一歩になりますか?」

クライエント:
「もしかしたら、小さなことでいいから、誰かに話しかけてみることが最初の一歩かもしれません。無理しないで、自然なタイミングで。」

STEP
価値観に基づく行動の計画

セラピスト:
「素晴らしい一歩だと思います。例えば、次に職場で誰かとすれ違ったときに、『おはようございます』と一声かけることから始めてみてはいかがでしょうか?それがあなたの『信頼』や『安心』を築くための第一歩になるかもしれません。」

クライエント:
「そうですね。それならできるかもしれません。それができたら、少しずつもっと話をしてみることに挑戦してみたいです。」

セラピスト:
「いいですね。小さな一歩から始めて、それを少しずつ積み重ねていくことで、あなたの『信頼』や『安心』を強化していけると思います。次回のセッションで、その経験について一緒に振り返りましょう。」

クライエント:
「はい、そうします。」

STEP
まとめと次のステップ

セラピスト:
「今日のセッションで、あなたの大切な価値観である『信頼』や『安心』を明確にすることができましたね。その価値観に基づいて、小さな行動を起こす計画も立てました。次回、どんなふうに感じたかを教えてください。」

クライエント:
「はい、楽しみにしています。」

STEP
コミットメント行動(Committed Action)

「他人とのコミュニケーションが少しでもとれるようになりたい」というクライエントの要望に対するACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)のコミットメント行動(Committed Action)を扱うセッションの一例を、具体的な会話形式で紹介します。コミットメント行動では、クライエントが明確にした価値観に基づいて、現実的で実行可能な行動を取ることを目指します。

STEP
セッションの開始

セラピスト:
「前回のセッションで、他人とのコミュニケーションが取れるようになりたいというあなたの目標について、『信頼』や『安心』という大切な価値観が浮かび上がりましたね。今日は、その価値観に基づいて、具体的にどんな行動を起こしていけるかを一緒に考えてみましょう。」

クライエント:
「はい、お願いします。」

STEP
行動の選択と具体化

セラピスト:
「では、まずは小さな一歩として、どんな行動を起こしてみたいと思いますか?例えば、職場や日常生活の中でどんなコミュニケーションを試みてみたいですか?」

クライエント:
「そうですね…例えば、職場で誰かとすれ違ったときに、『おはようございます』って挨拶をしてみるのはどうかなと思います。でも、実際にやろうとすると少し緊張してしまうんです。」

セラピスト:
「その緊張感を持ちながらも、あなたが大切にしている『信頼』や『安心』を築くために、その行動を試みることはどう感じますか?緊張していても、それを実行する価値があると思えますか?」

クライエント:
「そうですね…少し怖いけど、それでもやってみる価値はあると思います。」

STEP
行動の計画と実行

セラピスト:
「素晴らしいですね。それでは、次に職場で挨拶をするときに、どのようなタイミングやシチュエーションでその行動を起こしてみると良いでしょうか?具体的な場面を考えてみましょう。」

クライエント:
「例えば、朝の始業前にみんなが集まるときに、最初の1人に『おはようございます』って言うことを考えています。でも、何を言われるか不安なんです。」

セラピスト:
「その不安は自然なものです。それでも、『信頼』や『安心』を築くためにその行動を選ぶことは、あなたにとって価値ある一歩ですね。不安が出てきたときは、それをただ感じつつも、その場面で挨拶を実行することに意識を向けてみてください。」

クライエント:
「そうですね、やってみます。」

STEP
予期される困難への対応

セラピスト:
「実際に行動を起こす前に、どんな困難が出てきそうか予測してみましょう。例えば、挨拶をしようとしたときにどんなことがあなたの中で起こりそうですか?」

クライエント:
「たぶん、『相手がどう思うんだろう?』っていう不安が湧いてきそうです。それで、挨拶をやめたくなるかもしれません。」

セラピスト:
「その不安が出てきたときに、その感情をただ観察しながらも、あなたが大切にしている『信頼』を築くために、どう対応するかを一緒に考えてみましょう。その不安を持ちながらも、行動を起こすことができるかを試してみましょう。」

クライエント:
「不安があっても、挨拶をすることに集中してみます。」

STEP
行動の振り返りと次のステップ

セラピスト:
「次のセッションで、実際に挨拶をしてみたときの感情や反応を振り返りましょう。どんな気持ちになったか、何が難しかったか、そして何がうまくいったかを一緒に確認しましょう。」

クライエント:
「わかりました、挑戦してみます。」

セラピスト:
「いいですね。コミットメント行動の最初の一歩を踏み出すことは、大きな変化への重要なステップです。あなたが大切にしている価値観に基づいて行動することで、少しずつ自信と安心感を築いていきましょう。」

クライエント:
「はい、少しずつですが進んでいきたいと思います。」

家族との良好な関係へのコミットメント

STEP
価値観の明示(Values Clarification)

価値観の明示のセッションでは、クライエントが自分の価値観を明確にし、それに基づいてどんな行動をとるべきかを考え、実践するプロセスをサポートします。セラピストは、クライエントが自分自身の人生をより充実させるための価値観を見つけ、それを日常生活に反映させるための具体的な行動を提案します。

STEP
セッションの始まり

セラピスト:
「今日は、あなたが大切にしている価値観について考えていきたいと思います。これまで、あなたが経験してきたつらい出来事や感情に対処するためのスキルを学んできましたが、今度はその先のこと、つまりあなたがどんな人生を送りたいのか、どんな人でありたいのかを一緒に考えてみましょう。」

クライエント:
「価値観…なんとなくわかりますが、具体的にどういうことを考えればいいんでしょうか?」

セラピスト:
「価値観というのは、あなたが人生で大切にしていること、心から大切だと思うことです。例えば、家族との絆を大切にすること、正直であること、他人を思いやることなど、さまざまなものがあります。これから少しずつ、あなたが大切にしたいことを明確にしていきましょう。」

STEP
価値観の探索

セラピスト:
「まずは、あなたにとって大切だと思うことをいくつか挙げてみてもらえますか?どんな小さなことでも構いません。」

クライエント:
「うーん…やっぱり、家族との関係は大切だと思います。今はちょっとぎくしゃくしている部分もありますけど、それでも家族は大事です。」

セラピスト:
「そうですね、家族との関係を大切にするというのは、とても重要な価値観ですね。他にはどうでしょう?」

クライエント:
「正直に生きることも大切だと思います。嘘をつかず、ありのままでいたいです。」

セラピスト:
「正直であることも素晴らしい価値観です。ありのままでいることは、自分に正直であることにもつながりますね。これらの価値観は、あなたがどんな人でありたいか、どんな人生を送りたいかを考える上での指針になります。」

STEP
価値観の優先順位を考える

セラピスト:
「今挙げてもらった家族との関係や正直であること、これらはすべて大切な価値観ですが、時にはそれぞれが衝突することもあります。例えば、正直であることを貫くことで、家族との関係に影響を与えることがあるかもしれません。そのようなとき、どちらを優先したいと思いますか?」

クライエント:
「そうですね…難しい質問ですね。どちらも大切ですけど、やっぱり家族との関係が一番大事かもしれません。」

セラピスト:
「家族との関係を最優先にするというのは、あなたの価値観にとって非常に重要なことですね。それを意識することで、今後の行動や決断に自信を持つことができるようになります。」

STEP
価値観に基づく行動の提案

セラピスト:
「それでは、家族との関係を大切にするために、具体的にどんな行動をとりたいと思いますか?例えば、日常生活の中でできる小さなことでも構いません。」

クライエント:
「うーん…今はあまり家族と話す機会が少ないので、少しでも会話を増やしてみたいです。特に母親との関係をもう少し良くしたいと思っています。」

セラピスト:
「それは素晴らしい一歩ですね。例えば、毎日少しだけでも母親と一緒に時間を過ごすとか、何か一緒にできることを見つけるのはどうでしょうか?」

クライエント:
「そうですね、それならできそうです。母親と一緒にご飯を作るとか、何か小さなことから始めてみます。」

セラピスト:
「それは素敵なアイデアですね。そのように、自分が大切にしたい価値観に基づいて行動することで、少しずつ自分の人生を豊かにしていくことができます。」

STEP
振り返りと次のステップ

セラピスト:
「今日は、あなたが大切にしている価値観を明確にし、それに基づいてどんな行動をとるかを考えました。これを続けていくことで、過去のトラウマに振り回されることなく、自分が本当に望む人生を歩むことができるようになります。」

クライエント:
「少しずつでも、自分の価値観に基づいて行動していけるようになりたいです。これが自分の道なんだと思えるようになれたらいいなと思います。」

セラピスト:
「その意識が大切です。次回のセッションでは、今回考えた行動を実際にどのように実践していくか、またその効果について話し合っていきましょう。」

STEP
コミットメント行動(Committed Action)

コミットメント行動のセッションでは、クライエントが価値観に基づいた具体的な行動を計画し、それを実行し続けるためのサポートを行います。セラピストは、クライエントが行動を始める際の障害や困難に対処できるようにサポートし、行動を持続させるための柔軟なアプローチを提案します。

STEP
セッションの始まり

セラピスト:
「今日は、これまでのセッションで明確にしてきたあなたの価値観に基づいて、実際にどのような行動を起こしていくか、そしてその行動を続けていくための方法について一緒に考えていきましょう。」

クライエント:
「はい、これまで色々と考えてきましたが、実際にどう行動すればいいかはまだ漠然としているかもしれません。」

STEP
行動の具体化

セラピスト:
「それでは、これまで話してきたあなたの価値観、例えば家族との関係を大切にしたいということを考えたとき、具体的にどんな行動ができるかを一緒に考えてみましょう。例えば、どんなことから始めてみたいですか?」

クライエント:
「うーん…母親ともう少し話す時間を増やすことから始めたいです。でも、何を話せばいいのかわからない時もあって。」

セラピスト:
「それは自然な感情ですね。最初はぎこちなく感じるかもしれませんが、無理に深い話をする必要はありません。例えば、日常のちょっとしたことを話題にするだけでも大丈夫です。まずは、毎日5分でもいいので母親と会話する時間を設けてみるのはどうでしょうか?」

クライエント:
「それならできそうです。テレビを見ながらでも、少し話す時間を作るようにしてみます。」

STEP
行動計画の立て方

セラピスト:
「それは良いスタートですね。次に、その行動を実際に続けていくために、どんな工夫ができるかを考えてみましょう。例えば、日常生活の中で無理なく行動に組み込むためのルーチンを作ることが考えられます。どんな時間や状況が一番話しやすいと思いますか?」

クライエント:
「夜ご飯を食べた後にリビングで過ごす時間が一番話しやすいかもしれません。その時に意識して母親と話してみます。」

セラピスト:
「いいですね。それなら、毎日夜ご飯の後に5分間母親と会話をすることを目標にしてみましょう。もちろん、無理をしない範囲で大丈夫です。」

STEP
障害や困難への対処

セラピスト:
「では、もしこの行動を続ける上で難しさを感じたとき、どのように対処できるかも考えておきましょう。例えば、忙しくて話す時間が取れない日や、うまく会話が続かない日があった場合、どうしますか?」

クライエント:
「そうですね、もし話せなかったら、その日は無理せずに翌日に少し長めに話すとか、それか、メッセージで簡単にやり取りするようにしてもいいかもしれません。」

セラピスト:
「そのように柔軟に対応することが大切です。無理に完璧を目指す必要はありません。続けることに意味がありますから、どんな形であれ、少しずつでも続けていくことが重要です。」

STEP
振り返りと次のステップ

セラピスト:
「今日のセッションでは、あなたが価値観に基づいた行動を実際に始めるための具体的な計画を立てました。次のセッションまでに、どんな成果があったか、またどんな困難があったかを一緒に振り返ってみましょう。」

クライエント:
「はい、まずは5分から始めてみます。続けられるように、無理のない範囲でやってみます。」

セラピスト:
「その意識がとても大切です。無理せず、自分のペースで進めていきましょう。次回、どんな変化があったかを教えてくださいね。」

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