心理療法アクセプタンス&コミットメント・セラピーの実践におけるACT技法の手順と心の柔軟さを阻害する要因「FEAR(恐れ)」に対するアプローチを紹介
アクセプタンス&コミットメント・セラピーの概要と主要なコンセプト、その他の関連する理論の知識に加え、ACT技法に直接関係する「心理的柔軟性」を目指す6つのコアプロセスを別ページで解説してきました。また、ACTの実践に際し、コミットされた行動の不一致を少なくするためのSMARTなゴール設定を紹介しています。
そこで、今回のページでは、ACTの知識を活かし「ACTの実践における一般的な技法の手順」を詳しく解説していきます。
別ページでは心理的柔軟性を発展させるために行うACTの6つのコアプロセスを実践するための具体的な手順(ステップ)を解説していますので、合わせてご覧いただくと手順が理解しやすくなります。
ACTの実践における一般的な技法の手順
ACTの心理療法では、次の手順を通じてクライエントとのセッションを進めます。
一般的なACTの実践手順を示しますが、個々のケースによって異なるアプローチが取られます。
セッションの最初に、治療者はクライエントとの信頼関係を築くために多くの時間を取ります。クライエントの現在の状況や関心事について探り、クライエントの個別のニーズと目標を理解します。
クライエントの注意を現在の瞬間に向けるために、マインドフルネスや身体的感覚への注意を促します。クライエントに対して、現在の感覚、思考、感情を観察し、受け入れることを促します。
クライエントと共に、価値や人生の目的を明確にする作業を行います。治療者は、クライエントが何に意味を見出し、本当に大切にしているのかを探求し、それを基に行動することの重要性を強調します。
治療者は、クライエントが苦痛や不適応を引き起こす可能性のある病理的なプロセス(ヒュージョン、体験の回避など)を認識し、それを理解するために努めます。クライエントにそのプロセスがどのように機能しているのかを説明し、それが目標や価値に対する妨げとなっていることを示します。
クライエントに、病理的なプロセスに対してアクセプタンス(受容)することを促します。治療者は、クライエントがそのプロセスと共に存在することを許容し、それに対して戦わずに受け入れることの重要性を伝えます。また、クライエントが自分の価値や目標に基づいて行動することにコミットメントすることを促します。
クライエントと共に、具体的な行動計画を策定します。治療者は、クライエントの目標に向けて具体的で実行可能な行動ステップを共同で作成し、それを追跡・評価する方法を決定します。このプロセスでは、クライエントが自分自身に対して責任を持ち、行動を起こす意思決定を行うことが重要です。
クライエントが定めた行動計画を実践し、セッションの間に得た洞察やスキルを日常生活に統合する支援を行います。治療者は、クライエントが新しい行動パターンを継続するためのサポートやフィードバックを提供します。また、セッションの間に発生した困難や障害についても共に取り組み、必要な修正や戦略の再評価を行います。
ACTはプロセス指向のアプローチであり、セッションや治療プロセスは繰り返し行われます。治療者は、クライエントとのセッションを通じて新たな洞察や学びが得られるたびに、それを取り入れながら治療を深化させます。また、クライエントも自己観察や学習のプロセスを継続し、自己成長を促進することに取り組むことが重要です。
これらの手順を通じて、治療者はクライエントの自己観察と自己受容を促し、価値に基づいた意図的な行動を支援します。ACTの目標は、苦痛や不適応に囚われずに充実した人生を送ることであり、クライエントの個別のニーズや目標に合わせて治療を進めます。
このページを含め、心理的な知識の情報発信と疑問をテーマに作成しています。メンタルルームでは、「生きづらさ」のカウンセリングや話し相手、愚痴聴きなどから精神疾患までメンタルの悩みや心理のご相談を対面にて3時間無料で行っています。
- ACTアクセプタンス&コミットメント・セラピーの知識
- ACTが10分で理解できる総まとめ
- ACT技法の心理的柔軟性への具体的実践アプローチ
- ACT療法がセッション話法で楽に学ぶ
- 依存症に対するACT療法の実践セッション
- トラウマに対するACT療法の実践セッション
- ACTの患者が行うマインドフルネストレーニング
- ACT-価値観の明示とコミットメント行動のアプローチ
- 過去の後悔・未来の不安の捉われにACTセッション
- ACTのセッションでトラウマを受け入れ価値感を示す
- 回避的特性とアレキシサイミアへのACTセッション
ACTの詳しい手順
ACTにおける「接触(Contact)」とは、クライエントが現在の状況や内的な体験と直接的に関わることを指します。接触は、クライエントが自分の感情、思考、身体的な感覚、そして現在の状況に敏感になり、それらと受容的な関係を築くことを意味します。
接触は、クライエントが自分自身や他者、環境との関係を深めるための基盤となります。また、過去や未来に囚われずに、現在の瞬間に意識を集中させることを通じて、クライエントが自分の内的な体験を直接的に経験することを促します。このような接触のプロセスにより、クライエントは自己の感情や思考に柔軟に関わり、それらを受け入れることができるようになります。
関係構築は、治療者とクライエントの間に信頼と安全な関係を築くことを目指します。治療者は、クライエントに対して非評価的な姿勢を持ち、受容的な態度で接することが重要です。クライエントは、自分の内的な体験を開示しやすくなり、自己の探求と成長に向けた意識的な取り組みを行うことができます。
関係構築は、共感、理解、尊重、共同作業の原則に基づいて行われます。治療者はクライエントの経験に共感し、視点を理解する努力をします。また、クライエントの経験や価値に対して尊重を示し、それを共有し、共同で問題解決に取り組みます。
接触と関係構築は、治療者とクライエントの協力的な関係の基盤となります。クライエントが自分の内的な体験と関係を築くことで、自己の価値や目標に基づいた意図的な行動を選択する自由が生まれます。治療者はクライエントの成長を促し、クライエントが自己の内面を探求し、より意味のある人生を築くための道具を提供する役割を果たします。
ACTにおける「現在の意識を促す」は、クライエントが現在の瞬間に意識を集中させることを促すプロセスを指します。このプロセスは、クライエントが過去や未来の出来事に囚われることなく、現在の体験に注意を向けることを支援します。
現在の意識を促すことにより、クライエントは「今ここにいる」という感覚を深め、現実をより豊かに体験することができます。過去の出来事や将来の予測に固執することなく、現在の状況や自分の内的な体験に敏感になることで、クライエントはより客観的に自分自身を観察し、自己のニーズや価値に応じた行動を選択する自由を得ることができます。
現在の意識を促すためのいくつかの技法やアプローチがあります。次にいくつかの例を挙げます。
- マインドフルネス(Mindfulness)
- マインドフルネスは、クライエントが故意に、非評価的な態度で、現在の瞬間に注意を向けることを指します。呼吸に集中したり、五感を活用したり、身体感覚に注意を向けたりすることで、クライエントは現在の体験をより鮮明に捉えることができます。
- 現在の体験の言語化
- 治療者はクライエントに対して、現在の感情や思考、身体的な感覚を言語化するよう促します。クライエントは自分の内的な体験を言葉で表現することにより、それらをより明確に意識することができます。
- 現在の状況へのフォーカス
- 治療者はクライエントに対して、現在の状況や環境に注意を向けるよう促します。具体的な外部の刺激や状況にフォーカスすることで、クライエントは現実をより鮮明に捉えることができます。
- 経験のリファーミング
- 治療者はクライエントに対して、過去の経験や将来の予測を客観的な視点から見直すよう促します。過去の出来事や将来の予測を客観的な情報として捉え、現在の状況に基づいて再評価することで、クライエントは過去や未来に囚われず、現在の瞬間に意識を集中することができます。
- 現在の意識の拡大
- 治療者はクライエントに対して、狭い視野から広い視野への注意の移行を促します。クライエントは自己や環境の一部に固執せず、より広い視点で現在の体験や状況を捉えることができます。これにより、クライエントはより多角的な視点から自己や他者との関係を見つめ、より柔軟な対応や行動を選択することができます。
- 現在の意識の深化
- 治療者はクライエントに対して、より深いレベルで現在の体験を探求するよう促します。クライエントは内的な感情や思考、身体的な感覚に敏感になり、それらを受け入れることで、より深い理解や洞察を得ることができます。治療者はクライエントの内的な体験に対して共感し、その体験を受容的に受け止めることで、クライエントの意識がより深化し成長を促します。
これらの手法やアプローチを活用することで、クライエントは現在の状況や内的な体験により敏感になり、過去や未来に囚われることなく、自己のニーズや価値に応じた行動を選択する自由を得ることができます。治療者のサポートと指導のもと、クライエントが現在の意識を促せることで次のステップに進むことができます。
「今、ここに注意を向ける」気づきのマインドフルネスのワーク
- 呼吸に注意を向ける
- “今、ゆっくりと深呼吸してみてください。吸うときに鼻から空気が入り、吐くときに口から出る感覚を感じてください。”
- “呼吸を意識して、体が膨らむときと縮むときの違いに気づいてみてください。”
- “座っているお尻の感覚を十分に感じ取ってください。あったかいですか?体重を感じていますか?”
- “その後は自分が楽な呼吸を続けてください。”
- 身体の感覚に注意を向ける
- “体のどこかに緊張や痛みを感じている場所がありますか?その部分の感覚を観察してみてください。”
- “体の一部に気持ちのよい感覚がある場合、それを感じることができますか?どんな感覚ですか?”
- ”感じたら、⒈の呼吸や身体感覚に戻ります。”
- 外部の刺激に注意を向ける
- “部屋の中で目に入る色や光、影を見つめてみてください。それらの色や形に注意を向けます。”
- “部屋の中で聞こえる音に注意を向けてください。それらの音がどこから来ているか、どのような音なのかに気づいてみてください。”
- ”感じたら、⒈の呼吸や身体感覚に戻ります。”
- 感情に注意を向ける
- “今、何か特定の感情を感じていますか?例えば、イライラ感や悲しみ、ワクワク感や嬉しさなどになります。その感情がどのように体の中で感じられるかに注意を向けてみてください。”
- “感情が表面に出ている場合、どのような表情や身体の動きがありますか?それらのサインに注意を向けてください。”
- ”感じたら、⒈の呼吸や身体感覚に戻ります。”
- 思考に注意を向ける
- “今、頭の中に浮かんでくる思考や声がありますか?例えば、昨日失敗したことや明日の仕事のことなどです。それらの思考や声に気づいて、ただ観察してください。”
- “思考が流れるのを観察することができますか?どのようなパターンやテーマがあるかに気づいてみてください。”
- ”感じたら、⒈の呼吸や身体感覚に戻ります。”
これらの具体的な指示や質問を通じて、セラピストはクライアントが内部、外部、および中間の領域に注意を向けるよう促し、そこに現れる体験や感情に気づくことを支援します。セラピストはクライアントがそれらの体験を受け入れ、観察することを奨励し、自己理解を深めるための基盤を提供します。その後は、感情も思考も受け流すこともできるように呼吸に戻り、今ここに集中していきます。
マインドフルネスのワークは、内部、外部、そして中間の領域に気づきを向けることで、クライアントが自己理解を深め、現実との接続を強化し、受容することで自己の内外の統合を促進することを目的としています。
また、これらの領域をバランスよく探求することが重要であり、クライアントが自己の気づきを深め、成長や変化を促進するのに役立ちます。
「価値と目標の探求」は、ACTにおける重要なプロセスの一つです。このプロセスでは、クライエントが自己の価値観や意味のある目標を明確化し、それに基づいた行動を取ることを支援します。次に、価値と目標の探求の具体的な解説をします。
- 価値の明確化
- 治療者はクライエントに対して、自己の価値観を明確化するよう促します。価値とは、クライエントが本当に大切にするものや人生で追求したい意味や方向性を指します。クライエントは自己の内なる声や直感に耳を傾け、自己の価値観を自覚することで、自己の真実を見つけることができます。
- 目標の設定
- クライエントが自己の価値観を明確化した後、治療者はクライエントに対して、その価値観に基づいた具体的な目標を設定するよう支援します。目標はクライエントが望む方向へ進むための具体的な目的や成果を指します。目標はクライエント自身が選択し、その選択した目標が自己の成長や意味に大きく関わります。
- 行動の選択
- クライエントが明確な価値観と目標を持った後、治療者はクライエントに対して、その目標に向かって行動を選択するよう促します。この際、クライエントは選択肢の中から自己の価値観に一致した行動を選びます。治療者はクライエントが自己のニーズや価値に基づいて自律的な行動を取ることをサポートし、選択した行動が目標達成に向けた一歩となるよう支援します。
- 困難や障害の受容
- 価値と目標の探求においては、困難や障害が現れることもあります。治療者はクライエントに対して、困難や障害を避けずに受容し、それらを成長や学びの機会と捉えるよう促します。クライエントは困難を乗り越えるために必要なスキルや資源を開発し、柔軟な対応をすることで、自己の価値や目標に向かって進むことができます。
- コミットメントの強化
- 価値と目標の探求は継続的なプロセスであり、クライエントがコミットメントを持って行動を継続することが重要です。治療者はクライエントのモチベーションを強化し、目標に向かってコミットメントを持ち続けるための支援をします。また、クライエントが進捗や成果を実感し、自己の成長と目標達成を喜びとして体験することも重要な要素です。
- フィードバックと評価
- 価値と目標の探求の過程では、治療者とクライエントの間で継続的な対話やフィードバックが行われます。治療者はクライエントの進捗や困難、目標の適切性などを評価し、必要に応じてアドバイスや方向性の修正を行います。このようなフィードバックと評価のプロセスは、クライエントの成長と目標達成に向けたサポートを提供します。
ACTにおける「価値と目標の探求」の基本的な手順です。治療者とクライエントは共同でクライエントの価値観と目標を明確化し、それに基づいた行動を選択し、困難を受容しながら成長を遂げていきます。このプロセスを通じて、クライエントはより意味のある行動ができ、自己の成長や目標達成に向けた充実感を得ることができます。
ACTでは、「病理的なプロセスの認識と理解」が重要な要素として位置付けられています。これは、クライエントが自己の苦悩や問題を抱えている際に、それらの苦悩や問題がどのような心理的プロセスによって維持されているのかを認識し、理解することを意味します。病理的なプロセスは、クライエントの苦悩を深め、心理的な健康や充実感を妨げる要因となるものです。
ACTでは、次のような病理的なプロセスが重要な役割を果たしています。
- ヒュージョン(融合)
- ヒュージョンは、クライエントが自分の思考と完全に同一視してしまう状態を指します。思考に対して過度に執着し、それによって自己や現実を制約することで苦悩を引き起こします。例えば、「私はダメな人間だ」「他人は私を嫌っている」といった否定的な自己評価や信念に囚われることがあります。
- ACTでは、認知的ヒュージョンを脱し、思考を単なる出現現象として受け入れることが重要です。
- 体験の回避
- 体験の回避は、クライエントが苦痛や不快な感情、思考、身体的感覚から逃れようとする傾向を指します。クライエントは苦悩を回避するために、過度な思考や行動の制御、感情の抑圧、避ける行動パターンなどを取ることがあります。しかし、この回避の試みは一時的な安心感をもたらすかもしれませんが、結果として苦悩を長期間にわたって維持させることになります。
- 過去や未来による支配
- クライエントは過去の出来事や未来への不確かさに対して強い関心を抱き、それらによって自己や現在の行動を制約することがあります。過去のトラウマや過ちへの執着、未来の不安や予測への固執は、クライエントの自由な行動や成長を妨げます。
- 価値の明確さと接触の欠如
- クライエントにとって本当に重要な価値や意味を明確にすることができない場合、意図した行動や生き方に欠如が生じます。また、価値との接触が不十分な場合、日常の行動や選択が自己の真の価値と一致せず、不適応や不満足感を引き起こすことがあります。
- ACTでは、価値を明確にし、その価値に基づいて行動することで、生活の充実感と満足度を高めることを目指します。
- 機能しない行動
- クライエントは苦悩から逃れるために、無意味で機能しない行動を取ることがあります。例えば、問題を解決する代わりに問題から逃げる行動や、痛みを軽減するために短期的な快楽を追求する行動です。これらの行動は一時的に苦悩を軽減するかもしれませんが、長期的には問題の根本的な解決や成長にはつながりません。
- ACTでは、目標に合わせた意図的な行動の選択と実行を促し、機能的な行動パターンを育むことが重要です。
- 自己概念の囚われ
- クライエントが自己を一つの固定的な概念として捉え、自己という概念に執着する傾向があります。これにより、自己の柔軟性や成長が制限され、自己の一部であるという思考や感情に囚われてしまいます。
- ACTでは、個人が自己を体験する際に客観的な視点を持ち、自己の一部であるという意識を超えて、より広い視野で自己を捉えることを促します。
ACTのアプローチでは、クライエントはこれらの病理的なプロセスを認識し、理解することで、それらに振り回されることなく、より充実した生活を送るための選択肢を持つことができます。クライエントは、これらの病理的なプロセスが苦悩を維持させていることを理解し、自己との関わり方や行動の選択においてより柔軟なアプローチを取ることが求められます。
治療者はクライエントと共に、病理的なプロセスを認識し、それらに対する柔軟な対応策やアクセプタンスとコミットメントのプロセスを導入していきます。クライエントは自己との関わり方や行動の選択において、自己の価値や目標に基づき、意識的かつ価値のある選択を行っていくことを目指します。
病理的なプロセスの認識と理解は、クライエントが自己を客観的に見つめることを促し、それによって新たな視点や選択肢が生まれることを高めます。このプロセスはクライエントの自己理解や自己受容を深め、自己制約からの解放や成長の可能性を開拓する重要なステップとなります。
「プロセスへのアクセプタンスとコミットメントの促進」は、ACTにおける重要なプロセスの一つです。このプロセスでは、クライエントは苦悩や困難な感情、思考、体験に対してアクセプタンス(受容)をし、自己の価値や目標に基づいたコミットメント(約束)を行うことが重要とされます。
具体的な手法やアプローチは次のようなものがあります。
- アクセプタンスの促進
- マインドフルネスの練習
クライエントは現在の状況や体験に対して非評価的な観察を行います。過去や未来へのこだわりを手放し、現在の瞬間に注意を向けることで、苦悩や困難な感情を受容します。 - 体験の拡大
クライエントは自己の体験を広げ、感情や思考に対して抵抗せずに受け入れることを学びます。これによって、苦悩や困難な感情が自己の行動や生活を制約しないようになります。
- マインドフルネスの練習
- コミットメントの促進
- 価値の明確化
クライエントは自己の価値や意味について深く考え、何が本当に重要で意味のあることなのかを明確にします。自己の価値を基準にして行動し、それにコミットメントすることで、より充実した生活を送ることができます。 - 行動目標の設定
クライエントは自己の価値に基づいて具体的な行動目標を設定します。これによって、意味のある行動を起こすことができます。
- 価値の明確化
治療者はクライエントと共に、アクセプタンスとコミットメントのプロセスを進めます。クライエントは自己の価値や意味を明確にし、それに基づいて苦悩や困難な感情に対してアクセプタンスをし、自己の行動や生活をコミットメントすることを目指します。
クライエントは自己の制約や固定的なパターンから解放され、柔軟性のある行動を選択することができます。また、自己の価値や意味に基づいた行動の実践によって、充実感や満足感を得ることができます。
アクセプタンスとコミットメントの促進は、クライエントがより充実した生活を送るために重要なプロセスです。治療者とクライエントは協力し合いながら、クライエントが自己の価値に基づいた意味のある行動を選択し、それにコミットメントすることを支援します。
「具体的な行動計画の策定」は、ACTにおける重要なステップです。このステップでは、クライエントと治療者が具体的な目標に向かって行動するための計画を作成します。次にそのプロセスの一般的な手順を示します。
- 目標の明確化
- まず、クライエントと治療者は共同で達成したい目標を明確にします。目標は具体的で明確であり、クライエントの価値や意味に関連しています。
- 現状の評価
- クライエントと治療者は現在の状況を評価します。クライエントの強みやリソース、障害や課題について議論します。
- 適切な行動の選択
- クライエントは、目標に向かってどのような行動を選択すべきかを考えます。治療者はクライエントに対して具体的な行動の選択肢を提示し、その選択肢を評価します。
- プロセスの柔軟性
- 行動計画は柔軟で修正可能であることが重要です。クライエントは進行中に調整や修正を行いながら、目標に向かって進むための柔軟性を持つ必要があります。
- 小さなステップの設定
- 目標を達成するために、クライエントは小さなステップに分解して行動を計画します。これにより、クライエントは成功体験を積み重ねながら進むことができます。
- モニタリングと評価
- 行動計画が進行していく過程で、クライエントは自身の進捗状況をモニタリングし、評価します。治療者はクライエントの進行を支援し、必要に応じてフィードバックや調整を行います。
具体的な行動計画の策定は、クライエントが目標に向かって具体的な行動を取るための指針を提供します。このプロセスにより、クライエントは自己の価値と意味に基づいた行動を実践し、より充実した生活を送ることができます。
「実践と統合」は、ACTの最終段階であり、クライエントが学んだスキルや洞察を日常生活に統合し、実際の経験に基づいて成長と変化を実現するプロセスです。次にその詳細を説明します。
- 実践の促進
- クライエントは治療者の支援のもとで、学んだACTの技法やコンセプトを日常生活で実践する機会を見つけます。これには、自己観察やマインドフルネスの実践、価値に基づいた行動の実践などです。
- 実際の経験の活用
- クライエントは、実際の経験を通じて自己成長や変化を促進します。過去や未来の概念や思考にとらわれず、現在の状況や体験にフォーカスし、そこから学びを得ることを重視します。
- フィードバックと修正
- クライエントは実践を通じて得られた経験や成果について、治療者からフィードバックを受けます。そのフィードバックをもとに、必要な修正や調整を行いながら、より効果的なアクションを取るように努めます。
- 統合と持続性
- クライエントはACTの教えやスキルを持続的に統合し、自己成長のプロセスを継続します。これには、学んだスキルの定期的な練習やアクションプランの更新、治療者との継続的なフォローアップなどになります。
「実践と統合」の目的は、クライエントがACTの理念や技法を生活の中で自然に適用し、意味のある変化を実現することです。クライエントは自己の成長と発展を継続的に追求し、困難や苦悩に直面しても柔軟に対処する能力を育みます。
治療者はクライエントの実践と統合をサポートし、フィードバックやガイダンスを提供することで、クライエントの成長を促進します。
「プロセスの繰り返しと深化」は、ACTの最終ステージであり、クライエントが学んだプロセスを継続的に活用し、深めていくプロセスです。このステージでは、クライエントがより深い洞察や理解を得ることで、より意味のある変化と成長を実現します。次にその詳細を説明します。
- プロセスの再訪
- クライエントと治療者は、過去に学んだACTのプロセスや技法を再訪します。これには、ヒュージョンとの接触、自己観察、価値の明確化、行動のコミットメントなど、ACTのコアプロセスなどです。
- 洞察と理解の深化
- クライエントは、再訪したプロセスを通じてより深い洞察や理解を得ます。過去の経験や反応のパターン、思考や感情の影響などに気づき、それらをより広いコンテキスト(前後の文脈)で捉えることができます。
- 応用と展開
- クライエントは、深まった理解を実際の生活に応用し、新たな挑戦や目標に取り組みます。学んだプロセスをさまざまな状況や関係に応用し、自己成長と変化を促進します。
- プロセスの連続的な学習と修正
- クライエントは、プロセスの学習と修正を継続します。新たな洞察や経験に基づいてプロセスを修正し、より効果的なアプローチを見つけるために、治療者との共同作業を続けます。
- 持続的な成長と継続的なサポート
- クライエントは、プロセスの繰り返しと深化を通じて持続的な成長と変化を追求します。治療者はクライエントをサポートし、新たな課題や障害に直面したときに対処するためのスキルやリソースを提供します。
「プロセスの繰り返しと深化」は、クライエントがACTのプロセスを継続的に学び、統合していく過程です。クライエントは自己の内面との関係を深め、より自己に対して寛容でありながらも意味のある行動を取ることができるようになります。
このステージでは、治療者はクライエントをサポートし、プロセスの再訪や深化を促進します。クライエントと治療者の共同作業によって、新たな気付きや成果が生まれ、より充実した生活を実現するための道筋が整えられます。
治療者はクライエントの進捗をモニタリングし、必要に応じてフィードバックや調整を行います。また、クライエントがプロセスの学習を継続するための支援やリソースを提供します。このようにして、クライエントは日常のさまざまな状況や困難に対して、より柔軟で意図的な行動を取ることができるようになります。
「プロセスの繰り返しと深化」は、ACTの根幹をなすプロセスを繰り返し学び、自己成長と変化を促進する重要なステージです。クライエントは内面の体験に対して柔軟に向き合い、自己の価値や意味に基づいた行動を取ることで、より充実した行動を実現することができます。
治療者との協力と支援のもとで、クライエントはプロセスの繰り返しと深化を通じて、自己の成長と変化を持続的に追求することができます。
心の柔軟さを阻害する要因の「FEAR(恐れ)」
ACTでは、心の柔軟さを阻害する要因の一つとして「FEAR(恐れ)」を捉えています。FEARは、Fusion with your thoughts(思考とのフュージョン)、Excessive goals(過度な目標)、Avoidance of discomfort(苦痛の回避)、Reason-giving for your behavior(自己正当化)の頭文字を表しています。
Fの「Fusion with your thoughts(思考とのフュージョン)」
まず、Fの「Fusion with your thoughts(思考とのフュージョン)」について解説します。フュージョンとは、思考や言葉と自己の結びつきが非常に強くなる状態を指します。つまり、思考と自己の区別がつかなくなり、思考が真実や指示として受け入れられてしまうことを意味します。
フュージョンの状態では、思考が直接的に感情や行動に影響を与えます。例えば、「私はダメな人間だ」という否定的な思考にフュージョンしてしまうと、それを真実と受け入れ、自己価値の低下や自己批判的な感情が湧き上がる可能性があります。同様に、「私は成功しなければならない」という過度な思考にフュージョンしてしまうと、完璧主義や自己要求が高まり、ストレスや不安が生じるかもしれません。
ACTでは、フュージョンからの解放を促し、柔軟な心の状態を培うことを目指します。そのために、次のようなアプローチが用いられます。
- 「思考は事実ではない」という認識
ACTでは、思考をあくまで心の中で生まれる出来事と捉えます。思考自体が真実や指示ではなく、ただの言葉やイメージであることを理解します。この認識は、フュージョンとの距離を取るために重要です。 - 観察の練習
自己の思考や感情を客観的に観察する練習が行われます。思考や感情が現れることを受け入れながら、それにフュージョンせずに観察することで、距離を保ちます。例えば、「私はダメな人間だ」という思考が浮かんでも、それを単なる思考として観察し、自己との同一視を避けます。 - デフュージョンのテクニック
デフュージョンは、フュージョンからの解放を促すための技法です。これにより、思考と自己の結びつきを緩め、柔軟な対応を可能にします。- 「私は、私の思考ではない」という言葉を付け加える
否定的な思考にフュージョンしてしまった場合、その思考の前に「私は」というフレーズを付け加えることで、思考と自己を区別します。例えば、「私は、私はダメな人間だと思っている」と言い換えることで、思考から一歩距離を置くことができます。 - マインドフルネス
マインドフルネスは、現在の瞬間に対して意識を集中することです。思考や感情が浮かんでも、それを受け入れながらも、ただ観察することに集中します。思考にフュージョンすることなく、現在の経験を客観的に受け入れることができます。 - ジャッキング
ジャッキングは、思考を軽視したり笑い飛ばしたりすることです。思考を声に出して言ったり、変声したりすることで、思考の重みを軽減します。例えば、「私はダメな人間だ」という思考を「あ、またそのダメな人が現れたね」と声に出して言うことで、思考との距離を取ります。
- 「私は、私の思考ではない」という言葉を付け加える
これらのデフュージョンのテクニックは、思考と自己のフュージョンを解消し、柔軟な対応を可能にするための道具となります。ACTのセッションでは、クライエントと治療者が共にこれらのテクニックを実践し、フュージョンからの解放を支援します。
Eの「Excessive goals(過度な目標)またはE(Evaluation of experience)経験の評価」
Excessive goals(過度な目標)とEvaluation of experience(経験の評価)は、ACTにおける「E」の頭文字を表しています。これらは心の柔軟さを妨げる要因として考えられています。
過度な目標(Excessive goals)
過度な目標は、自己や他者に対して過度な要求や期待を抱く状態を指します。一つの目標や基準に固執し、それを達成しなければ自己価値を見出せない、または他人からの評価を得られないと信じることです。
過度な目標は柔軟性を奪い、ストレスや不安を引き起こす可能性があります。自己の価値や幸福感が目標の達成に依存するため、目標を達成できなかった場合には自己批判や失敗感を抱く傾向があります。
ACTでは、過度な目標を緩和し、柔軟な心の状態を促すことを目指します。
具体的なアプローチとしては、次のようなものがあります。
- 自己価値の再定義
目標の達成によってのみ自己価値を定義するのではなく、自己の内面的な価値や個性を見出すことを重視します。目標の達成にこだわりすぎず、自己の多様性や成長のプロセスを尊重します。 - 価値に基づく行動
目標に固執するのではなく、自己の価値や意図に基づいて行動することを重視します。目標の達成だけに焦点を当てるのではなく、自己が大切とする価値や意味に従って行動することで、より充実感と満足感を得ることができます。
経験の評価(Evaluation of experience)
経験の評価は、過去の経験や現在の経験を判断し、評価する傾向を指します。特定の経験を「良い」「悪い」とラベリングし、それに基づいて自己や他者を評価します。
経験の評価は、柔軟性を阻害し、苦痛や困難に対する抵抗や回避行動を引き起こす可能性があります。経験をラベリングすることで、その経験に固執し、過去の出来事や現在の状況に縛られてしまう傾向があります。
ACTでは、経験の評価を解放し、柔軟な心の状態を促すことを目指します。具体的なアプローチとしては、次のようなものがあります。
- 経験の受容
経験を評価や判断するのではなく、ただ受け入れることを重視します。過去の出来事や現在の感情を受け入れることで、その経験に対して柔軟な対応を可能にします。 - 経験の拡大
特定の経験に固執せず、幅広い経験を積極的に追求することを促します。自己や他者との関係、興味や価値に基づいて多様な経験を追求することで、より充実感や成長を得ることができます。 - マインドフルネス
経験の評価にとらわれず、現在の瞬間に集中するマインドフルネスを実践します。マインドフルネスによって、経験を客観的に受け入れ、思考や感情にフュージョンせずに観察することができます。
これらのアプローチを通じて、経験の評価からの解放を促し、柔軟な心の状態を育むことができます。クライエントと治療者は、共にこれらのプラクティスを実践し、経験の評価に囚われずに自己の成長や意味づけを探求します。
Aの「Avoidance of discomfort(苦痛の回避)または(Avoidance of your experience)体験の回避」
Avoidance of discomfort(苦痛の回避)またはAvoidance of your experience(体験の回避)は、ACTにおける「A」の頭文字を表しています。これらは心の柔軟さを妨げる要因として考えられています。
苦痛の回避(Avoidance of discomfort)
苦痛の回避とは、不快な感情や経験から逃れようとする傾向を指します。人は苦痛や不安、恐怖といった不快な感情を回避しようとします。この回避の試みは、一時的には不快感を軽減させるかもしれませんが、長期的には心の柔軟性を制限し、問題や困難に対処する能力を阻害する結果となります。
ACTでは、苦痛の回避を超えて不快感に直面し、それに対して柔軟な対応をすることを重視しています。具体的なアプローチとしては、次のようなものがあります。
- 不快感の受容
不快な感情や経験を避けずに受け入れることを促します。回避ではなく、感情や経験を全うに経験し、その存在を認めることで、心の柔軟性と成長を促します。 - 意図に基づく行動
不快感に直面した上で、自己の価値や意図に基づいて行動することを重視します。不快感を回避するのではなく、自己の目標や意味に従って行動することで、より充実感と満足感を得ることができます。
体験の回避(Avoidance of your experience)
体験の回避とは、不快な思考や感情、身体的な感覚を避けようとする傾向を指します。人は不快な思考や感情を無視し、意識から遠ざけようとします。この回避の試みは、一時的には不快感を減らすかもしれませんが、結果として自己の成長や本来の価値に繋がる経験を逃すことになります。
ACTでは、体験の回避ではなく、自己の内面の経験を受け入れることを重視します。具体的なアプローチとしては、次のようなものがあります。
- デフュージョン(思考の解離)
デフュージョンは、思考や言葉との関連性を緩めることを指します。つまり、思考や言葉に囚われることなく、それらを単なる出現現象として受け入れることが求められます。例えば、マントラの繰り返し、思考の声に名前をつけるなどのテクニックがあります。 - 観察的自己(Observing self)の育成
観察的自己とは、自己と思考や感情との間に距離を置くことができる視点のことを指します。自己を客観的に観察することで、自己の一部としての思考や感情にとらわれずに受け入れることができます。マインドフルネスや観察的な瞑想などが観察的自己の育成に役立ちます。 - 実践と経験の重視
体験の回避ではなく、自己の成長や学びのために実践を重視します。自己の価値や意図に基づいた行動を通じて、不快感や困難に直面しながら経験を積み重ねることが重要です。そうすることで、自己の成長や意味づけが促されます。
アプローチを通じて、苦痛の回避と体験の回避からの解放を促し、自己の成長や柔軟性を培います。クライエントと治療者は共にこれらのプラクティスを実践し、苦痛や不快感に直面しながらも自己の価値や意図に従った行動を取ることを目指します。
Rの「Reason-giving for your behavior(回避行動に理由をつける)」
ACTにおける「R」はReason-giving for your behavior(回避行動に理由をつける)を表しています。これは、苦痛や不快感から逃れるために、自己正当化や理由付けを行う傾向を指します。人は、自分の行動や選択に対して合理化や正当化の理由を見つけることで、不快感や心の葛藤から逃れようとします。
この回避行動は、一時的には自己の安心感や内部の不快感の軽減につながるかもしれませんが、長期的には問題や困難から逃れるための制約を生み出し、自己の成長や意味づけを妨げる結果となります。
ACTでは、回避行動に理由をつけることを認識し、それに対して柔軟な対応をすることを促します。次に、具体的なアプローチをいくつか紹介します。
- 自己観察(Self-observation)
自己観察は、回避行動や自己正当化のパターンを客観的に観察することを指します。自分の行動や選択に対してどのような理由や言い訳をつけているのかを注意深く観察し、それを客観的な視点から見つめることが重要です。 - コミットメントに基づく行動(Committed action)
回避行動や自己正当化の代わりに、自己の価値や意図に基づいた行動を取ることを重視します。自分の行動や選択について理由をつけるのではなく、自己の目標や意味に応じて行動することで、より充実感と自己成長を実現します。 - 心理的柔軟性の促進(Promoting psychological flexibility)
心理的柔軟性は、自己の思考や感情に柔軟に対応する能力を指します。回避行動や自己正当化の代わりに、現在の状況や内在的な経験に対して開かれた姿勢を持つことが重要です。柔軟性を促すために、デフュージョン(思考の解離)や観察的自己の育成などのテクニックが用いられます。 - 自己の言葉との関係の変容(Changing relationship with your words)
ACTでは、言葉や思考との関係を変容させることを重視します。自己正当化や理由付けは、思考に囚われた状態を強化することがあります。そこで、思考に執着せず、それを単なる出現現象として受け入れるマインドフルネスやデフュージョンの練習が有効です。 - 自己の価値と意図へのコネクション(Connecting with your values and intentions)
ACTでは、自己の価値や意図にフォーカスすることを重視します。回避行動や自己正当化は、自己の価値観から逸脱した行動を引き起こします。自己の価値や意図につながる行動を選択することで、自己成長や充実感を追求します。 - コミットメントへの覚悟(Willingness to commitment)
回避行動や自己正当化に囚われず、自己の価値や意図に従った行動を取るためには、コミットメントへの覚悟が必要です。困難や苦痛が伴うかもしれない選択や行動にも積極的に取り組む意志を持ち、柔軟性と成長を追求します。
アプローチを通じて、回避行動や自己正当化のパターンから自己を解放し、自己の成長と意味づけを促します。治療者とクライエントは共にこれらのプラクティスを実践し、自己の経験を受け入れつつも、自己の価値や意図に基づいた行動を取ることを目指します。
「まとめ」第三世代のアプローチとしてのACT
今後は、認知行動療法(CBT)が深化し、第三世代のアプローチとしてACTや他の療法が主流となっていく可能性があります。その理由は次の通りとなります。
- 統合的なアプローチの重要性
- 第三世代の療法は、過去の療法の要素を統合し、より包括的なアプローチを提供します。それまでの認知行動療法では、認知や行動に焦点を当てていましたが、第三世代では、心理的柔軟性やコンテクストの重要性など、より広い視野を持つ要素が組み込まれています。これにより、より多様な問題や状況に対応することができます。
- 文脈と機能の重視
- 第三世代の療法は、心理的な問題や症状に対処するだけでなく、その問題がどのような文脈や機能の中で現れているかを理解しようとします。心の出来事を単純なものとして捉えるのではなく、それが人の行動や経験にどのような影響を与えているかを重視します。このようなアプローチは、個別の症状だけでなく、生活全体を俯瞰し、より効果的な変化をもたらすことを目指しています。
- 心理的柔軟性の重要性
- 第三世代の療法は、心理的柔軟性の向上を目指します。これは、苦痛や困難な感情に対して耐える力や、自己の価値や目標に基づいた行動を選択する能力を指します。心理的柔軟性は、固定された思考や感情パターンにとらわれず、現在の状況に適応し、より意味のある生活を築くことにつながります。第三世代の療法は、この心理的柔軟性の向上を支援するための具体的なスキルやテクニックを提供します。
- 科学的な根拠と研究の進展
- 第三世代の療法は、多くの研究に基づいて効果が確認されています。これらの療法は、さまざまな精神的および行動的な問題に対して効果的であることが示されています。また、これらの療法は、一般人の幸福度や生活満足度の向上にも貢献することが示されています。さらに、第三世代の療法は、他のアプローチとの比較研究やメタ分析においても有望な結果を示しています。
- 経験への焦点
- 第三世代の療法では、クライエントの経験に焦点を当てることが重要視されます。過去の出来事や将来の予測に固執するのではなく、現在の瞬間に意識を集中し、経験を受け入れ、それに対して柔軟な対応をすることが重要視されます。このアプローチは、クライエントが自己の経験をより客観的に見つめることを促し、問題解決や成長につながります。
- 個別化とクライエントの自己決定性
- 第三世代の療法は、クライエントの個別のニーズと目標に合わせてアプローチをカスタマイズすることを重視します。クライエントは自身の目標や価値に基づいて治療の方向性を決定し、自己の成長と変化に主体的に関与することができます。これにより、クライエントの自己決定性が尊重され、より持続的な変化が可能となります。
認知行動療法が深化することで、今後は第三世代のアプローチが主流となっていきます。また、これらのアプローチは、より包括的で統合的な視点を持ち、科学的な根拠に基づいて効果的であることが示されています。ACTはクライエントの心理的負担を減らすことに加え、クライエントの個別性や自己決定性を尊重し、より深い洞察と持続的な変化を促す可能性を秘めています。
別ページで紹介している心理的柔軟性を発展させるために行うACTの6つのコアプロセスを実践するための具体的な手順(ステップ)と照らし合わせることで理解が深まります。
ACT入門――痛みから逃げずに生きる技術」 著者: スティーブン・C. ヘイズ、スペンサー・スミス、ジェシカ・ハンソン 発行社: サイエンス社
「ACT in Practice: Case Conceptualization in Acceptance and Commitment Therapy」 著者: Patricia A. Bach、Daniel J. Moran、Steven C. Hayes 発行社: New Harbinger Publications
「The Happiness Trap: How to Stop Struggling and Start Living: A Guide to ACT」 著者: Russ Harris 発行社: Shambhala
「ACT Made Simple: An Easy-to-Read Primer on Acceptance and Commitment Therapy」 著者: Russ Harris 発行社: New Harbinger Publications
「Learning ACT: An Acceptance and Commitment Therapy Skills-Training Manual for Therapists」 著者: Jason B. Luoma、Steven C. Hayes、Robyn D. Walser 発行社: New Harbinger Publications