回避性特性やアレキシサイミア的側面者へのエンプティチェアは、葛藤や未完了の感情を認識することで、自己否定から自己尊重に転換する
回避性パーソナリティや社会不安症、アレキシサイミア傾向のクライエントに対してエンプティチェア技法を用いる際の目的は、「自己との対話を通じて内面の未完了課題を明確にし、感情の認識・表現・統合を促進し、自己理解と自己受容を深めること」です。特に回避性パーソナリティ傾向やアレキシサイミア傾向が強い方にとって、自身の感情を直接語ることは難しい場合が多く、エンプティチェアは内なる自分や他者への想像的対話を通して、抑圧された感情や未処理の体験を浮かび上がらせる安全な枠組みを提供します。
この技法の進行には、「感覚・感情・欲求の探索」から始まり、自身が抱える葛藤や未完了の感情(例:幼少期に会話ができなかった自己への怒りや恥)を明確化し、それに対して反映・洞察を深めていく段階を意識します。特に「他者に合わせすぎて自分の感情が分からなくなる」というアレキシサイミア的体験には、自分自身の視点で語る言葉を見つけ、身体感覚やイメージを手がかりにして内面の真実にアクセスする支援が求められます。
対話の中で重要なのは、「自分を偽って生きていることへの罪悪感」や「他者に理解されない孤独感」など、慢性的に持っている否定的信念と優しく向き合う姿勢です。感情の受容やその根底にある欲求を認識することで、「本当の自分」とのつながりが回復されていきます。
最終的な目標は、自己理解と感情の統合を通して、「自分自身でいてよい」という実感を得ることです。それは、対人恐怖を減らし、外界とつながる力を育てるとともに、内面の空虚感や罪悪感に対して「意味づけ」や「変容」のプロセスを与えるものとなります。そしてクライエントが「自己と共にいる感覚」を得ることで、自己否定から自己尊重への転換が可能になるのです。
このページを含め、心理的な知識の情報発信と疑問をテーマに作成しています。メンタルルームでは、「生きづらさ」のカウンセリングや話し相手、愚痴聴きなどから精神疾患までメンタルの悩みや心理のご相談を対面にて3時間無料で行っています。
クライエントからの相談内容
保育園のときから話すことに羞恥心が強く、感情を出すことにも抵抗があり、園児たちとも挨拶程度しかできなく、場面緘黙のような状態が続きました。 父親がとても強かったのですが、家族間では普通に会話ができるのに保育園では思ったことを話せなく、話せたとしても一言の返答がとても遅くなる状態でした。そのため、対人関係に恐怖を感じており、小学校に入学すると一部の同級生などに変人扱いや気持ちが悪いとからかわれるようになりました。また、 学生時代を通して一人で勉強する宿題や課題に集中できなく、そのことで担任や同級生の目が気になり、その度に自己嫌悪に陥ることになりました。
自分での分析や自己評価では、幼い頃から対人恐怖症が強い社会不安症や回避性パーソナリティ障害を持ち合わせていたのだと思います。最近では自分より他者の感情が先行して、自分の中には感情があるのですが、アレキシサイミア的側面もあると捉えています。
現在は33歳ですが、仕事上だけでなく社会的に人間と関わることを恐れていて、特に対人場面を避けることでその場をしのいでいて、とても生きづらさを感じています。ただ、基本的には親しい人との楽しい行動には参加するようにしています。
今までは、心理カウンセラーのもとで認知行動療法を行ってきましたが、既に放棄している状態です。CBTは私に合わないような気がしています。
今後の希望としては、まず自分自身の特徴を知ることで、気持ちの整理することから初めて、人間関係ではコミュニケーションが取れるようになりたいと思っています。また、幼少から続いている物事に集中できないことを克服していきたいと思っています。

「感情と自己の乖離」「存在の空虚感」「人とのつながりへの渇望と諦め」
33歳のクライエントの例に対するエンプティチェア技法は、心の奥底にある「言葉になりづらい痛み」を可視化し、理解と希望をもたらす大切な機会と捉えます。
理解のための視点
33歳のクライエントの例から読み取れる「感情と自己の乖離」「存在の空虚感」「人とのつながりへの渇望と諦め」は、相互に関連する深層的なテーマとなります。
- 感情と自己の乖離
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これは、「自分が今、何を感じているのかがわからない」「感じていても、それが“自分のもの”という実感が持てない」状態です。
▶ 背景として考えられること:
- 幼少期から「感情を出すことが不安」「周囲の感情に巻き込まれがち」など、安全に感情を感じる経験が少なかった。
- 他者の気持ちに敏感であるあまり、自分の感情が埋もれていった。
- アレキシサイミア的側面や回避型パーソナリティ傾向により、自己と感情との接続が弱くなっている。
- 存在の空虚感
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「自分が何者なのか分からない」「何をしても心が満たされない」「本当の自分がいないように感じる」など、存在の根底にある空洞感です。
▶ 背景として考えられること:
- 自己の感情や欲求、価値観に接続できないため、「自分自身の存在感」が希薄になる。
- 周囲に合わせて生きてきたため、自分らしさや意志を持つ経験が乏しい。
- 深層に「愛着の不安」や「条件付きの承認」が存在し、自己存在の肯定感が育ちにくかった。
- 人とのつながりへの渇望と諦め
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「本当は誰かと深くつながりたい」「でも、理解されない」「だから人を避けるしかない」という矛盾した欲求と諦めの共存です。
▶ 背景として考えられること:
- 幼少期の場面緘黙やいじめの経験から「他者=怖い」「自分を見せると傷つく」という信念が形成されている。
- それでも心の奥には「誰かに理解されたい、ありのままで愛されたい」という切実な渇望が残っている。
- 自己否定感(スキーマ:「欠陥・恥」「失敗」など)が、つながりを築く力を阻害している。

エンプティチェアのステップ
- アレキシサイミア傾向があるため、感情のラベル化を焦らずサポート
- 他者視点に流されやすいため、「自分自身の内側の感情や価値観」に戻す作業が重要
- 罪悪感・自己否定が強いため、過度な内省が再トラウマとならないよう、丁寧なペーシングをする
ワークを通じて期待できる変容
言語化できなかった自己の声と出会い、失われていた「自己とのつながり」を再構築し、徐々に「回避していた感情や人間関係」に対して耐性を高め、生きる意味の回復、自己の価値の再確認へと向かうことが期待されます。
「お話を伺っていると、まるでご自身の中に“心の声”があるのに、それがどこにあるか分からなくなっていたり、本当の自分に触れられないような感覚があるのかもしれませんね。」
「同時に、人と深くつながりたいという気持ちもお持ちなのに、それを諦めざるを得なかった過去が何度もあったように感じます。」
「そうしたことが積み重なって、“自分って何なんだろう”とか、“誰にも分かってもらえないのでは”という気持ちを育ててしまったのかもしれません。」
「このエンプティチェアのワークでは、そんなふうに“心の奥にある声”を、少しずつ聴いていきます。感情と自分とのつながりを取り戻して、自分の存在を感じられるようになること。そして、再び誰かとつながる力を育んでいくことも目指していきます。」
「たとえば、あなたの中には“声はあるのに未接続なスピーカー”のような場所があるのかもしれません。誰かに届けたい声はあるのに、音が出せない。逆に、人の声だけが大きく聞こえてきて、自分の声がどんどん見えなくなってしまう。
エンプティチェアの対話は、その“声の電源と接続を少しずつ戻していく”作業でもあります。」
クライエントの現在地を肯定的に受け止めながら、プロセスの意味と希望の方向を言語化してあげることが、変化への一歩になります。
「今、空いているこの椅子には、“悩める自分”を座らせてみましょう。
あなた自身が抱えてきた、うまく言葉にできなかった想いや感情を、
今ここで、その“もう一人の自分”に向けて語りかけてみてください。」
【目的】:今この瞬間の身体感覚、感情、内なる欲求を明確にする
- 【問いかけの例】
- 「今この場では、体のどこにどんな感覚がありますか?」
- 「エンプティチェアに座っている“悩める自分”を見たとき、どんな感情が湧いてきますか?」
- 「そのとき、あなたは本当は何を望んでいたと思いますか?」
- 【ポイント】
- 頭ではなく“身体感覚”に意識を向けさせる(胸が重い、呼吸が浅いなど)
- 言葉にならない感情には「色」「形」「動き」で表現を促す
【目的】:「言いたくても言えなかったこと」や「未解決のままになっている感情」を浮かび上がらせる
- 【問いかけの例】
- 「その“悩める自分”に、あなたは今、何を伝えたいですか?」
- 「あのとき本当は誰に何を言いたかった?」
- 「何が怖くて、どこで立ち止まってしまったのか?」
- 【技法】
- 「今の自分」⇔「幼少期の自分」など、内なる二者間対話を促進
- 椅子を交互に移動しながら「セリフ」を交わすようにする
【目的】:気づかなかった感情・欲求・価値観に触れ、「なぜそう感じるのか」「どうして今まで抑えてきたのか」の理解を深める
- 【問いかけの例】
- 「今、その言葉を伝えたことで、体や気持ちに変化はありますか?」
- 「“悩める自分”が、今あなたの言葉を聞いて、何と答えそうですか?」
- 「そのとき、他に選べたかもしれない行動はありましたか?」
- 【キーワード】:「気づき」「自己理解」「再評価」
【目的】:「未完了の感情を完了させる」「葛藤を乗り越えた新たな自分を見出す」
- 【問いかけの例】
- 「今、この“悩める自分”に、あなたは何をしてあげたいですか?」
- 「ここで何を手放し、何を受け取りたいですか?」
- 「“新しい自分”に名前をつけるとしたら何ですか?」
- 【技法】
- 象徴的な「別れ」や「許し」「統合」を促すワークを取り入れる
- 必要に応じて「未来の自分」との対話は重要(希望・目標の形成)
【目的】:洞察や変容を「日常の行動」に結びつけ、現実的な自己変化を促す
- 【問いかけの例】
- 「今日このワークを通して、何に気づきましたか?」
- 「明日、あなたが少しでも実践できそうなことは何ですか?」
- 「次に感情が分からなくなったとき、どんなふうに向き合ってみたいですか?」
- 【補足】
- 小さな一歩でも良い(「感情日記をつけてみる」「3秒長く相手の目を見る」など)
エンプティチェアの具体的セッションのステップ
33歳のクライエントの例にあるように、自己洞察力の高さ、誠実な自己分析、そしてエンプティチェア技法に対する意欲を踏まえ、ここではゲシュタルト療法の「エンプティチェア技法」のセッション方式で具体的に解説します。
セッションの目的
- クライエントが今ここ(Here and Now)で感じている身体感覚や感情に気づき、それを言語化・可視化していく。
- 外界からの反応や他者の期待に流されることなく、「本来の自己の内面」を丁寧に掘り起こす。
- 感情や欲求に対する抑圧・回避傾向(アレキシサイミア的側面)に、優しく・安全にアプローチしていく。

導入:セッティングとウォーミングアップ(5〜10分)
- イスを二脚用意し、空のイス(エンプティチェア)に“ある存在”を座らせる。 例)悩んでいる自分、子どもの頃の自分、社会の期待、批判する内的な声など。
- クライエントに、「今、どんな存在をこのイスに座らせたいですか?」と問いかける。
- クライエントが選んだ“存在”を言葉で定義できるようサポートする。
身体感覚に気づき、「今・ここ」に戻すことで、思考から感情・感覚への橋渡しをする。
促進する問いかけ:
- 「今、この瞬間、どんな身体の感覚がありますか?」
- 「この話をしているとき、胸やお腹、喉など、どこかに反応を感じますか?」
- 「その感覚に、色や形、温度をつけるとしたら?」
身体に感じる違和感・緊張・ぴくつき・呼吸の浅さなどに気づかせる。
“言葉にならない不安”や“モヤモヤ”をイメージ化する。
ねらい:言語化されていない、または抑圧された感情にそっと触れ、その輪郭を浮かび上がらせる。
促進する問いかけ:
- 「この空の椅子にいる“あなた”を見ていると、どんな気持ちになりますか?」
- 「その気持ちはどんな名前がつきそうですか?怒り、悲しみ、悔しさ、不安…?」
- 「その感情が声をもっているとしたら、どんな言葉を語りそうですか?」
- 「誰に、何に対して、その感情が向かっていると思いますか?」
“分からない”と答えた場合は、「分からないという感じを、もう少し観察してみましょう」と返し、ジャッジせずに進める。
共感力ゆえに他者の感情に引っ張られてしまう点を考慮し、「これはあなた自身の感情だとしたら、どんな風に感じる?」と再帰的に促す。
ねらい:感情の背後にある「本当の望み・欲求」を見つけていく。
※アレキシサイミア的側面によって自分の欲求に鈍感になっている場合、慎重に掘り下げる。
促進する問いかけ:
- 「その気持ちを持つ“あなた”は、今、何を求めているのでしょう?」
- 「その感情の奥に、“〜してほしかった”という願いが隠れていませんか?」
- 「自分を、どんな風に扱ってほしかったのでしょうか?」
- 「この空の椅子の“自分”が、あなたに言いたいことはなんだと思いますか?」
「安心したかった」「愛されたかった」「分かってほしかった」などの原初的欲求を言葉にできるよう促す。
「それがかなわなかったとき、どんな戦略で自分を守ってきたか?」を問いかけ、スキーマと欲求のギャップに気づかせることも。
- 「今、ここまで体験してみて、どんな気づきがありましたか?」
- 「感覚・感情・欲求を、こうして見つめてみたとき、自分にどんな変化がありましたか?」
- 「エンプティチェアの“あなた”に、最後にかけてあげたい言葉はありますか?」
気づきの断片をクライエントがまとめられない場合、カウンセラーがリフレクションして整理する。
セッションの目的
- 自分の内にある対立する2つの側面(内的葛藤)、あるいは他者との関係性の中で残された未完了の問題を明確にする。
- 対話形式を通して、見過ごされていた本音・感情・価値観の衝突を可視化する。
- 「あなたの中で、対立している2つの気持ちはありませんか?」
- 「あるいは、どうしても解決しきれない人間関係や状況がありますか?」
例:
- 「前に進みたい自分」vs「怖くて止まっている自分」
- 「今までの自分でいいという諦め」vs「新たな自分に変わり人生を歩みたい気持ち」
- 「もう会えない人や変人扱いにしてきた人たちに伝えられなかった言葉」
クライエントが語るテーマに応じて、空の椅子にどの存在を座らせるか明確にする。
イスA(自己A)とイスB(自己Bまたは相手)を行き来しながら対話する。
促進する問いかけ:
- 「この立場のあなたは、もう一方のあなたに何を伝えたいですか?」
- 「今、イスに座っているその側の“あなた”は、どんな気持ちを抱いていますか?」
- 「その気持ちはいつからあったと思いますか?」
- 「もう一方の自分に対して、言いづらいけど本当は言いたかったことは?」
行き来を繰り返すことで、「内的矛盾」「相手への抑圧された怒り・愛着・悲しみ」などを表出させる。
- 感情が高まる場面では「その気持ちをもっと身体で表してもいいですよ」と伝え、声や姿勢の変化を歓迎する。
- 涙、怒り、沈黙も受け入れ、「この反応が、あなたの大事な部分なんですね」とフィードバック。
- 「この2人の対話を終えて、どんな気づきがありましたか?」
- 「対立していたと思っていた2つの自分に、共通の願いや価値観はありますか?」
- 「どちらの声も大切にしながら、これからどう関わっていけそうですか?」
セッションの目的
- 感情の“溜め込み”や“凍結”からの解放を促進する。
- 対立していた側面や他者との関係性の中にあった感情を自己として統合していく。

- 「前回、対話をした2人の自分(または人物)について、今どんな気持ちが残っていますか?」
- 「まだ伝えきれていないこと、出しきれていない気持ちはありますか?」
怒り、悲しみ、寂しさ、絶望感、罪悪感、無価値感などを安心して出せるようサポート。
表現のサポート:
- 「その怒りを、身体でどう感じていますか?拳を握ってもいいですよ」
- 「もし“あのとき”に戻れたとしたら、何を叫びたいですか?」
- 「その涙は、どんな言葉とつながっていますか?」
感情の過剰な“上演化”には注意し、クライエントの「今ここ」の安全感を確認しながら進める。
- 「この感情は、あなたにとってどんな意味を持つと思いますか?」
- 「その感情が“あなたらしさ”の一部だとしたら、どんなメッセージが込められていますか?」
- 「この気持ちを、これからどう扱っていきたいですか?」
感情は敵ではなく、自分の価値を守るために現れる味方であることに気づかせる。
セッションの目的
- 過去の未完了感情を整理し、自分の人生に責任と選択権を取り戻す。
- クライエントがこれからの生き方を、より自己一致的に選択していけるように支援する。
- 「今までのセッションで、どんなことに気づいたと思いますか?」
- 「対話を通して、“本当の自分”は何を大切にしたいと思っていたでしょうか?」
- 「あなたはこれから、どんな自分で在りたいですか?」
- 「そのために、“できること”と“手放してもよいもの”は何でしょうか?」
- 「これまで、誰の期待に生きてきたと思いますか?これからは、誰の期待を選びますか?」
「行動計画」ではなく、「在り方」や「価値観の選択」に重きを置く。
内的自由を取り戻すプロセスを支援する。
空の椅子に「未来の自分」または「インナーチャイルド」を座らせてメッセージを送る。
問いかけ例:
- 「この先の人生を歩む“あなた”に、今のあなたが贈りたい言葉は何ですか?」
- 「傷ついた自分に、どんな言葉をかけてあげたいですか?」
セッションの目的
- 内的対話や感情の表出を通じて得られた体験を意味づけ・洞察に変換する。
- 自分の信念・価値観・思考のパターンに気づき、「なぜこうなっていたのか」を理解する。
- 感情だけでなく認知や行動の背景構造を照らし、統合を進める。
セッションのつながりを持たせ、クライエントの“今ここ”を確認。
主な問いかけ:
- 「前回のセッションのあと、どんなことが心に残りましたか?」
- 「その気づきは、日常の中でどんな影響がありましたか?」
- 「今日は、改めてどんなテーマに向き合いたいですか?」
自発的な語りを引き出し、クライエントが「今、何に引っかかっているか」を見極める。
エンプティチェアで出てきた感情や言葉を手がかりに繰り返される人生パターンを明確にする。
促進の問いかけ:
- 「その時の『声』は、あなたの中でいつから聞こえていたと思いますか?」
- 「似たような気持ちになった出来事は、他にも思い出せますか?」
- 「この感情は、誰に向けていたものだったでしょうか?」
- 「なぜ“あの人”に言えなかったのでしょう?」
フィギュア・グラウンドの視点で、「浮かび上がるもの」と「背景に退いているもの」の関係性を探る。
クライエントの口癖・視線・体の動きなどをミラーリングして、未言語領域を掘り起こす。
- 感情の背景にある思考の癖(コアビリーフ)や防衛的な反応に気づく。
- 問いかけを通じて「なぜそうしてきたのか」「本当はどうしたかったのか」に光をあてる。
促進の問いかけ(洞察):
◆ コアビリーフへの気づき
- 「自分が“こうしなければ愛されない”と思っていたとしたら、それは何ですか?」
- 「あなたの中に、“絶対に見せてはいけない自分”がいるとしたら、それはどんな姿ですか?」
- 「何かを“しない”選択をしてきたあなたは、どんなことを守ろうとしていたのでしょう?」
知覚の偏りや再解釈のヒント
- 「もしあのとき、〇〇ではなく“別の意味”があったとしたら、どんな可能性がありますか?」
- 「その出来事を、今のあなたから見るとどう感じますか?」
- 「あの相手の言動は、本当に“あなたの全否定”だったと思いますか?」
◆ 自己への新しい視点
- 「あなたのその選択は、当時のあなたなりの“サバイバル”だったのかもしれませんね」
- 「あの時のあなたを、今のあなたがそばで見ていたら、何と声をかけてあげたいですか?」
セラピストは「意味づけを押しつけない」姿勢を保ちつつ、クライエントの“自己統合”をサポートする。
洞察は「深すぎず・浅すぎず」。体験が感情・認知・身体でつながる瞬間を見逃さない。
得られた洞察を、「自分の人生の物語」や「今後の自己決定」とつなげる。
主な問いかけ:
- 「今日の気づきを、これからのあなたの人生にどう活かしたいですか?」
- 「今までの自分と、これからの自分をつなぐ“ひとつの言葉”があるとしたら?」
- 「ここから先、“自分との関係”をどう築いていきたいですか?」
感情を色で描写してもらう
キーワードカードを使って「過去→今→未来」の自分を並べて言語化する
セッションの目的
- 感情的・関係的な未完了体験に“終止符”を打つ
- 新しい視点・感覚を通じて、自分自身に変容を許可する
- 得られた気づきを「生き方」や「日常」に統合する

クライエントが「ここまでの旅」を見渡し、自分の現在地を確認する
主な問いかけ:
- 「前回のセッション以降、あなたの中で何が変化しましたか?」
- 「今、どの感情や言葉が特に残っていますか?」
- 「このテーマを“終わらせる”ことに、今どんな気持ちがありますか?」
「まだ手放せていない部分」が残っているかを見極める
「手放したい」と「まだ執着していたい」が混在するのは自然なプロセス
具体的な“完了体験”を通して、溜まった感情を解放し、未完了に区切りをつける
A. 再度エンプティチェア:最後の対話
- 【方法】
再び相手を椅子に座らせ、「今こそ伝えたいこと」を語る
→ 相手役にもなり返答を行う
→ 最後に「あなたとの関係に終止符を打ちます」と明確に言語化 - 【問いかけ例】
- 「あの人に、今こそ“言い残したこと”があるとしたら?」
- 「感謝でも怒りでも、心に残っている感情は?」
- 「最後に、自分の中で何を“終わらせたい”ですか?」
B. 手紙のワーク:「終わりの手紙」
- 【方法】
相手(または過去の自分)に宛てた手紙を即興で書いてもらう
→ 朗読することで感情を身体から外に出す
→ 読後は「破る・燃やす・しまう」などの儀式的動作で終わりを象徴化
C. 身体技法を併用:「完了のジェスチャー」
- 【方法】
終わらせる言葉を口にしながら、“切る・離す・背を向ける”などの身体表現を行う
→ 感情的にも身体的にも「もう持ち続けない」体験をする
古い自己イメージ・役割を手放し、「これからの自分」を迎え入れる準備をする
主な問いかけ:
- 「あの時のあなたは、何を守るためにその役割を選んでいたと思いますか?」
- 「もう、その役割を続けなくても大丈夫だと思える理由は何ですか?」
- 「今、新しい“あなた自身”にどんな許可を出してあげたいですか?」
- 「もし、“変わってもいい”としたら、何が変わると思いますか?」
抵抗感があれば、「変わらなくてもいい自分」にも許可を出す
“変容”は自己否定ではなく、肯定的な進化として捉える
統合された自分を「これからの人生・人間関係」にどう活かすかを描く
主な問いかけ:
- 「今日の完了体験を経て、これからの自分とどう向き合っていきたいですか?」
- 「“今のあなた”にふさわしい言葉やイメージがあるとしたら?」
- 「この気づきや感覚を、日常のどんな場面で活かしたいと思いますか?」
A. 未来の自分からのメッセージ
- 「3年後のあなた」が今の自分に手紙を書いてくれるとしたら?
- どんなことを伝えてくれると思いますか?
イメージワーク:「統合のシンボル」
- 気づきや変化を象徴する色・風景・物をイメージしてもらう
→ 統合のアンカー(視覚・言葉)として日常に持ち帰る
「儀式化(シンボリックエンド)」の支援アイデア
「エンプティチェアの終結宣言テンプレート」
「未来のビジョンを描く統合ワーク」
セッションの主な目的
- セラピー内で得た「気づき」や「感情の整理」を、日常生活に活かす
- 「今の自分」でどう人間関係や生活と関わっていくかを再構築する
- セラピー内の安全な場から、現実のフィールドへ“橋をかける”
セラピーでの変容をクライエントが「自分のもの」として実感すること
主な問いかけ:
- 「ここまでのセッションを通じて、どんな変化があったと感じますか?」
- 「今のあなたは、どんな状態ですか?」
- 「以前の自分と、今の自分で“違い”があるとすれば?」
セラピーの“成果”をクライエント自身が言語化できるよう支援します。
セラピーで得た気づき・変化をどこで・どう活かすかを明確にする
主な問いかけ:
- 「今の自分を、どんな場面で生かしていきたいですか?」
- 「特定の人との関係性で、“この変化”をどう活かせそうですか?」
- 「仕事・家族・パートナーとの関係において、変えられそうな小さな行動は?」
日常の中で「気づきを活かす具体場面(人・時間・場所)」に焦点を当てます。
A. リアルライフ・シミュレーション
- エンプティチェアを「実際の人物」に見立てて、会話を再現
→ 新しい自己表現を“現実に向けて試す”予行演習
B. ライフマップ・スケッチ
- 「今の自分を、どの場面に投入したいか」を可視化(人間関係・職場・家庭など)
→ クライエント自身が“次の現場”をイメージしやすくなる
実生活において、すぐできる“ひとつの行動”を決めること
主な問いかけ:
- 「今週、どんなことから始めてみたいですか?」
- 「その人との関係に、どんな一言を加えられそうですか?」
- 「“新しいあなた”として取れる行動を、何か一つだけ挙げるとしたら?」
「非完璧・非成功型」で構わない。
→ 小さな一歩を自分で設定できることが変化の鍵になります。
A. 1ステップ・プランニング
行動内容 | 実施日 | 対象 | 目的 | 想定される感情 | 支援が必要なら? |
例:「同僚に“私はこう思ってた”と伝える」 | 今週金曜 | 同僚・上司 | 誠実な自己表現 | 緊張・恐れ | 伝える前に友人に話を聞いてもらう |
- 日常の中で“支えてくれる存在や工夫”を確認し、安心して自立できる準備をする
- セラピーの終結または次の段階への橋渡しを意識させる
主な問いかけ:
- 「この変化を支える人や物、どんなものがありますか?」
- 「これからも支えとして意識できそうな習慣はありますか?」
- 「セッションの終わりに向けて、何か準備したいことはありますか?」
セラピーを“終えること”は「喪失」ではなく「統合・自立」のプロセスと伝える