感情の概念、感情の異常など感情から発する見えない叫びを言葉で理解するために、認知、表現、制御、意味に変換した心理用語で捉えてみました。
基本感情には、喜び、悲しみ、怒り、恐れ、驚き、嫌悪、(愛)などがあります。これらの感情に対する心の叫びを言葉で理解するために心理用語を挙げてみました。
- 感情の認知
基本感情は身体的反応や脳の神経活動の変化と密接に関連していますので、感情を認知することはその感情を正確に理解し適切な反応をするために必要なことです。 - 感情の表現
感情は非言語的な方法で表情、ジェスチャー、声のトーンなどで表現されます。感情を適切に表現することは、人との関係を深めたりコミュニケーションを円滑にするために重要なことです。 - 感情の制御
感情を制御することは、感情的な反応を適切に処理するために必要であり、感情を制御することで自己や他人に対して不適応的なイメージを与えてしまうことを防ぐことができます。 - 感情の意味
感情には何らかの意味があると考えられていて、例えば、怒りは何かに対して不満や失望を感じたときに起こります。感情の意味を理解することで自己や他人を理解し、対人関係を改善することができます。
このように基本感情に対する心理の理解は、感情の認知、表現、制御、意味などを必要とします。イメージとしては感情を脳内や身体的反応として捉え、それを心理用語の言葉で理解することによって心の叫びが理解できるかもしれません。
感情・気分・情動の概念
感情は、一時的な反応であり、特定の事象に対する反応として現れます。例えば、喜び、怒り、悲しみ、恐怖などが感情の例です。感情は身体的な反応や行動にも表れることがあります。
気分は、感情とは異なり、より長期的な状態を表します。例えば、数日間や数週間にわたって持続する不安や沈んだ気分、活気や興奮などが気分の例です。
情動は、感情や気分のように、情動体験に関連する身体的・心理的変化の状態を表します。情動は感情や気分とは異なり、より即時的な反応として現れます。例えば、興奮、不安、緊張、恐怖、怒り、喜び、悲しみなどが情動の例です。情動の変化が不適切になることは、さまざまな心理的障害の症状として現れる可能性があります。
不安と恐怖の概念
不安や恐怖は、一般的に「負の感情」に分類されます。ここでは、それぞれの概念について詳しく説明します。
不安（ふあん）は、現在や未来の何らかの危険や脅威に対する恐れや心配の状態です。不安を感じることは、適切な時には警戒心を高めるために役立ちますが、過度な場合は日常生活に支障をきたすことがあります。例えば、社交不安症（社交恐怖症）のように、人前で話すことができずに日常生活に支障をきたします。そのうえ、不安症状は、心身症や過食症、強迫性障害、パニック障害など、さまざまな精神障害の症状として現れることがあります。
恐怖（きょうふ）は、現在起こっている危険な出来事や将来の可能性に対して、即座に反応することで自己を守ろうとする身体的反応や心理的な状態を指します。恐怖は、生命を脅かすような危険な状況での自己防衛反応としての役割がありますが、過度の恐怖はパニック障害や強迫性障害など、異常な恐怖反応を引き起こすことがあります。また、社交不安症のように、不安や恐怖によって、人との交流や社会生活に支障をきたすことがあります。
感情の興奮性の異常
- 感情鈍麻(Emotional blunting)
感情を鈍くする症状で、感情の表現や体験が著しく減少する場合があります。患者は周囲の刺激に対して感じる感情が少なく、無感動や冷淡な態度をとることがあります。うつ病や統合失調症、自閉症スペクトラム障害などで見られます。 - 情動麻痺(Apathy)
感情の表出自体は可能ですが、関心や興味が欠けるために、感情や動機づけが乏しい状態を指します。一般的には、倦怠感、興味の欠如、やる気の低下、エネルギー不足などがあります。多発性硬化症、パーキンソン病、脳卒中後の前頭葉病変など、脳疾患や神経障害、うつ病や認知症などで見られます。 - 快楽消失(Anhedonia)
快楽を感じることができなくなる症状で、食欲、性欲、趣味、社交などの日常的な活動に対する関心を失ったり、喜びや楽しさを感じなくなる場合があります。うつ病、統合失調症、薬物乱用、アルコール依存症などで見られます。
感情の興奮性の亢進
感情の興奮性の亢進には、易刺激性と焦燥感の2つのパターンがあります。
易刺激性は、非常に小さな刺激に対して異常に反応してしまうことを指します。例えば、物音や明るさなどの刺激に過剰に反応してしまったり、些細なことにイライラしたりすることが挙げられます。これは、軽度の気分障害や不安障害、注意欠陥・多動性障害(ADHD)などに見られます。
一方、焦燥感は、イライラ、不安、不眠、不安定な気分などを伴う感情の亢進を指します。身体的な緊張感があるため、手足の震えや頭痛、胃腸の不調などが起こることがあります。また、過去のトラウマやストレス、薬物使用や中毒症状、あるいは躁うつ病などの精神疾患でも見られます。
これらの感情の興奮性の亢進は、日常生活に支障をきたすことがあるため、早期の対処が必要です。
感情調節の異常
感情調節の異常には、情動失禁という状態があります。情動失禁とは、感情が適切に調節できずに突発的に出現してしまう状態のことを指します。これにより、周囲の人々を驚かせたり、怒らせたりします。
情動失禁は、多くの場合、脳の前頭葉の損傷によって引き起こされます。前頭葉は、感情や行動の調節に重要な役割を果たしており、損傷があると情動の制御がうまく機能しなくなります。
情動失禁は、例えば、怒りや悲しみ、笑いや興奮などの感情が突発的に出現することが特徴的です。例えば、笑いが止まらなくなったり、泣き崩れたりすることがあります。また、怒りや興奮が抑えきれずに暴力行為を行ってしまうことがあるため、周囲の人々にとっても危険な状態と言えます。
情動失禁は、薬物乱用やアルコールの依存症、うつ病、統合失調症、脳卒中や外傷性脳損傷などの病気によって引き起こされることがあります。
離人（症）
離人症とは、自分や周囲の現実感が失われたり、夢の中にいるような感覚になる症状を指します。一般的には、現実感の喪失や自己との切り離しを特徴としており、不安や恐怖、緊張などの感情が深刻な場合に発生します。
離人症の症状には、自分自身が現実感を失ったような感覚、外部世界が現実的でなく、不真面目に感じる感覚、周囲の人々や自分自身が別の存在のように感じる感覚、自分自身が他人から見えているような感覚などがあります。また、体の感覚の異常や、時間感覚の異常を伴うこともあります。
離人症の原因は、ストレスやトラウマ、うつ病、不安障害など、精神的な問題が関与しています。また、物質の乱用や脳の疾患、身体的な病気などが原因となることもあります。
恍惚と両価性
恍惚と両価性の感情異常について説明します。
- 恍惚（こうこつ）
現実感の低下、周囲の出来事が夢のように感じられる、自己と周囲が遠く離れているような感覚など、現実に対する感覚や認知の異常を伴う状態を指します。精神病の症状としてよく見られ、特に統合失調症や躁うつ病の中で現れます。 - 両価性の感情（りょうかせいのかんじょう）
一つの感情に加え、それとは反対の感情が同時に現れる状態を指します。例えば、喜びと悲しみ、幸福と不安、愛と憎しみなどが同時に現れる場合があります。この状態は、双極性障害（うつ病と躁病の両方を経験する疾患）の中でも見られることがあります。
恍惚と両価性の感情異常は、一般的には健常者にはあまり見られない症状ですが、精神疾患によって引き起こされます。
気分の異常
気分の異常には抑うつ気分、爽快気分、多幸症があります。
- 抑うつ気分
- 抑うつ気分は、落ち込みや悲しみ、無気力感、希望の喪失などを伴う気分の異常で、うつ病や双極性障害などの精神障害に見られる症状です。生活や仕事に支障をきたすことがあります。
- 爽快気分
- 爽快気分は、高揚感や興奮、楽観的な気分などを伴う気分の異常で、躁病と呼ばれる双極性障害の一つの症状です。自信過剰や冒険的な行動、判断力の低下などを引き起こすことがあります。
- 多幸症
- 多幸症は、極端な自信過剰や誇大妄想、現実と乖離した幸福感などを伴う気分の異常で、双極性障害の一つの症状です。現実的な判断力の低下や、冒険的な行動、思考や行動の異常を引き起こすことがあります。
喜びに関する心理用語
| 喜び | 愉快で幸福な感情で楽しい、幸せ、満足などの感情的な状態を表す 幸福感 – 人生全体での幸福感や生きがいを感じる状態で自己実現、充実感、達成感、愛情などによって生じる |
| 幸福感 | 人生全体での幸福感や生きがいを感じる状態で自己実現、充実感、達成感、愛情などによって生じる |
| 共感 | 他人の感情や立場に対して共感し、理解する状態で共感を受けることで、喜びや幸福感を得ることがある |
| 熱中 | 特定の活動や関心事に没頭する状態であり、楽しんでいることに全身全霊で取り組むことができる |
| 興奮 | 新しい体験や挑戦によって生じる感情的な状態でワクワクした気持ちや興味、好奇心が起こる |
| 満足感 | 目標達成や成功などによって得られる、充実感や満足感で達成感や達成目標に応じて変わる |
| 幸運感 | 幸運を感じる状態で偶然や運に恵まれたと感じることによって生じることがある |
| 優越感 | 自分が他人よりも優れていると感じる状態であり、成功や成果、才能などによって生じる |
| 愉悦 | 極度の喜びや興奮、高揚感を伴う状態で快楽、酩酊、熱狂などによって生じることがある |
| 喜劇的ユーモア | 普段の生活において、ユーモアや笑いを見出し、楽しむことができる状態で常に楽観的になれる |
信頼に関する心理用語
| 信頼 | 他人や自己に対して安心感や確信を持つことであり、信じられるという感情的な状態を表す |
| 不信感 | 他人や自己に対して疑いや不信感を持つことであり、信頼できないという感情的な状態を表す |
| 依存 | 他人や物事に対して頼りにしている状態であり、信頼や支えに依存している状態を表す |
| 信念 | 自己や他人に対して信じる心、または信じることであり、個人の価値観や信念に基づいて形成される |
| 疑心暗鬼 | 他人や社会に対して不信感や疑いを抱く状態であり、極端な不信感や恐怖感を伴うことがある |
| 自己信頼 | 自己に対して信頼を持ち、自分の能力や判断力に自信を持っている状態 |
| 社会的信頼 | 社会的な制度や他人に対して信頼を持つ状態であり、法律や権力、制度などに対して信頼を持つことが含まれる |
| 組織信頼 | 組織や企業に対して信頼を持つ状態であり、組織の信頼性、信用性、正当性、公正性などに基づいて形成される |
| 忠誠心 | 他人や組織に対して忠実であるという意識や心情であり、信頼を基盤に形成されることが多い |
| 信頼回復 | 信頼関係が崩れた場合に再び信頼を取り戻すための過程であり、失敗や誤解、裏切りなどによって崩れた信頼関係を修復することを目的としている |
恐れに関する心理用語
| 恐怖 | 生命や身体、心理的な脅威に直面したときに生じる、強い不快感情の状態で逃げる攻撃する反応が出ることがある |
| 不安 | 予測される未来的な危険や脅威に対する不安定な感情的状態で、現在の状況に対する不安定な感情的反応を伴うことがある |
| 緊張 | 潜在的な危険やストレスによって生じる身体的な反応であり、心拍数や呼吸数が上がることがある |
| 恐慌 | 突然の恐怖感によって引き起こされる、非常に強い恐怖の状態が多く、突然襲ってくるパニック発作、強烈な恐怖感や不安感、心臓がバクバクする、呼吸が荒くなる、めまいや動悸などの症状がある |
| 恐れの緩和 | 恐れを軽減することを意図した、治療的介入の方法で暴露療法などがある |
| フォビア | 特定の物、状況、活動、または状態に対する異常な恐怖感が起こり、特定の状況に直面することを避けたり、回避することがある |
| 恐怖回避 | 恐れを避けるために行動することで恐怖に直面することを回避したり、不安を感じることを避けたりする |
| 恐怖症 | 一般的な恐怖や不安を感じる傾向であり、生まれつきの特性や、遺伝的、社会的要因が影響することがある |
| 恐怖の記憶 | 恐怖と関連する出来事や情報を脳が記憶している状態であり、過去の恐怖体験が現在の行動や感情に影響することがある |
| 恐れへの適応 | 恐怖に直面したときに適切に対処することができる身体的や心理的な能力やプロセスを指し、適切な適応を獲得することで、恐怖による制限や不快感情から解放されるようになる |
悲しみに関する心理用語
| 悲嘆 | 愛する人や大切なものを失ったときに経験する強い感情的な痛みで、喪失に対する反応として悲しみ、哀悼、失望、怒り、孤独感などがある |
| 悲しみ | 心の痛みや憂鬱な感情を表す。喜びや興奮と対照的であり、悲しみは通常、痛みや喪失、孤独感などの出来事によって引き起こされる |
| 抑うつ | 悲しみや無気力、自己否定感などの強い感情を引き起こす状態で、一般的には症状が2週間以上続く場合に診断される |
| 憂鬱 | 悲しみや切なさの深い感情であり、絶望感や自己否定感を伴うことがある |
| 情緒的痛み | 心理的な苦痛を表す用語であり、心の深い痛みや傷つきを表す |
| 悲傷感 | 深い悲しみや嘆き、切なさを表す用語であり、喪失や不幸な出来事によって引き起こされる |
| 喪失ストレス | 大切なものを失ったことによって引き起こされるストレス状態 |
| 虚無感 | 強い悲しみやトラウマなどの出来事に対する反応として感情的に鈍感な状態で、感情や感覚の鈍化が起こる |
| 意味の喪失 | 喪失やトラウマなどの出来事によって、人生や自分自身の価値観、信念についての意味が薄れる状態 |
| 悲嘆適応 | 喪失や悲しみに対処するための心理的な調整過程であり、感情的な悲しみやストレスを解消することを目的とする |
驚きに関する心理用語
| 驚き | 予想外のことが起こった時に感じる感情であり、通常はポジティブな意味合いを持ち、喜びや興奮につながることが多い |
| 驚愕 | 驚きの感情の一つで、非常に強い驚きを表す |
| 驚嘆 | 驚きの感情の一つで、感動や敬意を含む驚きを表す |
| 驚異 | 驚きの感情の一つで、不思議や神秘を感じる驚きを表す |
| 驚きの反応 | 突然の刺激に対して自動的に起こる身体反応で、通常は驚き、興奮、不安、恐怖などの感情を伴う |
| 驚きの視覚的錯覚 | 視覚的な刺激に対する驚きや錯覚を引き起こす現象で、不規則な形状やサイズ、異常な色合いなどがある |
| 驚きの傾向 | 個人差があるが、驚きや興奮を感じやすい人や、逆に感じにくい人がいる |
| 驚きの時間 | 刺激が与えられた後に驚きの感情が表れるまでの時間であり、個人差がある |
| 驚きの期待 | 予想外のことが起こることを予測する場合は、驚きの感情がより強くなる |
| 驚きの社会心理学 | 驚きが社会的相互作用にどのように影響を与えるかを研究する分野で、驚きを利用して広告やメディアの効果を向上させることができる |
嫌悪に関する心理用語
| 嫌悪 | 嫌悪は不快感や吐き気を引き起こすような不衛生、卑猥、不道徳などの要素に対する強い反応であり、これは生物学的に進化、発展した感情であり、食品や病気、有害な物質などから身を守る役割を持っている |
| 反吐感 | 反吐感は嫌悪や吐き気を伴う身体的な感覚で、不快な物質に曝露されたときに起こることが多い |
| 嫌悪学 | 嫌悪学は、嫌悪に関する心理学的な研究分野であり、この分野では嫌悪がどのように発生するか、どのように認知され、どのように表現されるかを研究中 |
| 嫌悪感情誘発法 | 嫌悪感情誘発法は、実験的に嫌悪を誘発するために用いられる手法であち、これにより嫌悪がどのように表現され、どのような身体的反応を引き起こすかを調べることができる |
| 嫌悪反応 | 嫌悪反応は、嫌悪に対する身体的な反応であり、吐き気、頭痛、不安、脱力感などが挙げられる |
| 嫌悪回避 | 嫌悪回避は、嫌悪を引き起こす刺激から逃れる行動のことで、嫌悪回避の典型的な例としては食物を見たり、触ったりすることを避けることが挙げられる |
怒り/不安/愛/親子・母子愛/まとめについては3⃣ページ目をご覧ください。