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「身体症状症」物語-医学的知識編

目次

身体症状症(身体表現)架空例のケースから症状の理解と知識を学ぶ精神医学的物語-6弾

身体症状症(身体表現性障害)物語

大学生の彩香は、夏休みを利用して地元の町へ帰省していた。しかし、帰省してからというもの、彼女は体がだるく、食欲がなく、腹痛や下痢、便秘を繰り返すような身体的不快感を感じるようになってしまった。初めは暑さや疲れが原因かと思っていたが、不快感は日増しに強くなり、痛みも感じる頻度が多くなった。

家族に相談すると、早めに病院に行くように勧められた。総合病院に行って検査をしても異常は見つからず、身体的な症状は明らかにならなかったが、胃が少し荒れていたことで胃薬を出されただけだった。それでも不快感や痛みは続いており、ますます彩香は不安になることでストレスも感じるようになってきた。

やがて、彩香は不安が強くなったことで、精神科の受診で今までの経緯を医師に話すことができた。もう一度検査はしたが、その後の医師からの説明を受け、彼女は自分が心理的ストレスによって不快感を感じていることを理解することができた。身体に症状が出ることで、ストレスを認識し、それに対処するために身体が反応しているのだということを知った。彩香は今まで聞いたこともなかった病名の「身体症状症」の症状を抱えていることに気づいた。

彩香は精神療法を受けることで、自分のストレスに向き合い、解決していくことを決めた。時間をかけて、自分自身と向き合い、過去の出来事や思い出を振り返る中で、彩香は少しずつ自分に優しくなることができた。身体的な不快感も次第に軽減され、彼女は心身ともに健やかな生活を送ることができるようになった。

【補足】
SSDが医師との診察や検査では解明できなかった場合、精神科の受診をすることがありますが、このような場合でも、患者は痛みや違和感を感じていることがほとんどです。
SSDは、身体的な原因が見つからない身体症状を示す精神障害であり、患者が実際に痛みや不快感を感じています。しかし、身体的な原因が見つからないため、治療においては、患者の心理的要因やストレスなどが症状の引き金となっていることが考慮されます。
また、SSDには、身体的な痛みや不快感に加え、身体的な機能障害、自覚的な身体的不快感、身体的な緊張感などの身体症状が含まれるため、患者が自覚している身体症状は非常に実感的であるとされています。

SSDの概要

身体症状症、旧身体表現性障害(SSD)は、身体的な症状が強く出現する障害で、医学的な検査や検査で明確な病気が見つからない場合に診断されます。この障害には、痛み、消化器症状、性器症状、神経系症状、呼吸器症状、皮膚症状など、さまざまな種類の身体的な症状が含まれます。これらの症状は、本人が主観的に強く感じ、日常生活や社会的機能に重大な影響を与えることがあります。

SSDの原因はまだ完全には理解されていませんが、身体的な症状が心理的ストレス、トラウマ、不安、うつ病などの精神的な問題に関連する場合があると考えられています。SSDの治療には、認知行動療法、ストレスマネジメント、抗うつ薬などが用いられます。

SSDの臨床症状

身体症状症(SSD)の臨床症状は、以下のようなものがあります。

  • 身体的症状の存在
    SSDの主要な症状は、明確な医学的根拠がないにもかかわらず、慢性的な身体的症状が存在することです。これらの症状には、痛み、腹痛、下痢、便秘、吐き気、嘔吐、頭痛、めまい、疲れ、筋肉のこわばり、麻痺、痺れ、震えなどがあります。
  • 症状の重度
    SSDの重度の症状は、非常に強く感じられます。本人にとっては、症状が重大な問題であるため、生活や仕事に大きな支障をきたすことになります。
  • 症状の持続性
    SSDの症状は、通常、少なくとも6か月以上続くことです。これらの症状は、何らかのストレスがあるときに増悪することがあります。
  • 症状の過剰な関心や不安
    SSDの症状に対して、本人は極度の不安や恐怖を感じることがあります。これらの感情は、症状をさらに悪化させる可能性があります。
  • 医師や医療機関との頻繁な検査
    SSDの強い症状の場合は、頻繁に医師や医療機関を受診し、検査を受けることになります。しかし、医学的には何も見つからず、本人の症状や不安が緩和されない場合があります。

ICD-11の診断基準

SSDの診断基準

ICD-11における身体症状症(SSD)の診断基準は以下のとおりです。

  1. 身体症状の存在:少なくとも1つ以上の身体症状が明確であること。
  2. 信念の変容:本人が身体症状について異常な信念を持ち、過剰な注意を払うか、過度に反応すること。
  3. 機能の影響:身体症状が、社会的、職業的、学業的な機能に影響を与え、または日常生活に重大な苦痛や困難をもたらすこと。
  4. 持続性:身体症状が、通常の生理的プロセスまたは既知の疾患によって説明されない期間、少なくとも6か月間続くこと。
  5. 精神的な要因:身体症状の発生、持続、重症化に精神的な要因が関与していること。
  6. 評価:身体症状を適切に評価するために、必要な検査や医療処置を受けたにもかかわらず、医学的に診断された疾患が存在しないことが確認された場合、SSDの診断が行われる。

SSDの疫学

成人では、6カ月間の有病率は4〜6%と報告されています。ただし、新しい概念であり、地域や文化によって異なるため、研究によってその割合は異なる場合があります。一般的に女性の方が男性よりも発症率が高いとされています。
また、本症の主要な症状に疼痛が伴う12カ月間は5%、また、生涯有病率は12%との最近の報告もあります。

要因

遺伝的要因については不明ですが、危険要因と予後要因が示されています。

  • 感情の気質(否定的感情や行動に現われる特有の傾向)
  • ストレスフルな生活上のライフイベントを経験した人に多く、幼少期の虐待や大人になってのDVなどの環境的要因
  • 慢性的な精神疾患(うつ病、不安症など)、身体疾患、社会的ストレス、疾病利得のような社会的強化要因
  • 痛の感受性や身体への過剰な注目するなど認知的要因

SSDの経過・予後

SSDは、ストレスや心因的な原因が関連している場合があり、過去のトラウマやストレス、うつ病や不安障害などの精神疾患と関連していることが報告されています。また、身体的な疾患の検査や処置を受けたことがある人や、検査や処置などで医療従事者との接触が多い人に発生することが多いとされています。
また、慢性的な身体症状を抱える人や、生活のストレスやトラウマを抱える人、不適切な医療処置や医師の誤診などがある場合にリスクが高くなるとされています。
SSDには、不安症群や抑うつ障害などの精神疾患が併発する可能性があります。精神疾患が併発すると、SSDの症状が悪化し、治療がより困難になります。

経過は個人差がありますが、症状が長期間続くことがあり、再発や持続が見られることがあります。
小児期に繰り返される腹痛、頭痛、倦怠感、悪心などの身体症状がある場合、親にとっては子どもの健康や成長に対する心配や不安が大きくなります。親が過剰に反応し、医療的な検査や治療を繰り返すことがあると、子どものSSDの症状が長引く原因にもなっています。また、その後の成人期にも症状が持続することがあるとされています。

このように、SSDの経過を長引かせる因子には、生活ストレス、身体的な疾患の検査や治療の経験、医療従事者との多接触、心的外傷などが挙げられます。これらの要因によって、SSDの症状が慢性化することがあります。

SSDの症状が長期間続くと、心身共に疲れやすくなり、生活の質が低下することがあると報告されています。

SSDの治療

SSDの治療には、薬剤療法や精神療法などがあります。薬剤療法では、痛みや不快感を緩和するために鎮痛薬や抗うつ薬、抗不安薬などの薬剤が用いられることがあります。ただし、これらの薬剤は、身体症状症の原因となる心理的・社会的要因に直接的な影響を与えるわけではないため、薬物治療単独での完全な治癒を期待することはできません。

精神療法では、患者さんの心理的要因やストレスなどが症状の引き金となっていることを考慮し、心理療法やカウンセリングが行われます。具体的には、認知行動療法はネガティブな自動思考を適応的で現実的な適応思考に自覚するように援助します。なた、行動療法は行動変容技法であり、暴露法や系統的脱感作法などとなります。その他、心身医学的アプローチ、精神分析療法、家族療法、リラクゼーション法、マインドフルネス療法などが用いられることがあります。

また、身体症状症はストレスや心理的な要因が原因となって発生するため、ストレスマネジメントやライフスタイルの改善、運動療法、栄養療法などの生活習慣の改善も重要な治療法のひとつとなります。治療は患者の症状や状況に応じて個別化され、専門家との十分なコミュニケーションが必要とされます。

「身体症状症の診療ガイドライン」(日本内科学会編)

「身体表現性障害を理解する」(林道子著)

「身体表現性障害:病態から診療まで」(笹井裕子編)

尾崎紀夫・三村將・水野雅文・村井俊哉:標準精神医学第8版/医学書院

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