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人格心理学の理論と乳児期からの人格形成

目次

人格のはじまり

人格の発達は、生まれてから成人までの過程で続く複雑なプロセスですが、最初の段階である生後0歳から1歳6ヶ月位までにおいては、特に人格の基盤が形成される重要な時期と言えます。この時期における人格のはじまりと発達について解説します。

段階
生後期(0 – 2ヶ月)

新生児は、主に基本的な生存のための反応を示します。食欲、睡眠、快適さ、不快感などの基本的な欲求を満たすための行動が見られます。この時期は、基本的な安全と快適さの確保が中心です。

段階
傾向性期(2ヶ月 – 6ヶ月)

乳児は、自分自身と環境との関係を学び始めます。笑顔や視線の交流、音への反応などが増え、他者とのコミュニケーションを形成し始めます。親子の絆が形成される重要な時期でもあります。

段階
対象永続性の発達(7ヶ月 – 1歳)

幼児は、物体が一時的に隠れても存在し続けるという「対象永続性」を理解し始めます。これにより、幼児は親や身の回りの物に対する愛着が深まり、分離不安などの感情も現れることがあります。

段階
自己意識の初期(1歳 – 1歳6ヶ月位)

幼児は、この時期になると、徐々に自分と他者との違いを理解し始めます。自分の身体や動きに興味を持ち、鏡を見たり触ったりすることで自己の存在を感じ始めます。

0歳から1歳6カ月の時期は、基本的な生存の欲求から始まり、他者との関わりや自己認識の発達に進化していく過程を示しています。この時期に形成される愛着、対人関係の基盤が、将来の人格形成に影響を与えるとされています。親や主要な介護者との関係が赤ちゃんの信頼感や安全感の形成に大きな影響を持ちます。これによって、乳児から幼児は他者との関わり方や自己の認識を形成し、将来の人格の基盤を築いていくのです。

子どもの模倣能力の発達

子どもの模倣能力の発達は、認知、社会、感情的な要因が組み合わさって進行する複雑な過程です。模倣は、他者の行動や表現を観察し、それを自分の行動や表現に取り入れる能力を指します。

段階
生後期の模倣能力

乳児は顔の表情や声音に反応するなど、基本的な模倣の兆候を示します。これは乳児が親や主要な介護者の表情や声音を模倣することで、コミュニケーションを始める一環です。この時期は、基本的な対人関係や親子の絆の形成に関わります。

段階
反復的模倣

おおよそ6〜9ヶ月ごろから、幼児は単純な行動を反復的に模倣するようになります。親の手拍子や笑顔、舌を出す仕草などを真似ることがあります。この時期は、基本的な運動能力の発達と社会的なコミュニケーションの強化が重要です。

段階
対象永続性と模倣

幼児が物体の存在を理解する「対象永続性」が発達すると、物体が見えなくなっても存在すると認識するようになります。この時期から、隠れた行動や動きを模倣することが始まります。物体が姿を消しても、それを模倣することができるようになるのです。

段階
社会的模倣

1歳を過ぎると、幼児は他人の行動をより複雑に模倣するようになります。これには言葉の模倣、挙動の模倣、人形遊びなどが含まれます。幼児はこの段階で、社会的なコミュニケーションを通じて言葉や行動を学びます。

段階
自己の発見と模倣

2歳頃から、児童は自分自身の身体や能力に興味を持ち始めます。これに伴って、自分の行動や表現を他人のものと比較し、模倣することで自己の特徴を発見していく過程が始まります。

段階
理解と適用の模倣

3歳以降、児童はより高度な行動や役割の模倣を行います。物語や遊びの中で、他人のキャラクターや役割を模倣することで、社会的なルールや期待を学びます。

子どもの模倣能力は、認知的な発達、対人関係、社会文化的な要因と結びついて進行します。模倣は学びの基盤として重要であり、子どもが社会的な環境と関わりながら自分自身を発見し、成長していく過程の一部と言えます。

子どもの自己感

子どもの自己感(self-concept)とは、自分自身に対する意識や理解のことを指します。自己感は、子どもが自分自身をどのように認識し、自分についての思いや評価をどのように持っているかを表す概念です。

段階
自己認識(Self-awareness)の発達

乳児は生後から自分の身体や表情を認識し始めます。この段階で、鏡を見て自分を指し示すことができるようになるなど、自己と他者の違いに気づく基盤が形成されます。

段階
物理的自己理解

幼児期になると、子どもは自分の身体の一部としての意識を持ち始めます。手や足を触る、鏡で自分の顔を見るなど、自分自身の存在を探求する行動が見られます。

段階
社会的自己理解

幼児期後半から児童期にかけて、子どもは社会的な役割や関係性を理解し始めます。自分は兄弟姉妹、友達、園児などとしてどのように位置づけられるかを理解するようになります。

段階
認知的自己理解の発達

子どもが児童期から成長するにつれて、自分の特性や能力、好き嫌いなどの自己評価が発達してきます。この時期に自己評価が形成されることで、自己感がより洗練されていきます。

段階
比較と社会的評価への敏感さ

学童期から学齢期になると、他人と比較したり、周囲の評価に敏感になることが増えます。友情や集団内での位置づけについての意識が高まります。

自己感の影響

子どもの自己感は、自尊心や自己評価に影響を与える重要な要素です。良好な自己感を持つ子どもは、自分を受け入れることができ、自信を持って新たな課題に取り組むことができる傾向があります。一方で、低い自己評価や自己評価の歪みが、自尊心の低下や心理的な問題のリスクと関連していることもあります。

親や教育者のサポートや、肯定的な環境での成長が、子どもの健全な自己感の発達に重要な役割を果たします。子どもが自分を理解し、受け入れ、成長する過程を通じて、より健康的な自己感を形成することが目指されます。

愛着のワーキングモデル

愛着のワーキングモデル(Attachment Working Model)は、ジョン・ボウルビィ(John Bowlby)によって提唱された愛着理論の一部です。このモデルは、個人の愛着関係や対人関係に関する心の中での「モデル」や「スキーマ」を指します。これによって、個人は自分と他者との関係を理解し、行動を調整するための枠組みを持つとされています。

愛着のワーキングモデルは、主に以下の2つの要素から成り立っています。

自己モデル(Self Model)

自己モデルは、個人が自分自身についての認識や評価、感情を持つ部分を指します。これは、愛着的な関係によって形成された経験から派生する自己の評価や信念を反映します。例えば、安定した愛着的な関係を経験した子どもは、自己に対して肯定的な評価を持ちやすい傾向があります。

他者モデル(Other Model)

他者モデルは、個人が他人に対してどのような期待や評価を抱くかを示します。これは、過去の愛着的な経験に基づいて形成された他人への感情や信念を表します。他者モデルは、他人との関係においてどのような行動やコミュニケーションをとるかに影響を与えます。

愛着のワーキングモデルは、子どもの成長過程において形成され、その後も変化や発展を遂げる可能性があります。このモデルは、子どもが幼少期から経験する愛着的な関係が、その後の人間関係や自己評価にどのような影響を与えるかを理解するための枠組みとして重要です。また、愛着のワーキングモデルは、自己認識や他者への期待、行動の調整などに影響を与え、人間関係の質や心理的健康に対する影響をもたらすとされています。

人格の育ち(3歳〜)

人格の育ちは、子どもが成長する過程で形成される複雑なプロセスです。人格の育ちは、3歳頃の児童期から学童期にかけて子どもの人格はさまざまな要因によって影響を受け、発達していきます。次に、人格の育ちの主な特徴と影響要因について解説します。

人格の育ちの特徴

  • 自己認識の発達
    • 児童期に入ると、子どもは自己認識がより洗練されてきます。鏡を見て自分を認識したり、自分の名前を理解し始めたりすることで、自己の存在を理解する能力が発達します。
  • 自己評価の形成
    • 児童期後半から学童期にかけて、子どもは自分の特性や能力、好き嫌いなどについての自己評価を形成し始めます。これは周囲の評価や自分自身の実体験から影響を受けます。
  • 社会的関係の発達
    • 子どもは友情や仲間関係を形成し、集団内での役割や位置づけを理解していく過程に入ります。この段階での対人関係の発達は、将来の人間関係に影響を与えます。
  • 感情の理解と制御
    • 児童期から学童期にかけて、感情の理解と制御が発達します。子どもは感情を名前で呼ぶことができるようになり、他人の感情や自分の感情に対する理解が深まります。
  • 道徳的価値観の発達
    • 学童期から学齢期になると、子どもは道徳的な価値観や規範に対する理解が深まり、行動規範や倫理的な判断を形成する過程が進みます。

影響要因

  • 親子関係
    • 親や家族との関係が、子どもの人格形成に大きな影響を与えます。愛着的な関係やコミュニケーションの質が重要です。
  • 同輩関係
    • 幼稚園や学校での同輩関係は、子どもの社会的な発達や対人関係に影響を与えます。友情や協力の経験が形成されます。
  • 環境と文化
    • 子どもの成長環境や文化的な背景も、人格の育ちに影響を与えます。文化的な価値観や社会的な期待が形成される要因となります。
  • 自己経験と成功体験
    • 子どもの自己経験や成功体験は、自己評価や自己肯定感を形成する要因です。挑戦や達成を通じて自己の能力を発見し、発展させていきます。

人格の育ちは個人差が大きく、環境や経験によっても異なる形をとります。子どもの成長過程には多くの要因が絡み合い、総合的な影響を及ぼすため、その育ちを理解するためには幅広い視点が必要です。

3歳頃の人格の特徴

3歳頃の子どもの人格の特徴は、児童期の始まりに位置する時期であり、個々の発達段階や環境によって異なる要素が影響します。

  • 自己意識の発達
    3歳頃になると、子どもは自分と他者との違いに対する理解が進みます。鏡を見て自分の顔を指さし、名前を自己紹介することが増えます。自己の存在や特性に対する興味が高まります。
  • 感情の多様化
    3歳頃の子どもは、幅広い感情を経験し始めます。喜び、怒り、悲しみなど、さまざまな感情を自分や他人が持つことを理解するようになります。感情の表現や制御も発達していきます。
  • 自己表現の発展
    言葉の発達が進むことで、子どもは自分の考えや感情を表現する能力を向上させます。物事に対する好みや意見を伝えることが増え、他人とのコミュニケーションが豊かになります。
  • 社会的関係の興味
    3歳頃の子どもは、他の子どもたちと遊ぶことに興味を持ち始めます。友情や協力の概念が発達し、遊びを通じて対人関係を探求します。
  • 模倣と学習
    児童期には模倣が活発になります。子どもは周囲の大人や同輩の行動を観察し、それを自分の行動に取り入れて学びます。この時期の学習は、将来の行動や価値観に影響を与えます。
  • 自己肯定感の形成
    成功体験や褒められる経験を通じて、3歳の子どもは自己肯定感を形成し始めます。自分の能力や行動に対する自信が高まり、ポジティブな自己評価を持つ傾向があります。

3歳頃の子どもは、自己意識の発達や感情の多様化など、多くの発達過程を経ているため、その特徴は個人差があります。環境や経験が子どもの人格形成に影響を与えるため、家族や教育環境によっても人格の特徴は異なる可能性があります。

前思春期の心的変化

前思春期は、子どもが思春期に進む過程の前段階であり、一般的に児童期の10歳から学齢期の14歳頃までの期間を指します。この時期には心的変化が起こり、子どもたちは身体的、感情的、社会的な面で成長しています。次に、前思春期の心的変化について解説します。

  • 身体的変化への認識と対処
    前思春期の子どもたちは、身体的な変化に敏感になります。成長に伴って身長や体重が増加し、体形が変化することに気付いていきます。性的成熟に関連した身体的変化に対して、好奇心や不安を抱くこともあります。
  • 同性との関心の増加
    前思春期の子どもたちは、同性に対する興味や関心が高まる傾向があります。友情や仲間関係が重要となり、同性とのつながりが強まることで自己同一性の形成に影響を与えます。
  • 自己同一性の模索
    前思春期には、自己同一性を探求する段階が始まります。子どもたちは自分の特性、価値観、興味などについて考えることが増え、自分らしさを見つけようとする傾向があります。
  • 抽象的思考の発展
    前思春期になると、子どもたちは論理的思考や抽象的な概念を理解する能力が向上します。これによって、抽象的なアイデアや概念について考えることが可能になります。
  • 社会的比較と自己評価
    前思春期の子どもたちは、他人との比較を通じて自己評価を行うことが増えます。自己評価は、学業成績や外見などのさまざまな側面に影響されることがあります。
  • 感情の変化と混乱
    前思春期には感情の変化が顕著に現れることがあります。喜怒哀楽の感情が激しく変動し、自己制御が難しくなることもあります。
  • 親との関係の変化
    前思春期では、親との関係に変化が生じることがあります。子どもたちはより独立心を求め、自分の意見や価値観を主張することが増えますが、一方で親の指導や支援も求めることがあります。

前思春期は、子どもたちが子供から思春期へと移行する過程であり、多くの心的変化が起こる時期です。これらの変化は個人差があり、環境や家庭、文化などが影響を与える要因となります。

人格が閉じるとき(死を受け止める5つの段階)

エリザベス・キューブラー=ロス(Elisabeth Kübler-Ross)の提唱した「死を受け止める5つの段階」は、ターミナル(末期)病気の患者が死を受け入れる過程で経験するとされる5つの段階です。次にそれぞれの段階を解説します。

段階
否認(Denial)

最初の段階では、患者は現実を受け入れず、病気や死の事実を否定します。これはショックや恐怖からくる自己防衛の反応であり、感情的な保護の仕組みと言えます。

段階
怒り(Anger)

現実を受け入れると、悲しみや無力感に代わって怒りや抵抗が生じることがあります。患者は「なぜ私なのか」といった感情を抱くことがあります。この段階では周囲への反発や怒りが表れることが多くなります。

段階
取引(Bargaining)

患者は、死や病気を避けるために神や宗教的な力に対して「もし…なら」といった形で交渉を試みることがあります。自分の行動や生き方を変えることで、死や苦しみを回避しようとする心理的な反応です。

段階
抑うつ(Depression)

取引が成立しないことに気付くと、悲しみや絶望感が強まります。患者は自身の状態を受け入れ、その喪失感を感じてしまい、この段階では抑うつ的な感情が支配的になることがあります。

段階
受容(Acceptance)

最終的な段階では、患者は死や病気を受け入れることができるようになります。感情的な波が収まり、平穏な気持ちを持つことができるようになります。受容の段階では、平和や準備を感じることがあります。

ただし、これらの段階は必ずしも一定の順序で進むわけではなく、すべての患者がすべての段階を経験するわけでもありません。また、これはターミナル病気に限ったものではなく、喪失や困難な状況に対する一般的な心理的過程としても理解されています。

人格と語り・発話(ナラティブの定義、ドミナント・ストーリー)

人格と語り(ナラティブ)の関係は、人格形成や自己認識において重要な要素です。ナラティブの定義とドミナント・ストーリーについて解説します。

ナラティブ(語り)の定義

ナラティブとは、自分の経験や出来事を物語として構築し、語ることによって自己を理解し、他人や社会との関係を形成する過程を指します。つまり、人は自分自身の過去、現在、未来を物語として語ることで、自己同一性を確立し、人格を形成していきます。

ドミナント・ストーリー

ドミナント・ストーリーは、個人のナラティブの中で特に重要な、その人の自己認識や人格形成に大きな影響を与える物語です。これは人が自分の経験や出来事をどのように解釈し、自分自身をどのように位置づけるかを表すものです。

例えば、成功や困難、喜びや悲しみに関する経験は、それぞれの人によって異なるドミナント・ストーリーを形成します。成功を重視して自己評価を高める人もいれば、困難な経験を克服するための成長の機会ととらえる人もいます。

ドミナント・ストーリーは、個人の価値観や信念、文化的な影響などによって形成されます。これが人格と深く結びついており、人が自己を理解し、他人と関わる際にも影響を及ぼします。

人格と語りは相互に影響し合い、人は自分の人生をストーリーとして語ることで、自己同一性を確立し、意味を見出し、自己理解を深めていきます。ドミナント・ストーリーはその中核となる要素であり、人格を形成する上で重要な役割を果たします。

「心の構造」 著者: ジークムント・フロイト 出版社: 岩波書店

「人格の構造と変動」 著者: ゴードン・W.オールポート 出版社: 誠信書房

「人間関係論」 著者: エリク・H・エリクソン 出版社: 築地書館

「性格の心理学」 著者: ローリング・カーヴァー、テリサ・ムーカ 出版社: 羊土社

「人間の性格と感情」 著者: ウィリアム・ジェームズ 出版社: 岩波書店

「人格心理学入門」 著者: フィリップ・J・クラス、ショナ・B.ジェイムズ 出版社: 昭和堂

「人間性の心理学」 著者: ジョージ・A・ケリー 出版社: 誠信書房

「人格心理学ハンドブック」 編集者: ダニエル・C.ファドマン、ナオミ・T.ファドマン 出版社: 金剛出版

「夜と霧」 著者: ヴィクトール・E・フランクル 出版社: 創元社

「人間の探求」 著者: ヴィクトール・E・フランクル 出版社: 創元社

「ヴィクトール・フランクルの実存分析とロジョセラピーワークブック」 著者: ドナ・L.ショート、エリザベス・ボネス 出版社: 新評論

「夢判断の基礎」 著者: ジークムント・フロイト 出版社: 岩波書店

「性と性差」 著者: ジークムント・フロイト 出版社: みすず書房

「フロイトの精神分析入門」 著者: フィリップ・K.ロス 出版社: 昭和堂

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