曖昧な言葉は相手が無意識に都合よく最適に解釈してくれる。曖昧な言葉で相手を催眠「トランス状態」に導き肯定的に捉えさせ、ふさわしい答えを出させるミルトンモデル
「今のあなたは素敵で輝かしいのですが、誰にも言えない多くの苦労を乗り越えて、努力や頑張りという言葉では表せない事実を成し遂げた証なのでしょうね」
とても抽象的で多くの人に使える言葉でありながら、相手の受け取り方次第では心に響く表現になります。
例えば、ラポールができていている相手からの言葉だとすると素直に受け取ることができます。先ほどの言葉の「今のあなたは」が、母親であったとします。若いころに夫を亡くしながら、子供二人を大学まで入学させています。子供たちは卒業後には大手企業で働いていてくれて、「今のあなたは」は英語の家庭教師をしていたとします。いろんなことが思い出されるはずです。夫を亡くした寂しさ、子供を育てる多くの苦労と今の安心感、今でも母親として、また家庭教師として社会で活躍できていることなど、先ほどの言葉のワンフレーズで思い出が走馬灯のように蘇ってきて心に沁みてくることだと思います。そしてこの言葉を掛けてくれた方に感謝することができて「ありがとう」が思い浮かぶくらいの表現です。
例えば逆に、長男が大学進学まで順風満帆で何一つ苦労を持たずに卒業し、父の会社に入社して3年後には役員になっていたとします。その後には他企業の社長令嬢と結婚し、美人の妻と子供も3人儲けて現在は父の後継者として取締役社長に就任していたとします。弟も系列の子会社を持つことができていたとします。
このような高貴な人生を送っていたとしても、「今のあなたは」当然ながら自分では苦労したこと、思い通りにいかなかったこともあり、先ほどのワンフレーズを自分のことのように受け取るはずです。
上記の例文では具体的なことに触れていませんが、受けた人は自分の言語マップから自由に、勝手に意味づけをしています。のこの逆メタモデルのアプローチは、情報を省略した表現方法で、本来はプロセスを表していることを抽象的な曖昧な言葉にしています。
ミルトンモデルとは
ミルトンモデルは、ミルトン・エリクソンが心理療法で使われていた言葉の使い方を研究、分析し体系化したもので、相手に意識の抵抗が起きることなく無意識レベルで同意をしてくれるような言葉になります。
この曖昧な言葉を使うことで、相手の無意識に働きかける会話となり、最適な解釈へと招きます。
抽象的な表現が体系化された言葉の使い方を「ミルトンモデル」と言いいます。受け取る相手はこの言葉のフレーズを新たな気づきとして肯定的に捉え、自分にふさわしい答えを自分で導き出すことになります。
ミルトンモデルは曖昧な表現で相手の意識のなかの警戒や批判、判断などの注意心の低下を招き、防衛・防御を弱めます。まるで催眠「トランス」に導くためのスキルでもあるかのようです。このトランス状態は相手の意識の壁を薄くし無意識にアクセスすることによって、良好なコミュニケーションが築かれるようにする手法です。
このミルトンモデルには、逆メタモデル(対比メタモデル)、間接誘導・接続詞、前提、メタファーなどのアプローチがあります。
- 曖昧な表現を使用
具体的な内容は表現しない - 逆メタモデルのアプローチ
省略・歪曲・一般化した言葉で相手に受け入れやすくする - 間接誘導や接続詞の使用
命令をわからないように会話に盛り込む - メタファー
隠喩のことわざや例え話の使用で無意識的に理解させる
抽象的な曖昧なアプローチ
- 「主体の省略」
情報を省略した表現方法 -
- 具体的な内容を省略
「今日も頑張ってるね」「明るい未来が待ってるよ」
「過去の経験がヒントになるよ」 - 比較対象・基準を省略
「あなたならもっとできるよ」「これはお買い得商品です」
「より楽にできる自分を感じるよ」 - 特定されない具体的内容の指示詞
「いつかわかる時がきます」「多くの人が喜んでいます」 - 特定されない具体的内容の動詞
「頑張ってきた証です」「見守っています」「学ぶことができます」 - 動詞が名詞化、または名詞の多様
「効率と利便性がサービスの魅力です」「信頼が大切なサービスです」 - 会話の主体の情報を省略することによって、相手が話を受け入れやすくなる。
例:頑張ってきた人ほど、この内容を聞くと参加するようです。
- 具体的な内容を省略
- 「歪曲の同一視」
事実があるかのような表現方法 -
- AはBであることをの原因を意味する
「優しさは接客に向いています」「雨の日は映画が楽しくなります」 - AはBを引き起こす意味がある
「早起きは得することが多いです」「良い事をすれば運が向いてきます」 - 相手の心を察しているという読心術の表現
「楽しめたようですね」「辛いと感じていますね」 - 判断基準が設定されていない表現
「あなたはやり抜きます」「あなたには力があります」 - 最初にOKがとれる内容を盛り込むことによって、後に続く本題にNOと言えなくなる。
例:あなたがこの素晴らしい事業を経営されているということは、皆さんからたくさんの支持を得ているということですので、今回、この会の会長となるべきです。
- AはBであることをの原因を意味する
- 「マインドリーディング」
相手の心をわかっているように伝える -
- 「私はあなたの今回の試験の不合格はどれだけ悔しかったか分かっています」
- 「あなたがどれだけの思いで試験勉強してきたかは分かっていますよ」
- 「私が今回のプレゼンを成功させたいかは、分かってくれているよね」
- 「私はあなたのことわかっているよ」と「あなたは私のことわかってくれているよね」の相反するパターンがあります。
例外は無視する表現「一般化」「前提」
- 「いつも」「すべて」「誰でも」などで例外を無視
-
普遍的数量詞を使い伝い、伝いたいメッセージを一般化することで、相手が受け取りやすくする。
「あなたを見るといつも元気が出ます」「すべての失敗は成功につながります」「誰でも将来の夢を追いかけています」 - 「しなければならない」「〜べき」などの必然性や「〜できる」など断定や可能性を示す」
-
・必然性や可能性の叙法助動詞
「人を叱りつけなければなりません」「この問題は皆で挑戦するべきです」「ごはんのお替りすることもできます」 - 「最初は」「次に」「先に」「もう一つは」など2回目、3回目があることの前提を作るため
-
「次には感じ取れます」「最初はきついだけですが最後に爽快になります」「出かけるとしたら、最初にどこに行きましょうか」「体の上半身と下半身のどちらが先にリラックスするだろう」
- 「どちらが」「あるいは」「または」など前提があり2者選択の表現
-
・選択させる言葉
「うどんとそばのどちらにしますか」「買い物には車または電車で行きますか」「現金またはカードのどちらのご利用ですか」 - 「理解している・していない」「納得している・していない」「気が付く」など意識が前提となる表現
-
・意識の叙述語
「これは操作が難しいものだと知っていましたか」「この選択は間違いだと気付いていないですね」「人と話すことがとても大切であると理解しています」 - 「続ける」「〜し始める」「まだ」などの前提を決定させている
-
・時の変化の動詞・副詞
「これからも通い続けてください」「練習を始めると動くことがたのしくなります」「まだ心理学には興味がありますか」
・「〜の前に・~の後に」「〜しながら」「〜時」など時間従属が前提となる表現
「宿題を終える前に伝えたいことがある」「シャワーを浴びた後に夕飯を食べよう」 - 「深く」「ゆっくり」「早く」などやる前提や実現する前提
-
・副詞と形容詞
「読書をすることで、深く人生を楽しむことができます」「ゆっくりと温泉巡りができましたか」「一刻も早く上達できるかが問われるね」
提案・示唆・指示を「間接誘導」「接続詞」で埋め込む
- 質問を埋め込む表現
-
・直接命令するのではなくしてほしいことを会話の中に埋め込みます。
「あなたはどのくらい苦労してきたのか、私にはわかりません」「どちらの方向に行くのか、と私は考えています」「積極的に作業することはとても体にと思いませんか」 - 否定することで命令になる表現
-
・メッセージとは逆のことを無意識に伝える。
「すぐに購入しないでください」「競馬で勝つことを想像しないでください」「私のことは心配ないので気にしないでください」 - 疑問文ではい、いいえで答えられる表現
-
・会話的に要求YES/NOで答えられる質問
「昨日の失敗したことを話すことができますか?」「道順はわかりますか?」「資料を作ってもらう時間がありますか?」 - 2つの意味に捉えられる曖昧な言葉での表現
-
あなたは自分の愚痴をはなすことはとても良いことです。そして、それをはなすことによって心が軽くなることを感じます。「この件をはなすことができます」=話す・離すの二つの意味
- 2つの意味のどちらにもとれる曖昧な表現
-
「購入すると生活が豊かになることが考えられます」=購入すると生活が豊か・購入することが考えられますの2つの意味
子どもに向けて「ごはんをちゃんと食べなさい」=行儀よくだべなさい・残さずに食べなさい - 文法的に2つの意味にとれる曖昧な表現
-
「この荷物を持たれなくても一緒に行きますか」=荷物を持たなくても・荷物を持ってもらえなくても
- 注釈をつけて前提にはめ込む
-
・注釈の形容詞と複視「面白いことに」「運よく」「幸運にも」
「面白いこ生まれとに試験は合格します」「運よくサッカーで日本人候補に選抜されます」「幸運にも双子が生まれました」 - 接続詞で表現し関連性があるように受け取らせる方法
-
・「そして」「それから」「〜したら」などの接続詞を使う
「久しぶりにスタッフが全員揃いました。それでは仕事も早く終わらせますね」「今日のプレゼン成功だね。それでは明日の営業もお願いします」「昨日は営業成功したんだね。そして今日はプレゼンで成功しよう」時間の流れを使うことで現象につなげていく
「〜しながら」「〜しているとき」「それから」
「私と一緒に歩きながら、考えていきましょう」因果関係を使い、要因と結果を伝える
「〜によって」「〜だから」
「考えることによって、解決策が浮かんできます」 - 肯定文には否定分を加え、否定分には肯定文を加えて意味合いを強くする
-
「もっと、歌がうまくなりたいと思ってないですか?そうでしょう!」
「もっと、歌がうまくなりたいですよね!違いますか?」
メタファー隠喩や例え
- 属性を持たないが無意識で意味する表現
-
「雪のような肌だ」「あなたに空気が味方しています」「海があなたを呼んでいます」「あなたは女神のようです」「あなたは太陽のように照らしてくれている」「あなたの心は海のように広く深い」
- 第三者が伝える言葉を柔らかくする表現
-
「お客さんが言っていましたが、周りかも評価を得られる商品である」「社長からの要望でもある」
- 寓話、逸話
-
・アリとキリギリスから
「困った人を助ける優しい人になる」「後先を考えず過ごすと困ったことが待っている」「幸せの尺度は人によって違う」 - ことわざや引用
-
「時は金なりと言うね」「細部にこだわる。それは時間をかけてもこだわる価値のあるものだ。これはスティーブ・ジョブズの名言だ」「人の話を聴くことで人生の80%は成功する。とカーネギーが言っている」
ミルトンモデルは、催眠療法のミルトン・エリクソンの言語パターンをモデリングして体系化しています。聞き手が自由に解釈してベストな言葉に受け取るように曖昧な言葉になっています。
ミルトンモデル:ケース2
ミルトンモデル(Milton Model)は、NLP(神経言語プログラミング)におけるコミュニケーション技法の一つです。ミルトンモデルは、ミルトン・エリクソン(Milton Erickson)という有名な心理療法士の言語パターンをモデリングして開発されました。
ミルトン・エリクソンは、非常に優れた催眠術師でもあり、言語を用いた誘導や変容を行うことでクライエントの変容を促すことに成功しました。ミルトンモデルの主な手法や技法をまとめます。
- 一般化した言語パターン
- ミルトンモデルでは、一般化した言語パターンを使用します。具体的な情報や詳細な説明を避け、意図的に曖昧な表現や一般的な言葉を使うことで、相手の無意識に訴えかけ、個人的な意味や体験を引き出す効果があります。
- 暗示的な言語
- ミルトンモデルでは、暗示的な言語を使用して、クライエントの無意識的なプロセスやリソースを活性化させることを目指します。具体的な指示や命令を避け、物語やメタファー(隠喩)を通じて、クライエントの内的な世界に影響を与えます。
- 誘導的な言語パターン
- ミルトンモデルでは、クライエントの無意識的なプロセスや変容を促すために、誘導的な言語パターンを使用します。これにより、クライエントの心理的な柔軟性を高め、新たな選択肢やリソースにアクセスすることが可能となります。
- 感覚的な言語
- ミルトンモデルでは、感覚的な言語を使用して、クライエントの体験をより豊かにし、イメージや感情を喚起します。視覚的、聴覚的、体感的な言葉を使って、クライエントの内的なイメージや感情を活性化させ、変容や洞察を促します。
ミルトンモデルの目的は、言語を通じてクライエントの無意識や内的なリソースにアクセスし、変容や成長を促すことです。具体的な指示や解決策を与えるのではなく、クライエント自身が内なる回答やリソースを見つけ出すことをサポートします。そのため、ミルトンモデルの手法は、クライエント中心のアプローチや探求的なプロセスを強調します。
ミルトンモデルは、コーチングやカウンセリング、セラピーなど、さまざまなコミュニケーションの場で利用されます。以下に、ミルトンモデルの主な応用例をいくつか挙げます。
- クライエントの内的なリソースの活性化と問題解決の促進
- ミルトンモデルの手法を使って、クライエントが内なる回答やリソースを見つけ出し、問題解決や目標達成に向けた行動を促します。
- 深いリラックスやトランス状態の誘導
- ミルトンモデルの言語パターンを使用して、クライエントの深いリラックスやトランス状態を誘導し、自己探求や内的な変容を促します。
- クライエントの信念や価値観の探求
- ミルトンモデルの手法を用いて、クライエントの信念や価値観にアクセスし、より深い理解や洞察を得ることができます。
- 情報のフィルタリングや調整
- ミルトンモデルの言語パターンを使って、クライエントの情報処理のスタイルや認識のフィルターを調整し、新たな視点や選択肢を提供します。
ミルトンモデルは、クライエントとのコミュニケーションにおいて柔軟性や創造性を高める効果があります。言葉の力を最大限に活用し、クライエントの内的なリソースや潜在能力を引き出すための有用なツールとして、幅広い分野で活用されています。
- NLP実践心理学
- 緊張や不安をアンカリング技法で克服
- 望ましい第一印象はラポール・ミラーリングなどの手法
- 自分・相手・傍観者の体験はポジション・チェンジ技法
- SCOREモデルは場所移動で視点と思考に刺激を与える手法
- タイムラインは過去の捉われ、生きにくい現在を手放す
- ニューロロジカルレベルは無意識と意識の6階層で形成
- 8フレーム・アウトカムで適格に捉えた理論が絶大な効果
- モデリング手法は理想のスキルを自分に埋め込む
- スウィッシュで望ましい新たな自分に入れ替わる
- アイアクセシングキューは目の動きで感情を知る
- チャンクサイズ分析は物事を捉える思考癖を知る
- 否定的な出来事も肯定的に捉えるリフレーミング
- 言葉の一部から真実の思考を捉えるメタモデル
- リフレーミングで否定的な行動の肯定的意図を探る
- 優位表象と体感覚の優位性
- ストラテジーのガイドライン
- 五感の要素サブモダリティの利用
- ディズニー戦略手法のアプローチ
- 目標達成のプロセスはTOTEモデル
- 相手の思考を変えるスライト・オブ・マウス
- ステート・マネジメントで感情の管理
- ビジュアル・スカッシュでイメージの調和
- 目標達成のプロセスはアウトカム手法
- 望ましい未来の想像フューチャーペーシング