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物を過剰に集めて整理できない、捨てられない-対面無料相談例の検証

目次

ため込み症(HD)は、障害であることの自己認知と他者の気づきと理解が解決策への第一歩であり、年齢早期や症状が現れ始めて間もない時期が重要である-第5弾

前回の3時間無料相談例の第4弾で「醜形恐怖症」について詳しく解説しましたが、2022年12月に年末の掃除をしたいのだけれど…と、「ため込み症」のパートナーからの相談を受けました。
実は醜形恐怖症もため込み症も「強迫症および関連症群(OCRD)」のカテゴリーに位置付けられています。元来は強迫症の一亜型といわれ「手の汚れが気になり手を洗い続ける」などの症状と一緒に 捉えられてきました。どちらにせよ、障害の認識がなければ、過剰に物を集めて整理できず捨てられず、生活空間が物で埋まっていて、生活に支障をきたしている変わり者だとだけ思われています。

ため込み症(HD)

ため込み症は、「物を捨てられない」「収拾がつかなくなるほど物を貯め込んでしまう」傾向を持つ精神障害の一種です。ため込み症は、主に物質を収集する行動や一定の場所に物を置くことで、安心感を得ることができると考えられています。

ため込み症は、収集家の収集癖や普通の人が物を所有しているようなことではなく、必要以上に物をため込んだり、現実的には価値がない物にもかかわらず捨てるのが難しいと感じています。
物を捨てることができない、または物を貯め込むことに強い衝動を感じていて、物が取り散らかっていても気にならないなどが挙げられます。無秩序に集められた物で生活空間が占拠され、活動スペースが奪われ部屋の使用が困難となります。
物を捨てることの困難さは、物を保持したいという強い欲求と捨てることに関連した苦痛があります。このことからも、散らかっていることで不衛生で健康に悪影響を与えることがあるため、治療を必要とします。

  • 収集物の蓄積
    特徴的な症状の一つが不必要な物や価値の低い物を大量に蓄積することです。蓄積する物は、書類や雑誌、洋服や靴、食器や生活用品、ごみなど多岐にわたります。収集物の量は、部屋をふさぎつくすほど多くなる場合があります。
  • 収集物の保管
    収集物を保管する場所も特徴の一つです。始まりは部屋の床や机、椅子などが埋もれるように保管していきます。また、収集物の保管には不特定多数の箱やビニール袋、新聞紙、段ボール箱、買い物袋などを利用しながらエスカレートします。
  • 収集物の選択
    収集物の選択に困難を感じることが多いため、あらゆる物を集めることになります。また、一度入手した物は、決して捨てないという傾向があります。
  • 捨てることができない
    収集物を捨てることによって、自分や他人に何かが起こるのではないか、失ったものを取り戻すことができないのではないか、などの不安を感じています。
  • 生活空間の減少
    もともとスペースが狭い部屋を選び、物を詰め込むことがあるため、収集物の蓄積や保管で生活空間がさらに狭くなります。生活空間が狭くなることによって、自尊心や社会的ステータスが低下していきます。
  • 汚損や有害物質の存在
    収集物の蓄積や保管の中には、汚損したものや有害物質が含まれていることがあります。たとえば、食べ物の残渣や汚れた衣服、使用済みの紙おむつ、古い薬品や化学物質なども可能性があります。これらの物品は、衛生上の問題や火災の危険性があるため、周囲の人々に対して危険を引き起こすことがあります。
  • 動物の収集
    動物を収集することが一種のコンピュルション(強迫観念によって押し付けられた行為)として機能している場合があります。この場合、動物を収集することで自分が安心感を得たり強迫観念を抑制することができるという効果があるとされています。
    動物愛護の観点からは問題とされています。たとえば、多数の動物を一つの居住空間に閉じ込めてしまうことで、動物たちの健康が損なわれることや適切な清潔管理や栄養管理が困難になることで、病気や虐待、死亡などのリスクも高まります。
  • 社会生活の支障
    収集物の蓄積や保管によって家族や友人との交流が減少したり、近所の人々から不快感や非難を受けたり、住居環境が衛生上の問題を引き起こすことにつながります。

ため込み症の診断基準(ICD-11)

ICD-11(国際疾患分類第11版)では、ため込み症は「不特定の収集物を溜め込む障害(Hoarding disorder)」として分類されています。ため込み症の診断基準は次の通りです。

  1. 持ち物の蓄積、保管、取捨選択に関する持続的な困難があること。
  2. 収集物を捨てることが困難であり、それによって過剰な物質的負荷、社会的機能不全、心理的苦痛を経験していること。
  3. 収集物に対して、感情的な価値付け、決定、組織化の方法が異常であること。
  4. 収集物の蓄積が、空間の使用、清潔、安全性、心理的健康、社会的機能についての著しい悪影響を与えていること。
  5. 他の条件(薬物乱用、精神障害、知的障害など)が収集物の蓄積を説明するために必要ではないこと。

これらの基準のうち、1〜4が満たされた場合に、ため込み症の診断が行われます。また、診断時には、収集物の種類や量に関する詳細な情報を収集する必要があります。

自分自身の症状の不合理性に関する認識の程度により「病識が不十分またはおおむね十分」「病識が不十分」「病識が欠如した・妄想的な信念を伴う」の3つに分類しています。

ため込み症の疫学

欧米における有病率は2〜6%ととされ、通常11〜15歳頃から現れ、20歳中頃までには臨床的障害を引き起こすといわれていて、特に33〜44歳と55〜94歳を比較すると3倍以上多く見られます。このように若年層で発症していますが、スローペースで年齢が増す毎に悪化していきます。
この経過は慢性的で消長は見られませんが、進行などに関してはパートナーなどの存在が大きく関与します。

ため込み症の病因

ため込み症の病因については解明されていませんが、以下のような要因が関与していると考えられています。

遺伝的要因

家族性があり、ため込み症の人の50%には同様のため込む親族がいると報告されています。

認知的要因

物の価値を過剰に評価していて、未来の役に立つかもしれないと思い込む、断捨離をすることで何か大切なものを捨てるかもしれないと不安になるなど、認知的な歪みがあることが示唆されています。

気質的要因

優柔不断な気質が多いといわれていて、その背景には確実性の追求するような完璧主義者や物事の先延ばしや計画を立てることが苦手、注意力が散漫である性格が特徴とされています。

心理社会的要因

ストレスやトラウマなどの心理社会的な要因が関与することがあります。例えば、失業や病気、家族や友人などと対人関係の問題などが引き金となる場合があります。

神経生物学的要因

脳内のセロトニンやドーパミン、グルタミン酸などの神経伝達物質の異常が関与することが示唆されています。

併存症の要因

うつ病の合併は約半数とも言われます。その他、社会不安症や全般不安症などの不安障害、強迫性障害が主なものとなります。

治療方法

薬剤治療
選択的セロトニン再取り込み阻害薬 (SSRI)であるフルオキセチンやセルトラリンなどや、三環系抗うつ薬のアミトリプチリンやクロミプラミンなどの反応も報告されていますが、効果は低いとされています。 ただし、うつ病などの併存症が悪循環を引き起こしている場合は有効性も期待できます。

認知行動療法に対して患者さんの治療意欲が低いため、治療には長期間を要することがあります。治療には、個人に合わせた継続的かつ綿密な評価と調整が必要です。具体的には、次のようなプログラムがあります。

  • 曝露と応答妨害療法(ERP)
    ため込んでいる物品を捨てることに対する恐怖感や不安感を扱うための療法です。まず、患者さんはため込んでいる物品を徐々に整理し、捨てることによっての不安感が減少することを学びます。これによって、患者は自分が物品を捨てることができることを実感し、不安感が緩和されることが期待されます。
  • 認知療法
    ため込んでいる物品に対する考え方を改善することを目的とする療法です。患者さんがため込んでいる物品に対して、必要性や価値について客観的に考えることを促し、不必要な物品を捨てる決断をしやすくすることが期待されます。
  • スキルトレーニング
    社会的スキルの向上を目的とする療法です。ため込んでいる物品によって、家庭や職場での社会的スキルが低下している場合、スキルトレーニングを通じて、社会的スキルを向上させることが期待されます。
  • 家族療法
    家族や介護者を巻き込んだ療法です。家族や介護者が患者さんをサポートすることで、患者が不必要な物品を捨てることに対して安心感を得ることが期待されます。

これらのプログラムは、ため込み症の患者にとって物を捨てることや整理整頓を行うことに対する不安を軽減し、自分自身で部屋を整理するスキルを身につけることを目的としています。

これらの療法の中でERP(暴露反応妨害法)について、少し詳しく解説します。

  • 暴露の設計
    治療を開始する前に、患者さんのため込み症の内容や症状を詳しく聞き取り、暴露の設計を行います。たとえば、物を捨てられない場合、価値観の低いと思われる特定の物品を捨てることから始め、段階的に大きな物品や重要なものを捨てるように徐々に進めます。
  • 暴露
    設計した暴露の計画に基づいて、患者さんが不安を感じる状況に直面させます。たとえば、捨てられないと感じる物品を持ち出し、それを捨てることを試みます。患者さんがその行動に耐えることができるよう、暴露の強度は段階的に上げていきます。
  • 反応妨害
    暴露に伴う強迫的な反応(応答)を阻止するため、患者さんに対して応答妨害を行います。たとえば、物を捨てた後に、それに触れた手を洗うことを禁止します。その代わりに、不安感に耐えることを学びます。
  • 繰り返し
    暴露と反応妨害の繰り返しを通じて、患者さんは徐々に自分にとっての不安を扱えるようになっていきます。治療は、患者さんが自分で制御することができるまで繰り返されます。

ERPは、ため込み症の治療に非常に効果的であるとされています。しかし、治療の過程で患者が大きな不安感やストレスを感じることもあります。そのため、治療を行う前に、患者とセラピストは十分なコミュニケーションを行い、治療の目的や手順、期待される結果などを明確に話し合う必要があります。

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DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル 高橋三郎・大野裕監修/2021医学書院標準精神 尾崎紀夫・三村將・水野雅文・村井俊哉/医学書院

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